JP4715034B2 - 渦流探傷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、渦流探傷装置に係わり、特に鋼管表面の欠陥が従来より精度良く検出できる渦流探傷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属等の導体に交流を流したコイルを近づけると、該金属等に存在する欠陥(例えば、表面傷等)は、該コイルに誘起される電流、電圧の変化として検出される。また、必要ならば、金属の材料判別、膜厚測定、形状・寸法等も測定できる。この原理を利用した欠陥検出装置は、渦流探傷装置と称され、高速検出が可能で、且つ検出結果を電気信号で取り出せるので、鉄鋼においては棒鋼、線材、鋼管等の表面欠陥の検査に広く利用されている。なお、上記コイルには、鋼管、線材等の被検査体を囲む貫通方式、被検査体に単に接近させるプローブ方式及び被検査体の内部に入れる内挿式のものがある。
かかる渦流探傷器の基本的構成をフローで図2に示すが、それは、発振器で作られた交流がコイルに流され、交流磁場を被検査体(例えば、鋼管)に与えられるようになっている。そして、被検査体に生じた渦電流をコイルが検出し、その出力を平衡回路に送る。また、この探傷装置では、非常に小さな電流の変化分を検出しなければならないので、前もって平衡回路は無欠陥の場合の出力が0になるように調整しておく。この平衡回路からの出力信号は、増幅器で増幅され、検波器に送られる(図2の装置では、信号波形のX軸、Y軸の位相を別々に処理できるよう、2つの検波器が設けられている)。これら検波器は、その入力信号を移相器から加えられる制御信号によって位相解析を行い、フィルタで欠陥信号以外の雑音を除去し、被検査体からの情報をCRT(ブラウン管)等に表示する。さらに、フィルタを経た信号は、最終的に欠陥判定回路に入力され、予め設定されている判定条件と比較されて欠陥の有無が判定され、比較器から出力される。なお、上記欠陥判定回路は、図3に示すように、位相角(θ=tan- 1y/x)検出回路、振幅(A=√(x2+y2))算出回路及び比較器で形成されている。
なお、検出された信号は、ブラウン管上では、図4に示すような位相角θ及び振幅Aを有する波形で表される。
【0003】
ところで、この渦流探傷装置を実際に使用して鋼管の表面欠陥を検出するには、ある大きさの人工欠陥を用いて得た信号波形の位相角及び振幅を閾値として予め欠陥判定回路に設定し、実際の被検査体より得た信号の位相角と比較したり、あるいは該信号の算出された振幅Aと比較して、欠陥の有無を判定するのが一般的である。つまり、位相角又は振幅のどちらか一方で判定し、しかも閾値の値は一点で固定されたものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記位相角設定による欠陥判定の場合、欠陥の深さの変化で位相角が変化すると、その欠陥を検出できないことがある。また、信号の振幅設定による欠陥判定の場合、該振幅は欠陥の長さやコイルの大きさによって変化するので、その影響を受けて欠陥が検出できなかったり、実際に欠陥でないものを欠陥として検出してしまうことがある。つまり、欠陥の種類や大きさによって、見逃しや誤認が生じる。これでは、渦流探傷装置を欠陥判定に信頼して利用できず、まだ改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、被検査体の欠陥を従来より精度良く、確実に検出可能な渦流探傷装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究し、その成果を本発明に具現化した。
すなわち、本発明は、交流の発振器と、交流磁場を被検査体に与え、発生した渦電流を検出するコイルと、被検査体の無欠陥時の出力が0になるように調整する平衡回路と、該平衡回路からの出力を増幅する増幅器と、増幅された信号を移相器からの制御信号で位相解析する検波器と、欠陥信号以外の雑音を抑制するフィルタと、フィルタを経た信号が入力され、判定条件と比較して欠陥の有無を判定する比較器、位相角検出回路及び振幅算出回路を有する欠陥判定回路とを備えた渦流探傷装置において、前記欠陥判定回路に、予め定めた位相角と欠陥深さとの関係を記憶し、欠陥検出時の位相信号により欠陥深さを定める欠陥深さ検出回路と、予め設定した欠陥長さと振幅との関係を基に、前記で定めた欠陥深さで該欠陥の振幅についての判定基準値を計算する欠陥判定基準値算出回路とを設けてなり、
