JP4716273B2 - 流体用構造格子の自動生成方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は流体の流れに関する機械全般の流体の数値解析方法、およびそれに付随する最適化に関する。より具体的には、設計者もしくは最適化モジュールによって考案された複雑な形状に対して人手を介さずに自動で計算格子を生成することにより、形状を最適化し、計算時間を短縮し、計算精度を向上させる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体解析を行うための計算格子作成法の例として、本発明者らによる日本機械学会論文集(B編)64巻627号3723頁に論じられているEMG法(Elastic Mesh Generation Method)がある。この方法では、流れ場に置かれた構造物の境界が刻々と変動する場合の解析において、計算格子を対象構造物より十分に柔らかい網状のものとして設定しており、まず仮想物体モデルを用いて計算格子を定義し、その仮想物体モデルを構造物に沿わせて変形させて格子を生成している。具体的には格子点間を伸縮ばね要素のみで結合した計算格子を流れ場に設定し、各格子点間の変位と反力の関係を有限要素法の考え方に沿って解くことによって、構造物に沿わせて変形させた後の仮想物体モデルの各格子点の位置を計算している。従って構造物の境界の変形に対して計算格子は滑らかに追従することができ、境界が変形する度に必要となる格子生成が非常に簡便に達成できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述したEMG法では、複雑な形状の構造物に対して仮想物体モデルを設定した場合、構造物の形状を定義する点と仮想物体モデルの計算格子の格子点とが対応していなければならないため、構造物の形状を定義する点の数が変わると変形前の仮想物体モデルから定義しなおす必要があった。
【0004】
さらに、EMG法では仮想物体モデルを構造物に沿わせて変形させると、後述する図1(e)に示すように計算格子に大きなひずみが発生する可能性がある。こうなると、解析精度が悪化したり、または計算格子の逆写像を計算することができなくなり、後に続く解析で使用することができない。
【0005】
このような場合、従来では、仮想物体モデルを定義しなおす作業や、計算格子のひずみを修正する作業は人手で行わなければならず、解析の自動化の障害となっていた。さらに、例えば流体と構造物の相互連成問題を解く場合、計算格子は時間の経過に伴い刻々変動する構造物の境界に追従するよう短時間で効率よく生成される必要があるが、計算格子の形状がひずむとその度に修正を行わなければならず、スムーズな解析を実行する上で障害となっていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の方法は、一つまたは複数の形状モデルを流れ場に配置した数値解析を行うために、流れ場に直交空間計算格子を設定し、該直交空間計算格子の一部を用いて仮想物体モデルを定義し、該仮想物体モデルを形状モデルの境界上に合わせて変形させて格子を生成する方法であって、仮想物体モデルは、直交空間計算格子の格子点を前記形状モデルの境界上を滑らせて、エネルギーおよびヤコビアンを多目的関数として最適化するように変形される構成をとる。この発明によると、計算格子を使用した仮想物体モデルを、EMG法を利用して形状モデルに沿わせた後、形状モデルの境界上に格子点を滑らせて、エネルギーが最小およびヤコビアンが1に漸近するように仮想物体モデルをさらに変形させるので、仮想物体モデルの計算格子のひずみを解消するための変形を人手を介することなく自動で行うことができる。
【0007】
この発明の一つの形態では、形状モデルを近似曲線によって定義する構成をとる。この形態によると、解析対象となる構造物を定義する点列をスプライン等の曲線で結んで形状モデルを定義するので、点列で示される任意の形状に対して計算格子が生成できる。また構造物を定義する点の数が変化しても仮想物体モデルを定義しなおす必要がないので、任意の形状を簡便に定義できる。
【0008】
この発明の別の形態では、直交空間計算格子の大きさを流れ場の状態と形状モデルの大きさとによって決定し、直交空間計算格子の格子間を仮想的なばねで結合し、仮想物体モデルの境界上の仮想的なばねの剛性値を高く設定し、その他の仮想的なばねではそれより低く設定する構成をとる。この形態によると、形状モデルの境界で直交性の高い格子を得ることができ、その結果解析の精度が向上する。
