JP4708262B2 - 難燃性立毛調人工皮革 - Google Patents

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Description

本発明は、表面の品位および風合いを損なわず、かつ、耐光堅牢度、フォギング、耐キワ付き性の良好な車両用、インテリア製品に好適に用いられる難燃性立毛調人工皮革に関する。
人工皮革は、従来から、インテリア、衣類、靴、鞄、手袋、乗物用座席の上張材などの様々な用途に利用されている。そのうちでも、鉄道車両、自動車、航空機および船舶の内装材に使用される分野では各々の難燃性規格に適合する難燃性を兼ね備えた人工皮革が求められる。
従来より繊維不織布を基材とした人工皮革、特に極細繊維不織布を基材とした立毛調人工皮革の難燃化は難燃性能の確保と人工皮革の感性面(表面の品位、タッチおよび風合い)と物性面(耐光性を含めた染色堅牢度、フォギング、耐磨耗性など)の両立が技術的課題としてあり、様々な難燃化の方法が提案されている。
水溶性難燃剤を特定の濃度の水溶液にし、人工皮革の裏面にコートする方法が開示されている(特許文献1を参照。)。この方法では人工皮革の風合いが粗硬化し易い。また、伸びが固定され易くなるため、複雑な形をしたシート形状への追随がしにくい。また、難燃剤が水溶性のためキワ付きの懸念がある。また、含浸するポリウレタンに難燃剤を混合させる方法が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。この方法ではポリウレタン樹脂としての性能低下の可能性があり、特に厳しい耐光性能が要求される車両用途に耐えられるレベルまで向上させにくい。また、リン含有量の多いホスファゼン化合物を染色同浴で吸塵させる技術が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。この技術は染色機内での汚染の問題が生じやすく、連続多バッチ処理下では染色時脱落した難燃剤および難燃剤中の分散安定剤等による染色機内の汚染により他の人工皮革染色処理時の汚れ欠点の多発が避け難く、染色機内を十分に洗浄する必要があり、また、染色機内の汚染除去には、特殊なクリーニング剤を要し、更に場合によっては染色機の分解掃除も必要となり、バッチ間の切替に多くの工数がかかる。更に、リン酸共重合ポリエステルからなる極細繊維不織布に水酸化アルミニウムを含有した高分子弾性体を充填してなる人工皮革が開示されている(特許文献4を参照。)。しかしながら、一般的に共重合化されたポリエステルは耐光性や耐摩擦強度に関してレギュラーポリエステルに劣り、高耐光性、高摩擦強度が要求される車両用シートへの展開においては大きなハンデとなる。また、リン系難燃剤を熱可塑性合成繊維に共重合させることにより、染色時の難燃剤の溶出や糸物性の劣化を克服した技術も開示されている(特許文献5を参照。)。この方法ではコスト的な問題により、リン共重合量に制約がかかる場合がある。上記のように、これまで提案されている人工皮革の難燃化の方法は、難燃性能の確保と人工皮革の感性面(特に立毛調人工皮革の表面の品位、タッチおよび風合い)と物性面(耐光性を含めた染色堅牢度、フォギング、耐キワ付き性および耐磨耗性など)の両立という観点からは不十分なものであった。
特公平3−80914号公報 特開平7−18584号公報 特開2002−105871号公報 特開2002−115183号公報 特開2004−169197号公報
上記の通り、難燃性能の確保と人工皮革の感性面(特に立毛調人工皮革の表面の品位、タッチおよび風合い)と物性面(耐光性を含めた染色堅牢度、フォギング、耐キワ付き性および耐磨耗性など)の両立といった課題がある。
本発明者らは鉄道車両、自動車、航空機および船舶の内装材(乗物用座席の上張材を含む)各々の難燃性規格に適合する難燃性を兼ね備え、好適に用いられる難燃性立毛調人工皮革を得るにあたり鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、0.5デシテックス以下の極細繊維からなる不織布およびその絡合内部に付与された弾性重合体よりなり、片面に該極細繊維による立毛が形成されており、立毛が形成された面とは異なる面に難燃層が形成された難燃性立毛調人工皮革において、該難燃層が、常温で固体である難燃剤(A)、熱可塑性樹脂(B)および常温で粘度が500〜10000cpsである低粘性物質(C)からなり、該低粘稠性物質(C)が該難燃剤(A)に対して0.2〜10質量%混合されていることを特徴とする難燃性立毛調人工皮革である。
