JP4705472B2 - 圧電トランス - Google Patents
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Description
本発明は、液晶ディスプレイのバックライト用のインバータ等に用いられる中央駆動型の圧電トランスに関する。
近年、電気回路の小型化・薄型化を実現するために、液晶パネルのバックライト用のインバータやDC/DCコンバータ等に圧電トランスが採用されている。
図6は、従来の一般的なローゼン型の圧電トランスの斜視図である。ローゼン型の圧電トランスは、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックスを材料とした素子であり、図6に示すように、圧電トランス20の左半分の入力部21には厚み方向に導体を積層した入力電極22が設けられ、入力電極間の圧電体は厚み方向に分極処理がなされている。また、圧電トランス20の右半分の出力部23の端面には、たとえば銀焼付け等により出力電極24が設けられ、出力部23の圧電体は長手方向に分極処理がなされている。
ここで、入力部とは、厚み方向に入力電極が設けられ、その入力電極間の圧電体が厚み方向に分極している圧電トランスの部分をいい、出力部とは、端部に出力電極を有し、出力電極から入力部までの圧電体が長手方向に分極している圧電トランスの部分をいう。
このような一般的なローゼン型の圧電トランスの入力電極間に、長手方向の機械的な共振周波数とほぼ同じ周波数の交流電圧を印加すると、この圧電トランスの長手方向に強い機械振動が励起され、出力電極には圧電効果により、高い電圧が生じる。
近年、圧電トランスの小型化志向に伴い、歪波が生じない中央駆動型の圧電トランスが開発されている(たとえば、特許文献1)。この中央駆動型の圧電トランスには、中央部に入力電極を積層した入力部が設けられ、入力電極間の圧電体は厚み方向に分極処理がなされている。中央部の両側の出力部はそれぞれ長手方向に沿って分極処理がなされ、両端面には、たとえば銀焼付け等により出力電極が設けられている。
特許第3119154号公報 特開2000−150981号公報 特開2002−305332号公報
上記のような圧電トランスのうち出力部が長手方向に沿って逆方向に分極した中央駆動型の圧電トランスは、2つの出力電極に発生する電圧が同位相であり、出力電極間に接続した負荷には電流が流れないため、圧電トランスの両端の出力電極間に冷陰極管を接続するという構成をとっても冷陰極管は点灯しない。
したがって、出力部が逆方向に分極している圧電トランスは、その両端の出力電極とGNDの間に2本の冷陰極管を直列に接続して使用するが、1本の冷陰極管を接続する場合に出力電極に+Voutの電圧が印加されるとすると、2本の冷陰極管には2Voutの電圧が必要となるため、液晶パネルのバックライトの反射板や筐体との寄生容量による損失電力は1本の場合のものの4倍になってしまう。
また、大型の液晶パネルのバックライトに使用される比較的管電圧の高い冷陰極管を点灯させる場合も、一般的なローゼン型の圧電トランスでは比較的高いVlampの管電圧そのままを印加しなければならない。
近年、液晶パネルは大型化される傾向にあり、バックライトに使われる冷陰極管を長く、管電圧を高くする必要が生じている。そして、管電圧を高くすると、寄生容量による損失電力は増大するため、この寄生容量による電力損失がインバータの消費電力を増大させる一因となっている。
一方、出力部が同一方向に分極している圧電トランスの出力インピーダンスは、周波数をf、一方の出力の静電容量をC2とすると1/(2πf・C2/2)と大きく、直列に接続した2つの冷陰極管や管電圧が高い冷陰極管を使用する場合等、負荷インピーダンスが比較的大きい場合には、不向きである。
上記のような事情から、大型液晶パネルのバックライトを点灯させるのに適した、出力部が長手方向に沿って同一方向に分極した中央駆動型の圧電トランスの需要がある。また、上記の出力部が長手方向に沿って同一方向に分極した中央駆動型の圧電トランスを液晶パネルのバックライト用のインバータとして実用化するには、2つの冷陰極管を等しく制御する回路が必要であるが、現在この回路についても開発が進んでおり、ますます上記の出力部が同一方向に分極している圧電トランスの需要が高まっている。
