JP4711629B2 - ナノ結晶層生成方法、そのナノ結晶層生成方法により生成されたナノ結晶層を備えた機械部品、及び、その機械部品の製造方法 - Google Patents

ナノ結晶層生成方法、そのナノ結晶層生成方法により生成されたナノ結晶層を備えた機械部品、及び、その機械部品の製造方法 Download PDF

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本発明はナノ結晶層生成方法、そのナノ結晶層生成方法により生成されたナノ結晶層を備えた機械部品、及び、その機械部品の製造方法に関するものである。
金属材料の表層部にナノ結晶層を生成することにより、従来にない優れた特性を持つ材料を得られることが近年になって判明してきた。ナノ結晶層とは、結晶粒の大きさがサブミクロン又は100nm以下のナノサイズに形成される微細結晶粒層であり、母材の硬さに比べて極めて高い硬度を持ち、高温でも再結晶し難く、また、高い圧縮残留応力を持つなど、機械部品に適した優れた特性を有している。
そこで、ナノ結晶層を金属材料の表層部に生成する技術が種々提案されている。例えば、特開2003−39398号公報には、金属製重錘の先端面に設けられた突起を金属製品の表面に衝突させ、突起が衝突した金属製品の表面箇所にナノ結晶層を生成させる技術が記載されている(特許文献1)。
また、従来の他の技術としては、ショットピーニングを利用する技術がある。図4は、ショットピーニングについて示した模式図である。このショットピーニングは、図4に示すように、噴射装置100から噴射される圧縮空気の噴射圧力を利用して、鋼やセラミックスなどの硬質粒子Gを金属材料101の加工面101aに高速で衝突させるものであり、この衝突によって、加工面101aの表面に塑性変形を生じさせ、ナノ結晶層を生成する。
特開2003−39398号公報(段落[0010]、図2など)
しかしながら、上述した金属製重錘の突起を衝突させる技術では、例えば、ナノ結晶層を生成すべき面がコーナー部や穴の内周面などである場合には、その面に金属製重錘の突起を衝突させることができないため、ナノ結晶層を生成することができず、複雑な形状を有する実際の工業製品に適用することが困難であるという問題点があった。
また、上述した従来の技術では、金属性重錘の衝突装置や硬質粒子Gの噴射装置100など、特殊な設備が別途必要となり、装置コストが嵩むという問題点があると共に、それらの装置を使用した工程を別途追加することも必要となり、加工コスト(ナノ結晶層の生成コスト)が嵩むという問題点もあった。更に、金属製重錘の突起を衝突させる技術では、その突起の衝突面積が限られるため、ナノ結晶層を広い範囲に生成する場合には、長時間の加工が必要となり、その分、加工コスト(ナノ結晶層の生成コスト)が嵩むという問題点があった。
更に、上述した従来の技術は、製品の表面に突起や硬質粒子Gを衝突させ、その衝突面を塑性変形させることにより、ナノ結晶層を生成するものであるため、ナノ結晶層の生成面が粗くなり、平滑な仕上げ面を得ることができないばかりか、均一なナノ結晶層を得ることができないという問題点があった。
例えば、突起を衝突させる技術では、突起の中心部と外縁部とで製品表面への衝突圧力が異なるため、製品の衝突面に形成されたナノ結晶層の厚みや特性が突起の径方向に不均一となる。また、ショットピーニングを利用する技術の場合には、穴の内周面などには硬質粒子Gを均一に衝突させることができず、穴の底部近傍に比べて口部近傍にナノ結晶層が集中して生成されてしまう。