JP4703822B2 - チップ型抵抗器の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、たとえばプリント配線基板において表面実装部品として用いられるチップ型抵抗器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、回路基板に対する実装密度を向上させる目的で、種々の電子部品が表面実装可能なチップ型に置き換えられつつある。上記チップ型電子部品の代表的なものとしては、図16に示すようなチップ型抵抗器が挙げられる。すなわち、このチップ型抵抗器は、たとえばセラミックからなる基板70と、その基板70の両側面、上面および下面の一部に形成された電極被膜71と、基板70の上面の電極被膜71を掛け渡すように基板70上に形成された抵抗被膜72と、抵抗被膜72を保護するための保護用コート層73とを有している。
【0003】
このチップ型抵抗器は、大略以下のような方法によって製造される。すなわち、この製造方法では、図17に示すように、セラミック基板を焼成して略平板状に形成された集合基板74を用いる。この集合基板74には、等間隔で複数本の縦割り溝(バーブレイク・スリット(以下「BBスリット」という))75と、等間隔で複数本の横割り溝(チップブレイク・スリット(以下「CBスリット」という))76とが形成されている。ここで、各スリット75,76で区画された、略矩形の基板個片77が、最終的にチップ型抵抗器となる部分である。
【0004】
次に、図18に示すように、集合基板74の表面上における各基板個片77の両端部に、電極端子としての電極被膜71を印刷焼成することによって一括形成する。その後、各基板個片77に抵抗被膜72を印刷焼成することによって一括形成する。
【0005】
次いで、この集合基板74をBBスリット75に沿って縦方向に分割し、略細幅帯状の中間基板材を得る。そして、この中間基板材の切断面および下面に所定の電極材料を印刷焼成した後、中間基板材をCBスリット76に沿って分割する。その後、各基板個片77における所定の抵抗値を設定するために、抵抗被膜72に対してレーザ光等によってトリミング溝を形成し、最終的にチップ型抵抗器を得る。
【0006】
ところで、上記チップ型抵抗器の製造方法において、集合基板74に電極被膜71および抵抗被膜72が形成される際、集合基板74上に、図19に示すような、電極被膜71等の所定の印刷パターンに応じて形成された開口78を有する印刷用マスク79が載置される。そして、印刷用マスク79上をスキージ等を移動させることにより、印刷用マスク79の開口78を介して印刷用ペーストが集合基板74上に印刷される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記セラミック製の集合基板74を焼成して形成するとき、集合基板74は前後左右方向に多少収縮することがある。そのため、上記した印刷用マスク79を集合基板74上に載置すると、その印刷用マスク79の開口78と、BBスリット75およびCBスリット76とのピッチが合わなくなり、印刷ずれを生じる。
【0008】
そこで、現状では、同様の印刷パターンを有し、かつ開口78の位置がそれぞれ微妙に異なる複数枚(実際には約100種類以上)の印刷用マスク79を予め準備するようにしている。そして、集合基板74の収縮による各スリット75,76のずれと一致するような開口78を有する印刷用マスク79を選択し、それを集合基板74上に載置して、印刷用ペースト等を集合基板74上に印刷し、電極被膜71等を形成している。しかし、上記のように、集合基板74の収縮率に合わせて多数の印刷用マスク79を準備するといったことは、製作上、不経済である。
【0009】
また、最近では、チップ型抵抗器のサイズにおいて、より小型化の要請があるが、上記印刷用マスク79を用いて電極被膜71や抵抗被膜72を形成する方法では、限界があり、小型化は困難であるといった問題点がある。
【0010】
また、上記したように、チップ型抵抗器を製造するには、集合基板74をBBスリット75に沿って分割してから細幅帯状の中間基板材を得、その後、細幅帯状の中間基板材をCBスリット76に沿って分割する。この場合、BBスリット75およびCBスリット76の溝の深さを、略同等にすると、BBスリット75に沿って集合基板74を切断するとき、不適当な箇所に切れ目や裂け目が生じ、不良品を発生させることがある。
【0011】
そこで、上記不良品の発生を抑制するために、BBスリット75およびCBスリット76の溝の深さに差を設けるように、たとえば、BBスリット75の深さがCBスリット76の深さより大となるように形成する。具体的には、図20に示すように、集合基板74の厚みHを約280μmとした場合、BBスリット75の深さH1は、上記厚みHの約2/3にあたる約190μmに、CBスリット49の深さH2は、上記厚みHの約1/3にあたる約80μmに、それぞれ形成する。