前記比較器は、該欠陥判定基準値算出回路で計算された振幅についての判定基準値を振幅についての前記判定条件として前記振幅算出回路で算出された振幅と比較するとともに、予め設定されている欠陥深さについての判定基準値を欠陥深さについての前記判定条件として前記欠陥深さ検出回路で定めた欠陥深さと比較することを特徴とする渦流探傷装置である。この場合、前記フィルタと欠陥判定回路との間に、フィルタからの出力を外部表示するCRTを設けたり、あるいは前記欠陥判定基準値算出回路の下流側に、該算出回路からの出力の表示及び記録装置を備えるのが良い。また、前記被検査体が鋼管であることが好ましい。
【0007】
本発明によれば、欠陥深さの変化で信号の位相角が変化したり、あるいは信号の振幅が欠陥の長さやコイルの大きさによって変化しても、それらの影響を受けず、被検査体の欠陥を従来より精度良く、確実に検出できるようになる。その結果、被検査体の欠陥検査に要する時間や作業者の省力が達成され、該被検査体の生産性が向上したばかりでなく、製造コストの削減も達成できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0009】
まず、発明者は、欠陥の種類や大きさによって、見逃しや誤認が生じるという従来装置の問題点を見直した。その結果、かかる問題が生じるのは、欠陥判定装置に設定する位相角又は振幅の閾値をそれぞれ一点だけで、しかも個別に欠陥の有無を判定することに原因があると結論した。信号の位相角も振幅も同一欠陥から生じたものであるので、両者の判定基準を同時に満足させる必要があるからである。また、位相角や振幅は、欠陥の深さや長さ等の値で変化するので、上記の判定基準(閾値)も一点に固定したものではなく、欠陥の深さや大きさに関係づけて定める必要があると考えた。
そこで、発明者は、引き続き、これらの考えを具体化する手段について鋭意研究を重ね、欠陥からの信号が位相角及び振幅の両方の基準を満足する時に、その信号を発した被検査体の部分に欠陥があると判定すると共に、振幅の基準値を欠陥の深さや長さで変化させることにした。そして、図3に示した従来の欠陥判定回路を改造し、本発明に係る渦流探傷装置とした。つまり、図1に示すように、従来の欠陥判定回路へ、欠陥深さ検出回路及び欠陥判定基準値算出回路を新しく設けるようにしたのである。
まず、本発明に係る渦流探傷装置は、従来の装置と欠陥判定回路以外の部分は同じで良い。また、欠陥判定回路も、(1)式で信号の位相を算出する位相角検出回路と、(2)式で信号の振幅を算出する振幅算出回路と、比較器とを備えている点は従来通りである。
【0010】
θ=tan−1(y/x) (1)
A=√(x2+y2) (2)
本発明の重要なポイントの1つは、図1に示したように、欠陥深さ検出回路を設けたことである。そして、この欠陥深さ検出回路に、人工欠陥又は各種の自然欠陥を用いて定めた欠陥の深さとそれにより生じる信号の位相角との関係を設定しておくようにした。これにより、信号の位相角が変化しても、その変化に応じて欠陥深さdを求めることができるようにしたのである。
【0011】
もう1つの重要ポイントは、図1に示した欠陥判定基準値算出回路を設けたことである。
そして、この欠陥判定基準値算出回路には、上記同様に人工欠陥又は自然欠陥を用いて別途求めた、欠陥深さをパラメータとした信号の振幅と欠陥長さとの関係を、予め記憶させるようにした。このような回路を設けると、上記欠陥深さ検出回路からの出力信号(欠陥深さがd=doの時の)に対応させて、振幅の判定基準値Aoを容易に定めることが可能となる。つまり、振幅の基準値を欠陥の深さや長さで変化させるようにしたのである。
【0012】
なお、比較器は、上記のようにして定めた振幅の欠陥判定基準値A0と測定で得た振幅値Aとを比較し、最終的な欠陥の有無を判定する。また、同時にランダムな位相を有する外来ノイズによる誤検出も防止できる。
【0013】
以下に、欠陥深さ検出回路及び欠陥判定基準値算出回路の具体的な作用も含め、本発明に係る渦流探傷装置の使用例を説明する。
【0014】
【実施例】