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、金属製品の表面にナノ結晶層を低コストで、かつ、安定して生成することができるナノ結晶層生成方法、そのナノ結晶層生成方法により生成されたナノ結晶層を備えた機械部品、及び、その機械部品の製造方法を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載のナノ結晶層生成方法は、金属材料から構成される被加工物の加工面に微細結晶粒層としてのナノ結晶層を生成する方法であって、前記被加工物に加工工具を使用した機械加工を行って、その加工面に局部的な大歪を付与することにより、前記加工面の表層部に前記ナノ結晶層を生成するものであり、前記加工工具を使用した機械加工は、前記被加工物の加工面に少なくとも真歪7以上の塑性加工を与えて行われるものであって、前記加工工具を使用した機械加工は、前記被加工物の加工面における材料温度を所定の上限温度以下に維持して行われるものであり、その所定の上限温度は、前記被加工物が鉄鋼材料から構成される場合にはその鉄鋼材料のA1およびA3変態点であり、前記被加工物が鉄鋼材料を除く他の金属材料から構成される場合にはその金属材料の絶対温度に換算した融点の1/2の温度であり、前記被加工物の加工面における材料温度は、前記機械加工が行われる間の時間的な平均材料温度および前記加工面全体における熱分布の平均材料温度が前記所定の上限温度以下となるように維持されるものである。
請求項記載の機械部品は、金属材料から構成され、その表層部の少なくとも一部に前記請求項1記載のナノ結晶層生成方法によって生成されたナノ結晶層を備えている。
請求項記載の機械部品の製造方法は、金属材料から構成され、その表層部の少なくとも一部にナノ結晶層が生成された機械部品の製造方法であって、前記請求項1記載のナノ結晶層生成方法によって前記機械部品にナノ結晶層を生成するナノ結晶層生成工程を少なくとも備えている。
請求項1記載のナノ結晶層生成方法によれば、被加工物に加工工具を使用した機械加工を行うことにより、その加工面の表層部にナノ結晶層を生成するので、従来のナノ結晶層生成方法のように、被加工物の形状によってナノ結晶層の生成可能な部位が限定されたり、ナノ結晶層の厚みや特性が不均一化したりすることを抑制することができ、ナノ結晶層を安定して生成することができるという効果がある。
また、従来のナノ結晶層生成方法のように、金属製重錘の衝突装置やショットピーニングの噴射装置などの特別な装置を別途設ける必要がないので、装置コストを抑制することができるという効果がある。また、製品の製造工程においては、ナノ結晶層を生成するための工程変更を最小限とすることができるので、ナノ結晶層の生成コストを低減して、その分、製品の製品コストを抑制することができるという効果がある。
更に、従来のナノ結晶層生成方法では、広い範囲にナノ結晶層を生成する場合、突起や硬質粒子の衝突を何度も行う必要があるため、加工時間が嵩み非効率的であるのに対し、請求項1記載のナノ結晶層生成方法は、加工工具を使用した機械加工によってナノ結晶層を生成するので、ナノ結晶層を効率良く生成することができ、その分、ナノ結晶層の生成コストを抑制することができるという効果がある。
また、加工工具を使用した機械加工は、その加工面の材料温度を所定の上限温度以下に維持して行われるものであるので、被加工物の加工面表層部にナノ結晶層を確実に生成することができるという効果がある。
また、加工工具を使用した機械加工は、被加工物の加工面に真歪7以上の塑性加工を与えるので、被加工物の加工面表層部にナノ結晶層を確実に生成することができるという効果がある。
また、被加工物の加工面における材料温度は、機械加工が行われる間の時間的な平均材料温度および加工面全体における熱分布の平均材料温度が所定の上限温度以下となるように維持されるものである。即ち、上記材料温度が瞬間的又は局部的に所定の上限温度より上昇された場合であっても、平均材料温度が所定の上限温度以下に維持されていれば良いので、かかる材料温度の管理コストを低減して、その分、ナノ結晶層の生成コストを抑制することができるという効果がある。
請求項記載の機械部品によれば、請求項1記載のナノ結晶層生成方法によって生成されたナノ結晶層をその表層部の少なくとも一部に備えている。よって、機械部品の表面硬度を向上させることができると共に、圧縮残留応力が付加されるので疲労強度を向上させることができ、更に、高温でも再結晶し難くなるので耐摩耗性を向上させることができ、その結果、かかる機械部品の特性を向上させることができるという効果がある。また、請求項1記載のナノ結晶層生成方法によりナノ結晶層が生成されるので、かかるナノ結晶層を低コストに生成することができ、その分、機械部品全体としての製品コストを抑制することができるという効果がある。
