JP4709431B2 - 伸縮機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1本の伸縮シリンダにより多段伸縮ブームを構成するブーム段を1段ずつ伸縮駆動する伸縮機構の伸縮シリンダの駆動油圧回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両搭載型クレーンの多段伸縮ブームの伸縮機構として、1本の伸縮シリンダにより伸縮させようとするブーム段を1段ずつ伸縮駆動する伸縮機構が実用化されている。この伸縮機構は伸縮シリンダが1本であるため、伸縮機構全体を軽量化できるという利点を有している。
【0003】
この伸縮機構は、一本の伸縮シリンダが伸縮ブームに内装されてベースブーム基端部にそのロッド端部が軸支されている。そして、この伸縮機構の特有の構成として、シリンダ・ブーム連結手段とブーム間固定手段と固定ピン駆動手段を有している。
【0004】
前記シリンダ・ブーム連結手段は、当該伸縮シリンダのシリンダチューブのロッド側端部に配置され、目的とするブームの基端部の連結穴に向けて内蔵する連結ピンを進退することにより選択的にブーム基端部と連結・解除可能とするものである。
【0005】
前記ブーム間固定手段は、隣接するブームの内側ブーム基端部に配置され、外側ブームの適所に設けられた固定穴に向けて内蔵する固定ピンを進退することにより当該隣接するブーム同士を固定・解除可能とするものである。
【0006】
前記固定ピン駆動手段は、前記伸縮シリンダのシリンダチューブロッド側端部に配置され、目的とするブーム基端部の前記固定ピンの内端に作用して進退駆動するものである。
【0007】
そして、前記シリンダ・ブーム連結手段により前記伸縮シリンダと目的のブーム基端部を連結するシリンダ・ブーム連結行程と、前記固定ピン駆動手段により前記ブーム間固定手段による目的ブームと外側ブームとの固定を解除するブーム間固定解除行程と、前記伸縮シリンダにより目的ブームを伸縮する目的ブーム伸縮行程と、前記固定ピン駆動手段により前記ブーム間固定手段による目的ブームと外側ブームとを固定するブーム間固定行程と、前記シリンダ・ブーム連結手段による前記伸縮シリンダと目的ブーム基端部との連結を解除するシリンダ・ブーム連結解除行程と、前記伸縮シリンダが次の目的ブーム基端部まで伸縮する伸縮シリンダ伸縮行程と、からなる行程を繰り返すことにより前記伸縮ブームの伸縮を行うものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した伸縮機構は1本の伸縮シリンダにより伸縮させようとするブーム段を1段ずつ伸縮駆動するものであるため、上述した伸縮行程中において伸縮シリンダのみがブーム段の伸縮駆動を行うことなく伸縮動作を行う伸縮シリンダ伸縮行程が必要であり、この行程に要する時間が発生するものである。そのため伸縮ブーム全体を目的とする伸縮状態にするまでの要するトータル時間が複数本の伸縮シリンダを有する伸縮機構と比較すると長時間となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、1本の伸縮シリンダによる伸縮機構であってその伸縮ブーム全体を目的とする伸縮状態にするまでの要するトータル時間を短縮することができる伸縮機構を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に記載された発明は、上記伸縮ブームを伸縮する伸縮シリンダを駆動する駆動油圧供給手段を、前記伸縮シリンダの伸長側油室と伸縮操作切換弁の第1の出口ポートとの間を伸長側油路により連絡し、前記伸縮シリンダの縮小側油室と前記伸縮操作切換弁の第2の出口ポートとの間に差動切換弁を介装し、当該差動切換弁を切換えることにより前記伸縮シリンダの縮小側油室と前記伸縮操作切換弁の第2の出口ポートと連絡する通常伸縮油路と、前記伸縮シリンダの縮小側油室と前記伸縮操作切換弁の第1の出口ポートとを連絡する差動伸長油路とに切換可能としたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、前記伸縮シリンダを前記差動伸長油路により伸長する際には前記通常伸長油路による場合に比べるとその伸長に要する必要油量が少なくて済むため、その伸長に要する時間が短時間となるのである。したがって、伸縮ブーム全体を目的とする伸縮状態にするまでの要するトータル時間を短縮することができるのである。
【0012】
