JP4705359B2 - 鳥類由来コラーゲンを用いてなる化粧料組成物 - Google Patents

鳥類由来コラーゲンを用いてなる化粧料組成物 Download PDF

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Description

本発明は、鳥類由来コラーゲンを用いてなる化粧料組成物に関し、詳しくは、コラーゲンを抽出する原料として、一般的な牛や豚などの哺乳類ではなく鳥類を用いた鳥類由来コラーゲンを用いて製造される化粧料組成物を対象にしている。
コラーゲンは、哺乳類や鳥類さらには魚類などの動物の結合組織を構成する物質の一つである。動物組織から抽出されたコラーゲンは、例えば、化粧品や医薬品などの保水剤や保湿剤などとして広く利用されている。
コラーゲンを抽出する動物およびその部位によって、得られるコラーゲンの特性が違ってくること、コラーゲンを抽出するのに適した製造条件も違ってくることが知られている。コラーゲンの使用目的や要求性能によって、抽出原料となる動物とその部位、製造条件に関する種々の技術が提案されている。
コラーゲンの抽出原料として最も一般的な動物は牛である。ところが、BSE(狂牛病)問題が発生したことによって、化粧品や医薬品などに使用するコラーゲンの原料として、牛以外の原料が求められた。鳥類原料、例えば、ニワトリを使用すれば、前記BSE問題の心配はない。
特許文献1には、鳥類原料としてニワトリの脚部を用い、酸抽出のあとで酵素処理を行うことで、熱変性温度が40℃以上と高く、入浴剤などに使用してもコラーゲンの分解が起こらず、優れた性能を発揮できる鳥類由来コラーゲンの製造技術が示されている。
特開2001−31699号公報
前記した従来の鳥類由来コラーゲンは、原料に用いる鳥類に特有の臭いや不純物が多く含まれている点で、用途によっては好まれない場合がある。
例えば、前記特許文献1に記載されたニワトリ由来コラーゲンでは、原料となるニワトリの脚部(一般に「鶏足」とも呼ばれる)には、油脂分その他の不純物の含有量が多いため、これらの油脂や不純物を除去する処理工程に時間とコストがかかる。原料に対して最終的に得られるコラーゲンの収率が低く、製造コストが高くつく。
ニワトリ由来コラーゲンは、熱変性温度が高いので、前記した入浴剤などの用途には好ましいものであるが、肌用化粧品などに使用したときに、肌につけた化粧品の延び性があまり良くないという欠点がある。これは、肌用化粧品の場合、肌につけたときに体温によって軟化することで前記延び性が良好に発揮されるのに対し、熱変性温度が高いニワトリ由来コラーゲンでは、体温と同じか少し低い程度の肌温では、軟化したり延び性が良好に発揮されたりすることが劣るのであると考えられる。
本発明の課題は、前記した従来の鳥類由来コラーゲンが有する問題点を解消し、不純物が少なく臭いなどの問題がなく商品価値の高いコラーゲンを経済的に提供することである。
本発明にかかる化粧料組成物は、鳥類由来コラーゲンを含む化粧料組成物であって、前記鳥類由来コラーゲンが、鳥類原料から抽出されるコラーゲンであって、前記鳥類原料としてダチョウのアキレス腱が用いられ、前記ダチョウのアキレス腱をアルカリ処理したのち抽出処理を行って得られたアルカリ処理コラーゲンであり、変性温度が、28〜38℃であり、等電点が、pH4.2〜4.7である。
以下では、上記特定の鳥類由来コラーゲンを「本発明の鳥類由来コラーゲン」や「本発明のコラーゲン」ということがある。
〔ダチョウのアキレス腱〕
ダチョウは、「駝鳥」とも表記され、ダチョウ目ダチョウ科に属する大型の鳥類である。飛ぶことはできないが、脚部が長く、かつ、強い。
ダチョウの脚部に有するアキレス腱を、鳥類由来コラーゲンの抽出原料として使用する。ダチョウは、野生のもの、あるいは、食肉用などに飼育されているものの何れも使用できる。食肉用に流通販売されている脚部から、アキレス腱を含む部位を取り出して使用することができる。
