JP4707443B2 - 電磁ソレノイドおよびその部品ならびに製造方法 - Google Patents

電磁ソレノイドおよびその部品ならびに製造方法 Download PDF

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この発明は、油圧機器に使用される比例ソレノイド等のソレノイドアクチュエータやソレノイドバルブに適用される、電磁ソレノイド用部品およびその製造方法に関するものである。
従来の電磁ソレノイドとして例えば特許文献1などがあるが、このものはボディ部分すなわちコイルケース、その取付部および固定子をそれぞれ別の部品で製造し、これらの部品を溶接や圧入等により組み立てていた。
図6に示す従来例は、取付部となるフランジ50、固定子51およびコイルケースとなる外筒部52をプレスにより組み立てている。
図7に示す別の従来例は、フランジ50、固定子51および外筒部52を銅(Cu)を用いたろう付け溶接により接合されている。
実開平5−45356号公報
上記従来例によれば、加工精度の確保は容易であるが、複数の部品を溶接や圧入などにより加工・組立する工程が別途必要である。このため、部品点数が増加し、組立作業工数が増大し、大型化かつ高価になった。さらに電磁ソレノイドに仕上がった時の電流−推力特性が必ずしも均一とはならないという欠点があった。
したがって、この発明の目的は、部品点数、加工工数および組立工数を削減し、小型かつ安価にできるとともに、特性の均一化を図ることができる電磁ソレノイド用部品およびその製造方法を提供することである。
この発明の電磁ソレノイド用部品は、底部を有する外筒部と、前記外筒部内の前記底部の中心に配置された固定子と、前記外筒部外の前記底部に取付けられたフランジと、前記外筒部と同心に前記固定子に立設された内筒部と、この内筒部内に摺動自在に収納されたプランジャと、外周に巻装されたコイルを有し前記外筒部と前記内筒部との間に嵌装されたボビンと、前記外筒部の前記底部と反対側に前記内筒部の端部に被さるように設けられたプレートとを備えた電磁ソレノイドに使用する、前記外筒部と前記固定子と前記フランジと前記内筒部からなる部品であって、
前記外筒部と前記固定子と前記フランジとを同一材料により一体形成し、前記内筒部を上方固定子と非磁性体製の筒状体とで構成し、
前記固定子の先端の外周および前記上方固定子の一端の外周にそれぞれ円錐形状の斜面を形成し、前記筒状体の一端が前記固定子の前記斜面に嵌合しかつ前記上方固定子の前記斜面が前記筒状体の他端に嵌合するように、前記筒状体の両端の内周面にそれぞれ円錐形状の斜面を形成しており、前記筒状体の前記一端の前記斜面と前記固定子の前記斜面との間に介在されて両斜面間を接合するろう材を有し、前記上方固定子の前記斜面と前記筒状体の前記他端の前記斜面との間に介在されて両斜面間を接合する別のろう材を有するものである。
この発明の電磁ソレノイド用部品の製造方法は、上記電磁ソレノイド用部品の製造方法であって、前記外筒部、前記固定子および前記フランジを冷間鍛造により一体成形する第1の工程と、前記筒状体および前記上方固定子を準備し、前記固定子に前記斜面を形成した状態でその斜面に前記筒状体の前記一端の斜面を前記ろう材を介して嵌合するとともに、前記筒状体の前記他端の斜面に前記上方固定子の前記斜面を別の前記ろう材を介して嵌合し、前記ろう材により前記筒状体と前記固定子とのろう付け接合および前記筒状体と前記上方固定子とのろう付け接合を行う第2の工程とを含むものである。
上記構成において、前記外筒部、前記固定子および前記フランジの成形後、応力ひずみを除去可能に加熱徐冷する。
この発明の電磁ソレノイド用部品およびその製造方法によれば、外筒部と固定子とフランジとを同一材料により一体形成してボディを形成したため、部品点数を削減でき、加工工数および組立作業が削減できるのでコストを低減できるとともに、小型化も図れる。また外筒部、固定子およびフランジが同一材料になるため金属材料組織の均一化および安定化により、磁束密度が増加しソレノイドの推力特性も安定することができる。
電磁ソレノイド用部品の製造方法において、非磁性体製の筒状体と固定子との接合をろう付け接合により行う場合、外筒部と固定子とフランジを冷間鍛造により一体形成したときに固定子内に生じる金属組織の応力集中やひずみを、加熱工程において加熱することにより緩和し除去することができ、これによりフランジ等一部の欠損や破損の防止になる。
この発明の一実施の形態の比例ソレノイドアクチュエータを図1から図5により説明する。図1は全体構造を示している。このアクチュエータは、主にボディ1、ボビン2、プランジャ3、プレート4により構成されている。
