JP4705716B2 - オリゴヌクレオチドの脱保護法 - Google Patents
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Description
関連出願の引用
本願は、1999年2月5日出願の米国仮出願第60/118,575号に基づく優先権を主張する。
【0002】
【技術分野】
本明細書は、オリゴヌクレオチドの合成方法に関する。特に、本明細書は、純度が大幅に向上し、収率の向上した粗オリゴヌクレオチド産物をもたらすオリゴヌクレオチドの脱保護法に関する。
【0003】
【背景技術】
オリゴヌクレオチドは数多くの生物学的用途に計り知れない有用性をもつ。例えば、オリゴヌクレオチド配列は相補的オリゴヌクレオチド標的と二本鎖を形成し、ゲノム研究並びに病原遺伝子に関する臨床診断用途で分子生物学的プローブとして使用できる。この用途では、検出すべき核酸を含む材料をオリゴヌクレオチドプローブと接触させ、その相補的核酸配列と二本鎖を形成させる。そして、その二本鎖は様々な分析法を使用して検出される。
【0004】
オリゴヌクレオチドは、様々なポリメラーゼ用途、例えばポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)等のプライマーとして有用である。PCRにおいて、オリゴヌクレオチドプライマーは、酵素及びモノヌクレオチドの存在下、一本鎖鋳型核酸フラグメントを含むサンプルに添加される。プライマーで開始すると、酵素は、鋳型核酸に相補的である核酸鎖を築く。反応を数回連続して実施し、各サイクルで新たに構築された鎖を増幅する。
【0005】
オリゴヌクレオチドは、ある疾患の病因性又は望しくないタンパク質の競合的阻害剤として作用するオリゴヌクレオチド配列を設計するための、コンビナトリアルな発見手段としても使用される。「アプタマーアプローチ(aptamer approach)」としても知られているこの用途において、所望の特定のタンパク質の、何百万ものランダムに合成されたオリゴヌクレオチドのランダムプールに存在する特定のオリゴヌクレオチド配列との高い親和性を測定する。この方法は、トロンビン等の様々なタンパク質の新規なオリゴヌクレオチド阻害剤を開発する助けとなる。
【0006】
オリゴヌクレオチドは、メッセンジャーRNAレベルで(「アンチセンス」)又はDNAレベルで(「アンチジーン」もしくは「三重鎖」)遺伝子発現を調節する能力を有することが発見された。多数のオリゴヌクレオチド候補の効率が、今日、臨床評価中である。
オリゴヌクレオチドの有意義な治療、診断及び研究有用性のために、それらを大量に容易に、速やかに低コストで調製する必要がある。固体支持体又は基材上でのオリゴヌクレオチドの調製には、亜リン酸トリエステル及びH−ホスホネート化学が一般に使用される。亜リン酸トリエステル化学を用いる大規模商業的DNAシンセサイザーによって、数キログラムのオリゴヌクレオチドの生産が可能となった。
【0007】
ホスホルアミダイト化学の使用による固相上でのオリゴヌクレオチドの大規模合成に使用されるヌクレオシドは、オリゴヌクレオチド合成中の副産物の形成を防止する適当な基で保護されている。モノマー形成部分における核酸塩基上に見られる、反応性環外アミン基は、一般にベンゾイル、イソブチリル、フェノキシアセチル、及びアセチル保護基で保護される。一方、リン酸基を通常2−シアノエチルホスホルアミダイトとして保護する。オリゴヌクレオチド合成の完成の後、そのような保護基を、水酸化アンモニウムの濃縮溶液による処理によって容易に除去する。
【0008】
オリゴヌクレオチド合成を、適当に保護した5’−O−ジメトキシトリチレート化ヌクレオシドを基材に結合することによって開始する。保護されたヌクレオシドの3’−ヒドロキシル基を、コハク酸エステル結合を通して基材に結合する。最も一般的に使用される基材は、長鎖ガラス等の無機材料又はポリスチレン等の有機支持体である、しかし、他の支持体、例えば、ポリアミド、セルロース、シリカゲル、及びポリエチレングリコール等も、オリゴヌクレオチドの固相合成に使用される。
【0009】