しかしながら、一方では需要が高まっている状況において、出力部が長手方向に沿って逆方向に分極した中央駆動型の圧電トランスの全体の長さと入力部の長さの比に対する変換効率の特性を評価した文献や、出力部が長手方向に沿って同一方向に分極した中央駆動型の圧電トランスに関して言及している文献はあっても、実際に出力部が長手方向に沿って同一方向に分極した中央駆動型の圧電トランスを作製し、電極の設計に対する効率の特性を評価し、実用化を検討したものはなかった。
上記の出力部が長手方向に沿って同一方向に分極した中央駆動型の圧電トランスには、電極の設け方により、十分な効率が得られず、発熱量が大きくなる場合がある。圧電トランスの効率が低いとこれを組み込んだ電気機器を使用するにあたり消費電力が増加する。特に、モバイルタイプのノート型パーソナルコンピュータ等の機器に効率の低い圧電トランスが採用されている場合には、消費電力が大きくなり、バッテリーの寿命が短くなる。また、発熱により圧電トランス自体の機能の信頼性が低下し、発熱が周辺の素子または機器へ悪影響を及ぼすこともありうる。このように、ノート型パソコンで特に要求の高い電池の高寿命化に対応するため、または、機器の使用時に圧電トランスの発熱を抑えてトランス自体または周辺機器の信頼性を向上させるためにも、圧電トランスの高効率化が不可欠である。
本発明は、管電圧の高い冷陰極管等を接続するのに適した、出力部が長手方向に沿って同一方向に分極している圧電トランスにおいて、高い効率を有する圧電トランスを提供することを目的とする。
(1)上記の目的を達成するため、本発明の圧電トランスは、矩形状の圧電体の長手方向の中央部に厚み方向に積層された入力電極を有する入力部と、前記長手方向に沿って前記入力部を挟むように設けられた一対の出力部と、前記各出力部の端部に設けられた出力電極と、を備え、前記入力部は、入力電極間で厚み方向に分極し、前記出力部は、前記長手方向に沿って同一方向に分極し、半波長モードで動作する圧電トランスであって、前記圧電体の長手方向の長さをL1、前記入力部の前記長手方向の長さをL2、いずれか一方の前記出力電極の前記長手方向の長さをL3としたとき、L1、L2およびL3が、
0.1≦(4L2−L3)/4L1≦0.5
の関係を満たすことを特徴としている。
0.1≦(4L2−L3)/4L1≦0.5
の関係を満たすことを特徴としている。
このように、本発明では、圧電体の長手方向の長さL1、入力部の長手方向の長さL2、いずれか一方の出力電極の長手方向の長さL3について、(4L2−L3)/4L1が0.1から0.5の値をとる。
これにより、本発明に係る圧電トランスの効率を約94%から96%の高い水準に維持することができる。その結果、本発明の圧電トランスを電気機器に使用する場合にその消費電力を低く抑えることができ、ノート型パソコンに使用する場合には要求の高い電池の高寿命化を図ることができる。また、発熱を抑え、圧電トランス自体の機能の信頼性が向上させ、発熱が周辺の素子または機器へ悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。また、特に液晶パネルのバックライトとなる2つの冷陰極管を接続する場合には、寄生容量による電力損失を低く抑える点灯駆動装置の回路に、さらに効率の高いインバータとして組み込むことができる。
また、上式の範囲においては高効率を安定して維持することができるため、設計どおりの機能を有する圧電トランスを量産し易く、製造工程において歩留りを向上させることができることができる。また、昇圧比などの別の特性との関係を考慮して最適値を選び易くなる。
(2)また、本発明の圧電トランスは、前記出力電極は、前記各出力の端面にのみ形成され、前記圧電体の長手方向の長さをL1、前記入力部の前記長手方向の長さをL2としたとき、L1およびL2が、
0.1≦L2/L1≦0.5
の関係を満たすことを特徴としている。
0.1≦L2/L1≦0.5
の関係を満たすことを特徴としている。
このように、λ/2モードの振動のピークの位置に出力電極を設けているため、昇圧比を高くすることができる。また、出力電極の構造を簡単にすることができるため、出力電極の周辺部分の残留応力を小さくすることができる。
(3)また、本発明の圧電トランスは、前記出力電極は、前記各出力部の端部において、前記圧電体の厚み方向に内層部分に積層されたことを特徴としている。