【0012】
これにより、BBスリット75に沿って集合基板74を切断すると、不適当な箇所に切れ目や裂け目が生じにくくなり、不良品の発生を抑えることができる。しかしながら、上記のように各スリット75,76の深さに差を設けて形成するには、精密な加工が要求されるため、製作上困難なことが多い。そのため、生産性の向上を阻害する原因になっていた。
【0013】
【発明の開示】
本願発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、チップ型抵抗器の小型化を実現できるとともに、生産性をより向上させることができるチップ型抵抗器の製造方法を提供することを、その課題とする。
【0014】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0015】
本願発明によって提供されるチップ型抵抗器の製造方法によれば、長手状に延びるグリーンシートを連続的に形成する工程と、このグリーンシートをチップ型抵抗器の幅と対応する所定幅ごとに切断してグリーンシートの長手方向に延びる細幅帯状の中間基板材を形成する工程と、中間基板材を所定時間の間、エージングする工程と、エージングを行った中間基板材に対して電極ペーストおよび抵抗体ペーストを印刷する工程と、中間基板材に対して、その長手方向と直交する方向に、基板個片に分割するためのスリットを形成する工程と、中間基板材、ならびに、それに印刷された電極ペーストおよび抵抗体ペーストを同時に焼成する工程と、中間基板材を上記スリットに沿って分割し、基板個片を形成する工程と、基板個片に対して抵抗値の調整を行う工程とを含むことを特徴としている。
【0016】
この製造方法によれば、連続的に形成されたグリーンシートを切断して、最終的にチップ型抵抗器となる基板個片が適宜数連なった、細幅帯状の中間基板材を形成し、その後、中間基板材の各面に印刷用ペースト、すなわち、電極ペーストおよび抵抗体ペーストが印刷される。従来の製造方法では、集合基板全体に対して印刷用ペーストを印刷するために印刷用マスクを用いていたが、集合基板の焼成時における収縮に起因して、印刷用ペーストの位置ずれが生じることがあり、複数種類の印刷用マスクを準備するといった不経済な方法で印刷用ペーストが印刷されていた。
【0017】
しかしながら、本願の製造方法は、従来の製造方法における印刷方法とは全く異なり、印刷対象の全く相違する細幅帯状の中間基板材に対して印刷を行うので、上記印刷用マスクを必要とせず、印刷用ペーストの位置ずれを生じさせることもない。そのため、不良品の発生を抑制するとともに、製作コストの低減化を図ることができ、生産性の向上が図られたチップ型抵抗器の製造方法を提供することができる。
【0018】
また、上記製造方法によれば、中間基板材、およびそれに印刷された印刷用ペーストを同時に焼成するので、この製造方法における焼成回数を少なくすることができる。そのため、焼成設備の削減化および製造時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
また、上記製造方法によれば、中間基板材、ならびに、電極ペーストおよび抵抗体ペーストを同時に焼成する工程の前に、細幅帯状の中間基板材に予めスリットが形成される。すなわち、焼成する前の中間基板材は、それを加工しやすい安定した状態にするために、熱を加えて乾燥を促進するエージングが行われている。そのため、中間基板材は、適度な硬度を有する変形可能な状態とされるため、スリットの形成を容易に行うことができる。また、スリットの深さは、比較的深く形成することができるので、焼成後に上記スリットに沿って分割する際、裂け目等を生じることなく確実に中間基板材を分割することができ、不良品の発生を抑制することができる。
【0020】
さらに、上記製造方法によれば、連続的に形成されたグリーンシートをたとえばカッタ等で分割して基板個片を作製するので、基板個片の厚み、幅、および短手方向の長さをそれぞれ任意の長さに自在に調整することができる。そのため、基板個片のサイズを変更して作製する場合に、たとえば金型工法等を用いて基板個片を作製する場合に比べて、容易にかつ即座に対応することができる。
【0021】
本願発明の他の好ましい実施の形態によれば、中間基板材を形成する工程では、各中間基板材は、少なくとも上面端部に長手方向に沿って段差が形成される。このように、段差が形成されれば、電極被膜を形成するために電極ペーストを印刷するとき、段差の部分に電極ペーストを充填することができるので、電極ペーストの印刷後、基板の表面が面一になるように形成することができる。そのため、その上面に印刷して形成される抵抗被膜および保護用コート層を、凹凸なく均一に印刷することができるといった利点がある。
【0022】
