JP4707449B2 - 酸化インジウム粉末 - Google Patents
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このようなITO膜を製造する方法として、スパッタリング、真空蒸着、ゾル・ゲル法、クラスタービーム蒸着、PLDなどの方法が挙げられるが、中でもスパッタリング法は、大面積基板上に低抵抗な膜を比較的低温で作製できるため工業的に広く用いられている。
特許文献2には、X線回折による(222)面回折強度/(400)面回折強度比が5以上であり、平均粒径が0.1μm〜100μm、粉末形状が板状である酸化インジウム粉末が開示されている。
特許文献3には、BET表面積が、15m2/g以上、30m2/g以下、BET径と結晶子径の比が2以下、粒度分布測定より求めた一次粒子の平均粒子径が0.1μm以下である酸化インジウム粉末が開示されている。
特許文献4には、BET比表面積が15m2/g以上30m2/g以下、BET径と結晶子径の比が2以下であって、粒度分布測定により求めた一次粒子の平均粒子径が0.1μm以下、又は電子顕微鏡観察により求めた一次粒子の平均粒子径が0.03μm以上0.1μm以下である酸化インジウム粉末が開示されている。
特許文献5には、平均の長さが0.03μm〜0.3μmである針状水酸化インジウム(酸化インジウムの原料)が開示されている。
特許文献6には、(1)初期かさ密度が、0.3g/cm3〜1.0g/cm3、(2)タップかさ密度が、0.7g/cm3〜1.5g/cm3、(3)(タップかさ密度−初期かさ密度)×100/タップかさ密度で示される圧縮度が14〜80という物性のうち、(1)〜(3)の少なくとも1つを満たす酸化インジウム粉末が開示されている。
そこで本発明は、ピンホールの発生を抑えることにより、ノジュールの発生が少なくスパッタリングにおいて長く使用可能なITO焼結体を製造できる酸化インジウム粉末を提供せんとするものである。
したがって、本発明が対象とする空隙は、オープンポア(外と連通している空隙)だけで、クローズドポア(独立した空隙)は対象に含まれない。
dr=−4σcosθ/p (σ:表面張力、θ:接触角、p:圧力)
この式において、水銀の表面張力は既知であり、接触角は装置毎で固有の値を示すため、圧入した水銀の圧力から空隙容積径を算出することができる。
なお、実際には、島津製作所社製オートポア9200(最小測定可能孔径34Å)で実測することができる。
「空隙容積最高度数径」とは、水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布(チャート)において、最も空隙容積度数の高い空隙容積径、言い換えれば、最も度数の高いピークにおける最も空隙容積度数の高い空隙容積径である。
本実施形態に係る酸化インジウム粉末は、その空隙容積最高度数径が0.2μm〜0.6μm、特に0.3μm〜0.5μmの範囲にあるのが好ましい。
本実施形態に係る酸化インジウム粉末は、空隙容積径1μmの空隙容積度数(B)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/B)及び空隙容積径2μmの空隙容積度数(C)に対する前記空隙容積度数(A)の比(A/C)のいずれも1.5〜3.5、好ましくは1.5〜2.7の範囲にある。
空隙容積径2μmの空隙容積度数(C)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/C)は1.8〜2.3の範囲にあるのが好ましい。
空隙容積径3μmの空隙容積度数(D)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/D)は1.0〜3.5、特に1.3〜2.5の範囲にあるのが好ましい。
本実施形態の酸化インジウム粉末の粒度範囲は、粒度分布測定装置(マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300(日機装(株))で測定すると、Dminが0.2μm以上であるのが好ましく、また、Dmaxが80μm以下であるのが好ましい。
本実施形態に係る酸化インジウム粉末の製造方法は特に限定されるものではないが、好ましくは次に説明する方法によって製造することができる。