このように、本発明に係る圧電トランスの出力電極は、各出力部の端部において、圧電体の厚み方向に内層部分に積層されている。これにより、圧電トランスの効率がさらに高くなる。
また、この積層された出力電極は、圧電トランスの製造工程において中央部の入力電極の印刷と同時に印刷することができ、特に圧電体の両端面に電極を焼き付ける工程を必要としない。これにより、製造工程における作業効率を向上させることができる。なお、この場合、出力電極に接続する外部電極が必要となるが、圧電体の焼成後に入力電極に接続する外部電極を設ける際に同時に一工程で設けることができる。
(4)また、本発明の圧電トランスは、前記入力電極に接続する外部電極を、少なくとも前記長手方向および厚み方向に平行な前記入力部の外面に設け、前記出力電極に接続する外部電極を、前記各出力部の両方の端面、または前記長手方向および厚み方向に平行な前記出力部の外面の少なくとも一つに設けたことを特徴としている。
このように、本発明では、入力電極に接続されている外部電極および出力電極に接続されている外部電極を、それぞれ圧電トランスの所定の面のいずれかに設けている。これにより、圧電トランスの取り出し電極としての外部電極を印刷する製造工程では、たとえば、印刷を特定の面にまとめて行ない、一回の印刷をするだけで外部電極の印刷工程を済ませることができ、製造工程の簡略化および低コスト化を図ることもできる。また、同様に他の工程上の事情にあわせて外部電極を設ける面を選ぶことができる。また、本発明の圧電トランスを回路に組み込む際にも、スペースや配置を考慮して、外部電極を設ける面を選ぶこともできる。その結果、製造作業の効率化、回路の構成の際の対応の向上を図ることができる。また、出力電極とその外部電極により、コの字型に電極を設けることで効率をさらに高くすることができる。
本発明に係る圧電トランスによれば、本発明に係る圧電トランスの効率を約94%から96%の高い水準に維持することができる。その結果、本発明に係る圧電トランスを電気機器に使用する場合にその消費電力を低く抑えることができ、ノート型パソコンに使用する場合には要求の高い電池の高寿命化を図ることができる。また、発熱を抑え、圧電トランス自体の機能の信頼性が向上させ、発熱が周辺の素子または機器へ悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。また、特に液晶パネルのバックライトとなる2つの冷陰極管を接続する場合には、寄生容量による電力損失を低く抑える点灯駆動装置の回路に、さらに効率の高いインバータとして組み込むことができる。
また、上式の範囲においては高効率を安定して維持することができるため、設計どおりの機能を有する圧電トランスを量産し易く、製造工程において歩留りを向上させることができることができる。また、昇圧比などの別の特性との関係を考慮して最適値を選び易くなる。
また、本発明に係る圧電トランスによれば、λ/2モードの振動のピークの位置に出力電極を設けているため、昇圧比を高くすることができる。また、出力電極の構造を簡単にすることができるため、出力電極の周辺部分の残留応力を小さくすることができる。
また、本発明の圧電トランスによれば、その出力電極は、各出力部の端部において、圧電体の厚み方向に内層部分に積層されている。これにより、圧電トランスの効率がさらに高くなる。
また、この積層された出力電極は、圧電トランスの製造工程において中央部の入力電極の印刷と同時に印刷することができ、特に圧電体の両端面に電極を焼き付ける工程を必要としない。これにより、製造工程における作業効率を向上させることができる。なお、この場合、出力電極に接続する外部電極が必要となるが、圧電体の焼成後に入力電極に接続する外部電極を設ける塗布する際に同時に一工程で設けることができる。