【0009】
この発明のさらに別の形態では、仮想物体モデルを形状モデルの近似曲線に基づいて変形し、写像関係のヤコビアン(ヤコビアンについては後述する)が小さいか負の場合は、直交空間計算格子の仮想的なばねのひずみエネルギーを計算し、形状モデルの近似曲線上で仮想物体モデルの格子点を滑らせて仮想物体モデルを変形し、変形後のひずみエネルギーを再度計算する構成をとる。この形態によると、解析に不適当な計算格子が生成されるのを避けることができる。
【0010】
この発明のさらに別の形態では、仮想物体モデルの変形は勾配法、遺伝的アルゴリズム、進化的アルゴリズムのうちの一つもしくは複数を使用して実行される構成をとる。この形態によると、流体解析に必要な高品位の計算格子を生成することができる。
【0011】
さらにこの発明の別の形態では、仮想物体モデルの変形はヤコビアンが1に漸近してひずみエネルギーが最小値に収束したと判断されるまで繰り返して行われる。この形態によると、流体解析に必要な高品位な計算格子を自動的に生成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。本発明は、本発明に従って作成されたプログラムを汎用コンピュータ上で走らせることによって実施されることもできる。
【0013】
図1(a)は、本発明の格子生成方法を使用した数値解析を実行するコンピュータの機能ブロックを示す。形状データ入力部10は、設計者が人手で作成した、または最適化モジュール等により自動で作成された解析対象となる構造物の形状データを外部記憶装置(図示せず)から読み込む。形状データの例としては、流れ場に置かれた翼形状が挙げられる。形状データは、図1(b)に示すように構造物の外部形状を規定する点列で与えられる。以下の説明では、解析対象の構造物は一つとして扱われているが、複数の構造物が流れ場に置かれている場合も、形状データを複数与えることで対応できる。また、形状データは三次元であってもよい。
【0014】
形状モデル生成部11は、形状データ入力部10からデータを受け取り、点列から近似曲線を生成して図1(c)に示すような形状モデルを生成する。具体的には、形状モデル生成部11は、構造物の外形を規定する形状データである点列に基づいて、近似曲線により形状モデルを定義する。一例として、本実施形態においては、三次のB-Spline曲線で形状モデルを定義している。スプライン位置関数の使用により、形状モデル境界上の任意の点は、パラメータtの値により一意に決定される。なお、本実施形態では点列を二次元として表しているが、三次元であってもよく、その場合近似曲面を用いることになる。また、B-Spline曲線以外の近似曲線を使用してもよい。
【0015】
このスプライン位置関数は、仮想物体モデルの変形の際に使用される。例えば、最も単純な勾配法では、スプライン上に仮想物体上の格子点がn点ある場合には、(2n+1)回の仮変形を行い、そのデータを基に本変形を行う。その後本変形を行ったデータを基に、多目的最適化判断を行い格子の品位の判断を行う。
【0016】
仮想物体モデル生成部12は、形状データ入力部10から受け取ったデータに基づいて、まず、経験的に得られる大きさの計算格子を解析対象の流れ場に設定する。続いて、妥当な解析結果が得られるように経験値から計算格子内での仮想物体モデルの位置を決定する。さらに、計算格子の一部を使用して仮想物体モデルを設定し、仮想物体モデルの物性を与える。これについては後に図3を参照して説明する。この例では、計算格子は、格子点間を伸縮ばね要素のみで結合した直交配列構造になっている。
【0017】
図2(a)は仮想物体モデル生成部12で実行される仮想物体モデル生成のフローチャートである。形状データは、仮想物体モデル生成部12に送られ、まず図2(b)に示すような流れ場に設定する計算格子の大きさを決定するのに用いられる(21)。計算格子の大きさは、形状データの大きさおよび流れ場の状態等の計算条件を考慮して経験的に決定される。計算格子の大きさは、原点において直交する座標軸ξ、ηと、それぞれの座標軸における最大値IMAX、JMAXを設定して定義される。計算格子は、例えば図3に示すような二次元直交空間上での格子であり、各格子点間は仮想的な伸縮ばねで結合されている。
【0018】
