次に、添付図面を参照して本発明の電気光学装置の製造方法及び電気光学装置の実施形態について詳細に説明する。
[電気光学装置]
図1は本実施形態の製造方法における前段パネル構造を模式的に示す概略平面図であり、図2(a)は図1のA−A線に沿った断面構造を模式的に示す概略縦断面図、図2(b)は図1のB−B線に沿った断面構造を模式的に示す概略縦断面図である。なお、本明細書に添付する各図面においては、通常、図示及び説明の都合上、基板の厚さに対して各層や薄膜などの厚さ、スペーサの寸法などを大幅に強調して描いてあり、実際の寸法をそのまま表してはいない。また、図2(a)及び(b)は、前段パネル構造10の貼り合わせ前の状態の断面構造を模式的に示している。
この実施形態の前段パネル構造10は、第1前段基板11と第2前段基板12とがシール材13を介して貼り合わされたものである。第1前段基板11には複数の第1基板領域11Aが配列され、第2前段基板12には複数の第2基板領域12Aが配列され、第1基板領域11Aと第2基板領域12Aとは相互に対向配置される。また、第1前段基板11には第1周辺領域11Bが設けられ、第2前段基板12には第2周辺領域12Bが設けられる。第1周辺領域11Bと第2周辺領域12Bとは相互に対向配置される。ここで、第1基板領域11Aには、対向する第2基板領域12Aよりも外側へ張り出した基板張出領域11Tが設けられ、この基板張出領域11Tは、上記の第2周辺領域12Bに対向している。
そして、上記の第1基板領域11A、第2基板領域12A、及び、これらを貼り合わせるシール材13は電気光学装置のパネル構造を構成する。本実施形態では、前段パネル構造10の内部に複数のパネル構造となるべきパネル予定領域が配列されている。各パネル予定領域においては、第1基板領域11Aの内面上に第1電極パターン14が形成され、第2基板領域12Aの内面上にカラーフィルタ15及び第2電極パターン16が形成されている。なお、実際のパネル構造の詳細は後述するが、図1及び図2では詳細構造を大幅に省略して描いてある。
なお、上記の第1周辺領域11B及び第2周辺領域12Bは、第1前段基板11及び第2前段基板12の外縁部に設けられているが、図示例では、配列された複数のパネル予定領域間に存在する一部領域にも設けられている。このように、パネル予定領域間においても第1周辺領域11B及び第2周辺領域12Bを設けてもよく、或いはまた、第1周辺領域11B及び第2周辺領域12Bをパネル予定領域間には設けず、第1前段基板11及び第2前段基板12の外周部にのみ設けてもよい。
シール材13の内側には複数のスペーサ17が配置されている。このスペーサ17は、第1基板領域11Aと第2基板領域12Aとの基板間隔を規定するものである。このスペーサ17は、上記カラーフィルタ15とは異なる素材で形成されている。また、シール材13の外側には、第1周辺領域11Bと第2周辺領域12Bとの間、並びに、第1基板領域11Aの基板張出領域11Tと第2周辺領域12Bとの間に複数のスペーサ17’が配置されている。上記のスペーサ17及びスペーサ17’は、第1前段基板11の内面上に形成されている。
また、第2周辺領域12Bの内面上にはダミーパターン18が形成されている。このダミーパターン18は、上記のカラーフィルタ15を構成する複数の着色層のうちの少なくとも一層、或いは、上記のカラーフィルタ15を覆う保護膜(図示せず)と同じ材質で形成されている。製造工程においては、上記のダミーパターン18はカラーフィルタ15或いはその保護膜の形成と同時に形成される。ダミーパターン18は、前段パネル10の外縁部に沿って全周に亘って形成される。すなわち、複数のパネル予定領域の配列された範囲を全周に亘って取り巻くように構成されている。また、図示例においては、複数のパネル予定領域の間の一部領域にも形成されている。ただし、複数のパネル予定領域間においてはダミーパターン18とスペーサ17’を形成しなくてもよい。
前段パネル構造10において、第1周辺領域11Bの内面上に形成されたスペーサ17’と、第2周辺領域12Bの内面上に形成されたダミーパターン18とは相互に重ね合わされている。そして、このスペーサ17’とダミーパターン18との重ね合わせ構造によって第1周辺領域11Bと第2周辺領域12Bとの間の基板間隔が規定されている。
さらに、第1前段基板11には、第1基板領域11Aの一部において、第2前段基板12の周辺領域12Bと対向する基板張出領域11Tが設けられている。この基板張出領域11Tは、前段パネル構造10を分断することにより形成する電気光学装置のパネル構造において、他方の基板によって覆われていない張り出し部(後述する基板張出部110T)となる部分である。この基板張出領域11Tと周辺領域12Bとの間にも、上記と同様のスペーサ17’とダミーパターン18との重ね合わせ構造が配置されている。
