JP4709369B2 - エステル及びその合成法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、6−アルコキシカルボニルメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン誘導体、その製造方法、その製造プロセス上重要な中間体、及び前記誘導体を使用した3−オキソペンタンジカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3−オキソペンタンジカルボン酸エステルは、医薬、農薬等のファインケミカル中間体や、ポリエステル原料として有用な化合物である。
【0003】
この化合物を合成する手法として、例えばオーガニック・シンセシス・コレクティブボリューム1巻10頁及び同巻237頁には、クエン酸を発煙硫酸で処理してアセトンジカルボン酸を生成させ、このジカルボン酸をエステル化することにより3−オキソペンタンジカルボン酸を得る方法が開示されている。しかし、この方法は、中間体であるアセトンジカルボン酸が不安定で、熱、酸、アルカリ等により容易に分解する。従って、特に工業的に実施した場合、目的化合物である3−オキソペンタンジカルボン酸エステルの収率及び選択率が低い。
【0004】
特公平3−24461号公報及び特開昭59−78146号公報には、ジケテン、亜硝酸アルキルエステル及び一酸化炭素から、パラジウム触媒を用いて3−オキソペンタンジカルボン酸を合成する方法が報告されている。しかし、亜硝酸アルキルエステルを得るためには、通常、一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素等の取り扱いに注意を要する窒素酸化物とアルコール又は水とを反応させる必要があり、作業性、反応操作性を低下させる。
【0005】
従って、これらの方法は、工業的な実施という観点からは有利な方法とはいえない。さらに、これらの方法は、本質的に、非対称型のジエステル(すなわち2つのエステル基のアルコキシ部分が異なる構造のジエステル)を合成することができず、仮に合成したとしても対称型ジエステルとの混合物としてしか生成できない。
【0006】
また、スイス特許659060号には、原料としてアセト酢酸エステル及びクロロギ酸エステルを用いる方法が開示されている。しかし、この方法は、工業的には必ずしも取り扱いが容易ではない液体アンモニア及びナトリウムアミドを使用しているため、工業的製造という観点からは、やはり有利な方法とはいえない。
【0007】
一方、ケミストリーレターズ1990年6巻901−904頁や、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー62巻21号7114頁(1997)等には、6−置換−4H−1,3−ジオキシン−4−オンのアルコール又は水による開環反応が記載されている。
【0008】
また、干鯛 眞信、市川 勝著、“化学セミナー11 均一触媒と不均一触媒入門−これからの触媒化学−”丸善株式会社(1983)49頁などには、パラジウム触媒を用いて、アリールハライドのカルボニル化反応により、エステルを合成することが記載されている。
【0009】
しかし、6−アルコキシカルボニルメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンについての記載はなく、これらの反応系を6−アルコキシカルボニルメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンに適用した例はない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、3−オキソペンタンジカルボン酸エステルを工業的に有利に(例えば、安価かつ安全に)製造できる方法及びその製造方法に用いる中間体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、非対称型の3−オキソペンタンジカルボン酸エステルを効率よく製造できる方法及びその製造方法に用いる中間体を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、3−オキソペンタンジカルボン酸エステルを効率的に製造できる方法及びその製造方法に用いる中間体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討の結果、特定のハロゲン化合物を一酸化炭素及びアルコール又は水と反応させることにより、特定の環状エステルを効率的に合成でき、さらに、この環状エステルから、3−オキソペンタンジカルボン酸エステルを工業的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の環状エステルは、下記式(1)で表される。
【0015】
【化6】
【0016】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、鎖状脂肪族炭化水素基、又は環状脂肪族炭化水素基を表し、前記脂肪族炭化水素基はさらに置換基で置換されていてもよい)
式(1)において、R1は直鎖状又は分岐鎖状のC1-6アルキル基、C3-10シクロアルキル基、又はC6-10アリール−C1-4アルキル基であってもよく、R2及びR3は同一又は異なって水素原子又はC1-4アルキル基であってもよい。
【0017】
また、本発明には、下記式(2)で表されるハロゲン化合物と、一酸化炭素及び下記式(3)で表されるアルコール又は水とを反応させる工程を含む前記環状エステルの製造方法も含まれる。
【0018】
【化7】
【0019】
(式中、Xはハロゲン原子であり、R1、R2及びR3は前記式(1)と同様である)
この製造方法は、白金族金属(パラジウムなど)で構成された触媒(白金族金属単体又は白金族金属を含む化合物)の存在下で反応させてよい。
【0020】
また、本発明には、前記環状エステルと、下記式(4)で表されるアルコール又は水とを反応させる工程を含む下記式(5)で表されるジカルボン酸エステルの製造方法も含まれる。
【0021】
【化8】
【0022】
(式中、R4は水素原子、鎖状脂肪族炭化水素基、又は環状脂肪族炭化水素基を表し、前記脂肪族炭化水素基はさらに置換基で置換されていてもよい。R1乃至R3は前記に同じ)
さらに、本発明には、下記式(2)で表されるハロゲン化合物(特にXが臭素原子又はヨウ素原子である化合物)も含まれる。この化合物は前記環状エステルを製造するための中間体として有用である。
【0023】
【化9】
【0024】