焼成炉としては、連続炉、バッチ炉のいずれも用いることができる。
冷却後、必要に応じてダマ状の酸化インジウムをほぐす程度に解砕してもよいし、分級によってダマを取り除くようにしてもよい。
本実施形態に係る酸化インジウム粉末は、酸化スズ粉末と混合して焼成して得られるITO膜(Indium Tin Oxide膜)を形成する際のスパッタリングターゲット原料として好適に用いることができ、ピンホールを生じないITO焼結体を製造することができる。
特に、所定の酸化スズ粉末、例えばTEM写真観察(倍率:30万倍)した時に観察される一次粒子の平均粒子経が1μm以下、好ましくは0.01μm〜0.2μmで、BET測定による比表面積が1m2/g〜20m2/g、好ましくは2m2/g〜5m2/gである酸化スズ粉末と混合してITO焼結体を製造すれば、酸化スズ粉末とより一層均一に混合処理することができ、ピンホールを発生しないITO焼結体をより一層歩留まり良く製造することができる。
また、酸化インジウム粉末、酸化スズ粉末及びイオン交換水をボールミル混合し、さらに分散剤及びバインダーを加えて混合してスラリー状にし、これを構造成形型に注入して減圧下排水して成形体とし、乾燥及び脱脂処理を行った後、焼結するようにしてITO焼結体を製造することもできる。
但し、これらの製造方法に限定されるものではない。
また、焼結は、例えば1450℃〜1650℃の温度で焼結すればよいが、この温度に限定されるものではない。焼結時間は数時間〜数十時間が一般的であるが、この時間に限定されるものではない。焼結雰囲気は特に限定されず、大気中、酸素中、不活性ガス中等で行うことができる。
なお、実施例・比較例で得た各サンプルは次の方法で評価を行なった。
粉砕した粉末の見掛け密度(AD)は、JIS K−5101に準拠して蔵持科学器械製作所製カサ比重測定器を使用して測定した。その際、いずれの粉末も粉砕してから3時間以内に測定を開始した。
酸化スズのTEMは、無作為に粒子200個を抽出し、それぞれTEM写真観察(倍率:30万倍)にてTEM径を測定し、その平均値を求めた。
実施例及び比較例で得たITO焼結成形体を平坦なガラス板上に置き、成形体とガラス板との間に生じた隙間の最大幅を隙間ゲージにて測定し、5枚の平均値を算出した。
対数微分空隙容積分布の測定は、水銀圧入ポロシメータ(島津製,オートポア9200:最小測定可能孔径34Å)を用いて行った。
測定の諸条件は上記水銀圧入ポロシメータの通常の使用方法に従ったが、測定開始前の水銀圧入ポロシメータのステム部分(測定セルの毛細管部分)に封入された水銀量を100%とした時に測定後のステム部分の水銀量が20%〜90%の範囲となるように、測定に用いる酸化インジウムの量を調整した。この範囲外となった場合は、再測定を行った。
実施例及び比較例で得たITO焼結成形体について、任意に選んだ10視野について実体顕微鏡(倍率100倍)で観察し、50μm以上の径を有するピンホールの有無を評価した。
インジウムイオン濃度3.4mol/Lの硝酸インジウム溶液をオイルバスにて70℃〜80℃に制御すると共に、攪拌しながら28%アンモニア水を55分間かけて添加してpH7.5に調整し、その後、30分間攪拌を続けて水酸化インジウムを析出させスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにて固液分離して固体分(ケーキ)を回収し、これを純温水にて十分洗浄した後、140℃の雰囲気にて22時間乾燥させた。乾燥後、SiC焼成容器(内容量300mm×300mm×200mm)に入れて初温40℃から昇温速度5.0℃/minで750℃まで昇温し、750℃を150分間保持するようにして第1焼成を実施した。
得られた粉末をSiC焼成容器に入れたまま40℃まで冷却した後、目開き1mmφのハンマーミル(粉体供給量7.4kg/min、回転数5800rpm)を用いて粉砕した。粉砕して得られた粉末の見掛け密度(AD)は0.29g/cm3であった。
次に、粉砕した粉末を、SiC焼成容器(内容量300mm×300mm×200mm)に入れ、初温40℃から昇温速度4.5℃/minで1175℃まで昇温した後、1175℃を180分間保持するようにして第2焼成を実施し、得られた粉末をSiC焼成容器に入れたまま品温40℃まで冷却して酸化インジウム粉末を得た。