次に、上記前段パネル構造10を後述する方法によって分断することにより形成される個々のパネル構造を有する電気光学装置100の内部構造について詳細に説明する。図6は電気光学装置100の表示領域(シール材の内側に形成される。)内の構造を拡大して模式的に示す拡大部分断面図、図7は電気光学装置100の全体構造を模式的に示す概略平面図である。
この電気光学装置100においては、第1基板110の内面上に配線112が形成され、この配線112は画素領域P毎に設けられた能動素子113に接続されている。図示例の場合には能動素子113はTFD(薄膜ダイオード)によって構成される。能動素子113はITO(インジウムスズ酸化物)や酸化亜鉛などの透明導電体で構成される画素電極114に導電接続されている。画素電極114は画素領域Pに対応した領域に設けられている。
なお、本実施形態においては、画素領域Pは縦横にマトリクス状に配列されている。また、画素領域P間には遮光領域Kが形成されている。そして、上記の画素電極114は画素領域Pの配列態様に整合してマトリクス状に構成されることにより、前述の電極パターン14を構成している。
第1基板110の内面上には透明樹脂などの絶縁材料で構成されたスペーサ(柱状スペーサ)17が形成されている。スペーサ17は基板間隔を規定するものであり、適宜に分散配置されていればよく、画素領域P毎に形成しなくてもよいが、図示例では画素領域P毎に設けられている。また、このスペーサ17は遮光領域Kの内部、具体的には、遮光領域K内に形成された上記配線112及び能動素子113の上にスペーサ17が形成されている。このスペーサ17は、基板上に感光材料、例えば感光性樹脂を所定の厚さになるように塗布し、その後、所定の露光マスクなどを用いることにより露光し、現像を行うフォトリソグラフィ法によって形成される。このような方法で形成されるスペーサ17は、単層構造を有するため、その高さに関する制御性が高く、上記のように基板間隔を規定するに充分な高さ精度を得ることができる。
ところで、上記のように単層構造のスペーサ17を形成する場合には、スペーサ17の高さを場所によって異なるものに形成することは難しい。本実施形態では、上記スペーサ17’についてもスペーサ17と同時に同じ材料にて同時に形成され、スペーサ17とスペーサ17’とは基本的に同様の高さを有するものとされる。なお、上記の構造の上にはポリイミド樹脂などで構成される配向膜117が形成されている。
一方、第2基板120の内面上には上記のカラーフィルタ15が形成されている。このカラーフィルタ15においては、複数の色相を呈する着色層15R,15G,15Bのいずれかが上記の画素領域P毎に形成されており、これらの複数色の着色層15R,15G,15Bが所定の配列パターンを構成するように配列されている。例えば、図9に示す例では、着色層15R,15G,15Bはいわゆるストライプ配列パターンにて配列されている。この着色層の配列パターンの他の例としては、デルタ配列、斜めモザイク配列、ペンタイル配列などの種々の配列パターンが挙げられる。
上記の遮光領域Kには遮光層15Kが形成されている。この遮光層15Kは、本実施形態の場合には上記の着色層15R,15G,15Bのうち、複数色の着色層を積層することによって構成される。図示例の場合、3色の着色層の全てを積層することによって遮光層15Kが構成されている。また、上記の着色層15R,15G,15B及び遮光層15Kの上には、アクリル樹脂などの透明材料で構成された保護膜15Pが形成されている。この保護膜15Pは、上記カラーフィルタ15及び遮光層15Kを形成することによって生ずる段差を平坦化するとともに、着色層15R,15G,15Bに対して外部からの汚染物質の進入を抑制し、着色材料の劣化を防止するために設けられている。
保護膜15Pの上にはITOなどの透明導電体で構成された対向電極122が形成されている。本実施形態の場合には、図9にも示すように、複数の帯状の対向電極122が相互にストライプ状に配列されている。この複数の対向電極122の形成パターンは上記の電極パターン16を構成する。それぞれの対向電極122は、上記第1基板110上の配線112と直交する方向に伸びるように構成されている。なお、本実施形態では画素領域P毎にダイオード素子(2端子非線形素子)を形成していることから、複数の対向電極122を設けているが、例えば、画素領域P毎にトランジスタ素子(3端子非線形素子)を形成する場合には、単一の対向電極構造若しくは共通の電位が供給される対向電極構造を設ければよい。
