JP4719090B2 - 高温超電導コイルおよびこれを用いた高温超電導マグネット - Google Patents

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Description

本発明は、超電導機器に使用される高温超電導コイルおよびこれを用いた高温超電導マグネットに関する。
超電導コイルは、SMES(Superconducting Magnetic Energy Storage)、超電導トランス、限流器、NMR(核磁気共鳴)分析装置、単結晶引き上げ装置、リニアモーターカー、磁気分離装置等の超電導機器に広く用いられている。
高温超電導コイルは、従来の液体ヘリウム温度(4K)で使用されてきた超電導コイルに比べその臨界温度が高く、ビスマス系の線材では液体水素(20K)、イットリウム系の線材では液体窒素(77K)での利用が可能である。
低温の超電導では、最大経験磁場(通常はコイル内側の中央部分)で超電導が維持できるかどうかを判断基準としてコイル設計が行われてきた。しかし、現在広く利用されているテープ状高温超電導線材は、テープ面に対する磁場異方性が強いため、低温の超電導とは異なるコイル設計が必要となる。
極低温の超電導コイルにおいては、何らかの原因で超電導状態が崩れた場合、すばやくそれを検出し電流遮断等によってコイルを保護する必要がある。これに対して、コイル電流密度が同等の高温超電導コイルでは、運転温度が高いため材料の比熱が大きく、保護を行うまでの時間が充分にある。
しかし、高温超電導線材を用いた超電導コイルでは、常電導部の伝播が非常に遅く局所的に発熱が起こり易い。したがって、常電導電圧が非常に小さい段階で常電導転移を検出しないとコイルが焼損する可能性がある。
さらに、複数のテープ状高温超電導線材を用いた導体でコイルを製作する場合には、線材をツイストした導体を劣化なく製作することが困難であり、並列構成の導体を使用せざるを得ない。したがって、各線材間のインダクタンスの違いによって生じる電流偏流に起因する損失増加あるいは安定性の抵下が問題となり、いずれかを犠牲にした設計をせざるを得なかった。
また、高いコイル性能を得るためには、巻線部の電流密度を高くする必要があるが、従来の低温超電導体を用いたコイルにおいては、ターン間を絶縁するために電流密度を犠牲にせざるを得なかった。
すなわち、低温超電導体のコイルにおいて、コイルのターン間の絶縁が不完全で、ターン間のショートが生じると、過大電流がこの短絡回路に流れ、クエンチが生じて励磁が不可能となる。したがって、コイルの性能を充分発揮させるには、確実なターン間絶縁が必要であり、特にNbSn等の熱処理導体を巻線後に熱処理する場合等は、無機絶縁物で絶縁を確保する必要があった。
高温超電導線材を用いた超電導コイルでは、何らかの原因で超電導状態が崩れた場合に、常電導部の伝播が非常に遅く保護を行なうまでの時間が充分にあるが、一方で局所的に発熱が起こる可能性があるため、常電導電圧が非常に小さい内に常電導転移を検出することが必要となる。
極低温の超電導コイルのクエンチの検出には、一般的に電圧法が用いられてきた。電圧法では誘導電圧の影響を受け易いため、中点法等を採用して誘導電圧の影響を減少させる必要があるが、中点から対称に常電導領域が広がる場合には検出が不可能あるいは遅れる可能性がある。
この誘導電圧の影響を取り除く方法として、導体に共巻されたコンペンセーションコイル(補償コイル)を用いる場合もあるが、施工に多大な労力が必要となっていた。さらに、超電導導体から直接に電圧タップを引き出す必要があるため、測定系全てに高電圧対策が必要となる。
以上述べたように、高温超電導コイルは、低温の超電導コイルとその特徴が大きく異なるためこれまでのコイル設計技術、コイル構成では充分な性能を発揮することができない。特に、高温超電導コイルは、複数の線材を並列構成の導体として使用する場合には、各線材間のインダクタンス間の違いによって生じる電流偏流のために、充分な性能を発揮することができない。
そこで本発明の目的は、複数の線材を並列に巻線する場合の素線間の電流偏流が改善された高温超電導コイルおよびこれを用いた高温超電導マグネットを提供することである。
本願の一実施形態に係る高温超電導コイルは、複数の高温超電導線材を互いに電気絶縁させ束ねて巻回したパンケーキコイルを重層した高温超電導コイルにおいて、前記パンケーキコイルの数を前記高温超電導線材の数の整数倍とし、前記各パンケーキコイルごとに高温超電導線材の巻き始めおよび巻き終わりをコイル中心に対して等分配に配置し、前記各パンケーキコイルの高温超電導線材の巻き始め角度、巻き終わり角度およびターン数を一致させ、かつ、前記各パンケーキコイルごとにパンケーキコイル間の接続箇所で各線材を転位させることを特徴とする。
こうした構成により、並列線材を利用したコイルの偏流対策、損失対策が可能となる。
こうした構成により、精度の高い偏流対策を行なうことができる。
こうした構成により、線材のインダクタンスを一致させて、より精度の高い偏流対策を行なうことができる。
前記高温超電導コイルにおいて、電流リードがコイル中心軸に対し軸対称に配置されることが好ましい。
こうした構成により、電流リードのインダクタンスを一致させて、より精度の高い偏流対策を行なうことができる。
前記高温超電導コイルにおいて、前記パンケーキコイルが前記高温超電導線材と等しい数の補強用部材と共巻されてなるものが好ましい。
