JP4629214B2 - N−アセチルグルコサミン転移酵素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘパリン及びヘパラン硫酸の糖鎖骨格(以下「ヘパリン骨格」とも記載する)の合成に関与する、N-アセチルグルコサミン転移酵素、それを発現する発現ベクター、及びそれによって形質転換された形質転換体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヘパリン及びヘパラン硫酸はウロン酸残基とグルコサミン残基がα1,4結合又はβ1,4結合した二糖がα1,4結合で結合した繰り返し構造からなるヘパリン骨格に硫酸基が付加された構造を有するグリコサミノグリカン(以下「GAG」とも略記する)の一種である。ヘパリン及びヘパラン硫酸の生合成におけるN−アセチルグルコサミンの転移には2種類の酵素活性が関与している。
【0003】
第一の酵素活性はヘパリン及びヘパラン硫酸の生合成の初期段階においてヘパリン骨格の合成に関与し、タンパク質の糖鎖結合域に存在するGlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Ser構造(Serはセリン残基、Xylはキシロース、Galはガラクトース、GlcAはグルクロン酸を示す。以下同様に略記する。)にN-アセチルグルコサミン(以下「GlcNAc」とも略記する)残基をα1,4結合で転移する活性であり、特にGlcAβ1-3Gal構造を有する物質を受容体としてGlcNAcをα1,4結合で転移する酵素の活性である。このような酵素の活性は例えばGlcAβ1-3Galβ1-O-C2H4NHCbz(Cbzはベンジルオキシカルボニルを示す)等にGlcNAcを転移する活性として測定することが可能である。このような酵素活性を以下「GlcNAc-TI活性」とも記載する。
【0004】
第二の酵素活性はヘパリン骨格の伸長に関与する酵素が有する活性であり、 GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)n(いわゆるN-アセチルヘパロサン)構造の非還元末端に存在するGlcAにα1,4結合でGlcNAcを転移する活性である。このような酵素の活性は例えばN-アセチルヘパロサンを受容体とし、その非還元末端にGlcNAcを転移する活性として測定することが可能である。このような酵素活性を以下「GlcNAc-TII活性」とも記載する。
【0005】
これらの酵素活性及びGlcA転移酵素の活性により形成された、GlcA及びGlcNAcのみから成る初期のヘパリン骨格は、GlcNAc残基のN-アセチル基の脱アセチル化及び硫酸化反応(N-脱アセチル化N-硫酸化酵素による反応)、GlcA残基をイズロン酸(IdoA)残基に転換する反応(ウロン酸エピメラーゼによる反応)、GlcA残基又はIdoA残基の2位水酸基、及び6位水酸基の硫酸化反応(ヘパラン硫酸2硫酸基転移酵素及びヘパラン硫酸6硫酸基転移酵素による反応)によってヘパリン又はヘパラン硫酸へと成熟する。
【0006】
これらのヘパリン又はヘパラン硫酸の生合成に関与する酵素のうち、GlcNAcの転移に関与する酵素はこれまでに数種類見つかっている。例えばEXT遺伝子群(EXT1遺伝子、EXT2遺伝子、EXT3遺伝子、EXTL1遺伝子、EXTL2遺伝子、及びEXTL3遺伝子)は、従来遺伝性多発性外骨症の原因遺伝子として知られていたが、その中でEXT1遺伝子、EXT2遺伝子、及びEXTL2遺伝子はヘパリンの合成に関与する酵素をコードすることが知られていた(J. Biol. Chem. 273(1998)26265-26268、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97(2000)668-673、J. Biol. Chem. 274(1999)13933-13937)が、これらの酵素はGlcNAcと共にN-アセチルガラクトサミン(以下「GalNAc」とも略記する)又はGlcAも基質とするため、ヘパリンの生合成に関与する酵素であって、GlcNAcのみを基質とする酵素は知られておらず、また特にGlcNAc-TII活性を有するEXT1タンパク質及びEXT2タンパク質もヘパリン骨格の重合能がきわめて低く、これらの酵素を単独で用いても長鎖のヘパリン骨格を合成することは不可能であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来はヘパリン骨格の伸長においてGlcNAcのみを基質とするGlcNAc転移酵素は知られておらず、また公知のGlcNAc-TII活性を有する酵素の酵素活性を補いうる酵素に対する糖鎖研究界からの要請が高まっていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、GlcNAcのみを基質として受容体に転移し、他の糖は基質としないGlcNAcの転移酵素を鋭意探索した結果、驚くべきことにEXT遺伝子ファミリーの遺伝子として公知であったEXTL1遺伝子及びEXTL3遺伝子、並びにEXTL3遺伝子の相同遺伝子として知られていた線虫のrib-2遺伝子の塩基配列のうちN末端領域に対応する配列を除去した配列のDNAを発現させたところ、GlcNAcのみを基質とする酵素活性を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