そして、難燃剤(A)、熱可塑性樹脂(B)および常温で粘度が500〜10000cpsである低粘性物質(C)を混合した水分散液または水溶液を0.5デシテックス以下の極細繊維からなる不織布およびその絡合内部に付与された弾性重合体よりなり、片面に該極細繊維による立毛が形成された立毛調人工皮革の立毛が形成された面とは異なる面に塗布し難燃層を形成することを特徴とする難燃性立毛調人工皮革の製造方法である。
本発明の難燃性立毛調人工皮革は、表面の品位および風合いを損なわず、かつ、耐光堅牢度、フォギング、耐キワ付き性の良好な難燃性立毛調人工皮革であり、さらには、鉄道車両、自動車、航空機および船舶の座席の上張材を含む内装材に好適に用いられる難燃性立毛調人工皮革である。
本発明に用いられる極細繊維は、特に制約は無いが、立毛調人工皮革とした場合に天然皮革様の風合いが得られる点から、0.5デシテックス以下の極細繊維を用いることが重要である。極細繊維は、単成分を用いた直接紡糸から得られる極細繊維でもよいし、少なくとも2種類のポリマーからなる極細繊維発生型の複合繊維から得られる極細繊維でもよい。極細繊維発生型の複合繊維とは、例えば、海成分を溶解または分解することで残った島成分がフィブリル化する海島型複合繊維で代表される抽出型複合繊維や、機械的・物理的な方法や処理剤による化学的な方法によって各ポリマーからなる極細繊維にフィブリル化する分割型複合繊維等が挙げられる。極細繊維発生型の複合繊維は、紡糸後、必要に応じて延伸、熱処理、機械捲縮、カット等の処理工程を経て、繊度1〜15デシテックスの短繊維とした後でカード法などの公知の方法により不織布を形成するか、あるいは紡糸後に機械的な延伸を余りすることなくスパンボンド法などの公知の方法で長繊維のまま不織布とする。
極細繊維を構成するポリマーは、6−ナイロン、66−ナイロン、12−ナイロンなどの溶融紡糸可能なポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、またはそれらの共重合体の溶融紡糸可能なポリエステル類から選ばれる少なくとも1種類のポリマーが用いられる。また、抽出型複合繊維で抽出または分解除去される成分は、極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、極細繊維成分との相溶性の小さいポリマーであり、かつ紡糸条件下で極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーである必要があるが、本発明においては環境汚染、溶解時の収縮特性等総合的に考慮すれば熱溶融熱水溶解可能なポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。さらに、上記極細繊維は、本発明の効果を損なわない限りにおいてカーボンブラックや酸化チタン等に代表される無機顔料や有機顔料の添加により紡糸時点で着色することや、あるいは公知の繊維用添加剤を添加することは可能である。
上記極細繊維あるいは極細繊維発生型繊維からなる不織布の製造は、例えば、短繊維であればカードで解繊し、ウェッバーを通してウェブを形成し、また、長繊維であればスパンボンド法などにより紡糸と同時にウェブを形成し、得られたウェブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、必要に応じてニードルパンチ、高速水流などの公知の方法により仮絡合処理が行われる。上記ウェブの目付は、目的とする立毛調人工皮革の目付に応じて設定されるが、80〜2000g/mの範囲が好ましく、より好ましくは100〜1500g/mの範囲が好ましい。なお乗物用座席の上張材としての用途の場合、バギング性を確保するため上記不織布に織編物を挿入することも好ましい。なおその場合の織編物は特に限定されることは無く、目的を達することができれば、コストの許す範囲内で公知の織編物を使用することができる。
該不織布は機械強度向上の観点から更に絡合処理を施すことができる。その際絡合方法は仮絡合と同様、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法が使用可能である。ニードルパンチ処理する際のパンチ数は、300〜4000パンチ/cmの範囲が好ましく、より好ましくは500〜3500パンチ/cmの範囲である。300パンチ/cm未満では、繊維同士の絡合が不充分であり、4000パンチ/cmを超えると不織布を構成する繊維のニードルによる損傷が目立つようになり、ひどい場合には物性が大幅に低下してしまうこともある。ニードルパンチ処理における針の突き刺し深さは、最終的に得られる立毛調人工皮革の耐表面磨耗性と毛羽品位の観点から、ニードルパンチ初期は深めにして絡合効果を高め、最終工程は浅めにして針穴を目立たせないように設定する。