また、本発明の圧電トランスによれば、入力電極に接続されている外部電極および出力電極に接続されている外部電極を、それぞれ圧電トランスの所定の面のいずれかに設けている。これにより、圧電トランスの取り出し電極としての外部電極を印刷する製造工程では、たとえば、印刷を一定の面にまとめて行ない、一回の印刷で工程を済ませることができ、製造工程の簡略化および低コスト化を図ることができる。また、同様に他の工程上の事情にあわせて外部電極を設ける面を選ぶこともできる。また、本発明の圧電トランスを回路に組み込む際にも、スペースや配置を考慮して、外部電極を設ける面を選ぶこともできる。その結果、製造作業の効率化、回路の構成の際の対応の向上を図ることができる。また、出力電極とその外部電極により、コの字型に電極を設けることで効率をさらに高くすることができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態に関し、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る圧電トランスの斜視図である。図1に示す中央駆動型の圧電トランス1には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックスが圧電体の材料として使用され、銀(Ag)が電極として用いられる。なお、本発明の圧電トランスは材料に制限されるものではなく、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の他の圧電材料を圧電体として、また、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)または銅(Cu)等の他の導体を電極として使用することもできる。
図1に示す圧電トランス1の中央部には入力電極2を積層した入力部3が設けられ、入力電極間の圧電体は厚み方向に分極処理がなされている。圧電トランス1の長手方向に沿って、入力部3の両側には出力部4aおよび出力部5aがあり、出力部4aおよび出力部5aは、それぞれ長手方向に沿って同一方向である図中のP1方向およびP2方向に分極処理がなされている。
ここで、分極の方向に関し、出力部が逆方向に分極している圧電トランスと、出力部が同一方向に分極している圧電トランスを比較して説明する。
出力部が長手方向に沿って逆方向に分極している圧電トランスは、2つの出力電極に発生する電圧が同位相であり、出力電極間に接続した負荷には電流が流れないため、圧電トランスの両端の出力電極間に冷陰極管を接続するという構成をとっても冷陰極管は点灯しない。したがって、出力部が逆方向に分極している圧電トランスは、その両端の出力電極とGNDの間に2本の冷陰極管を直列に接続して使用する。1本の冷陰極管を接続する場合に出力電極に+Voutの電圧が印加されるとすると、2本の冷陰極管には2Voutの電圧が必要となるため、液晶パネルのバックライトの反射板や筐体との寄生容量による損失電力は1本の場合のものの4倍になってしまう。
一方、出力部が同一方向に分極している圧電トランスについては、両端の出力電極の間に2つの冷陰極管を直列接続させることで冷陰極管を点灯することができる。この場合には、一方の出力電極に+Voutの電圧が印加されるとすると、他方の出力電極には逆位相の−Voutの電圧が印加され、その結果、2本の冷陰極管には2Voutの電圧が印加される。しかし、GNDに対する電位差はVoutに留まるため、液晶パネルのバックライトの反射板や筐体との寄生容量による損失電力は1本の冷陰極管の場合のものの2倍に抑えることができる。
また、大型の液晶パネルのバックライトに使用される比較的管電圧の高い冷陰極管を点灯させる場合も、一般的なローゼン型の圧電トランスではVlampの管電圧を印加しなければならないのに対し、出力部が同一方向に分極した圧電トランスでは+Vlamp/2と−Vlamp/2の電極を印加すれば良く、寄生容量による損失を抑えることができる。
近年、液晶パネルは大型化される傾向にあり、バックライトに使われる冷陰極管を長く、管電圧を高くする必要が生じている。そして、管電圧を高くすると、寄生容量による損失電力は増大するため、この寄生容量による電力損失がインバータの消費電力を増大させる一因となっている。
一方、出力部が同一方向に分極している圧電トランスの出力インピーダンスは、周波数をf、一方の出力の静電容量をC2とすると1/(2πf・C2/2)となり、出力部が逆方向に分極している圧電トランスの出力インピーダンス1/(2πf・2・C2)の4倍となる。したがって、直列に接続した2つの冷陰極管や管電圧が高い冷陰極管を使用する場合等、負荷インピーダンスが比較的大きい場合には、出力部が同一方向に分極している圧電トランスを用いたほうがよい。したがって、出力部が逆方向に分極している圧電トランスと出力部が同一方向に分極している圧電トランスは、まったく特性が異なるものであるといえる。