本願発明の他の好ましい実施の形態によれば、中間基板材を形成する工程では、各中間基板材は、上面中央部に長手方向に沿って段差凹部が形成される。このようにすれば、その段差凹部に抵抗被膜および保護用コート層を埋め込むようにして形成することができ、最終的な基板個片の形状を略直方体形状に形成することができる。そのため、製品としての取り扱いが容易となる。
【0023】
本願発明の他の好ましい実施の形態によれば、中間基板材に対して電極ペーストおよび抵抗体ペーストを印刷する工程では、中間基板材が所定方向に搬送されるとともに、電極ペーストおよび抵抗体ペーストを印刷するための印刷用ローラが中間基板材の上面、側面および下面に対して当接しながら回転することにより、中間基板材の各面に印刷用ペーストが印刷される。
【0024】
この製造方法によれば、従来の製造方法において用いられていた印刷用マスクを用いずに、電極ペーストおよび抵抗体ペーストを印刷用ローラによって中間基板材に対して直接、印刷するため、より小型の中間基板材においても印刷用ペーストの位置ずれを生じさせることなく対応することができる。したがって、チップ型抵抗器の小型化を実現させることができる。
【0025】
本願発明の他の好ましい実施の形態によれば、中間基板材をスリットに沿って分割し、基板個片を形成する工程では、中間基板材を収縮自在な収縮テープ上に貼着させ、径の異なる一対の分割用ローラを、中間基板材の上下方向から狭圧することにより、中間基板材をスリットに沿って分割する。
【0026】
このように、中間基板材には、その表面にスリットが形成されているため、径の異なる一対の分割用ローラを、中間基板材の上下方向から狭圧することにより、中間基板材をスリットに沿って容易にかつスムーズに分割することができる。
【0027】
本願発明の他の好ましい実施の形態によれば、中間基板材の抵抗値調整を行う工程では、収縮自在な収縮テープ上に、中間基板材を貼着し、収縮テープを伸長させた状態で一対の電極ローラを中間基板材の電極被膜に当接させて抵抗値調整を行う。
【0028】
このように、中間基板材の抵抗値調整を行う際には、中間基板材が貼着された収縮テープを伸長させた状態で抵抗値調整が行われるので、分割後の互いに隣り合う基板個片同士は、テープの伸長とともに広げられて配される。そのため、基板個片同士が互いに接触することを防止することができ、確実な抵抗値調整を行うことができる。
【0029】
本願発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明では、従来の技術の欄で説明した図も適宜参照する。
【0031】
この実施形態に係るチップ型抵抗器は、所定の抵抗値を有し、プリント配線基板に対して表面実装が可能なように構成され、比較的実装密度の高いプリント配線基板において用いられるものである。
【0032】
このチップ型抵抗器の製造方法は、概略以下に示す各工程を有する。すなわち、このチップ型抵抗器の製造方法は、(i)グリーンシートを連続的に形成する工程と、(ii)グリーンシートをチップ型抵抗器の幅と対応する所定幅ごとに切断してグリーンシートの長手方向に延びる細幅帯状の中間基板材を形成する工程と、(iii)中間基板材をエージングする工程と、(iv)中間基板材に対して電極ペーストや抵抗体ペーストといった印刷用ペーストを印刷する工程と、(v)中間基板材に対して基板個片に分割するためのスリットを形成し、かつ基板個片群を形成する工程と、(vi)基板個片群を焼成する工程と、(vii)基板個片群を上記スリットに沿って分割し、基板個片を形成する工程と、(viii)基板個片に対して抵抗値の調整を行う工程とを含んでいる。
【0033】
以下、上記各工程を詳述する。
【0034】
まず、グリーンシートを連続的に形成する工程では、図1に示すようなグリーンシート形成装置10が用いられる。すなわち、グリーンシート形成装置10では、たとえばアルミナおよびガラスを含有するガラスセラミックスからなり、粘性を有する懸濁液(「スリップ」ともいう)11が、搬送ベルト12と、この搬送ベルト12に対して所定間隔あけて対向させたドクターブレード13との隙間から、定速走行する搬送ベルト12上に担持されながら連続的に引き出される。搬送ベルト12は、回転自在に支持された一対のローラ14に掛け渡されている。
【0035】
ドクターブレード13の上流側には、懸濁液11が溜められた液溜め15が設けられ、ドクターブレード13の下流側には、懸濁液11を所定の温度で乾燥する乾燥炉16が設けられている。すなわち、上記懸濁液11は、搬送ベルト12およびドクターブレード13によって、所定厚みおよび所定幅に形成され、帯状を呈しながら乾燥炉16において乾燥され、ケーキ状の帯状固形物となる。この帯状固形物は、剥離ローラ17によって搬送ベルト12と剥離され、帯状のグリーンシート18として形成される。なお、グリーンシート18の厚みを変更させたい場合には、ドクターブレード13の、搬送ベルト12に対する配置距離を変更すればよい。