アキレス腱のみからなる原料を使用するのが好ましいが、工業的に除去するのが困難な程度に、アキレス腱以外の部分がわずかに含まれていても、実用的に問題はない。
〔アルカリ処理コラーゲン〕
アルカリ処理は、通常のコラーゲン製造技術あるいはゼラチン製造技術で採用されている抽出原料に対するアルカリ処理と共通する技術である。
基本的には、抽出原料をアルカリ液に浸漬することで、原料の組織を膨潤させて、その後に行う抽出処理を行い易くする技術である。抽出工程の前に行う処理として、酸処理や酵素処理と対比される処理技術である。
但し、アルカリ処理が行われることで、酸処理や酵素処理とは異なる構造、特性を有するコラーゲンすなわちアルカリ処理コラーゲンが得られる。
アルカリ処理コラーゲンは、コラーゲン鎖を構成するアミノ酸の一部に有するアミド基が、アルカリ処理によって、アンモニアを放出し、カルボキシル基に変化する。このようなアミド基から変化したカルボキシル基の存在は、通常の酸処理コラーゲンや酵素処理コラーゲンでは見られないアルカリ処理コラーゲンに特有の構造である。アルカリ処理コラーゲンは、動物組織に存在していた状態のコラーゲンとは、その構造が違っていることになる。動物組織に存在していた状態のままのコラーゲンは、例えば、酵素処理によって得ることができ、アテロコラーゲンなどと呼ばれている。アテロコラーゲンとアルカリ処理コラーゲンとは、前記した構造上の明確な違いがある。
<等電点>
前記したカルボキシル基の存在は、アルカリ処理コラーゲンの等電点を、コラーゲン本来の等電点よりも低くする。具体的には、コラーゲン本来の等電点がpH約8.0〜9.0であるのに対し、アルカリ処理コラーゲンの等電点は、pH4.0〜5.5である。
アルカリ処理コラーゲンの等電点は、抽出原料であるダチョウ・アキレス腱の品質や、アルカリ処理を含む抽出製造処理の処理条件によって変わり、要求性能や使用用途によっても異なる。通常は、等電点がpH4.0〜5.0であるものが好ましい。より好ましくは、等電点pH4.2〜4.7である。
<変性温度>
抽出原料にダチョウのアキレス腱を使用すること、および、アルカリ処理コラーゲンであることによって、変性温度についても、通常のニワトリ由来コラーゲンや酵素処理コラーゲンなどとは違ったものになる。既知のニワトリ由来コラーゲンは、変性温度が40℃を超える高い温度であるのが普通であるが、ダチョウのアキレス腱を原料にするアルカリ処理コラーゲンは、変性温度28〜38℃になり、通常のニワトリ由来コラーゲンに比べて、かなり低い温度となる。勿論、原料の品質や抽出製造条件によっても変性温度は変わる。人体の肌につけたときの特性を重要視する場合などは、変性温度32〜36℃のものが好ましい。
<光線透過率>
コラーゲンは、使用する用途によって、透明性あるいは光線透過率の高いものが要求されることが多い。本発明のコラーゲンの場合、波長400nmにおける光線透過率が70%以上のものが得られる。好ましくは、光線透過率(400nm)が80〜100%のものが好ましい。
一般的に、コラーゲンの透明性を高めるには、濾過処理や精製処理をできるだけ厳密に行って、コラーゲン以外の不純物が含まれないようにすればよいが、本発明のコラーゲンの場合、それほど厳重な透明化のための処理を行わなくても、十分に透明性に優れたものが得られる。透明化に必要な手間とコストが低減できる。
〔抽出製造〕
本発明のコラーゲンの抽出製造は、基本的には、通常のアルカリ処理コラーゲンの製造技術が適用される。
<原料の準備(a)>
抽出原料として、ダチョウのアキレス腱を用いることで、それに適した処理工程が行われる。
抽出原料であるダチョウのアキレス腱は、野生あるいは飼育されているダチョウを解体しアキレス腱を含む部位を取り出して使用する。前記したように食肉用に市場に提供されているダチョウのアキレス腱を含む脚部などから、アキレス腱を取り出すこともできる。
アキレス腱を含む原料から、アキレス腱以外の部位や組織は取り除いておくこと望ましい。油脂分や多糖類その他の不純物を含む部分も出来るだけ除去しておく。
