発明の概要
したがって、本発明によれば、個体が炎症性疾患もしくは自己免疫疾患を有すること、またはそれを発症すると考えられることを診断または予測する方法であって、患者試料を入手すること;試料中のサイトカイン発現のレベルを決定すること;サイトカイン発現を1つまたは複数の基準サイトカインの既定のレベルと比較すること;および、患者が炎症性疾患もしくは自己免疫疾患を有するか否か、もしくはそれを発症すると考えられるか否か、または患者が処方された治療レジメンもしくは薬剤に反応すると考えられるか否かを判定すること、を含む方法が提供される。本方法はさらに、患者の評価を得ること、すなわち、症状を評価することを含んでもよい。病態は以下のものから選択されうる:強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節炎、反応性関節炎、未分類(undifferentiated)脊椎関節症、若年性脊椎関節症、ベーチェット病、腱付着部炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、線維筋痛症、慢性疲労症候群、全身性炎症性疾患に伴う疼痛状態、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、若年発症型糖尿病(I型糖尿病としても知られる)、ウェゲナー肉芽腫症、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、多発性内分泌腺不全症、シュミット症候群、自己免疫性ブドウ膜炎、アジソン病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、悪性貧血、胃萎縮、慢性肝炎、ルポイド肝炎、アテローム性動脈硬化、初老期痴呆、アルツハイマー病、脱髄性疾患、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、副甲状腺機能低下症、ドレスラー症候群、重症筋無力症、イートン-ランバート症候群、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、尋常性天疱瘡、天疱瘡、疱疹状皮膚炎、脱毛症、強皮症、進行性全身性硬化症、CREST症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、強指症および毛細血管拡張)、成人発症型糖尿病(II型糖尿病としても知られる)、混合性結合組織病、結節性多発動脈炎、全身性壊死性血管炎、糸球体腎炎、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、グッドパスチャー症候群、シャーガス病、サルコイドーシス、リウマチ熱、喘息、抗リン脂質抗体症候群、多形性紅斑、クッシング症候群、自己免疫性慢性活動性肝炎、アレルギー疾患、アレルギー脳脊髄炎、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、高安動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、住血吸虫症、巨細胞動脈炎、湿疹、リンパ腫様肉芽腫症、川崎病、デング熱、脳脊髄炎、心内膜炎、心内膜心筋線維症、眼内炎、乾癬、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、フェルティ症候群、フックス毛様体炎、IgAネフロパシー、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、移植片対宿主病、移植拒絶反応、ヒト免疫不全ウイルス感染症、エプスタイン-バーウイルス感染症、ムンプス、エコーウイルス感染症、心筋症、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、炭疽菌感染症、痘瘡感染症、C型肝炎ウイルス感染症、野兎病、敗血症、周期性発熱症候群、化膿性関節炎、家族性地中海熱、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、マックル-ウェルズ症候群、高IgD症候群、家族性寒冷蕁麻疹、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、腎細胞癌、または多発性骨髄腫。
患者試料には末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料、皮膚またはその他の体液試料が含まれうる。患者は軽症、中等症または重症のいずれの疾患を有してもよい。既定のレベルは、患者試料中に認められるサイトカインの中央値レベルに関する情報を含みうる。患者試料は、健常対象、罹病患者、または高度関節破壊および/もしくは関節外病変を有する患者のいずれからでもよい。
本明細書で用いる場合、「サイトカイン」という用語は、免疫系の細胞によって放出されて、免疫応答の生成における細胞間メディエーターとして作用する、インターロイキン類およびリンホカイン類などのいくつかの調節性タンパク質のうち任意のものと定義される。サイトカインは免疫細胞またはその他の細胞によって分泌され、その作用はT細胞、B細胞、NK細胞およびマクロファージなど(ただし、これらには限定されない)の免疫系細胞に対して及ぶ。代表的なサイトカインには、以下のものからなる群が非制限的に含まれる:インターロイキン-1α(IL-1α)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8/CXCL8)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-13(IL-13)、インターロイキン-15(IL-15)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-18(IL-18)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、インターフェロン-α(INF-α)、インターフェロン-β(INF-β)、インターフェロン-γ(INF-γ)、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、単球走化性タンパク質-1(MCP-1/CCL2)、マクロファージ炎症性タンパク質1-a(MIP-1α/CCL3)、マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β/CCL4)、RANTES(CCL5)、エオタキシン(CCL11)、可変(variable)内皮増殖因子(VEGF)、内皮増殖因子(EGF)または線維芽細胞増殖因子(FGF)。
患者試料が末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料、皮膚またはその他の体液試料を含む、請求項1記載の方法。
本方法の病態が強直性脊椎炎である場合、サイトカインは、CCL4、CCL2、CCL11、EGF、IL-1β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-7、CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、TNF-α、IFNγ、GM-CSFまたはG-CSFからなる群より選択される。
本方法の病態が乾癬性関節炎である場合、サイトカインは、GM-CSF、IL-17、IL-2、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-6、CCL4/MIP-1β、CCL11/エオタキシン、EGFおよびCCL2/MCP-1からなる群より選択される。
本方法の病態が反応性関節炎である場合、サイトカインは、IL-12、IFN-γ、IL-1β、IL-13、IL-17、CCL4/MCP-1、TNF-α、IL-4、GM-CSF、CCL11/エオタキシン、EGFおよびIL-6からなる群より選択される。
本方法の病態が腸疾患性関節炎である場合、サイトカインは、CXCL8/IL-8、IL-1β、IL-4、G-CSF、CCL2/MCP-1、CCL11/エオタキシン、EGF、IFN-γおよびTNF-αからなる群より選択される。
本方法の病態が潰瘍性大腸炎(UC)である場合、サイトカインは、IL-7、CXCL8/IL-8、IFN-γ、TNF-α、EGF、VEGFおよびIL-1βからなる群より選択される。
本方法の病態がクローン病(CD)である場合、サイトカインは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-13、IL-2、IL-4、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が関節リウマチである場合、サイトカインは、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5、CCL4/MIP-1β、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびIL-7からなる群より選択される。
本方法の病態が全身性エリテマトーデスである場合、サイトカインは、IL-10、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ、CCL2/MCP-1、CCL4/MIP-1β、CXCL8/IL-8、VEGF、EGFおよびIL-17からなる群より選択される。
本方法の病態が家族性地中海熱(FMF)である場合、サイトカインは、G-CSF、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-1βおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である場合、サイトカインは、CCL2/MIP-1β、CXCL8/IL-8、IL-12、IL-1β、VEGFおよびIL-13からなる群より選択される。
本方法の病態が過敏性腸症候群(IBS)である場合、サイトカインは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1およびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が若年性関節リウマチ(JRA)である場合、サイトカインは、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5およびIL-7からなる群より選択される。
本方法の病態がシェーグレン症候群である場合、サイトカインは、CCL2/MCP-1、IL-12、CXCL8/IL-8、CCL11/エオタキシン、TNFα、IL-2、IFNα、IL-15、IL-17、IL-1α、IL-1β、IL-6およびGM-CSFからなる群より選択される。
本方法の病態が早期関節炎である場合、サイトカインは、CCL4/MIP1β、CXCL8/IL-8、IL-2、IL-12、IL-17、IL-13、TNFα、IL-4、IL-5およびIL-10からなる群より選択される。
本方法の病態が神経炎症である場合、サイトカインは、CCL2/MCP-1、IL-12、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、IL-6およびIL-17からなる群より選択される。
本方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20種のサイトカインのレベルを決定することを含みうる。
また、炎症性病態または自己免疫性病態に対する治療を評価するための方法であって、(a)炎症性病態または自己免疫性病態の患者に治療を施すこと;(b)前記患者から試料を入手すること;(c)患者試料中の複数のサイトカインのレベルを測定すること;(d)複数のサイトカインのレベルを既定のサイトカインレベルと比較すること;および(e)治療が有効であるか否かを判定すること、を含む方法も提供される。
本方法はさらに、前記有効性の判定に基づいて治療レジメンの修正に関する判断を下すことを含みうる。患者試料には末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料、皮膚またはその他の体液試料が含まれうる。患者は軽症、中等症または重症のいずれの疾患を有してもよい。既定のレベルは、患者試料中に認められるサイトカインの中央値レベルに関する情報を含みうる。既定のレベルには、前記1つまたは複数のサイトカインの治療前レベル、健常対象および/または疾患を有する患者において観察される前記1つまたは複数のサイトカインのレベルが含まれうる。患者試料は、関節外病変を有する、および/または高度関節破壊を有する患者からのものであってよい。
本方法の病態が強直性脊椎炎である場合、サイトカインは、CCL4、CCL2、CCL11、EGF、IL-1β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-7、CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、TNF-α、IFNγ、GM-CSFまたはG-CSFからなる群より選択される。
本方法の病態が乾癬性関節炎である場合、サイトカインは、GM-CSF、IL-17、IL-2、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-6、CCL4/MIP-1β、CCL11/エオタキシン、EGFおよびCCL2/MCP-1からなる群より選択される。
本方法の病態が反応性関節炎である場合、サイトカインは、IL-12、IFN-γ、IL-1β、IL-13、IL-17、CCL4/MCP-1、TNF-α、IL-4、GM-CSF、CCL11/エオタキシン、EGFおよびIL-6からなる群より選択される。
本方法の病態が腸疾患性関節炎である場合、サイトカインは、CXCL8/IL-8、IL-1β、IL-4、G-CSF、CCL2/MCP-1、CCL11/エオタキシン、EGF、IFN-γおよびTNF-αからなる群より選択される。
本方法の病態が潰瘍性大腸炎(UC)である場合、サイトカインは、IL-7、CXCL8/IL-8、IFN-γ、TNF-α、EGF、VEGFおよびIL-1βからなる群より選択される。
本方法の病態がクローン病(CD)である場合、サイトカインは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-13、IL-2、IL-4、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が関節リウマチである場合、サイトカインは、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5、CCL4/MIP-1β、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびIL-7からなる群より選択される。
本方法の病態が全身性エリテマトーデスである場合、サイトカインは、IL-10、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ、CCL2/MCP-1、CCL4/MIP-1β、CXCL8/IL-8、VEGF、EGFおよびIL-17からなる群より選択される。
本方法の病態が家族性地中海熱(FMF)である場合、サイトカインは、G-CSF、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-1βおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である場合、サイトカインは、CCL2/MIP-1β、CXCL8/IL-8、IL-12、IL-1β、VEGFおよびIL-13からなる群より選択される。
本方法の病態が過敏性腸症候群(IBS)である場合、サイトカインは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1およびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が若年性関節リウマチ(JRA)である場合、サイトカインは、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5およびIL-7からなる群より選択される。
本方法の病態がシェーグレン症候群である場合、サイトカインは、CCL2/MCP-1、IL-12、CXCL8/IL-8、CCL11/エオタキシン、TNFα、IL-2、IFNα、IL-15、IL17、IL-1α、IL-1β、IL-6およびGM-CSFからなる群より選択される。
本方法の病態が早期関節炎である場合、サイトカインは、CCL4/MIP1β、CXCL8/IL-8、IL-2、IL-12、IL-17、IL-13、TNFα、IL-4、IL-5およびIL-10からなる群より選択される。
本方法の病態が神経炎症である場合、サイトカインは、CCL2/MCP-1、IL-12、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、IL-6およびIL-17からなる群より選択される。
本方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20種のサイトカインのレベルを決定することを含みうる。
さらにもう1つの態様においては、炎症性病態または自己免疫性病態を有する患者に重症の炎症性病態または自己免疫性病態を発症する素因があるか否かを判定するための方法であって、(a)患者試料を入手すること;(b)患者試料中の複数のサイトカインのレベルを測定すること;(c)サイトカインレベルを、重症の炎症性病態または自己免疫性病態を発症中であるか有している患者に認められるサイトカインの既定のレベルと比較すること;および(d)前記患者に重症の炎症性病態または自己免疫性病態を発症する素因があるか否かを判定すること、を含む方法が提供される。
患者試料には末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料が含まれうる。既定のレベルは、患者試料中に認められるサイトカインの中央値レベルに関する情報を含みうる。本方法はさらに、複数の患者症状を入手することを含みうる。患者試料は、関節外病変を有する、および/または高度関節破壊を有する患者からのものでよい。
本方法の病態が強直性脊椎炎である場合、サイトカインは、CCL4、CCL2、CCL11、EGF、IL-1β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-7、CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、TNF-α、IFNγ、GM-CSFまたはG-CSFからなる群より選択される。
本方法の病態が乾癬性関節炎である場合、サイトカインは、GM-CSF、IL-17、IL-2、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-6、CCL4/MIP-1β、CCL11/エオタキシン、EGFおよびCCL2/MCP-1からなる群より選択される。
本方法の病態が反応性関節炎である場合、サイトカインは、IL-12、IFN-γ、IL-1β、IL-13、IL-17、CCL4/MCP-1、TNF-α、IL-4、GM-CSF、CCL11/エオタキシン、EGFおよびIL-6からなる群より選択される。
本方法の病態が腸疾患性関節炎である場合、サイトカインは、CXCL8/IL-8、IL-1β、IL-4、G-CSF、CCL2/MCP-1、CCL11/エオタキシン、EGF、IFN-γおよびTNF-αからなる群より選択される。
本方法の病態が潰瘍性大腸炎(UC)である場合、サイトカインは、IL-7、CXCL8/IL-8、IFN-γ、TNF-α、EGF、VEGFおよびIL-1βからなる群より選択される。
本方法の病態がクローン病(CD)である場合、サイトカインは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-13、IL-2、IL-4、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が関節リウマチである場合、サイトカインは、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5、CCL4/MIP-1β、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびIL-7からなる群より選択される。
本方法の病態が全身性エリテマトーデスである場合、サイトカインは、IL-10、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ、CCL2/MCP-1、CCL4/MIP-1β、CXCL8/IL-8、VEGF、EGFおよびIL-17からなる群より選択される。
本方法の病態が家族性地中海熱(FMF)である場合、サイトカインは、G-CSF、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-1βおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が筋萎縮性側索硬化症(ALS)である場合、サイトカインは、CCL2/MIP-1β、CXCL8/IL-8、IL-12、IL-1β、VEGFおよびIL-13からなる群より選択される。
本方法の病態が過敏性腸症候群(IBS)である場合、サイトカインは、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1およびCXCL8/IL-8からなる群より選択される。
本方法の病態が若年性関節リウマチ(JRA)である場合、サイトカインは、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5およびIL-7からなる群より選択される。
本方法の病態がシェーグレン症候群である場合、サイトカインは、CCL2/MCP-1、IL-12、CXCL8/IL-8、CCL11/エオタキシン、TNFα、IL-2、IFNα、IL-15、IL17、IL-1α、IL-1β、IL-6およびGM-CSFからなる群より選択される。
本方法の病態が早期関節炎である場合、サイトカインは、CCL4/MIP1β、CXCL8/IL-8、IL-2、IL-12、IL-17、IL-13、TNFα、IL-4、IL-5およびIL-10からなる群より選択される。
本方法の病態が神経炎症である場合、サイトカインは、CCL2/MCP-1、IL-12、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、IL-6およびIL-17からなる群より選択される。
本方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20種のサイトカインのレベルを決定することを含みうる。
また、以下のキットも提供される:
強直性脊椎炎に関する診断情報を提供することを目的とし、CCL4、CCL2、CCL11、EGF、IL-1β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-7、CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、TNF-α、IFNγ、GM-CSFまたはG-CSFからなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
乾癬性関節炎に関する診断情報を提供することを目的とし、GM-CSF、IL-17、IL-2、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-6、CCL4/MIP-1β、CCL11/エオタキシン、EGFおよびCCL2/MCP-1からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
反応性関節炎に関する診断情報を提供することを目的とし、IL-12、IFN-γ、IL-1β、IL-13、IL-17、CCL4/MCP-1、TNF-α、IL-4、GM-CSF、CCL11/エオタキシン、EGFおよびIL-6からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
腸疾患性関節炎に関する診断情報を提供することを目的とし、CXCL8/IL-8、IL-1β、IL-4、G-CSF、CCL2/MCP-1、CCL11/エオタキシン、EGF、IFN-γおよびTNF-αからなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
潰瘍性大腸炎に関する診断情報を提供することを目的とし、IL-7、CXCL8/IL-8、IFN-γ、TNF-α、EGF、VEGFおよびIL-1βからなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
クローン病に関する診断情報を提供することを目的とし、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-13、IL-2、IL-4、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
関節リウマチに関する診断情報を提供することを目的とし、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5、CCL4/MIP-1β、CCL2/MCP-1、EGF、VEGFおよびIL-7からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
全身性エリテマトーデスに関する診断情報を提供することを目的とし、IL-10、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ、CCL2/MCP-1、CCL4/MIP-1β、CXCL8/IL-8、VEGF、EGFおよびIL-17からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
家族性地中海熱に関する診断情報を提供することを目的とし、G-CSF、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-1βおよびCXCL8/IL-8からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関する診断情報を提供することを目的とし、CCL2/MIP-1β、CXCL8/IL-8、IL-12、IL-1β、VEGFおよびIL-13からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
過敏性腸症候群(IBS)に関する診断情報を提供することを目的とし、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1およびCXCL8/IL-8からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
若年性関節リウマチ(JRA)に関する診断情報を提供することを目的とし、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5およびIL-7からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
シェーグレン症候群に関する診断情報を提供することを目的とし、CCL2/MCP-1、IL-12、CXCL8/IL-8、CCL11/エオタキシン、TNFα、IL-2、IFNα、IL-15、1L17、IL-1α、IL-1β、IL-6およびGM-CSFからなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
早期関節炎に関する診断情報を提供することを目的とし、CCL4/MIP1β、CXCL8/IL-8、IL-2、IL-12、IL-17、IL-13、TNFα、IL-4、IL-5およびIL-10からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
乾癬に関する診断情報を提供することを目的とし、IL-6、IL-10、IL-2、IL-4、IFN-γ、CCL2/MCP-1およびIL-17からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
神経炎症に関する診断情報を提供することを目的とし、CCL2/MCP-1、IL-12、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、IL-6およびIL-17からなる群より選択される2つまたはそれ以上のサイトカインのサイトカインレベルを決定するための核酸プローブまたは抗体プローブを含むもの;
キットは、列記されたサイトカインのうち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20種を含みうる。
本明細書で用いる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは複数であることを意味しうる。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という言葉とともに用いる場合、「1つの(a)」または「1つの(an)」という言葉は、1つまたは複数であることを意味しうる。本明細書で用いる場合、「もう1つの(another)」は、少なくとも2つめまたはそれ以上であることを意味しうる。
本発明のこれらおよびその他の態様は、以下の説明および添付の図面とともに考察された場合により良く認識および理解がなされると考えられる。しかし、以下の説明は、本発明のさまざまな態様およびその数多くの具体的な詳細を示しているものの、例示のために提示されており、限定のためのものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲内で、その精神を逸脱することなく、多くの置き換え、変更、追加および/または再構成を行うことができ、本発明は、すべてのこのような置き換え、変更、追加および/または再構成を含む。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、サイトカイン発現プロファイルの検討が、種々の病態に対する診断性および予後判定性を有し、さらには治療反応の予測および評価も行うと考えられるという本発明者らの仮説を前提としている。この仮説をさまざまな病態に適用することにより、本発明者らは、種々の病態の存在、対象がそのような病態を発症する性向、ならびに種々の薬剤または生物因子によって治療された対象における治療反応の予測および評価、に関係するサイトカインプロフィールを明らかにした。いくつかのサイトカインは以前に個別に病態と関連づけられているが、特にサイトカインに対して適用された発現プロファイリングが、病態の診断、予後判定、治療反応の予測および評価のために用いられたのはこれが初めてである。