オリゴヌクレオチドは、5’−ジメトキシトリチレート化した−3’−ヌクレオシドホスホルアミダイトを、支持体上に負荷した第1のヌクレオシドの非マスクの5’−ヒドロキシル基へ逐次的に付加することによって組みたてる。この付加を、テトラゾール又はジシアノイミダゾール等の温和な酸性触媒によって触媒する。次に、対応する亜リン酸トリエステル(「PIII」)ヌクレオチド間結合を、より安定なリン酸トリエステル(「PV」)へ、ヨウ素又はペルオキシドでの酸化によって変換する。それら(5’−ヒドロキシル基)を対応するエステルへ変換することによる、任意の未反応の5’−ヒドロキシル基の「キャッピング」を、酢酸無水物を含むキャッピング試薬に少しさらすことによって実施する。次に、温和な酸性条件下で、新しく付加されたヌクレオシドから5’−ジメトキシトリチル基を除去することによって、5’−ヒドロキシル基を生じ、カップリングサイクルを完成する。この方法を使用して、各カップリング段階において99%より大きいカップリング効率を達成できる。オリゴヌクレオチド合成の終了に向かって、5’末端の末端ヌクレオチドのジメトキシトリチル基を、インタクトなままとするか(「トリチル−オン」)又は切断し遊離の5’−末端ヒドロキシル基を得る(「トリチル−オフ」)。5’−トリチル基を親油性精製ハンドルとして使用して、より短い及び非トリチル化オリゴヌクレオチド種から、トリチル基を有する全長オリゴヌクレオチドを、逆相HPLCによって精製しうる。
【0010】
オリゴヌクレオチド合成の完成後、核酸塩基及びリン酸骨格から保護基を除去し、さらに、コハク酸エステル結合をアルカリ条件下で切断し、基材からオリゴヌクレオチドを開放する。これを水酸化アンモニウムの濃縮溶液で基材を処理することによって達成する。この段階は通常室温で約24時間又は55℃で約6時間かかる。
モノヌクレオチドホスホルアミダイトの順次進行のカップリングに関係する主要な問題の一つは、オリゴヌクレオチド合成中の短い欠失配列の形成である。望ましくない欠如配列のこの集団(「n−1」「n−2」等)は、ホスホルアミダイトの100%より小さいカップリング効率、不完全なキャッピング及び酸化又は次のカップリングサイクルの開始前の5’−ヒドロキシル基の部分的な非マスキングに起因する。
【0011】
いわゆる「n+1」又は「n+2」オリゴヌクレオチド不純物がしばしば観察されるが解決するよう取り組まれておらず、HPLCカラム上で主オリゴヌクレオチドピークの直後に溶出が見られる。これらの望ましくない不純物は、基材から切断される総粗産物の6%まで含まれることがある。これらの不純物の性質及び原因についてほとんど知られていない。主生産物に接近しているこれらの不純物の溶出によって、精製オリゴヌクレオチドの単離が困難で時間を消費する作業となっており、結果的に全長の純粋な産物が十分に回収できない。
【0012】
前記考察のように、オリゴヌクレオチド合成の分野において、改良がなおあり得、かつ望ましい。特に、高収率のより純粋な粗産物を生じるオリゴヌクレオチドの合成方法が必要である。そのような方法は、長い合成時間を必要としないのが理想的である。好ましくは、そのような方法は、使用のためにまた経済的である。これら及び他の関連事項を後記でより詳細に記載する。
【0013】
図面の簡単な説明
図1は、HPLCによって分離し260nmで検出した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチドT10G10混合物のクロマトグラムである。
図2は、HPLCによって分離し260nmで検出した、水酸化アンモニウムで処理する前に、乾燥アセトニトリル中の20%ジエチルアミンで処理した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチドT10G10混合物のクロマトグラムである。
図3は、HPLCによって分離し260nmで検出した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチド5’−NH2−(CH2)6−C7T14混合物のクロマトグラムである。
図4は、HPLCによって分離し260nmで検出した、水酸化アンモニウムで処理する前に、20%ジエチルアミンで処理した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチド5’−NH2−(CH2)6−C7T14混合物のクロマトグラムである。
