JP4708953B2 - 酸化物単結晶ウエーハおよび酸化物単結晶ウエーハの製造方法ならびにsawデバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
まず、適当な単結晶育成法、例えばチョクラルスキー法により育成された酸化物単結晶インゴットを所定の形状、方位となるように研削、切断加工を行い、弾性表面波の伝播面に鏡面研磨加工を施し、酸化物単結晶ウエーハを作製する。次に、主にアルミニウムからなる膜を形成し、フォトリソグラフィを使用した微細加工技術により所定形状の電極を形成する。
そして、昇温あるいは降温といった温度変化が酸化物単結晶ウエーハに与えられると、歪が生じ、ウエーハが割れることがある。例えばタンタル酸リチウム結晶は熱膨張係数に異方性があるため歪が生じやすく、その近傍の表面のキズを起点としてウエーハが割れるものと考えられる。
例えばデバイス製造工程中の熱処理等でウエーハに温度変化が生じ、熱膨張係数の異方性や焦電性から歪が発生しても、上記のように割れの起点となるウエーハ表面のキズは絶縁性被膜で埋められ被われているため、ウエーハが割れるのを効果的に防ぐことができる。表面全てに絶縁性被膜を有するものが最良であるが、例えば外周面のみ被膜されたものであっても割れは外周部より発生する場合が多いので、被膜がない場合に比べ十分に割れを抑制することができる。
なお、ここで言う表面とは表側面、裏側面、外周面といった部分を問わず、露出している全ての面をさす。
このように、前記絶縁性被膜は、例えばローラーを用いたり、ディップコーティングにより塗布して形成されたものとすることができ、簡易でコストが抑えられたものとすることができる。
このように、前記酸化物単結晶が、タンタル酸リチウム結晶またはニオブ酸リチウム結晶であれば、焦電性を有しているため電荷が蓄積されるが、急な放電が発生した場合にも、割れの起点となるキズが絶縁性被膜により埋められているため割れを生じにくくすることができ、極めて有効である。
このように、前記絶縁性被膜は、面積抵抗率が1×106Ω以上であれば、ウエーハ表面にある程度の電気抵抗を有したものとすることができる。このため、例えばSAWデバイスに使用されるような、ウエーハを絶縁体とみなすような構造で、ある程度の電気抵抗を要するデバイスを製造するのに好適な酸化物単結晶ウエーハとすることができる。
このように、前記絶縁性被膜が金属酸化物ポリマーまたは金属酸化物、合成樹脂からなるものであれば、より効果的に、ウエーハ表面のキズが埋められて割れの起点をなくすことができ、また、冶具等との接触時のウエーハの変形やウエーハへの衝撃を緩和することができるものとなる。
そして、ウエーハとよく密着し、剥離しにくく、上記効果を満足に得られるものとすることができる。
特に合成樹脂であれば、被膜形成時に酸化物ウエーハに高温の熱処理を施すことなく例えば紫外線照射により硬化して形成することもできる。
このように、前記絶縁性被膜の厚さが特に100nm以上1mm以下であれば、効果的にウエーハの割れの発生を低減することができ、また、ウエーハから剥離しにくい被膜とすることができる。
上記のように、ウエーハ表面のキズを埋めることによって割れの起点をなくし、例えばデバイス製造工程中の熱処理等でウエーハに温度変化が生じ、熱膨張係数の異方性や焦電性から歪が発生しても、ウエーハに割れが発生するのを抑制することが可能である。
このように、前記絶縁性被膜を例えばローラーを用いたり、ディップコーティングにより塗布して形成すれば、簡易かつコストをかけずに効率良く割れにくい酸化物単結晶ウエーハを製造することができる。
このように、前記酸化物単結晶を、タンタル酸リチウム結晶またはニオブ酸リチウム結晶とすれば、焦電性を有しているが、割れの発生しにくいLTウエーハ、LNウエーハを製造することが可能である。
このように、前記絶縁性被膜として、面積抵抗率が1×106Ω以上のものを形成すれば、ウエーハ表面にある程度の電気抵抗を有した酸化物単結晶ウエーハを製造することができる。これにより、例えばSAWデバイス等のある程度の電気抵抗を要するデバイスを製造するのに好適な酸化物単結晶ウエーハを製造することができる。
このように、前記絶縁性被膜を金属酸化物ポリマーまたは金属酸化物、合成樹脂とすれば、効果的に、割れの起点となるウエーハ表面のキズを埋めることができ、また、ウエーハと冶具等の接触時における温度差から生じるウエーハの変形やウエーハへの衝撃を緩和することができる。さらにウエーハ表面とよく密着して剥離しにくく、割れ抑制の効果を十分に得ることができる。