【0036】
次に、上記グリーンシートを所定幅ごとに切断してグリーンシートの長手方向に延びる細幅帯状の中間基板材を形成する工程では、図2に示すように、グリーンシート18が複数の回転スリッタ21によってその長手方向に沿って所定幅ごとに切断され、複数の細幅帯状の中間基板材22に分離される。
【0037】
ここで、上記中間基板材22は、上記回転スリッタ21によって形成された後、図3に示すように、中間基板材22の上下面22a,22bにおける両端部に、長手方向に沿って段差25を形成するようにしてもよい。段差25は、中間基板材22の上下面22a,22bが、回転する一対のローラ26によって押圧されることにより形成される。一対のローラ26は、中間基板材22の上下面22a,22bに対向する周面26aにおいて、その中央部分に凹部27が形成されている。なお、ローラ26は、段差25の形状を充分に確保するために、複数対設けられていてもよい。
【0038】
このように、段差25が形成されれば、図4に示すように、電極被膜71を形成するために電極ペーストを印刷するとき、段差25の部分に電極ペーストを充填することができるので、電極ペーストの印刷後、基板70の上面70aと面一になるように形成することができる。そのため、その上面70aに印刷して形成される抵抗被膜72および保護用コート層73を、凹凸なく均一に印刷することができるといった利点がある。
【0039】
あるいは、図5に示すように、中間基板材22の上面22aの中央部に、長手方向に沿って延びた段差凹部28を形成するようにしてもよい。段差凹部28は、中間基板材22の上下面22a,22bが、回転する一対のローラ29A,29Bによって押圧されることにより形成される。一方のローラ29Aは、中間基板材22の上面に対向する面29aにおいて、その中央部分30が凸状に湾曲して形成されている。また、他方のローラ29Bは、図3のローラ26と同様に、その中央部分に凹部27が形成されている。
【0040】
上記のように、中間基板材22の上面22aに段差凹部28が形成されておれば、図6に示すように、その部分に抵抗被膜72および保護用コート層73を埋め込むように形成することができ、最終的な基板個片の形状を略直方体形状に形成することができる。そのため、製品としての取り扱いが容易となる。
【0041】
図2に戻り、細幅帯状に分離された各中間基板材22は、搬送ベルト31によってその長手方向に沿って下流側に搬送され、その後、一旦、ドラム33に巻き取られる。搬送ベルト31は、回転自在に支持された一対の回転ローラ32(一方は図示せず)に掛け渡されている。なお、中間基板材22の幅を変更したい場合には、複数の回転スリッタ21の配置を所定の間隔に変更することにより対応することができる。また、図2では、一本の中間基板材22に対応するドラム33のみを示しているが、他の中間基板材も、それらに対応する各ドラムにそれぞれ巻き取られる。
【0042】
次いで、ドラム33に巻き取られた中間基板材22は、ドラム33のまま搬送され、エージングを行う工程に移される。すなわち、中間基板材22は、図7に示すように、再びドラム33から繰り出され、図示しない案内装置によってエージング炉35に導かれる。エージング炉35においては、中間基板材22を加工しやすい安定した状態にするために、中間基板材22に対して、所定時間の間、熱を加えて乾燥を促進するためのエージングが行われる。このエージングにより、中間基板材22は、後述の印刷工程やCBスリットの形成工程を適切に行うことができる程度の硬さとされる。なお、このエージング工程は、エージング炉35を用いる他、ドラム33に中間基板材22を巻き取ったまま所定期間、保管するだけでもよい。
【0043】
次に、エージングが行われた中間基板材22に対して、印刷用ペーストを印刷する工程に進む。すなわち、エージング炉35から搬出された中間基板材22は、搬送ベルト36によってその長手方向に沿って下流側に搬送されながら、印刷用ペーストが印刷される。搬送ベルト36は、回転自在に支持された一対の回転ローラ37に掛け渡されている。
【0044】
印刷用ペーストを印刷するための構成としては、搬送ベルト36の上方に、中間基板材22の上面22aに対して電極ペーストおよび抵抗体ペーストを印刷するための第1印刷用ローラ41および第2印刷用ローラ42がそれぞれ設けられている。第1印刷用ローラ41は、第2印刷用ローラ42に対して上流側に設けられており、各印刷用ローラ41,42は、搬送ベルト36の側方から延び、かつ、その周面41a,42aが中間基板材22の上面22aに沿いながら縦方向に回転するようにそれぞれ配置されている。
【0045】
ここで、電極ペーストとしては、たとえば銀等を主成分とする導電性を有するものが用いられ、また、抵抗体ペーストとしては、所定の電気的抵抗特性を有する金属もしくは酸化金属からなるものが用いられる。
【0046】