こうした構成により、補強材の対称性も一致させて、より精度の高い偏流対策を行なうことができる。
前記パンケーキコイルは、ダブルパンケーキコイルであることを特徴とする。
本発明によれば、全ての線材の長さ、形状、即ちインダクタンスを一致させることができる。さらに、巻きはじめと巻きおわりの角度を各線ごとに一致させて、同じ形状のパンケーキコイルを交互に反転し積み重ねることで、全く軸対称なコイルを製作することができる。したがって、インダクタンスを揃えかつ外部磁界により線間に発生する誘導電圧をキャンセルして偏流損失を減少できる。加えて、同じ導体内の線を限られた空間で入れ替えるような、困難な作業が不要となり、単に上下のパンケーキコイルを同じ位相角のところで接続すれば良く、製作が容易となる。よって、複数の線材を並列に巻線する場合の素線間の電流偏流が改善された高温超電導コイルおよびこれを用いた高温超電導マグネットを提供できる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。同一の構成部分については、同一符号を付して重複する説明は省略する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施し得るものである。
(第1の実施の形態)
図1(a)〜(c)は、本実施の形態に係る高温超電導コイルの断面を例示したものである。この高温超電導コイルは、テープ状の高温超電導線材をソレノイド型に巻いて作製したものである。高温超電導線材には、酸化物高温超電導体(例えば、銅酸化物高温超電導体等)が好ましく用いられる。例えば、ビスマス(Bi)系、イットリウム(Y)系、タリウム(Tl)系等の銅酸化物高温超電導体を、銀シース法や銀被覆法(Powder in Tube Method)等でテープ状としたものが好ましく用いられる。
酸化物高温超電導体の結晶は二次元的異方性の強い構造を有するため、線材も二次元性の強いテープ状の形態で高い臨界電流特性を示す。すなわち、テープ面に平行な磁場に対する臨界電流が、テープ面に垂直な磁場に対する臨界電流に比べて圧倒的に大きく、結果としてテープ面に垂直な磁場の強さがそのコイルの性能を決めることになる。
したがって、こうしたテープ状線材を用いた超電導コイルにおいては、コイル巻線部の磁力線の向きがそのコイルの特性に大きく影響する。
図1(a)(b)に示す高温超電導コイルにおいては、磁束密度が最大の位置における磁力線の方向と超電導線の銅酸素面の方向(本実施の形態においては、テープ面に平行な方向)とを一致させるように高温超電導線材を巻線する。
図1(a)の矢印Aは、高温超電導コイル1のコイル断面2で、磁束密度が最大となる位置およびその位置における磁力線の方向を示す。超電導線材は、図中の引き出し拡大図に示すようにフラットワイズに巻線されている。
図1(b)には、図1(a)のコイルと比べて、アスペクト比(コイル半径方向のコイル断面長さ/コイル軸方向のコイル断面長さ)の非常に小さい、コイル断面の径方向厚みの薄い形状の高温超電導コイルを示す。矢印Bは、このコイル断面において、磁束密度が最大となる位置およびその位置における磁力線の方向を示す。超電導線材は、図中の引き出し拡大図に示すようにエッジワイズに巻線されている。
こうして、少なくともコイル内部で最大の磁場を示す位置での磁力線の方向とコイルを形成する超電導線の最も臨界電流の高い方向とを一致させれば、電流密度を向上させることができ、効率良く磁場を発生することができる。結果として、線材使用量を減らして、コンパクトで高性能なコイルを提供できる。
図1(c)に示すように、コイル断面内の各部分の磁力線の向きに沿って超電導線を配置すれば、さらにコイル性能を高めてさらにコンパクトなコイルが提供できる。言い換えれば、コイル断面内の各部分の磁場の方向に対応して、その磁場に対して臨界電流が最大となる向きに超電導線を配置することで、電流密度を向上させることができる。
通常の高温超電導コイルでは、コイル断面の中心付近に比べて、コイルの表層付近の磁束密度が高くなるから、こうしたコイルの表層付近の超電導線を、対応する磁力線の向きに沿って配置すれば特に効果的である。
図2(a)、(b)に、フラットワイズに巻線されたソレノイド型高温超電導コイル1の形状(アスペクト比)の違いによる軸方向(Bz)、径方向(Br)の磁束密度が最大の位置とその強さの比較を示す。高温超電導線としては、図1(a)〜(c)に示したコイルと同じものを使用する。図3は、コイルの断面積(線材量)、電流中心径およびコイル端面から一定の距離における発生磁場を一致させたソレノイド型高温超電導コイルにおいて、アスペクト比をパラメータとした場合の、半径方向最大磁場(Br−max)と必要電流の関係を示すグラフである。
使用した高温超電導コイルは、ビスマス系の銅酸化物高温超電導体を銀シース法でテープ状とした高温超電導線をフラットワイズに巻いたものである。
図3から明らかなように、コイル断面のアスペクト比が1以上の範囲では、径方向(Br)、すなわちテープ面に垂直な磁場を大きく下げることができる。したがって、コイル巻線部より外側の発生磁場を利用するコイルシステムにおいて、アスペクト比1以上の偏平な断面形状のコイルを使用すれば、磁場を効率良く利用することができる。
図4は、コイルの断面積(線材量)、電流中心径およびコイル端面から一定の距離における発生磁場を一致させたソレノイド型高温超電導コイルにおいて、アスペクト比をパラメータとした場合の、20Kにおける臨界電流(Ic)と必要電流の関係を示すグラフである。