上記対向電極122の上にはポリイミド樹脂などで構成される配向膜123が形成される。この配向膜123は、上記の配向膜117と同様のものであり、本実施形態の電気光学物質である液晶に初期配向状態を付与するためのものである。
電気光学装置100において、第1基板110は上記の前段パネル構造10の第1前段基板11を分断することによって分離された第1基板領域11Aによって構成され、第2基板120は上記の前段パネル構造10の第2前段基板12を分断することによって分離された第2基板領域12Aによって構成される。そして、第1基板110と第2基板120との間には電気光学物質である液晶層130が配置される。この液晶層130としては、例えば、TN(捩れネマチック)モード若しくはSTN(超捩れネマチック)モードの液晶層を用いることができる。なお、図6では、第1基板110の外面上に偏光板131及び位相差板132を配置し、第2基板120の外面上に偏光板133及び位相差板134を配置した例を示してある。
図7に示すように、第1基板110上の配線112はそのまま表示領域Gから外側へ伸びてシール材13の外側へ導出され、上記の基板張出領域11Tに相当する基板張出部110Tの表面上に引き出されている。また、第2基板120上の対向電極122は表示領域Gから外側へ伸びて上下導通部を介して第1基板110上の配線118に導電接続され、基板張出部110T上に引き出されている。なお、対向電極122と配線118とを導電接続させる上下導通部として、図示例の場合、シール材13を用いている。この場合には、シール材13の内部に微細な導電性スペーサを多数混入し、分散配置させることによって異方性導電材を構成する。ここで、シール材13の一部のみを異方性導電材となるように構成してもよく、シール材13の全てを異方性導電材として形成してもよい。また、シール材13を用いずに、シール材13とは別に上下導通部を設けてもよい。
上記の基板張出部110Tの表面上には、上記配線112及び118に導電接続される態様で、駆動回路(半導体集積回路)141,142,143が実装されている。また、基板張出部110Tの端部には、上記駆動回路141,142,143に導電接続された複数の入力端子144が配列されている。
図10は上記能動素子113の詳細構造を示す斜視図である。図10に示すように、能動素子(TFD素子)113は第1TFD要素113aと第2TFD要素113bとを直列に接続することによって形成されている。この能動素子113は、例えば、次のように形成される。まず、基板110上にはTa2O5等で構成された密着性改善及び汚染防止用の下地層110aが形成される。次に、この下地層110aの上に、スパッタリング法やフォトリソグラフィ技術等を用いて、金属Ta(タルタル)やTaW等によって構成される配線112の第1金属層112A及び能動素子113の第1金属層113Aを形成する。次に、これら第1金属層112A、113Aの表面を陽極酸化処理等よって酸化して、Ta2O5等で構成される配線112の絶縁膜112B及び能動素子113の絶縁膜113Bを形成する。次に、これら絶縁膜112B及び113B上にCr(クロム)等を積層することによって配線112の第2金属層112C及び能動素子113の第2金属層113C、113Dを形成する。
ここで、第1金属層112A、絶縁膜112B及び第2金属層112Cによって配線112が構成される。また、第1金属層113A、絶縁膜113B及び第2金属層113Cによって第1TFD要素113aが構成され、第1金属層113A、絶縁膜113B及び第2金属層113Dによって第2TFD要素113bが構成される。そして、第1TFD要素113aの第2金属層113Cは配線112の第2金属層112Cから延びている。また、第2TFD要素113bの第2金属層113Dはその先端が画素電極114に重なるように形成され、導電接続されている。
上記能動素子113により配線112から画素電極114に流れる電流は、第1TFD要素113aでは、第2金属層113C、絶縁膜113B、第1金属層113Aの順に進み、第2TFD要素113bでは、第1金属層113A、絶縁膜113B、第2金属層113Dの順に進む。つまり、能動素子113においては、電気的に逆向きの一対のTFD要素が互いに直列に接続されている。このような構造は、一般に、バック・ツー・バック(Back-to-Back)構造と呼ばれており、この構造のTFD素子は、TFD素子を1個のTFD要素だけによって構成する場合に比べて安定した特性を得られることが知られている。