また、搬送ベルト36の下流側には、中間基板材22の側面22cに対して電極ペーストを印刷するための第3印刷用ローラ43および第4印刷用ローラ44がそれぞれ設けられている。両印刷用ローラ43,44は、搬送される中間基板材22の下方から延びて設けられ、その周面43a,44aが中間基板材22の両側面22cを挟み込みながら横方向に回転するようにそれぞれ配置されている。
【0047】
さらに、第3および第4印刷用ローラ43,44の下流側には、中間基板材22の下面22bに電極ペーストを印刷するための第5印刷用ローラ45が設けられている。この第5印刷用ローラ45は、搬送される中間基板材22の側方から延びて設けられ、その周面45aが中間基板材22の下面22bに沿いながら縦方向に回転するように配置されている。
【0048】
以上の構成により、中間基板材22は、エージング炉35から搬出後、搬送ベルト36上に載置されて搬送されながら、まず、図示しない送風装置からの空気により乾燥される。そして、中間基板材22は、その上面22aが第1および第2印刷用ローラ41,42の周面41a,42aと当接される。これにより、図9に示すように、中間基板材22の上面22aの両端に、第1印刷用ローラ41によって電極ペーストEaが印刷される。その後、第2印刷用ローラ42によって、中間基板材22上面22aの所定領域であって、長手方向において所定間隔隔てて抵抗体ペーストRが印刷される。この場合、中間基板材22の上面22aにおける両端部では、抵抗体ペーストRが電極ペーストEaに一部オーバラップして印刷される。
【0049】
なお、両印刷用ローラ41,42の間、および第2印刷用ローラ42の下流側には、図示しない送風装置がそれぞれ設けられており、各印刷用ローラ41,42によって各印刷用ペーストが印刷された中間基板材22は、各送風装置からの空気により乾燥される。
【0050】
次いで、上面22aに各印刷用ペーストが印刷された中間基板材22は、搬送ベルト36によってさらに搬送され、側面22cが第3および第4印刷用ローラ43,44の周面43a,44aと当接される。これにより、中間基板材22の両側面22cには、図9に示すように、電極ペーストEcがそれぞれ印刷される。この場合、中間基板材22の上面22aに印刷された電極ペーストEaと、電気的につながるように電極ペーストEcが印刷される。
【0051】
なお、第3および第4印刷用ローラ43,44の下流側には、図示しない送風装置が設けられ、各印刷用ローラ43,44によって印刷用ペーストが印刷された中間基板材22は、送風装置からの空気により乾燥される。
【0052】
側面22cに電極ペーストEcが印刷された中間基板材22は、搬送ベルト36によってさらに搬送され、下面22bが第5印刷用ローラ45の周面45aと当接される。これにより、中間基板材22の下面22bには、その両端に電極ペーストEbが印刷される。この場合、上記した第3および第4印刷用ローラ43,44によって、中間基板材22の側面22cに印刷された電極ペーストEcと、電気的につながるように電極ペーストEbが印刷される。
【0053】
なお、第5印刷用ローラ45の下流側には、図示しない送風装置が設けられ、第5印刷用ローラ45によって電極ペーストEbが印刷された中間基板材22は、送風装置からの空気により乾燥される。
【0054】
このように、上記製造方法は、従来の製造方法における印刷方法とは全く異なり、細幅帯状に中間基板材22を形成し、それを搬送ベルト36によって搬送させながら、各印刷用ローラ41〜45によって中間基板材22の上下面22a,22bおよび側面22cに対して印刷用ペーストが印刷される。
【0055】
従来の製造方法では、集合基板全体に対して印刷用ペーストを印刷するために印刷用マスクを用いていたが、集合基板の焼成時における収縮に起因して、印刷用ペーストの位置ずれが生じることがあり、複数種類の印刷用マスクを準備するといった不経済な方法で印刷用ペーストが印刷されていた。しかしながら、上記方法によれば、印刷対象の全く異なる中間基板材22に対して印刷を行うので、上記印刷用マスクを必要とせず、印刷用ペーストの位置ずれを生じさせることもない。そのため、不良品の発生を抑制するとともに、製作コストの低減化を図ることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0056】
特に、第1および第2印刷用ローラ41,42は、縦方向に回転して印刷用ペーストを印刷するので、中間基板材22の上面22aには、印刷用ペーストが均一に印刷されるといった利点がある。
【0057】
また、本実施形態によれば、上記印刷用マスクを用いずに、印刷用ペーストを各印刷用ローラ41〜45によって中間基板材22に対して直接、印刷しているため、より小型の中間基板材22においても印刷用ペーストの位置ずれを生じさせることなく対応することができる。したがって、チップ型抵抗器の小型化を実現させることができる。