続いて、仮想物体モデル生成部12は、図2(c)に示すように計算格子における仮想物体モデルの位置を決定する(21)。図1の(d)は、計算格子に配置された仮想物体モデルの一例を示す。図1(d)中には一つの仮想物体モデルのみが示されているが、流れ場に配置される構造物の数に応じて、仮想物体モデルは複数であっても良い。仮想物体モデルは、計算座標形に対応しているため、直交のような単純な形状が望ましい。
【0019】
ここで、計算格子は仮想物体モデルだけに設定されるのではなく、適切な計算結果を得るために必要と予想される計算空間全体、つまり解析対象である形状モデルを含んだ流れ場にも設定されることに注意するべきである。これによって、流れ場と構造物とを区別することなく、解析場全体の計算格子を一度に設定することができる。後述するように、流れ場の計算格子は仮想物体モデルの変形に対して仮想物体モデルの境界と結びついて自動的に調整される。これは例えば流体と構造物の相互連成問題を解く場合、大きな利点となる。なぜなら、流れ場の計算格子は、流れ場において刻々と変動する構造物の境界に追従するように短時間で効率よく生成される必要があるからである。
【0020】
形状データが三次元点列で定義されている場合は、計算空間上の格子は三次元配列になり、各格子点間は仮想的な伸縮ばねまたは体積ばね(以下、仮想ばねと呼ぶ)で結合される。
【0021】
後述するように、多目的最適化判断部15で仮想物体モデルが最適化されていないと判断された場合は、仮想物体モデル生成部のステップ21に戻って(22)計算格子の大きさおよび仮想物体モデルの位置の決定からやり直す場合もある。
【0022】
次に、物体の位置が計算座標(ξ,η)上で適当か否かを判断する(23)。図2のステップ22で示したように、多目的最適化判断部15で格子生成に失敗した場合は、その失敗した位置を記憶して、それ以外の位置で試みる。仮想物体モデルの位置が適当であればステップ24に進む。適当でなければステップ21に戻り、適当な位置が得られるまで仮想物体モデルの位置を変えて判断を繰り返す。
【0023】
続いて、仮想物体モデルに物性が与えられる(24)。物性は、計算格子点間を結合する仮想ばねのばね定数として与えられる。ばね定数は計算格子全体に渡って一様としてもよいが、本実施形態においては、仮想物体モデルの境界周辺の仮想ばねの剛性を他の仮想ばねよりも高い値に設定している。これにより、仮想物体モデルの境界で計算格子の直交性を上げることができ、解析の精度向上に貢献する。また、ばね係数を解析する対象や計算条件に応じて適当な値に設定することにより、計算格子の形状をある程度制御することができる。
【0024】
図1を参照して、仮想物体モデル変形部13は、形状モデル生成部11および仮想物体モデル生成部12でそれぞれ生成された形状モデルおよび仮想物体モデルを受け取り、形状モデルに合うように仮想物体モデルを変形させる。
【0025】
まず仮想物体モデルを形成する格子点の数で、形状モデルを形成する近似曲線を分割する。続いて仮想物体モデルの格子点の、近似曲線の分割点上への写像点を計算し、仮想物体モデルを形状モデル上に写像することにより仮想物体モデルを変形する。形状モデルを定義する点列と仮想物体モデルの格子点とを一対一で対応させるのではなく、スプライン位置関数に基づいて仮想物体モデルを写像するため、形状データを規定する点列に制限はなく、また、たとえ形状データ入力部の規定する点列の数が変わっても仮想物体モデルを定義し直す必要はなくなる。
【0026】
仮想物体モデル変形後の全計算格子点の変位は、仮想物体モデルの格子点を形状モデル上に変位させたときの、仮想ばねで結ばれた格子点の変位と反力の関係を有限要素法の考え方に沿って解くことで得ることができる。以下これを図3を用いて説明する。
【0027】
図3において、格子点は横軸にIMAX個、縦軸にJMAX個ずつ配置されており、総数がn個あるとする(つまり、IMAX x JMAX = n)。また各格子点には順に番号1,2,…,nが与えられている。各格子点の変形後と変形前のx、y方向の差をdx、dyと、格子点iにかかる力のx成分をfi、y成分をgiと表すことにする。
【0028】
ここで、一つの仮想ばねで連結されている二つの格子点に着目し、格子点の番号をそれぞれi,jとする。仮想ばねのばね定数をkij、仮想ばねのx軸となす角度をθijと表すと、x、y方向の力の釣り合いから、格子点i,jに関して以下の関係が導かれる。ただし、c≡cosθij、s≡sinθijと略記する。
