JP4702819B2 - コンドロイチン合成酵素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンドロイチン合成酵素をコードするDNAを含むベクター、コンドロイチン合成酵素の製造方法、コンドロイチンの二糖繰返し単位を有する糖鎖の製造方法、ならびに、コンドロイチン合成酵素に対するハイブリダイゼーション用プローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンドロイチン硫酸はグリコサミノグリカン(GAG)の一種であり、細胞表面や細胞外マトリックスにおいてプロテオグリカンとして存在する。コンドロイチン硫酸は、哺乳類の発生過程における脳において神経系ネットワーク形成に重要な役割を担っていることから(Arch. Biochem. Biophys. 374, 24-34 (2000); Trends Glycosci. Glycotechnol. 12, 321-349 (2000))注目を集めるに至っている。
【0003】
コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸残基(GlcUA)とN-アセチルガラクトサミン残基(GalNAc)の繰り返し二糖単位から構成される直鎖状のポリマー構造を有しており、独特な4糖構造(GlcUAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1)を介して、コアタンパク質のセリン残基に共有結合する(Glycoproteins, ed. Gottschalk, A. (Elsevier Science, New York), pp. 491-517 (1972); The Biochemistry of Glycoproteins and Proteoglycans, ed. Lennarz, W. J. (Plenum, New York), pp. 267-371 (1980))。
【0004】
GAGの生合成は、UDP-糖から単糖が糖鎖の非還元末端に順々に転移されることによって行われる。ヘパリン/ヘパラン硫酸の二糖繰り返し構造の生合成に関与するグリコシルトランスフェラーゼはウシ血清から精製され、そのcDNAクローニングによって、単一のタンパク質がN-アセチルグルコサミン残基(GlcNAc)とGlcUAの両方のトランスフェラーゼ反応を触媒することが判明している。
【0005】
一方、コンドロイチン硫酸の二糖単位の生合成に関与するグリコシルトランスフェラーゼは、細菌由来のコンドロイチン合成酵素(J. Biol. Chem. 275, 24124-24129 (2000))を除いてまだクローニングされていない。ニワトリの軟骨(J. Biol.Chem. 272, 14399-14403 (1997))とウシ血清(Eur. J. Biochem. 264, 461-467 (1999))からGlcUAトランスフェラーゼII(GlcAT-II)およびGalNAcトランスフェラーゼII(GalNAcT-II)が精製されてはいるが、これらの酵素を均一に精製することが困難であるため、cDNAクローニングは未だ行われていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ヒトコンドロイチン合成酵素をコードするDNAを含むベクター、ヒトコンドロイチン合成酵素の製造方法、コンドロイチンの二糖繰返し単位を有する糖鎖の製造方法、ならびに、ヒトコンドロイチン合成酵素に対するハイブリダイゼーション用プローブを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ヒトcDNAデータベースを、特定のキーワードに基づいて検索することにより、ヒトコンドロイチン合成酵素をコードするDNAの候補を見出すのに成功するとともに、候補DNAを実際に発現させることにより、候補DNAがヒトコンドロイチン合成酵素をコードするDNAであることを確認し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 下記(a)〜(c)のいずれかのDNAを保持するベクターであって、前記(b)又は(c)のDNAが、下記(イ)及び(ロ)の触媒活性を有するタンパク質をコードしている前記ベクター(但し、配列番号2におけるアミノ酸番号1〜802で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAを含むものを除く)。
(a)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(b)上記(a)に記載のDNA若しくは当該DNAに相補的なDNA又はこれらのDNAの塩基配列の一部を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(c)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または転位したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(イ)コンドロイチンに、UDP-GalNAcからGalNAcを転移する。
(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を示す。)
(ロ)コンドロイチンに、UDP-GlcUAからGlcUAを転移する。
(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GlcUAはグルクロン酸残基を示す。)
【0010】
(2) 前記(a)のDNAが、配列番号1におけるヌクレオチド番号633〜2900で示されるDNAである、(1)に記載のベクター。
【0011】
(3) タンパク質が可溶性である、(1)又は(2)に記載のベクター。
【0012】
(4) 発現ベクターである(1)〜(3)のいずれかに記載のベクター。
【0013】
(5) 下記(a)〜(c)のいずれかのDNAを保持するベクターであって、前記(b)又は(c)のDNAが、下記(イ)及び(ロ)の触媒活性を有するタンパク質をコードしている前記ベクターによって宿主が形質転換された形質転換体。
(a)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(b)上記(a)に記載のDNA若しくは当該DNAに相補的なDNA又はこれらのDNAの塩基配列の一部を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(c)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または転位したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(イ)コンドロイチンに、UDP-GalNAcからGalNAcを転移する。
(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を示す。)
(ロ)コンドロイチンに、UDP-GlcUAからGlcUAを転移する。
(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GlcUAはグルクロン酸残基を示す。)
【0014】
(6) 前記(a)のDNAが、配列番号1におけるヌクレオチド番号633〜2900で示されるDNAである、(5)に記載の形質転換体。
【0015】
(7) タンパク質が可溶性である、(5)又は(6)に記載の形質転換体。
【0016】
(8) (5)〜(7)のいずれか1項に記載の形質転換体を生育させ、その生育物からコンドロイチン合成酵素を採取することを特徴とする、コンドロイチン合成酵素の製造方法。
【0017】
(9) 下記(A)又は(B)に示すアミノ酸配列をそのアミノ酸配列中に包含し、かつ下記(イ)及び(ロ)の触媒活性を有する酵素タンパク質を含有する、コンドロイチン合成用試薬。
(A)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列。
(B)上記(A)において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列。
