JP4714545B2 - 高炉操業方法 - Google Patents
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Description
高炉下部の側壁には、周方向に複数の開口、すなわち上記羽口が設けられており、この羽口から炉内に熱風(上記を含んだ高温の空気を)を吹き込むようになっている。
レースウエイの形状を正確に把握することは困難であるため、従来から、高炉径方向でレースウエイの最深部と羽口との距離をレースウエイ深度とし、レースウエイの大きさや形状を代表させるものとして扱っている。
レースウエイの深度や、降下領域は、羽口からの熱風の送風条件(送風量、羽口風速など)や、装入されたコークスの性状(コークス強度、粒度など)や、装入物の充填分布状況などにより変化するものである。
すなわち、送風量を増やして生産量が増加するようにした場合、装入物の降下領域が増加、特に、羽口前のレースウエイへのコークスの供給が増加、しなければ、安定かつ継続してコークスが羽口前に供給されず、いわゆる荷下がり不良となって、炉熱変動が大きくなり、生産を増加させた際に安定した操業が不可能になる。
また、送風量のみを増大させた場合、通常、羽口径は一定であるので、羽口風速が増加することになるが、羽口風速が増加することは羽口前における熱風の運動エネルギーが増加することを意味し、コークスへの衝撃エネルギーが増えて、コークスの粉化が助長される。
このようにしてコークスの粉化が助長されると、炉下部、炉芯部に粉化したコークスが蓄積され、還元ガスの通気性や、溶融した銑鉄の流下、通液を阻害する。
また、特許文献2には、微粉炭を多量に吹き込む高炉操業において、炉内通気性が良好に保たれ、しかも銑鉄を安価に製造するために、炉頂から装入されるコークスの冷間強度及び平均粒径の値から、安定した操業を維持しつつ吹き込み可能な最大微粉炭吹き込み比PCRmaxを求め、この比を上限として微粉炭吹き込みを行う操業方法が開示されている。
また、特許文献3には、微粉炭を吹き込む高炉操業方法において、特定式を満足するように、コークスのドラム強度、送風空気量、送風空気中の酸素富化量の1種または2種以上を制御することが開示されている。
また、特許文献3には、微粉炭吹き込み時のコークス強度、送風空気量の制御について開示されてはいるが、高生産量とする操業での羽口風速の増加に伴うコークス強度の調整については、開示ないし示唆されていない。
高生産量を確保するために送風量を増加させた場合、レースウエイの深度の確保、降下領域の増大が必要である。しかしながら、上述のように、これを実現し、安定した操業を可能にする方法は得られていない。
本発明は、上記の状況に鑑み、送風量を増加させることによって高炉の生産量を増加させる際に、安定した操業を確保するための操業方法を提供することを課題とする。
(1)高炉操業において生産量を増加させるに際し、この生産量の増加に対応して送風量を増加させると共に、羽口風速が増加するように羽口径を縮小することを特徴とする高炉操業方法。
(2)前記羽口風速に応じて、強度を増加させたコークスを装入することを特徴とする(1)に記載の高炉操業方法。
(3)高炉の生産量を1%増加させるに際し、前記送風量を1%増加させると共に、羽口風速が1.2〜2%増加するように羽口径を縮小することを特徴とする(1)または(2)に記載の高炉操業方法。
(4)前記羽口風速の増加1%あたり、コークス強度がDIで0.1〜0.2ポイント増加させたコークスを装入することを特徴とする(3)に記載の高炉操業方法。
また、好ましくは、装入されるコークスも、羽口風速の増大に見合って強度を増したものを用いるので、羽口流速の増大に伴う粉化が抑制され、通気性や通液が阻害されることがない。このように、本発明では、従来、限界のあった生産量を増加させる操業方法に比べて、効率的に生産量を増加させることが可能である。
上述のように、羽口径一定のままで送風量を増加させる従来の操業方法でも、羽口風速は上昇し、レースウエイ深度は増加する。しかし、生産量に見合った降下領域の増大までには至らず、所定の生産量の増加を確保して安定した操業を行うことは困難であることが判った。
発明者らは、実験により、高炉の20分の1の扇型断面模型(炉床半径600mm、羽口数2本、羽口径20mm)において、通常の羽口当たりの送風量を100Nm3/hrとし、この送風量を変化させた場合の生産量(出銑量)および降下領域の変化を調査した。
なお、降下領域(m2)は、羽口レベルにおいて予め炉内に装入していたトレーサー着色粒子が、その後装入した粒子に入れ替っている領域と定義し、実験後に解体して直接観察・測定により求めた。
図1から、送風量の増加に比例して生産量も増加することが判り、羽口径が一定の場合、送風量を10%増加させれば、生産量や羽口風速は10%増加することが判る。しかしながら、降下領域は7%程度しか増加していない。
すなわち、生産量の増加割合に比して降下領域の増加割合の程度が小さく、生産量の増加割合に見合った降下領域の増加割合でないことが判る。これは、羽口前へのコークスの供給が不十分であることを意味し、安定操業の確保を継続することは困難である。
このように、羽口径が一定のままで送風量を増やして生産量を増加させる場合は、降下領域の増大が難しく安定操業の継続が困難であり、生産量の増大には限度があることから、発明者らは更に検討を加えた。
すなわち、上記と同様の模型高炉での実験において、送風量を上記と同じ100Nm3/hrと一定とし、羽口径を上記の径から5〜10%の範囲に縮小して同一風量で元の羽口風速を増大させ、レースウエイ深度および降下領域の変化を調査した。