次に、図14を参照して、上記実施形態の電気光学装置の製造方法の概略工程について説明する。図14は上記実施形態の製造工程図である。この電気光学装置100を製造するにあたっては、図14に示す能動素子形成ステップP11からシール材配置ステップP16までを含む第1前段基板形成工程と、カラーフィルタ形成ステップP21からラビング処理ステップP24までを含む第2前段基板形成工程とが別々に行われる。なお、本実施形態では、複数の電気光学装置に対応するパネル予定領域を含む前段基板を用いて上記の基板形成工程それぞれ実施し、一対の前段基板を貼り合わせて前段パネル構造を形成した後に適宜分割して個々のパネル構造を有する複数の電気光学装置を構成する。ただし、単一のパネル予定領域を設けた基板同士を貼り合わせた後にその周囲の少なくとも一部に配置された周辺領域を除去する態様で単一の液晶表示装置を製造してもよい。
まず、第1前段基板形成工程では、能動素子形成ステップP11において成膜工程、フォトエッチング工程、陽極酸化工程など周知の方法で配線112、118及び能動素子113を形成する。その後、画素電極形成ステップP12において、スパッタリング法などを用いてITO(インジウムスズ酸化物)の薄膜を成膜し、パターニングを行うことによって画素電極114を形成する。
次に、スペーサ形成ステップP13において、感光剤を含むアクリル樹脂などの感光性樹脂を塗布し、露光、現像を順次行うことにより、スペーサ17,17’を形成する。その後、配向膜形成ステップP14において配向膜117を形成し、ラビング処理ステップP15において配向膜117に対してラビング処理を施した後、シール材配置ステップP16においてディスペンサーやスクリーン印刷等により、シール材13の一部に開口部を設けた態様で、表示領域Gとなるべき領域を取り巻くようにシール材13を配置する。以上の工程によって上記の第1前段基板11が形成される。
一方、第2前段基板形成工程では、まず、カラーフィルタ形成ステップP21において、フォトリソグラフィ法などを用いてカラーフィルタ15を形成する。着色層15R、15G、15Bは、アクリル樹脂などの透明樹脂基材中に染料や顔料などの着色材を分散させた着色材料を用いて形成する。好ましくは感光剤を添加した着色材料を塗布し、露光、現像することによってそれぞれの着色層を形成する。この工程は、複数種類の着色層ごとに繰り返し行われる。この複数の着色層を形成するステップP21において上記の遮光層15Kが同時に形成される。また、ダミーパターン18を着色層で構成する場合には、このダミーパターン18がこのステップP21において同時に形成される。
次に、対向電極形成ステップP22において対向電極122を形成する。この対向電極122は、スパッタリング法でITO(インジウムスズ酸化物)の薄膜を成膜し、これをエッチングなどによりパターニングすることにより形成される。次に、配向膜形成ステップP23においてポリイミド樹脂の塗布及び焼成などによって配向膜123を形成する。次に、ラビング処理ステップP24において配向膜123に対してラビング処理を施す。以上の工程によって上記の第2前段基板12が形成される。
次に、基板貼合ステップP31において第1前段基板11と第2前段基板12とを位置合せした状態でシール材13を介して貼り合せ、シール材硬化ステップP32において第1前段基板11と第2前段基板12とを圧着した状態で、シール材13の硬化特性に応じて光照射処理や加熱処理などを施すことによりシール材13を硬化させる。これによって上記の前段パネル構造10が形成される。
次に、パネル分断ステップP33において、必要に応じて前段パネル構造10をスクライブ・ブレイク法やレーザブレイク法などにより基板を分断し、シール材13の開口部(液晶注入口)が端面に開口した状態とする。通常、前段パネル構造を短冊状に分割することによって、複数のパネル予定領域のシール材の開口部が端面に沿って一列に配列された短冊パネル構造が形成される。そして、液晶注入ステップP34においてシール材13の上記開口部からその内側に液晶を注入し、その後、液晶封止ステップP35においてシール材13の開口部に封止材を塗布し、硬化させることにより液晶を封入する。このようにして液晶が封入されることにより上記の液晶層130が形成される。
その後、パネル分断ステップP36において、必要に応じて個々のパネル構造に分割する。そして、実装ステップP37において、分割されたパネル構造の第1基板110に駆動回路141、142、143を実装する。このステップにおいて、電気光学装置100の入力端子144に可撓性基板などを異方性導電材により接続してもよい。以上の工程により、電気光学装置100が完成される。