【数1】
ここで、左辺のうち第一の括弧内を剛性マトリックス、第二の括弧内を変位マトリックス、右辺を力マトリックスという。剛性マトリックスはばね定数および角度が既知であるので計算することができる。この力の釣り合い関係を計算格子内の全ての格子点について適用し、それらを足し合わせることで、計算格子全体の力の釣り合いをあらわすことができ、それは以下のようになる。ただし、計算格子全体の剛性マトリックスを[K]と表す。
【数2】
【0029】
以下、簡単のために、変位dx1,dy1,dx2,dy2,…,dxn,dynをdl1,dl2,…,dl2n、力f1,g1,f2,g2,…,fn,gnをfl1,fl2,…,fl2nとそれぞれ置き換えると、以下のようになる。
【数3】
【0030】
図3において、変位させた格子点(すなわち変形後の仮想物体モデル上の格子点)と元から固定されている格子点が全部でm個あるとする。変位させた格子点、および固定されている格子点は変位が既知、反力が未知であるので、以下のようになる。
【数4】
ここで、「’」は式の固定点と自由点を並べ替えたものを示す。またK’1、K’2、K’3、K’4は部分マトリックスであり、それぞれ2m行2m列、2m行(2n-2m)列、(2n-2m)行2m列、(2n-2m)行(2n-2m)列のマトリックスである。
【0031】
前述したように、m個の格子点の変位が既知であるとすると、変位はx方向、y方向それぞれあるから、変位マトリックスのうち上から2m個の要素が既知である(つまり拘束されている)ことになる。拘束されている格子点をまとめてdl’fix、拘束されていない格子点の変位をdl’freeとし、それぞれに対応する力をfl’cal、fl’0と表すと、数4は簡単に以下のように表すことができる。
【数5】
【0032】
数5を展開すると、以下の式が得られる。ただしK’1、K’2を含む式は本発明の格子生成方法には無関係なので省略する。
【数6】
dl’freeは拘束されていないのだから、格子点に力は働かず、対応する力fl’0は{0}となる。数6をdl’freeについて解くと、以下のようになる。
【数7】
上式より、仮想物体モデルの格子点の変位{dl’fix}を与えると全格子点の変位が求められるので、変形後の全格子点の位置を求めることができる。なお三次元格子の場合は、直交する空間座標軸xyzに対して各格子点iの変位をそれぞれdxi、dyi、dzi、格子点にかかる力をそれぞれfi、gi、hiで表せば、上述したのと同様の手法で格子点の位置を求めることができる。
【0033】
再び図1を参照して、仮想物体モデル変形制御部14は、まず変形された仮想物体モデルのヤコビアンを計算する。ここで、ヤコビアンについて説明する。一般的に、計算座標(ξ,η)と物理座標(x,y)における関係は、次の式で表される。
【数8】
【0034】
また逆に、以下の関係も成り立つ。
【数9】
【0035】
従って、計算座標と物理座標の相互で物理量が変換されるなら以下の式が成り立つ必要がある。
【数10】
ここで、J及び1/Jをヤコビアンと言い、J=xξyη-xηyξである。数値計算上ヤコビアンJが1に近いほど変換の精度が高いとされ、極端に大きかったり小さかったりすると変換の精度が落ちる。さらに、ヤコビアンJが負になると、物理座標はいわゆる裏返った状態となり、座標変換できない。従って、数値計算においてヤコビアンは重要なパラメータである。
【0036】
仮想物体モデルが変形されると、図1(e)に示すように、計算格子の形状が大きくひずむことがある。そこで、仮想物体モデル変形制御部14は、仮想物体モデルと形状モデルとの写像関係において、先に計算したヤコビアンが適当か否かを判断する。ヤコビアンが1に近ければ、計算格子のひずみが少なく解析に適切な計算格子形状を持つ仮想物体モデルが得られたと判断される。ヤコビアンが負である場合、または正であっても1に近くない場合は、得られた仮想物体モデルは解析に適切でないと判断され、より適切な仮想物体モデルが得られるように、仮想物体モデルは多目的最適化判断部15に送られる。ある形状データについて初めて仮想物体モデル変形制御部14に送られてきた仮想物体モデルのヤコビアンは、通常は適切でないと判断されるので、仮想物体モデル変形部13で行われる初めの変形はデータ収集のための仮変形であり、後の多目的最適化判断部15を通しての変形が本変形と言うことができる。
【0037】