さらに、本願の請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された構成に加えて、さらに前記伸縮機構制御装置は伸縮ブーム起伏角度検出器を有しており、前記コントローラは当該伸縮ブーム起伏角度検出器からの検出信号により、前記伸縮ブームが所定の起伏角度以上の場合のみ前記差動切換弁を前記差動伸長油路へ切換可能に制御することを特徴とすることを特徴としている。
【0013】
前記伸縮シリンダを差動伸長させる場合は通常伸長と比較するとその伸長出力が減少するため、伸縮ブームの各段ブーム間における反力が大きくなるブーム起伏角度が小さい範囲での伸長動作させるのは好ましくない。そのため、請求項2に記載された発明の構成により、差動伸長油路による伸長動作が可能となるブーム起伏角度が所定の角度以上の場合のみ前記伸縮シリンダを差動伸長させることができるのである。
【0014】
また、本願の請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された構成に加えて、さらに前記伸縮機構制御装置は伸縮シリンダ負荷検出器を有しており、前記コントローラは当該伸縮シリンダ負荷検出器からの検出信号により、前記伸縮シリンダが所定の負荷以下の場合のみ前記差動切換弁を前記差動伸長油路へ切換可能に制御することを特徴としている。
【0015】
前記伸縮シリンダを差動伸長させる場合は通常伸長と比較するとその伸長出力が減少するため、伸縮シリンダの負荷が大きい状態での伸長動作をさせるのは好ましくない。そのため、請求項3に記載された発明の構成により、差動伸長油路による伸長動作が可能となる伸縮シリンダが所定の負荷以下の場合のみ前記伸縮シリンダを差動伸長させることができるのである。
【0016】
【発明の実施の形態】
1本の伸縮シリンダによる伸縮機構の構成
図1は1本の伸縮シリンダによる伸縮機構が使用された6段伸縮ブームの伸縮シリンダに沿った断面図であって、全縮小状態の基端部を示している。伸縮ブーム10はベースブーム11内に、セカンドブーム12、サードブーム13、フォースブーム14、フィフスブーム15、およびトップブーム16がそれぞれ伸縮自在に嵌挿されて構成されている。1は伸縮シリンダであって、シリンダチューブ2、シリンダチューブロッド側端部3、ロッド4、ロッド端部5とから構成されている。伸縮シリンダ1は、前記伸縮ブーム10に内装されており、前記ベースブーム11の基端部11aに前記伸縮シリンダロッド端部5が軸支されている。以下、1本の伸縮シリンダによる伸縮機構の主要構成を説明する。
(シリンダ・ブーム連結手段)図2は図1のA−A断面図である。20はシリンダ・ブーム連結手段であって、前記伸縮シリンダ1のシリンダチューブロッド側端部3に配置された連結ピン駆動シリンダ21、連結ピン駆動レバー22、連結ピン23、および前記トップブーム基端部16aに配置された連結ボス16cの連結穴16bから構成されている。連結ピン23は前記伸縮シリンダロッド側端部3を構成するトラニオン部材25の連結ピン収納穴26に摺動可能に組み付けられている。連結ピン駆動レバー22は、前記トラニオン部材25から上方に一体構成されたサポート24に揺動可能に軸支されている。図2では連結穴16bは、トップブーム基端部16aに設けられたもののみ示しているが、図1で二点鎖線で示すようにセカンドブーム基端部12a、サードブーム基端部13a、フォースブーム基端部14a、フィフスブーム基端部15a、にも同様にそれぞれ連結穴12b、13b、14b、15b、が設けられている。
【0017】
前記連結ピン23と連結ピン駆動レバー22は左右に一対配置されている。連結ピン駆動レバー22の一端は連結ピン23に枢着され、その他端は前記連結ピン駆動シリンダ21のロッド側端部21aおよびシリンダ側端部21bにそれぞれ枢着されている。
(ブーム間連結手段)図2に示す50はトップブーム16のブーム間連結手段であって、トップブーム基端部16aの固定ピン収納部材16eに摺動可能に組み付けられたトップブーム固定ピン16dとフィフスブーム15の側面に取付られた固定ボス52に設けられた固定穴51とから構成されている。33はトップブーム固定ピン16dの内端に位置して設けられた連結部材である。連結部材33は一部が開口した箱型形状をしており、後述する固定ピン駆動手段の固定ピン駆動レバーと連結可能となっている。図2に示すようにトップブーム固定ピン16dは左右に一対配置されている。同様に、図示しないセカンドブーム基端部12a、サードブーム基端部13a、フォースブーム基端部14a、フィフスブーム基端部15aにも同様にそれぞれセカンドブーム固定ピン12d、サードブーム固定ピン13d、フォースブーム固定ピン14d、フィフスブーム固定ピン15dが左右に一対配置されている。