なお、上記実施形態では、フォトリソグラフィ技術を用いてスペーサを形成しているが、本発明のスペーサの形成方法は上記の方法に限定されるものではない。例えば、スペーサを一つ一つ基板上の既定の位置に配置していく方法でも、上記各実施形態のようなスペーサ配列を実現できる。より具体的なスペーサの形成方法としては、スペーサを所定の溶媒中に均一に分散させたスペーサ分散溶液をインクジェット方式によって基板上に吐出するといった方法が挙げられる。この方法では、スペーサ分散溶液の液滴を基板上の既定位置に正確に着弾させることができ、当該液滴から溶媒を揮発させることによって基板上の上記既定位置にスペーサが配置されることになる。このとき、基板上の所定位置に凹部を設け、この凹部に上記液滴を着弾させることで、スペーサの位置精度を高めることができる。また、スペーサの表面に熱可塑性樹脂をコーティングしておくことにより、基板上でスペーサを加熱して熱可塑性樹脂を溶融させる工程を設けることで、スペーサを基板上に固定することができる。
次に、図3、図4及び図5を参照して、スペーサ17’及びダミーパターン18について詳細に説明する。本実施形態の前段パネル構造10では、シール材13の内側においてスペーサ17を用いて基板間隔を規定している。一方、シール材13の外側では、スペーサ17’とダミーパターン18とを重ね合わせてなる重ね合わせ構造によって基板間隔を規定している。ただし、シール材13の内側においてスペーサ17が規定すべき間隔は、配向膜117,123、カラーフィルタ15、遮光層15K、能動素子113などが重なるように形成されるため、シール材13の外側においてスペーサ17’及びダミーパターン18が規定すべき間隔よりも通常は小さい。本実施形態においては、スペーサ17とスペーサ17’とを同じ高さ寸法を有するものとしているので、上記の規定すべき間隔の差を上記のダミーパターン18が補うように構成してある。
本実施形態では、ダミーパターン18は、カラーフィルタ15を構成する着色層によって構成されている。具体的には、カラーフィルタ15を構成する着色層15Rと同じ素材で形成されたダミー層18Aと、着色層15Gと同じ素材で構成されたダミー層18Bと、着色層15Bと同じ素材で構成されたダミー層18Cとを積層した積層構造でダミーパターン18が構成されている。ここで、ダミーパターン18は、それぞれ対応する着色層と同時に各ダミー層を形成することで、カラーフィルタ15と同時に形成される。
本実施形態において、ダミーパターン18は遮光層15Kの幅よりも大きな幅を有し、結果として遮光層15Kよりも厚く形成される。これは、複数の層を積層して積層構造を構成する場合には、当該積層構造の幅が小さくなるほど、その各層の厚さに較べて充分に広い面積に各層を形成した場合の合計の厚さよりも積層構造の厚さが小さくなる傾向が見られるためである。一般に、画素領域Pの間に形成される遮光層15Kが5〜15μm程度の幅を有するのに対して、ダミーパターン18は遮光層15Kの幅の10倍以上の幅を有するように構成することができる。したがって、ダミーパターン18の厚さを遮光層15Kよりも厚く形成することができる。また、より幅の広い積層構造を有するダミーパターン18は本来の各層の厚さの合計にほぼ等しい厚さを有するため、その厚さをより正確に設定することができるという利点もある。このようにダミーパターン18の厚さを充分に確保することができるため、スペーサ17’とダミーパターン18とを重ね合わせることで、シール材13の外側における基板間隔を、シール材13の内側における基板間隔と同様に規定することができる。
この場合、シール材13の内外で基板間隔を等しく規定するために、ダミーパターン18の厚さを調整する必要が生じたときには、ダミーパターン18の各ダミー層の数を増減させてその厚さを変化させることができる。また、カラーフィルタ15を覆う保護膜15Pと同じ素材で同時に形成されるダミー層を単独で、或いは、上記着色層と積層して用いることもでき、これによってダミーパターン18の厚さの調整範囲をさらに広げることができる。もちろん、上記着色層若しくは保護膜と、これら以外の他の層とを積層することもできる。いずれの場合でも、上記の着色層や保護膜は1〜2μm程度の厚さを有するので、スペーサ17’の高さの不足を補うための構成要素としては、電気光学装置100の構成要素のうち最も好ましいものである。