(イ)コンドロイチンに、UDP-GalNAcからGalNAcを転移する。
(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を示す。)
(ロ)コンドロイチンに、UDP-GlcUAからGlcUAを転移する。
(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GlcUAはグルクロン酸残基を示す。)
【0018】
(10) 酵素タンパク質が可溶性である(9)の試薬。
【0019】
(11) (9)又は(10)に記載の試薬を、GalNAc供与体及び下記一般式(1)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(3)で示される糖鎖の製造方法。
【0020】
GlcUA-GalNAc-R1 (1)
GalNAc-GlcUA-GalNAc-R1 (3)
(各式中、GlcUA及びGalNAcは、いずれも前記と同義である。 - はグリコシド結合を、R1は任意の基を示す。)
【0021】
(12) (9)又は(10)に記載の試薬を、GlcUA供与体及び下記一般式(2)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(4)で示される糖鎖の製造方法。
【0022】
GalNAc-GlcUA-R2 (2)
GlcUA-GalNAc-GlcUA-R2 (4)
(各式中、GlcUA、GalNAc、及び - は、いずれも前記と同義である。R2は任意の基を示す。)
【0023】
(13) (9)又は(10)に記載の試薬を、GalNAc供与体及びGlcUA供与体、並びに下記一般式(1)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(5)及び(7) から選ばれる糖鎖の製造方法。
【0024】
GlcUA-GalNAc-R1 (1)
(GlcUA-GalNAc)n-GlcUA-GalNAc-R1 (5)
GalNAc-(GlcUA-GalNAc)n-GlcUA-GalNAc-R1 (7)
(各式中、nは1以上の整数を示し、GlcUA、GalNAc、及び - は、いずれも前記と同義である。またR1は任意の基を示す。)
【0025】
(14) (9)又は(10)に記載の試薬を、GalNAc供与体及びGlcUA供与体、並びに下記一般式(2)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(6)及び(8) から選ばれる糖鎖の製造方法。
【0026】
GalNAc-GlcUA-R2 (2)
(GalNAc-GlcUA)n-GalNAc-GlcUA-R2 (6)
GlcUA-(GalNAc-GlcUA)n-GalNAc-GlcUA-R2 (8)
(各式中、nは1以上の整数を示し、GlcUA、GalNAc、及び - は、いずれも前記と同義である。またR2はいずれも任意の基を示す。)
【0027】
(15) 配列番号1におけるヌクレオチド番号495〜2900で示される塩基配列又はその一部に相補的な配列を有するハイブリダイゼーション用プローブ。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
(1)本発明ベクター
本発明ベクターは、下記(a)〜(c)のいずれかのDNAを保持するベクターである(但し、配列番号2におけるアミノ酸番号1〜802で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAを含むものを除く)。
(a)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
(b)上記(a)に記載のDNA若しくは当該DNAに相補的なDNA又はこれらのDNAの塩基配列の一部を有するDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(c)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または転位したアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA。
【0029】
前記(b)又は(c)のDNAは、下記(イ)及び(ロ)の触媒活性を有するタンパク質をコードしている。
(イ)コンドロイチンに、UDP-GalNAcからGalNAcを転移する。
(ロ)コンドロイチンに、UDP-GlcUAからGlcUAを転移する。
【0030】
なお、コンドロイチンは、GlcUAとGalNAcの繰り返し二糖単位からなるポリマーであり、その非還元末端がGlcUAであるものとGalNAcであるものとの双方を含んでいる。よって、GalNAcの転移は非還元末端がGlcUAであるコンドロイチンに対するものであり、GlcUAの転移は非還元末端がGalNAcであるコンドロイチンに対するものであると言える。
【0031】
後記実施例に記載したように、配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質は、ヒトコンドロイチン合成酵素の酵素活性を有することが確認されている。配列番号2に示すアミノ酸配列のアミノ酸番号1〜46で示されるアミノ酸配列の部分は、膜貫通領域を含むと考えられる。よって、アミノ酸番号1〜46で示されるアミノ酸配列をコードする配列を含まないDNAを用いることにより、可溶性形態でコンドロイチン合成酵素を発現させることができる点で好ましい。すなわち、「アミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列をコードするDNAであって、アミノ酸番号1〜46で示されるアミノ酸配列をコードする配列を含まないDNA」を保持するベクターが好ましい。
【0032】
天然に存在するタンパク質には、それをコードするDNAの多形や変異の他、生成後のタンパク質の細胞内および精製中の修飾反応などによってそのアミノ酸配列中にアミノ酸の置換、欠失、挿入又は転位等の変異が起こりうるが、それにもかかわらず変異を有しないタンパク質と実質的に同等の生理、生物学的活性を示すものがあることが知られている。このように構造的に若干の差違があってもその機能については大きな違いが認められないタンパク質をコードするDNAを保持するベクターは、本発明ベクターに包含される。人為的にタンパク質のアミノ酸配列に上記のような変異を導入した場合も同様であり、この場合にはさらに多種多様の変異体を作製することが可能である。例えば、ヒトインターロイキン2(IL-2)のアミノ酸配列中の、あるシステイン残基をセリンに置換したタンパク質がインターロイキン2活性を保持することが知られている(Science,224,1431(1984))。また、ある種のタンパク質は、活性には必須でないペプチド領域を有していることが知られている。例えば、細胞外に分泌されるタンパク質に存在するシグナルペプチドや、プロテアーゼの前駆体等に見られるプロ配列などがこれにあたり、これらの領域のほとんどは翻訳後、または活性型タンパク質への転換に際して除去される。このようなタンパク質は、一次構造上は異なった形で存在しているが、最終的には同等の機能を有するタンパク質である。このようなタンパク質をコードするDNAとして上記(b)及び(c)のDNAが挙げられる。
【0033】
上記(b)における「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等参照)。「ストリンジェントな条件」として具体的には、50%ホルムアミド、4×SSC、50mMHEPES(pH7.0)、10×Denhardt's solution、100μg/mlサケ精子DNAを含む溶液中、42℃でハイブリダイズさせ、次いで室温で2×SSC、0.1%SDS溶液、50℃下で0.1×SSC、0.1%SDS溶液で洗浄する条件が挙げられる。
【0034】
上記(c)における、なお本明細書における「数個のアミノ酸」とは、後述する(イ)及び(ロ)の触媒活性が失われない程度の変異を起こしてもよいアミノ酸の数を示し、例えば800アミノ酸残基からなるタンパク質の場合、4〜40程度、好ましくは4〜20、より好ましくは4〜10の数を示す。
【0035】