電縫鋼管からサイズが外径34mm×肉厚2.6mm×長さ300mmの試料を採取し、深さが5水準で、各深さにつき幅及び長さを6水準変えて、人工欠陥(この場合、ドリル傷及びノッチ傷とする)を加工した。得られた人工傷を有する上記試料を本発明に係る渦流探傷装置に通し、生じた信号の位相角と傷深さとの関係、及び信号の振幅と傷長さとの関係を求めた。その結果の一例を図5及び図6に示す。この図5及び図6の関係は、それぞれ個別に、前記探傷装置の欠陥深さ検出回路及び欠陥判定基準値算出回路に入力し、記憶させた。さらに、欠陥判定回路には、傷の判定基準値として傷深さを0.3mm、傷長さを4mmで設定し、記憶させた。
【0015】
次に、実際に同一の電縫鋼管の製造ラインに、上記の欠陥検出準備をした本発明に係る探傷装置をセットし、傷の検出を開始した。その際、ある信号で振幅が25mm、θ=60°の場合があった。この信号は、図5から明らかなように、欠陥深さ検出回路では、傷深さdが0.1mmと定まる。また、図6より、欠陥判定値算出回路では、傷長さが8mmと算出される。従って、欠陥判定回路の比較器からは、欠陥は存在しないの出力が得られた。
【0016】
引き続き、別の信号をキャッチしたが、その信号は、振幅が22mmと低かったが、位相角はθ=145°であった。この場合には、図5から明らかなように、欠陥深さ検出回路では、傷深さdが0.3mmと定まる。また、図6より、欠陥判定値算出回路では、傷長さが4mmと算出される。従って、欠陥判定回路の比較器からは、欠陥が存在するとの出力が得られた。
【0017】
このことから、傷の長さによって振幅が変化し、傷の深さによって位相角が変化しても、その両方の情報と、予め事前データを利用して設定した判定基準値とを使って、欠陥の正しい判定が可能であることが確認できた。
【0018】
なお、上記実施例は、本発明に係る渦流探傷装置を電縫鋼管の欠陥検査に適用した場合であるが、本発明に係る渦流探傷装置は、コイルの方式を変更して、電縫鋼管にかかわらず、棒鋼、線材、板材等の表面や内面の欠陥検査に利用できることは説明するまでもない。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、被検査体の欠陥を従来より精度良く、確実に検出できるようになる。その結果、被検査体の欠陥検査に要する時間や作業者の省力が達成され、該検査体の生産性が向上するばかりでなく、製造コストの削減も達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る渦流探傷装置の欠陥判定回路の全体を示すフロー図である。
【図2】従来の渦流探傷装置を示すフロー図である。
【図3】従来の渦流探傷装置の欠陥判定回路を示すフロー図である。
【図4】CRT(ブラウン管)上に出現した欠陥に基づく信号の波形を示す図である。
【図5】信号の位相角と欠陥深さとの関係を示す図である。
【図6】信号の振幅と欠陥長さとの関係を示す図である。
Claims (3)
- 交流の発振器と、交流磁場を被検査体に与え、発生した渦電流を検出するコイルと、被検査体の無欠陥時の出力が0になるように調整する平衡回路と、該平衡回路からの出力を増幅する増幅器と、増幅された信号を移相器からの制御信号で位相解析する検波器と、欠陥信号以外の雑音を抑制するフィルタと、フィルタを経た信号が入力され、判定条件と比較して欠陥の有無を判定する比較器、位相角検出回路及び振幅算出回路を有する欠陥判定回路とを備えた渦流探傷装置において、
前記欠陥判定回路に、予め定めた位相角と欠陥深さとの関係を記憶し、欠陥検出時の位相信号により欠陥深さを定める欠陥深さ検出回路と、予め設定した欠陥長さと振幅との関係を基に、前記で定めた欠陥深さで該欠陥の振幅についての判定基準値を計算する欠陥判定基準値算出回路とを設けてなり、
前記比較器は、該欠陥判定基準値算出回路で計算された振幅についての判定基準値を振幅についての前記判定条件として前記振幅算出回路で算出された振幅と比較するとともに、予め設定されている欠陥深さについての判定基準値を欠陥深さについての前記判定条件として前記欠陥深さ検出回路で定めた欠陥深さと比較することを特徴とする渦流探傷装置。 - 前記欠陥判定基準値算出回路の下流側に、該算出回路からの出力の表示及び記録装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の渦流探傷装置。
- 前記被検査体が鋼管であることを特徴とする請求項1又は2記載の渦流探傷装置。
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