ボディ1は、底部6を有する外筒部5と、底部6の中心に配置され中心に挿通孔7を形成した固定子8と、外筒部5の底部6に取付けられたフランジ9とで構成されている。ボディ1は、後述のように、外筒部5と固定子8とフランジ9とを同一材料により一体形成した部品をなしている。29はフランジ9に形成した取付孔である。
固定子8には内筒部10が外筒部5と同心に設けられている。内筒部10は固定子8に連接する筒状体11と、筒状体11に連接する上方固定子12からなり、筒状体11は非磁性体で形成され、固定子8と上方固定子12は磁性体で形成されている。筒状体11は両端が凹形の円錐形状に形成されて内向きのテーパ部21、22を形成し、これに対応して固定子8および上方固定子12の端部が凸形の円錐形状に形成され、テーパ部21、22に相接合されてプランジャ3の比例制御を可能にしている。上方固定子12の内周にはプランジャ3のスラスト軸受けとなるスリーブ16が嵌装されている。27は固定子8の外面に形成された中央突出部、28はその凹部、30は固定子8の内面に形成した凹部である。
ボビン2は外周に巻装されたコイル13を有し、その外周が樹脂などの絶縁外装材40で被覆されている。このボビン2は外筒部5と内筒部10との間に嵌装されている。この場合、固定子8に緩衝部材となるOリング24が嵌められ、ボビン2と外筒部5の底部6との間に介在されている。
プランジャ3は、内筒部10内に通され、スリーブ16に摺動自在に支持されている。プランジャ3は、上端部に油溜部36を凹設し、油路18が軸方向に貫通している。またプランジャ3の下端部中心に円錐形の凹部を形成し、挿通孔7に挿通された可動ロッド14の先端の円錐形の突部が当接状態に嵌合し、プランジャ3と連動するように設けられている。一方固定子8の上面にはプランジャ3の吸い付き防止用のワッシャ19が設けられ、可動ロッド14を挿通する遊嵌孔20が形成されている。内筒部10の上端開口は非磁性体で形成したストッパ17を液密部材となるOリング26を介して嵌着して閉じている。ストッパ17はプレート4に支持される。そして可動ロッド14が外部からばね(図示せず)により付勢され、プランジャ3をストッパ17に向けて押動している。
プレート4は外筒部5の底部6と反対側を塞ぎ内筒部10の端部に被さる。外筒部5の端部に内周溝38を形成し、プレート4の周縁を内周溝38に嵌合している。プレート4の内面には内筒部10の上端部を嵌合させる凹部35を形成している。この場合、内筒部10に緩衝部材となるOリング23が嵌められ、ボビン2の上面とプレート4の下面との間に介在されている。
図2は部品としてのボディ1を示し、図3はそのボディ1の製造方法を示している。まず、図3(a1)、(a2)は必要に応じて潤滑処理された磁性体の円柱状の素材、例えば軟鉄を示している。図3(b1)、(b2)はその一端を冷間鍛造により例えば押出し圧力315kgf/mmで後方押出しした状態である。これにより外筒部5の一部が形成される。図3(c1)、(c2)は一端をさらに冷間鍛造により例えば押出し圧力228kgf/mmで後方押出しした状態である。これにより外筒部5と固定子8がほとんど完成状態に形成される。図3(d1)、(d2)は素材の他端側を冷間鍛造により押出し、外筒部5の底部6と、フランジ9と、中央突出部27とを形成している。図3(e1)、(e2)はフランジ9を外筒部5の両側に略三角形状に突出するように加工し、かつ取付孔29を形成している。
なお、上記製造方法において、図3(b1)、(b2)の工程を省略し、図3(a1)から図3(d1)の形状を冷間鍛造により直接形成することも可能である。
この後、固定子8の両端に凹部28、30を形成し、凹部28、30間に挿通孔7を形成するとともに、固定子8の内端を円錐形状に加工し、さらに外筒部5の端部に内周溝38を形成すると図2に示すボディ1が形成される。なお、図3(d1)または(e1)の状態から固定子8の内端を円錐形状に加工して、次に述べる筒状体11および上方固定子12を例えば銅(Cu)を用いてろう付け溶接し、その後上方固定子12と筒状体11の内周面を加工しながら凹部30を形成し、その前または後に凹部28や挿通孔7を形成してもよい。
内筒部10の上方固定子12と固定子8は軟鉄を用い、筒状体11はステンレスや銅合金などの非磁性体を用い、ろう付けに使用する銅(Cu)が溶ける温度で上方固定子12と固定子8の軟鉄が溶けない温度例えば1080℃で接合する。この際、固定子8を含む部品は外筒部5およびフランジ9と冷間鍛造により一体形成されているため、この部品を例えば930℃以上で加熱し30分間程度徐冷することにより一体形成に伴う応力ひずみを除去することができる。