後述するアルカリ処理に供するダチョウのアキレス腱として、油脂分0.3%以下のものが好ましい。油脂分が少ないほど、最終的に得られるコラーゲンの純度が高まり、光線透過率などの特性が向上し、抽出を含む処理作業も行い易くなる。濾過処理で濾材が目詰まり等を起こすことも防げる。
予め、粉砕や水洗、脱脂、脱灰などの処理の一部あるいは全てが行われた原料が供給されれば、これらの処理工程を省略することができる。
<粉砕工程(a−1)>
基本的には、通常のコラーゲン製造における原料粉砕処理と同様の装置や処理条件が採用できる。原料を粉砕しておくことで、その後に行うアルカリ処理などが効率的に行える。
ダチョウのアキレス腱を、通常の粉砕装置に供給して、所望の粒径が得られるまで粉砕すればよい。粉砕は、乾式あるいは湿式の何れで行うこともできる。冷却しながら粉砕する方法も採用できる。凍結粉砕も採用できる。
粉砕された原料の平均粒径を、0.1〜3cmに設定できる。好ましくは、平均粒径0.1〜2cmである。粒径が細かいほど、その後に行う脱脂・脱灰処理やアルカリ処理などが良好に行える。粒径が小さ過ぎると、粉砕に時間がかかったり、粉砕中にコラーゲンの損傷や変質劣化が生じ易くなったりする。粒径を小さくするほど、前記した湿式粉砕や冷却・凍結状態での粉砕が有効になる。
粉砕処理は、前記した脱灰処理や脱脂処理の前に行っておくことができる。小さく粉砕された原料であれば、脱灰や脱脂が効率的に果たされる。脱灰処理や脱脂処理のあとで、粉砕処理を行うこともできる。
<脱灰工程(a−2)、脱脂工程(a−3)>
コラーゲンの抽出原料から、灰分あるいは油脂分を除去する処理であり、基本的には、通常のコラーゲン製造と共通する技術が適用できる。
脱灰処理によって、抽出原料に含まれるリンやカルシウムなどの無機物類を除去することができる。脱灰処理は、例えば、塩酸などの酸溶液に抽出原料を浸漬する。脱灰処理は、原料段階あるいは抽出工程までの製造工程の途中段階で行える。
脱脂処理では、脱脂作用を有する界面活性剤や有機溶剤などを含む処理液に抽出原料を浸漬し、処理液に溶け出した油脂分を取り除く。
脱脂処理は、ダチョウのアキレス腱として供給された原料の段階で行うこともできるし、粉砕工程のあとなど、製造工程の途中で行うこともできる。例えば、大雑把な粉砕処理を行った状態で脱脂処理を行い、その後、さらに所定の粒径までの粉砕処理を行うことができる。
脱脂処理を終えた原料の油脂分を0.3%以下に設定しておくことができる。油脂分が0.3%以下の状態で供給された原料を、さらに脱脂処理して、油脂分0.3%を大きく下回るようにすることもできる。
脱脂工程と脱灰工程とは、何れが先であっても構わない。通常は、脱灰工程のあとで脱脂工程を行うほうが、処理効率が良く、高品質のコラーゲンを得られ易い。
<アルカリ処理工程(b)>
アルカリ処理は、コラーゲンが抽出され易いように、原料の組織を膨潤状態にしたり、コラーゲンと組織の結合を切断したり、原料に含まれる蛋白質や多糖類などの不純物を除去したりする機能がある。
基本的には、通常のコラーゲン製造におけるアルカリ処理工程と共通する装置や処理剤、処理手順などが採用できる。
アルカリ処理液には、消石灰(水酸化カルシウム)を含む石灰液や、硫酸ナトリウムを含む水酸化ナトリウム溶液などが使用できる。このようなアルカリ処理液に、前工程で粉砕された粉砕原料を投入し、所定の期間浸漬しておく。処理液のpHは12.0以上に設定できる。
アルカリ処理液として、硫酸ナトリウムを含む水酸化ナトリウム溶液は、処理性能に優れている。アルカリ処理液の水酸化ナトリウム濃度を、1〜6%程度に設定できる。硫酸ナトリウム濃度は、10〜20%程度に設定できる。
アルカリ処理液の温度は、15〜30℃に設定することができる。処理期間は、5〜20日間に設定できる。処理中に、処理液を撹拌したり、取り換えたりすることも行える。