なお、本発明ベクターに保持されるDNAとして、遺伝暗号の縮重による種々の異なった塩基配列を有するDNAが存在することは、当業者であれば容易に理解されるところである。
【0036】
前記(イ)及び(ロ)の触媒活性は、グリコシルトランスフェラーゼの一般的なアッセイ方法によって検出することができる。
【0037】
具体的には、後記実施例に示すように、UDP-N−アセチルガラクトサミン(UDP-GalNAc)を供与体として用い、コンドロイチンへのGalNAcの転移反応を利用した測定方法、及び、UDP-グルクロン酸(UDP-GlcUA)を供与体として用い、コンドロイチンへのGlcUAの転移反応を利用した測定方法を用いることによってそれぞれ測定できる。よって当業者であれば、これらの転移活性の有無を指標として、該活性を実質的に害さない1つ以上の、特に1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入又は転位を容易に選択することができる。また、ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAの中から前記(イ)及び(ロ)の触媒活性を有するタンパク質をコードするDNAを容易に選択できる。
【0038】
なお、ここで用いるコンドロイチンには、非還元末端がGlcUAであるものと、GalNAcであるものとの双方が含まれることは、前記で説明した通りである。
【0039】
また、前記(b)又は(c)のDNAによってコードされるタンパク質は、さらに下記(ハ)の全ての性質を有していることが好ましい。
(ハ)下記のいずれの受容体にも、下記の供与体(カッコ内)から実質的に単糖を転移しない。
【0040】
・Galβ1-3Galβ1-4Xyl(UDP-GlcUA)
・GlcUAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Ser(UDP-GalNAc)
・α−トロンボモジュリン(UDP-GalNAc)
・ヒツジ顎下腺アシアロムチン(UDP-Gal)
・GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc(UDP-Gal)
【0041】
なお、α−トロンボモジュリンには、GlcUAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylからなる4糖が含まれている。またヒツジ顎下腺アシアロムチンには、GalNAcα1-O-Ser/Thrが含まれている。
【0042】
なお、上記において、Galはガラクトース残基を、Xylはキシロース残基を、Serはセリン残基を、Thrはスレオニン残基をそれぞれ示し、その他は前記と同義である。
【0043】
本発明ベクターに保持されるDNAにより保持されるタンパク質は可溶性タンパク質であることが好ましい。可溶性タンパク質とは、通常には膜貫通ドメインを有さないタンパク質であり、発現させたときに水性溶媒等に可溶であり、精製が容易なことから好ましいものである。
【0044】
本発明ベクターに保持されるDNAは、配列番号2におけるアミノ酸番号1〜46で示されるアミノ酸配列をコードする配列を含まないものが好ましく、最も好ましいDNAは、配列番号1におけるヌクレオチド番号633〜2900で示されるDNAである。
【0045】
またこのベクターは、後述するコンドロイチン合成酵素の製造方法に好ましく用いられることから、発現ベクターであることが好ましい。
【0046】
例えば、アミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列をコードするDNA(アミノ酸番号1〜46で示されるアミノ酸配列をコードする配列を含まない)を保持する発現ベクターは、以下の手法により調製することができる。
【0047】
<A>ベクターに組み込むDNAの調製
HUGEプロテインデータベースにおいて「KIAA0990」として特定されるcDNAクローン(GenBankアクセション番号;AB023207)を入手し、これを鋳型として、XhoI部位を含む5'-プライマー(5'-CCCTCGAGGGGCTGCCGGTCCGGGC-3'(配列番号3))、および、終止コドンから138bp下流に位置するXhoI部位を含む3'-プライマー(5'-CCCTCGAGCAATCTTAAAGGAGTCCTATGTA-3'(配列番号4))を用いてPCRで増幅を行う。
【0048】
PCR反応は一般的な方法を用いることができるが、例えば5%(v/v)ジメチルスルホキシド中で、Pfuポリメラーゼ(Stratagene社、ラホヤ、カリフォルニア州)を用いて、94°Cで30秒、55°Cで30秒、および72°Cで180秒のサイクルを34サイクル行うことにより実施することができる。
【0049】
<B>ベクターへのDNA断片の導入
上記手法によって得られたDNAを公知のベクターに導入することで本発明ベクターを調製することができる。
【0050】
上記DNAを導入するベクターとしては、例えば、導入したDNAを発現させることが可能な適当な発現ベクター(ファージベクター或いはプラスミドベクター等)を使用することができ、本発明ベクターを組み込む宿主細胞で上記DNAを発現することが可能なベクターを適宜選択する。このような宿主−ベクター系としては、COS細胞、3LL-HK46細胞などの哺乳類細胞と、pGIR201(Kitagawa, H., and Paulson, J. C. (1994) J. Biol. Chem. 269, 1394-1401)、pEF-BOS(Mizushima, S., and Nagata, S. (1990) Nucleic Acid Res. 18, 5322)、pCXN2(Niwa, H., Yamanura, K. and Miyazaki, J. (1991) Gene 108, 193-200)、pCMV-2(イーストマン コダック(Eastman Kodak)製)、pCEV18、pME18S(丸山ら,Med. Immunol., 20, 27(1990))又はpSVL(ファルマシア バイオテック社製)等の哺乳類細胞用発現ベクターの組み合わせ、大腸菌(E. coli)と、pTrcHis(インビトロゲン社製)、pGEX(ファルマシア バイオテック社製)、pTrc99(ファルマシア バイオテック社製)、pKK233-3(ファルマシア バイオテック社製)、pEZZZ18(ファルマシア バイオテック社製)、pCH110(ファルマシア バイオテック社製)、pET(ストラタジーン社製)、pBAD(インビトロゲン社製)、pRSET(インビトロゲン社製)、及びpSE420(インビトロゲン社製)等の原核細胞用の発現ベクターとの組み合わせの他、宿主細胞として昆虫細胞、酵母、枯草菌などが例示され、これらに対応する各種ベクターが例示される。上述の宿主−ベクター系の中でも特に哺乳類細胞とpEF-BOSとの組み合わせが好ましい。
【0051】
また、上記DNAを組み込むベクターは、組み込んだDNAがコードするタンパク質とマーカーペプチドとの融合タンパク質を発現するように構築されたものを用いることもでき、本発明ベクターを用いて発現されるコンドロイチン合成酵素を精製する場合には特に好ましい。上記マーカーペプチドとしては例えばプロテインA、インスリンシグナル配列、His、FLAG、CBP(カルモジュリン結合タンパク質)、GST(グルタチオン S−トランスフェラーゼ)などが挙げられる。プロテインAと融合させれば容易にアフィニティー精製することが可能となり、インスリンシグナル配列等と融合させれば酵素を細胞外(培地等)に分泌させることができる。
【0052】
いずれのベクターを用いる場合であっても常法に従って、上記DNAとベクターとを連結することが可能なように例えば制限酵素などによって処理し、必要に応じて平滑化や粘着末端の連結を行った後、前記DNAとベクターとの連結をすることが可能である。
【0053】