(式中、Xはハロゲン原子であり、R2及びR3は、前記式(1)と同様である)
【0025】
【発明の実施の形態】
[環状エステル]
前記式(1)で表される環状エステル(6−アルコキシカルボニルメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン誘導体)において、R1、R2及びR3で表される鎖状脂肪族炭化水素基には、直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が含まれる。環状脂肪族炭化水素基(脂環族炭化水素基)には、飽和又は不飽和の環状脂肪族炭化水素基、例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基等が含まれる。
【0026】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基等の直鎖又は分岐鎖状C1-10アルキル基(好ましくはC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基)などが例示できる。
【0027】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基等の直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルケニル基(特にC2-4アルケニル基)などが例示できる。
【0028】
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基等の直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキニル基(特にC2-4アルキニル基)などが例示できる。
【0029】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のC3-10シクロアルキル基、好ましくはC4-8シクロアルキル基(特にC4-6シクロアルキル基)などが例示できる。
【0030】
シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基等のC3-10シクロアルケニル基、好ましくはC4-8シクロアルケニル基(特にC4-6シクロアルケニル基)などが例示できる。
【0031】
シクロアルキニル基としては、例えば、シクロプロピニル基、シクロブチニル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、シクロオクチニル基等のC3-10シクロアルキニル基、好ましくはC4-8シクロアルキニル基(特にC4-6シクロアルキニル基)などが例示できる。
【0032】
前記脂肪族炭化水素基は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基などのC1-4アルキル基;アシル基[アセチル基などのC1-4アルキル−カルボニル基;ベンゾイル基などのC6-10アリール−カルボニル基など];アシルオキシ基[アセチルオキシ基などのC1-4アルキル−カルボニルオキシ基;ベンゾイルオキシ基などのC6-10アリール−カルボニルオキシ基など];メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基(C1-4アルコキシ基など);メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(C1-4アルコキシ−カルボニル基など);フェノキシ基などのアリールオキシ基などが例示できる。
【0033】
好ましい態様において、鎖状又は環状炭化水素基には、芳香族基、例えば、同素環基(アリール基)や複素環基(芳香族複素環基)が置換していてもよい。芳香族基のうちアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等のC6-10アリール基が例示でき、芳香族複素環基としては、窒素原子、酸素原子およびイオウ原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する5〜8員環基、例えば、ピリジニル基、ピペリジル基、フルフリル基等が例示できる。芳香族基で置換された脂肪族炭化水素基には、アリールアルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール−C1-4アルキル基)、アリールアルケニル基(例えば、C6-10アリール−C2-4アルケニル基)、アリールアルキニル基(例えば、C6-10アリール−C2-4アルキニル基)等が例示できる。これらの芳香族基は、適当な置換基で置換されてもよい。適当な置換基としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、アルキル基(C1-4アルキル基など)、ケトン基(メチルカルボニル基、エチルカルボニル基などのC1-6アルキルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のC6-10アリール−カルボニル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1-6アルコキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシル基等)、エステル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のC1-6アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などのアリールオキシカルボニル基)等を例示できる。
【0034】
また、R2とR3とは互いに結合して環(例えば、C3-6シクロアルカン環、5〜10員複素環等)を形成してもよい。
【0035】
好ましいR1は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のC1-6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C3-10シクロアルキル基、特にシクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基)、又はアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール−C1-4アルキル基、特にフェニル−C1-4アルキル基)であり、好ましいR2及びR3は、水素原子、アルキル基(例えば、C1-4アルキル基、特にメチル基などのC1-2アルキル基)である。