アルカリ処理が終われば、水洗処理や中和処理を行うことができる。水洗処理は、原料に付着したアルカリ成分を除去する。アルカリ処理の処理液から取り出した原料を、撹拌しながら大量の水で洗浄すればよい。中和処理は、無機酸などで原料に付着したアルカリ成分を中和する。水洗処理で除去できなかったアルカリ成分を中和できる。中和処理のあとで、さらに水洗処理を行って、中和に使用された過剰の酸を除去することができる。
<コラーゲン回収工程(c)(c−2)>
アルカリ処理原料に、通常のコラーゲン抽出技術あるいはコラーゲンの分離回収技術を適用すれば、アルカリ処理コラーゲンを得ることができる。
アルカリ処理原料には、不溶性コラーゲンと水溶性コラーゲンとの両方が含まれる。目的や用途によっても異なるが、通常は、水溶性コラーゲンを回収して利用する。アルカリ処理原料に含まれる不溶性コラーゲンを可溶化して水溶性コラーゲンに変えれば、水溶性コラーゲンの収率を高めることができる。
不溶性コラーゲンと水溶性コラーゲンの分離は、濾過処理や遠心分離処理などの各種の固液分離手段が採用できる。固液分離手段で分離された固形分に不溶性コラーゲンが含まれ、液体分に水溶性コラーゲンが含まれる。水溶性コラーゲンの分子量は、約30万程度である。
アルカリ処理原料からコラーゲンを回収する方法として、アルカリ処理原料の微粒分散液を調製して、この分散液からコラーゲンを回収する方法が採用できる。微粒分散液に酵素処理を行ったあとでコラーゲンを回収することもできる。
<微粒分散液の調製工程(c−1)>
アルカリ処理原料を湿式粉砕し、平均粒径0.3〜500μmの微粒が水に分散された微粒分散液を得る。
湿式粉砕は、アルカリ処理原料を水に分散させた状態で粉砕処理を行う。前記したアルカリ処理前に行われる粉砕工程(b)よりも細かな微粒子にまで粉砕することができる。
このような微粒分散液にすることで、不溶性コラーゲンと水溶性コラーゲンとの分離が効率的に行われ、目的とするコラーゲンの回収が容易になる。
微粒分散液には、基本的に、固形分である微粒に不溶性コラーゲンが含まれる。液体分には水溶性コラーゲンが含まれる。液体中に少量の不溶性コラーゲンが含まれる場合もある。
基本的には、通常のコラーゲン製造でも採用されている微粒粉砕技術が適用できる。
処理装置として、ホモジナイザーが用いられる。水に分散されたアルカリ処理原料を、ホモジナイザーで、所定の粒径条件になるまで粉砕すればよい。ホモジナイザーの他にも、同様の微粒分散液を得られる湿式粉砕用の処理装置であれば、採用できる。
微粒分散液は、直ちにコラーゲンの分離回収を行ってもよいし、その前に、酵素処理工程を行うこともできる。
<酵素処理工程(c−3)>
微粒分散液に対して、蛋白質分解酵素を用いて酵素処理を施す。
基本的には、通常のコラーゲン製造における酵素処理技術が適用される。
酵素抽出処理によって、固体であるコラーゲン繊維の分解が進み、不溶性コラーゲンが可溶化して、水溶性コラーゲンが得られる。アルカリ処理原料あるいはその微粒分散液をそのまま固液分離処理するのに比べて、水溶性コラーゲンを効率的に得ることができ、収率が高くなる。
酵素処理に用いる蛋白質分解酵素などの処理材料あるいは処理条件は、通常の酵素処理の場合と共通する技術が適用できる。蛋白質分解酵素として、ペプシンやパパインなどが挙げられる。
酵素処理は、微粒分散液に酵素を加え、一定の時間保持したあと、酵素を失活させた処理液からコラーゲンを抽出する。
酵素処理を複数回繰り返すことで、所望の分子量や特性を有するコラーゲンが効率的に得られ易い。処理条件によっても異なるが、通常は、1〜3回の酵素処理を行うことができる。
〔その他の処理工程〕
前記した工程を経て得られたコラーゲンは、通常のコラーゲン製造と同様の処理工程を経て、コラーゲン製品が得られる。
得られたコラーゲン製品は、販売流通に供することができる。コラーゲン製品を得るまでには、通常のコラーゲン製品の製造と同様に、コラーゲン含有液に対する処理操作を加えることができる。