得られた酸化インジウム粉末について上記要領で対数微分空隙容積分布を測定した。対数微分空隙容積分布を図1に、空隙容積最高度数径、A〜Fの空隙容積度数を表1に示す。
こうして得られたITO焼結成形体について観察すると、すべてのITO焼結成形体において50μmφ以上のピンホールは0であり、割れ不良率は0%であり、上記要領で反りを測定するとITO焼結成形体5枚の平均値で0.3mmであった。
第1焼成後に行うハンマーミル粉砕における粉体供給量を6.6kg/minに変えた以外は、実施例1と同様に酸化インジウム粉末を得た。また、得られた酸化インジウムを用いて実施例1と同様に5枚のITO焼結成形体を得た。なお、第1焼成後に粉砕して得られた粉末の見掛け密度(AD)は0.32g/cm3であった。
対数微分空隙容積分布を図2に、空隙容積最高度数径及びA〜Fの空隙容積度数を表1に示す。
また、得られたITO焼結成形体について観察すると、すべてのITO焼結成形体において50μmφ以上のピンホールは0であり、割れ不良率は0%であり、上記要領で反りを測定するとITO焼結成形体5枚の平均値で0.2mmであった。
第1焼成後に行うハンマーミル粉砕における粉体供給量を5.4kg/minに変えた以外は、実施例1と同様に酸化インジウム粉末を得た。また、得られた酸化インジウムを用いて実施例1と同様に5枚のITO焼結成形体を得た。第1焼成後に粉砕して得られた粉末の見掛け密度(AD)は0.35g/cm3であった。
対数微分空隙容積分布を図3に、空隙容積最高度数径及びA〜Fの空隙容積度数を表1に示す。
また、得られたITO焼結成形体について観察すると、すべてのITO焼結成形体において50μmφ以上のピンホールは0であり、割れ不良率は20.0%であり、上記要領で反りを測定するとITO焼結成形体5枚の平均値で0.4mmであった。
第1焼成後に行うハンマーミル粉砕における粉体供給量を6.8kg/minに変え、第2焼成の温度を1080℃にした以外は、実施例1と同様に酸化インジウム粉末を得た。また、得られた酸化インジウムを用いて実施例1と同様に5枚のITO焼結成形体を得た。第1焼成後に粉砕して得られた粉末の見掛け密度(AD)は0.31g/cm3であった。
対数微分空隙容積分布を図4に、空隙容積最高度数径及びA〜Fの空隙容積度数を表1に示す。
また、得られたITO焼結成形体について観察すると、すべてのITO焼結成形体において50μmφ以上のピンホールは0であり、割れ不良率は20.0%であり、上記要領で反りを測定するとITO焼結成形体5枚の平均値で0.5mmであった。
第1焼成後に行うハンマーミル粉砕における粉体供給量を6.7kg/minに変え、第2焼成の温度を1230℃にした以外は、実施例1と同様に酸化インジウム粉末を得た。また、得られた酸化インジウムを用いて実施例1と同様に5枚のITO焼結成形体を得た。第1焼成後に粉砕して得られた粉末の見掛け密度(AD)は0.32g/cm3であった。
対数微分空隙容積分布を図5に、空隙容積最高度数径及びA〜Fの空隙容積度数を表1に示す。
また、得られたITO焼結成形体について観察すると、すべてのITO焼結成形体において50μmφ以上のピンホールは0であり、割れ不良率は20.0%であり、上記要領で反りを測定するとITO焼結成形体5枚の平均値で0.4mmであった。
インジウムイオン濃度3.4mol/Lの硝酸インジウム溶液をオイルバスにて70℃〜80℃に制御すると共に、攪拌しながら28%アンモニア水を55分間かけて添加してpH7.5に調整し、その後、30分間攪拌を続けて水酸化インジウムを析出させスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにて固液分離して固体分(ケーキ)を回収し、これを純温水にて十分洗浄した後、140℃の雰囲気にて22時間乾燥させた。乾燥後、SiC焼成容器(内容量300mm×300mm×200mm)に入れて初温40℃から昇温速度5.0℃/minで1175℃まで昇温し、1175℃を150分間保持するようにして焼成を実施した。
得られた粉末をSiC焼成容器に入れたまま40℃まで冷却した後、目開き1mmφのハンマーミル(粉体供給量6.4kg/min、回転数5800rpm)を用いて粉砕した。粉砕して得られた粉末の見掛け密度(AD)は0.39g/cm3であった。