【0014】
【発明の概要】
本発明は、オリゴヌクレオチドの精製方法に関連し、その方法は、
オリゴヌクレオチドがリン酸保護基を含む、基材に結合したオリゴヌクレオチドを準備し、
基材からオリゴヌクレオチドを脱離させずに、オリゴヌクレオチドからリン酸保護基を切断する試薬と、オリゴヌクレオチドを接触させ、
切断したリン酸保護基から、基材に結合したオリゴヌクレオチドを単離し、
基材からオリゴヌクレオチドを切断すること
を含む。
【0015】
好ましくは、リン酸保護基は、β、例えば2−シアノエチルリン酸等を受けることのできる基である。該試薬は、β脱離によってオリゴヌクレオチドからリン酸保護基を切断する。好ましくは、該試薬は、式R−N−R1R2(式中、R、R1 及びR2は、独立に、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリル、アリール、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリルオキシ、アリールオキシであり、それらは、1〜20個の炭素原子を含み得る)を有するアミンを含む。
【0016】
特に、本発明は、オリゴヌクレオチドの精製方法に関連し、その方法は、
リン酸保護基が2−シアノエチルリン酸である、基材に結合したリン酸保護基を含むオリゴヌクレオチドを準備し、
該オリゴヌクレオチドをジエチルアミンと接触させ、基材からオリゴヌクレオチドを脱離させずに、オリゴヌクレオチドからリン酸保護基を切断し、
切断したリン酸保護基から基材に結合したオリゴヌクレオチドを単離し、
基材に結合したオリゴムクレオチドを水酸化アンモニウムと接触させ、基材からオリゴヌクレオチドを切断すること
を含む。
【0017】
【発明を実施するための形態】
手動で又は自動DNAシンセサイザーを使用して、オリゴヌクレオチドを典型的には固体支持体又は基材上に組みたて、アルカリ脱保護条件下、基材から開放する。保護基をオリゴヌクレオチドから除去すること、及びオリゴヌクレオチドを基材から分離することの両方のために水酸化アンモニウム等のアルカリを使用する、標準的な脱保護段階中に、リン酸骨格を保護するために一般に使用される多くの基、例えば、2−シアノエチル等は、反応性中間体を生産する。そのような中間体は、不可逆的に核酸塩基と反応することによってオリゴヌクレオチドを修飾し、より高分子量のオリゴヌクレオチド副産物を形成することが観察されている。理論的に側鎖の分枝は、これらのより高分子量の種を生じることができる一方、塩基組成分析はこれらの仮説を支持しない(後記の実施例1を参照)。
【0018】
オリゴヌクレオチド合成のためのホスホルアミダイト法において、リン酸保護のために使用される最も一般的な保護基は、2−シアノエチル保護基である。この基を、濃縮した水酸化アンモニウム処理によって核酸塩基上の保護基と共に除去する。これらの条件下、2−シアノエチル基はβ脱離を受けて、アクリロニトリルを放出する。アクリロニトリルは、核酸塩基を不可逆的にアルキル化することのできる強力な発癌物質であることが示された。したがって、リン酸脱保護から放出されるアクリロニトリルは、本質的に、オリゴヌクレオチドにおける核酸塩基と反応することができ、その望ましくない修飾をもたらすことがあり得る。標準的なオリゴヌクレオチド脱保護プロトコルは、水酸化アンモニウム溶液を、オリゴヌクレオチドを有する基材に比較的長時間(6−24時間)さらすことを含むので、アクリロニトリルは、溶液においてこの時間に、容易に核酸塩基と反応して、観察されたn+1及びn+2オリゴヌクレオチド修飾をもたらし得る。
【0019】
このことは、特に基材上でのオリゴヌクレオチドの大規模合成に当てはまり、その場合、経済的及び実際的な理由で、小容量の溶媒を使用し、その小容量によって、脱保護溶液において高濃度のアクリロニトリルという結果にすぐになり得ることから、それによって、核酸塩基の不可逆的な修飾が促進される。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)においてしばしばメインのオリゴヌクレオチドピークに接近して溶出するこれらの高分子量の種によって、多量のオリゴヌクレオチドがこれらの接近して溶出する不純物のために不純粋のままである場合、オリゴヌクレオチドの精製が非常に困難かつ非効率的な段階となる。したがって、脱保護中に、アクリロニトリルをオリゴヌクレオチドにさらすことを減少させることのできる方法は、核酸塩基の修飾を最小化することができる。