通常のコラーゲン製造技術において採用されている各種の処理工程や加工技術を、必要に応じて組み合わせることができる。
例えば、濾過工程、精製工程、濃縮工程などが行われる。それらの処理工程の使用装置や処理条件は、通常のコラーゲン製造と同様の技術が適用できる。
<化学修飾処理>
アルカリ処理コラーゲンに、化学修飾処理を施すことで、化学修飾しないコラーゲンとは異なる機能や特性を付与することができる。例えば、化粧品に利用する場合、化粧品に含まれる他の成分との相溶性を向上させたり、反応性を高めたりすることができる。
コラーゲンの化学修飾技術として、例えば、コハク化、フタル化、メチルエステル化などが知られている。前記したように、アルカリ処理コラーゲンそのものも、コラーゲンのアミド基がカルボキシル基に変化したものであるが、カルボキシル基にさらに化学修飾処理を施すことも可能である。これらの化学修飾処理の具体的手順は、通常の技術が適用できる。
〔鳥類由来コラーゲンの用途〕
前記製造工程を経て得られた、ダチョウのアキレス腱を原料にする鳥類由来コラーゲンは、通常のコラーゲンが利用されていた各種用途に使用することができる。特に、従来、ニワトリ由来コラーゲンなどの鳥類由来コラーゲンが好適に使用されていた用途に使用することができる。
具体的には、化粧品用途、医薬品および部外品用途、医療用生体材料用途、細胞培養用基質用途、食品用途などが挙げられる。
コラーゲンを熱変性させてゼラチンを製造することができる。ゼラチンよりもさらに分子量の小さなペプチドやアミノ酸の製造に用いることもできる。
<化粧料組成物>
本発明のコラーゲンの有用な用途として、化粧料組成物が挙げられる。
化粧料組成物は、化粧料あるいは化粧品のそのものである場合と、化粧料や化粧品を製造する際の原料となる場合とがある。
コラーゲンを化粧料組成物に用いる場合は、通常、コラーゲン水溶液の形態で使用することが多い。コラーゲン水溶液のコラーゲン濃度は、通常、0.1〜2重量%の範囲に設定できる。勿論、用途によっては、上記濃度範囲から外れる場合もあり、コラーゲンを粉末状態で使用することもできる。
化粧料組成物には、本発明のコラーゲン以外の成分を含むこともできる。例えば、他の鳥類由来コラーゲンを組み合わせることができる。複数のコラーゲンを組み合わせることで、単独のコラーゲンでは得られない機能や特性を発揮できる場合がある。
コラーゲン以外の配合成分としては、使用目的や要求機能によって任意に設計することができる。例えば、ヒアルロン酸などのムコ多糖類やその塩を配合することで、コラーゲンによる保湿機能をより高めることができる。その他、一般的な化粧料の添加材料として、各種油脂類やアルコール類、植物生薬類、動物性成分、顔料、紫外線吸収/遮断剤、香料、安定剤などが挙げられる。
化粧料組成物を用いる化粧品として、コールドクリームや乳液などの肌に付ける基礎化粧品のほか、口紅などの皮膚用化粧品、整髪料などの髪用化粧品、洗顔料、アフターシェーブローション、その他、コラーゲンが有する機能が有効な各種化粧品に使用できる。
化粧品の具体的処方は、通常のコラーゲン利用化粧品と共通する技術が適用できる。各種文献に記載された化粧品処方において、そこで使用されているコラーゲンの代わりに、本発明のアルカリ処理コラーゲンを使用することができる。具体例として、特開2003−327599号公報に開示された化粧品処方を適用することができる。
本発明にかかる鳥類由来コラーゲンは、コラーゲンを抽出する鳥類原料として、ダチョウのアキレス腱を用いることで、一般的な鳥類原料であるニワトリを使用した場合に比べて、原料に含まれる油脂その他の不純物が少なく、簡単かつ効率的に、目的とするコラーゲンを得ることができる。特に、アルカリ処理したのち抽出処理を行うアルカリ処理コラーゲンであることによって、酵素処理のみによる抽出に比べて、効率的に製造でき、収率が向上し、製造コストが低減される。しかも、得られたコラーゲンは、変性温度や等電点などの特性が、通常のニワトリ由来コラーゲンとは違ったものになり、ニワトリ由来コラーゲンなどが使用し難い用途にも良好に使用することが可能になる。