多目的最適化判断部15は、仮想物体モデルの格子点を形状モデルに沿わせて変形させるときの、計算格子を結合する仮想ばねのひずみエネルギーを算出し、最適化決定アルゴリズムによってひずみエネルギーが最小になるように変形を行う。まず、仮想物体モデル上の格子点を一個づつ順に形状モデルの近似曲線上をスライドさせ、そのときの計算格子全体のひずみエネルギーを計算する。仮想物体モデル上のすべての格子点をそれぞれスライドさせたときのひずみエネルギーを計算して十分な変形データが揃うと、ひずみエネルギーを最小化し、かつヤコビアンが1に漸近するように、勾配法を使用して多目的最適化方法で格子点のスライド位置を求める。多目的最適化方法とは、複数の目的関数(ここではひずみエネルギーとヤコビアン)をそのトレードオフを考慮して最適化することを指す。なお、最小値を求めることができるアルゴリズムであれば、勾配法の代わりに、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm :GA)、進化的アルゴリズム(Evolutional Strategy :ES)等の一つもしくは複数の混合アルゴリズムを用いることができる。
【0038】
図4は、多目的最適化判断部15の動作のフローチャートである。始めに、仮想物体モデル変形制御部14から送られてきた仮想物体モデルを基にして、仮想物体モデルの境界上の格子点の一つを、形状モデルの表面を滑らせて移動させる(41)。具体的には、形状モデルのB-Spline曲面上の点を、その点を表すパラメータtを適当な値だけ増減させ、その形状モデル上に仮想物体モデルを写像する。図5はその様子を模式的に示したものである。図5中、太線は形状モデルのB-Spline曲線、塗りつぶした点が仮想物体モデルの格子点である。仮想物体モデルの格子点AをB-Spline曲線上を滑らせるようにA’の位置にスライドさせる。変形後の全格子点の位置は、仮想物体モデル上の格子点の変位ベクトル{dl’fix}から数7によって計算される。
【0039】
次に、計算格子の仮想ばねのひずみエネルギーを計算する(42)。仮想ばね一本あたりのひずみエネルギーは次式で計算される。
【数11】
ただし、kは仮想ばねのばね係数、Δxは仮想ばねの収縮長さである。図6は計算格子の一実施例の一部を示す模式図である。図6中、61、62は仮想物体モデルの境界上の格子点、63、64は仮想物体モデルの境界外の格子点である。各格子点間を結ぶ6つの仮想ばねについてそれぞれひずみエネルギーを計算する。すべての格子点について同様の計算を行い、その総和が修正した仮想物体モデルのひずみエネルギーとなる。
【0040】
後に続くステップ44での最適化決定アルゴリズムを実行するために必要となる十分な変形データが蓄積されるまで、格子点のスライドとひずみエネルギーの計算とが繰り返される(43)。
【0041】
必要なデータが揃うと、適切な最適化決定アルゴリズム、例えば勾配法を使用して、修正後の仮想物体モデルのひずみエネルギーが最小となる最適なパラメータtを求め、この値に従って仮想物体モデルの本変形が行われる(44)。勾配法の代わりに、GAやES等のうち一つもしくは複数のアルゴリズムを使用してもよい。
【0042】
多目的最適化判断部15は前述したのと同様にして本変形された仮想物体モデルのヤコビアンを判断する。ヤコビアンが不適切なときは、多目的最適化判断部15は図4に示したプロセスで仮想物体モデルを修正し、仮想ばねのひずみエネルギーを最小化し、かつヤコビアンが1に漸近するように計算を繰り返す。
【0043】
多目的最適化判断部15は、計算格子の大きさあるいは計算格子における仮想物体モデルの位置が不適切であるため、最適化が実行できないと判断することもある。その場合は、図2のステップ22に戻り、仮想物体モデルの生成から格子生成をやり直す。
【0044】
こうしてエネルギーとヤコビアンを多目的関数として最適化されると、多目的最適化判断部15は数値解析に十分な品質の仮想物体モデルが得られたと判断し、格子生成は終了する。図1(f)は仮想物体モデル修正後の仮想物体モデルの一例を示しており、図1(e)と比較すると、計算格子のひずみがなくなっていることが分かる。
【0045】
修正された仮想物体モデルは格子データ出力部16に送られる。
【0046】