【0018】
また、上述したフィフスブーム側面に取付られた固定ボス52の他に、フィフスブーム側面にはその長手方向にトップブーム16の伸長長さに応じて複数個の固定ボスが配置されており、各固定ボスはそれぞれ固定穴を有している。固定ボスの配置に関しては、ベースブーム11、セカンドブーム12、サードブーム13、フォースブーム14においてもほぼ同様の構成である。
【0019】
図3は図2のB−B矢視図である。34は固定ピン16dのボールロック機構である。前記固定ピン16dにはノッチ36が切られており、ボールロック機構34のバネ付勢されたボール35が当該ノッチ36にはまり込むことにより、前記固定ピン16dはその先端部53が前記外側ブームの固定穴51に入ったブーム間固定位置で位置保持されるようになっている。
(固定ピン駆動手段)図3に示す40は固定ピン駆動手段であって、固定ピン駆動シリンダ41、固定ピン駆動レバー42、ローラー44とから構成されている。固定ピン駆動レバー42は前記伸縮シリンダ1のシリンダチューブロッド側端部3と一体に形成されたサポート45に揺動自在に軸支されており、かつ左右一対配置されている。固定ピン駆動レバー42の一端にはローラー44が回転自在に軸支されており、その他端は前記固定ピン駆動シリンダ41のロッド側端部41a及びシリンダ側端部41bにそれぞれ枢着されている。
【0020】
固定ピン駆動手段40はその全体が伸縮シリンダ1のシリンダチューブロッド側端部3と一体構造となっている。そのため、伸縮シリンダ1の伸縮動作により各段ブームの基端部に配置された前記トップブーム16のブーム間固定手段50等の固定ピン12d〜16dのうちの任意の固定ピンの連結部材33内に前記ローラ44を位置させることができ、当該固定ピンを駆動することが可能となっている。その際の伸縮シリンダ1の伸縮動作時には、前記固定ピンの内端部に設けられた連結部材33は一部が開口した箱型形状をしているため、前記固定ピン駆動レバー42は目的としない固定ピンの連結部材33の開口部分を通過していくことができるようになっている。
伸縮機構の制御装置の構成
図4に、本願発明の実施の形態に係る伸縮機構の制御装置のブロック図と油圧回路図を示す。
(伸縮機構操作手段)60は伸縮機構操作手段であって、伸縮操作レバー61、最終ブーム状態入力手段63、伸縮関連情報表示手段70とから構成されており、図示しないクレーン運転室内に配置されている。伸縮操作レバー61は伸縮操作のレバー操作量を電気信号に変換し、コントローラ65に出力する。最終ブーム状態入力手段63は、前記伸縮機構によって伸縮ブーム10を伸縮させる際の最終のブーム状態を入力するものであって、後述する伸縮関連情報表示手段70と一体となって操作されるものである。最終ブーム状態入力手段63の操作信号も、前記コントローラ65に出力される。伸縮関連情報表示手段70は伸縮機構の操作に関する情報を、前記コントローラ65からの信号によりグラフィック表示するものである。
【0021】
前記伸縮関連情報表示手段70はその表示内容を切換可能となっており、図5は前記伸縮関連情報表示手段70による表示画面を示すものである。ブーム条件を表す伸縮ブームの伸長長さ71と各段ブームの伸長割合72が複数表示されており、前記最終ブーム状態入力手段63に含まれる送り・戻りキーにより箱型カーソル73を上下に移動できるようになっている。箱型カーソル73を目的とするブーム条件の行へ移動させたのち、前記最終ブーム状態入力手段63に含まれるセットキーを操作すると、前記コントローラ65に目的とする伸縮ブームの最終ブーム状態を入力することができる。選択した最終ブーム状態は、丸印74により表示される。
(伸縮状態検出手段)75は伸縮状態検出手段であって、以下の検出手段から構成されている。すなわち、80はブーム基端位置検出手段であって、前記シリンダ・ブーム連結手段20がどのブームの基端位置に位置しているかを検出し、その信号を前記コントローラ65に出力するものである。90はシリンダ長さ検出手段であって、前記伸縮シリンダ1のシリンダ長さを検出し、その信号を前記コントローラ65に出力するものである。コントローラ65は、当該シリンダ長さ検出手段90の検出値に基き、記憶している前記ブーム間固定手段の固定穴の位置により決定される仕様伸縮長さを読み出し、当該仕様伸縮長さを前記ブーム伸縮行程における伸縮長さとするのである。110は連結ピン状態検出手段であって、前記シリンダ・ブーム連結手段20により駆動される連結ピンの状態を検出し、その信号を前記コントローラ65に出力するものである。120は固定ピン状態検出手段であって、前記固定ピン駆動手段40により駆動される固定ピンの状態を検出し、その信号を前記コントローラ65に出力するものである。