得られた不織布の絡合内部に、弾性重合体を付与することが、天然皮革様の風合いおよび充実感と機械的物性の向上の点で重要である。用いる弾性重合体は、ポリウレタンやアクリル樹脂等の人工皮革の含浸用に用いられる公知の樹脂何れも用いることが可能である。中でもポリウレタン樹脂が風合や物性の点で好ましい。ポリウレタン樹脂は平均分子量700〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどから選ばれた少なくとも1種のポリマージオール、芳香族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートから選ばれた少なくとも1種の有機ジイソシアネートを主体に、必要に応じて他の有機ジイソシアネートあるいは有機トリイソシアネート、および低分子ジオール、低分子ジアミン、ヒドラジン、ヒドロキシアミンなど活性水素原子2個を有する化合物とを溶液重合法、溶融重合法、塊状重合法などによって重合して得たポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンなどが好ましく挙げられる。ポリウレタンの付与方法としては特に制約は無く、上記不織布をポリウレタン溶液または分散液中でディップおよびニップする方法や、該不織布上にポリウレタン溶液または分散液を付与し高速回転するロールで不織布内部に摺り込む方法等が挙げられる。ポリウレタンの凝固方法としては、ポリウレタンの非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固するか、ゲル化させた後加熱乾燥して乾式凝固する方法などが挙げられる。
上記ポリウレタン溶液または分散液中には、必要に応じてカーボンブラックや顔料などの着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を配合することができる。繊維基材に占めるポリウレタンの比率は、人工皮革に柔軟な風合いと弾性回復性を持たせるために、極細繊維化する前で、不織布を構成する繊維に対し、固形分として質量比で5〜50%、好ましくは10〜40%の範囲で含有させるのがよい。ポリウレタン比率が5%未満の場合には、緻密な弾性体スポンジ(多孔構造)が形成されにくく、柔軟な風合いが得られにくい。ポリウレタン比率が50%を超える場合には、風合いがゴムライクになるので本発明が目的とする用途における素材としては好まれない傾向が強い。
該不織布を構成する繊維に極細繊維発生型の複合繊維を用いた場合には、該複合繊維を、繊維構成ポリマーのうちの少なくとも1成分(好ましくは海成分構成ポリマー)を溶解剤若しくは分解剤で処理して、または機械的若しくは化学的処理により極細繊維若しくは極細繊維束に変性する。極細繊維発生型繊維の変性処理は高分子弾性体の付与前であってもよいが、極細繊維束に変性後に高分子弾性体を付与すると、高分子弾性体が極細繊維に接着し風合いが硬くなりやすいため、高分子弾性体付与後に極細繊維束に変性することが好ましい。高分子弾性体付与前に変性処理を行う場合には、極細繊維と高分子弾性体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後に高分子弾性体を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。得られるシートの目付は300g/m〜1500g/mが好ましく、400〜1000g/mがより好ましい。300g/mを下回る場合は、得られる立毛調人工皮革は引き裂き強力や引っ張り強力が低く実用上の強度が不足する。1500g/mを超える場合、表面にしわが生じやすくなり品位に劣るものとなり易い。また、厚みは0.3mm〜4mmの範囲が好ましく、0.5mm〜3.0mmがより好ましい。0.5mmを下回る場合、得られる立毛調人工皮革は引き裂き強力や引っ張り強力が低く実用上の強度が不足する。4mmを超える場合、表面にしわが生じやすくなり品位に劣るものとなり易い。