以上、本明細書中では二次元での格子生成方法を説明してきたが、形状モデル、スプライン位置関数、剛性マトリックス等の必要なデータおよび数式を三次元表現にすることで、本発明の方法により三次元の格子生成も実行可能であることは明らかである。また、本発明の方法は、本明細書中で例示した流れ場解析に限定されず、構造格子を生成する任意の数値解析に対して適用可能である。
【0047】
【発明の効果】
本発明の格子生成方法により、一つまたは複数の複雑な形状の構造物およびその廻りの流れ場の解析において、人手を介さず、自動で格子生成を行うことができる。また、格子形状を最適化することができ、それに伴って工数や計算時間の削減、および解析精度の向上が達成される。
【0048】
さらに、流れ場と構造物の両方に一度に格子を生成できるので、流体場と構造場等の同時連成解析が可能になり、工数や計算時間の削減、解析精度の向上が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の格子生成方法を利用した解析を行う一実施形態の図。(b)は形状データの点列の一例を示す図。 (c)は生成されたスプラインの一例を示す図。(d)は物理空間上での格子の一実施例を示す模式図。(e) はEMG法を使用して格子生成を行ったときの不適当な計算格子の一例を示す図。(f) は本発明の格子生成方法を使用して格子生成を行ったときの計算格子の一例を示す図。
【図2】(a)は仮想物体モデルの生成を示すフローチャート。(b)は計算格子の大きさの決定を示す図。(c)は仮想物体モデルの位置の決定を示す図。
【図3】計算座標上での格子の一実施例を示す模式図。
【図4】仮想物体モデルの修正を示すフローチャート。
【図5】仮想物体モデルの修正を、形状モデル上に格子点を滑らせて行う様子を示す模式図。
【図6】格子点間の仮想ばねによる結合の一例を示す模式図。
【符号の説明】
10 形状データ入力部
11 形状モデル生成部
12 仮想物体モデル生成部
13 仮想物体モデル変形部
14 仮想物体モデル変形制御部
15 多目的最適化判断部
16 格子データ出力部
Claims (6)
- 流れ場に置いた一つまたは複数の形状モデルの数値解析を行うために、コンピュータが、
メモリから形状データを受け取って形状モデルを生成するステップと、
前記形状データに基づいて解析対象の流れ場に直交空間計算格子を設定し、該直交空間計算格子の一部を用いて仮想物体モデルを生成するステップと、
該仮想物体モデルを前記形状モデルの境界上に合わせて変形させて格子を生成するステップと、を実行することにより前記形状モデルに対応する格子を生成する方法であって、
前記仮想物体モデルは、前記直交空間計算格子の格子点を前記形状モデルの境界上を滑らせて、前記直交空間計算格子間の仮想的なばねのひずみエネルギーおよび前記仮想物体モデルと前記形状モデルとの写像関係のヤコビアンを多目的関数として最適化するように変形される、格子生成方法。 - 前記形状モデルは近似曲線によって定義される請求項1に記載の格子生成方法。
- 前記直交空間計算格子の大きさは流れ場の状態と形状モデルの大きさとによって決定され、前記直交空間計算格子は格子点間が前記仮想的なばねで結合されており、前記仮想物体モデルの格子点の周辺の前記仮想的なばねは剛性値を高く設定し、その他の前記仮想的なばねではそれより低く設定する、請求項2に記載の格子生成方法。
- 前記仮想物体モデルが前記形状モデルの近似曲線に基づいて変形されるとき、前記ヤコビアンが小さいかまたは負の場合は、前記ひずみエネルギーを計算し、前記近似曲線上で前記仮想物体モデルの格子点を滑らせて前記仮想物体モデルを変形させ、該変形後の前記ひずみエネルギーを再度計算する、請求項3に記載の格子生成方法。
- 前記仮想物体モデルの変形は、勾配法、遺伝的アルゴリズム、進化的アルゴリズムのうちの一つもしくは複数を使用し実行される、請求項4に記載の格子生成方法。
- 前記仮想物体モデルの変形は、前記ヤコビアンが1に漸近して前記ひずみエネルギーが最小値に収束したと判断されるまで繰り返し行われる、請求項1または4に記載の格子生成方法。
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- 2001-04-23 JP JP2001124287A patent/JP4716273B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (2)
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