具体的には、例えば上記<A>で得られたDNA(PCR断片)をXhoIで消化し、断片の両端をクレノウ断片(New England Biolabs, Beverly、マサチューセッツ州)、dCTP及びdTTPを用いて部分的に充填し、BamHIで消化したpGIR201protA(J. Biol. Chem., 269, 1394-1401 (1994))ベクターについても同様にdATPとdGTPで部分的に充填する。これにより得られた断片をpGIR201protAにサブクローニングし、上記<A>で得られたDNAによってコードされるDNAと、ベクター中のインスリンシグナル配列およびプロテインA配列とを融合させる。この融合タンパク配列を含むNheI断片を、発現ベクターpEF-BOS(Nucleic Acid Res., 18, 5322 (1990))のXbaI部位に挿入することにより、インスリンシグナル配列及びプロテインAと融合したコンドロイチン合成酵素を発現する発現ベクターを得ることができる。
【0054】
(2)本発明形質転換体
本発明形質転換体は、本発明ベクター(配列番号2におけるアミノ酸番号1〜802で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAを含むものも含む)によって宿主が形質転換された形質転換体である。
【0055】
ここでいう「宿主」は、本発明ベクターによる組換えが可能なものであればよいが、本発明ベクターの保持するDNA又はそのDNAを組み込んだ組換えベクターの機能を発揮できるものが好ましい。宿主としては、動物細胞、植物細胞、微生物細胞(菌体)が包含され、COS細胞(COS-1細胞、COS-7細胞等)、3LL-HK46細胞などの哺乳類細胞、大腸菌(E. coli)、昆虫細胞、酵母、枯草菌などが例示される。宿主は、本発明ベクターにあわせて適宜選択することができるが、例えばpEF-BOSをベースとする本発明ベクターを用いる場合には哺乳類由来の細胞を選択することが好ましく、中でもCOS細胞が好ましい。
【0056】
宿主の本発明ベクターによる形質転換は、常法によって行うことができる。例えば、市販のトランスフェクション用試薬を用いる方法や、DEAE-デキストラン法、エレクトロポレーション法等によって本発明ベクターを宿主に導入し、形質転換を行うことができる。
【0057】
このようにして得られる本発明形質転換体は、後述する通り、コンドロイチン合成酵素の製造等に用いることができる。
【0058】
(3)コンドロイチン合成酵素の製造方法
本発明のコンドロイチン合成酵素の製造方法は、本発明形質転換体を生育させ、その生育物からコンドロイチン合成酵素を採取することを特徴とする。
【0059】
ここで「生育」とは、本発明形質転換体である細胞や微生物自体の増殖、本発明形質転換体である細胞を組み込んだ動物、昆虫等の生育を含む概念である。また、ここでいう「生育物」とは、本発明形質転換体を生育させた後の培地(培養液の上清)及び培養された宿主細胞、分泌物、排出物等を包含する概念である。
【0060】
生育の条件(培地や培養条件等)は、用いる宿主に合わせて適宜選択される。
【0061】
この製造方法によれば、用いる形質転換体に応じて種々の形態のコンドロイチン合成酵素を産生させることができる。
【0062】
例えば本発明ベクターとして、配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列をコードするDNAを保持する発現ベクターによって形質転換された形質転換体を生育させれば、可溶性のコンドロイチン合成酵素が産生される。
【0063】
また、配列番号2におけるアミノ酸番号1〜802で示されるアミノ酸配列をコードするDNAを保持する発現ベクターによって形質転換された形質転換体を生育させれば、不溶性(膜結合性)のコンドロイチン合成酵素が産生される。
【0064】
さらに、マーカーペプチドとの融合タンパク質を発現するよう構築された発現ベクターによって形質転換された形質転換体を生育させれば、マーカーペプチドと融合したコンドロイチン合成酵素が産生される。
【0065】
生育物からのコンドロイチン合成酵素の採取は、産生されるコンドロイチン合成酵素の形態に応じて、公知のタンパク質の抽出・精製方法によって行うことができる。
【0066】
例えばコンドロイチン合成酵素が、培地(培養液の上清)中に分泌される可溶性の形態で産生される場合には、培地を採取し、これをそのままコンドロイチン合成酵素として用いてもよい。またコンドロイチン合成酵素が細胞質中に分泌される可溶性の形態、又は不溶性(膜結合性)の形態で産生される場合には、窒素キャビテーション装置を用いる方法、ホモジナイズ、ガラスビーズミル法、音波処理、浸透ショック法、凍結融解法等の細胞破砕による抽出、界面活性剤抽出、またはこれらの組み合わせ等の処理操作によってコンドロイチン合成酵素を抽出することができ、抽出物をそのままコンドロイチン合成酵素として用いてもよい。
【0067】
これらの培地や抽出物から、コンドロイチン合成酵素をさらに精製することもでき、かつ好ましい。精製は、不完全な精製(部分精製)であっても、完全な精製であってもよく、コンドロイチン合成酵素の使用目的等に応じて適宜選択することができる。
【0068】
精製方法として具体的には、例えば硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸ナトリウム等による塩析、遠心分離、透析、限外濾過法、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲルろ過法、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法等や、これらの組み合わせ等の処理操作が挙げられる。
【0069】
例えば、コンドロイチン合成酵素をプロテインAとの融合タンパク質として産生させれば、IgGを結合させた固相を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって簡便に精製することができる。同様に、Hisとの融合タンパク質として産生させれば、磁性ニッケルを結合させた固相を用いることができ、FLAGとの融合タンパク質として産生させれば抗FLAG抗体を結合させた固相を用いることができる。さらにインスリンシグナルと融合させることにより、細胞破砕等の抽出操作が不要となる。
【0070】
精製されたコンドロイチン合成酵素の製造は、アミノ酸配列、作用、基質特異性等を分析することによって確認できる。
【0071】
(4)本発明試薬
本発明試薬は、下記(A)又は(B)に示すアミノ酸配列をその配列中に包含し、かつ下記(イ)及び(ロ)の触媒活性を有する酵素タンパク質を含有する、コンドロイチン合成用試薬である。
(A)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列。
(B)上記(A)において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列。
(イ)コンドロイチンに、UDP-GalNAcからGalNAcを転移する。
(ロ)コンドロイチンに、UDP-GlcUAからGlcUAを転移する。
【0072】
(A)及び(B)のアミノ酸配列は、本発明ベクターに関して説明した(a)及び(c)のDNAによりコードされるアミノ酸配列であり、上記(a)及び(c)のDNAがコードするアミノ酸配列に関して説明した通りである。(イ)及び(ロ)については、本発明ベクターに関して説明した通りである。
【0073】
本発明試薬に含有される酵素タンパク質には、配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列からなるもののみならず、アミノ酸番号1〜802で示されるアミノ酸配列からなるもの等も含まれる。
【0074】
本発明試薬は、上記(A)又は(B)の酵素タンパク質(コンドロイチン合成酵素)が有する「GalNAcの転移作用」及び「GlcUAの転移作用」を、コンドロイチンの合成試薬として応用したものである。
【0075】
本発明試薬はコンドロイチンの合成に用いるものである。本明細書において「コンドロイチンの合成」あるいは「コンドロイチン合成」とは、コンドロイチンに糖を転移・付加して、コンドロイチンの糖鎖を延長することを含む概念である。
【0076】
本発明試薬の形態も限定されず、溶液形態、凍結形態、凍結乾燥形態のいずれの形態であってもよい。またコンドロイチン合成酵素の活性に影響を与えない限りにおいて他の成分(例えば、試薬的に許容される担体等)を含んでいてもよい。
【0077】
(5)糖鎖の製造方法
本発明の糖鎖の製造方法は、いずれも本発明試薬を用いるものであり、使用する糖供与体と受容体基質に応じて、以下の4つに分けることができる。