また、立毛調人工皮革としての風合いや充実感、耐表面磨耗性を含めた機械的物性の向上、調整を目的として、極細繊維束への変性後の何れかの段階、即ち極細化処理後、起毛処理後、染色処理後などの段階において、少量の高分子弾性体を溶液または分散液の状態で、立毛を形成する面または立毛を形成した面に付与するのも好ましい。但し、これらの段階で付与する高分子弾性体は、前記したような極細繊維への接着が起きるので、極細繊維の目付に対して固形分で10%以下程度の範囲において目的とする風合いや物性等との兼ね合いにおいて追加付与するものである。
上記で得られたシートは、スライス、バフィング等により所望の厚みに調整した後、片面をサンドペーパーや針布等による公知の方法でバフィングすることにより極細繊維は起毛され、さらには必要に応じて染色などの後加工をすることにより目的とする外観、風合いの立毛調人工皮革とする。
得られた立毛調人工皮革の厚みは、使用目的によっても異なるが、乗物用座席の上張材として使用する場合、0.4〜3.0mmであることが好ましく、見かけ密度は充実感、ドレープ性、優れた機械的物性をもたらす点で0.1〜0.8g/cmであることが好ましい。
本発明の難燃処理は、上記により得られた立毛調人工皮革の裏面に常温で固体である難燃剤(A)(以下単に難燃剤(A)ということもある。)、熱可塑性樹脂(B)および常温で粘度が500〜10000cpsである低粘調性物質(C)を混合した水分散液または水溶液を塗布することで行われる。
ここで難燃剤(A)は、常温で固体であり、非水溶性または難水溶性であれば特に種類を制限するものでは無いが、昨今の環境ホルモン規制へ適合させる観点から脱ハロゲン化したものを使用することが好ましい。脱ハロゲン化した難燃剤としては、含リン系化合物、含窒素系化合物、リン窒素化合物、スルフォアミド系化合物、リンスルフォアミド系化合物、含硫黄窒素系化合物などが挙げられ、これらを単独あるいは複数混合して使用することが可能である。難燃性能の観点から難燃剤(A)はリン系化合物が好ましく、リン系化合物としてはリン酸グアニジン系、リン酸カルバメート系、リン酸エステル系、リン酸エステルアミド系、ポリリン酸アンモニウム系などを挙げることができるが、特にリン含有量の高いポリリン酸アンモニウム系難燃剤が好ましく、更に難水溶性化させるためメラミン樹脂あるいは酸化珪素系樹脂により被覆されたタイプのものが好ましい。難燃剤(A)の付着量は、必要な難燃性能の確保と風合い硬化を少なくする観点から決定しなければならず、立毛調人工皮革の目付、厚み、極細繊維、弾性重合体のポリマー種類、割合により増減するが、概ね立毛調人工皮革に対して5〜20質量%含有していることが難燃性と風合を両立する点で好ましい。
熱可塑性樹脂(B)は塗布、乾燥した際の難燃剤の脱落を防止するためにバインダーの役割を持たすために加えるものであり、風合い、物性の点から非連続状に付着しやすい点で水系ポリウレタンエマルジョンを使用することが好ましい。熱可塑性樹脂(B)が難燃剤(A)に対して、5〜100質量%混合することが好ましく、10〜50質量%混合することがより好ましい。5質量%を下回ると難燃剤の脱落を生じやすく、100質量%を超えると難燃性能を確保することが困難となる。
常温で粘度が500〜10000cpsである低粘性物質(C)(以下、単に低粘性物質(C)と略すことがある。)は風合い硬化を防ぐ目的に用いられる。すなわち、常温で固体の難燃剤(A)と熱可塑性樹脂(B)のみの組み合わせでは、立毛調人工皮革へ塗布した際の風合い硬化、さらに風合のバランス低下は避けられないが、常温で液状の低粘性物質(C)を加えることにより低粘性物質(C)が可塑剤として働き裏面に塗布した際の風合い硬化を大幅に抑えることが可能となる。そのためには低粘性物質(C)は常温で液状である必要があり、500〜10000cpsの範囲の低粘性を示すものなら特に物質の種類を制限するものではないが、難燃剤の塗布量を低減できるため、低粘性物質(C)は難燃剤であることが好ましい。難燃剤の場合は、難燃剤(A)と同様リン系難燃剤を使用することが好ましく、リン酸エステル系難燃剤、リン酸エステルアミド系難燃剤などを選択することができる。更に乗物用座席の上張材の用途に使用する場合、フォギングを考慮して低粘性物質(C)は不揮発性であることが好ましい。低粘性物質(C)は難燃剤(A)に対して、0.2〜20質量%混合することが好ましく、0.5〜10質量%混合することがより好ましい。0.2質量%を下回ると可塑剤効果が少なくなり風合い硬化防止が弱くなる。20質量%を超えると低粘性物質(C)自体が表面に移行するなど立毛調人工皮革の表面品位を損ない、キワ付きを生じやすくなる。なお、本発明で言う常温とは5℃〜30℃の範囲をいい、特に20℃で低粘性物質の粘度が上記範囲の粘度であることが好ましく、また20℃で難燃剤(A)が固体であることが好ましい。また、粘度測定方法としては、特に限定しないが、一般的に用いられる回転粘度計測定法を用いる。