【0036】
このような環状エステル(1)としては、例えば、6−C1-4アルコキシ−カルボニルメチル−2,2−ジC1-4アルキル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン(例えば、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、6−エトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、6−イソプロポキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン、6−t−ブトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンなど);6−C3-10シクロアルキルオキシ−カルボニルメチル−2,2−ジC1-4アルキル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン(例えば、6−シクロヘキシルオキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンなど);6−C6-10アリール−C1-4アルキルオキシ−カルボニルメチル−2,2−ジC1-4アルキル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン(例えば、6−ベンジルオキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンなど)などが挙げられる。
【0037】
[環状エステルの製造方法]
前記環状エステル(1)は、下記式(2)で表されるハロゲン化合物と、一酸化炭素及び下記式(3)で表されるアルコール又は水(特にアルコール)とを反応させることにより生成できる。
【0038】
【化10】
【0039】
前記ハロゲン化合物(2)において、Xとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が例示できる。これらのハロゲン原子のうち、臭素原子又はヨウ素原子(特にヨウ素原子)が好ましい。前記ハロゲン化合物(2)は前記環状エステル(1)を製造するための中間体として有用である。
【0040】
アルコールの種類によっては、前記式(2)で表される化合物のうち、Xが臭素原子又はヨウ素原子(特にヨウ素原子)である化合物を用いる方が、他のハロゲン化合物(例えば、6−クロロメチル−4H−1,3−ジオキシン−4オン)を用いるよりも、反応が速やかに進行する場合がある。
【0041】
Xがヨウ素原子や臭素原子である化合物(6−ヨードメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンや6−ブロモメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン)は、予め合成して用いてもよいし、反応系内でXがヨウ素原子や臭素原子である化合物(6−ヨードメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンや6−ブロモメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン)を形成する原料を使用してもよい。Xがフッ素原子や塩素原子などである場合、反応系中にヨウ素化剤や臭素化剤を添加してXをヨウ素原子又は臭素原子に変換してもよい。ヨウ素化剤には、ヨウ素、アルカリ金属ヨウ化物(ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムなど)などが含まれ、臭素化剤には、臭素、アルカリ金属臭化物(臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウムなど)などが含まれる。例えば、6−クロロメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等のヨウ化物塩やヨウ素等を系に添加し、系中で6−ヨードメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンなどを生成させてもよい。
【0042】
ヨウ素化剤又は臭素化剤の使用量は、Xが塩素又はフッ素であるハロゲン化合物1モルに対して当モル用いてもよいし、触媒量用いてもよい。ヨウ素化剤や臭素化剤の使用量は、ハロゲン化合物1モルに対して、通常、0.001〜0.8モル、好ましくは0.005〜0.3モル、さらに好ましくは0.01〜0.2モル程度である。
【0043】
出発原料として用いるハロゲン化合物(2)とアルコール又は水との使用量の割合は、目的とする反応の進行度、経済上の理由、採用する反応形式を考慮して決定される。通常、アルコール又は水の使用量は、ハロゲン化合物(2)1モルに対して0.1〜100000モル、好ましくは0.5〜1000モル、さらに好ましくは0.8〜100モル程度の範囲である。アルコール又は水を溶媒として用いて、反応してもよい。
【0044】
一酸化炭素の使用量は、ハロゲン化合物(2)1モルに対して、1モル以上(例えば、1〜10000モル程度、好ましくは1〜1000モル程度、さらに好ましくは1〜100モル程度)であり、反応は、通常、一酸化炭素を含有する雰囲気中で行われる。
【0045】
一酸化炭素との反応は、カルボニル化触媒、例えば、白金族金属で構成された触媒の存在下で反応させることが好ましい。
【0046】
触媒として用いる白金族金属としては、ジェイ ディーリー著、浜口 博、菅野 等訳、“無機化学”東京化学同人(1982)360頁などに記載されている、白金族金属、例えば、周期表8族金属(例えば、鉄、ルテニウム、オスミウム等)、9族金属(例えば、コバルト、ロジウム、イリジウム等)、10族金属(例えば、ニッケル、パラジウム、白金等)等を例示できる。触媒において、これらの金属は単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの金属のうち、10族金属(特にパラジウム)が好ましい。
【0047】