図3に示す例では、上記のスペーサ17’とダミーパターン18との重ねあわせ構造を、第1周辺領域11Bと第2周辺領域12Bとが対向配置される部分に配置しているが、図3に二点鎖線で示すように、シール材13の外側にある第1基板領域11Aと第2基板領域12Aとが対向配置される部分において、上記のスペーサ17’とダミーパターン18との重ねあわせ構造を配置してもよい。ただし、この場合には、図7のIIに示すように、第1周辺領域11B及び第2周辺領域12Bを除去した後にも電気光学装置100の外縁部(シール材13の外側)に上記の重ね合わせ構造が残存することになる。
なお、図7においては、シール材の内側にあるスペーサ17、並びに、上記のIIに示すスペーサ17’及びダミーパターン18は、一部範囲のみに示してあり、実際にはスペーサ17はシール材の内側に均一に分散配置され、スペーサ17’及びダミーパターン18はシール材の外側に均一に配列されている。また、図示のスペーサ17,17’の形成間隔は単に図示の都合上で設定されているものであり、実際のスペーサの形成ピッチを表すものではない。
本実施形態では、上記のようにシール材13の外側における基板間に上記のスペーサ17’とダミーパターン18との重ねあわせ構造を配置したことにより、シール材13の外側の基板間隔を規定し、当該基板間隔がシール材13の内側の基板間隔よりも小さくなることを防止することができる。したがって、基板の貼り合わせ時において、シール材13の外側の基板間隔が減少することによりシール材13を支点として基板が変形し、その結果、シール材13の内側の基板間隔が増大して、表示領域G内における基板間隔のばらつきを生ずるといったことを防止できる。
この電気光学装置100では、図7に示すように、第1基板110が第2基板120の外形よりも外側に張り出した基板張出部110Tが設けられている。この基板張出部110Tは、第2基板120によって覆われずに露出した上記の張り出し部を構成する。そして、この基板張出部110Tを形成するために、上記前段パネル構造10から電気光学装置100を形成する過程においては、図4に示すように、上記基板張出部110Tとなるべき基板張出領域11T上に対向配置されている第2周辺領域12Bを分離させる必要がある。
本実施形態においては、図4に示す基板張出領域11Tと、これに対向する第2周辺領域12Bとの間にも、上記と同様のスペーサ17’と、ダミーパターン18との重ね合わせ構造を配置している。この重ね合わせ構造は、図7のIIIに示すように、基板張出部110T上の配線112や118を避けた範囲に形成されている。これは、基板張出領域11Tと対向する第2周辺領域12Bを除去する際に、スペーサ17’が剥離してこれらの配線112,118に影響を与えるといった事態を発生させないためである。通常は、第2周辺領域12Bを除去したとき、スペーサ17’は第2周辺領域12Bに形成されていたダミーパターン18と分離して基板張出部110T上に残存する。
図5は、前段パネル構造におけるパネル予定領域間に配置された第1周辺領域11B及び第2周辺領域12Bの構成を示すものである。このパネル予定領域間の周辺領域においても、基本的に上記と同様にダミーパターン18とスペーサ17’との重ね合わせ構造が設けられている。
図8は、本実施形態の製造方法にて上記のように構成した図7に示す電気光学装置100について、図7に示すX点からY点までの19箇所において基板間隔(セル厚)を測定した結果を示すものである。このグラフにおいて、3つの実線は本実施形態の3つの構成例の各測定データを示し、2つの破線はシール材13の内側範囲にのみスペーサを形成してなる2つの従来例の各測定データを示している。
図8に示すグラフをみると、本実施形態においては、表示領域G内のセル厚の均一性が高く、表示領域Gの外側においてもセル厚がほとんど変化していないのに対して、従来例では、表示領域Gの外周部のセル厚が中央部に較べて大きくなっており、また、表示領域Gの外側において最もセル厚が大きいピーク位置があり、そのピーク位置のさらに外側において急激にセル厚が減少していることがわかる。このグラフは、シール材の外側の基板間隔が小さくなっているためにシール材を支点としてシール材の内側の基板間隔が増大していることを示しているものと考えられる。