特に、ニワトリ由来コラーゲンよりも変性温度が低いので、肌用化粧品など、人間の体温程度の温度環境で使用される用途において、延び性が良く、使用感が良好になるなどの優れた機能を発揮できる。
鳥類由来コラーゲンの具体的製造例とその性能を評価した結果を示す。
〔実施例1〕
<原料の準備>
原料として、塊状のダチョウ・アキレス腱を用意した。
肉挽き機で、平均粒径2cm以下まで粉砕した。
湿重量10kgの粉砕されたダチョウ・アキレス腱からなる原料に、15℃以下の水で水洗する作業を3回繰り返した。水洗によって、血液等の夾雑物が除去された。水洗後の原料を、10%塩化ナトリウム水溶液50リットルに加え、24時間撹拌した。塩化ナトリウム溶液から取り出した原料を、5%エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム(EDTA)水溶液50リットルに加え、24時間撹拌して、リン酸カルシウムなどの無機物を除去する脱灰処理を行った。この脱灰処理は、合計2回繰り返した。脱灰処理された原料を、水洗したあと、エタノール(約5℃)20リットルに加え、24時間撹拌し、原料をエタノール液から分離することで、脱脂処理を行った。
その結果、得られたダチョウ・アキレス腱原料は、湿重量8.7kg、乾燥重量1.7kg、油脂分含有量0.05重量%であった。
同様の操作を繰り返して、必要量のダチョウ・アキレス腱原料を得た。
<アルカリ処理>
前記準備処理で得られたダチョウ・アキレス腱原料を、乾燥重量で1.7kg用いた。
原料を、硫酸ナトリウムを20%含む1N水酸化ナトリウム溶液20リットルに、20℃で10日間浸漬した。
上記処理を終えた原料を取り出し、水洗したあと、精製水200リットル中に1時間浸漬した。これによって、充分に膨張した状態のアルカリ処理原料が得られた。
<微粒分散液の調整>
前記アルカリ処理原料を水に浸漬させた状態で、高速ホモジナイザー(日本特殊機化社製)に供給し、7000rpm×60分間の処理条件で粉砕した。得られた処理液には、平均粒径100μmの微粒が分散していた。
<酵素処理>
微粒分散液にペプシン(天野エンザイム社製)を20g加え、撹拌機で撹拌しながら24時間かけて酵素処理(第1段)を行った。この酵素処理で、固体状の微粒に含まれる不溶性コラーゲンが可溶化されて水溶性コラーゲンへと効率的に転換される。
<コラーゲン回収処理>
第1段の酵素処理を終えた処理液を、遠心分離機に送り、6000rpm×2リットル/分の処理条件で連続遠心分離処理を行った。遠心分離処理後の処理液は、上澄み液に水溶性コラーゲンが含まれ、沈殿画分には不溶性コラーゲンや未粉砕物などが含まれる。上澄み液を回収して、次の処理に供給する。
上澄み液を、濾過径20μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した。濾過液に対して、前記同様のペプシン20gを加え、撹拌機で撹拌しながら24時間かけて酵素処理(第2段)を行った。この酵素処理で、前記濾過液に残った少量の不溶性コラーゲンまでが確実に可溶化されて水溶性コラーゲンになる。
ここで得られた水溶性コラーゲン溶液を、アルカリ処理コラーゲン製品として、各種の用途に使用することができる。通常は、以下に説明するように、さらに、処理操作を施して、最終製品とする。
酵素処理を終えた処理液に水酸化ナトリウムを加えて、アルカリ処理コラーゲンの等電点であるpH4.5に調整した。この処理で、処理液に溶解していた水溶性コラーゲンが
析出する。6000rpm×2リットル/分の処理条件で遠心分離処理を行い、沈殿物として、粗製コラーゲン繊維1.6kg(乾燥重量)を回収した。液体側に残る水溶性不純物等が除去された。
<精製処理>
前工程で得られた粗製コラーゲン繊維を、精製水200リットルに溶かし、pH4.5に調整した後、6000rpm×2リットル/分の処理条件による連続遠心分離処理の操作を3回繰り返して行った。