使用した高温超電導コイルは、ビスマス系の銅酸化物高温超電導体を銀シース法でテープ状とした高温超電導線をフラットワイズに巻いたものである。
図4から明らかなように、コイル断面のアスペクト比が1以上の範囲では、20Kにおける臨界電流と必要電流がほぼ一致あるいは臨界電流の方が高くなる。したがって、コイルのアスペクト比をこの範囲とすれば、コイルの性能を向上させることができる。
また、径方向の電流密度を下げることで、同じ線材量でもさらに径方向の経験磁場(定格電流通電時に経験する磁場)を減らすことが可能であり、通常のパンケーキコイル製作の場合とは逆に、ターン間絶縁厚を可能な限り厚くすることが好ましい。コイル製作性を考慮して、フラットワイズ曲げ可能である最小径とコイル内径とを一致させたコイル構成とすることが好ましい。
スプリット型ミラー磁場を形成するように配置されたコイルのように、巻線方向の同じコイルをコイル軸方向直列に複数配置したコイルにおいて、アスペクト比を1以上とすると、単体コイルと比べて更に効果的である。
通常、スプリット型ミラー磁場を形成するように配置されたコイルでは、2つのコイルの間の空間に発生する磁場を利用するが、磁場の強さは距離の二乗に反比例するため、2つのコイル間の距離が広がると、磁場の強さが大幅に弱まる。
こうした配置のコイルにおいて、アスペクト比が1以上のコイルを選択すれば、同断面積でアスペクト比が1未満のコイルと比べて、コイルの中心間の距離を短くでき、同じ線材量であれば、結果として磁束密度の高い磁場を利用することができる。必要とされる磁場の強さが決まっている場合には、使用するコイルを小さくできるため、結果として線材量を減らせる。
このように、スプリット型のミラー磁場配置コイルにおいては、アスペクト比を1以上とすることで、コイル単体の性能を向上させるのみならず、2つのコイル間の磁場の強さを高める効果も得られる。使用線材の短長を変えず、且つ必要な磁場空間を維持したままスプリット型コイル間の距離を短くすることができ、低損失化、線材量の削減が図れる。
スプリット型コイルのようにコイルとコイルの間だけでなく、例えば、コイルと永久磁石など、コイルと磁場を発生させる他のものとの間に形成される磁場を利用する場合には、同様の効果が得られる。
図5は、スプリット型カスプ磁場を形成するように配置された高温超電導コイルについて、形状とその効果を示したグラフである。コイルの断面積(線材量)、電流中心径およびコイル端面から一定の距離における発生磁場を一致させたコイルについて、そのアスペクト比をパラメータとした場合の半径方向最大磁場(Br−max)、臨界電流(Ic)および必要電流の関係が示されている。
高温超電導コイルは、ビスマス系の銅酸化物高温超電導体を銀シース法でテープ状とした線材を、フラットワイズに巻線したものである。
グラフから明らかなように、カスプ型磁場を形成するように配置されたスプリットコイルの場合には、アスペクト比が1より大きいと20Kにおける臨界電流が必要電流より小さい。したがって、アスペクト比1以下のコイル形状が好ましいことがわかる。
なお、本実施の形態に示したいずれのコイルも、マグネットとして使用することが可能で、高温超電導体の特性を生かした高性能のマグネットが得られる。
(第2の実施の形態)
図6に本実施の形態に係る超電導マグネットの一例を示す。この超電導マグネットは、複数のテープ状高温超電導線材11〜13を束ねたバンドル導体17を用いたパンケーキコイル14〜16を、重層して構成したものである。テープ状線材11〜13は、互いに電気絶縁されている。
パンケーキコイルの数は、バンドル導体17を構成するテープ状線材の数(図6では3本)の1倍、すなわち3枚、となっている。
こうしたテープ状高温超電導線材としては、例えば、ビスマス(Bi)系、イットリウム(Y)系、タリウム(Tl)系等の銅酸化物高温超電導体を、銀シース法や銀被覆法等でテープ状としたものを用いることができる。
本実施の形態においては、各高温超電導線のインダクタンスを揃えるためには、各パンケーキコイル毎に、パンケーキコイル間の接続箇所で各線材の転位を行なう。ダブルパンケーキコイルの場合には、各ダブルパンケーキコイル間の接続箇所で各線材の転位を行う。こうした転位を確実に行なうためには、[線材数−1]回の転位回数が必要である。
したがって、少なくとも束ねた線材11〜13の数と同数のパンケーキコイルあるいはダブルパンケーキコイルが必要である。バンドル導体17を構成する線材11〜13の数の整数倍のパンケーキコイルあるいはダブルパンケーキコイルを使用すれば、転位が行なえることになる。
また、外部磁界によって線材間に形成される回路を貫く磁束を、バンドル導体17を構成する線材11〜13の数と同数のパンケーキコイル毎(本実施の形態では3枚のパンケーキコイル毎)にキャンセルして、外部磁界によって線間に生じる循環電流を抑えることができる。また、3枚のパンケーキコイルが整数回積み上げられたコイル全体によってもキャンセルできることになり、結果として結合損失をキャンセルできる。
ダブルパンケーキコイルを用いた場合には、バンドル導体17を構成する線材11〜13の数と同数のパダブルパンケーキコイル毎に、外部磁界によって線材間に形成される磁束をキャンセルできる。
図7(a)、(b)に、本実施の形態に係る超電導マグネットのパンケーキコイルの他の構成例を示す。パンケーキコイル18は3本のテープ状高温超電導線材21〜23で構成されており、パンケーキコイル19も同様に3本のテープ状高温超電導線材24〜26で構成されている。これらのテープ状線材は互いに電気絶縁されている。