触媒は、白金族金属で構成されていればよく、金属単体で使用してもよく、金属元素を含む化合物として使用してもよい。白金族金属を含む化合物としては、金属塩、例えば、無機酸塩[例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸との塩(炭酸塩、炭酸水素塩等)、リン酸との塩(リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩など)、ホウ酸の塩等]、有機酸塩(例えば、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩等のカルボン酸の塩等)、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物等)、これらの金属成分又はその塩に配位子を配位させた錯体(例えば、テトラキストリフェニルホスフェインパラジウム(0))等が例示できる。配位子としては、ホスフィン(例えば、トリブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン)などのリン化合物、ニトリル、OH(ヒドロキソ)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ基など)、アシル基(アセチル、プロピオニル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、アセチルアセトナト、シクロペンタジエニル基、ハロゲン原子、CO、H2O(アコ)、窒素含有化合物(例えば、NH3、NO2、NO3、アルキレンジアミン、ピリジン等)等が例示できる。
【0048】
触媒(白金族金属成分)の金属の価数は特に制限されず、通常、0〜4価、好ましくは0〜2価程度である。前記触媒は均一系であってもよく不均一系であってもよい。また、触媒成分は適当な担体(例えば、活性炭、シリカ(シリカゲル)、アルミナ、ゼオライト、ベントナイト等の多孔質担体)に担持させた形態で固体触媒として使用することもできる。これらの触媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0049】
パラジウム触媒を例にとって説明すると、触媒としては、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)塩化物、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物、テトラクロロパラジウム(II)酸カリウム、テトラニトロパラジウム(II)酸カリウム、ジクロロビス(トリアルキルホスフィン)パラジウム(II)、ジメチルビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ビスシクロペンタジエニルパラジウム(II)、トリカルボニルシクロペンタジエニルパラジウム(I)、ジクロロ−μ−ビス[ビス(ジメチルホスフィノ)メタン]二パラジウム(I)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリエチルホスフィト)パラジウム(0)、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)などが挙げられる。
【0050】
触媒の使用量は、特に制限はされないが、ハロゲン化合物(2)1モルに対して0.001〜1モル、好ましくは0.003〜0.5モル、さらに好ましくは0.005〜0.5モル(例えば、0.01〜0.2モル)程度である。
【0051】
反応の進行につれ、反応系にはハロゲン酸が発生する。このハロゲン酸を中和するために、反応系に塩基を添加してもよい。塩基としては、無機塩基、例えば、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属の炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、アルカリ土類金属の炭酸水素塩(例えば、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム等)等;有機塩基又はアミン類、例えば、アルキルアミン類(例えば、トリエチルアミンなどのトリC1-4アルキルアミンなどの三級アミン類)、複素環式アミン類(例えば、ピリジンなど)、C1-4アルキルアニリン(例えば、N,N−ジメチルアニリンなどの三級アミン類など);アルカリ金属のカルボン酸塩(例えば、酢酸ナトリム、酢酸カリウム等)、アルカリ土類金属のカルボン酸塩(例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等)等を例示できる。これらの塩基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、有機塩基やアミン類(例えば、第三級アミン類)を用いると、選択率が向上するようである。
【0052】
反応には、溶媒を用いてもよい。溶媒を用いる場合には、反応の進行を阻害せず、かつ反応成分を溶解するものであれば特に制限はない。溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、スルホランなどのスルホン類、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ブロモホルム、クロロベンゼン、ブロモベンゼン等の含ハロゲン化合物を例示できる。なお、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、ターシャリーブタノール等)を溶媒とする場合には、原料であるアルコール自身を溶媒とすることが好ましい。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。用いる溶媒の量は特に限定されず、反応成分(ハロゲン化合物など)が充分に溶解できればよい。
【0053】
この反応は、通常、常圧〜500気圧(約50MPa)、好ましくは常圧〜100気圧(約10MPa)、さらに好ましくは常圧〜50気圧(例えば、常圧〜10気圧(約1MPa))程度で行われる。なお、装置又は操作上の理由などにより、減圧下で反応を行ってもよい。反応を加圧下(例えば、2〜50気圧(約0.2〜5MPa)、好ましくは5〜30気圧(約0.5〜3MPa)程度)で行うと、選択率が向上するようである。
【0054】
また、一酸化炭素は、純粋な一酸化炭素ガスであってもよく、不活性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウムなど)との混合ガスとして用いてもよい。すなわち、気相に一酸化炭素以外に、不活性なガス、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が存在してもよい。また、ガス成分の液相への溶解方法も、特に限定されない。反応では、一酸化炭素と反応成分とを接触させればよく、充分に溶解できるならば、気液接触によって溶解させてもよいし、例えば、吹き込み管によって、液相へ一酸化炭素を含む気体を吹き込んでもよい。