本発明の第一の要旨はGlcNAc転移酵素をコードするDNAを含む発現ベクターであって、該酵素が下記の性質を有することを特徴とする発現ベクターである。
(a)GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nの非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移して4GlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nを生成する活性を有する。
(b)GlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-)nの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(c)GlcNAcα1-4GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(d)GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GalNAcを供与体としてGalNAcを転移する活性を有しない。
【0010】
このようなベクターが保持するDNAを発現させることでGlcNAc以外の糖を基質とはしないGlcNAc転移酵素を発現させることができる。
【0011】
本発明の第二の要旨は上記ベクターにより形質転換された形質転換体である。
そのような形質転換体はGlcNAc転移酵素を調製するために有用である。
【0012】
本発明の第三の要旨は上記形質転換体を生育させ、生育物から単離することを特徴とするGlcNAc転移酵素の製造法である。当該製造法により新たなGlcNAc転移酵素を得ることが可能となる。
【0013】
本発明の第四の要旨は、配列番号4、配列番号8又は配列番号11に示すアミノ酸配列からなるGlcNAc転移酵素である。このようなGlcNAc転移酵素は、膜貫通領域及びそれにつながる領域を欠如しており、GlcNAc以外の糖は基質とはしないGlcNAc転移酵素活性を有する。
【0014】
本発明の第五の要旨は、配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示すアミノ酸配列をその配列中に含み、且つ下記(a)〜(d)の触媒活性を有するタンパク質を含むGlcNAc転移用試薬である。
(a)GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nの非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移して4GlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nを生成する活性を有する。
(b)GlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-)nの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(c)GlcNAcα1-4GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(d)GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GalNAcを供与体としてGalNAcを転移する活性を有しない。
【0015】
このような試薬は、ヘパリン骨格の生合成において有用である。
【0016】
尚、本明細書においては特に明記しない場合は、遺伝子とその遺伝子がコードするタンパク質を区別するため、遺伝子は名称の後ろに「遺伝子」を付して標記し、タンパク質は名称の後ろに「タンパク質」を付して標記する。名称部分が同じ遺伝子とタンパク質は、当該タンパク質が当該遺伝子によりコードされるタンパク質であることを示す。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態により詳説する。
(1)本発明ベクター
本発明ベクターはGlcNAc転移酵素をコードするDNAを含む発現ベクターであって、GlcNAc転移酵素が下記の性質を有することを特徴とする発現ベクターである。
(a)GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nの非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移して4GlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nを生成する活性を有する。
(b)GlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-)nの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(c)GlcNAcα1-4GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(d)GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GalNAcを供与体としてGalNAcを転移する活性を有しない。