請求項記載の機械部品の製造方法によれば、請求項1記載のナノ結晶層生成方法によって機械部品にナノ結晶層を生成するナノ結晶層生成工程を少なくとも備えているので、ナノ結晶層を安定して生成すると共に、その生成コストを抑制しつつ、かかる機械部品を製造することができるという効果がある。
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、第1実施例では、ナノ結晶層生成方法として、ドリルD(加工工具)を使用した穴あけ加工(機械加工)により被加工物の加工面表層部にナノ結晶層を生成する方法について説明する。
図1は、本発明の第1実施例におけるナノ結晶層生成方法を説明する図であり、図1(a)は、ドリルDによる穴あけ加工中の被加工物Wの断面図であり、図1(b)は、ドリルDによる穴あけ加工後の被加工物Wの断面図である。なお、図1では、ドリルD及び被加工物Wの一部が省略して図示されている。
第1実施例におけるナノ結晶層生成方法によれば、被加工物Wに対して、以下に示す第1及び第2の2つの加工条件をそれぞれ満たしつつ、ドリルDによる孔部1の穴あけ加工を行うことにより(図1(a)参照)、その孔部1の内周面(加工面の表層部)にナノ結晶層Cを生成することができる(図1(b)参照)。
まず、第1の加工条件としては、孔部1の内周面に少なくとも真歪7以上の塑性加工を与えることが条件とされ、これは、図2に示す切削条件に従うことによって達成される。なお、図2は、従来の切削条件と本発明の第1の加工条件としての切削条件(ナノ結晶層生成切削条件)とを比較して示した図であり、横軸はドリルDの送り速度(mm/rev)を、縦軸はドリルDの周速(m/min)を、それぞれ示している。
図2に示すように、第1の加工条件は、ドリルDの周速を毎分50m以上、かつ、ドリルDの送り速度を1回転当たり0.2mm以下に規定するものであり、この第1の加工条件に従って、ドリルDによる孔部1の穴あけ加工を行うことにより、その孔部1の内周面に少なくとも真歪7以上の塑性加工を与えることができる。
但し、第1の加工条件は、ドリルDの周速を毎分75m以上、かつ、ドリルDの送り速度を1回転当たり0.05mm以下とすることがより好ましい。孔部1の内周面に真歪7以上の塑性加工をより確実に与えることができるからである。
なお、孔部1の穴あけ加工に際しては、まず、規定よりも小径のドリルで下穴2(図1では1点鎖線にて示す)を予め穿設し、次いで、規定の外径を有する上述のドリルDまたはリーマにより、孔部1を規定の径に仕上げるようにしても良い。この場合、下穴2の穴あけ加工は、図2に示す従来の切削条件に従う一方、ドリルDまたはリーマによる孔部1の仕上げ加工は、図2に示す第1の加工条件(ナノ結晶層生成切削条件)に従う。
次いで、第2の加工条件としては、ドリルDによる穴あけ加工の間、孔部1の加工面の材料温度を所定の温度(以下、「上限温度」と称す。)よりも低温に維持することが条件とされる。即ち、加工部に切削油など供給して、その加工面の材料温度が上昇することを抑制するのである。
ここで、上限温度は、被加工物Wが鉄鋼材料から構成される場合には、その鉄鋼材料のA1及びA3変態点とされ、被加工物Wが鉄鋼材料を除く他の金属材料から構成される場合には、その金属材料の融点の略1/2の温度とされる。なお、融点は、絶対温度で計算されるものであり、例えば、融点が1500℃であれば、上限温度は、略886.5K(=1773K/2)となる。
なお、第2の加工条件における「上限温度よりも低温に維持する」とは、ドリルDにより孔部1の穴あけ加工が行われる間の時間的な平均材料温度と、その孔部1の加工面全体における熱分布の平均材料温度とが、それぞれ上限温度よりも低温に維持されていれば足りる趣旨である。よって、加工面の材料温度が瞬間的または局部的に上限温度よりも高温となった場合であっても、上述の平均温度が上限温度よりも低温に維持されていれば、第2の加工条件は満たしている。