【0055】
また、反応温度についても、反応条件下、反応系の融点以上沸点以下であれば、特に制限はない。反応温度は−30℃〜200℃、好ましくは−10℃〜100℃程度である。本反応はバッチ式、セミバッチ式及び連続式のいずれの方法でも行うことができる。
【0056】
なお、前記環状エステルにおいて、R1が水素原子である化合物(カルボン酸)は、アルコールを用いて反応させた後、通常のエステル加水分解を行い、アルコール由来のアルキル基を加水分解で除去することにより製造してもよい。
【0057】
反応終了後、生成物は、慣用分離精製手段、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、カラムクロマトグラフィー等の分離精製手段やこれらを組み合わせた手段により容易に分離精製できる。
【0058】
[ジカルボン酸エステルの製造方法]
下記式(5)で表されるジカルボン酸エステル(3−オキソペンタンジカルボン酸エステル)は、前記環状エステル(1)と、下記式(4)で表されるアルコール又は水(特にアルコール)とを反応させることにより生成できる。
【0059】
【化11】
【0060】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、同一又は異なって、水素原子、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は飽和又は不飽和の環状脂肪族炭化水素基を表し、前記脂肪族炭化水素基はさらに芳香族基で置換されていてもよい)
R1、R2、R3およびR4で表される鎖状脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、および又はこれらの脂肪族炭化水素基が有していてもよい芳香族基としては、前記R1〜R3の項で例示した基などが例示できる。好ましいR4には、水素原子、C1-10脂肪族炭化水素基(メチル基、エチル基などのC1-6アルキル基、特にC1-4アルキル基など)、C4-8脂環族炭化水素基などが含まれる。
【0061】
この方法において、環状エステルは、前記本発明の環状エステルの製造方法に限定されず、他の方法により調製してもよい。
【0062】
出発原料として用いる環状エステルとアルコール又は水との割合は、目的とする反応の進行度、経済上の理由、採用する反応形式を考慮して決定される。通常、アルコール又は水の使用量は、環状エステル1モルに対して0.1〜100000モル、好ましくは0.5〜1000モル、さらに好ましくは0.8〜100モル程度の範囲である。なお、反応においては、アルコール又は水を溶媒として用いてもよい。
【0063】
本反応は、反応系を加熱するのみでも進行する。しかし、反応の進行を促進する場合には、触媒を用いてもよい。触媒としては、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、有機酸(スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのC1-6アルカンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の芳香族スルホン酸など;有機カルボン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸等のC1-10飽和又は不飽和モノ又はポリカルボン酸;ハロゲン化有機酸、例えば、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸;トリフルオロメタンスルホン酸などのハロゲン化アルカンスルホン酸など)、固体酸[硫酸塩(硫酸カルシウムなど)、金属酸化物(SiO2、Al2O3など)、ゼオライト(酸性OHを有するY型、X型、A型ゼオライトなど)、ヘテロポリ酸、イオン交換樹脂(H型などの陽イオン交換樹脂など)]等を例示できる。これらの触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0064】
触媒の使用量は、特に制限されず、環状エステル1モルに対して0.001〜1モル、好ましくは0.005〜0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.2モル程度である。
【0065】
反応には、溶媒を用いてもよい。溶媒を用いる場合には、反応の進行を阻害せず、かつ反応成分を溶解するものであれば特に制限はない。溶媒としては、前記環状エステルの製造に用いた溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0066】
この反応は、通常、常圧で行われる。なお、装置又は操作上の理由などにより、減圧又は加圧下で反応を行ってもよい。
【0067】
反応温度についても、反応条件下、反応系の融点以上沸点以下であればよい。反応温度は−30℃〜300℃、好ましくは−10℃〜200℃程度である。本反応はバッチ式、セミバッチ式及び連続式のいずれの方法でもよい。
【0068】
なお、前記式(5)で表されるジカルボン酸エステルにおいて、R1及び/又はR4が水素原子である誘導体を製造する場合は、アルコールを用いて反応させた後、通常のエステル加水分解を行うことにより、アルコール由来のアルキル基を加水分解で除去することもできる。
【0069】
生成物の単離方法も前記環状エステルの製造と同様の方法を用いることができる。
【0070】
前記環状エステルの製造と、前記ジカルボン酸エステルの製造とを連続して行う場合は、前者の反応で得られた環状エステルを単離して、後者の反応に供することも可能であるし、分離精製することなく、反応系中で生成した環状エステルをそのまま後者の反応に供することもできる。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、入手及び取り扱いが比較的容易な化合物のみを用い、温和な反応条件で効率よく、3−オキソペンタンジカルボン酸エステルを合成することができ、又はその原料となる新規化合物である6−アルコキシカルボニルメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンを合成することができる。また、対称型のみならず、非対称型構造の3−オキソペンタンジカルボン酸エステルを容易に合成することができる。