【0022】
図6は、前記ブーム基端位置検出手段80の具体例を示すものであって、図1のD−D矢視図である。近接スイッチ82〜86がサポート81、81を介して前記伸縮シリンダ1のシリンダチューブロッド側端部3に位置するトラニオン25に取付けられている。16fは前記トップブーム基端部16aに取付けられた検出片である。図6は近接スイッチ86がトップブーム基端部16aの検出片16fを検出した状態を表している。同様に他のブーム基端部にも上記近接スイッチ82〜85に対応する位置に検出片12f〜15fが設けられており、前記近接スイッチ82〜85が上記検出片をそれぞれ検出するようになっている。この構成により、どの近接スイッチが検出片を検出しているかにより、前記ブーム・シリンダ連結手段20の連結ピン23がどのブームの基端部の連結穴に位置しているかが判断できるようになっている。
【0023】
図1には前記シリンダ長さ検出手段90が前記伸縮ブーム10に取付けられた状態を示している。シリンダ長さ検出手段90はベースブーム基端部11aに取付けられており、長さ検出器95から引き出されたコード91はガイドローラ92、93を介して、前記伸縮シリンダ1のシリンダチューブロッド側端部3のサポート94に連結されている。伸縮シリンダ1の伸縮動作に伴ない、前記コード91は長さ検出器95から出し入れされるようになっており、コード91の引き出し量により、伸縮シリンダ1のシリンダ長さが検出されるようになっている。
【0024】
図7は図2のC−C矢視図であって、前記連結ピン状態検出手段110の詳細を示したものである。112と113は前記連結ピン駆動シリンダ21のシリンダ部に取付けられた近接スイッチであり、111は前記連結ピン駆動シリンダ21のロッド部に取付られたコ字状の検出片である。図2はシリンダ・ブーム連結手段の連結ピン23がトップブーム16の連結穴16bに入ったシリンダ・ブーム連結状態となっており、この時前記一方の近接スイッチ112が前記検出片111を検出するようになっている。前記連結ピン駆動シリンダ21が駆動され、連結ピン23の先端部が前記連結穴16bから抜けると、他方の近接スイッチ113が前記検出片111を検出するようになっている。
【0025】
図3の120は前記固定ピン状態検出手段の具体例を示したものである。122と123は前記固定ピン駆動シリンダ41のシリンダ部に取付けられた近接スイッチであり、121は前記連結ピン駆動シリンダ41のロッド部に取付られたコ字状の検出片である。図3はトップブーム基端部16aの固定ピン16dの先端部53がフィフスブーム15の固定穴51から出たブーム間固定解除状態となっており、この時前記一方の近接スイッチ123が前記検出片121を検出するようになっている。前記固定ピン駆動シリンダ41が駆動され、固定ピン16dの先端部53が前記固定穴51に入ると、他方の近接スイッチ122が前記検出片121を検出するようになっている。
(その他の検出器)図4に示された140は過負荷防止装置であって、車両搭載型クレーンに一般的に搭載されるものである。過負荷防止装置140には伸縮ブーム起伏角度検出器141、伸縮ブーム長さ検出器142および伸縮ブームモーメント検出器143からの検出信号が入力される。過負荷防止装置140は前記入力信号に基き伸縮シリンダ負荷を算出する。前記過負荷防止装置140からは前記コントローラ65に対し、伸縮ブーム起伏角度と伸縮シリンダ負荷の信号が出力される。
(駆動油圧供給手段)100は駆動油圧供給手段であって、前記コントローラ65からの信号を受取り、伸縮機構を構成する前記伸縮シリンダ1、シリンダ・ブーム連結手段20、固定ピン駆動手段40を駆動するものである。
【0026】
図4は前記駆動油圧供給手段100を構成する具体的な油圧回路の例を示したものである。当該駆動油圧供給手段100は、前記伸縮シリンダ1、カウンタバランス弁104と油圧源、タンクとの間に介装されたパイロット式切換弁103、当該パイロット式切換弁103を切換えるパイロット圧を送る電磁比例弁101、102およびフロコン弁109から構成されている。当該電磁比例弁101と102は前記コントローラ65からの信号により比例制御されるようになっている。
【0027】