本発明ならびにそのさまざまな特徴および有利な詳細は、添付の図面に例示され、以下の説明に詳述された非制限的な態様を参照することにより、さらに十分に説明されている。周知である出発材料、加工処理法、成分および装置の記述は、本発明の詳細が不必要に曖昧にならないように省かれている。しかし、本発明の好ましい態様を示している詳細な説明および具体例は、例示のみのために提示されており、限定のためのものではないことが理解される必要がある。基礎をなす発明概念の精神および/または範囲に含まれるさまざまな置き換え、変更、追加および/または再構成が、本開示により、当業者には明らかになると考えられる。
I.疾患におけるサイトカインの関与
インターロイキン-1α(IL-1α)は、ヒトケラチノサイトによって大量に発現される。IL-1-αは、さまざまな由来の活性化マクロファージ(肺胞マクロファージ、クッパー細胞、付着性の脾臓マクロファージおよび腹腔マクロファージ)によっても産生され、末梢好中性顆粒球、内皮細胞、線維芽細胞、平滑筋細胞、ケラチノサイト、皮膚ランゲルハンス細胞、破骨細胞、アストロサイト、胸腺および角膜の上皮細胞、T細胞ならびにB細胞によっても産生される。
脳脊髄液で観察されるIL-1の濃度は局所合成に起因するとともに、可飽和担体系(saturable carrier system)およびこの関門を通過する活性化Tリンパ球の能力による、血液脳関門を介したIL-1の直接輸送にも起因する。インターロイキン-1β(IL-1β)は脳内で構成的に発現される。
IL-1αおよびIL-1βは生物学的にほぼ同等な多面的因子であり、局所性にも全身性にも作用する。これらの因子間にはわずかな機能的な違いしか記載されていない。
IL-1の生物活性のいくつかは、ACTH(コルチコトロピン)、PGE2、PF4(血小板因子4)、CSF(コロニー刺激因子)、IL-6およびCXCL8(IL-8)を含む他のメディエーターの合成の誘導によって間接的に媒介される。
IL-1の合成は、TNF-α、IFN-α、IFN-γおよびIFN-βを含む他のサイトカインによって誘導可能であり、細菌エンドトキシン、ウイルス、マイトジェンおよび抗原によっても誘導されうる。ヒト皮膚線維芽細胞において、IL-1αおよびTNF-αはIL-1βの合成を誘導する。ヒト単核細胞は細菌エンドトキシンに対する感受性が非常に高く、ピコグラム/mL量のエンドトキシンに反応してIL-1を合成する。ヒト単球において、細菌リポ多糖は、IL-1βに対するmRNAおよび各々のタンパク質を、IL-1αに対するものよりも約10倍の多さで誘導する。
IL-1は条件および細胞種に応じて自らの合成を阻害することも促進することもできるため、IL-1の合成は複雑なフィードバックループによって制御されている。
IL-1の主な生物活性は、Tヘルパー細胞を刺激して、それらがIL-2を分泌し、IL-2受容体を発現するように誘導することである。ウイルスに感染したマクロファージは、大量のIL-1阻害因子(IL-1ra)を産生し、これはT細胞の成熟障害のある患者における日和見感染および細胞の形質転換を助長する恐れがある。
IL-1はB細胞に直接作用して、その増殖および免疫グロブリンの合成を促す。IL-1はまた、B細胞がIL-5に反応するようにさせるプライミング因子の一つとしても働く。IL-1は、NK細胞および線維芽細胞、胸腺細胞、膠芽腫細胞の増殖および活性化を刺激する。これはアストログリアおよびミクログリアの増殖も促進する上、アストログリオーシスおよび脱髄などの病的過程にも関与している可能性がある。IL-1により媒介されるリンパ球増殖は、TGF-β-1およびTGF-β-2によって阻害される。
白血病性芽球に関して、IL-1の脱制御的な合成がコロニー刺激因子(CSF)の産生を招き、それが続いてこれらの細胞の増殖を促進するという、IL-1による自己分泌増殖制御の機構が推定されている。他のサイトカインとの組み合わせで、IL-1はヒト胃癌細胞および甲状腺癌細胞に対する自己分泌増殖調節物質となるように思われる。IL-1の増殖促進活性は、いくつかの系では、別のサイトカインであるFGFに対する高親和性受容体の発現を調節することによって間接的に媒介される。また、IL-1は放射線防護物質であることも示されている。
また、IL-1はある種の腫瘍細胞に対する細胞増殖阻害活性および細胞破壊活性も有する。これは単球により媒介される腫瘍細胞傷害性を助長し、腫瘍退縮を誘導する。IL-1は膵臓のランゲルハンス島のインスリン産生性β細胞に対する細胞傷害性を有する。
IL-1はインビボおよびインビトロで内皮細胞の増殖を阻害する。IL-1はインビボで内皮機能の数多くの変化を引き起こす。これは血栓性プロセスを促進し、抗凝固機構を減弱させる。IL-1はこのため、静脈血栓症、動脈硬化、血管炎および播種性血管内凝固などの病的過程において重要な役割を果たしている。
IL-1は、CAM-1(細胞間接着分子)およびELAM(内皮白血球接着分子)などの接着分子の発現を増大させることにより、好中球、単球、T細胞およびB細胞の接着を促す。膜結合型トロンボモジュリンの発現はIL-1によって低下する。
IL-1はまた、皮膚のランゲルハンス細胞の機能活性にも影響を及ぼす。これらの細胞は一次免疫応答(例えば、接触感作)を誘発することができない。IL-1(およびGM-CSFも)は、これらの細胞を強力な免疫刺激性樹状細胞に変換させる。このため、ランゲルハンス細胞は免疫学的に未熟なリンパ球様樹状細胞のインサイチューでの貯蔵所となる。成熟ランゲルハンス細胞が抗原をプロセシングする高い能力は、TNF-αによって低下する。
IL-1は、他のサイトカインとの組み合わせで、炎症反応の重要なメディエーターとなる。IL-1は、線維芽細胞、滑膜細胞、軟骨細胞、内皮細胞、肝細胞および破骨細胞などの炎症性細胞におけるアラキドン酸(特にプロスタサイクリンおよびPGE2)の代謝を増強する。さらに、中性プロテアーゼ(コラゲナーゼ、エラスターゼおよびプラスミノーゲンアクチベーター)などの炎症性タンパク質の分泌亢進も観察されている。IL-1のこの活性は細胞外マトリックスに対するTGF-βの作用と拮抗する。
IL-1は白血球に対する強力な化学誘引物質でもある。インビボでのIL-1の注入は、注入部位での好中球の局所蓄積をもたらす。IL-1は好中球における酸化的代謝も活性化する。
TNFとの組み合わせで、IL-1は溶解性骨病変の発生に関与するように思われる。IL-1は破骨細胞を活性化し、それ故に新骨形成を抑制する。しかし、低濃度のIL-1は新骨成長を促進する。IL-1は脂肪細胞においてリポタンパク質リパーゼという酵素を阻害する。血管平滑筋細胞および皮膚線維芽細胞において、IL-1はこれらの細胞にとってのマイトジェンであるbFGFの合成を阻害する。
インターロイキン-2(IL-2)と同様に、IL-1はニューロンの電気生理学的挙動を調節する。IL-1は中枢神経系に対しても、さまざまなホルモンの放出を調節する求心性シグナルとして直接影響を及ぼし、視床下部-下垂体-副腎(HPA)系を活性化する。IL-1はセロトニン作動系を活性化する。IL-1は内因性発熱物質としても働き、視床下部の体温調節中枢におけるプロスタグランジンの放出を引き起こすことによって体温の著しい上昇を誘導する。この活性はα-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)によって阻害される。IL-1はIL6と同様に、下垂体におけるACTH(コルチコトロピン)の合成を刺激する。一方、糖質コルチコイドはIL-1受容体の発現を増加させる。血清中では、IL-1は鉄および亜鉛の血漿中濃度を低下させることが示されている。シュワン細胞および神経組織の線維芽細胞様細胞では、IL-1はNGFの合成を誘導する。
ヒト視床下部では、IL-1β免疫反応性の神経線維が、急性期反応の中枢性様相を制御する内分泌性および自律神経性核を神経支配している。アストロサイトはIL-1の存在下で増殖し、ミクログリアおよび腹腔マクロファージに対する増殖因子であるIL-3を放出する。アストロサイトでは、IL-1はGM-CSF、IL-6およびTNFの合成も促進する。中枢神経系において、IL-1はいわゆる徐波睡眠の誘導にも関与している。IL-1βは、断眠時に観察される抗体反応の抑制を阻止しうる。
IL-1は他のいくつかの因子と協同的に作用する。胸腺細胞の増殖に対するIL-1の作用にはIL-2合成の刺激およびT細胞上でのIL-2受容体の発現が含まれる。ある種のTヘルパー細胞集団に対して、さらにはB細胞に対しても、IL-1は補足的な増殖因子として働く。IL-1はコロニー刺激因子(CSF)の作用を増強し、幹細胞からの骨髄系前駆細胞の生成を促進する。IL-1はマクロファージコロニーの増殖の誘導においてGM-CSFと協同的に作用する。IL-1はまた、骨髄ストロマ細胞によるG-CSFおよびM-CSFの合成を誘導すること、ならびにヒト皮膚細胞によるGM-CSFおよびG-CSFの合成ならびに末梢血リンパ球によるGM-CSFの合成を刺激することもできる。IL-1は、コロニー刺激因子に対する受容体の発現を増大させることにより、さまざまな造血プロセスに関与する。IL-1は多能性骨髄前駆細胞の増殖も誘導する。
Peter et al.(1991)は、多発性硬化症患者および正常対照の脳脊髄液(CSF)中および血清中のインターロイキン-1β(IL-1β)および腫瘍壊死因子(TNF)について検討した。彼らは、いずれの液中でもこれらのサイトカインのレベルには予後判定的および診断的な有用性がないと結論した。Westacott et al.(1990)は、イムノアッセイを用いて、リウマチ性疾患の患者の滑液中のサイトカインを測定した。IL-1に似た生物活性を有する因子が、臨床的に正常なヒトの歯肉滲出液中に検出され(Oppenheim et al., 1982)、その活性は炎症性歯肉領域の方が非炎症性領域よりも高かった。この歯肉滲出液因子はIL-1および上皮性胸腺細胞活性化因子の両方に対応する分子量を示した(Charon et al., 1982)。Jandinskiら(Jandinski et al., 1988a;1988b;1988c)による研究では、歯周組織におけるIL-1βの存在が報告されており、歯周病の患者の歯肉浸出液ではIL-1が優位であった。組換えヒトIL-1αおよびIL-1βに対するポリクローナル抗血清ならびにウエスタンブロット法による測定を用いたもう1つの研究(Kabashimi et al., 1990)では、慢性炎症性歯周病の患者の歯肉滲出液中に認められるIL-1生物活性の大半はIL-1であり、一般的にはIL-1の膜結合型であると考えられることが示されている。このIL-1は細胞表面からの酵素切断によって生じることが示唆されている。この後者の研究では、歯肉滲出液への唾液の混入を避けるために特に注意が払われている。これらの事実は、歯肉滲出液中のIL-1が唾液由来でないことを強く示している。
インターロイキン-2(IL-2)は、生理的条件下では主に、表面抗原CD4を発現するT細胞により、マイトジェンまたはアレルゲンによる細胞活性化の後に産生される。休止細胞はIL-2を産生しない(Smith, 1988)。形質転換したT細胞およびB細胞、白血病細胞、LAK細胞(リンパ球活性化キラー細胞)ならびにNK細胞もIL-2を分泌する。IL-2は、ある種の腫瘍を特異的に攻撃するT細胞の増殖およびクローン性増殖を補助することから、種々の腫瘍細胞に対して顕著な抗腫瘍活性を示す(Williams et al., 1991)。IL-2は従来の治療に対して抵抗性の癌患者を治療するために用いられることが増えている(Waldman et al., 1993)。黒色腫または急性骨髄性白血病の患者の一定の割合でも客観的および持続的な臨床効果が報告されている(Broom et al., 1992)。
インターロイキン-4(IL-4)は主に、B細胞に対して生物学的に最も活性の高いヘルパー細胞であってIL-5およびIL-6も分泌する、活性化T細胞の部分集団(Th2)によって産生される。T細胞のもう一方の部分集団(Th1)もIL-4を産生するが、その程度は落ちる。マスト細胞系譜の非T/非B細胞もIL-4を産生する(Boulay et al., 1992)。IL-4は、活性化B細胞の増殖および分化、休止B細胞におけるクラスII MHC抗原および低親和性IgE受容体の発現を促す(Jansen et al., 1990)。IL-4はホジキンリンパ腫にかかわる自己分泌増殖調節因子であると考えられている(Okabe et al., 1992)。IL-4はB細胞上でのクラスII MHC抗原の発現を増大させる。これはそれらが他のB細胞刺激に反応する能力およびT細胞に抗原を提示する能力を高めることができる(Paul et al., 1991)。このことは特異的B細胞のクローン性増殖を促進するための一様式であると考えられ、免疫系はこれにより、極めて低濃度の抗原に反応しうると考えられる。非B非T細胞によるIL-4の産生は、これらの細胞が、IgEまたはIgGに対するFc受容体を介して他の細胞と相互作用することによって賦活化される(Callard et al., 1991)この作用はIL-3によって増強されうる。IL-4はまた、IL-2によって誘導されるNK細胞の細胞活性化も阻害する(Paul et al., 1987)。
IL-4は、単球およびT細胞によるIL-1、IL-6およびTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を阻害するため、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療において臨床的に重要な可能性がある(Dullens et al., 1992)。IL-4はまた、固形腫瘍、造血系疾患および免疫障害の治療にも有用な可能性がある。IL4は結腸癌および乳癌の増殖を阻害する(Toi et al., 1992)。これはリンホカイン活性化キラー細胞(LAK細胞)の生成を増強することが示されている。IL-4は、悪性B細胞の死滅および増殖の両方を阻止することにより、分化が中間段階で停止した緩徐分裂性の長寿命モノクローナルB細胞の蓄積を特徴とする慢性リンパ性白血病の発生機序において必須な役割を果たしている可能性がある。これは慢性リンパ性白血病性B細胞をアポトーシスによる死滅から防御し、防御遺伝子BCL-2の発現をアップレギュレートする(Dancescu et al., 1992)。
インターロイキン-5(IL-5)はT細胞によって産生される。IL-5は、好酸球の増殖および分化の原因となる特異的な造血増殖因子である(Takatsu et al., 1992)。IL-5は好酸性顆粒球の増殖、細胞活性化および分化を強く刺激する。至適量に及ばない量のIL-1での処理により、B細胞にIL-5に対する反応性を与えることができる。IL-5はまた、胸腺細胞からの細胞傷害性T細胞の生成も促す(Sanderson et al., 1988)。好酸球に対するIL-5の活性により、臨床応用の可能性が示唆される。動物実験によって、マウスにおける線虫感染により誘発される好酸球増多、およびそれに随伴する肺への好酸球の浸潤を、IL-5を標的とするモノクローナル動物の投与によって防止しうることが示されている(Coffman et al., 1989)。
数多くのさまざまな種類の細胞がインターロイキン-6(IL-6)を産生する。インビボでの主な源は、刺激を受けた単球、線維芽細胞および内皮細胞である。マクロファージ、T細胞およびBリンパ球、顆粒球、平滑筋細胞、好酸球、軟骨細胞、骨芽細胞、マスト細胞、グリア細胞およびケラチノサイトも、刺激後にIL-6を産生する(Akira et al., 1990)。膠芽腫細胞はIL-6を構成的に産生し、この因子は脳脊髄液中でも検出される。ヒト母乳もIL-6を含む(Bauer et al., 1991)。
IL-6血清レベルの測定は、骨髄腫の活動性のモニタリングおよび腫瘍細胞量の算出のために有用である可能性がある。単クローン性高ガンマグロブリン血症およびくすぶり型骨髄腫では低いIL-6血清レベルが観察され、一方、進行性疾患の患者および形質細胞白血病の患者ではIL-6血清レベルが著しく上昇している(Van Oers et al., 1993)。モノクローナル抗体によるIL-6受容体の遮断またはIL-6の阻害は、B細胞の形質細胞への成熟を遅延または阻害する手法の1つである可能性がある。
IL-6の調節解除的な発現はおそらく、多くの疾患の発症機序に関与する主な要因の一つであると考えられる(Leger-Ravet et al, 1991)。IL-6の過度の過剰発現は、関節リウマチ、多発性骨髄腫、レンネルト症候群(組織球性リンパ腫)、キャッスルマン病(形質細胞の高度の浸潤、高ガンマグロブリン血症、貧血および急性期タンパク質の濃度上昇を伴うリンパ節症)、心臓粘液腫および肝硬変といったさまざまな病状で観察されている(Hsu et al., 1993)。膠芽腫によるIL-6の構成的な合成および脳脊髄液中へのIL-6の分泌は、血清中の急性期タンパク質および免疫複合体のレベル上昇の説明になると思われる(Mule et al. 1991)。
IL-6はおそらく、慢性多発性関節炎の発生機序にも、過剰濃度のIL-6が滑液中に認められることからみて一定の役割を果たしていると考えられる。IL-6は、造血細胞に対する作用から、ある種の貧血および血小板減少症の治療に適する可能性が示唆されている(Brach et al., 1992)。IL-3を前投与し、その後にIL-6を投与することで、血小板数が増加することが示されている。他のサイトカイン(例えば、IL-2)との組み合わせで、IL-6はいくつかの種類の腫瘍の治療に有用な可能性がある(Dullens et al., 1991)。
細菌性およびウイルス性髄膜炎では脳脊髄液中に極めて高いレベルのIL-6がしばしば認められる。移植患者の尿中IL-6濃度の上昇は移植片対宿主反応の初期徴候である場合がある(Kishimoto et al., 1990)。羊水中にIL-6が検出されることは、羊水内感染症の徴候である場合がある。炎症性腸疾患では、IL-6の血漿レベルの上昇が病状の指標となる可能性がある(Wolvekamp et al., 1990)。メサンギウム増殖性糸球体腎炎の患者では、IL-6の尿中レベルの上昇も病状の指標となる可能性がある(Van Snick et al., 1990)。術後血清IL-6レベルのモニタリングは、炎症状態の評価および急性期反応の早期発見に関して、C反応性タンパク質レベルのモニタリングよりもさらに有用な可能性がある(Ohzato et al., 1992)。血清および尿のIL-6レベルは川崎病の活動性の予測因子となることが示されている(Furukawa et al.,1992)。
インターロイキン-7(IL-7)は、付着性の骨髄ストロマ細胞および胸腺細胞の馴化培地中に構成的に分泌される。マウスおよびヒトのケラチノサイトもIL-7を発現して分泌することが示されている。IL-7は、インビボで腫瘍細胞のCD4(+)T細胞依存的破壊を引き起こしうるため、養子免疫療法における臨床的意義がある可能性がある(Hock et al., 1991)。IL-7は、自己または同系骨髄移植を受けて間もない患者から入手した細胞において、IL-2により誘導されるものと量的に同等なLAK細胞活性を誘導することも示されている(Pavletic et al., 1993)。これは、自己骨髄移植後に得られた、IL-2療法によるインビボ活性化をあらかじめ受けたインビトロの末梢血単核細胞においてさらに高いLAK細胞活性を誘導している(Stotter et al., 1991)。このため、IL-7は単独またはIL-2との組み合わせで、自己骨髄移植後の患者における悪性腫瘍に対する統合的免疫療法として用いられる可能性がある。
炎症性皮膚疾患および皮膚T細胞リンパ腫の発生機序におけるIL-7の関与は、IL-7の増殖促進作用およびケラチノサイトによるその合成により示唆される。胸腺内T細胞の増殖を誘導する潰瘍性大腸炎患者由来の血清中因子はIL-7と同一であることが判明しているため、IL-7は潰瘍性大腸炎における免疫調節性T細胞の障害の一因である可能性がある(Watanabe et al., 1997)。
インターロイキン-8(IL-8)は、現在CXCL8と呼ばれており、これは刺激を受けた単球によって産生されるが、組織マクロファージおよびTリンパ球によっては産生されない。CXCL8はマクロファージ、線維芽細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、肝細胞、軟骨細胞および数多くの腫瘍細胞株によっても産生される(Koch et al., 1991)。多くの種類の細胞において、CXCL8の合成はIL-1およびTNF-αによって強く刺激される。CXCL8の合成は、フィトヘマグルチニン、コンカナバリンA、二本鎖RNA、ホルボールエステル、尿酸ナトリウム結晶、ウイルスおよび細菌リポ多糖によっても誘導される(Zwahlen et al., 1993)。休止性および刺激を受けたヒト血中単球によるCXCL8の発現はIL-7によってアップレギュレートされる。軟骨細胞では、CXCL8の合成がIL-1β、TNF-αおよび細菌リポ多糖によって刺激される。ヒトアストロサイトでは、CXCL8の合成および分泌がIL-1およびTNF-αによって誘導される。CXCL8はさまざまな癌細胞株により構成的かつ一般的に産生される(Matsushima et al., 1991)。上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞ではCXCL8の分泌がIL-17によって誘導される(Baggiolini et al., 1994)。
CXCL8は乾癬および関節リウマチにおいて臨床的に重要である可能性がある。乾癬性鱗屑では濃度の上昇が観察されており、これはこれらの細胞で観察される高い増殖速度の説明になると思われる(Gillitzer et al., 1991)。CXCL8はまた、種々の炎症過程のマーカーにもなる可能性がある。CXCL8は、滑液中にこの因子が過剰量に認められることから、おそらく慢性多発性関節炎の発生機序において一定の役割を果たしていると考えられる(Peichl et al., 1991)。好中球の活性化は、関節の毛細血管内への細胞の移動を増強するように思われる。これらの細胞は毛細血管を通過して周囲組織に進入し、それによって関節を介した炎症性細胞の定常的な流れを生じさせると考えられている。
ヒトの場合、インターロイキン-10(IL-10)は、活性化CD8(+)末梢血T細胞により、抗原特異的およびポリクローン性活性化後のTヘルパーCD4(+)T細胞クローン(Th0、Th1およびTh2に類似)により、B細胞リンパ腫により、ならびに細菌リポ多糖およびマスト細胞による細胞活性化後の単球により、産生される(Howard et al., 1992)。後天性免疫不全症候群およびバーキットリンパ腫の患者由来のB細胞株は大量のIL-10を馴化培地中に構成的に分泌する(de Waal-Malefyt et al., 1992)。単球によるIL-10の合成はIL-4およびIL-10によって阻害される(Zlotnik et al., 1991)。IL-10は活動性非ホジキンリンパ腫の患者のサブグループの血清中で検出されている。IL-10レベルは中悪性度または高悪性度の非ホジキンリンパ腫における生存率の低さと相関するように思われる(Blay et al., 1993)。
インターロイキン-12(IL-12)は、誘導後の末梢リンパ球によって分泌される(Trinchieri et al., 1992)。これは主としてB細胞によって産生され、それよりも低い程度でT細胞によって産生される(Trinchieri et al., 1993)。IL-12の最も強力な誘導因子は細菌、細菌生産物および寄生生物である。IL-12はホルボールエステルまたはカルシウムイオノフォアによる刺激後にヒトBリンパ芽球細胞によって産生される。IL-12は抗原特異的T細胞集団を増殖させるのに有用な可能性がある。細胞傷害性Tリンパ球のIL-12および低用量のIL-2との培養は、抗原補助シグナルのみに応答する増殖を招いた(Chehimi et al., 1993)。IL-12は、ヘアリー細胞白血病の患者を含むさまざまな状態において、ナチュラルキラー細胞を介した細胞傷害性を増強することが示されている(Bigda et al., 1993)。
インターロイキン-13(IL-13)は、マクロファージ活性をダウンレギュレートし、IFN-γまたは細菌リポ多糖に応答して炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの産生を低下させる(McKenzie et al., 1993)。IL-13はIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)の産生を増大させる(Minty et al., 1993)。IL-13はまた、活性化マクロファージによる一酸化窒素の産生も低下させ、寄生虫駆除活性の低下をもたらす。IL-13はヒト単球分化を誘導し、培養下での生存期間を延長させるとともに、B細胞の分化および増殖ならびにアイソタイプ転換も誘導する(Herbert et al., 1993)。これはヒトB細胞におけるIL-4非依存的なIgG4およびIgEの合成、ならびに生殖細胞系列IgE重鎖遺伝子の転写を誘導する(Punnonen et al., 1993)。IL-13は、高純度の表面IgD陽性B細胞または全B細胞の培養物において、活性化CD4(+)T細胞クローンの存在下で、かなり高レベルのIgMおよびIgGを誘導するが、IgAを誘導することはない。IL-13はCD40リガンドによって活性化されたヒトB細胞の増殖および分化を誘導する(Cocks et al., 1993)。IL-13は大型顆粒リンパ球におけるIFN-γ合成に際してIL-2と協同的に作用する。IL-13は細菌リポ多糖によって誘導される組織因子の発現を強く阻害すること、およびIL-1またはTNFの発熱作用を低下させ、これにより、内皮および単球の表面を、炎症メディエーターにより誘発される凝固促進性変化から防御することが示されている。
IL-13は、インビトロで初代血液由来ヒトマクロファージにおけるヒト免疫不全ウイルス1型の産生を阻害する。ヒト好塩基球は、IgE受容体(IgER)架橋、IL-3、IL-3+C5aに応答してIL-13を産生するが、C5aのみでは産生されない(Ochensberger et al., 1996)。IL-13はIL-4と同様にB細胞上でのCD23発現を誘導し、CD72およびクラスII主要組織適合性遺伝子複合体抗原の発現を増強する。IL-13はIL-2によって誘導されるLAK細胞のキラー活性を上昇させることが観察されている(Minty et al., 1993)。
インターロイキン-15(IL-15)は、IL-1β、IFN-γおよびTNF-αに応答してヒト胎児アストロサイトおよびミクログリアによって産生されることが示されており、ヒト中枢神経系におけるT細胞性免疫応答に一定の役割を果たすと考えられている。IL-15の生物活性のいくつかはIL-2のものと類似している。IL-15はT細胞の増殖を刺激する。さらに、IL-15には細胞溶解性細胞および(リンホカイン活性化キラー)LAK細胞の生成を誘導する能力もある。IL-15はNK細胞に対する特異的成熟因子として働くように思われる。また、これはインビボでNK細胞の生存因子として働くことも示されている。高親和性でのIL-15結合は、末梢血単球およびNK細胞を含む多くのリンパ系細胞種で観察されている。
IL-15は機能的IL-2受容体成分の非存在下でマスト細胞の増殖を誘導する。マスト細胞のIL-15受容体は、T細胞で活性化されるJAK1、JAK3、STAT3およびSTAT5の代わりに、JAK2およびSTAT5を動員する。IL-15は、活性化T細胞でサイトカイン除去によって誘導されるアポトーシスを阻害する。
インターロイキン-17(IL-17)は、血管内皮細胞の移動およびコード形成を刺激する血管新生メディエーターとして働き、血管新生を促進する種々の増殖因子の産生を調節する(Numasaki et al., 2002)。IL-17は、HVS13(ウイルス性IL-17と呼ばれる)と結合する受容体、およびCTLA-8と結合する(Yao et al., 1995)。
インターロイキン-18(IL-18)は、T細胞(Okamura et al., 1995;Micallef et al., 1996)およびナチュラルキラー細胞(Tsutsui et al., 1996)によるIFN-γ産生の誘導因子をコードし、これはIL-12よりも強力な誘導因子であり(Kikkawa et al., 2001)、単球およびマクロファージは大量のさまざまなIL-18種を産生することが示されている。
IL-18は急性免疫応答時にマクロファージおよび未熟樹状細胞によって産生される。IL-18は、単球およびマクロファージ(Okamura et al., 1995;Ushio et al., 1996)、クッパー細胞(Okamura et al., 1995;Seki et al., 2001)、T細胞およびB細胞(Nakanishi et al., 2001;Klein et al., 1999)、樹状細胞(Stober et al., 2001;Gardella et al. 2000;Stoll et al., 1998;de Saint-Vis et al., 1998)、骨芽細胞(Udagawa et al., 1997);Torigoe et al., 1997)、上皮性ケラチノサイト(Stoll et al., 1998)、腸上皮細胞(Takeuchi et al., 1997;Pizarro et al., 1999)、角膜上皮細胞(Burbach et al., 2001)、糖質コルチコイド分泌性副腎皮質細胞(Conti et al., 1997)、アストロサイトおよびミクログリア(Conti et al., 1998;Suk et al., 2001)を含む、種々の免疫細胞および非免疫細胞によって発現される。
IL-18は炎症誘発性サイトカインの一つと考えられている。IL-18の重要な機能は、細胞性免疫応答のために必要なTヘルパー細胞の機能的に異なるサブセットの調節である(Nakanishi et al., 2001)。IL-18はTh1細胞に対する増殖因子および分化因子として働く。
IL-18は多面的サイトカインである。IL-18は、IgE産生を阻害するIFN-γを産生するように、活性化B細胞を誘導する(Yoshimoto et al., 1997)。IL-18はT細胞およびNK細胞によるIFN-γの産生を著しく増強することが示されている(Micallef et al., 1996)。IL-18がNK細胞によるIFN-γ産生を増大させる能力はIL-12の存在に依存する(Walker et al., 1999)。また、IL-18はGM-CSFの産生も増強することが示されており(Udagawa et al., 1997)、造骨性ストロマ細胞によって産生されたIL-18はIFN-γではなくGM-CSFを介して作用して破骨細胞形成を阻害することが示されている。
Morel et al.(2001)は、IL-18が、関節リウマチ滑膜線維芽細胞においてCXCL8(IL-8)、MGSAおよびENA-78の発現を誘導することを観察している。IL-18はT細胞によるGM-CSF産生を介して破骨細胞形成を阻害する(Udagawa et al., 1997;Horwood et al.,(1998))。
顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)は、単球、マクロファージおよび好中球によって細胞活性化後に分泌される(Demetri et al., 1991)。これはまた、ストロマ細胞、線維芽細胞および内皮細胞によっても産生される。上皮癌、急性骨髄性白血病細胞および種々の腫瘍細胞株(膀胱癌、髄芽腫)もこの因子を発現する。G-CSFの合成は、細菌エンドトキシン、TNF、IL-1およびGM-CSFによって誘導可能である。プロスタグランジンE2はG-CSFの合成を誘導する。上皮細胞、内皮細胞および線維芽細胞においてG-CSFの分泌はIL-17によって誘導される(Moore et al., 1991)。
G-CSFは骨髄系細胞系列を増殖させるために用いうる(Gabrilove et al., 1992)。骨髄採取前の組換えヒトG-CSFの前投与は、骨髄系系列に拘束された前駆細胞の総数を増加させ、自己骨髄の安定的ではあるが早められてはいない骨髄系生着を生じさせることにより、移植片を改良しうることが示されている(Lieschke et al., 1992)。G-CSFの投与の一般的な効果の一つは、コストマン症候群の患者に起こることが通常観察されている、重症感染症および発熱発作の顕著な減少である(Jakubowski et al., 1989)。G-CSF投与はまた、さまざまな抗腫瘍薬レジメンの用量強化も可能にする(Gianni et al., 1992)。
顆粒球-単球-コロニー刺激因子(GM-CSF)は、T細胞およびマクロファージにより、抗原またはマイトジェンによる細胞活性化後に他の因子とともに分泌される(Moore et al., 1991)。分泌されるコロニー刺激活性の約90%はGM-CSFに起因する(Ruef et al., 1990)。さまざまな他の細胞種、例えば内皮細胞および線維芽細胞によるGM-CSFの合成は、TNF-α、TNF-β、IL-1、IL-2およびIFNによって誘導されうる。ある種の細胞はGM-CSFを構成的に発現する(Freund et al., 1992)。GM-CSFは、血液細胞の異常成熟または白血球の生成減少のいずれかを特徴とするすべての疾患において、造血の生理的再構成のために利用することができる。GM-CSFはまた、化学療法により誘発された細胞減少症を是正するため、ならびに細胞減少症に関連した感染症および出血への素因を抑制するために用いることもできる(Fan et al., 1991)。いくつかの研究により、GM-CSFの使用によって細胞毒性薬療法に対する忍容性が高まり、細胞毒性薬療法の副作用によって余儀なくされる用量低下を防ぐためにこれを用いうることが示されている(Negrin et al., 1992)。GM-CSF投与により、1クール当たりの細胞毒性薬の用量を増やすことがしばしば可能になる。現在、GM-CSFは骨髄移植における重要な進歩であり、標準的な治療法となっている(Armitage et al., 1992)。GM-CSFは、自己または同種骨髄移植を受けた患者、および骨髄移植後の生着が遅れている患者における造血系の再構成を促進する(Schuster et al., 1992)。
インターフェロン-α(IFN-α)の諸形態は、単球/マクロファージ、リンパ芽球細胞、線維芽細胞およびさまざまな細胞種により、ウイルス、核酸、糖質コルチコイドホルモンおよび低分子量物質(n-ブチレート、5-ブロモデオキシウリジン)による誘導後に産生される。IFN-αの既知のサブタイプはすべて、相対活性は異なる場合もあるが、適したバイオアッセイにおいて同じ抗ウイルス活性、抗寄生虫活性、細胞増殖阻害活性を示す。IFN-αは造血前駆細胞における種々のサイトカインの発現を阻害し、これは続いてこれらの細胞におけるコンピテンス状態を誘導し、それらが細胞周期のG0期を通過してS期に移行することを可能にする。
いくつかの種類の腫瘍細胞のインビトロでの増殖はIFN-αによって阻害され、これが腫瘍関連細胞表面抗原の合成を刺激することもある。腎癌においてIFN-αはEGFに対する受容体の発現を低下させる。IFN-αはまた、線維芽細胞および単球のインビトロでの増殖も阻害する。IFN-αはまた、B細胞のインビトロでの増殖も阻害し、抗体の合成を阻止する。IFN-αはまた、いくつかのミトコンドリア遺伝子の発現も選択的に阻止する。
インターフェロン-β(IFN-β)は主として線維芽細胞およびいくつかの上皮細胞種によって産生される。IFN-βの合成はウイルス、二本鎖RNAおよび微生物を含む、共通のインターフェロン誘導因子によって誘導されうる。これはまた、TNFおよびIL1などのいくつかのサイトカインによっても誘導される。IFN-βは非特異的な体液性免疫応答およびウイルス感染に対する免疫応答の調節に関与する。IFN-βはHLAクラスI抗原の発現を増大させ、IFN-γにより刺激されたHLAクラスII抗原の発現を阻止する。IFN-βはNK細胞の活性を刺激し、それ故に抗体依存的細胞傷害性を刺激する。いくつかの刺激によって誘発されるTサプレッサー細胞の活性は、IFN-βによっても刺激される。IFN-βは低親和性IgE受容体CD23の合成を増強する。活性化単球において、IFN-βはネオプテリンの合成を誘導する。これはまた、β2-ミクログロブリンの血清中濃度も高める。IFN-βはいくつかのミトコンドリア遺伝子の発現を選択的に阻害する。
インターフェロン-γ(IFN-γ)は主として、抗原、マイトジェンまたはアロ抗原によって活性化されたT細胞およびナチュラルキラー細胞によって産生される(De Maeyer et al., 1992)。これは表面抗原CD4およびCD8を発現するリンパ球によって産生される(Gray et al., 1987)。他のインターフェロンと同様に、IFN-γは抗ウイルス薬および抗寄生虫薬として使用可能である(Stuart-Harris et al., 1992)。IFN-γは慢性多発性関節炎の治療に有効であることが示されている(Machold et al., 1992)。この治療(おそらくマクロファージ活性の修飾を伴う)は関節痛を著しく軽減し、さまざまな臨床的パラメーターを改善する上に、コルチコステロイド用量の減少も可能とする。IFN-γは、AIDS患者における日和見感染の治療にも有意義な可能性がある。これはまた、重症アトピー性皮膚炎における炎症、臨床症状および好酸球増多を軽減することも示されている(Hanifin et al., 1993)。
腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、マクロファージ、単球、好中球、T細胞、NK細胞によって、細菌リポ多糖によるそれらの刺激後に分泌される(Beutler et al., 1988)。CD4を発現する細胞はTNF-αを分泌するが、一方、CD8(+)細胞はTNF-αをほとんどまたは全く分泌しない。刺激を受けた末梢好中性顆粒球および刺激を受けていない細胞、さらにはさまざまな形質転換細胞株、アストロサイト、ミクログリア細胞、平滑筋細胞および線維芽細胞もTNF-αを分泌する。TNF-αの合成は、インターフェロン、IL-2、GM-CSF、サブスタンスP、ブラジキニン、免疫複合体、シクロオキシゲナーゼ阻害薬および血小板活性化因子(PAF)を含む、多くのさまざまな刺激によって誘導される(Strieter et al., 1993)。
化学療法薬とは対照的に、TNF-αは悪性細胞を特異的に攻撃する。広範囲にわたる臨床研究により、ヌード(免疫不全)マウスにおける皮下ヒト異種移植片およびリンパ節転移に対するTNF-αの直接的な細胞増殖抑制作用および細胞傷害作用、ならびに好中球、マクロファージおよびT細胞を含むさまざまな免疫エフェクター細胞に対する種々の免疫調節作用がが記述されている(Gifford et al., 1991)。
TNF-αの阻害薬が有益である可能性のあるいくつかの適応症が存在する。TNF-αは関節炎に罹患した患者の滑液中に認められるため、これらの阻害薬はこの疾患に役立つ可能性があり、このことは重症コラーゲン誘発性関節炎の動物モデル(Williams et al., 1992)およびクローン病(Derkx et al., 1993)で実際にそうであることが示されている。これらの阻害薬は全身性炎症反応症候群の重篤な転帰を改善する可能性もある。TNF-αは、ヘアリー細胞白血病細胞の生存性を促進する重要なオートクリン調節物質であるように思われる(Lindemann et al., 1989)。TNF-αは放射線照射および細胞毒性薬から造血前駆細胞を防御することも示されており、このことは、化学療法または骨髄移植によって誘発される形成不全に対してある種の治療応用の可能性がそれにあることを示唆する(Hersh et al., 1991)。
マクロファージ走化性タンパク質-1(MCP-1)(現在はCCL2と呼ばれている)は、ケモカインとして知られる走化性サイトカインのファミリーに属する。CCL2は単球に対して走化性を及ぼすが、好中球に対してはそうでない(Leonard et al., 1990)。最大限の移動誘導は10ng/mlの濃度で観察される(Leonard et al., 1991)。2つのアミノ酸位置で点変異が記載されており、これらは、好中球に対しても走化性を及ぼすようにこの因子を変化させる(Beall et al., 1992)。マクロファージに富むアテローム動脈硬化プラークではCCL2のレベル上昇が観察されている(Yla-Herttuala et al., 1991)。この因子はインビボで単球およびマクロファージの殺腫瘍活性を活性化する。これは細胞表面抗原(CD11c、CD11b)ならびにサイトカインIL-1およびIL-6の発現を調節する(Jiang et al., 1992)。CCL2はヒト好塩基球の強力な活性化因子であり、ヒスタミンの脱顆粒化および放出を誘導する(Bischoff et al., 1992)。IL-3、IL-5またはGM-CSFによって活性化された好塩基球において、CCL2はロイコトリエンC4の合成を増大させる(Bischoff et al., 1993)。
IL-1、TNF-α、PDGF、TGF-βおよびLIFはヒト関節軟骨細胞におけるCCL2の合成を誘導し、このことは滑膜関節における単球の流入および活性化を促進することにより、変性性および炎症性の関節障害の開始および進行において役割を果たしている可能性がある(Villiger et al., 1992)。CCL2は走化性以外の生物活性も呈することが示されている。これは、IL-2により活性化される細胞(LAK細胞)に類似した、CHAK(CC-ケモカイン活性化キラー)として知られるキラー細胞の増殖および活性化を誘導することができる(Hora et al., 1992)。CCL2はまた、最も強力なヒスタミン誘導因子の一つでもある。
マクロファージ炎症性タンパク質1-α(MIP-1α)(現在はCCL3と呼ばれている)は、ケモカインとして知られる走化性サイトカインのファミリーに属する。CCL3は、マクロファージによって、細菌エンドトキシンによるその刺激後に産生される主な因子の一つである。どちらのタンパク質もヒト顆粒球(好中球、好酸球および好塩基球)の細胞活性化に関与しており、さらに急性好中球性炎症にも関与するように思われる。CCL3は、好中球における反応性酸素種の産生、およびリソソーム酵素の放出を刺激する。これはまた、線維芽細胞およびマクロファージにおいて、IL-1、IL-6およびTNFといった他の炎症誘発性サイトカインの合成も誘導する。CCL3は強力な好塩基球アゴニストであり、サイトゾル中遊離カルシウムの急速な変化、ヒスタミンおよびスルフィド-ロイコトリエンの放出、ならびに走化性を誘導する。
CCL3はGM-CSFの活性を高め、比較的成熟度の高い造血前駆細胞の増殖を促進する。CCL3はまた、未熟造血幹細胞の増殖阻害因子としても作用し、そのため幹細胞阻害因子とも呼ばれる。CCL3は走化性以外の生物活性も呈する。これは、IL-2により活性化される細胞であるリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞に類似した、CC-ケモカイン活性化キラー(CHAK)細胞として知られるキラー細胞の増殖および活性化を誘導することができる。
マクロファージ炎症性タンパク質-1β(MIP-1β)(現在はCCL4と呼ばれている)は、内因性発熱物質とも呼ばれる. CCL4は、マクロファージによって、細菌エンドトキシンによるその刺激後に産生される主な因子の一つである。CCL4は、ヒト顆粒球(好中球、好酸球および好塩基球)の細胞活性化に関与しており、さらに急性好中球性炎症にも関与するように思われる。CCL4は、好中球における反応性酸素種の産生、およびリソソーム酵素の放出を刺激する。これはまた、線維芽細胞およびマクロファージにおいて、IL-1、IL-6およびTNF-αといった他の炎症誘発性サイトカインの合成も誘導する。CCL4はCCL3の誘導作用に拮抗する。ヒト単球では、細菌リポ多糖およびIL-7によってCCL4の産生が誘導されうる(Lord et al., 1992)。
CCL4は、CD8(+)T細胞と血管細胞接着分子VCAM-1との接着を増強する効果が最も強く、これはそれが内皮プロテオグリカンと複合体を形成して内皮細胞の表面に存在することによる(Cocchi et al., 1995)。CCL4はまた、造血増殖因子(造血素)とも協同的に作用する。CCL4はGM-CSFの活性を高め、比較的成熟度の高い造血前駆細胞の増殖を促進する。CCL4は走化性以外の生物活性も呈することが示されている。これは、IL-2により活性化される細胞(LAK細胞)に類似した、CHAK(CC-ケモカイン活性化キラー)として知られるキラー細胞の増殖および活性化を誘導することができる。
RANTES(requlated upon activation, normal T-cell expressed, and presumably secretedの略)は現在、CCL5(CCL5)と呼ばれている。CCL5はケモカインとして知られる走化性サイトカインのファミリーに属する。CCL5は早期反応遺伝子によって発現される。CCL5の合成はTNF-αおよびIL-1αによって誘導される。
CCL5の発現はTリンパ球の刺激後に阻害される。CCL5はT細胞、ヒト好酸球および好塩基球に対して走化性を及ぼし、炎症部位への白血球の動員に活発な役割を果たしている。CCL5は好酸球も活性化し、例えば好酸球陽イオンタンパク質を放出させる。これは好酸球の密度を変化させてそれを低密度にするが、これは全身性細胞活性化の状態を表しており、喘息およびアレルギー性鼻炎などの疾患と高い頻度で関連性があると考えられている。CCL5はまた、好酸球特異的な強力な酸化的代謝活性化因子でもある。
CCL5は単球の内皮細胞への接着性を強める。これは、細胞表面マーカーCD4およびUCHL1を発現している単球およびTリンパ球の移動を選択的に補助する。これらの細胞は、記憶T細胞の機能を備えた予備刺激されたTヘルパー細胞と考えられている。CCL5は、ケモカイン活性化キラー(CHAK)細胞として知られるキラー細胞の増殖および活性化を誘導することができる。CCL5はヒト滑膜線維芽細胞によって発現され、このため関節リウマチにおける持続的な炎症プロセスに関与している可能性がある。
可変(variable)内皮増殖因子(VEGF)は、血管内皮細胞に対して高度に特異的なマイトジェンである。VEGFは他の細胞種の増殖は強めないように思われる。VEGFは血管透過性に大きく影響し、いくつかのバイオアッセイでは強力な血管新生タンパク質であり、生理的条件下では新生血管形成に役割を果たすと考えられている。血管新生の誘導において、VEGFと塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)との間には強い相乗作用が観察されている。VEGFは平滑筋細胞およびマクロファージから放出され、これは動脈硬化性疾患の発生に役割を果たすと考えられている。内皮細胞において、VEGFはフォンビルブランド因子の合成を誘導する。これはまた、単球に対する強力な化学誘引物質でもあり、このため凝固誘発活性を有する。微小血管内皮細胞において、VEGFはプラスミノーゲンアクチベーターおよびプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1型の合成を誘導する。VEGFはまた、間質コラーゲン1型、コラーゲン2型およびコラーゲン3型を正常な生理的条件下で分解するメタロプロテイナーゼである間質コラゲナーゼの合成も誘導する。
VEGFは神経性およびその他の腫瘍の病態生理において重要であり、おそらくヒト神経膠腫に対して血管新生の強力な促進物質として働くと考えられている。その合成は低酸素状態によっても誘導される。VEGFに対する応答として観察される細胞の血管外漏出は、遠隔部位への転移増殖を決定する重要な因子であると思われる。血管透過性に及ぼす影響の点から、VEGFは正常状態および病的状態における血液脳関門の機能の変化に関与している可能性もある。
上皮増殖因子(EGF)は、胃酸の分泌を抑制することが示されている。これはまた、プロラクチンの分泌を含む、さまざまなホルモンの合成も変化させる。中枢神経系において、EGFはいくつかの種類のGABA作動性およびドーパミン作動性ニューロンの活動に影響を及ぼす。EGFは多くの細胞に対する、または外胚葉性、中胚葉性および内胚葉性由来のものに対する強力なマイトジェンである。EGFは、線維芽細胞、腎上皮細胞、ヒトグリア細胞、卵巣顆粒膜細胞および甲状腺細胞を含む、表皮細胞および上皮細胞の増殖の制御および刺激を行う。EGFはいくつかの細胞種に対して分化因子として作用する。これは、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニンおよびグリコサミノグリカンを含む、細胞外マトリックスのタンパク質の合成および代謝回転に強く影響する。EGFは骨組織からのカルシウムの放出を増加させ、TGF-αと同様に、これによって骨再吸収を促進する。EGFには内皮細胞に対する細胞分裂促進性があるため、これは限定的な程度ながら血管新生も増大させる。内皮細胞に対するEGFのマイトジェン活性はトロンビンによって増強されうる。
EGFは線維芽細胞および上皮細胞に対する強力な化学誘引物質である。EGFは、単独でも他のサイトカインとの組み合わせとしても、創傷治癒過程を媒介する重要な因子である。EGFは胃腸粘膜に対する栄養物質である可能性があり、粘膜細胞の増殖を刺激する能力があることから胃腸保護の役割を果たしている可能性がある。EGFは、胃酸の合成を阻害しない濃度で、潰瘍の治癒を効果的に促進することが示されている。
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、間葉性、上皮性および神経外胚葉性の細胞種の正常な増殖および分化を制御する、類縁性のある16〜18kDaタンパク質のファミリーを構成している。FGF-2(以前は塩基性FGFまたはbFGFとして知られていた)は、FGFファミリーの原型である。
エオタキシン(CCL11)は、インビトロで好酸球の強力な刺激物質であるケモカインである。CCL11は、多くの増殖因子によって増殖するように刺激された骨髄系前駆細胞の未熟サブセットに対する抑制活性は有していない(Broxmeyer et al.,[INSERT])。Bartels et al.([INSERT])は、ヒト皮膚線維芽細胞にCCL11配列変異体および構成性の低いCCL11 mRNA発現が存在し、これがIL-1αまたはTNF-αによって6時間以内にアップレギュレートされること、およびIFN-γによって調節されることを示している。IL-1αによる誘導は一過性であるが、TNF-αによる長期的刺激はCCL11 mRNAのさらなる増加を引き起こす。
II.病態
A.強直性脊椎炎
ASは脊椎関節症という幅広い疾患分類の中の疾患サブセットである。脊椎関節症のさまざまなサブセットに罹患する患者の疾患発症因子は往々にして非常に異なり、これは細菌感染症から遺伝までの範囲にわたる。しかしながら、すべてのサブグループにおいて、疾患プロセスの最終的な結果は体軸関節炎である。さまざまな患者集団で認められる早期の臨床的な違いにもかかわらず、彼らの多くは10〜12年間の疾患経過後にはほぼ同一の状態に陥る。最近の研究は、強直性脊椎炎の疾患発現から臨床診断が下されるまでの平均期間は7.5年であることを示唆している(Khan, 1998)。これらの同じ研究では、脊椎関節障害の有病率は関節リウマチのそれに近いという可能性が示唆されている(Feldtkeller et al., 2003;Doran et al., 2003)。
ASは体軸骨格の慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、骨外性の症状発現を伴うことも伴わないこともある。仙腸関節および脊椎が主として冒されるが、股関節および肩関節、ならびに頻度は落ちるものの末梢関節またはある種の関節外構造、例えば眼、脈管系、神経系および消化器系に病変が及ぶ場合もある。その病因はまだ完全には解明されていない(Wordsworth, 1995;Calin and Taurog, 1998)。これは主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHC I)のHLA-B27アレルと強い関連性がある(Calin and Taurog, 1998)。ASは壮年期の個体が罹患し、これは慢性疼痛ならびに腱、靱帯、関節および骨の非可逆的障害を引き起こす可能性があることから恐れられている(Brewerton et al., 1973;Brewerton et al., 1973;Schlosstein et al., 1973)。ASは単独で起こることもあれば、別の型の脊椎関節症、例えば反応性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、腱付着部炎、潰瘍性大腸炎、過敏性腸疾患またはクローン病などに伴って起こることもあり、この場合には続発性ASと分類される。
一般に罹患部位には脊柱の椎間板脊椎関節、椎間関節、肋椎関節および肋横突関節、ならびに傍脊椎靱帯構造が含まれる。筋腱および靱帯の骨との結合部位である腱靱帯付着部の炎症も、本疾患では顕著である(Calin and Taurog, 1998)。腱付着部炎の部位には形質細胞、リンパ球および多形核細胞が浸潤することが知られている。炎症過程はしばしば漸進性の線維性および骨性強直をもたらす(Ball, 1971;Khan, 1990)。
症状がより一般的な腰痛に起因すると往々にして考えられるため、診断が遅れることが多い。腰椎の柔軟性の著しい低下がASの初期徴候である。その他の一般的な症状には腰部の慢性疼痛およびこわばりが含まれ、これは通常、下部脊椎が骨盤または寛骨部と連結する箇所で始まる。
ほとんどの症状は腰部および仙腸骨部で始まるが、それらが頸部および上背部に及ぶこともある。関節炎が肩、臀部および足に起こることもある。一部の患者には眼の炎症がみられ、より重症の症例では心臓弁併発病変に注意しなければならない。
最もよくみられる症状は背部痛であるが、特に小児および女性では疾患が非定型的に末梢関節で始まることもあり、稀には急性虹彩炎(前部ブドウ膜炎)を伴うこともある。そのほかの初期症状および徴候には、広汎性肋椎病変による胸郭拡張性低下、微熱、疲労、食欲減退、体重減少および貧血がある。反復性背部痛―これはしばしば夜間性で強度はさまざまである―が、活動によって通常は軽減する朝硬直と同様に、結果的に起こる愁訴である。屈曲位または腰を曲げた姿勢によって背部痛および傍脊椎筋痙攣が和らぐ;このため、未治療患者では何らかの程度の脊柱後彎がよくみられる。
患者の1/3には全身症状が発現する。再発性で通常は限定的な経過をたどる急性虹彩炎(前部ブドウ膜炎)が稀に遷延し、これは視覚障害を起こす程度に重症となることがある。神経学的徴候が、圧迫性神経根炎または坐骨神経痛、脊椎骨折または亜脱臼および馬尾神経症候群(これは性的不能、夜間尿失禁、膀胱および直腸感覚の低下、ならびにアキレス腱反射の消失からなる)に起因して時に起こることがある。心血管系の症状には大動脈弁閉鎖不全症、狭心症、心膜炎およびECG伝導異常が含まれる。稀な肺所見に上葉線維症があり、これはTBと間違われる空洞形成を伴うことが時にあるほか、アスペルギルス感染症が併発する場合もある。
ASは、軽症または中等症の活動性脊椎炎の突発と、ほとんどまたは完全に活動性のない炎症の期間が交互に起こることを特徴とする。ほとんどの患者は適切な治療によって障害を軽微または皆無に抑えることができ、背部硬直にもかかわらず十分に生産的な生活を送ることができる。しかし時には経過が重症化および進行性であって、生活能力を失わせる著しい変形を来す場合もある。難治性虹彩炎を伴う患者、および稀ではあるが続発性アミロイドーシスを伴う患者の予後は不良である。
活動性ASのほとんどの患者では、ESRおよびその他の急性期反応物質(例えば、C反応性タンパク質および血清Igのレベル)が軽度に上昇する。IgMリウマチ因子および抗核抗体に関する検査は陰性である。HLA-B27の検査結果は陽性のことが通常であるが、これは必ずというわけではなく特異的でもない(陰性の検査結果がASの除外に役立つ程度の方が、陽性の検査結果がその診断に役立つ程度よりも有効である)。この検査は典型的な疾患を有する患者には必要でない。
診断はX線によって確かめなければならない。ごく初期の異常(軟骨下びらん、硬化または後の狭小化による偽開大)は仙腸関節に起こる。脊椎における早期の変化は、上位椎体の四角状化および脱灰、斑状の靭帯カルシウム沈着、ならびに1つまたは2つの進行性靭帯骨棘形成である。顕著な靭帯骨棘形成および広汎性の傍脊椎靭帯石灰化を伴う典型的な竹節状脊柱は早期診断のために有用ではない;これらの変化は少数の患者で平均10年間の経過後に生じる。
関節病変の重症度および全身症状の程度は個体によって大きく異なる。早期の正確な診断および治療により、疼痛および障害の年数を最小限に抑えうる可能性がある。
関節の不快感は薬剤によって軽減されうる。治療計画は通常、予防、遅延、または変形の矯正、ならびに心理社会的必要性およびリハビリテーションの必要性に対処する。適切な姿勢および関節の動きを得るためには、変形の恐れのある方向に対抗する筋肉群の強化(すなわち、屈筋群よりは伸筋群の強化)のための毎日の運動およびその他の支持療法(例えば、姿勢訓練または運動療法)が重要である。うつぶせに横たわって読書することは、背部の柔軟性を保つために役立つことがある。
NSAIDは、関節の炎症、痛みおよび筋痙攣を抑えることにより、運動および他の支持療法を行いやすくする。ほとんどのNSAIDはASに有効なことが確認されているが、薬剤の選択は有効性のわずかな違いよりも忍容性および毒性によって決定される。患者にはモニタリングを行うとともに、副作用の恐れがあることを警告すべきである。NSAIDの一日量はできるだけ減らすべきであるが、疾患が活動性にある時にはインドメタシンなどの薬剤の最大用量が必要な場合がある。薬剤投与の中止は、活動性疾患の全身徴候および関節徴候が数カ月間抑えられた後に初めて徐々に行うよう努めるべきである。シクロオキシゲナーゼ-2を阻害することからCOX-2薬と呼ばれているいくつかの新たなNSAIDは、COX-1を阻害する薬剤と同等の有効性がある上、胃粘膜および血小板凝集に対する有害作用を起こす可能性が低い。
コルチコステロイドの治療的意義は限定的である;長期使用には、硬直した脊椎の骨粗鬆症を含む、多くの重篤な副作用が伴う。急性虹彩炎に対しては通常、局所コルチコステロイド(および散瞳薬)が適している;経口コルチコステロイドはほとんど必要とされない。関節内コルチコステロイド注入は、特に1つまたは2つの末梢関節が他の関節よりも重篤な炎症を起こし、このために運動およびリハビリテーションの妨げとなっている場合には有用なことがある。
RAに対するほとんどの遅効性(寛解導入)薬剤(例えば、筋肉内投与される金剤)は、ASに対する有効性が検討されていないか有効ではないかのいずれかである。スルファサラジンは、特に末梢関節が冒されている場合に有効なことがある。投薬は500mg/日から始め、1週間ごとに500mg/日ずつ増量し、1gの1日2回投与を維持量とする(50章の「関節リウマチ」も参照のこと)。最も頻度の高い副作用は悪心であり、これは主として中枢性であるが、腸溶錠の忍容性は良好である。用量減量が役立つことがある。
麻薬、その他の強力な鎮痛薬および筋弛緩薬には抗炎症性がないため、重症の背部痛および痙攣をコントロールする補助剤として短期間のみ処方すべきである。脊椎に対する放射線療法は有効ではあるが、急性骨髄性白血疾患のリスクが10倍に高まるため、最後の手段とすべきである。
リハビリテーション療法が不可欠である。適度の睡眠および歩行体位を腹部および背部の運動と組み合わせることが、姿勢を維持するのに役立つ。運動は関節の柔軟性を維持するのに役立つ。呼吸運動は肺容量を増大させ、水泳は有酸素運動を与える。最適な治療がなされても一部の人々には脊椎の硬直または「強直」が生じるが、この癒合が立位で起こる場合には彼らの機能は維持されると考えられる。継続的なケアが非常に重要である。ASは生涯続く疾患であり、人々は往々にして治療を継続できなくなるが、そのような症例では永続的な姿勢および運動性の障害が起こる。
B.乾癬性関節炎
乾癬は炎症性の増殖性皮膚障害であり、有病率は1.5〜3%である。乾癬患者の約20%は特徴的な形態の関節炎を発症し、これにはいくつかのパターンがある(Gladman, 1992;Moll & Wright, 1991;Jones et al., 1994;Gladman et al., 1995)。一部の個体は関節症状を最初に呈するが、多くの例は皮膚乾癬を最初に呈する。患者の約3分の1では皮膚および関節の疾患が同時に悪化し(Gladman et al., 1987)、爪および遠位指節間関節の疾患との間には位置的な関係がある(Jones et al., 1994;33:834-9;V. Wright, 1956)。皮膚、爪および関節の疾患を結びつける炎症プロセスはまだ解明されていないが、免疫を介した病態が推定されている。
乾癬性関節炎(PsA)は関節炎と乾癬との合併を特徴とする慢性的な炎症性関節障害であり、1964年に関節リウマチ(RA)とは異なる臨床的実体として認められた(Blumberg et al., 1964)。その後の研究により、PsAは、強直性脊椎炎、反応性関節炎および腸疾患性関節炎を含む一群の疾患である他の脊椎関節障害(SpA)と共通した数多くの遺伝的、病的および臨床的な特徴を有することが判明した(Wright, V., 1979)。PsAがSpA群に属することについては、PsAを含むものには広範囲に腱付着部炎がみられるがRAにはみられないことを示した画像的研究により、最近さらに裏づけが得られている(McGonagle et al., 1999;McGonagle et al., 1998)。より具体的には、腱付着部炎はSpAで起こる最も初期のイベントの一つであり、骨リモデリングおよび脊椎の強直をもたらすほか、炎症性腱付着部が末梢関節に近い場合には関節滑膜炎ももたらすと推定されている。しかし、PsAは、極めて多種多様なパターンの関節病変をさまざまな重症度で呈しうるため、PsAにおける腱付着部炎と臨床症状発現との結び付きは未だにほとんど不明である(Marsal et al., 1999;Salvarani et al., 1998)。このため、PsAの多種多様な特徴の原因となる他の諸要因を想定しなければならないが、それはまだごく少数(体軸疾患と強い関連性のあるHLA-B27分子の発現など)しか同定されていない。その結果、本疾患の症状発現を特定の病的機序に位置づけることは依然として困難であり、このことはこの疾患の治療が概ね経験的なままであることを意味する。