図11は、上記実施形態と異なる実施形態のダミーパターン18とスペーサ17’との重ね合わせ構造を示す拡大部分断面図である。この実施形態では、周辺領域に配置される重ね合わせ構造の厚さ、すなわちダミーパターン18とスペーサ17’とを合わせた厚さが前段パネル構造の基板間隔よりもやや小さくなるように構成されている。そして、前段パネル構造において、重ね合わせ構造のダミーパターン18とスペーサ17’との間に間隙が形成されるようにしている。このように、重ね合わせ構造の厚さが基板間隔よりも多少小さくても、基板貼り合わせ時において基板同士を圧着させたときには、ダミーパターン18とスペーサ17’とが基板同士を支持するように構成することができるので、上記と同様の効果を奏することが可能になる。ここで、図示例ではダミーパターン18が基板12上に配置され、スペーサ17’が基板11上に配置されていて、ダミーパターン18とスペーサ17’との間に間隙が形成される場合を示しているが、これに限らず、ダミーパターン18及びスペーサ17’とを基板11と12のいずれか一方の基板に積層させることにより上記重ね合わせ構造を一方の基板上にのみ配置し、この重ね合わせ構造と他方の基板との間に間隙が形成されるようにしても構わない。
図12(a)は上記実施形態の一部を変形した他の構成例の電気光学装置100’の構成要素である第1基板110’の構造を示す部分平面図、図12(b)は第1基板110’の部分断面図である。ここで、図示しない部分については上記実施形態と同様であり、また、図中においても同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
この構成例においては、第1基板110’の配線112と能動素子113の上にアクリル樹脂などの透明材料で絶縁膜116を形成し、この絶縁膜116の上に画素電極114を形成している。画素電極114と能動素子113との電気的接続は、絶縁膜116に形成したコンタクトホール116aを通して行われている。また、スペーサ17もまた、絶縁膜116の上に形成されている。この絶縁膜116は、通常、1〜3μm程度、好ましくは2μm程度の厚さに形成される。
上記の絶縁膜116を形成することによって、配線112と画素電極114との間に生ずる寄生容量による影響を抑制することができるので、表示品位の向上を図ることができる。また、この絶縁膜116は透明材料で構成されているため、電気光学装置100’を透過型、反射型、半透過反射型のいずれの表示装置として構成する場合にも用いることが可能である。
図13は、上記電気光学装置100’の製造工程における前段パネル構造の一部を示す拡大断面図である。この構成例では、上記絶縁膜116が存在していることにより、表示領域内においてスペーサ17が規定する間隔と、シール材13の外側にてスペーサ17’及びダミーパターン18が規定する間隔との差が上記実施形態よりも大幅に大きくなる。そこで、この構成例では、図13に示すように、前段パネル構造において、ダミーパターン18’を、カラーフィルタ15を構成する複数の着色層と同時に同材質で形成される複数のダミー層18A,18B,18Cの積層構造に、さらにカラーフィルタ15を覆う保護膜15Pと同時に同材質で形成されるダミー層18Dを積層させている。このようにすると、ダミーパターン18’の厚さを上記実施形態よりもさらに厚く形成することができるので、絶縁膜116を形成したことによって増大したシール材13の外側の基板間隔をスペーサ17’とダミーパターン18’により規定することが可能になる。
なお、この構成例においては、図13に二点鎖線で示すように、上記絶縁層116と同時に同材質で形成されるダミーパターン19を第1前段基板11上に形成し、このダミーパターン19の上にスペーサ17’を形成することで、ダミーパターン18’が要求される厚さを低減することができる。図示例では、ダミーパターン18’において保護膜15Pに対応するダミー層18Dを形成する必要性をなくしている。このように、スペーサ17’と重ねあわされる着色層や保護膜に加えてさらに別の層を積層して上記重ね合わせ構造を構成することにより、シール材の外側や周辺領域における基板間隔が大きい場合でも、確実に支持することが可能になる。
以上説明した本実施形態では、製造工程においてシール材13の外側、特に最終的に除去される周辺領域においてスペーサ17’とダミーパターン18との重ね合わせ構造によって基板間隔が規定されるので、基板貼り合わせ時において前段パネル構造10の外周部の基板間隔の減少を抑制することができ、これによって表示領域G内の基板間隔のばらつきを防止することができる。
特に、スペーサ17’と重ねあわされるダミーパターン18にはカラーフィルタ15を構成する複数の着色層15R,15G,15Bのうちの少なくとも一層、若しくは、カラーフィルタ15を覆う保護膜15P、或いは、これらを積層させた積層構造を用いているため、製造工程を何等変えることなく、充分な厚さのダミーパターン18を形成することができる。したがって、パネル外周部の基板間隔を容易かつ確実に表示領域Gと同様の基板間隔に規定することができる。