最終的に、精製コラーゲン繊維1.2kg(乾燥重量)が回収できた。この回収量は、アルカリ処理を行う前のコラーゲン原料に対して、70.6%の収率であった。
さらに、得られた精製コラーゲン繊維に、濃度1.0%になるように精製水を加え、水酸化ナトリウムでpH7.0に調整することで、コラーゲン水溶液が得られた。
〔実施例2〕
実施例1において、アルカリ処理および微粒分散液の調整を行った後、酵素処理を行わずに、コラーゲン回収処理および精製処理を行った。
コラーゲン回収処理では粗製コラーゲン繊維0.51kg(乾燥重量)が回収された。さらに、精製処理で回収できた精製コラーゲン繊維は0.4kg(乾燥重量)であり、実施例1に比べて少ない量であった。アルカリ処理を行う前のコラーゲン原料に対して、23.5%の収率であった。
〔比較例1〕
実施例1において、アルカリ処理を行わずに、微粒分散液の調整を行った後、酵素処理を行い、コラーゲン回収処理および精製処理を行った。
コラーゲン回収処理では、実施例1と同様に、粗製コラーゲン繊維1.6kg(乾燥重量)が回収できた。しかし、精製処理で回収できた精製コラーゲン繊維は0.61kg(乾燥重量)であり、実施例1に比べて少ない量であった。アルカリ処理を行う前のコラーゲン原料に対して、35.9%の収率であった。
〔比較例2〕
実施例1において、原料として、ダチョウ・アキレス腱の代わりに、鶏足を用いた以外は、実施例1と共通する処理を経て、コラーゲンを製造した。
原料の準備において、湿重量10kgの鶏足を用い、実施例1と同様の処理を経て、湿重量6.3kg、乾燥重量1.1kgの原料を得た。原料の油脂分含有量は3.9重量%であり、実施例1よりもかなり多い割合であった。
コラーゲン回収処理では、粗製コラーゲン繊維0.22kg(乾燥重量)が回収された。さらに、精製処理で回収できた精製コラーゲン繊維は0.16kg(乾燥重量)であり、実施例1に比べて少ない量であった。アルカリ処理を行う前のコラーゲン原料に対して、14.5%の収率であった。
〔化粧品の製造〕
各実施例および比較例で得られたコラーゲンを用いて、下記の処方で化粧品を製造した。化粧品は、肌に付ける乳液である。何れのコラーゲンも、化粧品の製造には特に問題はなかった。
<化粧品の配合>
コラーゲン 90重量%
1,3−ブチレングリコール 5重量%
パラオキシ安息香酸メチル 0.1重量%
水 4.9重量%
〔性能評価〕
各実施例および比較例で得られたコラーゲン水溶液に対して、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アミノ酸分析、比旋光度、等電点をそれぞれ測定した。その結果、何れも、コラーゲン特有の電気泳動パターンおよびアミノ酸分析値を示し、コラーゲンヘリックス構造を保持している目的のコラーゲンであることが確認できた。
さらに、変性温度、波長400nmにおける光線透過率を測定した。
製造直後と、40℃、1ヶ月の保存を行った後とで、色調、臭い、おりや沈殿の有無、保存後の変化を評価した。
前記化粧品の官能試験を行なった。
<化粧品の官能試験>
モニター:年齢23〜53才の12名。
臭い:化粧品を嗅いで、臭いの有無を判定した。化粧品を肌につけ、その後、化粧品を拭い取って、肌に臭いが残っているか否かを判定した。
しっとり感:肌につけて、しっとり感を判定した。
肌なじみ・延び:肌へのなじみ、延びの良否を判定した。
各項目について、12名中で、良いと評価した人数で評価した。
<試験結果>
各試験の結果を、下記表に示す。
Figure 0004705359
<評価>
(1) 実施例1、2と比較例1とを対比すると、同じ原料であるダチョウ・アキレス腱を使っていても、アルカリ処理を行わなかった比較例1では、変性温度が40℃を超える高い値になるのに対し、実施例1、2では、変性温度が人肌に近い温度のコラーゲンが得られている。