【0018】
本発明ベクターはGlcNAc-TII活性を有する転移酵素をコードしている。本発明におけるこのようなGlcNAc転移酵素とは上記(a)〜(d)記載の性質を満たす酵素である。
【0019】
上記酵素の例として、rib-2タンパク質(配列番号2記載のアミノ酸配列からなる)もしくはそのアミノ酸番号59以降からなるアミノ酸配列からなるタンパク質から構成される酵素、EXTL1タンパク質(配列番号6記載のアミノ酸配列からなる)もしくはそのアミノ酸番号76以降からなるアミノ酸配列からなるタンパク質から構成される酵素、又はEXTL3タンパク質(配列番号10記載のアミノ酸配列からなる)もしくはそのアミノ酸番号91以降からなるアミノ酸配列からなるタンパク質から構成される酵素があげられる。しかし、上記のいずれの酵素も、膜貫通領域を欠失した構造を有するものを使用することが発現させた酵素の精製が容易なため好ましく、少なくともアミノ酸配列でN末端から30アミノ酸残基以上、110アミノ酸残基未満、より好ましくは40アミノ酸残基以上100アミノ酸残基未満の領域を欠失した構造であることが好ましい。
【0020】
尚、本明細書中における酵素の基質であるGlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)n及びGlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-)n中のnは例えば3以上の数字が例示され、好ましい基質としてはnが4以上9以下の物質が例示される。
【0021】
また、本発明ベクターの発現によって生成した上記酵素の好ましい態様の一つとして上記(a)〜(d)の性質に加え、更に下記(e)の性質(GlcNAc-TI活性)を有するものが挙げられる。
(e)GlcAβ1-3Galβ1-O-C2H4NHCbzの非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移する活性を有する。
【0022】
このようなベクターを用いて調製される酵素は、従来得られていたGlcNAc転移酵素のように受容体に対してGlcNAcの他にGlcAやGalNAcを転移する活性は有しない特徴を有する。
【0023】
本発明ベクターは例えば以下の<A>及び<B>から成る手法により調製することができる。
<A>ベクターに組み込むDNAの調製
<A-1> rib-2タンパク質のN末端アミノ酸58残基を欠失したポリペプチドをコードするDNAを含む本発明ベクターの調製法
N末端の58アミノ酸残基を欠失したrib-2タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAは、例えば配列番号13及び配列番号14をプライマーとして用いて、例えばC. elegansの成虫の全RNAを鋳型として逆転写PCR法を常法により行って増幅して得ることができる。上記プライマーを用いる場合は、各々のプライマーに制限酵素BamHI領域が含まれているため、BamHIでPCR産物を消化することで、BamHI処理をしたベクターに容易に連結することが可能である。上記プライマーはこれに限定されるわけではなく、例えば制限酵素領域を含まないプライマーを使用しても、PCR産物に制限酵素の粘着断片などを常法に従って連結することで任意の制限酵素を使用したベクターへの導入が可能となる。
【0024】
<A-2>EXTL1のN末端アミノ酸75残基を欠失したポリペプチドをコードするDNAを含む本発明ベクターの調製法
N末端の75アミノ酸残基を欠失したEXTL1タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAは、例えば配列番号15及び配列番号16のプライマーを用いて、例えばヒト脳、腎臓、又は血管由来のポリ(A+)RNAを鋳型として逆転写PCR法により調製することが可能である。上記プライマーを用いる場合は各々のプライマーに制限酵素BclI領域が含まれているため、BclIでPCR産物を消化することで、BclI処理をしたベクターに容易に連結することが可能である。上記プライマーはこれに限定されるわけではなく、例えば制限酵素領域を含まないプライマーを使用しても、PCR産物に制限酵素の粘着断片などを常法に従って連結することで任意の制限酵素を使用したベクターへの導入が可能となる。
【0025】
<A-3> EXTL3のN末端アミノ酸90残基を欠失したポリペプチドをコードするDNAを含む本発明ベクターの調製法
N末端の90アミノ酸残基を欠失したEXTL3タンパク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNAは、例えば配列番号17及び配列番号18のプライマーを用いて、例えばヒトEXTL3(Biochem. Biophys. Res. Commun.243(1998),61-66に記載されたEXTR1と同一)のcDNAを鋳型として逆転写PCR法により調製することが可能である。上記プライマーを用いる場合は各々のプライマーに制限酵素BglII領域が含まれているため、BglIIでPCR産物を消化することで、BglII処理をしたベクターに容易に連結することが可能である。上記プライマーはこれに限定されるわけではなく、例えば制限酵素領域を含まないプライマーを使用しても、PCR産物に制限酵素の粘着断片などを常法に従って連結することで任意の制限酵素を使用したベクターへの導入が可能となる。