また、得られた酸化インジウム粉末について上記要領で対数微分空隙容積分布を測定した。対数微分空隙容積分布を図6に、空隙容積最高度数径及びA〜Fの空隙容積度数を表1に示す。
こうして得られたITO焼結成形体について観察すると、ITO焼結成形体において50μmφ以上のピンホールが数箇所見られ、割れ不良率は60.0%であり、上記要領で反りを測定するとITO焼結成形体5枚の平均値で1.3mmであった。
ハンマーミル粉砕における粉体供給量を6.5kg/minに変え、焼成温度を1030℃にした以外は、比較例1と同様に酸化インジウム粉末を得た。また、得られた酸化インジウムを用いて実施例1と同様に5枚のITO焼結成形体を得た。粉砕して得られた粉末の見掛け密度(AD)は0.54g/cm3であった。
対数微分空隙容積分布を図7に、空隙容積最高度数径及びA〜Fの空隙容積度数を表1に、第1焼成後の粉末の見掛け密度(AD)、得られたITO焼結成形体の割れ不良率及び反りの結果を表2に示す。
また、得られたITO焼結成形体について観察すると、ITO焼結成形体において50μmφ以上のピンホールが数箇所見られ、割れ不良率は80.0%であり、上記要領で反りを測定するとITO焼結成形体5枚の平均値で1.8mmであった。
なお、実施例及び比較例を比較すると、比較例1,2における粉砕後の見掛け密度(AD)は、いずれの実施例よりも大きいことから、少なくとも粉砕後の見掛け密度(AD)が酸化インジウム粉末の空隙容積分布に影響しているものと推察される。
Claims (8)
- 水銀圧入ポロシメータにより測定される対数微分空隙容積分布において、空隙容積最高度数径が0.2μm〜0.6μmに存在し、且つ空隙容積径1μmの空隙容積度数(B)及び空隙容積径2μmの空隙容積度数(C)のそれぞれに対する前記空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/B)及び(A/C)がいずれも1.5〜3.5の範囲にあることを特徴とする酸化インジウム粉末。
- 空隙容積径3μmの空隙容積度数(D)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/D)も含めて、上記(A/B)、上記(A/C)及び前記(A/D)の平均値が2.0〜3.0の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の酸化インジウム粉末。
- 空隙容積径1μmの空隙容積度数(B)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/B)が1.8〜2.8の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化インジウム粉末。
- 空隙容積径3μmの空隙容積度数(D)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/D)が1.0〜3.5の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化インジウム粉末。
- 空隙容積径0.1μmの空隙容積度数(E)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/E)が15〜1000の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化インジウム粉末。
- 空隙容積径0.05μmの空隙容積度数(F)に対する空隙容積最高度数径の空隙容積度数(A)の比(A/F)が15〜1000の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化インジウム粉末。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の酸化インジウム粉末と酸化スズとを混合し加圧成形し焼成してなるITO焼結体。
- 請求項7に記載のITO焼結体をターゲットしてスパッタリングしてなるITO膜。
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