上記の理由により、実施例1に係る圧電トランスの出力部は同一方向に分極処理されている。
また、図1に示すように、実施例1に係る圧電トランスでは、出力部4aの長手方向の端面には出力電極6aが、出力部5aの長手方向の端面には出力電極7aが、一面に設けられている。このように、λ/2モードの振動のピークの位置に出力電極を設けているため、昇圧比を高くすることができる。出力電極の構造を簡単にすることができるため、出力電極の周辺部分の残留応力を小さくすることができる。圧電トランス1の側面には、入力電極2に接続された外部電極8が設けられている。
また、図1に示す圧電トランス1は、その長手方向の全体の長さL1、入力部の長手方向の長さL2について、L2/L1が0.1から0.5の値をとるように圧電トランスおよびその電極の長さが設計されている。
これにより、本発明に係る圧電トランスの効率を約94%から96%の高い水準に維持することができる。その結果、電気機器に使用する場合にその消費電力を低く抑えることができ、ノート型パソコンに使用する場合には要求の高い電池の高寿命化を図ることができる。また、発熱を抑え、圧電トランス自体の機能の信頼性が向上させ、発熱が周辺の素子または機器へ悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。また、特に液晶パネルのバックライトとなる2つの冷陰極管を接続する場合には、寄生容量による電力損失を低く抑える点灯駆動装置の回路に、さらに効率の高いインバータとして組み込むことができる。
また、上式の範囲においては高効率を安定して維持することができるため、設計どおりの機能を有する圧電トランスを量産し易く、製造工程において歩留りを向上させることができることができる。また、昇圧比などの別の特性との関係を考慮して最適値を選び易くなる。
実施例1に係る圧電トランスの作製方法を以下に説明する。PZT系のセラミックスのグリーンシートを押し出し成形またはドクターブレード法により作製し、このグリーンシートの一面上の中央部に、スクリーン印刷により入力電極を印刷し、他のグリーンシートの一面上の中央部にも、同様に入力電極を印刷する。これらの圧電体シートを交互に積層し、圧着して焼成する。その後、切断、研磨を行ない、銀焼付けにより入力電極に接続する外部電極および出力電極を設ける。このとき図1に示すように、図中の圧電トランスの側面において一層おきに入力電極をそれぞれに対応する外部電極に接続する。次に、入力部の厚み方向と出力部の長手方向の分極処理を行なう。このようにして、実施例1に係る圧電トランスを作製する。
出力部が同一方向に分極した圧電トランスについて、圧電トランスの長手方向の全長L1に対する入力部の長手方向の長さL2を変えて変換効率を測定した。図2は、出力部が同一方向に分極した圧電トランスの効率の、比L2/L1に対する特性を示す図である。ここで、図2の縦軸にとっている効率は、それぞれのL2/L1の値を有する圧電トランスについて周波数を変化させたときの最大効率を指す。図2に示すように、実施例1に係る圧電トランスの効率はL2/L1の値が0.26付近で最大値をとった。そして、L2/L1の値が0.1から0.5をとる範囲においては94から96%の高い効率を安定的にとることが確認された。特に、L2/L1の値が0.12から0.44をとる範囲においては95%以上の高い効率を維持することが確認された。一方、L2/L1の値が0.1未満の範囲と0.5より大きい範囲においては、最大の効率に比べ効率が大きく低下し、L2/L1の値の変化に対する効率の変化も大きく不安定であった。
図3は、本発明の実施例2に係る圧電トランスの斜視図である。図3に示す中央駆動型の圧電トランス1には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックスが圧電体の材料として使用され、銀(Ag)が電極として用いられる。なお、本発明の圧電トランスは材料に制限されるものではなく、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の他の圧電材料を圧電体として、また、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)または銅(Cu)等の他の導体を電極として使用することもできる。