【0026】
尚、<A>で使用するプライマーは必ずしも鋳型として使用するDNAが由来する生物種と同一の塩基配列を有するDNAでなくてもよく、例えばヒトEXTL3遺伝子のPCR法による増幅に、ウシEXTL3遺伝子の塩基配列の対応部分をプライマーとして用いることも可能である。相同遺伝子の関係を有する遺伝子間では、重複した塩基配列も多く、プライマーとした際にも互いに相補的に結合し、プライマーとしての役割を充分に果たすからである。
【0027】
<B>ベクターへのDNA断片の導入
上記手法によって得られたDNAを公知のベクターに導入することで本発明ベクターを調製することが可能である。上記DNAを導入するベクターは、導入したDNAを発現させることが可能な適当な発現ベクター(ファージベクター或いはプラスミドベクター等)を使用することが可能であるが、本発明ベクターを組み込む宿主細胞で上記DNAを発現することが可能なベクターを適宜選択する。そのような宿主=ベクター系としては、COS細胞、3LL-HK46細胞などの哺乳類細胞と、pGIR201(Kitagawa, H., and Paulson, J. C. (1994) J. Biol. Chem. 269, 1394-1401)、pEF-BOS(Mizushima, S., and Nagata, S. (1990) Nucleic Acid Res. 18, 5322)、pCXN2(Niwa, H., Yamanura, K. and Miyazaki, J. (1991) Gene 108, 193-200)、pCMV-2(イーストマン コダック(Eastman Kodak)製)、pCEV18、pME18S(丸山ら,Med. Immunol., 20, 27(1990))又はpSVL(ファルマシア バイオテック社製)等の哺乳類細胞用発現ベクターの組み合わせ、大腸菌(E. coli)と、pTrcHis(インビトロゲン社製)、pGEX(ファルマシア バイオテック社製)、pTrc99(ファルマシア バイオテック社製)、pKK233-3(ファルマシア バイオテック社製)、pEZZZ18(ファルマシア バイオテック社製)、pCH110(ファルマシア バイオテック社製)、pET(ストラタジーン社製)、pBAD(インビトロゲン社製)、pRSET(インビトロゲン社製)、及びpSE420(インビトロゲン社製)等の原核細胞用の発現ベクターとの組み合わせの他、宿主細胞として昆虫細胞、酵母、枯草菌などが例示され、これらに対応する各種ベクターが例示される。上述の宿主=ベクター系の中でも特にほ乳類細胞とpEF-BOSとの組み合わせが好ましい。
【0028】
また、上記DNAを組み込むベクターは、組み込んだDNAがコードするポリペプチドとマーカーペプチドとの融合タンパク質を発現するように構築されたものを用いることも可能であり、本発明ベクターを用いて発現させた上記のGlcNAc転移酵素を精製する場合には特に好ましい。上記マーカーペプチドとしては例えばHis、FLAG、Protein A、CBP(Calmodulin Binding Protein)、GST(Glutathione S-Transferase)などがあげられ、特にProtein Aが好ましいが、いずれであっても使用することが可能である。いずれのベクターを用いる場合であっても常法に従って、上記DNAとベクターとを連結することが可能なように例えば制限酵素などによって処理し、必要に応じて平滑化や粘着末端の連結を行った後、前記DNAとベクターとの連結をすることが可能である。
【0029】
(2)本発明形質転換体
本発明形質転換体は本発明ベクターにより宿主細胞が形質転換された形質転換体である。
前記宿主細胞は、本発明ベクターにより組換が可能な細胞であればいずれの細胞でも使用することが可能であり、 COS細胞(COS-1細胞、COS-7細胞等)、3LL-HK46細胞などの哺乳類細胞、大腸菌(E. coli)、昆虫細胞、酵母、枯草菌などが例示され、本発明ベクターにあわせて適宜選択されるが、上基本発明ベクターの調製に使用する好ましいベクターであるpEF-BOSを使用する場合はほ乳類由来の細胞を選択することが好ましく、その中でも特にCOS細胞が好ましい。
【0030】
宿主細胞の本発明ベクターによる形質転換は、常法に従って行うことが可能である。このようにして得られる本発明形質転換体を生育させることで、 GlcNAc転移酵素を発現させることが可能である。生育は、in vitroに限られず、例えば乳腺において発現するプロモーターを有するベクターを本発明ベクターに選択し、当該本発明ベクターにより形質転換した形質転換体を成長させてGlcNAc転移酵素を含む乳汁を分泌するヒトを除くほ乳類を生育させることも可能である。
【0031】
(3)本発明製造法
本発明製造法は、本発明形質転換体を生育させ、その生育物からGlcNAc転移酵素を単離することを特徴とする、GlcNAc転移酵素の製造法である。