線材21〜23および線材24〜26の巻き始めおよび巻き終わりは、それぞれパンケーキコイル18および19の円周方向に等分配の位置に配置されている。さらに、巻き始めおよび巻き終わりの位相(角度)は、表1に示すように各線毎に一致されている(パンケーキコイル18は表1の「Aパン」に相当し、パンケーキコイル19は表1の「Bパン」に相当する)。
図7(a)、(b)には、2枚のパンケーキコイル18、19を示したが、表1に示すように、A〜Fまで6枚のパンケーキコイルを使用して、各パンケーキコイルとこれに組み合わされる他のパンケーキコイルとの接続箇所の位相を表1に従って調整して、順次接続して構成することもできる。
こうして、全てのパンケーキコイルの線材の巻きはじめ角度および巻きおわり角度およびターン数を一致させれば、同一線材長かつ同一形状のパンケーキコイルを積み重ねた構成とすることができる。
本実施の形態においては、1つのパンケーキコイルに3本の線材を用いて構成したが、例えば、1つのパンケーキコイルに4本の線材を使用する構成においては、4等配すればよい。
テープ状高温超電導線材としては、例えば、ビスマス(Bi)系、イットリウム(Y)系、タリウム(Tl)系等の銅酸化物高温超電導体を、銀シース法や銀被覆法等でテープ状としたものを用いることができる。
こうした構成によれば、全ての線材の長さ、形状、即ちインダクタンスが一致する。さらに、巻きはじめと巻きおわりの位相(角度)を各線ごとに一致させて、同じ形状のパンケーキコイルを交互に反転し積み重ねることで、全く軸対称なコイルを製作することができる。したがって、インダクタンスを揃えかつ外部磁界により線間に発生する誘導電圧をキャンセルして偏流損失を減少できる。
加えて、同じ導体内の線を限られた空間で入れ替えるような、困難な作業が不要となり、単に上下のパンケーキコイルを同じ位相角のところで接続すれば良く、製作が容易となる。
こうして、複数の互いに電気絶縁されたテープ状線材のインダクタンスを、精度良く揃え、かつ外部磁界によって線間に生じる循環電流を抑えることができる。
Figure 0004719090
図8は、1つの外部電源から電流が導入されるパンケーキコイルにおける、電流リード31とコイルの接続法を例示したものである。符号32は電極である。外部電源から電流が導入されるパンケーキコイル(通常は両端のパンケーキコイル)の電流リード31は、コイルの中心軸に対し軸対称形状になるように配置されている。
こうした構成により、電流リード31も含めて、各線材のインダクタンスを一致させることができる。したがって、インダクタンスを揃えかつ外部磁界により線間に発生する誘導電圧をキャンセルして偏流損失を減少できる。
例えば、スプリット型ミラー磁場を形成するように配置されたコイルのように、コイル外側の発生磁界を利用するマグネットにおいては、電流リード31の位置が問題とならないため特に有効である。
また、線材の強度を補うために、コイル製作に際してステンレステープ等の補強材を共巻する場合がある。こうしたコイルにおいては、コイルの対称性が崩れる恐れがあるが、使用する超電導テープ線材と等しい枚数の補強材テープを共巻すれば、各線材のインダクタンスを揃え、コイルの対称性を維持することができる。
なお、本実施の形態に示したいずれのコイルも、マグネットとして使用することが可能で、高温超電導体の特性を生かした高性能のマグネットが得られる。
(第3の実施形態)
図9、10に、本実施の形態に係るパンケーキ型高温超電導コイルのテープ線材とテープ線材の接続部を示す。
図9においては、シングルパンケーキコイルAの線材35とシングルパンケーキコイルBの線材36は、線材35、36の約2倍の幅を有する幅広高温超電導線材39により、線材37、38と実質的に同一角度の範囲で接続されている。線材35、36、37、38は、銀シース法で製造されたテープ状高温超電導線材である。符号34は電極である。
図10においては、シングルパンケーキコイルAの線材35とシングルパンケーキコイルBの線材36は、超電導体のより線41を転位して構成したラザフォード型転位導体40により、線材37、38と接続されている。超電導フィラメントが転位されたテープ型導体を用いてもよい。
コイルの電流損失を低減するためには、パンケーキコイル間の接続部での抵抗を減少する必要がある。この接続に銅等の金属を用いると、抵抗を充分に小さくするためには、大きなブロック状のものが必要となる。また、たとえ、定常のジュール損失を充分小さくできても、接続ブロックにコイル励磁時に発生する渦電流による損失は無視できない。
こうした損失を防ぐためには、パンケーキコイルに使用した高温超電導線を用いたラップ接合を行えばよいが、ラップ接合を行うためには、超電導線をエッジワイズに曲げねばならず、超電導線に相当な助走区間が必要となる。
図9に示した構成によれば、導線をエッジワイズに曲げることなく、限られたスペースで、低抵抗の接続が可能となる。
図10のように、ラザフォード型転移導体あるいは超電導フィラメントが転移されたテープ型導体を使用すれば、超電導フィラメントが上下のパンケーキコイルをまたがるように配置される。したがって、上述の効果に加えて、ラップ結合と同様の低抵抗な接続が可能となる。
また、ラザフォード型転移導体は、より線導体であるため柔軟性が高く、フープ力等が加わった場合の破壊の危険性が減少する。テープ状であるから接合も容易である。