次いで、上述したナノ結晶層生成方法を適用して行った穴あけ加工の結果について説明する。この穴あけ加工に使用した被加工物Wは、合金鋼(JIS−SCM420H)から構成されるものであり、浸炭焼き入れなどの熱処理によって、表面の硬化処理がなされている。なお、被加工物Wの硬度は、表面の硬度が約6.8GPa(700Hv)とされ、内部の硬度が約3.4GPa(350Hv)とされている。
この被加工物Wに対して、上述した第1及び第2の加工条件に従いつつ、ドリルDを使用して孔部1を穿設した結果、孔部1の内周面には、図1(b)に示すように、ナノ結晶層Cが生成された。生成されたナノ結晶層Cを詳細に観察した結果、ナノ結晶層Cは、粒径が略100nm(0.1μm)であり、硬度が9.8GPa(980Hv)まで向上していることが確認された。なお、ナノ結晶層Cの面粗さは、Ra0.7であった。
次いで、上述した第1実施例におけるナノ結晶層生成方法をオートマチックトランスミッション用のインプットシャフトの製造に適用し、その捩り疲労強度試験を行った結果について説明する。インプットシャフトは、上述の被加工物Wと同材料から構成されるものであり、軸方向に延びる油導入用の横穴を内部に有する長尺の孔付きシャフトとして形成されている。
このインプットシャフトの外周面には、上記の横穴と連通する油供給用の分岐孔が複数穿設されており、この分岐孔の穴あけ加工において、上述のナノ結晶層生成方法が適用されている。従って、各分岐孔の内周面には、ナノ結晶層が生成されており、その硬度が向上されている。
分岐孔形成部におけるインプットシャフトの捩り疲労強度は、付加トルク392Nmでは平均378653回、付加トルク451Nmでは平均95727回となり、分岐孔の内周面にナノ結晶層を有しない従来品と比較して、その強度(9万回相当時のトルク比)が略20%向上していることが確認された。
次に、図3を参照して第2実施例について説明する。第1実施例のナノ結晶層生成方法では、ドリルDを使用した穴あけ加工によりナノ結晶層を生成したが、第2実施例のナノ結晶層生成方法は、押し付け工具Pを使用したスライディング加工によりナノ結晶層を生成する。なお、前記した第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図3は、第2実施例におけるナノ結晶層生成方法を説明する図であり、図3(a)は、押し付け工具Pによるスライディング加工中の被加工物Wの斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における被加工物Wの横断面図である。なお、図3(a)では、被加工物Wを保持しつつ旋盤からの回転力を伝達するホルダーの図示が省略されている。また、図3(b)は、押し付け工具Pによるスライディング加工後における被加工物Wの横断面図を示している。
第2実施例におけるナノ結晶層生成方法によれば、被加工物Wに対して、上述した第1及び第2の2つの加工条件を満たしつつ、押し付け工具P(加工工具)による外周加工面11のスライディング加工(機械加工)を行うことにより(図3(a)参照)、その外周加工面11の表層部(加工面の表層部)にナノ結晶層Cを生成することができる(図3(b)参照)。
なお、スライディング加工とは、被加工物Wに回転(図3(a)矢印R方向)を与えると同時に、被加工物Wの外周加工面11に押し付け工具Pを所定の圧力で押し付けて滑動させることにより、被加工物Wの外周加工面11に塑性加工を与える加工である。
まず、被加工物W及び押し付け工具Pの詳細諸元について説明する。被加工物Wは、材質:炭素鋼(JIS−S10C)、加工外周面11の外径:φ10mmであり、押し付け工具Pは、材質:工具鋼(JIS−SKD61)、硬度:8.3GPa(850Hv)、工具幅(図3(a)左右方向幅):5mmである。
ここで、ナノ結晶層を生成するためには、上述した第1の加工条件(真歪7以上の塑性加工を与える条件)を満たすべく、押し付け工具Pの押し付け面圧を100MPa以上、かつ、スライディング加工時間を3分以上とすることが必要である。但し、被加工物Wの回転速度はいずれの回転でも良い。