また、特に合成樹脂とすれば、高温の熱処理を施さずに被膜を密着形成する場合に極めて有効である。
このように、前記絶縁性被膜の厚さを例えば100nm以上1mm以下とすれば、効果的にウエーハの割れの発生を低減することができ、さらに上記被膜が剥離しにくい酸化物単結晶ウエーハを製造することができる。
このように、本発明の酸化物単結晶ウエーハにSAWデバイスを形成すれば、例えばデバイス工程における熱処理時や、また、冶具等との接触時等においても割れが発生しにくいため、効率良く、そして生産性高くSAWデバイスを製造することが可能である。
脆性材料であるLTウエーハやLNウエーハのような酸化物単結晶ウエーハを用いたSAWデバイスの製造工程では、例えば金属膜の蒸着等、ウエーハに熱処理を施す工程があり、これらの工程でウエーハに温度変化が生じると、熱膨張係数の異方性や焦電性から歪が生じ、ウエーハ表面のキズを起点としてウエーハに割れが発生することがあった。
また、ウエーハが冶具等と接触した時、ウエーハと冶具との温度差により生じる急激な変形や、接触時の衝撃により割れが発生してしまう問題があった。
また、これらの問題を考慮し、デバイス製造工程の熱処理において温度変化を緩やかにしてしまうと、生産性が低下してしまう。
また、上記酸化物単結晶ウエーハにSAWデバイスを形成するSAWデバイスの製造方法であれば、デバイス製造工程の熱処理等で割れが発生しにくく、必要以上に昇降温速度を低下させたりする必要がないので生産性高くSAWデバイスを製造することができる。
本発明者らは、これらのことを見出し、本発明を完成させた。
図1に示すように、本発明の酸化物単結晶ウエーハ1は、少なくとも、ウエーハ(酸化物単結晶3)の表側面4と、該表側面4の反対側の裏側面5と、外周面6のうち、いずれか一つ以上の面に割れ防止のための絶縁性被膜2を有している。
また、熱膨張係数に異方性がある場合は、上記温度変化により歪が発生しやすく、その歪の近傍の表面のキズを起点として割れてしまうことがある。
さらには、ウエーハと冶具等との接触時に、接触による衝撃や、双方の温度差による急激なウエーハの変形から割れることがある。
なお、真空蒸着、CVD、スパッタリング等の方法により被膜が形成されたものであっても良い。
被膜がこれらで形成されたものであれば、より効果的に、ウエーハ表面のキズを埋めることができ、ウエーハ割れの起点をなくし、また、ウエーハの変形やウエーハへの衝撃を緩和することができるものとなる。これらはウエーハとよく密着するため剥離が生じにくい点でも好ましい。
さらに、被膜形成時において高温の熱処理を施すのを避ける場合は合成樹脂が最適である。特に、熱処理を全く施さずとも、紫外線照射によって硬化させて被膜を形成することができる光硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。
しかしながら、本発明者は鏡面加工を施した酸化物単結晶ウエーハを用意し、被膜の厚さについて鋭意検討を行った結果、100nm以上の厚さであれば、より効果的にウエーハの割れを低減することができることを知見した。さらには、1mm以下の厚さであれば、被膜の剥離の発生を著しく抑制することができることを発見した。
このように、被膜が上記範囲の厚さのものであれば、より割れにくく、また被膜が剥離しにくい良質の酸化物単結晶ウエーハとすることができる。
なお、本発明は上記のLTウエーハやLNウエーハに限定するものではなく、脆性材料である酸化物単結晶ウエーハ全てに適用することのできるものである。
まず、例えばチョクラルスキー法によって酸化物単結晶インゴットを育成し、内周刃ブレード用スライサーないしワイヤーソー等を用いて切断して板状のウエーハを得る。次いで得られたウエーハをラッピング工程や研磨工程にかける。
アルコキシシラン加水分解物は、例えばSi(OC2H5)4、CH3Si(OC2H5)3、C2H5OHを混合後攪拌し、そこに希塩酸を加えて加水分解を行い、ゾルとして得ることができる。このゾルを用いて、例えばディップコーティングを行うことにより酸化物単結晶ウエーハの表面にアルコキシシラン加水分解物を塗布する。アルコキシシラン加水分解物を塗布すれば、細いキズでも良好に浸透し、最適である。