なお、本実施の形態に示したいずれのコイルも、マグネットとして使用することが可能で、高温超電導体の特性を生かした高性能のマグネットが得られる。
(第4の実施の形態)
図11、12に本実施の形態に係る高温超電導コイルを示す。図11においては、テープ状高温超電導線材46を巻回した高温超電導コイル1において、コイル断面2内のテープ面に垂直な磁場が大きい高磁場領域45に、部分的にテープ状高温超電導線材47を沿わせて付加している。
テープ状高温超電導線材46において、テープ面に垂直な磁場が大きいということは、テープ面に沿って流れる臨界電流が小さいことになる。したがって、この様に、特に臨界電流の小さい部分にテープ状高温超電導線材47を付加して臨界電流値を高めれば、コイル全体の電流密度を高めてコイル性能を向上させることができる。
図12においては、やはりテープ状高温超電導線材46を用いて構成される高温超電導コイルにおいて、局所的な劣化等が存在するテープ状高温超電導線材の欠陥部48に、正常なテープ状高温超電導線材47を沿わせて巻回している。
例えば、欠陥部48での発生抵抗が、100A通電時に1μV程度であれば、0.01μΩの抵抗に相当するが、これは100mmのラップ長での接続抵抗に相当する。したがって、こうした欠陥部に、数m程度の線材を沿わせれば、この欠陥を補うことができる。
高温超電導コイルにおいては、低温超電導コイルに比べて、抵抗による発熱をあまり考慮しなくてもよい。したがって、適切な線材長を選定することで、自在に部分的グレーディングが行え、最低限の線材量でコイル製作が可能となる。また、コイル内の磁場分布や、線材の局所的な性能劣化、コイル内接続等にも容易に対応できる。
欠陥部を補修する別の手段として、欠陥部を除去した後に、線材同士を突き合わせ接続することも可能である。接続する各テープ線材の幅広面を鋭角に切断し、切断面同士を突き合わせ、拡散接合、溶接、超音波接合等で接続する。
こうした接続法によれば、接続部での厚みを変えることなく低抵抗な接続が可能となる。テープの厚さ、幅を変化させないコンパクトな接続ができ、コイル内の接続も可能となる。
なお、本実施の形態に示したいずれのコイルも、マグネットとして使用することが可能で、高温超電導体の特性を生かした高性能のマグネットが得られる。
(第5の実施の形態)
図13(a)は、本実施の形態にかかる超電導マグネットを構成する高温超電導コイル50の導体51とターン間の抵抗52の関係を示すものである。
図13(b)は、高温超電導コイル50の導体51のターン間の絶縁状態を模式的に示す。直流磁場コイルにおいては、ターン間の単位長さ当たりの電気抵抗53を、定格電流通電時の単位長さ当たりに発生する常電導抵抗54よりも、1桁程度大きくして構成する。
臨界電流を定格電流とする場合には、通電電流が臨界電流に近づくと、高温超電導コイルに微少な電圧が発生する。この常電導抵抗がターン間の抵抗に比べ大きくなると電流は超電導線材の他にターン間にも流れるようになる。
このように、定格電流通電時の発生電圧ではターン間の漏れ電流が無視できる程度となるターン間抵抗を選定すれば、過電流が流れた場合でも、一定値以上の磁場が発生することが防げるため、コイルを保護できる。
また、何らかの原因で線材の一部が劣化した場合でも、図13(b)に示すように、電流Iの代わりに、劣化箇所を避けて電流Iが流れるため、焼損の危険性を回避できる。こうしたコイルをマグネットとして使用すれば、コイル全体としての電流密度を高めることができ、高性能なマグネットを提供できる。
一方、パルス的な励磁が要求される超電導コイルにおいては、ターン間の単位長さ当たりの抵抗を、定格電流立ち上げ時に発生する単位長さ当たりのインピーダンス(誘導抵抗)および定格電流通電時の単位長さ当たりに発生する常電導抵抗よりも、1桁程度大きく構成する。
定格通電の際に完全な絶縁がなくても、定格励磁の問題が起こらず、従来のような絶縁を行わなくとも成立するコイルが得られる。
さらに、ターン間絶縁材を使用せず、代わりに高抵抗な導電材料を使用すれば、磁場発生限界や磁場発生時損失を制御することができる。こうした導電材料としては、例えばステンレス、キプロニッケル、ハステロイ等が好ましく用いられる。高温超電導線あるいは高温超電導シート等の高温超電導線材を、こうした高抵抗な導電材料と共巻し、その後熱処理して構成してもよい。
高温超電導線あるいは高温超電導シート等の高温超電導線材を、導電性セラミックス等と共巻し、その後熱処理して構成してもよい。ワインド・アンド・リアクトが容易となり、線材製作に際して高温熱処理が必要な高温超電導線においては、製作が非常に容易になる。こうした導電性セラミックスとしては、例えば、V、ReO等が好ましく用いられる。
さらに、本実施の形態で示したような線材間(ターン間)の絶縁材なしで巻線された高温超電導コイルにおいては、従来の高温超電導線と比べて、はるかに容易に性能検査を行うことができる。
従来の高温超電導線の性能検査法においては、長尺の線材を直線状に伸ばした状態で、一定の距離毎に磁場等を測定する必要があった。しかし、絶縁材なしで巻線された高温超電導コイルでは、線材の巻き始め、巻き終わりおよび必要なターン数毎に、片面を絶縁された薄膜金属テープを挿入して四端子法により磁場の測定を行い、各位置での発生磁場の測定値から、線材の臨界電流やn値を算出することができる。したがって、線材を直線状に伸ばすことなく非常に簡便に性能検査ができる。