【0078】
<1>本発明試薬を、GalNAc供与体及び下記一般式(1)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(3)で示される糖鎖の製造方法。
【0079】
GlcUA-GalNAc-R1 (1)
GalNAc-GlcUA-GalNAc-R1 (3)
【0080】
<2>本発明試薬を、GlcUA供与体及び下記一般式(2)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(4)で示される糖鎖の製造方法。
【0081】
GalNAc-GlcUA-R2 (2)
GlcUA-GalNAc-GlcUA-R2 (4)
【0082】
<3>本発明試薬を、GalNAc供与体及びGlcUA供与体、並びに下記一般式(1)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(5)及び(7)から選ばれる糖鎖の製造方法。
【0083】
GlcUA-GalNAc-R1 (1)
(GlcUA-GalNAc)n-GlcUA-GalNAc-R1 (5)
GalNAc-(GlcUA-GalNAc)n-GlcUA-GalNAc-R1 (7)
【0084】
<4>本発明試薬を、GalNAc供与体及びGlcUA供与体、並びに下記一般式(2)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(6)及び(8)から選ばれる糖鎖の製造方法。
【0085】
GalNAc-GlcUA-R2 (2)
(GalNAc-GlcUA)n-GalNAc-GlcUA-R2 (6)
GlcUA-(GalNAc-GlcUA)n-GalNAc-GlcUA-R2 (8)
【0086】
GalNAc供与体としては、ヌクレオシドジリン酸−GalNAcが好ましく、UDP-GalNAcが特に好ましい。
【0087】
GlcUA供与体としては、ヌクレオシドジリン酸−GlcUAが好ましく、UDP-GlcUAが特に好ましい。
【0088】
「接触」のさせ方は、本発明試薬中に含まれるコンドロイチン合成酵素、供与体、及び受容体(糖鎖)の分子が相互に接触して酵素反応が生ずる限りにおいて特に限定されない。例えばこれら三者が溶解した溶液中で接触させてもよい。また本発明試薬中に含まれるコンドロイチン合成酵素を適当な固相(ビーズ等)に結合させた固定化酵素や、限外濾過膜、透析膜等を用いる膜型リアクター等を用いて連続的に酵素反応させることもできる。また、PCT国際公開パンフレットWO00/27437号に記載された方法と同様に、受容体を固相に結合させて酵素反応させることもできる。さらに、供与体を再生(合成)するバイオリアクターを組み合わせて用いてもよい。
【0089】
また、上記<3>及び<4>においては、必ずしもGalNAc供与体とGlcUA供与体とを同時に本発明試薬及び上記一般式(1)又は(2)で示される糖鎖に接触させる必要はなく、これら供与体を交互に接触させてもよい。
【0090】
酵素反応させる条件は、コンドロイチン合成酵素が作用する条件である限りにおいて特に限定されないが、中性pH付近(例えばpH6.5程度)で反応させることが好ましく、当該pH下で緩衝作用を有する緩衝液中で反応を行うことがより好ましい。またこのときの温度もコンドロイチン合成酵素の活性が保持されている限りにおいて特に限定されないが、30〜40℃程度(例えば37℃)が例示される。またコンドロイチン合成酵素の活性を増加させる物質がある場合には、その物質を添加してもよい。例えばMn2+等を共存させることが好ましい。反応時間は、使用する本発明試薬、供与体及び受容体の量、並びにその他の反応条件に応じて当業者が適宜決定することができる。
【0091】
生成物からのコンドロイチンの単離等は、公知の方法によって行うことができる。
【0092】
また、本発明試薬(コンドロイチン合成酵素)と、硫酸基転移酵素(スルホトランスフェラーゼ)とを組み合わせて用いることによって、コンドロイチン硫酸を製造することもできる。
【0093】
例えば、上記の糖鎖の製造方法(コンドロイチンの製造方法)において、さらに硫酸基供与体(3'-ホスホアデノシン 5'-ホスホ硫酸(PAPS)など)と硫酸基転移酵素を共存せしめ、コンドロイチンの生成と硫酸基の転移とを同時に行うことにより、コンドロイチン硫酸を製造することができる。硫酸基転移酵素は、前記と同様に適当な固相(ビーズ等)に結合させた固定化酵素として用いてもよく、限外濾過膜、透析膜等を用いる膜型リアクターを用いて、連続的に反応させてもよい。この際、硫酸基供与体を再生(合成)するバイオリアクターを組み合わせて用いてもよい。
【0094】
また、本発明ベクターで形質転換された宿主(本発明形質転換体)において、直接コンドロイチンを生成させることにより、コンドロイチンを製造することもできる。
【0095】
さらに、本発明ベクターと硫酸基転移酵素をコードするcDNAとを共に宿主に導入し、宿主(硫酸基転移酵素をコードするcDNAを含有する本発明形質転換体)において、コンドロイチン合成酵素と硫酸基転移酵素とを同時に発現させ、宿主において直接コンドロイチン硫酸を製造することができる。
【0096】
ここで用いることができる硫酸基転移酵素(又はそれをコードするcDNA)は、コンドロイチンに硫酸基を転移する酵素(又はそれをコードするcDNA)であればよく、所望のコンドロイチン硫酸のタイプに応じて、公知のものから適宜選択することができる。また、硫酸基の転移位置が異なる2種類以上の硫酸基転移酵素(又はそれをコードするcDNA)を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
硫酸基転移酵素の一例として、例えばコンドロイチン6−O−硫酸基転移酵素(J. Biol. Chem., 275(28), 21075-21080 (2000))を挙げることができるが、これに限定されず、他の酵素を用いることもできる。
【0098】
(6)本発明プローブ
本発明プローブは、配列番号1におけるヌクレオチド番号495〜2900、好ましくは633〜2900で示される塩基配列又はその一部に相補的な配列を有するハイブリダイゼーション用プローブである。
【0099】
本発明プローブは、配列番号1におけるヌクレオチド番号495〜2900、好ましくは633〜2900で示される塩基配列又はその一部に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを作成し、これをハイブリダイゼーションに適した標識(例えば、放射性同位体)で標識することにより得ることができる。
【0100】
オリゴヌクレオチドの長さは、本発明プローブを用いるハイブリダイゼーションの条件によって適宜選定される。
【0101】
本発明プローブは、コンドロイチン硫酸の生物学的機能を調べる有用な道具となることが期待される。コンドロイチン硫酸は、広く発現し、かつ、多くの組織、特に脳において重要な役割を果たしているからである。このプローブはさらに、遺伝子と疾患との関連を探るのにも有用と考えられる。
【0102】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0103】
【実施例1】
(1)新規ヒトグリコシルトランスフェラーゼcDNAのインシリコ・クローニング(in silico cloning)
かずさDNA研究所(千葉県)のHUGEプロテインデータベース( HYPERLINK http://www.kazusa.or.jp/huge/) http://www.kazusa.or.jp/huge/)において、「一個の膜貫通ドメイン(one transmembrane domain)」と「ガラクトシルトランスフェラーゼファミリー(galactosyltransferase family)」をキーワードとしてスクリーニングを行った。この結果、一つのクローン(KIAA0990)が特定された(GenBankアクセション番号;AB023207)。このクローンは、塩基配列の解析から、494bpの5'-未翻訳領域、N-グリコシル化される可能性がある3つの部位(図1中の星印)を含む802個のアミノ酸から成るタンパク質をコードする2406 bpの、単一のオープンリーディングフレーム、および、1.7kbであってポリアデニル化シグナルを有すると予想される3'-未翻訳領域を含むことが明らかになった。塩基配列及びその塩基配列から推測されるアミノ酸配列を配列番号1に、アミノ酸配列のみを配列番号2に示す。