化粧品に使用した場合には、比較的に低い温度で軟化あるいは溶解する実施例1、2のコラーゲンは、肌の温度程度では変化しない比較例1のコラーゲンに比べて、化粧品の肌へのなじみや延びを、格段に向上させることができている。
(2) 実施例1と実施例2とを対比すると、酵素処理を行った実施例1では、酵素処理を行わない実施例2よりも、収率が大幅に向上している。酵素処理によって、不溶性コラーゲンを効率的に水溶性コラーゲンへと転換できることが裏付けられている。
なお、比較例1は、酵素処理をするので、実施例2よりは収率が高いが、アルカリ処理を行っていないので、前記したように、性能は劣るものである。
(3) 比較例2は、原料に鶏足を使って実施例1と同じ製造工程を行った場合である。白濁を生じ、強い動物臭いが残ったままであるため、化粧品には使用し難いものである。アルカリ処理および酵素処理を行っても、酵素処理を行わない実施例2よりも収率が低く、化粧品の肌なじみや延びも良くない。
なお、従来知られている鶏足を原料とするコラーゲンは、アルカリ処理を行なわず酵素処理だけで抽出を行うのが普通であるため、変性温度の点でも、比較例1と同じ程度かより高い40℃をかなり超えるものとなっている。
〔化粧品の処方例〕
本発明のコラーゲンが有する特性を良好に発揮できる化粧品の処方を例示する。
各成分の配合量は、重量部で示す。各処方において、コラーゲン液と表記している成分に、実施例1または実施例2のコラーゲン1.0重量%水溶液を用いる。
<処方例1:乳液>
スクワラン:8.0部、ホホバ油:7.0部、セチルアルコール:1.5部、グリセリンモノステアレート:2.0部、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル:3.0部、ポリオキシエチレン(20)ソオルビタンモノオレート:2.0部、7.1,3-ブチレングリコール:1.0部、グリセリン:2.0部、コラーゲン液:10.0部、防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル):適量、精製水または白樺樹液:各成分の合計量を100としたときの残余。
<処方例2:化粧水>
コラーゲン液:20.0部、ヒアルロン酸又はコンドロイチン硫酸溶液5.0部、香料(レモン水):適量、防腐剤(フェノキシエタノール):適量、精製水または白樺樹液:各成分の合計量を100としたときの残余。
<処方例3:コールドクリーム>
サラシミツロウ:11.0部、流動パラフィン:22.0部、ラノリン:10.0部、オリーブ油:5.0部、カミツレ油:5.0部、パーム油:5.0部、ホウ砂:0.5部コトジツノマタ抽出液、(タノール:1,3-ブチレングリコール=1:1抽出溶媒):2.0部、オウバク抽出液(エタノール:1,3-ブチレングリコール=1:1抽出溶媒):2.0部、カバノキ抽出液(エタノール:1,3-ブチレングリコール=1:1抽出溶媒)2.0部、液状シア脂:1.0部、コラーゲン液10.0部、防腐剤(アクリノール)0.1部、香料(セージ水):適量、精製水または白樺樹液:各成分の合計量を100としたときの残余。
本発明の鳥類由来コラーゲンは、例えば、肌用の化粧品に添加する保湿剤として利用できる。肌につけたときの延び性、しっとり感などに優れ、保湿機能にも優れた品質性能の高い化粧品を提供できる。

Claims (1)

  1. 鳥類由来コラーゲンを含む化粧料組成物であって、
    前記鳥類由来コラーゲンが、
    鳥類原料から抽出されるコラーゲンであって、
    前記鳥類原料としてダチョウのアキレス腱が用いられ、
    前記ダチョウのアキレス腱をアルカリ処理したのち抽出処理を行って得られたアルカリ処理コラーゲンであり、
    変性温度が、28〜38℃であり、
    等電点が、pH4.2〜4.7である、
    ことを特徴とする、化粧料組成物
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