家族研究により、PsA発症に対する遺伝的寄与が示唆されている(Moll & Wright, 1973)。強直性脊椎炎および関節リウマチなどの他の慢性炎症型関節炎には複合的な遺伝的基盤がある。しかし、PsAの遺伝的要素はいくつかの理由から評価が困難である。単独での乾癬自体に遺伝的素因に関する強い証拠があり、それがPsAの発症にとって重要な遺伝因子を覆い隠している可能性がある。大方はPsAを明確な疾患実体と認めているであろうが、関節リウマチおよび強直性脊椎炎との表現型上の部分的重複も時にみられる。また、PsA自体が均一な病態ではなく、さまざまなサブグループが提唱されている。これらのすべての交絡要因が本検討で克服されたわけではないが、本発明者らは、この疾患の範囲をカバーする3つの幅広いカテゴリーのPsA患者において候補遺伝子を調べることに的を絞った。
TNFA領域のプロモーター領域における多型は、TNF-α分泌のレベルに影響する可能性があるため非常に興味深い(Jacob et al., 1990;Bendzen et al., 1988)。TNF-α量の増加が乾癬性の皮膚(Ettehadi et al., 1994)および滑液(Partsch et al., 1997)のいずれにおいても報告されている。
最近の試験では、PsA(Mease et al., 2000)および強直性脊椎炎(Brandt et al., 2000)ともに抗TNF療法の有益性が示されている。さらに、TNF-αの座位はMHCのクラスIII領域内にあるため、隣接するクラスIおよびクラスII領域によって与えられるよりもPsAとの強固な関連性が与えられると考えられる。本発明者らのPsA群全体ではTNFAアレルと比較的弱い関連性がみられた。末梢多発性関節炎の群では稀なTNFA -238Aアレルの頻度が高く、これは脊椎炎の患者には存在しなかったが、この所見はHLA-Cw*0602との連鎖不平衡によって説明される可能性がある。TNFA -238アレルでの多型と関連する機能的結果が存在するか否かは不明である(Pociot et al., 1995)。しかし、乾癬患者に発症する関節炎のパターンが直接的または間接的にこの特定のアレルと結びついている可能性は考えられる。
Hohler et al.(A TNF-α promoter polymorphism is associated with juvenile onset psoriasis and psoriatic arthritis, J Invest Dermatol, 1997; 109: 562-5)は、PsA患者ならびに若年発症型乾癬の患者ではTNFA -238Aアレルの頻度が高いことを見いだした。TNFA -238Aの若年発症型乾癬およびPsAとの関連性はいずれもHLA-Cw6とのものよりも強かった。同様に、本発明者らの検討では、若年発症型乾癬とHLA-Cw*0602およびTNFA -238Aとの間にはいずれも強い関連性がみられたが、どちらのアレルも関節炎の発病年齢との間には関係はなかった。本発明者らの検討では、TNFA -238Aアレルを少なくとも1つ有していたPsAの患者はすべてHLA-Cw6陽性であり、このことからPsAにおけるこれらのアレルの密接な連鎖が強く示された。しかし、Hohler et al.(1997)による研究とは異なり、さらにHLA-Cw*0602との密接な連鎖によって説明されるように、TNFA -238Aアレルは末梢関節炎の患者のみで頻度が高かった。また興味深いことに、同じグループが強直性脊椎炎に関する別の研究で、稀なTNFA -308Aおよび-238Aアレルに脊椎炎の発症に対する防御効果があることを見いだしている(Hohler et al., Association of different tumor necrosis factor alpha promoter allele frequencies with ankylosing spondylitis in HLA-B27 positive individuals. Arthritis Rheum 1998; 41: 1489-92)。
C.反応性関節炎
反応性関節炎(ReA)における関節障害の機序は不明であるが、サイトカインが決定的な役割を果たしている可能性が高い。Th1プロフィールがより優位である高レベルのインターフェロンγ(IFNγ)および低レベルのインターロイキン4(IL-4)が報告されている(Lahesmaa et al., 1992;Schlaak et al., 1992;Simon et al., 1993;Schlaak et al., 1996;Kotake et al., 1999;Ribbens et al., 2000)が、いくつかの研究では、関節リウマチ(RA)患者と比較して反応性関節炎患者の滑膜(Simon et al., 1994;Yin et al., 1999)および滑液(SF)(Yin et al., 1999;Yin et al., 1997)ではIL-4およびIL-10が相対的に優位であり、IFN-γおよび腫瘍壊死因子α(TNF-α)が相対的に少ないことが示されている。RA患者よりも反応性関節炎患者の方がTNF-α分泌レベルが低いことは末梢血単核細胞(PBMC)のエクスビボ刺激後にも報告されている(Braun et al., 1999)。
反応性関節炎と関係のある細菌の除去にはIFN-γおよびTNF-αの適切なレベルでの産生が必要なことが主張されているが、IL-10はこれらの応答を抑制することによって作用する(Autenrieth et al., 1994;Sieper & Braun, 1995)。IL-10は活性化マクロファージによるIL-12およびTNF-γの合成(de Waal et al., 1991;Hart et al., 1995;Chomarat et al., 1995)ならびにT細胞によるIFN-γの合成(Macatonia et al., 1993)を阻害する調節性サイトカインである。
D.腸疾患性関節炎
腸疾患性関節炎(EA)は、クローン病または潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)に合併して起こる。これが脊椎および仙腸関節を罹患させる場合もある。腸疾患性関節炎は末梢関節、通常は膝または足首などの下肢を冒す。これは一般にごく少数または限定的な数の関節を冒し、腸疾患から間もなく続いて起こることがある。これは潰瘍性大腸炎の患者の約11%およびクローン病患者の21%に起こる。滑膜炎は一般に限定的な経過をたどり、変形性はない。
腸疾患性関節障害には、GI病態と共通した関連性がある一群のリウマチ性疾患が含まれる。これらの疾患には、細菌(例えば、赤痢菌属、サルモネラ属、カンピロバクター属、エルシニア属、クロストリジウム-ディフィシレ(Clostridium difficile))、寄生生物(例えば、糞線虫、無鉤条虫、ランブル鞭毛虫、回虫、クリプトスポリジウム属)に起因する反応性(すなわち、感染に関連した)関節炎、ならびに炎症性腸疾患(IBD)に随伴する脊椎関節障害が含まれる。その他の状態および障害には、腸バイパス(空腸回腸)性関節炎、セリアック病、ホイップル病および膠原性大腸炎が含まれる。
腸疾患性関節障害の明確な原因は不明である。胃腸管の炎症が透過性を増大させ、細菌抗原を含む抗原物質の吸収を引き起こしている可能性がある。これらの関節抗原は続いて筋骨格組織(腱付着部および滑膜を含む)に局在し、それによって炎症反応を誘発すると思われる。または、これらの抗原に対する宿主免疫応答が滑膜における自己抗原と交差反応するという分子相同性のために自己免疫応答が誘導される可能性もある。
特に興味深いのは、反応性関節炎と、HLAクラスI分子の一つであるHLA-B27との間の強い関連性である。関節炎性の可能性のある細菌由来の抗原ペプチドがB27分子の抗原提示グルーブ内に適合し、CD8+ T細胞応答を引き起こす可能性がある。HLA-B27トランスジェニックラットは関節炎および消化管炎症を伴う腸疾患性関節障害の特徴を発症する。
E.潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、炎症および潰瘍と呼ばれるびらんを引き起こす疾患である。炎症は通常、直腸および結腸の下方に起こるが、これが結腸全体に及ぶこともある。潰瘍性大腸炎は稀には回腸終末部と呼ばれる最終部分を除く小腸にも及ぶことがある。潰瘍性大腸炎は大腸炎または直腸炎とも呼ばれることがある。炎症は結腸の内容物をしばしば排出させ、下痢の原因となる。潰瘍は、炎症が結腸の内層細胞を死滅させた部位に形成される;潰瘍は出血し、膿を生成する。
潰瘍性大腸炎は、小腸および結腸における炎症を引き起こす疾患に関する一般名である炎症性腸疾患(IBD)の一つである。潰瘍性大腸炎は、その症状が他の腸障害および別の型のIBDであるクローン病と類似しているため、診断が困難である。クローン病は、それが腸壁内部のより深部に炎症を引き起こす点で潰瘍性大腸炎とは異なる。また、クローン病は通常は小腸に起こるが、これが口腔、食道、胃、十二指腸、大腸、虫垂および肛門に起こることもある。
潰瘍性大腸炎はいかなる年齢の人にも起こりうるが、最も多いのはそれが15〜30歳の間に始まることであり、より頻度は落ちるものの50〜70歳でも起こる。小児および青少年も時折この疾患を発症する。潰瘍性大腸炎の罹患率は男性および女性とも同じであり、いくつかの家系では発症が続くように思われる。潰瘍性大腸炎を引き起こす原因に関する理論は多いが、いずれも立証されていない。最もよく知られた理論は、身体の免疫系が、腸壁内で進行性の炎症を引き起こすことにより、ウイルスまたは細菌に反応するというものである。潰瘍性大腸炎の人々は免疫系に異常があるが、医師はこれらの異常が疾患の原因であるのか結果であるのかを知らない。潰瘍性大腸炎が精神的苦痛またはある特定の食物または食品に対する感受性によって引き起こされることはないが、一部の患者ではこれらの要因が症状の引き金となっている可能性がある。
潰瘍性大腸炎の最も一般的な症状は腹痛および血性下痢である。患者が疲労、体重減少、食欲減退、直腸出血、ならびに体液および栄養素の減少を示すこともある。患者の約半数では症状は軽度である。それ以外の患者では頻回の発熱、血性下痢、悪心および重症腹部痙攣が起こる。潰瘍性大腸炎が、関節炎、眼の炎症、肝疾患(肝炎、肝硬変および原発性硬化性胆管炎)、骨粗鬆症、皮疹および貧血などの問題を引き起こすこともある。なぜ結腸以外で問題が起こるかは不明である。科学者らは、これらの合併症は免疫系が体内の他の部分で炎症を誘発させた場合に起こると考えている。これらの問題の一部は大腸炎の治療によって消失する。
潰瘍性大腸炎と診断を下すためには詳細な身体診察および一連の検査が必要な場合がある。貧血について調べるために血液検査を行ってもよく、これによって結腸または直腸内の出血が示される可能性がある。血液検査によって、体内のどこかに炎症のがあることを示す徴候である白血球数増多が判明することもある。便試料を検査することにより、医師は結腸または直腸における出血または感染を発見することができる。医師が大腸内視鏡検査またはS状結腸検査を行う場合もある。いずれの検査においても、医師は、結腸および直腸の内側を観察するために、内視鏡―コンピュータおよびTVモニターと接続された長く柔軟で照光能のあるチューブ―を肛門から挿入する。結腸壁に炎症、出血または潰瘍があれば医師はそれを見つけることができる。検査中に医師が生検試料採取を行うこともあり、これには顕微鏡で観察するために結腸の内層から組織試料を採取することが含まれる。結腸のバリウム注腸X線検査が必要になる場合もある。この処置は、白墨のような白い溶液であるバリウムで結腸を満たすことを含む。バリウムはX線フィルム上で白く写り、医師が、そこに存在する可能性のある潰瘍またはその他の異常を含め、結腸を明瞭に観察することが可能となる。
潰瘍性大腸炎に対する治療は疾患の重症度に応じて決まる。ほとんどの人々は薬物療法によって治療される。重症例では、罹病した結腸を除去するための外科手術を患者が受けることが必要な場合もある。外科手術は潰瘍性大腸炎に対する唯一の治癒手段である。症状が特定の食物によって誘発される一部の人々では、濃く味付けされた食物、生の果実および野菜または乳糖(ラクトース)のように腸を不調にする食物を避けることによって症状をコントロールすることができる。各々の人々が体験する潰瘍性大腸炎はさまざまであるため、治療は各個体に合わせて行われる。情緒的および心理学的な支持療法も重要である。一部の人々では寛解―症状が消失している期間―が数カ月または数年にわたって続くことがある。しかし、ほとんどの患者では結局症状が再発する。疾患のこの変化パターンは、治療が有効であった場合にそれを必ずしも明確にできないことを意味する。潰瘍性大腸炎の一部の患者は、状態を監視するために定期的に医師を受診して、ある程度の期間にわたって診療を受けることが必要である。
治療の目標は、潰瘍性大腸炎の人々の寛解を誘導して維持すること、および生活の質を向上させることである。いくつかの種類の薬剤が利用可能である:
アミノサリチル酸―5-アミノサリチル酸(5-ASA)を含む薬剤は、炎症の抑制の助けとなる。スルファサラジンはスルファピリジンと5-ASAとの配合剤であり、寛解の誘導および維持のために用いられる。スルファピリジン成分は抗炎症性の5-ASAを腸に運ぶ。しかし、スルファピリジンは悪心、嘔吐、胸焼け、下痢および頭痛などを含む副作用を招く恐れがある。オルサラジン、メサラミンおよびバルサラジドなどの他の5-ASA剤は異なる担体を有しており、より副作用が少なく、スルファサラジンを服用できない人々も用いうる可能性がある。5-ASA剤は、結腸における炎症の位置に応じて経口、注腸または坐薬として投与される。軽症または中等症の潰瘍性大腸炎の人々はほとんど、この群の薬剤によってまず治療される。
副腎皮質ステロイド―プレドニゾンおよびヒドロコルチゾンなども炎症を軽減する。これらは中等症ないし重症の潰瘍性大腸炎を有する人々、または5-ASA剤に反応しない人々に用いられることがある。副腎皮質ステロイドはステロイド剤としても知られており、炎症の位置に応じて経口、静脈内、注腸または坐薬として投与しうる。これらの薬剤は体重増加、座瘡、顔面の発毛、高血圧、気分変動および感染リスク増大などの副作用の原因となる。この理由から、これらの長期使用は推奨されていない。
免疫調節薬―アザチオプリンおよび6-メルカプトプリン(6-MP)などは免疫系に影響を及ぼすことによって炎症を軽減する。これらは、患者5-ASAにもコルチコステロイドにも反応しない患者、またはコルチコステロイドに依存性のある患者に用いられる。しかし、免疫調節薬は遅効性であり、完全な有益性が認められるまでに最長6カ月間を要することがある。これらの薬剤を使用している患者に対しては、膵炎および肝炎、白血球数減少および感染リスク増大を含む合併症に関して監視する。コルチコステロイド静脈内投与に反応しない人々における活動性で重症の潰瘍性大腸炎を治療するために、シクロスポリンAが6-MPまたはアザチオプリンとともに用いられることがある。患者をリラックスさせるため、または疼痛、下痢もしくは感染を緩和するために他の薬剤他の薬剤が投与されることもある。
時には、患者が入院しなければならないほどに症状が重症のこともある。例えば、患者が脱水の原因となる重症出血または重症下痢を来すことがある。このような症例では、医師は下痢、ならびに血液、体液および無機塩の損失を止めるように試みると考えられる。患者に特殊な食事、経静脈的な栄養供給、薬物療法、時には外科手術が必要となる場合もある。
潰瘍性大腸炎患者の約25〜40%は、大量出血、重症疾患、結腸破裂または癌のリスクのために、最終的には結腸を除去しなければならない。時には、薬物療法が奏功しない場合、またはコルチコステロイドもしくは他の薬剤の副作用のために患者の健康状態が危ぶまれる場合には、医師が結腸の除去を推奨することも考えられる。結腸および直腸を除去するための外科手術(直腸結腸切除術として知られる)は、以下のいずれかに従って行われる:
回腸瘻造設術では、外科医が腹部にストーマと呼ばれる小さな開口部を作り、それを回腸と呼ばれる小腸の末端部と接続する。排泄物は小腸を通ってストーマから体外に排出される。ストーマのサイズはほぼ1クォーター(quarter)であり、通常は腹部の右下側のウエストライン付近に配置される。開口部には排泄物を回収するための嚢を覆い被せ、患者はその嚢を必要に応じて廃棄する。
回腸肛門吻合術または貫通手術では、肛門の部分が保存されるために、患者は正常な便通を行える。この手術では、外科医は 結腸の罹患部および結腸の内側を除去し、直腸の外側の筋肉を残す。続いて外科医は回腸を直腸の内側および肛門と接続し、嚢を形成する。排泄物は嚢内に貯蔵され、通常の様式で肛門を通って排出される。排便はこの処置の前よりも頻回かつ水様性になることがある。想定される合併症に嚢の炎症(回腸嚢炎)がある。
すべての手術がどの患者にも適するというわけではない。どの外科手術を行うかは、疾患の重症度ならびに患者の必要性、推定余命およびライフスタイルに依存する。この決断にさらされた人々は、医師、結腸外科手術患者に対して従事する看護師(ストーマ療法士)および他の結腸外科手術患者と対話することにより、できるだけ多くの情報を得るべきである。患者擁護団体は人々に支援グループおよびその他の情報源を案内することができる。
潰瘍性大腸炎の大半の患者は外科手術を受ける必要はないと考えられる。しかし、外科手術が必要になった場合、患者の中には、外科手術後に大腸炎が治癒し、ほとんどの人々が正常な活動的な人生を続けられることを知って元気づけられる人もいる。
F.クローン病
免疫抑制が試みられているもう一つの疾患がクローン病である。クローン病の症状には腸の炎症ならびに腸狭窄および腸瘻の発生が含まれる;これらの症状にニューロパチーがしばしば随伴する。5-アミノサリチル酸(例えば、メサラミン)またはコルチコステロイドなどの抗炎症薬が通常は処方されるが、それらは必ずしも有効というわけではない(V. A. Botoman et al., 1998に総説がなされている)。コルチコステロイドに抵抗性があるか忍容性のない患者には、シクロスポリンによる免疫抑制が時に有益である(J. Brynskov et al., 1989)。
しかし、患者の90%では最終的に外科的な是正が必要である;50%が結腸切除術を受けている(Leiper et al., 1998;Makowiec et al., 1998)。外科手術後の再発率は高く、50%が5年以内にさらに外科手術を必要とする(Leiper et al., 1998;Besnard et al., 1998)。
クローン病の病因に関する一つの仮説は、おそらくは遺伝的感受性および環境因子(例えば、喫煙)に起因する腸粘膜障壁の不全によって、免疫系が細菌および食物抗原を含む腸内腔由来の抗原に曝露されるというものである(例えば、Soderholm et al., 1999;Hollander et al., 1986;D. Hollander, 1992)。もう一つの仮説は、ヨーネ菌(Mycobacterium paratuberculosis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、異常大腸菌もしくはパラミクソウイルスなどの病原体による持続的腸感染が免疫応答を誘発する;または正常な腸管微生物叢ならびにそれらが産生する代謝産物および毒素といった偏在性抗原に対する脱調節的な免疫応答が原因で症状が起こるというものである(Sartor, 1997)。血清中のIgAおよびIgG性の抗サッカロマイセス-セレビシエ抗体(ASCA)の存在は、小児クローン病に対する診断能が高いことが判明している(Ruemmele et al., 1998;Hoffenberg et al., 1999)。
クローン病では、脱調節的な免疫応答が細胞性免疫病態の方向に偏ってみられる(Murch, 1998)。しかし、シクロスポリン、タクロリムスおよびメサラミンなどの免疫抑制薬がコルチコステロイド抵抗性のクローン病の症例を治療するために用いられているものの、その奏功性はさまざまである(Brynskov et al., 1989;Fellerman et al., 1998)。
クローン病に対する診断的および治療的なツールを開発するための最近の取り組みは、サイトカインの中心的な役割に的を絞っている(Schreiber, 1998;van Hogezand & Verspaget, 1998)。サイトカインは、細胞間相互作用、細胞間連絡または他の細胞の挙動に対して特定の作用を及ぼす低分子量の分泌性タンパク質または因子(5〜20kD)である。サイトカインはリンパ球、特にTH1およびTH2リンパ球、単球、腸マクロファージ、顆粒球、上皮細胞ならびに線維芽細胞によって産生される(Rogler &. Andus, 1998;Galley & Webster, 1996に総説がなされている)。サイトカインの中には炎症誘発性のものもあり(例えば、TNF-α、IL-1(αおよびβ)、IL-6、IL-8、IL-12または白血病阻害因子[LIF]);抗炎症性のものもある(例えば、IL-1受容体アンタゴニスト、IL-4、IL-10、IL-11およびTGF-β)。しかし、ある特定の炎症状態の下では、それらの作用には部分的重複または機能的重複性が存在する可能性がある。
活動性のクローン病の症例では、流血中に分泌されるTNF-αおよびIL-6の濃度が上昇しており、粘膜細胞によってTNF-α、IL-1、IL-6およびIL-8が過剰に局所産生される(id.;Funakoshi et al., 1998)。これらのサイトカインは、骨成長、造血ならびに肝臓、甲状腺および神経精神機能を含む生理的システムに対して広範囲にわたる作用を及ぼす。また、クローン病の患者では炎症誘発性IL-1βが優位となるIL-1β/IL-1ra比の不均衡も観察されている(Rogler & Andus, 1998;Saiki et al., 1998;Dionne et al., 1998;しかしS. Kuboyarna, 1998も参照のこと)。ある研究は、便試料におけるサイトカインプロフィールを、クローン病に対する有用な診断ツールとして用いうる可能性を示唆している(Saiki et al., 1998)。
クローン病に対して提唱されている治療には、種々のサイトカインのアンタゴニスト(例えば、IL-1ra)、阻害薬(例えば、IL-1β変換酵素および抗酸化剤)および抗サイトカイン抗体の使用が含まれる(Rogler and Andus, 1998;van Hogezand & Verspaget, 1998;Reimund et al., 1998;N. Lugering et al., 1998;McAlindon et al., 1998)。特に、TNF-αに対するモノクローナル抗体が試みられ、クローン病の治療にある程度の成果を上げている(Targan et al., 1997;Stack et al., 1997;van Dullemen et al., 1995)。
クローン病の治療のためのもう一つのアプローチは、炎症反応の引き金になる可能性のある細菌集団を少なくとも部分的に駆除し、それを非病原性集団に置き換えることである。例えば、米国特許第5,599,795号は、ヒト患者におけるクローン病の予防および治療のための方法を開示している。彼らの方法は、既存の細菌叢を駆除するために腸管を少なくとも1つの抗生物質および少なくとも1つの抗真菌薬で滅菌すること、ならびにそれらを正常なヒトから採取した特徴が明確な別の選抜された細菌と置き換えることに向けられている。Borodyは、洗浄による既存の腸内細菌叢の少なくとも部分的な除去、および疾患に関してスクリーニングしたヒトドナーからの便接種物またはバクテロイデス属および大腸菌族を含む組成物により導入された新たな細菌集団による置換によって、クローン病を治療する方法を教示している(米国特許第5,443,826号)。しかし、診断および/または治療の目標となりうるクローン病の原因は解明されていない。
G.関節リウマチ
RAの明確な病因は依然として不明であるが、関節疾患の最初の徴候は滑膜内層に現れ、滑膜線維芽細胞の増殖および関節辺縁の関節表面へのそれらの付着を伴う(Lipsky, 1998)。続いて、マクロファージ、T細胞およびその他の炎症性細胞が関節内に動員され、そこでそれらは、骨および軟骨の破壊に至る慢性続発症の一因となるインターロイキン-1(IL-1)ならびに炎症において一定の役割を果たす腫瘍壊死因子(TNF-α)といったサイトカインを含むさまざまなメディエーターを産生する(Dinarello, 1998;Arend & Dayer, 1995;van den Berg、2001)。血漿中のIL-1濃度は健常個体よりもRA患者の方が有意に高く、注目されることに血漿IL-1レベルはRAの疾患活動度と相関する(Eastgate et al., 1988)。さらに、IL-1の滑液レベルはRAのさまざまなX線像上および組織学的な特徴と相関する(Kahle et al., 1992;Rooney et al., 1990)。
正常関節では、上記およびその他の炎症誘発性サイトカインの作用は、種々の抗炎症性サイトカインおよび調節因子によってバランスがとれている(Burger & Dayer, 1995)。このサイトカインバランスの意義は、周期的な発熱が一日中みられる若年性RA患者が物語っている(Prieur et al., 1987)。発熱の各ピーク後にはIL-1の作用を阻止する因子が血清中および尿中に認められる。この因子は単離されてクローニングされ、IL-1遺伝子ファミリーのメンバーであるIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)として同定された(Hannum et al., 1990)。IL-1raはその名称が示しているように、I型IL-1受容体に対するIL-1の結合と競合する天然の受容体アンタゴニストであり、その結果としてIL-1の作用を阻止する(Arend et al., 1998)。IL-1を有効に阻止するためには10倍〜100倍過剰量のIL-1raが必要と考えられる;しかし、RA患者から単離された滑膜細胞は、IL-1の作用に十分に拮抗する程度にはIL-1raを産生しないように思われる(Firestein et al., 1994;Fujikawa et al., 1995)。
H.全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患の原因も判明していない。全身性エリテマトーデス(SLE)は、組織損傷をもたらす自己抗体および免疫複合体の組織沈着を特徴とする自己免疫性リウマチ性疾患である(Kotzin, 1996)。MSおよび1型糖尿病などの自己免疫疾患とは異なり、SLEは数多くの臓器系を直接冒し、その臨床症状は多様であって程度もさまざまである(Kotzin & O'Dell, 1995により総説がなされている)。例えば、一部の患者は主として皮疹および関節痛を示して自然寛解し、ほとんど薬物療法を必要としない。その範囲の対極にあるのは、ステロイドおよびシクロホスファミドなどの細胞毒性薬剤を高用量で用いる治療を必要とする、重症かつ進行性の腎病変を呈する患者である(Kotzin, 1996)。
SLEの血清学的特徴、および利用しうる主な診断検査には、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ss-DNA)およびクロマチンなどの細胞核の成分に対するIgG抗体の血清レベルの上昇がある。これらの自己抗体のうち、IgG抗dsDNA抗体はループス糸球体腎炎(GN)の発症に主な役割を果たす(Hahn & Tsao, 1993;Ohnishi et al., 1994)。糸球体腎炎は、血液浄化作用のある腎糸球体の毛細血管壁が糸球体基底膜の上皮側に対する付着によって肥厚化する重篤な疾患である。この疾患は慢性かつ進行性のことが多く、最終的には腎不全に至る可能性がある。
これらの自己免疫疾患において自己抗体が誘導される機序は未だに不明である。診断および/または治療の目標となりうるSLEの原因はまだ解明されていないため、治療は、基礎をなす原因に対してではなく、例えばマクロライド系抗生物質を用いて免疫応答を抑制することに向けられる(例えば、米国特許第4,843,092号)。
I.家族性地中海熱
家族性地中海熱は、発熱および腹膜炎(腹膜の炎症)の再発性発作によって通常特徴づけられる遺伝性障害である。1997年に、研究者らはFMFの遺伝子を同定し、この遺伝性リウマチ性疾患の原因となる複数の異なる遺伝子変異を見いだした。この遺伝子は第16番染色体上に発見され、ほとんど顆粒球(免疫応答に重要な白血球)のみに認められるタンパク質をコードする。このタンパク質は、免疫応答を不活性化することにより、炎症を制御された状態に保つのを通常手助けしている可能性が高い―この「ブレーキ」がないと、不適切な本格的炎症反応が起こる:これがFMFの発作である。診断性のあるサイトカインの分子的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたFMFを有する患者6例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
J.筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、脳幹、脊髄および運動皮質における運動ニューロンを死滅させる、例外なく致死的で通常は急速進行性の疾患である。ALS全症例のうち約85%は孤発性である。残りの家族性のもののうち、約25%はCu,Zn-スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)の変異に起因する(Cudkowicz et al., 1997;Orrell et al., 2000)。家族性ALSのマウスモデルが10年前から得られている(Gurney et al., 1994)。特に、残基93のグリシンがアラニンに置換されたヒト変異型SOD1(G93A-SOD1)を高コピー数で発現するマウスは、運動ニューロン疾患を3〜4カ月齢の時点で発症する。これらのマウスにおける疾患発現は顕著であり、これは一部には、中枢神経系の内部での、広範囲の炎症誘発性サイトカインのアップレギュレーションおよびいくつかの原型的な抗炎症性サイトカインの選択的アップレギュレーションによる(Hensley et al., 2002;2003)。また別の研究では、アラキドン酸代謝産物、特にシクロオキシゲナーゼ-II(COX-II)によって生成されるプロスタグランジンがマウスALSの病態生理と関連づけられている(Drachman et al., 2002)。G93A-SOD1マウスにおける進行性神経炎症の観察所見を、変異型SOD1のニューロン特異的発現では疾患が再現されなかったという最近の報告(Pramatarova et al., 2001;Lino et al., 2002)と総合することにより、グリア機能不全がおそらくは正常なサイトカインホメオスタシスを崩壊させることにより、ALSのマウスモデルにおける神経病理を引き起こすという仮説が考えられている。
現在まで、ALSを有するヒトにおけるサイトカイン変化を調べるために行われた研究は少数に過ぎない。サイトカインネットワークを研究することは、拮抗性または相乗作用性サイトカインの間に存在する動的な相互関係が理由で、技術的に難しい。さらに、後期にあるヒトALSの研究は、全身的な組織変性および薬物療法による交絡的影響のためにさらに複雑になると考えられる。このことは、ヒトの臨床研究に対して応用可能な疾患重症度(および薬物有効性)のバイオマーカーに対しては差し迫った需要があることからみて、非常に残念なことである(Bradley et al., 2003)。確実なバイオマーカーの開発は、薬物有効性の評価を、生活機能質問票および生存分析といった従来の手段によって行えるよりも迅速に行えるようにすることにより、治療法の候補の臨床評価を容易にすると考えられる。