【0058】
なお、上記各印刷用ローラ41〜45は、図7に示す配列に限るものではなく、たとえば第5印刷用ローラ45がエージング炉35の最も近傍に配置されていてもよい。また、中間基板材22には、抵抗体ペーストのさらに上面に「G1」と呼称されるコート層が形成されてもよい。
【0059】
次に、各印刷用ローラ41〜45によって、印刷用ペーストが印刷された中間基板材22は、図9に示すように、搬送ベルト46上に載置されて搬送される。搬送ベルト46は、回転自在に支持された一対の回転ローラ47に掛け渡されている。
【0060】
上記搬送ベルト46の上方には、上下方向に移動自在なカッタ48が設けられている。カッタ48は、細幅帯状の中間基板材22の上面22aにCBスリット49を形成するために、および、細幅帯状の中間基板材22を、複数の基板個片が連なって構成される基板個片群50ごとに切断するために、用いられるものである。なお、カッタ48は、複数のCBスリット49を一度に形成するために、複数の刃を有する構成とされてもよい。
【0061】
搬送ベルト46によって搬送された中間基板材22は、その表面に、CBスリット49が形成される。CBスリット49は、基板個片ごとに分割するための目印となる側面視略V字状のスリットであり、中間基板材22の上面に所定間隔隔てて形成された隣り合う抵抗体ペーストの間の所定位置に形成される。
【0062】
そして、適当な数(たとえば約10個)のCBスリット49が連続的に形成された後、中間基板材22は、幅方向に沿って切断される。つまり適当な数の基板個片が連なった、基板個片群50に分割される。
【0063】
ここで、CBスリット49の深さは、中間基板材22の厚み方向に比較的深く、たとえば厚み方向の約半分の深さに形成することができる。すなわち、中間基板材22の状態においては、未だ基板および印刷用ペーストに対して焼成が行われておらず、また、エージング炉35においてエージングされているため、適度な硬度を有する変形可能な状態とされる。そのため、カッタ48によってCBスリット49の形成を容易に行うことができる。
【0064】
また、従来の製造方法では、集合基板に対してBBスリットおよびCBスリットを形成し、各スリットごとにその深さを異なるようにするといった精度の高い加工が要求されていたが、上記実施形態では、細幅帯状の中間基板材22に対してCBスリット49を形成するだけでよいので、深さを調整する精度の高い加工は必要とされない。したがって、生産性の向上を図ることができる。なお、基板個片57の短手方向における長さを変更したい場合には、カッタ48によるCBスリット49の形成位置を変更することにより可能である。
【0065】
図9に戻り、搬送ベルト46の下流側には、搬送ベルト51および焼成炉52が備えられている。搬送ベルト51は、回転自在に支持された一対の回転ローラ53に掛け渡され、メッシュ状に形成されている。焼成炉52は、切断された基板個片群50を焼成するためのものであり、搬送ベルト51が焼成炉52内を通過可能なように、一体的に設けられている。
【0066】
カッタ48によって分割されて形成された基板個片群50は、搬送ベルト46によって搬送ベルト51上に配列される。そして、搬送ベルト51によって下流側に搬送され、焼成炉52に導かれる。この焼成炉52において、基板個片群50は、それに印刷された電極ペーストおよび抵抗体ペーストと同時に焼成される。通常、基板と各ペーストとの焼成温度は異なっているが、基板材料に、上述したアルミナを含有するガラスセラミックスを用いることにより、焼成温度をほぼ同等にすることができ、上記のように、基板個片群50と各ペーストとを同時に焼成することができる。
【0067】
従来の製造方法では、基板を製作する際に基板自体を焼成し、さらに各ペーストを印刷する際に、その都度焼成するというように、複数の焼成工程を含んでいたが、本実施形態のように、基板の焼成、および各ペーストの焼成を一度に行うことにより、焼成工程を少なくできる。そのため、焼成のための設備の削減化および製造時間の短縮化を図ることができる。
【0068】
なお、上記実施形態では、基板個片群50に分割した後、焼成を行ったが、これに代わり、細幅帯状の中間基板材22の状態のまま、焼成を行うようにしてもよい。
【0069】
次いで、上記基板個片群50を、各基板個片に分割する工程に進む。すなわち、焼成炉52において焼成された基板個片群50は、その後移動され、図10に示すように、伸縮自在なエキスパンドテープ54に対して両面テープ等によって仮接着される。そして、図11に示すように、直径が異なり、かつ上下に配された一対の分割用ローラ55,56によって基板個片群50がそれぞれチップ型抵抗器の最終的な形である基板個片57ごとに分割される。
【0070】