図4は電磁ソレノイドのコイル13に接続部32を介してリード線31を接続し、リード線31の外端部にコネクタ33を設けた状態を示し、コネクタ33を通して電力を供給することにより、電磁ソレノイドを作動することができる。
図1に示すソレノイドアクチュエータの動作は、つぎのとおりである。コイル13に電流を流すことにより、例えばボディ1の外筒部5→プレート4→上方固定子12→プランジャ3→ボディ1の固定子8→底部6の磁路が形成される電磁石となり、プランジャ3は固定子8に吸引され、これにより可動ロッド14は前方へ押し出される。この場合、筒状体11は非磁性体であり、比例ソレノイドアクチュエータではこの筒状体11とこれに連接する固定子8および上方固定子12の接合部分となるテーパ部21、22の形状により磁路の大きさが制限されるため、コイル13に流れる電流の大きさとプランジャ14の推力が比例関係となる。なお非磁性体により形成したストッパ17およびワッシャ19は、コイル13の通電時および電流を切ったときの残留磁気によりプランジャ3が固定子8またはプレート4に密着するのを防止する。
図5は、電流(A)に対する可動ロッドの推力(N)のI−F曲線である。
Q1はこの実施の形態の特性曲線、Q2は図6または図7を用いた従来品の特性曲線である。特性曲線Q2は推力のばらつき幅が大きいのに対して、特性曲線Q1はボディ1の一体化によりボディ1の材料組織が均一化し磁束密度が安定した結果、推力のばらつき幅が小さくなっていることがわかる。
なお、この発明の電磁ソレノイドをバルブ装置として使用する場合、可動ロッド14でバルブを作動するか、可動ロッド14を外して挿通孔7をバルブとなるプランジャ3で開閉する構成とすることができる。
この発明の一実施の形態の断面図である。 そのボディの断面図である。 (a1)〜(e1)はボディの製造工程を示す断面図、(a2)〜(e2)は平面図である。 電磁ソレノイドの外観斜視図である。 電磁ソレノイドの電流に対する推力の特性図である。 第1の従来例の断面図である。 第2の従来例の断面図である。
符号の説明
1 ボディ
2 ボビン
3 プランジャ
4 プレート
5 外筒部
6 底部
8 固定子
9 フランジ
10 内筒部
11 筒状体
12 上方固定子
13 コイル


Claims (3)

  1. 底部を有する外筒部と、前記外筒部内の前記底部の中心に配置された固定子と、前記外筒部外の前記底部に取付けられたフランジと、前記外筒部と同心に前記固定子に立設された内筒部と、この内筒部内に摺動自在に収納されたプランジャと、外周に巻装されたコイルを有し前記外筒部と前記内筒部との間に嵌装されたボビンと、前記外筒部の前記底部と反対側に前記内筒部の端部に被さるように設けられたプレートとを備えた電磁ソレノイドに使用する、前記外筒部と前記固定子と前記フランジと前記内筒部からなる部品であって、
    前記外筒部と前記固定子と前記フランジとを同一材料により一体形成し、前記内筒部を上方固定子と非磁性体製の筒状体とで構成し、
    前記固定子の先端の外周および前記上方固定子の一端の外周にそれぞれ円錐形状の斜面を形成し、前記筒状体の一端が前記固定子の前記斜面に嵌合しかつ前記上方固定子の前記斜面が前記筒状体の他端に嵌合するように、前記筒状体の両端の内周面にそれぞれ円錐形状の斜面を形成しており、前記筒状体の前記一端の前記斜面と前記固定子の前記斜面との間に介在されて両斜面間を接合するろう材を有し、前記上方固定子の前記斜面と前記筒状体の前記他端の前記斜面との間に介在されて両斜面間を接合する別のろう材を有する電磁ソレノイド用部品。
  2. 請求項1記載の電磁ソレノイド用部品の製造方法であって、前記外筒部、前記固定子および前記フランジを冷間鍛造により一体成形する第1の工程と、前記筒状体および前記上方固定子を準備し、前記固定子に前記斜面を形成した状態でその斜面に前記筒状体の前記一端の斜面を前記ろう材を介して嵌合するとともに、前記筒状体の前記他端の斜面に前記上方固定子の前記斜面を別の前記ろう材を介して嵌合し、前記ろう材により前記筒状体と前記固定子とのろう付け接合および前記筒状体と前記上方固定子とのろう付け接合を行う第2の工程とを含む電磁ソレノイド用部品の製造方法。
  3. 前記外筒部、前記固定子および前記フランジの成形後、応力ひずみを除去可能に加熱徐冷する請求項2記載の電磁ソレノイド用部品の製造方法。
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