【0072】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、以下の例においてメチル基はMe、エチル基はEt、イソプロピル基はi−Pr、ターシャリーブチル基はt−Bu、ベンジル基はPhCH2、シクロヘキシル基はc−Hex、トリメチルシランはTMS、テトラヒドロフランはTHFと略する場合がある。
【0073】
IRスペクトルは、PERKIN−ELMER 1600 Series FT−IRを用いて測定した。
【0074】
NMRスペクトルは、BRUKER AM500を用い、500MHz(1H−NMR)又は125.7MHz(13C−NMR)にて、TMSを内部標準として測定した。
【0075】
MSスペクトルは、サーモクエスト社製LCQを用い、シリンジ法、イオン化モードAPCIで、ポジティブイオンを検出することにより測定した。
【0076】
実施例1
6−ヨードメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成
ヨウ化ナトリウム2.16gをアセトン16mLに溶解させ、アセトン4mLで希釈した2,2−ジメチル−6−クロロメチル−1,3−ジオキシン−4−オン2.00gを加えて室温下、2時間攪拌した。反応液から不溶物を濾過して除去し、濾液を濃縮した。残査をクロロホルム20mLに溶解させ、再び不溶物を濾過して除去した後、濾液を濃縮した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1(容積比))で精製して、6−ヨードメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン2.65gを黄色液体状として得た。この化合物のNMRスペクトルを以下に示す。
【0077】
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.71(s,6H,Me),3.83(s,2H,CH2I),5.52(s,1H,=CH)。
【0078】
実施例2
6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成(6−ヨードメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンからの合成)
容量50mLの2つ口フラスコに塩化パラジウム0.100g(0.564mmol)、炭酸カリウム0.782g(5.66mmol)、ヨウ化カリウム0.940g(5.66mmol)を入れ、風船(大気圧)により一酸化炭素を導入して、系を一酸化炭素雰囲気とした。この系にメタノール10mL、6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン1.0g(5.66mmol)を加え、室温で18時間攪拌した。
【0079】
反応終了後、反応混合物を濾過し、得た濾液を濃縮した。この残査に酢酸エチル25mLと水25mLとを加えて混合し、二層に分液した。上層(有機層)を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過、濃縮し、黒褐色残査0.408gを得た。
【0080】
この残査を1H−NMRにより確認したところ、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンがモル比1.0:1.3の割合で検出できた。出発原料である6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できず、他の生成物もほぼ存在しなかった。
【0081】
この混合物をシリカゲル薄層クロマトグラフィー(移動層はヘキサン/酢酸エチル=2/1(容積比))により精製し、目的とする6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン68.1mgを得た。Rf値は0.25だった。この化合物のIRスペクトル、NMRスペクトル及びMSスペクトルを以下に示す。
【0082】
IR(neat):3000,2956,1732,1643 cm-1
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.71(s,6H,CMe2),3.29(s,2H,CH2CO),3.75(s,3H,COOMe),5.40(s,1H,CH=C)
13C−NMR(CDCl3)ppm:24.9(CMe2),39.2(CH2CO),52.5(OMe),96.5(HC=),107.3(Me2 C),160.7(O=CCH2 C=),163.7(COOMe),167.6(=C−CO−O−CMe2−)
CI−MS(m/z):201(M++1,100%),143(M++1−58)。
【0083】
実施例3
6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成(6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンからの合成)
ヨウ化カリウムを用いない以外は、実施例2と同様に反応を行った。反応混合物を上記と同様に後処理し、残査0.500gを得た。この残渣を1H−NMRにより確認したところ、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンがモル比1.0:3.0の割合で検出できた。
【0084】
実施例4
6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1.3−ジオキシン−4−オンの合成(触媒パラジウム種の変更)
触媒として塩化パラジウムの代わりに酢酸パラジウム0.130g(0.579mmol)を用い、ヨウ化カリウムを用いない以外は、実施例2と同様に反応を行った。反応混合物を上記と同様に後処理し、残査0.428gを得た。この残渣を1H−NMRにより確認したところ、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキサン−4−オンがモル比1.0:9.0の割合で検出できた。
【0085】
実施例5
6−イソプロポキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成
アルコールとしてメタノールの代わりにイソプロピルアルコール10mLを用いる以外は、実施例2と同様に反応を行った。反応混合物を上記と同様に処理し、分液操作により得た有機層を乾燥、濃縮することにより、ほぼ純粋な6−イソプロポキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン0.999gを得た。6−イソプロポキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの収率は、出発原料の6−クロロメチル−2,2−ジメチル4H−1,3−ジオキシン−4−オンを基準にして74モル%であった。この化合物のNMRスペクトルデータを以下に示す。