K.過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛および排便習慣の変調を特徴とする機能的障害である。この症候群は青年期に始まることがあり、著しい能力障害を伴う恐れがある。この症候群は均一な障害ではなく、主症状―下痢、便秘または疼痛―に基づいてIBSのサブタイプが記載されている。発熱、体重減少および胃腸出血などの「警告的」症状がない場合には、一連の限定的な検査が必要となる。ひとたびIBSとの診断が下されれば、統合的な治療アプローチにより、症状の重症度を効果的に軽減することができる。IBSは頻度の高い疾患であるが、その有病率はさまざまである。一般に、IBSには米国の成人の約15%が罹患し、男性よりも女性の頻度が3倍である(Jailwala et al., 2000)。
IBSによる医師への受診は毎年240万〜350万件に達する。これは消化器専門医が診察する疾患のうち最も頻度が高いだけでなく、プライマリケア医が診察する胃腸疾患としても最も高頻度である(Everhart et al., 1991;Sandler, 1990)。
IBSはコストのかかる疾患でもある。腸症状のない人々と比べて、IBSを有する人々は就業日を3倍も多く損なっており、具合が悪いために働けないと報告している可能性も高い(Drossman et al., 1993;Drossman et al., 1997)。さらに、IBSを有する人々には、腸障害のない人々よりも数百ドルも多くの医療費がかかる(Talley et al., 1995)。
IBSの患者が経験する腹痛および排便習慣の増悪および寛解の理由となる特定の異常は認められていない。IBSに関する進展途上の理論では、脳-腸系統の数多くのレベルでの調節不全が示唆されている。運動障害、内臓過敏性、中枢神経系(CNS)の調節異常および感染症のいずれもが関係するとみなされている。さらに、心理社会的因子が重要な修飾的役割を果たす。異常な腸運動は長い間、IBSの発生機序における要因であると考えられてきた。食後の小腸通過時間は、便秘が主体であるサブタイプまたは疼痛が主体であるサブタイプの患者よりも下痢が主体であるIBSの患者の方が短いことが示されている(Cann et al., 1983)。
絶食中の小腸に関する研究で、IBSの患者には離散的でクラスター化した収縮と長期的で伝播性の収縮の両方が存在することが報告されている(Kellow & Phillips, 1987)。患者はまた、不規則な収縮に伴う疼痛を健常者よりも高い頻度で経験する(Kellow & Phillips, 1987;Horwitz & Fisher, 2001)。
これらの運動性所見はIBSの患者における症候群の全体を説明するものではない;実際、これらの患者の大半には明らかな異常はみられない(Rothstein RD, 2000)。IBSの患者は内臓痛に対する感受性が亢進している。直腸S状結腸のバルーン拡張術を用いた研究では、IBS患者は対照被験者よりもはるかに低い圧力および容積で疼痛および膨満感を自覚することが示されている(Whitehead et al., 1990)。これらの患者は身体刺激に対しては正常な知覚を保っている。
数多くの理論がこの現象を説明するために提唱されている。例えば、内臓内部の受容体の拡張または内腔内容物に対する感受性が高まっている可能性がある。脊髄後角内のニューロンは興奮性が高まっている可能性がある。さらに、CNSでの知覚処理の変化が関係している可能性もある(Drossman et al., 1997)。機能的核磁気共鳴画像検査により、対照被験者と比較して、IBSの患者では、疼痛を伴う直腸刺激に反応して、重要な疼痛中心の一つである前部帯状皮質が活性化が亢進していることが最近示されている(Mertz et al., 2000)。
感染性腸炎とその後のIBS発症との間の関係を示唆する証拠はますます増えている。炎症性サイトカインが一定の役割を果たしている可能性がある。確定された細菌性胃腸炎の病歴を有する患者に対する調査(Neal et al., 1997)では、25%が持続的な排便習慣の変化を報告した。症状の持続は急性感染時の心理的ストレスに起因する可能性がある(Gwee et al., 1999)。
最近のデータからは、小腸内の細菌過剰増殖がIBS症状に役割を果たす可能性が示唆されている。本発明者らの研究(Pimentel et al., 2000)では、水素呼気検査を実施したIBS患者202例のうち157例(78%)が細菌過剰増殖に関して陽性の検査所見を示した。追跡調査での検査を受けた被験者47例のうち25例(53%)は、抗生物質治療による症状(すなわち、腹痛および下痢)の改善を報告した。
IBSはさまざまな症状を呈することがある。しかし、腹痛および排便習慣の変化は主な特徴であり続ける。腹部不快感は痙攣性で左下四半分に位置するとしばしば表現されるが、重症度および位置は大きく異なることがある。患者が下痢、便秘または下痢と便秘とが交互に起こるエピソードを報告することもある。下痢症状は通常、量の少ない軟便として表現され、便に粘液性排泄物が伴うことも時にある。患者が膨満感、便意切迫、不完全な排便および腹部膨満を報告することもある。上部消化管症状、胃食道逆流、消化不良または悪心を呈することもある(Lynn & Friedman, 1993)。
症状の持続はさらなる検査の適応とはならない;これはIBSの特徴であり、それ自体はこの症候群の予想される症状である。症状が悪化または変化している患者は、より広範囲にわたる診断的評価の適応となる。さらなる検査の適応となるものには、警告的症状の存在、50歳以後での症状発現、および結腸癌の家族歴も含まれる。検査には、大腸内視鏡検査、腹部および骨盤のコンピュータ断層撮影法ならびに小腸または大腸のバリウム検査が含まれうる。
L.若年性関節リウマチ
若年性関節リウマチ(JRA)は小児において最も頻度の高い関節炎の形態であり、慢性炎症および滑膜肥厚を特徴とする一群の疾患が該当する。この用語は欧州で若年性慢性関節炎および/または若年性特発性関節炎と呼ばれている一群の疾患と部分的に重複するが、完全に同義ではない。
Jarvis(1998)および別の研究者(Arend, 2001)は、成人および小児におけるリウマチ性疾患の発生機序には先天免疫と適応免疫との複雑な相互作用が関与すると提唱している。この複雑性が、疾患の発生機序を解明する困難さの中核を成している。
先天免疫系および適応免疫系はいずれも、多くの種類の細胞、数多くのさまざまな細胞表面タンパク質および分泌タンパク質、ならびにポジティブフィードバックおよびネガティブフィードバックの相互接続的なネットワークを用いている(Lo et al., 1999)。さらに、概念上は分離しうるものの、免疫系の先天性部分および適応性部分は機能的に交差しており(Fearon & Locksley, 1996)、これらの交点で起こる病的イベントは成人型および小児型の慢性関節炎の発症機序の解明に大きく関係する可能性が高い(Warrington, et al., 2001)。
多関節性JRAは、手の小関節を含む、多数の関節(4つまたはそれ以上)における炎症および滑膜増殖を特徴とする明確な臨床的サブタイプである(Jarvis, 2002)。JRAのこのサブタイプは重症のことがあり、これはその多関節性病変およびその経時的に急速な進行の両方のためである。臨床的には明確ではあるものの、多関節性JRAは均一なものではなく、患者は疾患の症状発現、発症年齢、予後および治療反応の点でさまざまである。これらの違いは、この疾患で起こる免疫性および炎症性の攻撃の性質の差異の範囲を反映している可能性が高い(Jarvis, 1998)。
M.シェーグレン症候群
原発性シェーグレン症候群(SS)は慢性で緩徐進行性の全身性自己免疫疾患であり、中年女性が主として罹患するが(女性と男性との比は9:1)、小児を含むすべての年齢でみられる(Jonsson et al., 2002)。これはリンパ球浸潤、ならびにCD4+、CD8+リンパ球およびB細胞を含む単核細胞により浸潤された外分泌腺の破壊を特徴とする(Jonsson et al., 2002)。さらに、腺外(全身性)症状が患者の3分の1にみられる(Jonsson et al., 2001)。
腺リンパ球浸潤は進行性の特徴であり(Jonsson et al., 1993)、これは広汎性の場合、臓器の大部分を置き換えることがある。興味深いことに、一部の患者における腺浸潤物は唾液腺における異所性リンパ系微細構造に非常に類似している(異所性胚中心と呼ばれている)(Salomonsson et al., 2002;Xanthou & Polihronis, 2001)。SSにおいて異所性GCは、濾胞性樹状細胞および活性化内皮細胞のネットワークを伴う、T細胞およびB細胞の増殖性細胞の凝集物と定義される。標的組織内に形成されるこれらのGC様構造は自己抗体の産生を伴う機能的特性も示す(抗Ro/SSAおよび抗La/SSB)(Salomonsson & Jonsson, 2003)。
RAなどの他の全身性自己免疫疾患では、異所性GCのために重要な因子が同定されている。GCを有するリウマチ滑膜組織はケモカインCXCL13、CCL21およびリンホトキシン(LT)-βを産生することが示されている(濾胞中心および外套部B細胞の表面に検出されている)。これらの分析物の多変量回帰分析により、CXCL13およびLT-βがリウマチ滑膜炎におけるGCの存在を予測する独立したサイトカインであることが同定された(Weyand & Goronzy, 2003)。最近、CXCL13およびCXCR5は唾液腺において、B細胞およびT細胞を動員し、それによってSSにおけるリンパ系新生および異所性GC形成に寄与することにより、炎症プロセスに必須な役割を果たすことが示されている(Salomonsson & Larsson, 2002)。
N.早期関節炎
さまざまな炎症性関節障害の臨床症状は、疾患の経過における初期には類似している。その結果、びらん性関節障害に至る重症かつ持続的な滑膜炎を発症するリスクのある患者を、関節炎がより限定的な経過をたどる患者と鑑別することはしばしば困難である。このような鑑別は、治療の対象を適切に定め、びらん性疾患を有する者を積極的に治療するとともに、比較的限定的な経過をたどる疾患の患者における不要な毒性を避けるためには極めて重要である。関節リウマチ(RA)などのびらん性関節障害に関する現在の臨床基準の早期疾患における有効性は相対的に低く、関節数および急性期応答といった疾患活動度の従来のマーカーでは、転帰が不良である可能性の高い患者を適切に特定することができない(Harrison & Symmons et al., 1998)。滑膜で起こる病的イベントを反映するパラメーターは、予後判定上かなり有意義である可能性が非常に高い。
早期の炎症性関節炎における転帰不良に関する予測因子を同定するための最近の取り組みにより、RA特異的な自己抗体、特にシトルリン化ペプチドに対する抗体の存在が、早期炎症性関節炎コホートにおけるびらん性および持続性疾患と関連することが同定されている。このことに基づき、患者血清中の抗CCP抗体の同定を助けるために環状シトルリン化ペプチド(CCP)が開発された。このアプローチを用いて、抗CCP抗体の存在はRAに対して特異的かつ高感度であり、RAを他の関節障害と区別することができ、持続性のびらん性滑膜炎をその転帰が臨床的に顕在化する前に予測しうることが示された(Schellekens et al., 2000)。重要なこととして、抗CCP抗体は臨床症状よりも何年も前に血清中に検出可能であることがしばしばであり、このことはこれが潜在的な臨床免疫イベントを反映する可能性を示唆している(Nielen et al., 2004;Rantapaa-Dahlqvist et al., 2003)。
さまざまな炎症性関節障害の臨床症状は、疾患の経過における初期には類似している。その結果、びらん性関節障害に至る重症かつ持続的な滑膜炎を発症するリスクのある患者を、関節炎がより限定的な経過をたどる患者と鑑別することはしばしば困難である。このような鑑別は、治療の対象を適切に定め、びらん性疾患を有する者を積極的に治療するとともに、比較的限定的な経過をたどる疾患の患者における不要な毒性を避けるためには極めて重要である。関節リウマチ(RA)などのびらん性関節障害に関する現在の臨床基準の早期疾患における有効性は相対的に低く、関節数および急性期応答といった疾患活動度の従来のマーカーでは、転帰が不良である可能性の高い患者を適切に特定することができない(Harrisonet al., 1998)。滑膜で起こる病的イベントを反映するパラメーターは、予後判定上かなり有意義である可能性が非常に高い。
早期の炎症性関節炎における転帰不良に関する予測因子を同定するための最近の取り組みにより、RA特異的な自己抗体、特にシトルリン化ペプチドに対する抗体の存在が、早期炎症性関節炎コホートにおけるびらん性および持続性疾患と関連することが同定されている。このことに基づき、患者血清中の抗CCP抗体の同定を助けるために環状シトルリン化ペプチド(CCP)が開発された。このアプローチを用いて、抗CCP抗体の存在はRAに対して特異的かつ高感度であり、RAを他の関節障害と区別することができ、持続性のびらん性滑膜炎をその転帰が臨床的に顕在化する前に予測しうることが示された(Schellekens et al., 2000)。重要なこととして、抗CCP抗体は臨床症状よりも何年も前に血清中に検出可能であることがしばしばであり、このことはこれが潜在的な臨床免疫イベントを反映する可能性を示唆している(Nielen et al., 2004;Rantapaa-Dahlqvist et al., 2003)。
O.乾癬
乾癬は鱗屑性および炎症性の慢性皮膚疾患であり、米国人口の2〜2.6%または580万〜750万人の人々が罹患している。この疾患はすべての年齢群に起こるが、主として成人が罹患する。これは男性と女性でほぼ同程度に起こるように思われる。乾癬は皮膚細胞が皮膚表面下の起源部から急速に上に移動し、成熟する機会を得る前に表面に重積した場合に起こる。通常、この移動(ターンオーバーとも呼ばれる)には約1カ月かかるが、乾癬ではそれがわずか数日で起こることがある。典型的な形態の場合、乾癬は、銀色の鱗屑で覆われた肥厚した赤色(炎症性)の皮膚斑を生じさせる。これらの斑(プラークと呼ばれることもある)は通常、掻痒または痛みを伴う。これは肘、膝、足の他の部分、頭皮、腰部、顔面、手掌および足底に起こることが最も多いが、身体のいずれの皮膚にも起こりうる。この疾患が指爪、足指爪、ならびに生殖器の軟部組織および口腔内を冒すこともある。罹患した関節周囲の皮膚がひび割れを起こすことは稀であるが、約100万人の乾癬患者が関節炎の症状を来す関節炎症を経験している。この状態は乾癬性関節炎と呼ばれる。
乾癬は免疫系によって、特にT細胞と呼ばれる白血球の一種によって主導される皮膚障害である。通常、T細胞は身体を感染および疾患から防御する役割を果たす。乾癬の場合には、T細胞は誤って作動状態となり、活動性が非常に高まるために他の免疫応答を誘発し、それが炎症および皮膚細胞の急速なターンオーバーを招く。症例の約3分の1には乾癬の家族歴がある。研究者らは乾癬に冒される多数の家系を調査し、この疾患と連鎖性のある遺伝子を同定した。乾癬の人々は、皮膚が悪化する時期があって、その後に改善することに気づくことがある。突発的再燃(flareup)の原因となる状態には、感染症、ストレス、および皮膚を乾燥させる気候変化が含まれる。また、リチウム、および高血圧に対して処方されるβ遮断薬を含む、ある種の医薬品が、疾患の突発または悪化の引き金となることもある。
P.神経炎症
神経炎症とは、中枢神経系におけるミクログリアおよびアストロサイトの応答および作用には基本的に炎症のような特徴があり、これらの応答が多岐にわたる神経障害の発生機序および進行において中心的な役割を果たすという概念を要約したものである。この概念はアルツハイマー病の分野に端を発しており(Griffin et al., 1989;Rogers et al., 1988)、これはこの疾患に対する理解を根底から覆した(Akiyama et al., 2000)。これらの概念は、他の神経変性疾患(Eikelenboom et al., 2002;Orr et al., 2002;Ishizawa & Dickson, 2001)、虚血性/中毒性疾患(Gehrmann et al., 1995;Touzani et al., 1999)、腫瘍の生物学的過程(Graeber et al., 2002)に対して、さらには正常な脳の発達に対しても展開されている。
神経炎症には、ミクログリアおよびアストロサイトの活性化、ならびにサイトカイン、ケモカイン、補体タンパク質、急性期タンパク質、酸化損傷および関連した分子プロセスの誘導を含む、広範囲にわたる複雑な細胞応答が含まれる。これらのイベントは、神経機能に対して有害な影響を及ぼし、神経損傷、さらなるグリア活性化、最終的には神経変性をもたらす。
神経炎症は、慢性神経疾患に関する理解を根底から覆すこととなった新規かつ急速に拡大しつつある分野である。この分野は集団調査からシグナル伝達経路までの範囲にわたる研究を含み、研究者のバックグラウンドは病理学、生化学、分子生物学、遺伝学、臨床医学および疫学といった多様な分野にわたる。この分野に大きく貢献している、集団、患者、死後組織、動物モデルおよびインビトロ系を用いた研究が。
III.サイトカインアッセイ
従来のサイトカインアッセイには血清中または血漿中のサイトカインの測定が含まれるが、他の生体液中でもさまざまなサイトカインが検出されている。例えば、Kimball(1984)は、ヒト尿におけるIL-1生物活性を報告している。Tamatani et al.(1988)は、クロマトグラフィー法およびバイオアッセイ法を用いて、ヒト羊水中にIL-1αおよびIL-1βが存在することを開示している。同じグループが、酵素イムノアッセイを用いて、ヒト羊水中のIL-1αおよびIL-1βを測定している(Tsunoda et al., 1988)。Wilmott et al.(1988)は、嚢胞性線維症と他の疾患とを比較して、ヒト気管支肺胞洗浄液中のIL-1βおよびIL-1生物活性を測定している。Khan et al.(1988)は、ヒト濾胞液中に高レベルのIL-1様生物活性が認められることを報告している。リンホトキシンは類天疱瘡患者の水疱液中で報告されている(Jeffes et al., 1984)。IL-1はヒト汗中でも報告されている(Didierjean et al., 1990)。IL-1はネコ(Coceani et al., 1988)およびヒト(例えば、Peter et al., 1991を参照)の脳脊髄液(CSF)中にも認められることが報告されている。IL-1様の生物活性を有する因子は、臨床的に正常なヒトの歯肉滲出液中にも検出されており(Oppenheim et al., 1982)、その活性は非炎症性歯肉領域よりも炎症性領域の方が高かった。
特定のサイトカイン発現を定量するために、サイトカインmRNAまたはサイトカインポリペプチドを測定する方法を含む、その他の方法を用いることもできる。例えば、サイトカインmRNAの測定にはPCR(商標)、競合的PCR(商標)、PCR-ELISA、マイクロアレイ、遺伝子発現ビーズを利用するアッセイおよびインサイチューハイブリダイゼーション法を用いることができ、サイトカインタンパク質のレベルの測定には免疫組織化学法を用いることができる。
A.遺伝的アッセイ
本発明の1つの態様は、核酸を利用する試験を用いて、サイトカインレベルの変動を検出するための方法を含む。任意の適切な生物試料中に含まれる細胞から、標準的な方法(Sambrook et al., 1989)に従って核酸を単離する。核酸はゲノムDNAでもよく、または細胞画分もしくは全細胞のRNAでもよい。RNAを用いる場合には、RNAを相補的DNAに変換することが望ましい場合がある。1つの態様において、RNAは全細胞RNAである;もう1つの態様において、これはポリA RNAである。通常は核酸を増幅する。
関心対象の特定の核酸は、形式に応じて、増幅を用いて試料中にあるまま直接同定されるか、または増幅後に第2の既知の核酸を用いて同定される。次に、同定された産物を検出する。ある種の用途においては、検出を視覚的手段によって行ってもよい(例えば、ゲルの臭化エチジウム染色)。または、検出を、化学発光、放射性標識のラジオシンチグラフィーもしくは蛍光標識を介した、またはさらには電気的もしくは熱的インパルス信号を用いるシステムを介した、産物の間接的同定も含まれる(Affymax Technology;Bellus, 1994)。
検出の後に、所定の患者に認められた結果を、正常な患者およびサイトカイン関連病態を有する患者の統計学的に有意な基準集団と比較することもできる。こうすることにより、さまざまな臨床状態に伴って検出されるサイトカイン量または種類を相関づけることが可能である。
i.サザン/ノーザンブロット法
ブロット法は当業者に周知である。サザンブロット法は、DNAを標的として用いることを含み、一方、ノーザンブロット法はRNAを標的として用いることを含む。それぞれ が異なるタイプの情報を提供するが、cDNAブロット法は多くの点でブロット法またはRNA種と類似性がある。
手短に述べると、プローブを、適したマトリックス(ニトロセルロースのフィルターのことが多い)上に固定化されたDNA種またはRNA種を標的として向かわせる。分析を容易にするために、異なる種は空間的に分離されているべきである。これは多くの場合、核酸種のゲル電気泳動に続いて、フィルターに対する「ブロット法」によって行われる。
その後に、ブロット化された標的を、プローブ(通常は標識性)とともに、変性および再ハイブリダイゼーションを促進する条件下でインキュベートする。プローブは標的と塩基対合するように設計されているため、プローブは再生条件下では標的配列の一部分と結合すると考えられる。 続いて、結合しなかったプローブを除去し、検出を上記の通りに行う。
ii.分離方法
特異的な増幅が起こったか否かを判定する目的で、一つの段階またはもう一つの段階で、増幅産物をテンプレートおよび過剰なプライマーから分離することが通常は望ましい。1つの態様においては、増幅産物をアガロース、アガロース-アクリルアミドまたはポリアクリルアミドゲルの電気泳動により、標準的な方法を用いて分離する。Sambrook et al., 1989を参照されたい。
または、クロマトグラフィー法を、分離を行うために利用することもできる。本発明に用いうる多くの種類のクロマトグラフィーが存在する:これには吸着、分配、イオン交換および分子ふるい、ならびにカラム、 ペーパー、 薄層およびガスクロマトグラフィーを含む、それらを用いるための数多くの特化した技法がある(Freifelder, 1982)。
検出方法
マーカー配列の増幅を確認するために産物を可視化することもできる。一つの代表的な可視化方法は、臭化エチジウムによるゲルの染色およびUV光による可視化を含む。または、増幅産物が放射性または蛍光定量性に標識されたヌクレオチドによって一体として標識されている場合には、続いて、増幅産物を分離後にX線フィルムに対して露光させること、または適切な刺激スペクトルによって可視化することもできる。
iii.キットの構成要素
サイトカインの検出およびシークエンシングのために必要なすべての必須な材料および試薬を1つのキット中に集めることができる。これは一般に、あらかじめ選択したプライマーおよびプローブを含む。同じく、種々のポリメラーゼ(RT、Taq、Sequenase(商標)など)のように核酸を増幅するのに適した酵素、増幅のために必要な反応混合物を得るためのデオキシヌクレオチドおよび緩衝液を含んでもよい。このようなキットはまた、一般に、適した手段中に、それぞれの個々の試薬および酵素ならびにそれぞれのプライマーまたはプローブ用の別個の容器を含むと考えられる。
iv.RT-PCR(商標)(相対定量的)
相対定量的PCR(商標)(RT-PCR(商標))による、RNAのcDNAへの逆転写(RT)を、患者から単離した特定のmRNA種の相対濃度を決定するために用いることができる。特定のmRNA種の濃度が変動することを決定することにより、その特定のmRNA種をコードする遺伝子が差異を伴って発現されることが示される。
PCR(商標)において、増幅される標的DNAの分子の数は、何らかの試薬が限定的になるまで、反応のすべてのサイクル毎に2に近い倍数で増加する。その後、増殖の速度は徐々に低下し、最終的にはサイクル間で増幅される標的の増加がみられなくなる。サイクル数がX軸にあり、増幅される標的DNAの濃度の対数値がY軸にあるグラフをプロットすると、プロットされた点を連結することにより、特徴的な形状の曲線が形成される。第1サイクルからの始まりでは、線の勾配は正でしかも一定である。これは曲線の直線部分と呼ばれる。試薬が限定的になると、線の勾配は低下しはじめ、最終的にはゼロになる。この時点で、増幅された標的DNAの濃度はある固定値に向かって漸近しはじめる。これは曲線のプラトー部分と呼ばれる。
PCR(商標)増幅の直線部分における標的DNAの濃度は、反応を始める前の標的の出発濃度に直接比例する。同一サイクル数を完了した、しかも直線的範囲にある、複数のPCR(商標)反応における標的DNAの増幅産物の濃度を決定することにより、最初のDNA混合物中でのその特定の標的配列の相対濃度を決定することが可能である。DNA混合物が、種々の組織または細胞から単離したRNAから合成されたcDNAである場合には、標的配列の由来となった特定のmRNAの相対的存在量をそれぞれの組織または細胞に関して決定することができる。PCR(商標)産物の濃度と相対的mRNA存在量との間のこの直接的な比例性は、PCR(商標)反応の直線的範囲のみで成り立つ。
曲線のプラトー部分における標的DNAの最終濃度は、反応混合物中の試薬の利用可能性によって決定され、標的DNAの最初の濃度には依存しない。このため、一群のRNA集団に関してmRNA種の相対的存在量をRT-PCR(商標)によって決定するまでに満たされなければならない第1の条件は、増幅されたPCR(商標)産物の濃度のサンプリングを、PCR(商標)反応が曲線の直線部分にある時に行わなければならないということである。
特定のRNA種の相対的存在量を首尾良く決定するためにRT-PCR(商標)実験が満たさなければならない第2の条件は、増幅可能なcDNAの相対濃度を、何らかの独立した標準物質に対して標準化しなければならないということである。RT-PCR(商標)実験の目標は、試料中の全mRNA種の平均存在量と対比した特定mRNA種の存在量を決定することである。以下に述べる実験では、β-アクチン、アスパラギンシンターゼおよびリポコルチンIIに関するmRNAを、他のmRNAの相対的存在量と比較するための外部標準および内部標準として用いた。
競合的PCR(商標)のためのほとんどのプロトコールは、標的と存在量がほぼ同じである内部PCR(商標)標準物質を用いている。これらの手法は、PCR(商標)増幅産物を直線期にサンプリングするならば有効である。反応がプラトー期に近づいている時点で産物をサンプリングすると、存在量の少ない産物の方が相対的に過剰に表現される。差異を伴う発現に関してRNA試料を検討する場合などのように、多くの異なるRNA試料に対して行われる相対的存在量の比較は、RNAの相対的存在量の差異が実際よりも小さくみえるような様式で歪曲されることになる。これは内部標準が標的よりもはるかに大量に存在する場合には重大な問題ではない。内部標準が標的よりも大量に存在するならば、RNA試料間でそのまま直線的な比較を行うことができる。
以上の考察は、臨床的に得られた材料に対するRT-PCR(商標)アッセイについての理論的事項を述べている。臨床試料につきまとう問題は、それらが量の点でさまざまであること(標準化を行いにくくする)およびそれらが質の点でもさまざまであること(標的よりもサイズが大きいことが好ましい、信頼性のある内部対照の同時増幅が必要となる)である。これらの問題は、RT-PCR(商標)を、内部標準が標的cDNA断片よりも大きい増幅可能なcDNA断片であり、内部標準をコードするmRNAの存在量が標的をコードするmRNAの概ね5〜100倍であるような、内部標準を用いる相対定量的RT-PCR(商標)として行うことによって克服される。このアッセイでは、それぞれのmRNA種の絶対的存在量ではなく、相対的存在量を測定する。
外部標準プロトコールによる、より一般的な相対定量的RT-PCR(商標)アッセイを用いる別の試験を行うこともできる。これらのアッセイでは、PCR(商標)産物を増幅曲線の直線部分でサンプリングする。サンプリングのために最適なPCR(商標)サイクルの数は各々の標的cDNA断片に対して経験的に決定しなければならない。さらに、さまざまな組織試料から単離した各RNA集団の逆転写酵素産物を同濃度の増幅可能なcDNAに対して慎重に標準化しなければならない。このアッセイはmRNAの絶対的存在量を決定するため、この事項は極めて重要である。mRNAの絶対的存在量は、標準化された試料においてのみ、遺伝子発現の差異の指標として用いることができる。増幅曲線の直線範囲およびcDNA調製物の標準化に関する経験的決定は、手間および時間のかかるプロセスであるが、結果的に得られるRT-PCR(商標)アッセイは、内部標準を用いる相対定量的RT-PCR(商標)アッセイによって得られるものよりも優れる。
この利点の一つの理由は、内部標準/競合物質が存在しないため、試薬のすべてを増幅曲線の直線範囲内で単一のPCR(商標)産物へと変換させることができ、これによってアッセイの感度が高まることによる。もう一つの理由は、唯一のPCR(商標)産物を用いることで、電気泳動ゲル上での産物の提示または別の提示方法の複雑さが減じられ、バックグラウンドが減少し、解釈がより容易になることである。
さらに別の試験を、「リアルタイム」RT-PCR(商標)(Higuchi et al., 1993)を用いて行うこともできる。これらのアッセイでは、固定数のサイクル後に蓄積したPCR(商標)産物の量を検出する代わりに、PCR(商標)産物が蓄積しつつある時点でそれを検出する。各PCR(商標)サイクル後の蛍光を検出する方法が必要である。蛍光シグナルをサイクル数に対してプロットする。サイクル数は閾値サイクル(CT)として表される。最初の蛍光によってプロットのベースラインが定められ、蓄積したPCR(商標)産物はベースラインを上回る蛍光の増加によって示される。試料中の標的量の定量は、CTの測定および標準曲線との比較によって出発時のコピー数を決定することによって行われる。
「リアルタイム」RT-PCR(商標)(Higuchi et al., 1993)は、PCR(商標)の終点ではなく指数増殖期に測定が行われるため、標的の量のより正確な定量法となる。これはまた、CT値の使用によってより動的な範囲が可能となるため、より高いスループットも実現する。
v.遺伝子発現ビーズを利用するアッセイ