【0104】
このクローンをかずさDNA研究所から入手した。ノーザンブロット分析(実施例2参照)により、このクローンに相当するmRNAは、各種ヒト組織において、約5.0 kb長を有することが明らかになった。このことから、上記クローンのcDNAはほぼ全長であることが示唆された。推定されるアミノ酸配列は、91,728-Daのタンパク質に相当する。予想される翻訳開始部位は、Kozakの共通開始配列(Nucleic Acids Res. 12, 857-872 (1984))と一致し、かつ、インフレーム終止コドンが、割り当てられた開始ATGコドンの上流に存在した。
【0105】
Kyte-Doolittleのヒドロパシー分析(J. Mol. Biol. 157, 105-132 (1982))により、NH2末端領域に17個のアミノ酸残基からなる、1個の顕著な疎水性領域が存在することが明らかになった。これは、今日までにクローンされている多くの、ゴルジ局在性グリコシルトランスフェラーゼに特徴的な、II型膜貫通形態を持つことを予想させるものである(図1)。
【0106】
データベース検索により、このアミノ酸配列は、アミノ末端側では、ヒトのコア1 UDP-Gal:GalNAcα-R β1,3-Galトランスフェラーゼ(GenBankアクセション番号AF155582)に僅かに相同性を有しており、カルボキシル末端側ではヒトのUDP-Gal:GlcNAcβ-R β1,4-GalトランスフェラーゼII(GenBankアクセション番号AB024434)に僅かに相同性を有していた。相同性を有するグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子に特徴的な点として、異なるメンバーは供与体または受容体に関して異なった特異性を有するにも拘わらず、形成される糖鎖の結合様式はしばしば保存されている、という点を挙げることができる(Biochim. Biophys. Acta 1254, 35-53 (1999))。
【0107】
したがって、コードされるアミノ酸配列の特徴から、この同定された遺伝子の産物は、β1,3-GlcUAトランスフェラーゼ(GlcAT-II)およびβ1,4-GalNAcトランスフェラーゼ(GalNAcT-II)の両方の活性を有する可能性が示唆された。さらに、今回同定されたヒト遺伝子の同族体が、Caenorhabditis elegansまたはDrosophilaゲノムの中に見出された。ヒト、C. elegansおよびDrosophila由来のタンパク質配列の相互の一致度を図1に示す。ヒトの配列は、C. elegansやDrosophilaに対して、それぞれ、36および42%の相同性を有していた。これら3つのタンパク質は、いずれもアミノ末端側にDDDを、カルボキシル末端側にDVDを含んでおり(図1)、多くのグリコシルトランスフェラーゼに見られる、保存されたDXDモチーフに相当すると考えられる (Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 95, 7945-7950 (1998))。
【0108】
さらに、ヒトゲノムプロジェクトのデータベース検索を行った。この結果、このcDNA配列と同一のゲノム配列(アクセス番号NT010274.3)が示された。このcDNAとゲノム配列とを比較することにより、この遺伝子のゲノム構造と染色体上の位置が明らかになった。この遺伝子は40 kbを超える長さを持ち、そのコード領域は、図2に示すように、三つの不連続なエキソンに分割されていた。イントロン/エキソン接合部は、GT/AGルールに従っており、その両側は保存配列によって挟まれていた。この遺伝子は、ヒトの第15番染色体に存在する。
【0109】
(2)可溶性の新規グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを含むプラスミドの構築
この新規なグリコシルトランスフェラーゼにおいて、N-末端の46個のアミノ酸残基を欠いたグリコシルトランスフェラーゼのcDNAをPCRで増幅した。すなわち、KIAA0990 cDNAを鋳型として、XhoI部位を含む5'-プライマー(5'-CCCTCGAGGGGCTGCCGGTCCGGGC-3'(配列番号3))、および、終止コドンから138bp下流に位置するXhoI部位を含む3'-プライマー(5'-CCCTCGAGCAATCTTAAAGGAGTCCTATGTA-3'(配列番号4))を用いて増幅を行った。PCR反応は、5%(v/v)ジメチルスルホキシド中で、Pfuポリメラーゼ(Stratagene社、ラホヤ、カリフォルニア州)を用いて、94°Cで30秒、55°Cで30秒、および72°Cで180秒のサイクルを34サイクル行った。このPCR産物をXhoIで消化し、断片の両端をクレノウ断片(New England Biolabs社, Beverly、マサチューセッツ州)、dCTP及びdTTPを用いて部分的に充填した。BamHIで消化したpGIR201protA(J. Biol. Chem. 269, 1394-1401 (1994))ベクターについても同様に、dATPとdGTPで部分的に充填した。得られた断片をpGIR201protAにサブクローニングし、この新規グリコシルトランスフェラーゼと、ベクター中のインスリンシグナル配列およびプロテインA配列とを融合させた。上記の融合タンパク配列を含むNheI断片を、発現ベクターpEF-BOS(Nucleic Acids Res. 18, 5322 (1990))のXbaI部位に挿入し、発現プラスミドを得た。
【0110】
この発現プラスミドは、グリコシルトランスフェラーゼの最初の46個のアミノ酸が、切断可能なインスリンシグナル配列と、プロテインAのIgG結合ドメインとによって置換されたタンパク質、すなわち、インスリンシグナル配列及びプロテインAと融合した可溶性コンドロイチン合成酵素をコードする。
【0111】
(3)可溶性の新規グリコシルトランスフェラーゼの発現および酵素アッセイ
FuGENE(商標)6(Roche Molecular Biochemicals、東京)を用い、メーカーの説明書に従って、発現プラスミド(6.7 μg)を100 mmプレート上でCOS-1細胞にトランスフェクトさせた。トランスフェクションから2日後に、培養液1 mlを採取して、10 μlのIgG-セファロース(Amersham Pharmacia Biotech)と共に4°Cで1時間インキュベートした。遠心して回収したIgG-セファロースのビーズをアッセイ緩衝液で洗浄し、同じ緩衝液に再懸濁して、GalNAcトランスフェラーゼ、GlcUAトランスフェラーゼ、およびGalトランスフェラーゼのアッセイに用いた。すなわち、培養液中で発現した融合タンパク質を、IgG-セファロースビーズに吸着させて内在性のグリコシルトランスフェラーゼ類を除去し、次いでこの酵素結合ビーズを、酵素源として用い、このビーズに結合させた融合タンパク質のグリコシルトランスフェラーゼ活性を、各種の受容体基質及び供与体基質を用いてアッセイした。
【0112】
GalNAcトランスフェラーゼの受容体としては、コンドロイチンのポリマー(167μg)、α-トロンボモジュリン(1 nmol)、またはGlcUAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Ser(1 nmol)を用いた。また、GlcUAトランスフェラーゼの受容体としては、コンドロイチンのポリマー(167 μg)、またはGalβ1-3Galβ1-4Xyl(1 nmol)を用いた。Galトランスフェラーゼの受容体としては、ヒツジ顎下腺アシアロムチン(300 μg)またはGlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAc(1 nmol)を用いた。GalNAcトランスフェラーゼのアッセイには、全容量30 μl中に、再懸濁したビーズ10 μl、受容体基質、8.57μM UDP-[3H]GalNAc (3.60 x 105 dpm)、50 mM MES緩衝液、pH 6.5、10 mM MnCl2、およびATPのナトリウム塩171 μMを含有する混合物を用いた(J. Biochem. 117, 1083-1087 (1995))。