なお、より好ましくは、被加工物Wの回転速度を毎分25回転以上、かつ、押し付け工具Pの押し付け面圧を400MPa以上、かつ、スライディング加工時間を5分以上とし、更に、冷却液(例えば、メタノール)の供給量を毎分50ml程度とするのが良い。加工外周面11に真歪7以上の塑性加工をより確実に与えることができるからである。
次いで、第2実施例におけるナノ結晶層生成方法を適用して行ったスライディング加工の結果について説明する。図3(a)に示すように、被加工物Wに対して、上述した第1及び第2の加工条件を満たしつつ、押し付け工具Pを使用して加工外周面11にスライディング加工を行った結果、その加工外周面11には、図3(b)に示すように、ナノ結晶層Cが生成された。
このスライディング加工後の被加工物Wを詳細に観察した結果、被加工物Wは、ナノ結晶層Cが生成されていない内部の硬度が3.9GPa(400Hv)であったのに対し、ナノ結晶層Cにおける硬度が7.0GPa(720Hv)まで向上していることが確認された。
また、このようなナノ結晶層Cが生成された被加工物Wに焼鈍処理を行った結果について説明する。なお、焼鈍処理は、被加工物Wを600℃の雰囲気温度中に1時間保持することにより行った。
焼鈍処理後の被加工物Wは、ナノ結晶層Cが生成されていない内部の硬度が1.5GPa(155Hv)であったのに対し、ナノ結晶層Cにおける硬度が3.9GPa(400Hv)であり、高い硬度が維持されていた。このように、ナノ結晶層Cは、焼鈍処理によっても結晶粒が再結晶されにくく、温度鈍感性に優れているので、第2実施例におけるナノ結晶層生成方法を例えば回転軸の摺動面に適用することにより、かかる摺動面の耐摩耗性を向上させ、回転軸の寿命の向上を図ることができる。
以上説明したように、本発明のナノ結晶層生成方法は、被加工物WにドリルDや押し付け工具Pを使用した機械加工(穴あけ加工、スライディング加工)を行って、その加工面(孔部1の内周面、加工外周面11)の表層部にナノ結晶層Cを生成するので、従来のショットピーニング等を使用するナノ結晶層生成方法ではナノ結晶層Cを生成することができなかった部位にもナノ結晶層Cを生成することができ、また、均一なナノ結晶層Cを安定して生成することができる。
また、本発明のナノ結晶層生成方法によれば、従来のナノ結晶層生成方法のように、ショットピーニングの噴射装置100(図4参照)などの特別な装置を別途設ける必要がないので、装置コストを抑制することができる。そして、製品の製造工程においては、ナノ結晶層Cを生成するために生じる工程変更を最小限として、ナノ結晶層の生成コストを低減することができ、その分、製品の製品コストを抑制することができる。
例えば、第1実施例の例では、ドリルDによる孔部1の穴あけ加工と同時にナノ結晶層Cを生成することができるので、ナノ結晶層Cを生成するための工程追加を不要とすることができる。また、第2実施例の例では、加工外周面11をバイトにより外径切削した後、そのバイトを押し付け工具Pに変更するだけで、即ち、被加工物Wをホルダに保持したままで、ナノ結晶層Cを生成することができるので、工程変更を最小限に抑制することができる。
更に、従来のナノ結晶層生成方法では、広い範囲にナノ結晶層Cを生成する場合、突起や硬質粒子G(図4参照)の衝突を何度も繰り返す必要があるため、加工時間が嵩み非効率的であったのに対し、本発明のナノ結晶層生成方法によれば、ドリルDや押し付け工具Pを使用した機械加工(穴あけ加工、スライディング加工)によってナノ結晶層Cを生成するので、ナノ結晶層Cを効率良く生成することができ、その分、ナノ結晶層Cの生成コストを抑制することができる。
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施例では、ナノ結晶層を生成するための機械加工として、ドリルDを使用した穴あけ加工や押し付け工具Pを使用したスライディング加工を例に説明したが、必ずしもこれらの機械加工に限られるわけではなく、上述した第1及び第2の加工条件をともに満たす機械加工であれば、他の種類の機械加工を本発明に適用することは当然可能である。