この場合、被膜を形成する面については、その酸化物単結晶ウエーハの使用目的に応じて決定されるが、ウエーハの全面に被膜を形成する場合はディップコーティングが好ましく、片面のみに形成する場合はローラーやハケ塗りが好ましく、図1(c)のような片面と外周面に形成する場合はスピンコーティングで行うのが好ましい。もちろん、ウエーハ全面に被膜を形成してから、不要部を除去するようにしても良い。
なお、例えば真空蒸着やCVD、スパッタリングのような方法によって、金属酸化物の被膜を直接形成することも可能である。
(実施例1)
LTウエーハの全表面に珪素酸化物ポリマーの被膜を形成した。
LTウエーハは、チョクラルスキー法によりLT単結晶インゴットを引き上げ、ウエーハ状に加工し、研磨加工を施して、直径100mm、厚さ0.35mm、36°Yカット、表側面が鏡面仕上げ、裏側面および外周面は面粗さRaが300〜400nm仕上げのものを用意した。このLTウエーハを信越化学工業製のアルコキシシラン加水分解物のゾル、粘度5×10−3Pa・sの溶液に浸漬し、引上げ後、150℃、1時間の熱処理を行った。このようにして全表面に被膜を有する本発明の酸化物単結晶ウエーハを得た。被膜の厚さは3μmであった。また、面積抵抗率は2.3×1010Ωであった。
(強度試験1)
ウエーハの抗折強度を測定し、10枚の平均値を評価値とした。
(密着性試験)
また、JIS K5400に準拠し、表側面をカミソリの刃で1mm間隔の縦横11本ずつ切り目を入れて100個のゴバン目を作り、市販粘着テープをよく密着させた後、90度手前方向に急激に剥がした時、被膜が剥離せずに残存したます目数(X)を評価した。この結果をX/100と表記する。
強度試験1の結果、抗折強度は15.3Nであり、密着性試験の結果は100/100であった。
実施例1と同様にしてインゴットを引き上げ、切り出し、研磨加工を施して作製した従来のLTウエーハを10枚用意し、このLTウエーハに被膜を形成せずに、上記強度試験1を行ったところ、抗折強度は8.9Nであった。
LTウエーハ全表面に珪素酸化物の被膜を形成した。
実施例1と同じLTウエーハを実施例1と同じ溶液に浸漬し、引上げ後、500℃、1時間の熱処理を行った。被膜の厚さは2μmであった。面積抵抗率は8.8×1012Ωであった。
強度試験1と同様の試験の結果、抗折強度は19.6Nであった。また、前述の密着性試験を行い、結果は100/100であった。
LNウエーハ全表面に珪素酸化物ポリマーの被膜を形成した。
LNウエーハは直径100mm、厚さ0.35mm、128°Yカット、表側面が鏡面仕上げ、裏側面および外周面は粗さRaが300〜400nm仕上げのものを用いた。このLNウエーハを実施例1と同じ溶液に浸漬し、引上げ後、150℃、1時間の熱処理を行った。被膜の厚さは5μmであった。面積抵抗率は5.1×1010Ωであった。
強度試験1を行い、抗折強度は14.6Nであった。また、密着性試験を行ったところ、100/100であった。
LTウエーハ裏側の面に合成樹脂であるアクリル樹脂の被膜を形成した。
実施例1と同じLTウエーハの裏側の面に三菱レイヨン製ダイヤビームをバーコーターを用いて乾燥後の被膜の厚さが6μmとなるように塗布し、出力120W/cm2の高圧水銀灯を光源として紫外線を500mJ/cm2照射して硬化させて被膜を形成した。面積抵抗率は3.4×1013Ωであった。
強度試験1を行い、抗折強度は15.2Nであった。また、密着性試験を行ったところ、100/100であった。
強度試験1、密着性試験の結果を以下の表1に示す。表1から判るように、被膜の厚さが100nm以上であればより高い強度が得られる。また、1mm以下であれば、密着性が極めて高いものとすることができることが判る。
LTウエーハ裏側の面及び外周面に珪素酸化物の被膜を形成した。
実施例1と同様にインゴットから切り出してLTウエーハを用意して、同じようにまず全表面に被膜を形成し、表側の面のみ研磨加工を施し被膜を除去し、鏡面仕上げとした。
強度試験1を行い、抗折強度は12.7Nであった。
LTウエーハの外周面に珪素酸化物の被膜を形成した。
実施例1と同様にインゴットから切り出してLTウエーハを用意して、同じように全表面に被膜を形成し、表側面及び裏側面を研磨加工により被膜を除去し、表側面は鏡面仕上げ、裏側面は粗さRaが300〜400nm仕上げとした。
このようなウエーハを20枚用意し、以下の強度試験2を行った。
(強度試験2)
200mm四方、10mm厚さのステンレス製の板を用意し、ステンレス板の中心の直上80mmのところからウエーハを落下させ、割れなかったウエーハの度合いを評価する。割れなかったウエーハ数を評価値とし、パーセンテージで示す。