【0113】
リンケージ部位の4糖の合成に必要なGlcUAトランスフェラーゼI(GlcAT-I)のアッセイには、全容量30 μl中に、再懸濁したビーズ10 μl、1 nmol Galβ1-3Galβ1-4Xyl、14.3 μM UDP-[14C]GlcUA (1.46 x 105 dpm)、50 mM MES緩衝液、pH 6.5、および2 mM MnCl2を含有する混合物を用いた(FEBS lett. 459, 415-420 (1999))。GlcAT-IIのアッセイには、全容量は30 μl中に、再懸濁したビーズ10 μl、167 μgのコンドロイチンのポリマー、14.3 μM UDP-[14C]GlcUA (1.46 x 105 dpm)、50 mM 酢酸ナトリウム緩衝液、pH 5.6、および10 mM MnCl2を含んでいた(Glycobiology 7, 905-911 (1997))。Galトランスフェラーゼのアッセイには、全容量30 μl中に、再懸濁したビーズ10 μl、受容体基質、60 μM UDP-[3H]Gal (5.30 x 105 dpm)、50 mM MES緩衝液、pH 6.5、10 mM MnCl2、およびATPのナトリウム塩171 μMを含有する混合物を用いた。反応混合物を37°Cで1時間インキュベートし、放射標識された生成物を、セファデックスG-25(スーパーファイン)を充填したシリンジカラム、スーパーデックスペプチド・カラム、または、Dowex 1-X8 (PO4 2-型、100-400メッシュ、Bio-Rad社、東京)を含むパスツールピペット・カラムを用いたゲル濾過によって、UDP-[3H]GalNAc、UDP-[14C]GlcUA、または、UDP-[3H]Galから分離した(J. Biochem. 117, 1083-1087 (1995); J. Biol. Chem. 273, 6615-6618 (1998); FEBS Lett. 459, 415-420 (1999); Glycobiology 7, 905-911 (1997); Glycobiology 7, 531-537 (1997))。回収した標識生成物を、液体シンチレーション分光法によって定量した。
【0114】
なお、基質等の入手先は以下の通りであった。UDP-[U-14C]GlcUA(285.2 mCi/mmol)、UDP-[3H]GalNAc(10 Ci/mmol)、および、UDP-[3H]Gal(15 Ci/mmol)は、NEN Life Science Products社から購入した。未標識のUDP-GlcUA、UDP-GalNAcおよびUDP-Galは、Sigmaから入手した。コンドロイチン(クジラ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Aを化学的に脱硫酸化した誘導体)は、生化学工業株式会社(東京)から購入した。均一に精製した、Ampullaria(淡水産アップルスネイル)由来の肝膵臓β-グルクロニダーゼ(EC3.2.1.31)(Comp. Biochem. Physiol. 86B, 565-569 (1987))は、東京臓器化学社(東京)から提供された。Galβ1-3Galβ1-4Xylは、Nancy B. Schwartz博士(シカゴ大学)から恵与された。精製α-トロンボモジュリン(Biochem. Biophys. Res. Commun. 171, 729-737 (1990))は、第一製薬株式会社(東京)から提供されたもので、リンケージ部分の4糖(GlcUAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xyl)(J. Biol. Chem. 273, 33728-33734 (1998))を含む。N-アセチルコンドロシン(GlcUAβ1-3GalNAc)およびGlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4GlcNAcは、K. Yoshida博士(生化学工業株式会社)から恵与された。化学的に合成されたリンケージ4糖−セリン(GlcUAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Ser)(Liebigs Ann. 1239-1257 (1996))は、T. Ogawa博士(理化学研究所、埼玉県)から恵与された。
【0115】
ヒツジ顎下腺アシアロムチンは、TettamantiとPigmanの方法(Arch. Biochem. Biophys. 124, 45-50 (1968))に従って調製したヒツジ顎下腺ムチンを、Arthrobacter ureafaciens由来のシアリダーゼ(ナカライテスク社、京都)で処理して得た。Superdex(商標)ペプチドHR10/30カラムは、Amersham Pharmacia Biotech社(ウプサラ、スウェーデン)から入手した。
結果を表1に示す。活性は、コンドロイチンのポリマーを受容体とし、UDP-GlcUAまたはUDP-GalNAcのいずれかを供与体として使用した場合に検出された。一方、他の受容体基質と、UDP-GlcUA、UDP-GalNAcまたはUDP-Galのいずれかを供与体として使用した場合には活性は検出されなかった。そのような活性としては、コンドロイチン硫酸の生合成の開始に関わるGlcAT-Iや、GalNAcトランスフェラーゼI、コア1 UDP-Gal:GalNAcα-R β1,3-Galトランスフェラーゼ、およびUDP-Gal:GlcNAcβ-R β1,4-Galトランスフェラーゼ活性が含まれる。コントロールとしてpEF-BOSをトランスフェクトしたサンプルのアフィニティー精製物では、グリコシルトランスフェラーゼ活性は検出されなかった。これらの結果は、発現されたタンパク質が、コンドロイチンのポリマーに対して高い特異性を持つGlcUA/GalNAcトランスフェラーゼであることを明確に示すものである。
【0116】
なお、前記した通り、コンドロイチン(コンドロイチンのポリマー)には、非還元末端がGlcUAであるものとGalNAcであるものとの双方が含まれ、GalNAcの転移は非還元末端がGlcUAであるコンドロイチンに対するものであり、GlcUAの転移は非還元末端がGalNAcであるコンドロイチンに対するものであるといえる。
【0117】
【表1】
【0118】
(4)酵素反応生成物の特定
コンドロイチンのポリマーを受容体とした、GalNAcトランスフェラーゼ反応またはGlcUAトランスフェラーゼ反応の生成物の単離を、0.25M NH4HCO3/7% l-プロパノールで平衡化したスーパーデックスペプチド・カラムを用いたゲル濾過によって行った。各酵素反応生成物を含む放射能ピークをプールして蒸発乾燥させた。この単離したGalNAcトランスフェラーゼ反応生成物(約120 μg)を、50 mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH 6.0 を含む30 μlの反応液中で、37°Cで一晩、100 mIUの、Arthrobacter aurescens(アルトロバクター・オーレッセンス)由来のコンドロイチナーゼAC-II(EC4.2.2.5)(生化学工業株式会社(東京))で消化して、その消化性を評価した。単離したGlcUAトランスフェラーゼ反応生成物(約180 μg)は、100 mIUのコンドロイチナーゼAC-IIを含有する30μlの50 mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0において、または、22 mIUのβ-グルクロニダーゼを含有する30 μlの0.05M クエン酸ナトリウム緩衝液、pH4.5において、37°Cで一晩消化した。各酵素の消化物を、前記と同じスーパーデックスペプチド・カラムを用いて分析した。
【0119】
GlcUAトランスフェラーゼ反応生成物の分析結果を図3のAに示す。標識された生成物はβ-グルクロニダーゼまたはコンドロイチナーゼAC-IIによって完全に消化され、遊離の[14C]GlcUAまたは[14C]GlcUAβ1-3GalNAcの位置にピークが見られた。この結果から、GlcUA残基は、コンドロイチンのポリマーの非還元末端に存在するGalNAcに転移され、β1-3結合を形成したことが示唆される。