遺伝子発現ビーズを利用するアッセイのプロトコールを、オリゴヌクレオチドプローブが遺伝子発現の測定に最も適した密度で表面に付着しうることを示すために作成した。この付着方法(カルボジイミド活性化スクシンイミドカップリング化学反応を用いて、カルボキシル化されたビーズ表面とアミン結合オリゴヌクレオチドプローブとの間に共有結合を作り出す)は、5'末端にアミンリンカー分子、3'末端にビオチン基が結合した特殊な40-merオリゴヌクレオチドプローブを用いて検証された。蛍光シグナルのレポーターは、ビーズ表面にビオチン基が存在することに基づいてシグナルを生じるストレプトアビジン結合R-PE(R-フィコエリトリン)複合体である。この特殊な配列を用いることにより、オリゴプローブのカップリングプロトコールを検証するためにハイブリダイゼーションが不要となった。さらに、付着表面密度が蛍光シグナルにどのように影響するかに関する認識を得るために、ビーズ-カップリング反応に添加するオリゴプローブの量を2桁のオーダーで漸増させた。この技法により、本発明者らが、任意の短いオリゴヌクレオチド配列を、ハイブリダイゼーション反応におけるプローブとして役立てるためにビーズ表面に付着させることが可能となる。
この遺伝子発現アッセイをまず、ビオチン化された5'末端を有するHPLC精製アンチセンス70-mer標的をハイブリダイゼーション反応に用い、他の競合配列は用いない至適条件下で検討した。用いるプローブは、本発明者らのマイクロアレイ中核施設で用いている70merオリゴヌクレオチドライブラリーから選択した。ハイブリダイゼーション反応は、反応速度グラフおよび濃度反応曲線のそれぞれを作成するために、時間および標的相補物の量の両方を変えるように設計した。さらに、交差反応は8%未満であることが示され(ほとんどのデータポイントは5%未満であった(37℃の非ストリンジェント条件下でも)、このビーズ利用システムの配列特異性が示された。
このビーズ利用遺伝子発現プロセス全体の有効性を評価するために、予想される働きをする市販のmRNAから転写させたcDNAを用いる試験をまず用いた。アッセイに関する較正曲線を作成するために、オリゴ-dTをプライマーとして用い、ビオチン化-dUTPをcDNA転写物の直接標識のために用いて濃度依存的なシグナルを評価した。このプロセスをヒトRNAおよびマウスRNAの両方を用いて検証した。データの交差検証のため、さらにマイクロアレイプラットホームからビーズプラットホームへのスケーラビリティを示すために、マイクロアレイ実験によって選択した特定のプローブを、脳および肝臓を供給源として採取したマウスRNAの同一プールを用いて検討した。これらの特定のプローブは、本発明者らの研究施設のバイオインフォマティクス部門で開発した優れたデータマイニング法を用いるマイクロアレイ実験によって選択され、特定の組織型(脳または肝臓)に対して生物学的に特有で関連性のあることが示された。アッセイしたプローブの100%が発現の方向性の一致を示し、QT-PCR測定とも一致したことから(表1)、費用も手間もかかるマイクロアレイデータを、より小規模で試料スループットが高く、よりコスト効果の高いアッセイプラットホームへと簡素化しうる可能性についての強力な証拠が得られた。
このアプローチの意義は、主要な3つの研究領域:プロトコールの設計、バイオセンシングの方法論および検査自動化戦略の十分な理解を必要とする、迅速で費用のかからない多バイオマーカー診断アッセイに対する強い臨床的需要があることにより、さらに増している。
ゲノム規模のマイクロアレイのスクリーニングは、次世代の臨床的アッセイに向けて遺伝子発現に基づくアッセイを迅速に同定するための最良の手段となる。試料から診断的および治療的な意義のあるそれまで知られていなかった配列が同定されれば、その結果はビーズを利用するアッセイプラットホームに直ちに移行されると考えられる。配列特異性は特異性およびシグナルを支える主な原動力であるため、マイクロアレイ試験に用いたものと長さおよび配列が全く同じオリゴヌクレオチドを、マイクロアレイプラットホームでのハイブリダイゼーション化学反応を模倣するためのカルボキシル化ビーズ表面に対する付着のために選別した。これらのオリゴヌクレオチドは、5'末端に炭素12個のスペーサーを伴うように調製した。付着は、加水分解のための条件を作り出し、それによってアミン基とカルボン酸基との間に共有結合が作製されるように、pH 4.5で有機リンカーを用いることによって実現した。これにより、オリゴヌクレオチドを直径5.6ミクロンのポリスチレンビーズに永続的に付着させ、安定化バッファー(TE pH 8.0)中にて4℃で最長1年間にわたって安全に保存することが可能となる。
オリゴプローブの付着は、ビオチン化5'末端を有する同じ長さの逆相補配列を用いて検証される。プローブが首尾良く付着していれば、シグナルは添加した逆相補配列の量と直接相関すると考えられる。シグナルは、逆相補物のビオチン化末端に自ら付着したストレプトアビジン-フィコエリトリン標識を介して得られる。R-PE蛍光シグナルは532nmの10mWレーザーによって生成され、デジタルシグナル処理のために14ビットA/D PMT(アナログ-デジタル光電子増倍管)により増幅される。生成したシグナルは用量依存的であり、調製ビーズのロット間のばらつきを突き止めるための較正曲線を作成するのに役立つ。
一例として、末梢血単核細胞(PBMC)を、疾患重症度のいくつかの段階にあって胸膜治療を受けている関節リウマチ患者から採取した。細胞mRNAをQiagen社のRNAeasy Kitを用いて抽出した。cDNAは、Qiagenにより提供された逆転写酵素(Omniscript)を用いて合成する。多サイクルを経ても産物の増幅はみられない;cDNAは第一鎖合成の結果である。標識であるビオチン-16-dUTPは、標識対dTTPの比を3.0/2.5として、合成時にcDNA中に直接組み入れる。この逆転写酵素は、マイクロアレイ科学者集団の間でしばしば用いられているものよりも、ランダムプライミングを防止しうるという理由で優れている。しかし、ランダムプライミングによって生じたcDNAの除去は、転写物の全存在量が少なくなるために蛍光シグナルの減弱をもたらす。cDNA合成段階でのこの酵素的影響の防止により、本発明者らの、QT-PCRによるシグナル比について、従来は全く得られていなかった100%の妥当性が可能となった。
3.0/2.5というモル比は、ビーズを利用した遺伝子発現システムの検証のために用いられた以前の研究試験では成功している。組み入れ効率を決定するために用いられる手法は、cDNA産物の連続希釈物(標識に関していくつかの異なるモル比を用いて作製されたもの)をニトロセルロース膜に対してスポット化し、西洋ワサビペルオキシダーゼ蛍光色素を介した発光反応を行わせることを含むと考えられる。この方法により、cDNAが首尾良く作製されたことを示すことができ、合成条件の変化(遺伝子特異的プライマー、ランダムプライマー、オリゴ-dTプライマーまたはビオチン化オリゴ-dTプライマーを用いるなど)がcDNA産生に及ぼす影響を記録することができる。
ビーズを利用するアッセイに関するハイブリダイゼーション条件は、反応表面の移動性(ビーズは溶液中を自由に移動し、いずれの表面にも付着しない)のため慎重に選択される。温度およびハイブリダイゼーション時間は反応速度だけではなく、生じるシグナルの特異性にも影響を及ぼす。十分な特異性のあるシグナルを生じさせるために、本発明者らは、5モル濃度のTMAC(テトラメチル-アンモニウムクロリド、Sigma)を用いて高塩濃度ストリンジェンシー条件を作り出した。TMACの重要な化学的性質は、それがA-T/G-C dsDNA結合の結合強度をほぼ等しくし、多重反応において別の種類のビーズに結合した競合性プローブ間に均一なTmを作り出す能力にある。58℃という高い温度もストリンジェンシーの理由から選ばれており、これは5規定濃度のTMAC中での70-merオリゴヌクレオチドの理論的Tmに基づく。緩衝液を支える原動力は単一の温度で配列特異的な排他反応を作り出すことにあり、高ストリンジェンシー条件は必然的に蛍光シグナルの減弱をもたらすものの、これらの条件は診断的に意義のある結果を得るために必要である。
ビーズ表面のプローブに対する標的の到達性を等しくするために、ハイブリダイゼーション中はビーズを懸濁状態に保つことが重要である。高塩濃度条件は、溶液の濃度をポリスチレン(ビーズ組成物)のそれよりも高くする。これはビーズを静的条件下で浮遊させ、表面の反応利用性を変化させるとともに、遺伝子発現測定の感度を低下させる可能性がある。幸いに密度の違いは小さく、多くの種類の穏和な混合によってビーズを懸濁状態に保つことができる。この環境は、密閉した反応チューブを10rpmで回転させることが可能なハイブリダイゼーション用オーブン(Hybaid、58℃)を用いることによってシミュレートされ、優れた結果が得られている。しかし、これらの条件は自動化およびハイスループット性のためには難題であり、それが、理想的なハイブリダイゼーション条件とBiomek FX検査自動化システムとを統合するためのソリューションの開発を本発明者らが進めている理由である。
ビーズ利用アッセイのためのハイブリダイゼーションは、一方のアッセイから次のものへのスケーリングを容易に行えるような環境を作るために、マイクロアレイ環境をできるだけ近く模倣するように適合化されているものの、微妙な違いはあり、このため、このプロジェクトのためには十分に設計された内部対照が必要である。マイクロアレイ分野での標準化およびスケーリングの方法はアレイ上の数千個のスポットから収集したデータに依拠しているが、ビーズを利用するアッセイは、多くても100種の異なる転写物を自動的に測定し、マイクロアレイとは異なる標準化およびスケーリングの方法を作り出すことができる。
陽性対照にはシロイヌナズナ(A.thaliana)由来の「RUBISCO」遺伝子(GenBank ID:X14212)という植物RNAを用いている。配列の異なる既知の量のRNAを用いてcDNA合成段階に供することにより、本発明者らは、標識段階の全般的な成功についてより明確な見解を得ることができる。さらに、適切な植物プローブ配列を有するビーズは、出発mRNA濃度と蛍光シグナル発生との間の複雑な関係を記述する上でも役立つ。
陰性対照は、理論的には結合しうる標的配列がないと考えられる、ビーズ表面に付着させたランダム70mer配列(ヒトゲノム中に配列特異性がないもの)の周囲に設計した。これらのビーズによって生じる蛍光シグナルは、クロスハイブリダイゼーションによって生じる背景ノイズの指標になると考えられる。これらの蛍光シグナルは患者試料のシグナルを共通のバックグラウンドに対して標準化し、それによってウェル間比較を直接行えるようにするために用いられると考えられる。
マイクロアレイプラットホームからのスケーラビリティを示すための学術的に最も認められている手法は、両方の系からの蛍光比がQT-PCR交差検証実験で合致し、方向性でも一致することである。この交差検証は、すべてのシステムが2つの試料間での遺伝子発現を縦列的かつ示差的に測定しているという主張を補強するのに役立つと考えられる。
Beckman-Coulter社のBiomek FKシステムを用いて、遺伝子発現ビーズを利用するアッセイを行うための自動化プロセスを開発した。Biomek FXは、cDNA合成およびハイブリダイゼーション条件の自動化を行いやすくするために、熱サイクリング装置および種々のヒートブロックと容易に組み合わせることができる。
R-PE分子はハイブリダイゼーションのpH(8.2)および温度(58℃)では安定であるが、その範囲は狭い(安定性は60℃では失われる)。適切な洗浄によってクロスハイブリダイズ性配列が除去されることから、この段階は広範囲にわたる温度で行うことが安全である。本発明者らが、逆相補配列に対するこの最終的な標識段階で37℃とハイブリダイゼーション温度を用いて比較した場合には差はみられず、ハイブリダイゼーション後の標識戦略における柔軟性が認められている。
最終的な蛍光シグナルは、紅藻類によって産生される量子収率の高いタンパク質であるフィコエリトリンにより発生する。このタンパク質はストレプトアビジンと共有結合されており、これにより、cDNA中に組み入れられたビオチン化ヌクレオチドがこの蛍光標識に到達しうるようになる。蛍光シグナルはICMPパネルと同じ装置を用いて測定する:532nmレーザーでフィコエリトリンを励起させ、生じた光を増幅し、PMTによりデジタル化して、デジタル信号プロセッサでフィルター処理した後に、保存および解析のためにPCコンピュータに伝送する。
B.免疫学的診断
本発明の抗体(上記)は、さまざまな生物試料のサイトカイン含有量を、ELISAおよびウエスタンブロット法などの手法によって調べるために用いることができる。これにより、悪性腫瘍の有無に関する、または将来の癌の予測因子としてのスクリーニング法が得られる可能性がある。
ELISAアッセイにおける抗体の使用を特に想定している。例えば、抗サイトカイン抗体を、選択した表面、好ましくはタンパク質親和性を示す表面、例えばポリスチレン製マイクロタイタープレートのウェルなどに固定化する。十分に吸着されなかった物質を除去するための洗浄後に、アッセイプレートウェルを、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインまたは粉乳溶液のような、被験抗血清に対して抗原的に中性であることが判明している非特異的タンパク質と結合させること、またはそれでコーティングすることが望ましい。これにより、固定化表面上の非特異的な吸着部位のブロックが可能となり、それ故に表面に対する抗原の非特異的結合によって起こるバックグラウンドが減少する。
ウェルに対する抗体の結合、バックグラウンドを低下させるための非反応性物質によるコーティング、および非結合物質を除去するための洗浄の後に、固定化表面を被験試料と、免疫複合体(抗原/抗体)の形成が導かれるような様式で接触させる。被験試料と結合抗体との特異的免疫複合体の形成、およびその後の洗浄に続いて、それを第1の抗体とは異なるサイトカイン特異性を有する第2の抗体に曝すことにより、免疫複合体形成の発生、さらにはその量を決定することもできる。適切な条件には好ましくは、BSA、ウシγグロブリン(BGG)およびリン酸緩衝食塩水(PBS)/Tween(登録商標)などの希釈液で試料を希釈することが含まれる。これらの添加剤は、非特異的バックグラウンドの低下にも有用な傾向がある。続いて、層状抗血清を約2〜約4時間にわたり、好ましくは約25℃〜約27℃程度の温度でインキュベートする。インキュベーション後に、免疫複合体を形成していない物質を除去するために、抗血清と接触させた表面を洗浄する。好ましい洗浄手順には、PBS/Tween(登録商標)またはホウ酸緩衝液などの溶液による洗浄が含まれる。
検出手段を得るためには、第2の抗体が、適切な発色基質とのインキュベーションによって呈色する随伴性酵素を有することが好ましい。すなわち、例えば、第2の抗体が結合した表面を、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼまたは(西洋ワサビ)ペルオキシダーゼを結合させた抗ヒトIgGと、免疫複合体形成の発達を促す期間および条件下で(例えば、PBS/Tween(登録商標)のようなPBSを含む溶液中にて室温で2時間のインキュベーション)、接触またはインキュベートさせることが望ましいと考えられる。
第2の酵素標識抗体とのインキュベーション、および非結合物質を除去するためのその後の洗浄の後に、尿素およびブロモクレゾールパープルまたは2,2'-アジノ-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリン)-6-スルホン酸(ABTS)およびH2O2などの発色基質とのインキュベーションにより、ペルオキシダーゼの場合には酵素標識として、標識の量を定量する。続いて、例えば可視スペクトル分光光度計などを用いて、呈色の程度を測定することによって定量を行う。
アッセイプレートに試料をまず結合させることにより、前述の形式を変更することもできる。続いて一次抗体をアッセイプレートとともにインキュベートし、その後に、結合した一次抗体を、一次抗体に対する特異性のある標識二次抗体を用いて検出する。
本発明の抗体組成物は、イムノブロット分析またはウエスタンブロット分析において非常に有用であると考えられる。抗体を、ニトロセルロース、ナイロンまたはそれらの組み合わせといった固体支持体マトリックスに対して固定化されたタンパク質の固定のための高親和性一次試薬として用いることもできる。免疫沈降法と組み合わせて、ゲル電気泳動の後に、これらを、抗原の検出に用いる二次試薬が有害なバックグラウンドの原因となるような抗体の検出に用いるための単一段階の試薬として用いることもできる。毒素部分に対する酵素的、放射標識性、または蛍光性に標識された二次抗体を含む、ウエスタンブロット法と組み合わせて用いるための免疫学に基づく検出方法は、この点に関して特に有用と考えられる。
本発明の抗体を、腫瘍生検試料から免疫組織化学(IHC)による検査のために調製されたブロックなどのような、新鮮凍結および/またはパラフィン包埋した組織ブロックとともに用いてもよい。これらの特定の標本から組織ブロックを調製する方法は、さまざまな予後判定因子に関するIHCによる従来の検討に首尾良く用いられている、および/または当業者に周知である(Brown et al., 1990;Abbondanzo et al., 1999;Allred et al., 1990)。
手短に述べると、凍結切片は以下のようにして調製することができる:凍結「粉末化」組織50ngを小型の合成樹脂カプセルにて室温のリン酸緩衝食塩水(PBS)中で再水和させる;遠心処理によって粒子をペレット化する;それらを粘性包埋媒質(OCT)中に再懸濁化する;カプセルを転置するおよび/もしくは再び遠心処理によるペレット化を行う;-70℃イソペンタン中で急速凍結する;合成樹脂製カプセルを切断する、および/もしくは円柱状の凍結組織を取り出す;円柱状組織をクリオスタットミクロトームのチャックで固定する;ならびに/または25〜50個の連続切片を切り出す。
永続的な切片を、以下を含む類似の方法によって調製することもできる:50mgの試料を合成樹脂製微量遠心管内で再水和する;ペレット化する;10%ホルマリン中に再懸濁化して4時間の固定を行う;洗浄/ペレット化を行う;温2.5%寒天中に再懸濁化する;ペレット化する;氷水中で冷却して寒天を硬化させる;組織/寒天ブロックをチューブから取り出す;パラフィン中でのブロックの浸透処理および/もしくは包埋を行う;ならびに/または最大50個の永続的な連続切片を切り出す。
もう1つの形態の免疫学的診断にはタンパク質アレイ技術を用い、これはハイスループットスクリーニングを可能にする。タンパク質アレイ(この場合にはさまざまな抗サイトカイン抗体によって占められている)は、機能的ゲノム学における新規かつ汎用的なツールであるように思われ、正常組織および罹患組織の遺伝子発現パターンをタンパク質産物カタログに変換することを可能にする。これらのアレイは、ガラススライド上にスポット化された状態または微小ウエル内に固定化された状態で数千種もの抗体を含むことができ、多数のタンパク質に関してタンパク質発現レベルを一度に検討することを可能にする。
タンパク質チップの基本的な構成には、分子のアレイがドット化されたガラスまたは合成樹脂の表面を用いているといったように、DNAチップとある程度の類似性がある。これらの分子はDNAでもよく、タンパク質を捕捉するように設計された抗体でもよい。規定量のタンパク質を、タンパク質の活性がある程度保たれるように各スポットに対して固定化する。蛍光マーカーまたはその他の検出方法を用いることにより、これらのタンパク質を捕捉したスポットが描出されることから、タンパク質マイクロアレイはハイスループットプロテオミクスおよび薬剤探索における強力なツールとして用いられている。
ガラス製スライドは、費用がかからず、標準的なマイクロアレイ作製装置および検出装置との適合性があることから、未だに広く用いられている。しかし、その限界には、多数のものをベースとした反応、蒸発率の高さおよび交差汚染の恐れが含まれる。マトリックススライドには蒸発の少なさおよび交差汚染の可能性のなさを含む数多くの利点があるが、これは費用がかかる。プロテオミクス用のナノチップには同じ利点があり、さらにコストが安い上、多成分反応も可能である。
最も初期のものでしかも最も良く知られているタンパク質チップは、Ciphergen Biosystems Inc.(Fremont, CA)によるProteinChipである。ProteinChipは、表面増強レーザー脱離・イオン化(SELDI)プロセスを基盤としている。既知のタンパク質がチップ上にある機能アッセイ系を用いて分析されている。例えば、チップ表面には、研究者らがタンパク質-タンパク質相互作用試験、リガンド結合試験またはイムノアッセイを行うことを可能にする酵素、受容体タンパク質または抗体を含めることができる。最新のイオン光学およびレーザー光学技術を用いることで、ProteinChipシステムは、1000Da未満の低分子ペプチドから300kDaのタンパク質までの範囲にわたるタンパク質を検出し、飛行時間(TOF)に基づいて質量を算出する。
ProteinChipバイオマーカーシステムは、バイオマーカーのパターン認識分析を行うことを可能にした、タンパク質バイオチップを利用した初のシステムである。このシステムは、研究者らが、さまざまな範囲の粗臨床試料(すなわち、レーザーマイクロダイセクションを行った細胞、生検試料、組織、尿および血清)からプロテオームを調べることによって重要な臨床的課題に取り組むことを可能にする。このシステムはまた、臨床試料からのタンパク質発現パターンを疾患表現型と相関づけるためのパターン認識に基づく統計分析法を自動化するバイオマーカーのパターン化ソフトウエアも利用している。
ある種のシステムはバイオマーカーの発見を数日で行い、大規模な試料セットの検証を数週間以内で行うことができる。そのロボット工学システムの付属物は試料の処理を自動化し、1週間当たり数百件もの試料を分析することを可能にするとともに十分な数の試料を分析することを可能にし、このことによってマーカー発見および検証のための包括的検討において高い統計学的信頼性をもたらす。
マイクロ流体法(microfluidics)は、バイオチップ技術における最も重要な革新的進歩の一つである。マイクロ流体チップは質量分析と組み合わせることができるため、モノリシック基板にキャピラリー電気泳動路、注入器およびタンパク質消化処理層とともに質量分析装置へのエレクトロスプレーインターフェイスが組み込まれたマイクロ流体装置が考案されている(Wang et al., 2000)。このことから、このチップは、プロテオミクス用途における自動化試料処理のための簡便なプラットホームを提供する。
これらのチップは血清タンパク質の発現レベルを分析することもでき、その検出限界は市販の固相酵素免疫アッセイに匹敵する上、必要な試料の容積が従来の技術よりも著しく少なくて済むという利点もある。
Biosite社(San Diego)は、100種類のタンパク質をイムノアッセイによって同時に測定するTriageタンパク質チップを製造している。Triageタンパク質チップによるイムノアッセイは、マイクロ流体式の合成樹脂製チップ上で行われ、その結果は15分でピコモル濃度感度で得られる。タンパク質チップにおけるマイクロ流体の流量はマイクロキャピラリーの表面構造および表面疎水性によって制御されている。これらのイムノアッセイは高親和性抗体および近赤外蛍光標識を利用しており、これを蛍光光度計によって読み取る。
C.ナノスケールタンパク質分析
タンパク質精製および自動化同定スキームを含む現在の大部分のプロトコールは回収率が低く、それが感度および速度の点で全体的な処理の限界となっている。このような低収率のタンパク質およびわずかな起源物質(例えば、生検試料)からしか単離することができないタンパク質はナノスケールタンパク質分析に供することができる:これは特定のタンパク質および複合体のナノ捕捉(nanocapture)ならびにその後のすべての試料操作段階の最適化により、ペプチド断片の質量分析を行うことをいう。標的指向性プロテオミクス(targeted proteomics)とも呼ばれるこの集約的アプローチは、プロテオームのサブセット(例えば、特異的に修飾される、特定のDNA配列と結合する、もしくは高次複合体の成分として存在する、またはそれらの任意の組み合わせであるようなタンパク質)を検討することを含む。このアプローチは、細胞の生理的状態を変化させてアゴニストに応答させる、癌の遺伝的決定因子を同定するために用いられている。
Biotrace Inc.(Cincinnati)による、多光子検出法と呼ばれている新たな検出法は、ゼプトモル濃度を下回る量のタンパク質を定量することができ、これは診断的プロテオミクスのために、特にサイトカインおよびその他の存在量の少ないタンパク質に対して用いることが考えられる。Biotrace社はまた、5fg/ml(0.2アットモル/ml)というわずかなタンパク質の濃度を検出し、それによって現行のタンパク質バイオチップを1000倍も上回る感度を実現する、超高感度のタンパク質バイオチップも開発中である。
IV.サイトカインの疾患プロフィール
A.強直性脊椎炎
ASは、末梢血、血清、血漿、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のAS状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血血清、血漿、滑液、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、強直性脊椎炎を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または軸関節破壊を有する患者の集団が含まれる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、強直性脊椎炎を有する患者、関節外病変を有する患者、軸関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したAS症状を呈する患者が、血清、血漿、滑液、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、末梢血、血清、血漿、滑液、組織、脳脊髄液またはその他の体液のサイトカインプロフィールの決定を、それぞれの個々の患者に対する適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したAS症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われ、一方、IL-10のレベルが高い患者は、生物学的製剤と呼ばれる医薬品のクラスである、抗IL-10抗体薬などのIL-10阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するため、および個々の患者の治療に対する反応を計測するために用いうる情報を医師および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、強直性脊椎炎患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、CCL4、CCL2、CCL11、EGF、IL-1β、IL-2、IL-5、IL-6、IL-7、CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、TNF-α、IFNγ、GM-CSFまたはG-CSF)のレベルを決定すること、強直性脊椎炎の状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血血清、血漿、滑液、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、強直性脊椎炎を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または軸関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
B.乾癬性関節炎
乾癬性関節炎(PsA)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のPsA状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血血清、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のPsA状態を有する患者の集団、中等症のPsA状態を有する患者の集団、重症のPsA状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したPsA症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織、脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したPsA症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われ、一方、IL-10のレベルが高い患者は抗IL-10抗体薬などのIL-10阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、乾癬性関節炎患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-17、IL-2、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-6、CCL4/MIP-1βおよびCCL2/MCP-1)のレベルを決定すること、乾癬性関節炎の状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血血清、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症の乾癬性関節炎状態を有する患者の集団、中等症の乾癬性関節炎状態を有する患者の集団、重症の乾癬性関節炎状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
C.反応性関節炎
反応性関節炎(ReA)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のReA状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のReA状態を有する患者の集団、中等症のReA状態を有する患者の集団、重症のReA状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したReA症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織、脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したReA症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われ、一方、IL-10のレベルが高い患者は抗IL-10抗体薬などのIL-10阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、反応性関節炎患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IL-12、IFN-γ、IL-1β、IL-13、IL-17、CCL2/MCP-1、TNF-α、IL-4、G-CSFおよびIL-6)のレベルを決定すること、反応性関節炎の状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、血漿、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症の反応性関節炎状態を有する患者の集団、中等症の反応性関節炎状態を有する患者の集団、重症の反応性関節炎状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