【0020】
我々は、基材に結合したオリゴヌクレオチドを、迅速かつ選択的にリン酸保護基を除去するが、オリゴヌクレオチドが基材に繋留したままであることのできる試薬と接触させることによって、このことが達成できることを見出した。容易に、試薬溶液中のアクリロニトリルを速やかに吸い上げることができ、一方、オリゴヌクレオチドは基材に結合したままであり、それによって、核酸塩基をアクリロニトリルにさらすことを最小化することができることを、このことによって確保する。アクリロニトリル含有試薬溶液を除去した後、次に、該基材を濃縮した水酸化アンモニウムで処理し、基材からオリゴヌクレオチドを開放し、同時に他の保護基を除去することができる。
【0021】
「オリゴヌクレオチド」は、標準的及び修飾した両方のオリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、オリゴプリン、オリゴピリミジン、及びそれらの類似物又は組合せを含む。例は、通常の及び修飾したDNA、RNA、及びそれらの組合せである。オリゴヌクレオチドは、塩基、例えば、水素結合又は/及びスタッキングのできる共通のヌクレオシドプリン又はピリミジン塩基等を含み得、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル又は置換したプリン又はピリミジン塩基として選択されることができる。そのような塩基は、通常、プリンの9位で糖に結合しているが、7位でも結合し得る。
【0022】
ピリミジンにおいて、糖は、塩基の1位で結合する。置換塩基は、5−メチルシトシン、6−チオグアニン、ニトロインドール、8−アジドアデニン、8−アミノアデニン、8−メルカプトアデニン、8−アザグアニン、8−デアザグアニン、5−フルオロウラシル、ジアミノプリンを含むが必ずしもこれらに限定されない。糖は、ペントース、ヘキソース、テトロース、トリオースを含む。天然の糖は、β−D−リボフラノース、3’又は2’−デオキシリボフラノース又はL−糖等のような非天然の糖を含む。グリコシド結合は、通常、天然に存在するβ−アノマー形態であるが、グリコシド結合についてα−アノマー配置を含み得る。修飾した糖は、誘導体化したβ−D−リボフラノシル、3’/2’−デオキシβ−リボフラノシル、コンフォメーション的に制限された糖及び炭素環式糖を含むが必ずしもこれらに限定されない。これらの誘導体を調製するために使用される方法は、当業者に周知である。
【0023】
ホスホラミダイト化学によるオリゴヌクレオチドの大規模合成において使用されるヌクレオシドは、通常、適当な基で保護され、オリゴヌクレオチド合成中の副産物の形成を防止する。モノマー形成部分における核酸塩基に見出される反応性環外アミン基は、一般的に、ベンゾイル、イソブチリル、フェノキシアセチル、及びアセチル保護基で保護されているが、一方、リン酸保護基は、通常、2−シアノエチルホスホラミダイトとして保護されている。さらに、β脱離を受けて、オリゴヌクレオチドにおける核酸塩基を有力に修飾することができる可能な反応性中間体を生じる多くの他の利用可能なリン酸保護基がある(Ravikumar, V. T.; Cheruvallath, Z. S. & Cole, D. L.(1997), Nucleosides & Nucleotides vol. 16(7-9)1709-1712; Beaucage, S. L.& Iyer, R. P. (1993) Tetrahedron, 49(28), 6123-6194)。そのような保護基は、当該中間体とオリゴヌクレオチドの相互作用を最小化する試薬で選択的に除去されれば、本発明の範囲に入る。
【0024】
オリゴヌクレオチドが結合している基材系は、広範囲の有機及び無機材料の両方、例えば、制御された孔ガラス及び様々なガラス、シリカゲル、ポリアミド、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、多糖類、架橋多糖類及びそれらの組合せ等から選択し得る。一般に、基材は、オリゴヌクレオチド及び修飾したオリゴヌクレオチド合成のすべての条件に安定であるべきである。