130は前記伸縮シリンダ1の伸長側油室131とパイロット式切換弁103の第1の出口ポートとの間を連絡する伸長側油路である。133は前記伸縮シリンダ1の縮小側油室134とパイロット式切換弁103の第2の出口ポート135との間に介装されたハイドロ弁であって、当該ハイドロ弁133を切換えることにより前記伸縮シリンダ1の縮小側油室134と前記パイロット切換弁103の第2の出口ポート135とを連絡する通常伸縮油路136と、前記伸縮シリンダ1の縮小側油室134と前記パイロット式切換弁103の第1の出口ポート132とを連絡する差動伸長油路137とに切換可能となっている。138は前記ハイドロ弁133に油圧源から切換パイロット圧を給排するソレノイド弁であって、前記コントローラ65からの切換信号により切換動作するようになっている。なお、前記ハイドロ弁133とソレノイド弁138とによって、請求項1に記載された差動切換弁を構成している。
【0028】
前記連結ピン駆動シリンダ21と固定ピン駆動シリンダ41はそれぞれ、ソレノイド切換弁107、108を介して油圧源とタンクに接続されており、ソレノイド切換弁107、108は前記コントローラ65からの信号により切換操作されるようになっている。
伸縮機構の作動
図1に示す6段伸縮ブーム10の全縮小状態から、図8に示したトップブーム16とフィフスブーム15が伸長した状態に至る間の伸縮機構の伸長動作に対応させて、本願発明の制御装置の制御内容を説明する。
(ブーム条件設定)伸縮ブーム10は全縮小状態にり、起伏角度は最大起伏角であると仮定する。このとき、図1に示したようにシリンダ・ブーム連結手段20はトップブーム16の基端部16bと連結状態にあり、各段ブームのブーム間固定手段は全て固定状態にある。最終ブーム状態入力手段63に含まれる送り・戻りキーにより図5に示された伸縮関連情報表示手段70の表示画面上でブーム条件を選択する。今は、仮にトップブーム(6段目)が93%伸長し、フィフスブーム(5段目)が93%伸長するNo5のブーム条件を選んだと仮定する。最終ブーム状態入力手段63に含まれるセットキーを操作すると、選択したブーム条件がコントローラ65に出力され、コントローラ65に記憶される。次に伸縮操作レバー61を伸長側に操作し、その操作を継続する限り、以降コントローラ65は伸縮機構を自動制御し、伸縮機構のサイクルを繰り返し、上記設定したブーム条件となるまで伸縮動作を続ける。なお、伸縮操作レバー61を中立位置に戻すと、コントローラ65は伸縮機構の動作をその時点で停止させる。
(ブーム間固定解除行程)コントローラ65は固定ピン駆動手段40へ固定ピン16dの抜き信号を出力する。具体的には、図4のソレノイド切換弁108対し信号を送り、固定ピン駆動シリンダ41が駆動され、固定ピン16dが抜き側に動かされる。すなわち、前記固定ピン駆動手段40の固定ピン駆動シリンダ41を伸長動作すると、前記固定ピン駆動レバー42が揺動し、当該固定ピン駆動レバー42の一端に位置するローラ44が前記固定ピン16dの内端に位置する連結部材33の開口側37に作用する。すると、ボールロック機構34のボール35は前記固定ピン16dのノッチ36を外れて押し戻され、固定ピン16dの先端部53は前記フィフスブーム15の固定穴51を抜けることになる。これにより、トップブーム16のブーム間固定手段50によるトップブーム基端部16aとフィフスブーム15との固定が解除される。
(ブーム伸縮行程)図4に示した前記固定ピン状態検出手段120からの信号により、前記トップブーム基端部16aのブーム間固定手段50の固定ピン16dとフィフスブーム15の固定穴51との固定解除が確認されると、コントローラ65から駆動油圧供給手段100へ伸長信号が出力され、伸縮シリンダ1はトップブーム16の伸長動作を開始する。
【0029】
具体的には、このとき前記コントローラ65は過負荷防止装置140から伸縮ブーム起伏角度と伸縮シリンダ負荷の信号を受取っており、起伏角度は所定の角度以上であり、伸縮シリンダ負荷は所定の負荷以下であるので、前記ソレノイド切換弁138に切換信号を出力する。すると、前記ハイドロ弁133にパイロット圧が作用し、ハイドロ弁が切換られるため、前記伸縮シリンダ1の縮小側油室134と前記パイロット切換弁103の第1の出口ポート132が連絡される差動伸長油路137に切換られる。
【0030】
図4のコントローラ65から電磁比例弁101に信号が出力され、パイロット式切換弁103にパイロット圧が作用し切換えられ、伸縮シリンダ1が伸長することによりトップブーム16を伸長させる。
【0031】