かかる機械加工としては、例えば、バイト工具を使用した旋盤加工、フライス工具を使用したフライス加工、バイト工具を使用した平削り加工、ホブ工具を使用した歯切り加工などに代表される切削加工や、砥石工具を使用した仕上げ加工などに代表される研削加工や、バニッシング工具を使用したバニッシング加工などに代表される研磨加工などが例示される。
また、上記第1実施例では、ナノ結晶層Cを有する機械部品として、オートマチックトランスミッション用のインプットシャフトを例に説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、金属材料から構成されるものであれば、どのような機械部品であっても良く、自動車用の構造部品である必要もない。他の機械部品としては、例えば、建築用の構造部品などが例示される。
なお、上記各実施例では、被加工物Wが鉄鋼材料から構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるわけではなく、被加工物Wを鉄鋼材料を除く他の金属材料から構成することは当然可能である。鉄鋼材料を除く他の金属材料としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、銅などの金属材料とその合金が例示される。即ち、請求項1からのいずれかに記載した金属材料は、鉄鋼材料やここで例示した金属材料に限定されるものではなく、種々の金属材料が含まれる趣旨である。
本発明の第1実施例におけるナノ結晶層生成方法を説明する図であり、(a)はドリルによる穴あけ加工中の被加工物の断面図であり、(b)はドリルによる穴あけ加工後の被加工物の断面図である。 従来の切削条件と本発明の第1の加工条件としての切削条件とを比較して示した図である。 第2実施例におけるナノ結晶層生成方法を説明する図であり、(a)は押し付け工具によるスライディング加工中の被加工物の斜視図であり、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における被加工物Wの横断面図である。 従来のナノ結晶層生成方法(ショットピーニング)を示した図である。
W 被加工物
C ナノ結晶層
D ドリル(加工工具)
P 押し付け工具(加工工具)

Claims (3)

  1. 金属材料から構成される被加工物の加工面に微細結晶粒層としてのナノ結晶層を生成するナノ結晶層生成方法であって、
    前記被加工物に加工工具を使用した機械加工を行って、その加工面に局部的な大歪を付与することにより、前記加工面の表層部に前記ナノ結晶層を生成するものであり、
    前記加工工具を使用した機械加工は、前記被加工物の加工面に少なくとも真歪7以上の塑性加工を与えて行われるものであって、
    前記加工工具を使用した機械加工は、前記被加工物の加工面における材料温度を所定の上限温度以下に維持して行われるものであり、
    その所定の上限温度は、前記被加工物が鉄鋼材料から構成される場合にはその鉄鋼材料のA1およびA3変態点であり、前記被加工物が鉄鋼材料を除く他の金属材料から構成される場合にはその金属材料の絶対温度に換算した融点の1/2の温度であり、
    前記被加工物の加工面における材料温度は、前記機械加工が行われる間の時間的な平均材料温度および前記加工面全体における熱分布の平均材料温度が前記所定の上限温度以下となるように維持されるものであることを特徴とするナノ結晶層生成方法。
  2. 金属材料から構成され、その表層部の少なくとも一部に前記請求項1記載のナノ結晶層生成方法によって生成されたナノ結晶層を備えていることを特徴とする機械部品。
  3. 金属材料から構成され、その表層部の少なくとも一部にナノ結晶層が生成された機械部品の製造方法であって、
    前記請求項1記載のナノ結晶層生成方法によって前記機械部品にナノ結晶層を生成するナノ結晶層生成工程を少なくとも備えていることを特徴とする機械部品の製造方法。
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