その結果を図2に示す。図2は、羽口径20mmの場合の羽口風速、レースウエイ深度および降下領域に対して、羽口径を縮小したときの羽口風速、レースウェイ深度および降下領域を、相対羽口風速、相対レースウエイ深度、相対降下領域とし、相対羽口風速と相対レースウエイ深度および相対降下領域との関係を示す図である。
すなわち、上記の実験によると、羽口径を縮小し羽口風速を10%増加させると降下領域を約7%増加させることができることが判る。従って、送風量を増やした上でさらに羽口径を縮小し羽口風速を増やしてやれば、生産量の増加に見合う降下領域とすることができる。
すなわち、上述のように、羽口径一定で送風量を10%増加させれば、生産量や羽口風速は10%増加するが、降下領域は7%程度しか増加しておらず、安定した操業を継続するには、送風量の増加に見合うものとして降下領域を10%増加させる必要がある。
従って、降下領域を1.10/1.07=1.028倍にするためには、羽口風速をさらに2.8/7×0.1=0.04、つまり、さらに4%増加させる必要があり、14%増にする必要がある。このためには、羽口断面積を1/(1−0.04)=0.962、つまり約4%減少させればよいことになる。
すなわち、生産量1%増加あたり、羽口風速を1.4%増とする必要があるが、実験データのばらつきや誤差(50%)を考慮すれば、生産量1%増加あたり羽口風速を1.2〜2%増加させればよい。
羽口風速を変更する場合、高炉下部の各羽口の口径が全て上記のように一律に縮小し、各羽口における羽口風速が所定の範囲となるように調整することが好ましいが、羽口径の縮小程度を羽口毎に換えても良く、或いは一部の羽口の羽口径のみが縮小されても良い。すなわち、羽口全体としてみた平均の羽口風速が所定の範囲となるように、全羽口の断面積の合計、すなわち、羽口の総断面積を調整することでも良い。この場合、高炉の径方向で荷下がりをできるだけ均一にする観点から、羽口径を縮小する羽口が、高炉の中心に対して対称となるように配置することが好ましい。
しかしながら、上記のように、羽口風速を増加させることによってレースウエイ深度や降下領域を増加させることはできるが、コークスの粉化が問題となることが判った。
上述のように、粉化が助長されると、炉下部、炉芯部に粉化したコークスが蓄積され、還元ガスの通気性や、溶融した銑鉄の流下、通液を阻害し、安定操業を損なう要因となる。
なお、コークス強度DIは、50mm以上のコークス試料40kgを内径1.5mのドラム試験機に入れ、150回転後の15mm以上のコークスの重量割合で評価した。また、炉芯粉率は、羽口レベルのレースウエイ奥の高炉炉芯部より採取されたコークス試料のうちの−3mm粉の重量割合で評価した。
その増加割合は、コークス強度(DI)レベルにかかわらず、ほぼ同様である。
羽口風速が10%増加した場合でも、コークス強度DIを約1.5ポイント増加したものとすれば、炉芯部における粉の発生は、羽口風速を増加させなかった場合の粉率とほぼ同程度に維持することができることが判る。
実験データのばらつきや誤差(50%)などを考慮すると、羽口風速1%増加当たり、コークスの強度DIを0.1〜0.2ポイント増加させればよい。
コークス原料である石炭の炭種、およびそれらの配合などを調整することによってコークス強度(DI)レベルの異なるコークスを得ることができるので、必要により、所要の強度を有するコークスを入手し、使用することが可能である。
コークス強度DIを上記以上に増加させてもよいが、高強度のコークスを製造するにはコストがかかり、銑鉄の製造コストを上昇させることになる。
なお、通常使用されているコークスの強度が、羽口風速が増加した場合でも低い粉率を維持できるに十分な強度を有する場合は、更に強度を増したコークスとする必要はない。
内容積が3273m3の高炉に本発明の操業方法を適用して操業した。
操業条件として、送風量(Nm3/分)、羽口風速(m/s)、生産量(トン/日)、羽口総断面積、コークスDI、操業指標として、荷下がり指数(回/日)、送風圧力変動(g/cm2)、溶銑中Si量(質量%)の変動を採用した。
その結果を表1に示す。
これに対し、比較例1のように、本発明を適用せず、羽口径、コークス強度DIをベース条件とほぼ同じにして、送風量を増加させた場合は、操業指標が悪化した。
また、比較例2のように、羽口径を一定としてコークス強度のみを増加させた場合も降下領域が広がらず操業は安定しなかった。
また、比較例3のようにコークス強度一定で、羽口径を縮小した場合は、コークス粉化のために炉芯粉化率が増え、送風圧力変動が大きく、安定した操業とはならなかった。
また、比較例4のように、コークス強度を上昇させても、羽口径を過度に縮小して相対羽口風速を過度に大きくした場合は、コークス粉化のため通気性が阻害され、送風圧力の変動が大きく、安定した操業とはならなかった。
2 炉壁
3 炉壁レンガ
4 羽口
5 ブローパイプ
6 レースウェイ
7 最深部
8 降下領域
Claims (4)
- 高炉操業において生産量を増加させるに際し、この生産量の増加に対応して送風量を増加させると共に、羽口風速が増加するように羽口径を縮小することを特徴とする高炉操業方法。
- 前記羽口風速に応じて、強度を増加させたコークスを装入することを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
- 高炉の生産量を1%増加させるに際し、前記送風量を1%増加させると共に、羽口風速が1.2〜2%増加するように羽口径を縮小することを特徴とする請求項1または2に記載の高炉操業方法。
- 前記羽口風速の増加1%あたり、コークス強度がDIで0.1〜0.2ポイント増加させたコークスを装入することを特徴とする請求項3に記載の高炉操業方法。
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