このとき、伸縮シリンダ1は差動回路により伸長されるため、前記ハイドロ弁133通常伸縮油路136に切換わっている時にくらべればその伸長速度が速いものとなる。したがって、このブーム伸縮行程に要する時間が短いものとなる。
【0032】
さらに、コントローラ65はシリンダ長さ検出手段90の信号に基き、前記固定ピン駆動手段40が把持する前記固定ピン16dが前記フィフスブーム15の目的とする固定穴54に対し所定の距離まで接近したと判断した時に、前記駆動油圧供給手段100に対し伸縮シリンダ減速信号を出力する。具体的には、ブーム伸長行程中において、既述したシリンダ長さ検出手段90は伸縮シリンダ1の伸長長さ信号をコントローラ65に送り続けており、減速開始点に到達したことをコントローラ65が判断すると、コントローラ65は電磁比例弁101への出力信号値を減少させ始める。パイロット式切換弁103は徐々に中立側へ切換えられ、スプールの開口面積が減少する。前記フロコン弁109の作用も伴ない、伸縮シリンダ1の負荷に関わりなくパイロット式切換弁103を通過する流量が減少するので伸縮シリンダ1の伸長速度が低下していく。減速終了点に達したところでコントローラ65から電磁比例弁101への出力は所定の低い値で一定となる。すなわち、伸縮シリンダ1の伸長速度は低速度を維持する。そして、コントローラ65が前記固定ピン16dが目的とする固定穴の位置に達したと判断した時に次述するブーム間固定行程に移行する。
【0033】
上記ブーム伸縮行程の終了後、伸縮機構の制御装置のシリンダ長さ検出手段90は、前記目的ブーム伸縮行程における前記伸縮シリンダの伸縮長さを検出する。コントローラ65は当該シリンダ長さ検出手段の検出値に基き、記憶している前記ブーム間固定手段の固定穴の位置により決定される仕様伸縮長さを読み出し、当該仕様伸縮長さを前記目的ブーム伸縮行程における伸縮長さとする。そして、さらにコントローラ65は、伸縮動作前ブーム状態と前記ブーム伸縮行程における伸縮長さとから伸縮動作後ブーム状態を判断する。
(ブーム間固定行程)ブーム伸縮行程の前後におけるブーム・シリンダ連結手段20、ブーム間固定手段50および固定ピン駆動手段40の構成は同じであるので、先に使用した図2を用いて説明する。55はフィフスブーム15の先端部の側面に設けられた固定ボスであって、その内部には固定穴54が設けられている。図4のコントローラ65からソレノイド弁108に信号が出力され、固定ピン駆動手段40の固定ピン駆動シリンダ41が縮小すると、固定ピン16dの先端部53は前記固定穴54に入る。トップブーム基端部16aのブーム間固定手段50のボールロック機構34のボール35は固定ピン16dのノッチ36に入り込み、固定ピン16dはその先端部53を固定穴54に入れた状態で保持される。これにより、トップブーム基端部16aとフィフスブーム15が固定される。
(シリンダ・ブーム連結解除行程)さらに、前記伸縮操作レバー61の伸長側操作を継続していると、コントローラ65はシリンダ・ブーム連結手段20へ連結ピン21の抜き信号を出力する。具体的には、図4のソレノイド切換弁107に対し信号を送り、連結ピン駆動シリンダ21が駆動され連結ピン23が抜き側に動かされる。すなわち、図2に示した状態から、前記シリンダ・ブーム連結手段20の連結ピン駆動シリンダ21を伸長すると、前記連結ピン23はトップブーム基端部16aの連結穴16bから抜き出される。これにより、伸縮シリンダ1のシリンダチューブロッド側端部3とトップブーム基端部16aとの連結が解除される。
(伸縮シリンダ伸縮行程)前記連結ピン状態検出手段110からの信号により、前記シリンダ・ブーム連結手段20と、トップブーム基端部16aとの連結解除が確認されると、コントローラ65から駆動油圧供給手段100へ信号が送られ、伸縮シリンダ1はどのブームも駆動することなく単独で伸縮動作を開始する。この場合、伸縮シリンダ1は縮小動作をするので、前記差動切換弁を構成するハイドロ弁133は差動伸長油路137側に切換わることはなく、通常伸縮油路136側に連通されたままである。
【0034】
伸縮シリンダ伸縮行程の内容として具体的には、図4のコントローラ65から電磁比例弁102に信号が出力され、パイロット式切換弁103にパイロット圧が作用し切換えられ、伸縮シリンダ1が縮小する。
【0035】