難燃剤(A)、熱可塑性樹脂(B)および低粘調性物質(C)の立毛調人工皮革裏面への塗布は、混合液をそのままコーティングしても良いが、より風合い硬化を防止する観点から、混合液を発泡させて塗布することが好ましい。その際発泡方法は機械発泡、化学発泡など方法は選ばないが、機械発泡の場合は前述の混合液に対し、1〜3質量%の界面活性剤を発泡剤として加えることが発泡倍率を調整し、得られる難燃性立毛調人工皮革の風合に優れる点から好ましい。
塗布方法としては、公知のコーティング方法を使用できるが、発泡液の付着量を比較的正確に制御できるためスクリーンコート法が好ましい。
難燃剤を塗布した後の乾燥方法としては、テンター乾燥機などの公知の乾燥機を用いて公知の方法で行うことができる。
以下本発明の実施態様を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部、%等の量、比率に関する記載は断わりが無い限りすべて質量に関するものである。また、燃焼性、フォギング、キワ付きの測定は下記に示す測定方法に従い、行った。
<燃焼性測定>
試験方法・・・シート表皮用布材料の試験方法(JASO M 403−88 6.20 社団法人自動車技術会制定)
幅100mm、長さ356mmの試験片を縦および横の方向から5枚ずつ取り、その端から38mmの位置に第1標線を、第1標線から254mmの位置に第2標線を付け、表面が下になるようにU字型クランプにはさむ。所定の熱量のバーナーで第1標線側の端に15秒間接炎し、炎が第1標線に達したときより第2標線に達するまでの時間を測定し、次式により燃焼速度を算出する。
燃焼速度(mm/min)=60×D/T
D:燃焼距離(mm)、T:Dmm燃焼するに要した時間(s)
標線前で消火・・・標線前自消
標線を超え、60秒かつ燃焼距離50mm以内で消火・・・自消性
燃焼速度100mm/min以下・・・遅燃性
燃焼速度100mm/min以上・・・易燃性
<フォギング測定>
試験方法・・・シート表皮用布材料の試験方法(JASO M 403−88 6.22 社団法人自動車技術会制定)
直径70mmの円形試験片を曇価試験装置のビーカーに裏面を上にして入れ、透明ガラス板を蓋にして、油槽にて100℃、5時間加熱し、加熱後ガラス板に付いた曇を積分球式光線透過率測定装置(JIS K6714に規定するもの)を用い、次式より算出する。
曇価(%)=(T4/T2−T3/T1)×100
T1:入射光量、T2:全光線透過量、T3:装置による散乱光量、
T4:装置とガラス板による散乱光量
<キワ付き測定>
20cm四方にカットした試験片を水平な台に置き、試験片の中心に10mlの水を滴下する。そのままの状態で室温乾燥させ、表面の染み跡の状態を観察する。
[立毛調人工皮革の製造]
島成分がポリエチレンテレフタレート、海成分が低密度ポリエチレンの海島型複合繊維ステープル(島数20、ポリエチレンテレフタレート:低密度ポリエチレン=60:40、繊度4.0デシテックス、繊維長51mm、捲縮数12山/inch)を使用して、カード、クロスラッパーの工程を経て、ウェブを作成し、仮絡合処理として40P/cmのニードルパンチを行い、目付400g/mの極細繊維発生型繊維からなる不織布を得た。上記不織布に、シングルバーブのフェルト針を使用して、1400P/cmのパンチ数でニードルパンチを行い目付370g/mの不織布を得た。得られた不織布にポリエーテル系ポリウレタンの15%DMF溶液を含浸し、これをジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記することがある)と水の混合液浴中へ浸漬してポリウレタンを湿式凝固し、さらに残存するDMFを水洗除去した後85℃のトルエン浴中で海成分のポリエチレンを抽出除去し、続いて直ちに100℃の熱水浴中で残存するトルエンを共沸させて除去したものを乾燥することで、目付295g/m、厚み0.8mmの人工皮革用基体を得た。
得られた基体の片面を180番のサンドペーパーにより2回バフィングして、表面を平滑にしつつ厚みを0.7mmとした後、次いで反対面を240番のサンドペーパーで2回および400番のサンドペーパーで2回順次バフィングしてポリエチレンテレフタレート極細繊維からなる立毛面とし、染色前のスエード調人工皮革を得た。