[電子機器]
最後に、図15及び図16を参照して、上記実施形態の電気光学装置100を用いた電子機器の構成について説明する。
図15は本実施形態の表示系の構成を示す概略構成図である。ここに示す電子機器は、上記と同様の電気光学装置100と、この電気光学装置100を制御するための制御手段190とを有する。電気光学装置100には、上記のように構成されたパネル構造100Pと、このパネル構造100Pを電気的に駆動する駆動部100Dが設けられている。この駆動部100Dは上記の基板張出部110Tに実装された駆動回路141,142,143で構成される。ただし、駆動部100Dは、基板張出部110Tに実装されたフレキシブル基板などの配線基板上において構成されていてもよく、また、電気光学装置100とは別に構成されていてもよい。駆動部100Dは、走査線駆動回路、データ線駆動回路及び検査回路を含む。
制御手段190は、駆動部100Dに制御信号や電力を供給するものであり、表示情報出力源191と、表示処理回路192と、電源回路193と、タイミングジェネレータ194とを有する。
表示情報出力源191は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等からなるメモリと、磁気記録ディスクや光記録ディスク等からなるストレージユニットと、デジタル画像信号を同調出力する同調回路とを備え、タイミングジェネレータ194によって生成された各種のクロック信号に基づいて、所定フォーマットの画像信号等の形で表示情報を表示情報処理回路192に供給するように構成されている。
表示処理回路192は、シリアル−パラレル変換回路、増幅・反復回路、ローテーション回路、ガンマ補正回路、クランプ回路等の周知の各種回路を備え、入力した表示情報の処理を実行して、その画像情報をクロック信号CLKとともに上記駆動部100Dへ供給する。また、電源回路193は、上述の各構成要素にそれぞれ所定の電圧を供給する。
図16は、本発明に係る電子機器の一実施形態である携帯電話1000を示す。この携帯電話1000は、ケース体の内部に回路基板1100が配置され、この回路基板1100に対して上述の電気光学装置100が実装されている。ケース体の操作部1001の前面には操作ボタンが配列され、また、電気光学装置100の画面100Aが配置された表示部1002の一端部からアンテナが出没自在に取り付けられている。操作部1001の端部にはマイクが内蔵され、また、表示部1002の端部にはスピーカが内蔵されている。
尚、本発明の電気光学装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、製造工程において一対の前段基板のうちの少なくとも一方に固定された柱状スペーサを設けているが、上記重ね合わせ構造に含まれるスペーサとしては、基板とは分離された粒状スペーサでもよい。また、着色層若しくは保護膜と、柱状スペーサとの重ね合わせ構造としては、着色層若しくは保護膜と、柱状スペーサとがいずれも一方の基板上に配置されていてもよい。
また、上記実施形態では能動素子としてTFD素子を用いているが、TFD素子の代わりにTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)などの他の能動素子を用いることもできる。さらに、上記実施形態はアクティブマトリクス型であるが、パッシブマトリックス型の表示装置とすることもできる。
また、上記実施形態では液晶表示装置を構成する例について説明しているが、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、プラズマディスプレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装置(Field Emission Display 及び Surface-Conduction Electron-Emitter Display 等)などの各種の電気光学装置においても本発明を同様に適用することが可能である。
100…電気光学装置、110…第1基板、112…配線、113…能動素子、114…画素電極、116…絶縁膜、120…第2基板、122…対向電極、130…液晶層、10…前段パネル構造、11…第1前段基板、12…第2前段基板、13…シール材、14,16…電極パターン、15…カラーフィルタ、15R,15G,15B…着色層、15K…遮光層、15P…保護膜、17,17’…スペーサ、18,19…ダミーパターン、18A,18B,18C,18D…ダミー層。