なお、本実施の形態に示したいずれのコイルも、マグネットとして使用することが可能で、高温超電導体の特性を生かした高性能のマグネットが得られる。
(第6の実施の形態)
図14に本実施の形態にかかる高温超電導コイルの上面(右半分は、スペーサー高さ位置での横断面)と、縦断面を示す。高温超電導線を用いて製作したパンケーキ型含浸コイル55において、パンケーキコイル間に配置する絶縁シート56と巻き線部57の間には、放射状にスペーサー58が配置されている。
高温超電導コイルを冷凍機等で直接冷却する場合には、コイル内の熱伝導を良くするため、含浸材の量は少ない方が望ましい。
こうしたスペーサー58を設ければ、パンケーキコイル側面に、含浸材の回り込む必要最低限の空間を確保することができ、絶縁層の厚みのコントロールが容易となる。したがって、均等で、且つ熱抵抗の少ない絶縁層を提供することができ、コイル全体としてもコンパクトになる。スペーサーの材料としては、例えば、カプトン等が好ましく用いられる。
また、コイル製作時に、FRP(fiber reinforced plastic )等の絶縁シートを、コイルの上面と下面とに対応する巻リールの内側にパッキングしておけば、巻枠からの離型が容易となりコイルの損傷を防げる。レジンとFRPの接着強度が高いため強固なコイルが得られる。含浸材使用後に絶縁シートを付ける工程も必要なくなり、含浸材にすが入ることも防げる。
また、同様にして、コイル製作時にFRP等の絶縁シートをコイルの側面に対応する巻リールの内側にパッキングしてもよい。図15にこうして作られたパンケーキ型含浸コイル60の断面図を示す。
パンケーキ型含浸コイル60の側面には、FRPシート61が配置されている。このコイルにおいては、3枚のパンケーキコイル62ごとに補強用金属テープ63が介在されている。
こうした構成によれば、コイルの上面と下面にFRPシートを配置して製作した場合と同様に、レジンとFRPの接着強度が高いため強固なコイルが得られ、巻枠からの離型も容易でコイルの損傷も防げる。含浸材使用後に絶縁シートを付ける工程も必要なくなり、含浸材にすが入ることも防げる。
絶縁シートとしては、純アルミ、純銅あるいは窒化アルミ等の低温で高熱伝導率を有する材料を布状に編んだシート、あるいはこうした材料の粒をエポキシ等のレジンに埋め込んだものを使用することも好ましい。熱伝導の悪い絶縁シートの熱伝導率を高め渦電流防止にも寄与する。
また、図15に示すように、超電導線および補強用金属テープを共巻きする場合には、補強用金属テープの材料としては、ステンレス、キプロニッケル、ハステロイ等が好ましく用いられる。さらに、補強用金属テープにホルマール、カプトン等の被覆を施し、その補強用金属テープのテープ幅を、テープ状高温超電導線材のテープ幅の最大値以上とすることが好ましい。
こうした構成により、ターン間の絶縁のためにカプトンテープ等を共巻する必要もなくなり、含浸材の存在するスペースも考慮する必要がなくなる。したがって、コイル内に存在する含浸材の絶対量を低減できる。コイル内の熱抵抗の主因となる含浸材の量を減らすことで、高電流密度化、低熱抵抗化が図れる。
なお、本実施の形態に示したいずれのコイルも、マグネットとして使用することが可能で、高温超電導体の特性を生かした高性能のマグネットが得られる。
(第7の実施の形態)
図16に、本実施の形態に係る高温超電導コイルの模式的横断面図を示す。高温超電導コイル64は、第5の実施の形態で示したようにターン間に通常の絶縁材を介在させない高温超電導コイルにおいて、高温超電導線65と絶縁被覆を施した補強用金属テープ66とを共巻きして製作したものである。この補強用金属テープ66の端部の絶縁を取り除き、ここから誘導電圧を検出し、コイル補償用の信号として用いる。
補強用金属テープ66としては、ステンレス、キプロニッケル、ハステロイ等のテープが用いられる。絶縁被覆のためにはホルマール、カプトン等が好ましく用いられる。
こうした構成によれば、補強用金属テープ66を、コイル励磁時の誘導電圧をキャンセルするための補償用コイルとして利用でき、新たな補償用コイルを施工する必要も、新たな補償用コイルのためのスペースを確保する必要もなくなる。
更に、こうした構成によれば超電導材と最もカップリングの良い位置に補償用コイルが配置されているため、電圧法で用いる補償用コイルとしては、非常に高性能なものとなる。補強用金属テープを、線材とほぼ同一の寸法形状とすれば、さらに性能の良い補償用コイルとなり一層好ましい。
また、こうした、完全なターン間絶縁を施さない高温超電導コイルにおいては、コイル近傍に少なくとも1つの磁場測定素子を設置し、この素子の信号から常電導転移現象を検出し、通電電流を減少させるようにしてもよい。磁場測定素子から得られた磁場の値と通電電流値を比較して、その直線性の有無に基づき常電導転移現象を検出し通電電流を制御する。
こうした構成によれば、常電導転移現象を容易に検出して通電電流を制御することで、コイルの保護が図れる。
また、ホール効果を有する物質、例えばビスマス、ガリウムひ素等で構成された線又はテープを超電導線と共巻してもよい。こうした構成により、特定の場所に設置したホール素子に比べて、コイル内の全ての地点での異常をより感度良く検出することができる。
一方、コイル内の温度上昇を捕えることでも、常電導転移(クエンチ)の検出は可能である。図17に示すように、銅67とコンスタンタン68等の異種の材料を周期的に接合した熱電対69を超電導線65と共巻し、この熱電対69で導体の局所的な温度上昇を測定してもよい。