図3に示す圧電トランス1の中央部には入力電極2を積層した入力部3が設けられ、入力電極間の圧電体は厚み方向に分極処理がなされている。圧電トランス1の長手方向に沿って、入力部3の両側には出力部4bおよび出力部5bがあり、出力部4bおよび出力部5bは、それぞれ長手方向に沿って同一方向である図中のP1方向およびP2方向に分極処理がなされている。出力部4bの長手方向の端部には出力電極6bが、出力部5bの長手方向の端部には出力電極7bが、厚み方向に内層部分に積層されて設けられている。なお、端部とは、圧電トランスの端面近傍の部分をいう。
このように、実施例2に係る圧電トランスの出力電極は、各出力部の端部において、圧電体の厚み方向に内層部分に積層されている。これにより、圧電トランスの効率がさらに高くなる。また、この積層された出力電極は、圧電トランスの製造工程において中央部の入力電極の印刷と同時に印刷することができ、特に圧電体の両端面に電極を焼き付ける工程を必要としない。これにより、製造工程における作業効率を向上させることができる。なお、この場合、出力電極に接続する外部電極が必要となるが、圧電体の焼成後に入力電極に接続する外部電極を設ける際に同時に一工程で設けることができる。
図3に示す圧電トランス1の側面には、入力電極2に接続された外部電極8が設けられており、圧電トランス1の両端面には、出力電極6bおよび出力電極7bにそれぞれ接続された外部電極9bおよび外部電極10bが設けられている。
また、図3に示す圧電トランス1は、その長手方向の全体の長さL1、入力部の長手方向の長さL2、いずれか一方の出力電極の長手方向の長さL3について、(4L2−L3)/4L1が0.1から0.5の値をとるように圧電トランスおよびその電極長さが設計されている。
これにより、圧電トランスの効率を約94%から96%の高い水準に維持することができる。その結果、電気機器に使用する場合にその消費電力を低く抑えることができる。また、発熱を抑え、圧電トランス自体および周辺機器の機能の信頼性を向上させることができる。
また、上式の範囲においては高効率を安定して維持することができるため、設計どおりの機能を有する圧電トランスを量産し易く、製造工程において歩留りを向上させることができることができる。また、昇圧比などの別の特性との関係を考慮して最適値を選び易くなる。
実施例2に係る圧電トランスの作製方法を以下に説明する。PZT系のセラミックスのグリーンシートを押し出し成形またはドクターブレード法により作製し、このグリーンシートの一面上に、スクリーン印刷により入力電極および出力電極を印刷し、他のグリーンシートの一面上にも、同様に入力電極および出力電極を印刷する。出力電極は、完成した実施例2に係る圧電トランスにおいて長手方向の両端部に位置するように設計されたスクリーンにより印刷される。これらの圧電体シートを交互に積層し、圧着して焼成する。その後、切断、研磨を行ない、銀焼付けにより入力電極および出力電極に接続する外部電極をそれぞれ設ける。このとき図3に示すように、図中の圧電トランスの側面において一層おきに入力電極をそれぞれに対応する外部電極に接続する。一方、出力電極に接続する外部電極はすべての層の出力電極に接続するように図中の側面または端面に設ける。次に、入力部の厚み方向と出力部の長手方向の分極処理を行なう。このようにして、実施例2に係る圧電トランスを作製する。
出力部が同一方向に分極した圧電トランスについて、圧電トランスの全長L1およびいずれか一方の出力電極の長手方向の長さL3に対する入力部の長さL2を変えて変換効率を測定した。各出力電極の長手方向の長さは両方ともL3とし、L3は圧電トランスの全長L1の一定の割合の長さに設計した。図4は、出力部が同一方向に分極した圧電トランスの効率の、(4L2−L3)/4L1の値に対する特性を示す図である。ここで、図4の縦軸にとっている効率は、それぞれの(4L2−L3)/4L1の値を有する圧電トランスについて周波数を変化させたときの最大効率を指す。図4に示すように、上記の圧電トランスの効率は(4L2−L3)/4L1の値が0.26付近で最大値をとった。そして、(4L2−L3)/4L1の値が0.1から0.5をとる範囲においては94から96%の高い効率を安定的にとることが確認された。特に、(4L2−L3)/4L1の値が0.12から0.44をとる範囲においては95%以上の高い効率を維持することが確認された。一方、(4L2−L3)/4L1の値が0.1未満の範囲と0.5より大きい範囲においては、最大の効率に比べ効率が大きく低下し、(4L2−L3)/4L1の値の変化に対する効率の変化も大きく不安定であった。