さらに、コントローラ65はシリンダ長さ検出手段90の信号に基き、前記シリンダ・ブーム連結手段20の連結ピン23がフィフスブーム基端部15aの連結穴15bに対し所定の距離まで接近したと判断した時に、前記駆動油圧供給手段100に対し伸縮シリンダ減速信号を出力する。具体的には、伸縮シリンダ縮小行程中において、既述したシリンダ長さ検出手段90は伸縮シリンダ1の伸縮長さ信号をコントローラ65に送り続けており、減速開始点に到達したことをコントローラ65が判断すると、コントローラ65は電磁比例弁102への出力信号値を減少させ始める。パイロット式切換弁103は徐々に中立側へ切換えられ、スプールの開口面積が減少する。前記フロコン弁109の作用も伴ない、伸縮シリンダ1の負荷に関わりなくパイロット式切換弁103を通過する流量が減少するので伸縮シリンダ1の伸長速度が低下していく。減速終了点に達したところでコントローラ65から電磁比例弁102への出力は所定の低い値で一定となる。すなわち、伸縮シリンダ1の縮小速度は低速度を維持する。
【0036】
シリンダ・ブーム連結行程に移行する目標位置は、前記シリンダ長さ検出器90の信号とともに、前記ブーム基端位置検出手段80の信号により判断される。具体的には、図6に示した近接スイッチ85がフィフスブーム基端部15aに設置した検出片15fを検出することにより、目標位置に到達したことが判断され、次述するシリンダ・ブーム連結行程に移行する。
(シリンダ・ブーム連結行程)前記コントローラ65から前記シリンダ・ブーム連結手段20に連結信号が出力される。具体的には図4のソレノイド弁107へコントローラ65から信号が出力され、図2に示す前記連結ピン駆動シリンダ21が縮小動作すると、前記連結ピン駆動レバー22が揺動し前記連結ピン23が前記フィフスブーム基端部15aの連結穴15bへ入る。これにより、伸縮シリンダ1のシリンダチューブロッド側端部3とフィフスブーム基端部15aが一体となって連結されたことになる。
【0037】
以降は、既述した各行程を繰り返すことにより、フィフスブーム15を伸長し、図8に示す目的とする最終ブーム状態となると、伸縮機構の制御装置はその動作を終了するのであるが、従来のように差動回路を用いない伸縮シリンダの場合に比べると伸縮動作を開始して最終ブーム状態になるまでのトータルの時間が短いものとなっている。
【0038】
なお、本願の発明の伸縮機構によれば、ブームを駆動するかどうかに関わらず、伸縮シリンダの伸長時のスピードを上昇させその時間短縮を図るものであるため、伸縮ブーム10全体を伸長させる場合のみならず、伸縮ブーム10全体を縮小させる縮小操作時のトータル時間短縮となることも勿論である。
【0039】
【発明の効果】
本願の請求項1に記載された発明によると、前記伸縮シリンダを前記差動伸長油路により伸長する際にはその伸長に要する時間が前記通常伸長油路による場合に比べるとその伸長の要する油量が少なくて済むため短時間となるのである。したがって、伸縮ブーム全体を目的とする伸縮状態にするまでの要するトータル時間を短縮することができるのである。
【0040】
本願の請求項2に記載された発明によると、前記伸縮機構制御装置が前記伸縮ブームが所定の起伏角度以上の場合のみ前記差動切換弁を前記差動伸長油路へ切換えるので、伸縮機構制御装置の制御により自動的に差動伸長油路による伸長動作が可能となる所定の角度以上の場合のみ前記伸縮シリンダを差動伸長させることができるのである。
【0041】
本願の請求項3に記載された発明によると、前記伸縮機構制御装置が前記伸縮シリンダの負荷が所定の負荷以下の場合のみ前記差動切換弁を前記差動伸長油路へ切換えるので、伸縮機構制御装置の制御により自動的に差動伸長油路による伸長動作が可能となる所定の負荷以下の場合のみ前記伸縮シリンダを差動伸長させることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】1本の伸縮シリンダによる伸縮機構が使用された6段伸縮ブームの伸縮シリンダに沿った断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B矢視図である。
【図4】本願の発明の実施の形態に係る伸縮機構の制御装置のブロック図と油圧回路図である。
【図5】伸縮関連情報表示手段の表示画面である。
【図6】ブーム基端位置検出手段の具体例である。
【図7】図2のC−C矢視図である。
【図8】伸縮ブーム最大起伏角度でトップブームとフィフスブームを伸長した状態を示す図である。
【符号の説明】