【0086】
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.26(d,J=6.4Hz,6H,CHMe 2 )、1.71(s,6H,CMe2)、3.23(s,2H,CH2CO)、5.0−5.1(m,1H,CHMe2)、5.38(s,1H,CH=C)。
【0087】
他の生成物は2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンで、出発原料の6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンを基準にして収率5.8モル%で生成したが、出発原料の6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できなかった。
【0088】
実施例6
6−ターシャリーブトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成
アルコールとしてメタノールの代わりにターシャリーブチルアルコール10mLを用いる以外は、実施例2と同様に反応を行った。反応混合物を上記と同様に処理し、分液操作により得た有機層を乾燥、濃縮することにより、6−ターシャリーブトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン0.44gを得た。この化合物のNMRスペクトルデータを以下に示す。
【0089】
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.46(s,9H,t−Bu)、1.71(s,6H,CMe2)、3.17(s,2H,CH2CO)、5.36(s,1H,CH=C)。
【0090】
他の生成物は2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンだった。出発原料である6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できなかった。
【0091】
実施例7
6−エトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成
アルコールとしてメタノールの代わりにエタノール10mLを用いる以外は、実施例2と同様に反応を行った。反応混合物を上記と同様に処理し、分液操作により得た有機層を乾燥、濃縮することにより、6−エトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン0.70gを得た。この化合物のNMRスペクトルデータを以下に示す。
【0092】
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.28(t,J=7.1Hz,3H,CH 3 CH2)、1.71(s,6H,CMe2)、3.25(s,2H,CH2CO)、4.20(q,J=7.1Hz,2H,CH3 CH 2 )、5.39(s,1H,CH=C)。
【0093】
他の生成物は2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンだった。出発原料の6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できなかった。
【0094】
実施例8
6−ベンジルオキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成
アルコールとしてメタノールの代わりにベンジルアルコール0.6gを用い、溶媒としてTHF10mLを用いる以外は、実施例2と同様に反応を行った。反応混合物を上記と同様に処理し、分液操作により得た有機層を乾燥、濃縮することにより、6−ベンジルオキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン0.75gを得た。この化合物のNMRスペクトルデータを以下に示す。出発原料の6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できなかった。
【0095】
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.63(s,6H,CMe2)、3.30(s,2H,CH2CO)、5.16(s,2H,PhCH 2 )5.38(s,1H,CH=C)、7.3−7.5(m,5H,Ph)。
【0096】
実施例9
6−シクロヘキシルオキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成
アルコールとしてメタノールの代わりにシクロヘキサノール0.6gを用い、溶媒としてアセトニトリル10mLを用いた以外は、実施例2と同様に反応を行った。反応混合物を上記と同様に処理し、分液操作により得た有機層を乾燥、濃縮することにより、6−シクロヘキシルオキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン0.92gを得た。この化合物のNMRスペクトルデータを以下に示す。出発原料の6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できなかった。
【0097】
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.1−2.0(m,10H,シクロヘキサン環のメチレン)、1.71(s,6H,CMe2)、3.24(s,2H,CH2CO)、4.8−4.9(m,1H,OCH(CH2)2)、5.38(s,1H,CH=C)。
【0098】
実施例2〜9の結果をまとめ、表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
なお、表1において、目的物は6−アルコキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンであり、副生成物は2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンである。
【0101】
実施例10
3−オキソペンタンジカルボン酸ターシャリーブチルメチルの合成