図5(A)は、実施例3に係る圧電トランスの上面図、図5(B)は、実施例3に係る圧電トランスの側面図である。図5に示すように、実施例3に係る圧電トランスでは、積層された入力電極2および圧電トランスの長手方向の両端において内層部分に積層された出力電極6bおよび出力電極7bを、圧電トランスの特定の側面でそれぞれ外部電極8、外部電極9cおよび外部電極10cに接続している。実施例3に係る圧電トランスの作製方法は、実施例1または実施例2と同様であるが、上記のような構成を採るように設計されるため、入力電極および出力電極の取り出し電極としてそれぞれの外部電極を印刷する工程では、外部電極を設ける特定の側面上において一回の印刷をするだけで外部電極の印刷工程を済ませることができ、製造工程の簡略化および低コスト化を図ることができる。
また、実施例3に係る圧電トランスでは、すべての外部電極を特定の側面に設けたが、同様の他の工程上の事情にあわせて外部電極を設ける面を選ぶこともできる。また、本発明の圧電トランスを回路に組み込む際にも、スペースや配置を考慮して、外部電極を設ける面を選ぶことができる。その結果、製造作業の効率化、回路の構成の際の対応の向上を図ることができる。また、出力電極とその外部電極により、コの字型に電極を設けることで効率をさらに高くすることができる。
なお、本発明に係る圧電トランスはλ/2モードで動作するが、3λ/2モードで動作する圧電トランスについても、同様に安定して高効率を得ることのできる(4L2−L3)/4L1の値の範囲が存在する。
1 圧電トランス
2 入力電極
3 入力部
4a 出力部
4b 出力部
5a 出力部
5b 出力部
6a 出力電極
6b 出力電極
7a 出力電極
7b 出力電極
8 外部電極
9b 外部電極
9c 外部電極
10b 外部電極
10c 外部電極
L1 圧電トランスの長手方向の全長
L2 入力部の長手方向の長さ
L3 いずれか一方の出力電極の長手方向の長さ
P1 分極方向
P2 分極方向
2 入力電極
3 入力部
4a 出力部
4b 出力部
5a 出力部
5b 出力部
6a 出力電極
6b 出力電極
7a 出力電極
7b 出力電極
8 外部電極
9b 外部電極
9c 外部電極
10b 外部電極
10c 外部電極
L1 圧電トランスの長手方向の全長
L2 入力部の長手方向の長さ
L3 いずれか一方の出力電極の長手方向の長さ
P1 分極方向
P2 分極方向
Claims (4)
- 矩形状の圧電体の長手方向の中央部に厚み方向に積層された入力電極を有する入力部と、
前記長手方向に沿って前記入力部を挟むように設けられた一対の出力部と、
前記各出力部の端部に設けられ、両端を負荷に接続されて用いられる出力電極と、を備え、
前記入力部は、入力電極間で厚み方向に分極し、
前記出力部は、前記長手方向に沿って同一方向に分極し、
半波長モードで動作する圧電トランスにおいて、
前記圧電体の長手方向の長さをL1、前記入力部の前記長手方向の長さをL2、いずれか一方の前記出力電極の前記長手方向の長さをL3としたとき、L1、L2およびL3が、
0.1≦(4L2−L3)/4L1≦0.5
の関係を満たすことを特徴とする圧電トランス。 - 前記出力電極は、前記各出力の端面にのみ形成され、前記圧電体の長手方向の長さをL1、前記入力部の前記長手方向の長さをL2としたとき、L1およびL2が、
0.1≦L2/L1≦0.5
の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の圧電トランス。 - 前記出力電極は、前記各出力部の端部において、前記圧電体の厚み方向に内層部分に積層されたことを特徴とする請求項1記載の圧電トランス。
- 前記入力電極に接続する外部電極を、少なくとも前記長手方向および厚み方向に平行な前記入力部の外面に設け、
前記出力電極に接続する外部電極を、前記各出力部の両方の端面、または前記長手方向および厚み方向に平行な前記出力部の外面の少なくとも一つに設けたことを特徴とする請求項1から請求項3記載の圧電トランス。
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