ここで「生育」とは、本発明形質転換体である微生物等の増殖、本発明形質転換体である細胞を組み込んだ動物、昆虫等の生育を含む概念である。本発明における生育物とは、本発明形質転換体を生育させた後の培地及び培養された宿主細胞、分泌物、排出物等を包含する概念である。
【0032】
本発明におけるGlcNAc転移酵素の単離は、例えば本発明ベクターがGlcNAc転移酵素とProtein Aとの融合タンパク質を発現するベクターである際はIgGセファロースなどを使用するアフィニティークロマトグラフィー等を用いて行うことが可能であり、また本発明ベクターがGlcNAc転移酵素とHisとの融合タンパク質を発現するベクターである際は例えば磁性ニッケルアガロースビーズなどを用いて行うことが可能であり、また本発明ベクターがGlcNAc転移酵素とFLAGとの融合タンパク質を発現するベクターである際は例えば抗FLAG抗体を使用したアフィニティークロマトグラフィーグラフィー等の酵素の分離精製手段として一般的な手法により行うことが可能である。
【0033】
(4)本発明酵素
本発明酵素は配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示すアミノ酸配列からなるN-アセチルグルコサミン転移酵素である。
本発明酵素は下記(a)〜(d)の性質を有する。
(a)GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nの非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移して4GlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nを生成する活性を有する。
(b)GlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-)nの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(c)GlcNAcα1-4GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(d)GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GalNAcを供与体としてGalNAcを転移する活性を有しない。
【0034】
上記性質(a)中のGlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nはいわゆるN-アセチルヘパロサン構造であり、GlcA及びGlcNAcのみから成るヘパリン骨格を示し、その非還元末端のGlcAに対してGlcNAcを転移する活性を有する酵素は、GlcNAc-TII活性を有することとなる。
【0035】
一方、上記性質(b)中のGlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-)nも上記同様ヘパロサン構造であるが、非還元末端がGlcNAcとなっている点で性質(a)記載の受容体とは異なっており、その非還元末端のGlcNAcにGlcAを転移する活性を有する酵素は本発明酵素の範囲には包含されない。
【0036】
上記性質(c)中のGlcNAcα1-4GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serはいわゆるリンカー構造にGlcNAcが結合した構造であるが、本発明酵素には当該構造にGlcAを転移する活性を有する酵素は包含されない。
【0037】
上記性質(d)中GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serは本明細書におけるリンカー構造を示し、本発明酵素には当該構造にGalNAcは転移する活性を有する酵素は包含されない。
【0038】
また、本発明酵素の好ましい態様の一つとして、上記性質に加え、更にGlcAβ1-3Galβ1-O-C2H4NHCbzの非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移する活性を有するものが挙げられる。 GlcAβ1-3Galβ1-O-C2H4NHCbzはヘパリンのリンカー構造と共通の構造を有しており、該物質を受容体とする酵素はGlcNAc-TI活性を有する。
【0039】
このような本発明酵素は、本発明ベクターによって宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体を、適切な条件下で生育させ、その生育物に蓄積されるため、前記生育物から例えばアフィニティークロマトグラフィー等の公知の手法を用いて精製、単離することが可能である。
【0040】
(5)本発明試薬
本発明試薬は、配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示すアミノ酸配列をその配列中に含み、且つ下記(a)〜(d)の触媒活性を有するタンパク質を含むN−アセチルグルコサミン転移用試薬である。