クロロホルム12mLに6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン51.7mg(0.258mmol)、ターシャリーブチルアルコール20.6mg(0.277mmol)を溶解し、封管中に封入した。この系を80℃で9時間加熱し、目的とする3−オキソペンタンジカルボン酸ターシャリーブチルメチルを、81モル%の収率で得た。この化合物のNMRスペクトルデータを以下に示す。副生成物は存在せず、原料6−エトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンが回収された。
【0102】
1H−NMR(CD3Cl)ppm:1.47(s,9H,t−Bu)、3.51(s,2H,CH2)、3.61(s,2H,CH2)、3.74(s,3H,Me)。
【0103】
実施例11
一酸化炭素加圧条件下での6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成
容量100mLのマイクロボンベを用い、ヨウ化カリウム量を0.094g(0.566mmol)、反応系を1MPaの一酸化炭素雰囲気とした以外は、実施例2と同様に反応をおこなった。
【0104】
反応終了後、反応混合物を上記と同様に処理し、1H−NMRにより確認したところ、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンがモル比1.0:0.52の割合で検出できた。出発原料である6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できず、他の生成物もほぼ存在しなかった。ヨウ化カリウム量を低減しても反応は効率よく進行し、反応を加圧(1MPa)することにより選択性が向上した。
【0105】
実施例12
一酸化炭素加圧条件下での6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成(アミンの使用)
塩基として、炭酸カリウムの代わりにトリエチルアミン1.2g(11.8mmol)を用いた以外は、実施例11と同様に反応をおこなった。
【0106】
反応終了後、反応混合物を上記と同様に処理し、1H−NMRにより確認したところ、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンがモル比1.0:0.30の割合で検出できた。出発原料である6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できず、他の生成物もほぼ存在しなかった。塩基として有機塩基又はアミン類を用いることにより、選択性が向上した。
【0107】
実施例13
6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成(Pd量の低減)
容量100mLのマイクロボンベに塩化パラジウム0.032g(0.18mmol)、トリエチルアミン6.0g(59.2mmol)、ヨウ化カリウム0.470g(2.83mmol)、メタノール25mL、6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オン5.0g(28.3mmol)を加え、室温で22時間攪拌した。
【0108】
反応終了後、反応混合物を濾過し、濾液を濃縮した。この残査に酢酸エチル30mLを加え、水30mLで2回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過、濃縮し、黒褐色残査4.013gを得た。
【0109】
この反応混合物を1H−NMRにより確認したところ、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンがモル比1.0:0.27の割合で検出できた。出発原料である6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できず、他の生成物もほぼ存在しなかった。
【0110】
実施例14
6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの合成(Pd量の低減)
塩化パラジウム0.016g(0.09mmol)を用い、室温で50時間攪拌した以外は、実施例13と同様に反応をおこなった。
【0111】
反応終了後、反応混合物を1H−NMRにより確認したところ、6−メトキシカルボニルメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンと2,2,6−トリメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンがモル比1.0:0.29の割合で検出できた。出発原料である6−クロロメチル−2,2−ジメチル−4H−1,3−ジオキシン−4−オンの残存は確認できず、他の生成物もほぼ存在しなかった。
Claims (13)
- 式(1)において、R1が直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキル基、C3−10シクロアルキル基、又はC6−10アリール−C1−4アルキル基であり、R2及びR3が水素原子又はC1−4アルキル基である請求項1記載の環状エステル。
- 式(1)において、R2及びR3がメチル基である請求項1記載の環状エステル。
- 式(2)において、Xがヨウ素原子又は臭素原子である請求項4記載の製造方法。
- 式(2)においてXがフッ素原子又は塩素原子であるハロゲン化合物と、一酸化炭素及び前記アルコール又は水とを、ヨウ素化剤および臭素化剤から選択された少なくとも一種の存在下で反応させる請求項4記載の製造方法。
- 白金族金属で構成された触媒の存在下で反応させる請求項4記載の製造方法。
- 周期表10族金属で構成された触媒の存在下で反応させる請求項4記載の製造方法。
- 白金族金属がパラジウムである請求項7記載の製造方法。
- 無機塩基又は有機塩基の存在下で反応させる請求項4記載の製造方法。
- 塩基がアミン類である請求項10記載の製造方法。
- 加圧下で反応させる請求項4記載の製造方法。
- 下記式(1)で表される環状エステルと、下記式(4)で表されるアルコール又は水とを反応させ、下記式(5)で表されるジカルボン酸エステルを製造する方法。
R4−OH (4)
(式中、R4は水素原子、鎖状脂肪族炭化水素基、又は環状脂肪族炭化水素基を表し、前記脂肪族炭化水素基はさらに芳香族基で置換されていてもよい)
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