結果は、100%であり、すなわち1枚もウエーハは割れなかった。
実施例1と同様にしてインゴットを引き上げ、切り出し、研磨加工を施して作製した従来のLTウエーハを20枚用意し、上記強度試験2を行ったところ、結果は割れなかったウエーハは80%であり、すなわち20%が割れた。
実施例1と同様に割れ防止のための絶縁性被膜を全面に形成した後、デバイスを製造する面の部分の被膜を除去し、それ以外の面において被膜を有する本発明のLTウエーハを100枚用意し、それぞれのウエーハに従来と同様のSAWデバイス製造工程にかけた。すなわち、アルミニウムからなる膜を形成し、フォトリソグラフィによりパターン形成して所定形状の電極を形成してSAWデバイスを製造した。
このSAWデバイス製造工程においてウエーハは1枚も割れなかった。
実施例1と同様にしてインゴットを引き上げ、切り出した後、研磨加工を施したLTウエーハ、すなわち被膜のない従来のLTウエーハを100枚用意し、実施例7と同様のSAWデバイス製造工程を施した。
このSAWデバイス製造工程において、100枚中8枚に割れが生じた。
3…酸化物単結晶(ウエーハ状)、 4…表側面、 5…裏側面、
6…外周面。
Claims (15)
- 酸化物単結晶ウエーハであって、少なくとも、ウエーハの表側面と、該表側面の反対側の裏側面と、外周面のうち、少なくとも外周面に割れ防止のための絶縁性被膜を有するものであることを特徴とする酸化物単結晶ウエーハ。
- 前記絶縁性被膜は塗布膜であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物単結晶ウエーハ。
- 前記酸化物単結晶が、タンタル酸リチウム結晶またはニオブ酸リチウム結晶であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化物単結晶ウエーハ。
- 前記絶縁性被膜は、面積抵抗率が1×106Ω以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハ。
- 前記絶縁性被膜が金属酸化物ポリマーまたは金属酸化物からなるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハ。
- 前記絶縁性被膜が合成樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハ。
- 前記絶縁性被膜の厚さが100nm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハ。
- 酸化物単結晶ウエーハを製造する方法であって、酸化物単結晶インゴットをウエーハ状に加工した後、少なくとも、該ウエーハの表側面と、該表側面の反対側の裏側面と、外周面のうち、少なくとも外周面に割れ防止のための絶縁性被膜を形成することを特徴とする酸化物単結晶ウエーハの製造方法。
- 前記絶縁性被膜を塗布により形成することを特徴とする請求項8に記載の酸化物単結晶ウエーハの製造方法。
- 前記酸化物単結晶を、タンタル酸リチウム結晶またはニオブ酸リチウム結晶とすることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の酸化物単結晶ウエーハの製造方法。
- 前記絶縁性被膜として、面積抵抗率が1×106Ω以上のものを形成することを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハの製造方法。
- 前記絶縁性被膜を金属酸化物ポリマーまたは金属酸化物とすることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハの製造方法。
- 前記絶縁性被膜を合成樹脂とすることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハの製造方法。
- 前記絶縁性被膜の厚さを100nm以上1mm以下とすることを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか一項に記載の酸化物単結晶ウエーハの製造方法。
- 請求項8から請求項14のいずれか一項に記載の方法により製造された酸化物単結晶ウエーハにSAWデバイスを形成することを特徴とするSAWデバイスの製造方法。
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