(a)GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nの非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移して4GlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nを生成する活性を有する。
(b)GlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-)nの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(c)GlcNAcα1-4GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(d)GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GalNAcを供与体としてGalNAcを転移する活性を有しない。
【0041】
本発明試薬におけるタンパク質は本発明酵素と同様の酵素活性を有するタンパク質である。このような本発明試薬はヘパリン骨格の合成に利用することが可能である。
【0042】
尚、本発明試薬は、上記タンパク質の他に例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、水、賦形剤などを含んでいてもよく、溶液でも固体でもよく、特に限定はされない。
【0043】
本発明試薬は、例えば一般式GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nで表される受容体の非還元末端にGlcNAcを転移して一般式4GlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nで表される糖鎖の製造に使用することが可能である。この場合において、上記一般式中、nは1以上の整数であることが好ましく、2以上15以下であることがより好ましく、4以上9以下であることが最も好ましいが、特に限定はされない。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をより具体的に詳説するが、本発明の要旨に包含される範囲において、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0045】
実施例1 本発明ベクターの構築
<1>rib-2遺伝子を含む本発明ベクターの構築
N末端の58アミノ酸残基を欠失したrib-2タンパク質(rib-2Tタンパク質)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA(rib-2T遺伝子)は、インフレームのBamHIサイトを含む配列番号13の5'プライマー及び終止コドンの68塩基対下流域にBamHIサイトを有する配列番号14の3'プライマーを用いて、C. elegansの成虫の全RNAを鋳型として逆転写PCR法を行って増幅して得た。PCR法はKOD DNAポリメラーゼ(株式会社東洋紡製)を用いて96℃で30秒、58℃で30秒、72℃で60秒からなるサイクルを30回繰り返して行った。このPCR産物(rib-2T遺伝子)を単離してBamHIで消化し、発現ベクターpGIR201protA(Kitagawa, H., and Paulson, J. C. (1994) J. Biol. Chem. 269, 1394-1401)に組み込みpGIR201(rib-2T)を得た。pGIR201(rib-2T)は、rib-2Tタンパク質、インスリンシグナルペプチド及びProtein Aが融合タンパク質として発現するように構築されている。このpGIR201(rib-2T)をNheIで消化し、得られたrib-2T遺伝子を含む断片をpEF-BOS(Nucleic Acid Res. 18(1990), 5322)のXbaIサイトに常法に従って挿入してpEF-BOS(rib-2T)を得た。常法に従って挿入されたrib-2T遺伝子の塩基配列を解析したところ、配列番号3の塩基配列であることが明らかとなった。
【0046】
<2>EXTL1遺伝子を含む本発明ベクターの構築
N末端の75アミノ酸残基を欠失したEXTL1タンパク質(EXTL1Tタンパク質)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA(EXTL1T遺伝子)は、インフレームのBclIサイトを含む配列番号15の5'プライマー及び終止コドンの115塩基対下流域にBclIサイトを有する配列番号16の3'プライマーを用いて、成人健常脳由来のポリ(A+)RNAを鋳型として逆転写して得たFirst Strand cDNAをPCR法で増幅して得た。PCR法はPfuポリメラーゼ(プロメガ社製)を用いて95℃で30秒、52℃で30秒、72℃で240秒からなるサイクルを30回繰り返して行った。PCR産物(EXTL1T遺伝子)を常法に従って単離し、クローニングベクターpGEM-T Easyベクター(プロメガ社製)に組み込み、DM1宿主細胞(ライフテクノロジー社製)にサブクローニングした。EXTL1T遺伝子を含むインサートをBclIで切り出し、BamHIで消化した発現ベクターpGIR201protAに組み込みpGIR201(EXTL1T)とした。発現ベクターpGIR201(EXTL1T)は切断可能なインスリンシグナルペプチド及びプロテインAと挿入したDNAがコードするポリペプチドとを融合タンパク質として発現するように構築されている。このpGIR201(EXTL1T)をNheIで消化し、得られたEXTL1T遺伝子を含む断片をpEF-BOSのXbaIサイトに挿入してpEF-BOS(EXTL1T)を得た。