D.腸疾患性関節炎
腸疾患性関節炎(EA)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のEA状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のEA状態を有する患者の集団、中等症のEA状態を有する患者の集団、重症のEA状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したEA症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したEA症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われ、IL-10のレベルが高い患者は抗IL-10抗体薬などのIL-10阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、腸疾患性関節炎患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、CXCL8/IL-8、IL-1β、IL-4、G-CSF、IFN-γおよびTNF-α)のレベルを決定すること、腸疾患性関節炎の状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症の腸疾患性関節炎状態を有する患者の集団、中等症の腸疾患性関節炎状態を有する患者の集団、重症の腸疾患性関節炎状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
E.潰瘍性大腸炎
潰瘍性関節炎(UC)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のUC状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のUC状態を有する患者の集団、中等症のUC状態を有する患者の集団、重症のUC状態を有する患者の集団、または健常個体の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したUC症状を呈する患者が、末梢血、血清、血漿、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織、脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したUC症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、潰瘍性関節炎患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IL-7、CXCL8/IL-8、IFN-γ、TNF-αおよびIL-1β)のレベルを決定すること、乾癬性関節炎の状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、生検組織(例えば、結腸生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症の潰瘍性関節炎状態を有する患者の集団、中等症の潰瘍性関節炎状態を有する患者の集団、重症の潰瘍性関節炎状態を有する患者の集団、または健常個体の集団が含まれうる。
F.クローン病
クローン病(CD)は、末梢血、血清、血漿、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のCD状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のCD状態を有する患者の集団、中等症のCD状態を有する患者の集団、重症のCD状態を有する患者の集団、または健常個体の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したCD症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したCD症状を有する2人の患者は、血清または組織中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、クローン病患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-13、IL-2、IL-4、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1およびCXCL8/IL-8)のレベルを決定すること、クローン病の状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、生検組織(例えば、生検結腸組織)またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のクローン病状態を有する患者の集団、中等症のクローン病状態を有する患者の集団、重症のクローン病状態を有する患者の集団、または健常個体の集団が含まれうる。
G.関節リウマチ
関節リウマチ(RA)は、末梢血、血清、血漿、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のRA状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のRA状態を有する患者の集団、中等症のRA状態を有する患者の集団、重症のRA状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したRA症状を呈する患者が、末梢血、血清、血漿、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したRA症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われ、IL-10のレベルが高い患者は抗IL-10抗体薬などのIL-10阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、関節リウマチ患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5およびIL-7)のレベルを決定すること、関節リウマチの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、血漿、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症の関節リウマチ状態を有する患者の集団、中等症の関節リウマチ状態を有する患者の集団、重症の関節リウマチ状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
H.全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデス(SLE)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のSLE状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のSLE状態を有する患者の集団、中等症のSLE状態を有する患者の集団、重症のSLE状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したSLE症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したSLE症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-10を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-10による治療が有益と思われ、IL-10のレベルが高い患者は抗IL-10抗体薬などのIL-10阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、全身性エリテマトーデス患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IL-10、IL-2、IL-4、IL-6、IFN-γ、CCL2/MCP-1、CXCL8/IL-8およびIL-17)のレベルを決定すること、全身性エリテマトーデスの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血血清、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症の全身性エリテマトーデス状態を有する患者の集団、中等症の全身性エリテマトーデス状態を有する患者の集団、重症の全身性エリテマトーデス状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
I.家族性地中海熱
家族性地中海熱(FMF)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のFMF状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血血清、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のFMF状態を有する患者の集団、中等症のFMF状態を有する患者の集団、重症のFMF状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したFMF症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したFMF症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-8を有する可能性がある。IL-8のレベルが高い患者はIL-8拮抗薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、家族性地中海熱患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IL-17、IL-6、CCL2/MCP-1、TNF-α、INF-γ、GM-CSF、IL-13、IL-4、G-CSFおよびCXCL8/IL-8)のレベルを決定すること、家族性地中海熱の状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血血清、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症の家族性地中海熱状態を有する患者の集団、中等症の家族性地中海熱状態を有する患者の集団、重症の家族性地中海熱状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
J.筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
具体的には、本発明は、脳脊髄液、その他の体液または組織の試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。
本発明はまた、類似したALS症状を呈する患者が、脳脊髄液、その他の体液または組織試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、脳脊髄液、体液または組織試料のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したALS症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-12を有する可能性がある。レベルの低い患者はIL-12アゴニストによる治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
K.過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(SLE)は、血清、組織またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および消化管癌を含む、重症の消化管疾患を発症する素因があると分類することもできる。
具体的には、本発明は、末梢血血清、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のIBS状態を有する患者の集団、中等症のIBS状態を有する患者の集団、重症のIBS状態を有する患者の集団、または健常個体の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、および消化管外免疫系の病変を有する患者の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したIBS症状を呈する患者が、血清、組織またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織またはその他の体液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したIBS症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのCXCL8/IL-8を有する可能性がある。レベルの高い患者は抗CXCL8/IL-8性の薬剤または生物製剤による治療が有益と思われ、CXCL8/IL-8のレベルが低い患者はより侵襲性の低い治療選択肢が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、IBS患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1およびCXCL8/IL-8)のレベルを決定すること、IBSの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、血漿、生検組織(例えば、生検結腸組織)またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のIBS状態を有する患者の集団、中等症のIBS状態を有する患者の集団、重症のIBS状態を有する患者の集団、または健常個体の集団が含まれうる。
L.若年性関節リウマチ
若年性関節リウマチ(JRA)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のJRA状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のJRA状態を有する患者の集団、中等症のJRA状態を有する患者の集団、重症のJRA状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したJRA症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織、脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したJRA症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-1βを有する可能性がある。IL-1βレベルの高い患者はIL-1β阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、JRA患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5およびIL-7)のレベルを決定すること、JRAの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、血漿、生検組織(例えば、生検滑膜組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のJRA状態を有する患者の集団、中等症のJRA状態を有する患者の集団、重症のJRA状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
M.シェーグレン症候群
シェーグレン症候群(SS)は、血清、組織またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のSS状態を有する患者の集団、中等症のSS状態を有する患者の集団、重症のSS状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したSS症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したSS症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-2を有する可能性がある。IL-2のレベルが高い患者は、抗IL-2生物製剤などのIL-2阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、SS患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、CCL2/MCP-1、IL-12、CXCL8/IL-8、CCL11/エオタキシン、TNFα、IL-2、IFNα、IL-15、IL17、IL-1α、IL-1β、IL-6およびGM-CSF)のレベルを決定すること、SSの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、血漿、生検組織(例えば、唾液腺または口唇の生検組織)またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。
N.早期関節炎
早期関節炎(EArth)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のEArth状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のEArth状態を有する患者の集団、中等症のEArth状態を有する患者の集団、重症のEArth状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者、関節外病変を有する患者、高度関節破壊を有する患者および健常個体の集団が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したEArth症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したEArth症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-6を有する可能性がある。IL-6のレベルの高い患者はIL-6阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、EArth患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IL-6、IL-2、IL-12、IFNγ、GM-CSF、IL-5、IL-4、CCL4/MIP-1βおよびCXCL8/IL-8)のレベルを決定すること、EArthの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。
O.乾癬
乾癬(PSO)は、皮膚、血清、組織またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、主要臓器病変および高度関節破壊を含む、重症のPSO状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のPSO状態を有する患者の集団、中等症のPSO状態を有する患者の集団、重症のPSO状態を有する患者の集団、健常個体の集団、関節外病変を有する患者の集団、または高度関節破壊を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態または重症の状態を有する患者が非制限的に含まれうる。
本発明はまた、類似したPSO症状を呈する患者が、皮膚、血清、組織またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、皮膚、血清、組織またはサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したPSO症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのIL-6を有する可能性がある。IL-6のレベルが高い患者は、IL-6阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、PSO患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、IL-6、IL-10、IL-2、IL-4、IFN-γ、CCL2/MCP-1およびIL-17)のレベルを決定すること、PSOの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、生検組織またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。
P.神経炎症
神経炎症(NI)は、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に産生されたサイトカインのプロフィールに基づいて、診断すること、および/または軽症、中等症もしくは重症として分類することができる。このようなサイトカインは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFでありうるが、これらには限定されない。
サイトカインプロフィールが、患者が重症の疾患を有することを示している場合には、その患者を、中枢神経系病変および末梢神経系病変を含む、重症のNI状態を発症する素因があると分類することもできる。サイトカインプロフィールが、患者が軽症または中等症の疾患を有することを示している場合には、その患者が重症疾患を発症する素因について判定するためにさらなる分析を行うことができる。
具体的には、本発明は、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、組織試料またはその他の体液試料を、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFなどの特定のサイトカインに関して分析することを含む。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。集団には、軽症のNI状態を有する患者の集団、中等症のNI状態を有する患者の集団、重症のNI状態を有する患者の集団、健常個体の集団、中枢神経系の異常を有する患者の集団、または末梢神経系の異常を有する患者の集団が含まれうる。
特定のサイトカインの特定のレベルは、さまざまな集団から測定したレベルに基づいて高いまたは低いと判定することができる。このような集団には、軽症の状態、中等症の状態もしくは重症の状態を有する患者の集団、中枢神経系の異常を有する患者の集団、または末梢神経系の異常を有する患者の集団が含まれうる。
本発明はまた、類似したNI症状を呈する患者が、血清、組織、脳脊髄液またはその他の体液試料中に特定のサイトカインを異なるレベルで有しうるという発見にも基づく。このため、血清、組織または脳脊髄液のサイトカインプロフィールの決定を、適切な治療プロトコールの決定に利用することができる。例えば、類似したNI症状を有する2人の患者は、血清中に異なるレベルのCCL2/MCP-1を有する可能性がある。CCL2/MCP-1のレベルが高い患者は、CCL2/MCP-1阻害薬による治療が有益と思われる。したがって、サイトカインプロフィールを患者から決定することは、適した治療を決定するために用いうる情報を臨床医および患者に提供する一助となりうる。
本発明のもう1つの態様は、NI患者が重症の疾患を発症する素因について判定するための方法を特徴とする。本方法は、患者からの試料中のサイトカイン(例えば、CCL2/MCP-1、IL-12、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、IL-6およびIL-17)のレベルを決定すること、NIの状態に関する情報を得るためにサイトカインのレベルを基準レベルと比較すること、を含む。試料は末梢血、血清、血漿、生検組織(例えば、滑膜生検組織)、脳脊髄液またはその他の体液からのものであってよい。基準レベルは、集団から得られた試料中に認められるサイトカインの中央値レベルであってよい。
V.実施例
ここで、本発明の具体的な態様を、さまざまな特徴をある程度詳細に例示するための役割を果たすと思われる、以下の非制限的な実施例によってさらに説明する。以下の実施例は、本発明を実施する様式に関する理解を促すために含められる。以下の実施例は本発明の実施において十分に機能することが見いだされた態様を表しており、このため、本発明の実施に関する好ましい態様を構成すると考えうることが理解されるべきである。しかし、開示された例示的な態様には多くの変化を加えることができ、それでも本発明の精神および範囲を逸脱することなく類似または同様の結果を得ることができることが理解される必要がある。したがって、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
実施例1:強直性脊椎炎(AS)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、強直性脊椎炎(AS)の患者から得られた。このサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して末梢血血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
European Spondylarthropathy Study Group(ESSG)による診断基準および分類‐Bath基準(Calin, A., J. D. Taurog., Eds. 1998,「The Spondylarthritides」)を満たした、44例を上回る活動性強直性脊椎炎の患者から、末梢血血清を採取した。
2.サイトカインの測定
試料を、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)を用いて分析した。このアッセイは、単一の50マイクロリットル試料中の、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFまたはFGFから構成される28種のサイトカインを定量する。本アッセイは、Luminex-100分析装置(Luminex Corporation, Austin, TX, USA)を用いる、ビーズを利用した蛍光多タンパク質分析システムである。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出(clinical presentation)を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)を用いた。本発明者らは、前進逐次(Forward Stepwise)分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
逐次DFAでは、判別のためのモデルを逐次的に構築する。具体的には、それぞれの段階で、本発明者らはすべての変数を検討し、どれが群間の判別に最も寄与するかを評価した。続いて、この変数をモデルに含め、プロセスを次の段階に進めた。この逐次的な手順は、数値が入力される各々のFによって「指し導かれる(guided)」。変数に対するF値は群間の判別に関するその統計学的有意性を示しており、すなわち、これは変数が判別関数に特有の寄与を行う程度の指標である(これは根(root)、すなわち遺伝子発現と一定の係数との線形結合であり、集団への所属の予測のために用いられる)。一般に、本発明者らは、そのような変数に対するそれぞれのF値が、ユーザが指定して入力されるFよりも大きい限り、モデルに含めようとする変数を選択することを続ける。
各サイトカインの判別力の統計学的有意性を、ウィルクスの偏Λ(partial Wilk's Lambda)(重回帰分析における偏相関係数に相当する)によって調べることもできる。ウィルクスのΛは、群内差と、群内差+群間差(標準偏差)の合計との比である。その値は1.0(判別力なし)から0.0(完全な判別力)までの範囲をとる。
DFAは、Statisticaパッケージ(StatSoft, Tulsa OK)を用いて行った。このソフトウエアは、最大の判別能を有するサイトカインのリストおよび根(類似の群内値を有していて各群毎に異なる、これらのサイトカインの線形結合)を生成する。最終的な式の判別能力は、各群に関して観測された根の値の単純な多次元プロットで観察することができる。これにより、さまざまな群間の類似性のグラフ表示が得られる。
試料の異質性をさらに調べるために、類似性の指標としてのピアソン相関係数および閾値r=0.8を用いるクラスター分析の変法を用いた。AS患者、HLA B27陽性の非罹患対照およびHLA B27陰性の非罹患対照から得たデータを、これらの方法に用いた。
4.結果
強直性脊椎炎患者は、類似のサイトカインプロフィールを共通に有していた。MHCクラスI HLA-B27陽性の健常対照も、患者と共通した独特なサイトカイン特性を有しており、このことは、HLA-B27が脊椎関節炎性疾患の病因および病態生理のいずれにおいても主たる役割を果たしていることを示唆する。強直性脊椎炎(AS)はMHC I-HLA-B27座位と強い遺伝的関連がある。しかし、ASの病態生理におけるHLA-B27の役割については未だに議論がある。
総合的多サイトカインアッセイを用いて、本発明者らは、強直性脊椎炎患者の末梢血中でアップレギュレートされている、以下のものを含むサイトカインの特定のセットを見いだした:CCL4/MIP-1β、IL-17、IL-6、CCL2/MCP-1、TNF-α、IFN-γ、GM-CSF、IL-13、IL-4、G-CSFおよびCXCL8/lL-8。HLA-B27陽性の健常対照も、HLA-B27陰性対照と比較してIFN-γ(p=0.07)およびIL-8(p=0.08)レベルが上昇しており、このことからHLA-B27が患者に疾患への素因を与える働きをする可能性が示唆された。AS患者におけるIL-1βのレベルは、TNF-αおよびIFN-γのレベルが有意に上昇している場合でも有意に高くはなかった。これらの患者でアップレギュレートされているサイトカインはASに特有であり(この群は、他の脊椎関節症サブタイプ、関節リウマチまたはSLEの特徴ではない)、このことは、この複合的な免疫活性が脊椎炎および/または仙腸骨炎を特に誘発することを示唆する。さらに、サイトカイン価は疾患活動度と相関しており、このことは、このサイトカイン群を、ASにおける疾患活動度の代用指標(surrogate)として、生物製剤療法を指し導くために用いうることを示唆している。