【0120】
GalNAcトランスフェラーゼ反応生成物の分析結果を図3のBに示す。標識された生成物は、コンドロイチナーゼAC-IIによって完全に消化され、遊離の[3H]GalNAcの位置にピークが見られた。この結果から、GalNAc残基はコンドロイチンのポリマーの非還元末端に存在するGluUAに転移され、β1-4結合を形成したことが示唆される。
【0121】
以上の結果をまとめると、この同定されたタンパク質は、GlcAT-IIとGalNAcT-IIの両方の活性を持つコンドロイチン合成酵素であることが明らかになった。
【0122】
【実施例2】
分析には、市販のヒト12レーン含有多数組織用ノーザンブロット(CLONETEC)膜を用いた。各レーンに、1 μgのポリアデニル化RNAをアプライした。この膜に、放射標識され(>1 x 109 cpm/μg)、ゲルで精製された0.84 kbコンドロイチン合成酵素特異的断片(KIAA0990 cDNA(GenBankアクセション番号;AB023207)のヌクレオチド631-1469に相当する)をプローブとして探索した。
【0123】
この結果、調べた限りにおいて全てのヒト組織で〜5.0 kbの単一バンドが示された(図4)。このコンドロイチン合成酵素遺伝子は、ヒト組織において広汎に存在するが、その発現の程度は組織によって異なっていた。注目すべきことに、このmRNAは胎盤で特に多く発現しており、脾臓、肺、および、末梢血白血球がそれに続いた。これらの所見は、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンが、多くの細胞の表面と、ほとんど全ての組織の細胞外マトリックスに分布するという知見と一致する。
【0124】
【発明の効果】
ヒトコンドロイチン合成酵素をコードするDNAを含むベクター、ヒトコンドロイチン合成酵素の製造方法、コンドロイチンの二糖繰返し単位を有する糖鎖の製造方法、ならびに、ヒトコンドロイチン合成酵素に対するハイブリダイゼーション用プローブが提供される。
【0125】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒトコンドロイチン合成酵素(Human)の推定アミノ酸配列と、C. elegans (T25233)およびDrosophila (AE003499)における相同性のあるタンパク質のアミノ酸配列との比較を示す。これらの推定アミノ酸配列は、GENETYX-MAC(バージョン10)コンピュータプログラムを用いて解析した。黒のボックスと灰色のボックスは、それぞれアミノ酸が三者間で一致する、およびいずれか二者間で一致することを示す。一致の程度を最も高くするために導入したギャップを破線で示す。予測される膜貫通ドメインを四角の枠で囲んだ。保存されたDXDモチーフは下線で示した。N-グリコシル化部位として考えられる3ヶ所を星印でマークした。
【図2】ヒトコンドロイチン合成酵素遺伝子のゲノム構成を示す。エキソン領域をボックスで示した。黒のボックスはコード配列を示し、白のボックスは、5'-および3'-未翻訳配列を示す。翻訳開始コドン(ATG)と終止コドン(TAA)も併せて示した。黒の横線は、イントロンを示す。
【図3】ヒトコンドロイチン合成酵素反応生成物の特定の結果を示す。(A)スーパーデックスペプチド・カラムから回収した、GlcUAトランスフェラーゼ反応生成物を、コンドロイチナーゼAC-II、または、β-グルクロニダーゼで消化した。未消化物(黒の四角)、コンドロイチナーゼAC-II消化物(黒の丸)、および、β-グルクロニダーゼ消化物(黒塗り三角)を、スーパーデックスペプチド・カラムにアプライし、それぞれの溶出画分(各0.4 ml)について、放射活性を分析した。矢印は飽和2糖(1, GlcUAβ1-3GalNAc)、または、遊離のGlcUA (2, [14C]GlcUA)の溶出位置を示す。(B)スーパーデックスペプチド・カラムから回収した、GalNAcトランスフェラーゼ反応生成物をコンドロイチナーゼAC-IIで消化した。未消化物(黒の四角)、または、コンドロイチナーゼAC-II消化物(黒の丸)をスーパーデックスペプチド・カラムにアプライし、それぞれの溶出画分(各0.4 ml)について、放射活性を分析した。矢印は飽和2糖(1, GlcUAβ1-3GalNAc)、または、遊離のGalNAc (2, [3H]GalNAc)の溶出位置を示す。
【図4】ヒトの組織におけるコンドロイチン合成酵素のノーザンブロット分析の結果(電気泳動写真)を示す。各種ヒト組織由来のRNAに対し、コンドロイチン合成酵素のプローブを用いてハイブリダイゼーションを行った。レーン1は脳、レーン2は心臓、レーン3は骨格筋、レーン4は結腸、レーン5は胸腺、レーン6は脾臓、レーン7は腎臓、レーン8は肝臓、レーン9は小腸、レーン10は胎盤、レーン11は肺、レーン12は末梢血白血球である。
Claims (6)
- 下記(A)又は(B)に示すアミノ酸配列をそのアミノ酸配列中に包含し、かつ下記(イ)及び(ロ)の触媒活性を有する酵素タンパク質を含有する、コンドロイチン合成用試薬。
(A)配列番号2におけるアミノ酸番号47〜802で示されるアミノ酸配列。
(B)上記(A)において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は転位したアミノ酸配列。
(イ)コンドロイチンに、UDP-GalNAcからGalNAcを転移する。(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GalNAcはN−アセチルガラクトサミン残基を示す。)
(ロ)コンドロイチンに、UDP-GlcUAからGlcUAを転移する。(UDPはウリジン 5'-二リン酸を、GlcUAはグルクロン酸残基を示す。) - 酵素タンパク質が可溶性である請求項1の試薬。
- 請求項1又は2に記載の試薬を、GalNAc供与体及び下記一般式(1)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(3)で示される糖鎖の製造方法。
GlcUA-GalNAc-R 1 (1)
GalNAc-GlcUA-GalNAc-R 1 (3)
(各式中、GlcUA及びGalNAcは、いずれも前記と同義である。 - はグリコシド結合を、R 1 は任意の基を示す。) - 請求項1又は2に記載の試薬を、GlcUA供与体及び下記一般式(2)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(4)で示される糖鎖の製造方法。
GalNAc-GlcUA-R 2 (2)
GlcUA-GalNAc-GlcUA-R 2 (4)
(各式中、GlcUA、GalNAc、及び - は、いずれも前記と同義である。R 2 は任意の基を示す。) - 請求項1又は2に記載の試薬を、GalNAc供与体及びGlcUA供与体、並びに下記一般式(1)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(5)及び(7)から選ばれる糖鎖の製造方法。
GlcUA-GalNAc-R 1 (1)
(GlcUA-GalNAc)n-GlcUA-GalNAc-R 1 (5)
GalNAc-(GlcUA-GalNAc)n-GlcUA-GalNAc-R 1 (7)
(各式中、nは1以上の整数を示し、GlcUA、GalNAc、及び - は、いずれも前記と同義である。またR 1 は任意の基を示す。) - 請求項1又は2に記載の試薬を、GalNAc供与体及びGlcUA供与体、並びに下記一般式(2)で示される糖鎖に接触させる工程を少なくとも含む、下記一般式(6)及び(8) から選ばれる糖鎖の製造方法。
GalNAc-GlcUA-R 2 (2)
(GalNAc-GlcUA)n-GalNAc-GlcUA-R 2 (6)
GlcUA-(GalNAc-GlcUA)n-GalNAc-GlcUA-R 2 (8)
(各式中、nは1以上の整数を示し、GlcUA、GalNAc、及び - は、いずれも前記と同義である。またR 2 はいずれも任意の基を示す。)
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