こうした構成によれば、部分的な温度上昇であっても充分検知可能な、感度の高い温度素子を提供できる。熱電対69としては、銅とコンスタンタンの組み合わせに限られるものではなく、例えば、クロメルとアルメルの組み合わせ等も好ましく用いられる。
その他の常電導転移検出方法としては、コイルを構成する高温超電導線材に比べて臨界電流が充分低い(分流開始温度が導体に比べて低い)、例えば数mAである検出用超電導線材を、高温超電導線材と共巻する方法がある。コイルを構成する高温超電導線材の臨界電流近い電流が流れる場合には、検出用超電導線材では臨界電流値を越える電流が流れることになり、常電導転移が起こる。したがって、検出用超電導線材における常電導転移を検出することで、結果として高温超電導コイルの常電導転移を早期に検出できる。
検出用超電導線材としては、高温超電導体に限られるものではなく、場合によっては低温超電導体を用いることもできる。コイルを構成する高温超電導線材の臨界電流に対する検出用超電導線材の臨界電流の割合は、0.001%〜10%、好ましくは0.001%〜1%、さらに好ましくは0.001%〜0.5%である。
高温超電導線材と共巻した検出用超電導線材を端部で接続あるいは折り返させて、少なくとも1往復している超電導ツイストペア(往復線回路)を用いることも好ましい。電磁ノイズを減少できる上、常電導領域が2倍になるため発生電圧が2倍となり検出感度が向上する。ツイストペア(往復線回路)の往復回数をさらに増やせば、検出感度をさらに向上させることができる。
なお、本実施の形態に示したいずれのコイルも、マグネットとして使用することが可能で、高温超電導体の特性を生かした高性能のマグネットが得られる。
(第8の実施の形態)
図18に、本実施の形態に係る超電導マグネットシステムを示す。超電導マグネットシステムは、電源70、一次コイル72と二次コイル73からなるトランス、高温超電導コイル75、および抵抗76から構成される。
二次コイル73は高温超電導線を巻線したものである。すなわち、常温部から電流を供給する電流リードの低温部を、少なくとも2次コイル側が高温超電導線を用いて構成されたトランスを介して、高温超電導コイル75と接続する構成となっている。
本実施の形態のトランスは、例えば電源電流100A(1次側)およびコイル電流10kA(2次側)といった構成とされている。こうして、1次側の電流を2次側より非常に小さくすることで、電流リードからの低温部への侵入熱を低減できる。したがって、システムとしての消費電力を減らすことができる。
コイル電流(2次側)に対する電源電流(1次側)の割合は、負荷であるコイル電流(二次側)の使用目的・状況に応じて適宜選択する。
こうしたシステムは、侵入熱に制約のある冷却システムで、特に効果的である。例えば、高温超電導コイルが冷凍機直接冷却式であるシステム等に、特に好ましく用いられる。
(第9の実施の形態)
図19、20に、本実施の形態に係る超電導マグネットシステムを示す。
図19に示す超電導マグネットシステムは、高温超電導コイル75、抵抗76、可変抵抗77、永久電流スイッチ(PCS)79および電池80から構成されている。高温超電導コイル75の励磁電源として電池80を用いることで、超電導コイルの励磁が容易に行える。
図20に示す超電導マグネットシステムは、高温超電導コイル75、抵抗76、可変抵抗77、温度制御用ヒータ付き永久電流スイッチ79、および鉛蓄電池等の二次電池81から構成されている。
温度制御用ヒータ付き永久電流スイッチ79は、高温超電導線とヒータを一緒に巻いたものである。ヒータ加熱時は常電導状態となり有限の抵抗を持つOFF の状態時に対応し、ヒータ加熱を停止すれば超電導状態に復帰しON状態となる、いわゆる熱式永久電流スイッチである。
高温超電導コイル75としては、第1〜8の実施の形態に示したいずれのコイルでも使用できる。それ以外の高温超電導コイルを用いることも可能で、ソレノイド型、パンケーキ型いずれも使用できる。
高温超電導コイル75の励磁に必要なエネルギーを、回生可能な二次電池81で供給することにより、コイルに蓄えられた二次電池81のエネルギーを再び電池81に回生し、システムの損失を小さく抑えることができる。
こうしたシステムにコンデンサを含む構成としてもよい。コンデンサは、電源に直列にかつ高温超電導コイルに並列に接続する。二次電池のエネルギーを一旦コンデンサーに蓄え、それを超電導コイルに供給することで、より損失の少ない制御が可能となる。
(第10の実施の形態)
図21に、本実施の形態に係る高温超電導マグネットシステムを示す。複数の高温超電導コイル75が電源70に対して並列に接続されている。
この高温超電導マグネットシステムを励磁すると、通電初期は最も流れ易いコイルに電流が流れる。しかし、通電電流がそのコイルの臨界電流近くに達すると、コイルに常電導抵抗が発生し、次に流れ易いコイルに電流が流れるようになるため、最終的にはコイル全体に対し最も負荷率の高い運転が可能となる。したがって、こうした構成によれば、線材の使用量を減少させることができる。
また、図22に示すように、高温超電導コイル82〜86を並列に接続した高温超電導マグネットシステムにおいて、各高温超電導コイルに抵抗91〜94を直列につなぐ回路構成としてもよい。例えば、コイル82の通電電流が臨界電流近くに達すると、抵抗91を通ってコイル83およびコイル84に電流が流れ、次いでコイル83またはコイル84の通電電流が臨界電流近くに達すると、抵抗93を通ってコイル85およびコイル86に電流が流れるように、最初に励磁されるコイルの通電電流が臨界電流近くに達すると、抵抗を通って次の位置のコイルに電流が流れるように、各高温超電導コイル間の抵抗値を制御して、それぞれに流す電流をコントロールする。