【0025】
膨張し又は膨張しない能力のある広範囲の多孔性の又は非多孔性の基材を本発明に使用し得る。好ましい実施態様において、基材は固体基材からなるが、液体又は固体として(反応環境に依存する)存在する基材もまた本発明含まれうる(Bonora, G. M.; Scremin, C. L.; Colonna, F. P. & Garbesi, A. (1990) Nucleic Acids Research, vol. 18(11), 3155-3159)。オリゴヌクレオチドが溶液中にあるよりも基材に結合しているときに、アクリロニトリルによる核酸塩基の不可逆的な修飾の動態学がより遅いので、好ましくは、基材は固体の物質である。好ましくは、基材は反応カラム内に含まれる。
【0026】
任意の利用可能な方法、例えば、亜リン酸トリエステル及びH−ホスホネート化学等を使用するオリゴヌクレオチド合成の完成の後、基材に結合したオリゴヌクレオチドを試薬で処理し、オリゴヌクレオチド骨格からリン酸保護基を選択的に除去する。一般に、試薬及びその条件の選択は、試薬が選択的にリン酸保護基を、オリゴヌクレオチドがなお基材に結合したままであるような方法で、選択的に切断することが可能か否かによる。この効果を達成できる任意の化合物又は酵素が、本発明の範囲に入る。例えば、多くのリン酸保護基、例えば、2−シアノエチルリン酸等がβ脱離を受けることができる。
【0027】
したがって、リン酸保護基をβ脱離によってオリゴヌクレオチドから切断することのできる任意の試薬を使用しうる。基材からオリゴヌクレオチドを切断することなく、リン酸保護基を除去することのできる有機アミン、例えば、第1級、第2級又は第3級アミン等が好ましい。式R−N−R1R2(式中、R、R1 及びR2が、独立に、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリル、アリール、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリルオキシ、アリールオキシであり、1〜20個の炭素原子を含み得る)を有するアミンがより好ましい。t−ブチルアミン−メチルアミン及びジエチルアミン、特に無水アセトニトリル中の約20%V/Vのジエチルアミンの溶液が最も好ましい。
【0028】
試薬を、反応物へ液体又はより好ましくは気体として導入しうる。この段階は、反応容器中で手動により行い得る。好ましくは、該段階は、商業的なDNAシンセサイザーを使用して自動化され、これは、最後のカップリングサイクルの完成の後、該シンセサイザーの送達ラインの1つを通じて、液又は気相中のアミン含有試薬を送達するようにプログラムされている。好ましくは、該試薬を反応カラムを通して、約1ml/分の流速で約10分で65℃で(又は室温で90分)通過させ、選択的にリン酸保護基を除去する。又は、該試薬を反応カラムを通して、約1ml/分の流速で約90分で室温で通過させ、リン酸保護基を選択に除去し得る。
【0029】
該試薬溶液中のすべてのアクリロニトリルを速やかにサイホンで吸い出し、一方、オリゴヌクレオチドは基材に結合したままであり、それによって、核酸塩基をアクリロニトリルへさらすことを最小化する。好ましくは、この段階に続いて、該基材を溶媒、例えば、アセトニトリル等で洗浄し、アクリロニトリルの最後の痕跡のすべてを除去する。該オリゴヌクレオチド及び基材を、次に、濃縮水酸化アンモニウムで処理し、基材からオリゴヌクレオチドを開放し、同時に他の保護基を除去する。
【0030】
この方法によれば、多量の高純度及び高収率の粗オリゴヌクレオチドを、速やかに、容易に、高価ではなく製造できる。後記の実施例は単に説明のみのためのものであり、いかなる意味においても特許請求の範囲を限定するために使用すべきではない。
【0031】
実施例
方法
アクリロニトリル−チミジン付加体の合成:
チミジン(0.48g、2mmol)、トリエチルアミン(20ml)及び乾燥ピリジン(20ml)の撹拌した溶液に、蒸留したアクリロニトリル(1ml、15mmol)を新しく添加した。50℃で24時間加熱した後、反応混合物を冷却し、濃縮し、流動相としてジクロロメタン:酢酸エチル:メタノール(85:15:5)を使用してフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。適当な分画を収集し、濃縮し、114−116℃のa m.ptを有する47%収率で望ましい付加体を無色固体として得た。該産物は、1H NMR及び 13C NMRの望ましい分光学的プロファイルを示した。
【0032】
オリゴヌクレオチドの酵素的消化:
全長のオリゴヌクレオチド及びn+不純物の両方を、ヘビ毒ホスホジエステラーゼ及びシュリンプアルカリフォスファターゼによる酵素的分解に服させた。A260OD単位のオリゴヌクレオチドを、2mMのMgCl2 及びそれぞれ4単位のホスホジエステラーゼ及びアルカリフォスファターゼ酵素を含む10mMのトリス−HClバッファーpH8.2に溶解し、37℃で18時間インキュベートした。次に、該反応混合物を90℃で2分間過熱し、室温に冷却し、真正のヌクレオチドスタンダードに対して逆相HPLCによって分析した。
【0033】
オリゴヌクレオチドの脱保護:
オリゴヌクレオチド合成の完成後、オロゴヌクレオチドはなおカラム中の基材に結合している一方、無水アセトニトリル中の20%のジエチルアミン溶液を、1ml/分の流速で10分間カラムを通して通過させ、リン酸保護基を選択的に除去した。該カラムをアセトニトリルで洗浄し、基材を真空で乾燥させた。これに続いて、濃縮水酸化アンモニウムでオリゴヌクレオチドを処理し、基材からオリゴヌクレオチドを除去し、ヌクレオシド保護基を除去した。
【0034】
実施例1
DNA核酸塩基におけるアクリロニトリルの付加物:
オリゴヌクレオチドG10T10を、Amersham Pharmaciaポリマー支持体30−HL(商標)を使用して、Oligo Pilot(商標)II DNAシンセサイザーにおいて合成した。このポリスチレンに基づく基材を24mlのカラムに負荷し、標準的ホスホルアミダイト化学を使用してオリゴヌクレオチドを合成した。オリゴマーを基材から切断し、基材を30%のNH4OHで65℃で16時間処理することによって脱保護した。溶媒を真空で除去し、粗オリゴヌクレオチド混合物を得た。粗材料(DMTr−オン)のイオン交換HPLCによって、8%のn+不純物の存在と共に全長の産物が71%収率で形成されたことがわかった(図1)。粗材料をAmersham−Pharmacia AKTA(商標)HPLC精製システムにおいて精製した。
【0035】
2個のオリゴヌクレオチドサンプルを、Matrix−Assisted Laser Desorption Ionization−Time Of−Fight/Mass Spectrometry(「MALDI‐TOF/MS」)によってさらに分析し、分子量を測定した。全長材料(「DMTr‐オフ」)の分子量を観察し、6271質量単位に対応し、G10T10配列を有するオリゴヌクレオチドの計算値と一致した。6327質量単位に対応する(56質量単位の相違)単離したn+不純物の分子量は、アクリロニトリルからのシアノエチル基(53質量単位)の付加と一致する。n+不純物のLCMS分析によって、この不純物の分子量は6324質量単位(53質量単位の相違)であり、アクリロニトリルのチミジンへの付加に対応するとわかった。
【0036】
全長のオリゴヌクレオチド及びn+不純物の両方をホスホジエステラーゼ及びアルカリフォスファターゼによる酵素的分解に服させた。この方法において、オリゴヌクレオチドを酵素の組合せで処理し、オリゴヌクレオチドをそれぞれのヌクレオシド化合物に分解し、次にHPLCによって分析する。次に、酵素的消化におけるヌクレオシドのリテンションタイムを、真正のヌクレオシド参照と比較し、その相対的率及びすべての修飾されたヌクレオシド産物の存在を決定する。n+オリゴヌクレオチド不純物の加水分解から得られた消化サンプルを逆相HPLCにおいて分析したとき、チミジン及び2’デオキシグアノシンに対応するピークに加えてさらなるピーク溶出の存在を観察した。異なるルーとによって合成的に調製した真正サンプルの溶出プロファイルと比較したとき、このピークは、チミジンのN3シアノエチル付加物であるとわかった。