実施例2:乾癬性関節炎(PsA)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、乾癬性関節炎(PsA)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
乾癬性関節炎と診断された患者72例からの末梢血血清を分析した。また、ある患者の脳脊髄液を分析した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、乾癬性関節炎の発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている。このモデルは、慢性炎症が、所定の抗原に応答した免疫経路への異常な関与の結果であることを暗に示している(Finkelman F D, J Exp Med, pp.182: 279-282, 1995)。
乾癬性関節炎(PsA)は軸骨格の慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、骨外性の症状発現、主として乾癬を伴う。乾癬性関節炎の表現型上の異質性の基礎をなす機序は不明である。分子的な診断的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたPsAを有する患者72例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。サイトカインの量的な値に基づき、試料は3つの異なるサブセットに分類された。72例の特性を調べた。すべての標本において、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFおよびFGFを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。PsA患者で高値であるサイトカインには、GM-CSF、IL-17、IL-2、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-6、CCL4/MIP-1βおよびCCL3/MCP-1が含まれる。
実施例3:反応性関節炎(ReA)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、反応性関節炎(ReA)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
反応性関節炎と診断された患者13例からの末梢血血清を分析した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、反応性関節炎の発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている(Finkelman F D, J Exp Med, pp.182: 279-282, 1995)。
反応性関節炎(ReA)は、軸骨格の慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、骨外性の症状発現を伴うことも伴わないこともある。反応性関節炎の表現型上の異質性の基礎をなす機序は不明であるが、細菌性およびウイルス性の抗原が疾患の病因に寄与するのではないかと疑われている。分子的な診断的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたReAを有する患者13例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
すべての標本において、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFおよびFGFを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。確定されたReAの異型体(variant)はそれぞれ特有のサイトカインプロフィールを呈したが、異型体はすべて、ReAに特有の共通のサイトカインプロフィールを有していた。ReA患者で高値であるサイトカインには、IL-12(p70)、IFN-γ、IL-1β、IL-13、IL-17、CCL2/MCP-1、TNF-α、IL-4、G-CSFおよびIL-6が含まれる。
実施例4:腸疾患性関節炎(EA)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、腸疾患性関節炎(EA)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
腸疾患性関節炎と診断された患者12例からの末梢血血清を分析した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、EAの発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている(Finkelman F D, J Exp Med, pp.182: 279-282, 1995)。
腸疾患性関節炎は、軸骨格の慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、骨外性の症状発現を伴うことも伴わないこともある。腸疾患性関節炎の表現型上の異質性の基礎をなす機序は不明であるが、胃腸の細菌抗原が疾患の発症に重要な役割を果たすのではないかと疑われている。分子的な診断的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断された腸疾患性関節炎を有する患者12例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
すべての標本において、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFおよびFGFを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。確定された腸疾患性関節炎の異型体はそれぞれ特有のサイトカインプロフィールを呈したが、異型体はすべて、EAに特有の共通のサイトカインプロフィールを有していた。EA患者で高値であるサイトカインには以下のものが含まれる:IL-8、IL-1β、IL-4、G-CSF、IFN-γおよびTNF-α。
実施例5:潰瘍性大腸炎(UC)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、潰瘍性大腸炎(UC)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
潰瘍性大腸炎(UC)と診断された患者10例からの組織生検試料を分析した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、UCの発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。
潰瘍性大腸炎は、胃腸系の慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、腸管外の症状発現を伴うことも伴わないこともある。過敏性腸疾患の表現型上の異質性の基礎をなす機序は不明である。分子的な診断的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたUCを有する患者10例からの組織生検試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
すべての標本において、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFおよびFGFを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。UC患者で高値であるサイトカインには、IL-7、CXCL8/IL-8、IFN-γ、TNF-αおよびIL-1βが含まれる。
実施例6:クローン病(CD)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、クローン病(CD)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
クローン病と診断された患者9例からの組織生検試料を分析した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、CDの発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている。
クローン病(CD)は、結腸の慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、結腸外の症状発現を伴うことも伴わないこともある。クローン病の表現型上の異質性の基礎をなす機序は不明である。分子的な診断的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたCDを有する患者9例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
すべての標本において、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFおよびFGFを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。CD患者で高値であるサイトカインには、以下のものが含まれる:TNF-α、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-7、IL-13、IL-2、IL-4、GM-CSF、G-CSF、CCL2/MCP-1およびCXCL8/IL-8。
実施例7:関節リウマチ(RA)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、関節リウマチ(RA)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
関節リウマチと診断された患者29例からの末梢血血清を分析した。
2.サイトカインの測定
試料を、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、RAの発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている。
関節リウマチは、慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、骨外性の症状発現を伴うことも伴わないこともある。関節リウマチの表現型上の異質性の基礎をなす機序は不明である。分子的な診断的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたRAを有する患者29例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
すべての標本において、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFおよびFGFを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。確定されたRAの異型体はそれぞれ特有のサイトカインプロフィールを呈したが、異型体はすべて、RAに特有の共通のサイトカインプロフィールを有していた。RA患者で高値であるサイトカインには、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、G-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-4、IL-10、IL-13、IL-5およびIL-7が含まれる。IL-2、CXCL8/IL-8、IL-12およびCCL2/MCP-1はRA患者において有意に高値ではなかった。
実施例8:全身性エリテマトーデス(SLE)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
この検討には、SLE患者22例および正常対照12例からの末梢血血清を用いた。SLEの試料のうち、5例は抗Ro 60抗体および抗La抗体を有し、4例は抗Sm抗体および抗nRNP抗体を有し、4例は抗P抗体を有し、3例は抗dsDNA抗体を有し、6例は抗APL抗体を有していた。2例のSLE患者(一方は抗Ro抗体が時間経過に伴って生じ、もう一方はSLE診断の時点で自己抗体を有していた)に対しては、13年間にわたる長期的な観察が行われた。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、SLEの発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、慢性的な全身炎症性リウマチ性障害であり、主要臓器の病変を伴うことも伴わないこともある。SLEの表現型上の異質性の基礎をなす機序は不明である。分子的な診断的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたSLEを有する患者22例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
すべての標本において、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12(p70)、IL-13、IL-17、IFN-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MCP-1およびMIP-1βを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。SLEの種々のサブセットは、正常対照と比較して、共通の独特なサイトカインプロフィールを有していた。各サイトカインに関して、各対照の平均値+3標準偏差を上回る値であれば上昇していると判断した。抗Ro 60抗体および抗La抗体を有する患者は、IL-5、IL-12およびMIP-1βを除き、検査したすべてのサイトカインのレベルが上昇しており、IFN-γは245倍に上昇していた。APL抗体を有する患者では、IL-5、IL-7、IL-12およびG-CSFを除き、検査したすべてのサイトカインのレベルが上昇していた。抗dsDNA抗体、抗P抗体または抗Sm/RNP抗体を有する患者では、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFN-γおよびMCP-1のレベルが上昇していた。長期的な観察の間に抗Ro抗体が生じた患者では、患者に抗Ro抗体が生じた時点でサイトカインIL-2、IL-6、IL-8およびIFN-γが急増した。しかし、IL-17およびMCP-1はこの患者での観察期間のほぼ全体を通じて上昇が認められ、一方、G-CSFは最初の7年間の後に低下して正常レベルとなった。これとは対照的に、SLEの診断時点で自己抗体を有していたもう一人の患者では、最初の7年間はIL-10、GM-CSF、IL-5、IL-7、IL-12、IL-13およびMIP-1βを除くすべてのサイトカインが上昇しており、その後にレベルが低下して正常となった。
複数の炎症誘発性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインIL-10は、エリテマトーデス患者のすべてのサブセットで上昇していた。サイトカインIL-2、IL-4、IL-6、IFN-γおよびMCP-1のみは、抗Ro 60抗体および抗La抗体を有する患者において、他のサブセットに比して顕著に高値であった。IL-6およびIFN-γのレベルは抗Roサブセットで最も高かった。IL-8、IL-17およびMCP-1は、検査したすべてのエリテマトーデスサブセットで高値であった。しかし、IL-5およびIL-12はすべてのエリテマトーデスサブセットで低値であった。各サブセットで、Th1型およびTh2型応答の両方が観察された。
実施例9:家族性地中海熱(FMF)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、家族性地中海熱(FMF)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
家族性地中海熱と診断された患者5例からの末梢血血清を分析した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、FMFの発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている。
家族性地中海熱は、発熱および腹膜炎(腹膜の炎症)の再発性発作によって通常特徴づけられる遺伝性障害である。1997年に、研究者らはFMFの遺伝子を同定し、この遺伝性リウマチ性疾患の原因となる複数の異なる遺伝子変異を見いだした。この遺伝子は第16番染色体上に発見され、ほとんど顆粒球(免疫応答に重要な白血球)のみに認められるタンパク質をコードする。このタンパク質は、免疫応答を不活性化することにより、炎症を制御された状態に保つのを通常手助けしている可能性が高い―この「ブレーキ」がないと、不適切な本格的炎症反応が起こる:これがFMFの発作である。診断性のあるサイトカインの分子的特徴が存在するか否かを調べるために、臨床的に診断されたFMFを有する患者5例からの血清試料を検査し、サイトカインの濃度を定量した。
すべての標本において、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8/CXCL8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、INF-α、INF-β、INF-γ、TNF-α、GM-CSF、G-CSF、MIP-1α/CCL3、MIP-1β/CCL4、MCP-1/CCL2、RANTES/CCL5、エオタキシン/CCL11、VEGF、EGFおよびFGFを、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイを用いて分析した。確定されたRAの異型体(variant)はそれぞれ特有のサイトカインプロフィールを呈したが、異型体はすべて、FMFに特有の共通のサイトカインプロフィールを有していた。FMF患者で高値であるサイトカインには、以下のものが含まれる:G-CSF、IL-2、IFN-γ、TNF-α、IL-1βおよびCXCL8/IL-8。
実施例10:筋萎縮性側索硬化症(ALS)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
マルチプレックスサスペンションアレイ技術を用いて、中等期ALSの患者15例から、および既知の神経疾患に罹患していない年齢の一致する患者15例からの、保存されたCSF中の28種のサイトカインおよびケモカインを定量した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
本明細書に提示したデータは、炎症の制御における種々のサイトカインの寄与を示すとともに、ALSの発生機序における免疫経路の役割を再評価する必要性も強く示している。免疫偏向は現在、自己免疫疾患の発生機序を説明する概念として広く受け入れられている。
神経炎症仮説は、脱調節状態にあるサイトカインネットワークが筋萎縮性側索硬化症(ALS)および他の神経変性疾患の一因となることを主張している。最近の知見により、サイトカイン発現の変化が、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)のマウスモデルにおける疾患の発現および進行と相関することが示されている。ALSのヒトから採取した脳脊髄液(CSF)でも同様のサイトカインの変化が観察されるか否かを明らかにするための研究に着手した。マルチプレックスサスペンションアレイ技術を用いて、中等期ALSの患者15例から、および既知の神経疾患に罹患していない年齢の一致する患者15例からの、保存されたCSF中の17種のサイトカインおよびケモカインを定量した。
さらに、固相酵素免疫アッセイ(ELISA)を用いて、同一のCSF試料中の炎症性分子プロスタグランジンE2(PGE2)、ロイコトリエンB4(LTB4)およびアポトーシスのバイオマーカーである切断型タウ(c-tau)を測定した。非罹患対象よりもALS群の方が、IL-12を除くすべての分析物の平均レベルが高かった;平均IL-12はALS群の方が50%低かった。マクロファージ炎症性タンパク質1-β(MIP-1β)は95%信頼水準、IL-13およびIL-8は90%水準で有意に増加していた。全サイトカインプールに占める割合として、ALS群においてIL-13濃度は上昇する傾向(p<0.07)、IL-12は低下する傾向(p<0.08)がみられた。その結果として、IL-13/IL-12比はALSの方が4倍の高さであった(p<0.01)。これらのデータは、Th1/Th2サイトカインバランスの変化を示唆するとともに、多サイトカインサスペンションアレイが、ヒトの臨床研究において神経疾患に指標を与えるために有用な可能性があることを示唆している。
これらの結果は、中等期のヒト孤発性ALSにサイトカイン成分の広範囲にわたる脱調節が存在することを強く示唆している。詳細には、4種類のタンパク質(MIP-1β、IL-8、IL-12p70およびIL-13)が、ALSおよび非罹患者の脳脊髄液間で違いのある特に顕著な分析物である。これらの所見は、ヒト疾患におけるALSの神経炎症性仮説を裏づける端緒となるものである。
実施例11:シェーグレン症候群(SS)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、シェーグレン症候群(SS)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
マルチプレックスサスペンションアレイ技術を用いて、原発性SSに関する改訂欧州分類基準を満たした患者11例、および健常対照の血清中および血漿中の28種のサイトカインおよびケモカインを定量した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
SSGC+患者をGC-患者および対照から判別する鍵となるサイトカイン/ケモカインは、BAFF、CCL2(MCP-1)、IL-12p40、CXCL8(IL-8)およびCCL11(エオタキシン)である。本発明者らはさらに、BAFFおよびCCL2(MCP-1)がSSGC+とSSGC-とを判別する優れた役割を果たすことを示し、SSにおける異所性唾液腺GCの発生にそれが重要な役割を果たすことを示した。動物モデルでのGC形成におけるBAFFの役割が検討され、BAFFおよびBAFF-Rシグナル伝達欠損マウスではGC応答は正常に誘導されるがその進行が弱まることが示されている(14)。本発明者らの結果は、BAFFが、B細胞の活動亢進、増殖および自己抗体分泌を特徴とするリンパ腫形成の前段階である可能性のある異所性GCの発生において、決定的な「原動力」となることを示している。興味深いことに、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の患者ではBAFF血清レベルが上昇しており、これは疾患重症度と正の相関にある。また、BAFFレベルは、B細胞NHLの患者における治療反応性とも相関する。反応性のある患者は、疾患が進行する患者よりもBAFFレベルが有意に低かった(42)。これらの所見を考慮に入れて、本発明者らは、SSでは高レベルのBAFFが、CCL2(MCP-1)、IL-12p40、CXCL8(IL-8)およびCCL11(エオタキシン)などの流血中サイトカインの高値という特有のパターンとともにGC形成を招き、おそらくはこの慢性的刺激がB細胞の悪性転換を招くという仮説を立てた。さらに、BAFFはマクロファージ、単球および樹状細胞によって産生されるため(43-45)、CCL2(MCP-1)の判別能力はおそらく、単球/マクロファージを刺激してBAFFを産生させ、それ故にBAFFにより媒介されるプロセスを間接的に支援することによると考えられる。
SSGC+患者をGC-患者および対照から判別する鍵となるサイトカイン/ケモカインは、BAFF、CCL2(MCP-1)、IL-12p40、CXCL8(IL-8)、およびCCL11(エオタキシン)である。本発明者らはさらに、SSGC+とSSGC-を判別するBAFFおよびCCL2(MCP-1)の支配的な役割を実証し、SSの異所性唾液GC発生におけるその重要な役割を明らかにした。動物モデルでのGC形成におけるBAFFの役割が研究されており、BAFFおよびBAFF-Rシグナリング欠損マウスではGC反応が普通に誘導されるが、進行が弱まることが示されている(14)。本発明者らの結果は、BAFFが異所性GCの発生−B細胞機能亢進、増殖、および自己抗体分泌によって特徴付けられるリンパ腫形成の前段階である可能性がある−において重要な「駆動力」を有することを示している。興味深いことに、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者ではBAFF血清レベルが亢進しており、疾患重篤度と正の相関関係にある。また、BAFFレベルは、B細胞NHLを有する患者における治療法に対する反応と相関する。反応性の患者は、進行性疾患を有する患者よりも有意に低いBAFFレベルを有していた(42)。これら知見を考慮し、本発明者らは、SSにおいて上昇したBAFFレベルが、とりわけCCL2(MCP-1)、IL-12p40、CXCL8(IL-8)、およびCCL11(エオタキシン)などの上昇した循環サイトカインの独特のパターンと共に、GC形成を引き起こし、おそらくこの慢性的刺激がB細胞の腫瘍転換を引き起こすのではないかと仮定する。さらには、BAFFはマクロファージ、単球、および樹状細胞(43-45)によって産生されるので、おそらくCCL2(MCP-1)の判別力は、単球/マクロファージがBAFFを産生するように、そして間接的にBAFFを介するプロセスを支えるように刺激することによるものであろうと考えられる。本発明者らの結果は、流血中の血清サイトカインの複合的な障害がシェーグレン症候群に寄与することを暗に示している。本発明者らは、SSに対する多サイトカインアレイシステムの利用により、この疾患をサブカテゴリー化して異種混交的な患者の有意義な特徴を発見するための強力なツールがもたらされ、これらの2つの型の疾患を評価する助けとなる一般的な臨床的および検査上のパラメーターも提供されると考えている。
患者および対照を判別する鍵となるサイトカイン/ケモカインは、CCL2/MCP-1、IL-12、CXCL8/IL-8、CCL11/エオタキシン、TNFα、IL-2、IFNα、IL-15、IL-17、IL-1α、IL-1β、IL-6およびGM-CSFである。多サイトカインアッセイを利用した現在進行中の別の研究では、連続的な血清サイトカインレベルの測定値に顕著な変動はみられなかった。さらに、流血中サイトカインレベルの修飾を回避するために、本発明者らはこの研究では、サイトカインレベルに重大な影響を及ぼすと考えられる免疫調節薬を分析時点で使用していない患者を選択した。
本発明者らは、多サイトカインアッセイをDFAの利用と組み合わせることにより、SS患者を複数の異なるサブセットのいずれかとして、健常対照からも明確に識別しうると結論した。この情報は、判別性のあるサイトカイン候補を正確に特定し、それに基づいて患者の経過観察を実施することができる強力なツールとなる。リンパ腫の前駆状態の可能性のある疾患単位に対するサイトカインマーカーの同定は、診断において重要なだけでなく、シェーグレン症候群において高頻度に認められる異所性胚中心の存続を抑制する選択的抗サイトカイン療法の設計にも重要な可能性がある。
実施例12:早期関節炎における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、早期関節炎の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
マルチプレックスサスペンションアレイ技術を用いて、早期関節炎および未分類関節炎の患者41例、ならびに健常対照21例からの血漿中の28種のサイトカインおよびケモカインを定量した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
患者では炎症誘発性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインがともに対照よりも上昇していた。患者においてアップレギュレートされるサイトカインには、CCL4/MIP1β、CXCL8/IL-8、IL-2、IL-12、IL-17、IL-13、TNFα、IL-4、IL-5およびIL-10が含まれた。早期で未治療の炎症性関節炎を、サイトカインプロフィールに基づいて複数の異なるサブグループに分類することができる。サイトカインプロフィールを組み込むことは、これらの患者における予後判定および治療上の判断の助けになる可能性がある。
実施例13:乾癬(PSO)における独特なサイトカインパターン
サイトカインの独特なプロフィールが、乾癬(PSO)の患者から得られた。この独特なサイトカインプロフィールは、サイトカインの存在に関して血清の試料採取を行うことによって決定された。患者は、臨床的な疾患表現型および疾患重症度に基づく、予測性のある分子サイトカインプロフィールを有することが明らかになった。詳細には、サイトカインは特定の疾患分類の範囲内では類似性があるが、サイトカインのレベルは個々の患者については幾分異質であることが見いだされ、このことから、種々の疾患病期および疾患重症度をこの分子的診断機構によって識別しうる可能性がもたらされた。
1.試験集団
マルチプレックスサスペンションアレイ技術を用いて、臨床的に診断された乾癬を有する患者5例、および健常対照5例からの血清中の28種のサイトカインおよびケモカインを定量した。
2.サイトカインの測定
試料は、総合的な生体計測用多サイトカインアッセイ(BioSource, Camarillo, CA, USA)(上記)を用いて分析した。
3.統計分析
規定された患者サブセットにおけるサイトカインプロフィールの臨床的表出を、標準的なスチューデントt検定、逐次的な判別関数による検定、およびロバスト性の高いクラスター分析を用いることによって比較した。差異を伴って発現されるサイトカインを、一般的に認められている有意性閾値p<0.05を用いる、対応スチューデントt検定によって同定した。スチューデントt検定は、Microsoft Excel(Microsoft, Inc., Redman WA)を用いて行った。患者集団内の個体分散を考慮して、第2の選択方法も利用した。
患者からの試料の群と非罹患対照からの試料の群との判別能力が最大となるサイトカインのセットの選択のために、判別関数分析(DFA)(上記)を用いた。本発明者らは、前進逐次分析と呼ばれるDFAの変法を用いた。
4.結果
乾癬患者では、血清サイトカインIL-1β、IL-2、CXCL8/IL-8、IL-13、G-CSFおよびCCL4/MIP-1βがアップレギュレートされていた。FGFは対照で認められるよりも低いレベルにダウンレギュレートされていた。このプロフィールにおける一連の血清サイトカインは乾癬に特有である。乾癬におけるサイトカインマーカーの同定は診断において重要であるだけでなく、この疾患の瘢痕形成および身体的不快感を予防する選択的抗サイトカイン療法の設計にも重要な可能性がある。
VI.参考文献
以下の参考文献は、本明細書中に記載したものを補足する例示的な手順上またはその他の詳細を提供する範囲において、参照として明確に本明細書に組み入れられる。