次にこのスエード調人工皮革を80℃の熱水浴中へ浸漬し、20分間放置して、熱水になじませると同時にリラックスさせた後、高圧液流染色機を使用し、浴比1:15で、分散染料での染色を行い、乾燥して、染色されたスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は高品位な毛羽感、タッチを有し風合いもソフトなものであった。
上記で得られた立毛調人工皮革の立毛が形成された面と反対側の面に、酸化珪素系樹脂で被覆された固形分40%のポリリン酸アンモニウム系難燃剤水分散液(日華化学社製ニッカファイノンHF−36D 難燃剤は20℃で固体状態)100部、固形分40%の水系ポリウレタンエマルジョン(日華化学社製エバファンールHA−107C)50部およびリン酸エステル系難燃剤水溶液(日華化学社製ニッカファイノンHF−53 難燃剤の粘度は、20℃で2000〜5000cps)10部の混合液を発泡倍率3.0倍に発泡させた発泡液を開孔率40%、開孔径1140μmのメッシュロールを使用したスクリーンコートにより90g/mの塗布量にて塗布を行い、140℃で2分30秒乾燥し、難燃性立毛調人工皮革を得た。得られた難燃性立毛調人工皮革は難燃処理前の表面感を再現しており、風合いは未処理のものよりやや柔軟性は劣るものの折れ感は無く十分にシート表皮材に使用できるものであった。燃焼性は自消性を示し、フォギング値は7%、キワ付きは特に問題無いレベルであった。
比較例1
リン酸エステル系難燃剤水溶液を配合しなかった以外は実施例1と同様の方法で難燃剤を裏面に塗布し難燃性立毛調人工皮革を得た。得られた難燃性立毛調人工皮革は難燃処理前の表面感を再現していたが、風合いは未処理のものより著しく粗硬化しシート表皮材に使用できるものではなかった。燃焼性は自消性を示し、フォギング値は4%、キワ付きは特に問題無いレベルであった。
比較例2
リン酸エステル系難燃剤(日華化学社製ニッカファイノンHF−53)40部と固形分40%の水系ポリウレタンエマルジョン(日華化学社製エバファンールHA−107C)50部の混合液を実施例1と同様の方法で立毛調人工皮革の裏面に塗布し、難燃性立毛調人工皮革を得た。得られた難燃性立毛調人工皮革は難燃処理前の表面感を再現しており、風合いは未処理のものとほぼ同等の柔軟性を有していたが、燃焼性は易燃性であり、フォギング値は20%、キワ付きは白い染みが目視で確認できるものであった。
本発明の難燃性立毛調人工皮革は、表面の品位および風合いを損なわず、かつ、耐光堅牢度、フォギング、耐キワ付き性の良好な難燃性立毛調人工皮革であり、鉄道車両、自動車、航空機および船舶の内装材に好適に用いられる難燃性立毛調人工皮革である。

Claims (7)

  1. 0.5デシテックス以下の極細繊維からなる不織布およびその絡合内部に付与された弾性重合体よりなり、片面に該極細繊維による立毛が形成されており、立毛が形成された面とは異なる面に難燃層が形成された難燃性立毛調人工皮革において、該難燃層が、常温で固体である難燃剤(A)、熱可塑性樹脂(B)および常温で粘度が500〜10000cpsである低粘性物質(C)からなり、該低粘稠性物質(C)が該難燃剤(A)に対して0.2〜10質量%混合されていることを特徴とする難燃性立毛調人工皮革。
  2. 常温で粘度が500〜10000cpsである低粘性物質(C)がリン原子を含有している難燃剤である請求項1に記載の難燃性立毛調人工皮革。
  3. 熱可塑性樹脂(B)が水系ポリウレタンエマルジョンからなる請求項1または2に記載の難燃性立毛調人工皮革。
  4. 難燃剤(A)が、立毛調人工皮革に対して5〜20質量%含有している請求項1〜3いずれか1項に記載の難燃性立毛調人工皮革。
  5. 熱可塑性樹脂(B)が、難燃剤(A)に対して5〜100質量%である請求項1〜4いずれか1項に記載の難燃性立毛調人工皮革。
  6. 請求項1〜いずれか1項に記載の難燃性立毛調人工皮革を用いてなる乗物用座席の上張材。
  7. 難燃剤(A)、熱可塑性樹脂(B)および常温で粘度が500〜10000cpsである低粘性物質(C)からなり、該低粘稠性物質(C)が該難燃剤(A)に対して0.2〜10質量%混合された水分散液または水溶液を0.5デシテックス以下の極細繊維からなる不織布およびその絡合内部に付与された弾性重合体よりなり、片面に該極細繊維による立毛が形成された立毛調人工皮革の立毛が形成された面とは異なる面に塗布し難燃層を形成することを特徴とする難燃性立毛調人工皮革の製造方法。
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