【0037】
実施例2
いくつかの定型的及び修飾したオリゴヌクレオチド配列(2’−O−メチルRNA及びホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを含む)を、Oligo Pilot(商標)IIにおいて、基材としてAmersham Pharmaciaポリマー支持体30−HL(商標)又は制御された孔ガラス(「CPG」)のいずれかを使用して合成した。未だ合成カラム中の基材に結合しているすべてのオリゴヌクレオチドを、無水アセトニトリル中の20%のジエチルアミンの溶液で10分間処理した。これに続いて、濃縮水酸化アンモニウムによって標準的脱保護した。揮発成分を除去した後、すべてのオリゴヌクレオチドをイオン交換HPLCによって分析した。結果によれば、ジエチルアミンで予備処理したすべてのサンプルは、濃縮水酸化アンモニウムで直接的に処理したものと比較して、n+不純物プロファイルが有意により少ないことを示唆している。
【0038】
予備処理したオリゴマーにおけるn+不純物は、0.05%よりも少なくなり、全長オリゴマーの収率は、配列によっては3−7%増加した。例えば、ジエチルアミンによる処理のない標準的条件で脱保護したとき、試験配列T10C10は、71%の全長産物、さらに〜8%のn+産物の存在を示すHPLCクロマトグラムを示した(図1)。これに対して、標準的な水酸化アンモニウム脱保護の前に、ジエチルアミンで予備処理した同じ基材は、ほとんど無視できるn+不純物と共に、78%の全長産物の存在を示すHPCLクロマトグラムを示した(図2)。
【0039】
ジエチルアミン処理中に基材からオリゴヌクレオチドの喪失は観察されなかった。脱保護及び基材からの切断の後の消化実験は、オリゴヌクレオチドを2回20%ジエチルアミンに曝露した後でさえも、いずれの塩基の修飾も示さなかった。同じ結果を、2’−O−メチル、ホスホロチオエート及びキメラオリゴヌクレオチドの場合においても観察した。該結果は、様々な規模のオリゴヌクレオチド合成について及び様々な長さのオリゴヌクレオチドについて再現可能である。
【0040】
実施例3
アミノ基を有するリンカーにつないだオリゴヌクレオチドは、透明産物を与え、アミノ基修飾の証拠がなかった(図4)。これらのオリゴヌクレオチドを、一般に、保護したアミノリンカーアミダイトを加えることによってシンセサイザーにおいて合成する。水酸化アンモニウムによる標準的脱保護の間に、恐らくアクリロニトリルの付加のために、有意な量のオリゴヌクレオチドが、不可逆的にアミノ基において修飾される。したがって、アミノ基に対するレポーター部分の結合に関連する任意のポスト合成修飾産物の収率は有意に減少する。
【0041】
実施例4
50mmolのジチオスレイトール(HS−CH2−CHOH−CHOH−CH2−SH)を含む水酸化アンモニウム溶液で処理して脱保護中に形成されたアクリロニトリルを除去するとき、オリゴヌクレオチドは、核酸塩基修飾を完全には抑制することができなかった。これは第1級及び第3級のアミン溶液を選択的脱保護のために使用するときにもあてはまった。ジチオスレイトールとともに水酸化アンモニウム溶液を含むすべての試薬は、n+不純物を小さい程度減少させることができるのみであった。さらに、気体状のアンモニアを使用するオリゴヌクレオチドの脱保護によれば、粗オリゴヌクレオチド混合物中により高濃度のn+不純物を得た。
【0042】
実施例5
多くの異なったオリゴヌクレオチド(定型的なDNA又は2’−OMe)を、種々の塩基化合物を用いて、基材としてPS HL 30又はCPGのいずれかを使用し、Oligo Pilot IIによって合成した。すべてのオリゴヌクレオチドを、無水アセトニトリル中の20%ジエチルアミンで10分間処理し、このとき、カラム中の基材になお結合している。脱保護及び支持体からの切断の後、オリゴヌクレオチドをイオン交換高速クロマトグラフィーによって分析した。結果は、n+不純物が0.05%まで減少し、全長材料の収率が増加したことを示している。処理中にオリゴヌクレオチドの喪失はなく、これは、洗浄物を別々に収集し、それを分析することによって達成した。脱保護及び基材からの切断の後の消化実験によれば、2回の20%ジエチルアミンにさらした後でさえも、いずれの塩基修飾も示さなかった。この方法は、2’−OMeオリゴヌクレオチド及びアミノリンクしたオリゴヌクレオチドに適用可能であり、様々な規模の合成及びオリゴヌクレオチド配列の様々な長さにおいて再現可能であった。