すなわち、基板個片群50は、一対の分割用ローラ55,56によって上下方向から押圧される。この場合、下方の分割用ローラ56の径が上方の分割用ローラ55の径より小のため、基板個片群50は、両端が下方に折れ曲がるように反り、CBスリット49に沿って分割される(図11(b) 参照)。
【0071】
このように、基板個片群50は、その表面に形成されたCBスリット49に沿って分割されるので、その分割がスムーズに行い得る。また、CBスリット49の深さは、比較的深く形成されているので、不適切な切れ目や裂け目を形成することなく分割され、これにより、不良品の発生を抑制することができる。
【0072】
なお、基板個片群50を基板個片57ごとに分割する方法としては、図12に示すように、カッタ58を用いてもよい。すなわち、基板個片群50および両面テープは、上下方向に移動自在なカッタ58により幅方向に沿って切断され、基板個片57にされる。
【0073】
また、上述したように、上記製造方法によれば、グリーンシート18の厚みを変更するには、ドクターブレード13の配置を変更することにより可能である。また、中間基板材22の幅を変更するには、複数の回転スリッタ21の配置を変更することにより可能である。さらに、基板個片57の短手方向における長さを変更するには、カッタ48によるCBスリット49の形成位置を変更することにより可能である。したがって、基板個片57の厚み、幅、および短手方向の長さをそれぞれ任意の長さに自在に調整することができる。そのため、基板個片57のサイズを変更して作製する場合に、たとえば金型工法等を用いて基板個片57を作製する場合に比べて、容易にかつ即座に対応することができる。
【0074】
次に、分割された基板個片57に対して抵抗値の調整を行う工程が行われる。すなわち、図13に示すように、エキスパンドテープ54を伸長させて適当な張り具合で保持し、エキスパンドテープ54上に貼着されていた基板個片57を、所定間隔をあけて広げて配置する。そして、この状態で、基板個片57の側面に形成される電極被膜71に対して一対の電極ローラ60をあてがい、各基板個片57ごとに、この電極ローラ60によって抵抗値を測定しながら、たとえばレーザ光によるトリミングを行い、所定の抵抗値を有するように調整する。
【0075】
このように、抵抗値調整において、予めエキスパンドテープ54上に基板個片57を配置させておけば、エキスパンドテープ54を伸長させた際に、基板個片57も所定の間隔をあけて広げられて配置される。そのため、互いに隣り合う基板個片57同士を接触させることを防止して、トリミング作業を良好に実施することができる。なお、上記の抵抗値調整においては、電極ローラ60を用いずに、所定のプローブによって各基板個片57の抵抗値を測定しながら、トリミング作業を行ってもよい。
【0076】
基板個片57ごとに抵抗値の調整が終了すれば、抵抗被膜72の上面を覆うように、それを保護するための保護用コート層73が形成される(図16参照)。エキスパンドテープ54上に担持されたまま基板個片57上に保護用コート層73を形成するには、保護用コート層73の材質として、たとえばUV硬化樹脂が適当とされる。その後、基板個片57は、エキスパンドテープ54から剥がし取られ、基板個片57ごとに、めっき処理および洗浄処理がされた後、その表面に標印が行われ、テーピング等されて製品として梱包される。
【0077】
なお、上記実施形態においては、基板個片群50の段階で焼成を行うようにしたが、たとえば図14に示すように、焼成する前に、搬送ベルト46上の中間基板材22を、カッタ48によって直接、基板個片57ごとに分割し、その後焼成炉52において基板個片57ごとに焼成するようにしてもよい。すなわち、搬送ベルト46において分割された基板個片57は、搬送ベルト46から搬送ベルト51上に落下し、そのまま焼成炉52に導かれる。なお、図14中、61は、たとえばCCDカメラからなる認識用カメラであり、上記各印刷用ローラ41〜45(図8参照)におけるペーストの印刷が適当に行われているか否かを確認するためのものである。
【0078】
このようにして分割され焼成された基板個片57は、図15に示すように、格子状に設けられたしきい片62aを有するトレイ62に移される。すなわち、基板個片57は、トレイ61内の、しきい片62aによって区画された領域に並べられ、各基板個片57ごとに抵抗値調整が行われる。なお、上記のように、基板個片57ごとに分割して焼成すると、上記のように、焼成後にトリミングを行う際、分割された各基板個片57をトレイ62内に1つ1つ並べる必要があり、手間のかかる作業が発生する。そのため、上述したように、焼成する前に、中間基板材22を基板個片群50に分割し、エキスパンドテープ54を用いると、焼成後にトリミングを行う際に、基板個片57を並べ直す必要がなく、トリミングを行うときの作業が簡便化される。そのため、作業時間の短縮化が図れる。