こうした構成によれば、最終的にはコイル全体に対し最も負荷率の高い運転が可能となり、線材の使用量を減少させることができる。
高温超電導コイル75、82〜86としては、第1〜8の実施の形態に示したいずれのコイルでも使用できる。それ以外の高温超電導コイルを用いることも可能で、ソレノイド型、パンケーキ型いずれも使用できる。
本発明の第1の実施の形態に係る高温超電導コイルの一例の縦断面を示したもので、(a)、(b)はそれぞれ磁束密度が最大の位置の磁力線の方向と大きさを示し、(c)は各部分の磁力線の方向と大きさを示す。 (a)、(b)は、それぞれ第1の実施の形態に係る高温超電導コイルの他の例の縦断面を示したもので、高温超電導コイルの形状(アスペクト比)による軸方向(Bz)、径方向(Br)の磁束密度が最大の位置とその強さの関係を示す。 高温超電導コイルの断面のアスペクト比と、半径方向最大磁場と必要電流の関係を示すグラフ。 高温超電導コイルの断面のアスペクト比と、20Kにおける臨界電流と必要電流の関係を示すグラフ。 スプリット型のカスプ磁場配置の高温超電導コイルの断面のアスペクト比と、半径方向最大磁場、臨界電流および必要電流の関係を示すグラフ。 第2の実施の形態に係るパンケーキ型超電導マグネットの一例の模式的構成図。 第2の実施の形態に係る超電導マグネットのパンケーキコイルの他の例の模式的構成図。 第2の実施の形態に係る超電導マグネットのパンケーキコイルの電流リードとコイルの接続状態を示す図。 第3の実施の形態に係るパンケーキ型高温超電導コイルのテープ状線材とテープ状線材の接続部の一例を示す図。 第3の実施の形態に係るパンケーキ型高温超電導コイルのテープ状線材とテープ状線材の接続部の他の例を示す図。 第4の実施の形態に係る高温超電導コイルの部分的グレーディングの一例を示す図。 第4の実施の形態に係る高温超電導コイルの部分的グレーディングの他の例を示す図。 (a)は、第5の実施の形態に係る超電導マグネットを構成する高温超電導コイルの導体とターン間の抵抗の関係の模式図であり、(b)は、高温超電導コイルの導体のターン間の絶縁状態の模式図。 第6の実施の形態に係る高温超電導コイルの一例の上面(右半分は、スペーサー高さ位置での横断面)とA−A矢視縦断面を示す図。 第6の実施の形態に係る高温超電導コイルの他の例の縦断面を示す図。 第7実施の形態に係る高温超電導コイルの一例の模式的横断面図。 第7実施の形態にかかる高温超電導コイルの他の例の模式的横断面図。 第8実施の形態に係る超電導マグネットシステムを示す図。 第9実施の形態に係る超電導マグネットシステムの一例を示す図。 第9実施の形態に係る超電導マグネットシステムの他の例を示す図。 第10実施の形態に係る超電導マグネットシステムの一例を示す図。 第10実施の形態に係る超電導マグネットシステムの他の例を示す図。
符号の説明
1,50,55,60,64,75,82,83,84,85,86…高温超電導コイル、2…コイル断面、11,12,13,21,22,23,24,25,26,35,36,37,38,46,47,65…テープ状高温超電導体線材、14,15,16,18,19,30,62…パンケーキコイル、17…バンドル導体、31…電流リード、32,34…電極、39…幅広高温超電導線材、40…ラザフォード型転位導体、41…より線、45…高磁場領域、48…欠陥部、51…導体、52…ターン間抵抗、54…常電導抵抗、56…絶縁シート、57…巻き線部、58…スペーサー、61…FRPシート、63…補強部材、66…補強用金属テープ、67…銅、68…コンスタンタン、69…熱電対、70…電源、72…一次コイル、73…二次コイル、76,91,92,93,94…抵抗、77…可変抵抗、79…永久電流スイッチ、80…電池、81…二次電池。

Claims (5)

  1. 複数の高温超電導線材を互いに電気絶縁させ束ねて巻回したパンケーキコイルを重層した高温超電導コイルにおいて、前記パンケーキコイルの数を前記高温超電導線材の数の整数倍とし、前記各パンケーキコイルごとに高温超電導線材の巻き始めおよび巻き終わりをコイル中心に対して等分配に配置し、前記各パンケーキコイルの高温超電導線材の巻き始め角度、巻き終わり角度およびターン数を一致させ、かつ、前記各パンケーキコイルごとにパンケーキコイル間の接続箇所で各線材を転位させることを特徴とする高超電導コイル。
  2. 電流リードがコイル中心軸に対し軸対称に配置されることを特徴とする請求項1記載の高温超電導コイル。
  3. 前記パンケーキコイルが前記高温超電導線材と等しい数の補強用部材と共巻されてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高温超電導コイル。
  4. 前記パンケーキコイルは、ダブルパンケーキコイルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の高温超電導コイル。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項記載の高温超電導コイルを使用することを特徴とする高温超電導マグネット。
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