【0043】
いくつかの実施態様を前記の実施例で詳細に記載したが、本発明はその特定の例に限られない。様々な修飾が当業者にとって容易に明白であり、添付クレームの精神及び範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、HPLCによって分離し260nmで検出した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチドT10G10混合物のクロマトグラムである。
【図2】 図2は、HPLCによって分離し260nmで検出した、水酸化アンモニウムで処理する前に、乾燥アセトニトリル中の20%ジエチルアミンで処理した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチドT10G10混合物のクロマトグラムである。
【図3】 図3は、HPLCによって分離し260nmで検出した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチド5’−NH2−(CH2)6−C7T14混合物のクロマトグラムである。
【図4】 図4は、HPLCによって分離し260nmで検出した、水酸化アンモニウムで処理する前に、20%ジエチルアミンで処理した、粗トリチル−オン・オリゴヌクレオチド5’−NH2−(CH2)6−C7T14混合物のクロマトグラムである。
Claims (12)
- オリゴヌクレオチドの精製方法であって、
a)基材に結合したオリゴヌクレオチドであって、2−シアノエチルリン酸保護基を含むオリゴヌクレオチドを準備する段階と、
b)上記オリゴヌクレオチドを、基材からオリゴヌクレオチドを脱離させずに、β脱離によってリン酸保護基をオリゴヌクレオチドから切断する試薬と接触させ、アクリロニトリルを含有する試薬溶液を除去する段階と、
c)切断したリン酸保護基から、基材に結合したオリゴヌクレオチドを単離する段階と、
d)基材からオリゴヌクレオチドを切断する段階と
を含む方法。 - 前記基材が固体である、請求項1記載の方法。
- 前記基材が液体である、請求項1記載の方法。
- 前記基材が無機材料、有機材料又はそれらの組合せである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
- 前記リン酸保護基を選択的に除去するために使用される試薬が、式R−N−R1R2 (式中、R、R1 及びR2 は、独立に、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリル、アリール、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリルオキシ、アリールオキシである。)、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
- 前記アルキル、アリル、アリール、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アリルオキシ及びアリールオキシが1〜20の炭素原子を含む、請求項5記載の方法。
- 前記試薬が有機アミンである、請求項1記載の方法。
- 前記試薬がジエチルアミンである、請求項1記載の方法。
- 前記試薬が20%v/vのジエチルアミンを含む、請求項1記載の方法。
- 前記試薬が気体として供給される、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
- オリゴヌクレオチド骨格が1以上のホスホジエステル結合を含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
- オリゴヌクレオチド骨格が1以上のホスホルアミデート結合を含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
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