1は伸縮シリンダ、2はシリンダチューブ、3はシリンダチューブロッド側端部、4はロッド、5はロッド端部、10は伸縮ブーム、11はベースブーム、12はセカンドブーム、13はサードブーム、14はフォースブーム、15はフィフスブーム、16はトップブーム、16aはトップブーム基端部、16cは連結ボス、16bは連結穴、16eは固定ピン収納部材、16dは固定ピン、16fは検出片、20はシリンダ・ブーム連結手段、21は連結ピン駆動シリンダ、22は連結ピン駆動レバー、23は連結ピン、25はトラニオン部材、33は連結部材、34はボールロック機構、35はボール、36はノッチ、40は固定ピン駆動手段、41は固定ピン駆動シリンダ、42は固定ピン駆動レバー、50はトップブームのブーム間固定手段、51と54はフィフスブームの固定穴、52と55はフィフスブームの固定ボス、53は固定ピンの先端部、60は伸縮機構操作手段、61は伸縮操作レバー、63は最終ブーム状態入力手段、65はコントローラ、70は伸縮関連情報表示手段、75は伸縮状態検出手段、80はブーム基端位置検出手段、82〜86は近接スイッチ、90はシリンダ長さ検出手段、91はコード、95は長さ検出器、100は駆動油圧供給手段、101と102は電磁比例弁、103はパイロット式切換弁、104はカウンタバランス弁、109はフロコン弁、107と108はソレノイド切換弁、110は連結ピン状態検出手段、111は検出片、112と113は近接スイッチ、120は固定ピン状態検出手段、121は検出片、130は伸長側油路、131は伸長側油室、132はパイロット式切換弁の第1の出口ポート、133はハイドロ弁、134は縮小側油室、135はパイロット式切換弁の第2の出口ポート、136は通常伸縮油路、137は差動伸長油路、138はソレノイド弁、140は過負荷防止装置、141は伸縮ブーム起伏角度検出器、142は伸縮ブーム長さ検出器、143は伸縮ブームモーメント検出器
Claims (3)
- ベースブーム内に中間ブームおよびトップブームがそれぞれ伸縮自在に嵌挿されてなる伸縮ブームと、
当該伸縮ブームに内装されて前記ベースブーム基端部にそのロッド端部が軸支されている一本の伸縮シリンダと、
当該伸縮シリンダのシリンダチューブのロッド側端部に配置され、目的とするブームの基端部の連結穴に向けて内蔵する連結ピンを進退することにより選択的にブーム基端部と連結・解除可能なシリンダ・ブーム連結手段と、
隣接するブームの内側ブーム基端部に配置され、外側ブームの適所に設けられた固定穴に向けて内蔵する固定ピンを進退することにより当該隣接するブーム同士を固定・解除可能なブーム間固定手段と、
前記伸縮シリンダのシリンダチューブロッド側端部に配置され、目的とするブーム基端部の前記固定ピンの内端に作用して進退駆動する固定ピン駆動手段と、から構成された伸縮機構であって、
前記伸縮機構に含まれる油圧アクチュエータに駆動油圧を供給する駆動油圧供給手段と、
前記伸縮ブームの最終ブーム状態を入力し、その最終ブーム状態となるまで伸縮機構を操作する伸縮機構操作手段と、
前記伸縮シリンダのシリンダ長さと、前記シリンダ・ブーム連結手段の連結ピンの連結状態と、前記ブーム間固定手段の固定ピンの固定状態と、前記シリンダ・ブーム連結手段が位置するブームのブーム基端位置と、を検出する伸縮状態検出手段と、
前記伸縮機構操作手段からの操作信号と前記伸縮状態検出手段からの検出信号とが入力され、前記駆動油圧供給手段に駆動信号を出力するコントローラと、から構成された伸縮機構制御装置の制御により前記中間ブームおよびトップブームを1段ずつ伸縮駆動する伸縮機構において、
前記駆動油圧供給手段は、前記伸縮シリンダの伸長側油室と伸縮操作切換弁の第1の出口ポートとの間を伸長側油路により連絡し、前記伸縮シリンダの縮小側油室と前記伸縮操作切換弁の第2の出口ポートとの間に差動切換弁を介装し、当該差動切換弁を切換えることにより前記伸縮シリンダの縮小側油室と前記伸縮操作切換弁の第2の出口ポートと連絡する通常伸縮油路と、前記伸縮シリンダの縮小側油室と前記伸縮操作切換弁の第1の出口ポートとを連絡する差動伸長油路とに切換可能としたことを特徴とする伸縮機構。 - 請求項1の伸縮機構において、
前記伸縮機構制御装置は伸縮ブーム起伏角度検出器を有しており、前記コントローラは当該伸縮ブーム起伏角度検出器からの検出信号により、前記伸縮ブームが所定の起伏角度以上の場合のみ前記差動切換弁を前記差動伸長油路へ切換可能に制御することを特徴とする伸縮機構。 - 請求項1の伸縮機構において、
前記伸縮機構制御装置は伸縮シリンダ負荷検出器を有しており、前記コントローラは当該伸縮シリンダ負荷検出器からの検出信号により、前記伸縮シリンダが所定の負荷以下の場合のみ前記差動切換弁を前記差動伸長油路へ切換可能に制御することを特徴とする伸縮機構。
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