【0079】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、チップ型抵抗器の製造方法について説明したが、チップ型抵抗器に限らず、積層セラミックコンデンサやタンタルコンデンサ等に上記製造方法を適用するようにしてもよい。また、各工程におけるチップ型抵抗器の製造方法は、上述した方法に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るチップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図2】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図3】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図4】中間基板材の断面図である。
【図5】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図6】中間基板材の断面図である。
【図7】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図8】中間基板材の要部斜視図である。
【図9】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図10】中間基板材が貼着されたエキスパンドテープの要部斜視図である。
【図11】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図12】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図13】チップ型抵抗器の製造方法を説明するための図である。
【図14】チップ型抵抗器の他の製造方法を説明するための図である。
【図15】チップ型抵抗器を収納したトレイの斜視図である。
【図16】チップ型抵抗器の断面図である。
【図17】集合基板の平面図である。
【図18】図17に示す集合基板の詳細平面図である。
【図19】印刷用マスクの概略平面図である。
【図20】集合基板の横断面図である。
【符号の説明】
18 グリーンシート
21 回転スリッタ
22 中間基板材
25 段差
27 段差凹部
35 エージング炉
41〜45 印刷用ローラ
49 CBスリット
52 焼成炉
55,56 分割用ローラ
57 基板個片
Claims (6)
- 長手状に延びるグリーンシートを連続的に形成する工程と、
このグリーンシートをチップ型抵抗器の幅と対応する所定幅ごとに切断して上記グリーンシートの長手方向に延びる細幅帯状の中間基板材を形成する工程と、
上記中間基板材を所定時間の間、エージングする工程と、
上記エージングを行った中間基板材に対して電極ペーストおよび抵抗体ペーストを印刷する工程と、
上記中間基板材に対して、その長手方向と直交する方向に、基板個片に分割するためのスリットを形成する工程と、
上記中間基板材、ならびに、それに印刷された電極ペーストおよび抵抗体ペーストを同時に焼成する工程と、
上記中間基板材を上記スリットに沿って分割し、上記基板個片を形成する工程と、
上記基板個片に対して抵抗値の調整を行う工程とを含むことを特徴とする、チップ型抵抗器の製造方法。 - 上記中間基板材を形成する工程では、
上記中間基板材を形成後、上記各中間基板材の少なくとも上面端部に、長手方向に沿って段差が形成される、請求項1に記載のチップ型抵抗器の製造方法。 - 上記中間基板材を形成する工程では、
上記中間基板材を形成後、各中間基板材の上面中央部に、長手方向に沿って段差凹部が形成される、請求項1に記載のチップ型抵抗器の製造方法。 - 上記中間基板材に対して上記電極ペーストおよび上記抵抗体ペーストを印刷する工程では、
上記中間基板材が所定方向に搬送され、上記電極ペーストおよび上記抵抗体ペーストを印刷するための複数の印刷用ローラが上記中間基板材の上面、側面および下面に対して当接しながら回転することにより、上記中間基板材の各面に上記電極ペーストおよび上記抵抗体ペーストが印刷される、請求項1ないし3のいずれかに記載のチップ型抵抗器の製造方法。 - 上記中間基板材を上記スリットに沿って分割し、上記基板個片を形成する工程では、
上記中間基板材を収縮自在な収縮テープ上に貼着させ、径の異なる一対の分割用ローラを、上記中間基板材の上下方向から狭圧することにより、上記中間基板材を上記スリットに沿って分割する、請求項1ないし4のいずれかに記載のチップ型抵抗器の製造方法。 - 上記基板個片の抵抗値調整を行う工程では、
収縮自在な収縮テープ上に、上記基板個片を貼着し、上記収縮テープを伸長させた状態で、一対の電極ローラを上記基板個片の電極被膜に当接させながら抵抗値調整を行う、請求項1ないし5のいずれかに記載のチップ型抵抗器の製造方法。
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