常法に従って挿入されたEXTL1T遺伝子の塩基配列を解析したところ、配列番号7の塩基配列であることが明らかとなった。
【0047】
<3>EXTL3遺伝子を含む本発明ベクターの構築
N末端の90アミノ酸残基を欠失したEXTL3タンパク質(EXTL3Tタンパク質)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA(EXTL3T遺伝子)は、インフレームのBglIIサイトを含む配列番号17の5'プライマー及び終止コドンの37塩基対下流域にBglIIサイトを有する配列番号18の3'プライマーを用いて、ヒトEXTR1遺伝子(ヒトEXTL3遺伝子と同一)のcDNA(Biochem. Biophys. Res. Commun.243(1998),61-66)を鋳型としてPCR法により増幅して得た。 PCR法はPfuポリメラーゼ(プロメガ社製)を用いて95℃で30秒、56℃で30秒、72℃で240秒からなるサイクルを30回繰り返して行った。PCR産物(EXTL3T遺伝子)はBgl IIで消化した後、BamHIで消化した発現ベクターpGIR201protAに組み込みpGIR201(EXTL3T)とした。このpGIR201(EXTL3T)をNheIで消化し、得られたEXTL3Tを含む断片をpEF-BOSのXbaIサイトに挿入してpEF-BOS(EXTL3T)を得た。常法に従って挿入されたEXTL3T遺伝子の塩基配列を解析したところ、配列番号11の塩基配列であることが明らかとなった。
【0048】
対照例
EXT1Tタンパク質、EXT2Tタンパク質、及びEXTL2Tタンパク質の発現ベクターは以下の方法で構築した。
N末端の43アミノ酸残基を欠失したEXT1タンパク質(EXT1Tタンパク質)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA(EXT1T遺伝子)は、J. Biol. Chem. 273 (1998), 26265-26268に記載されたpcDNA3.1に挿入されたEXT1タンパク質のcDNAを鋳型として、インフレームのEcoRIサイトを含む配列番号19の5'プライマー及び終止コドンの84塩基対下流域にBamHIサイトを有する配列番号20の3'プライマーを用いてPCR法を行って増幅して得た。PCR法はKOD DNAポリメラーゼ(株式会社東洋紡製)を用いて96℃で30秒、58℃で30秒、72℃で60秒からなるサイクルを30回繰り返して行った。このPCR産物(EXT1T遺伝子)を単離して常法に従って発現ベクターpGIR201protAのEcoRI/BamHIサイトに組み込んだ(pGIR201(EXT1T))。このpGIR201(EXT1T)をNheIで消化し、得られたEXT1T遺伝子を含む断片をpEF-BOS(Nucleic Acid Res. 18(1990), 5322)のXbaIサイトに常法に従って挿入してpEF-BOS(EXT1T)を得た。常法に従って挿入されたEXT1T遺伝子の塩基配列を解析したところ、配列番号21の塩基配列であることが明らかとなった。
【0049】
N末端の55アミノ酸残基を欠失したEXT2タンパク質(EXT2Tタンパク質)のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するDNA(EXT2T遺伝子)は、J. Biol. Chem. 273 (1998), 26265-26268に記載されたウシのEXT2タンパク質のcDNAがpcDNA3(pcDNA3.1Zeo)に挿入されたものを鋳型として、インフレームのBamHIサイトを含む配列番号22の5'プライマー及び終止コドンの40塩基対下流域にBamHIサイトを有する配列番号23の3'プライマーを用いてPCR法を行って増幅して得た。PCR法はKOD DNAポリメラーゼ(株式会社東洋紡製)を用いて96℃で30秒、58℃で30秒、72℃で60秒からなるサイクルを30回繰り返して行った。このPCR産物(EXT2T遺伝子)を単離してBamHIで消化し、発現ベクターpGIR201protAに組み込みpGIR201(EXT2T)を得た。pGIR201(EXT2T)は、EXT2Tタンパク質、インスリンシグナルペプチド及びProtein Aが融合タンパク質として発現するように構築されている。このpGIR201(EXT2T)をNheIで消化し、得られたEXT2T遺伝子を含む断片をpEF-BOSのXbaIサイトに常法に従って挿入してpEF-BOS(EXT2T)を得た。常法に従って挿入されたEXT2T遺伝子の塩基配列を解析したところ、配列番号24の塩基配列であることが明らかとなった。
【0050】
EXTL2タンパク質の膜貫通領域を欠失した形態(EXTL2Tタンパク質)をコードするDNA(EXTL2T遺伝子)を含むベクターはJ. Biol. Chem. 274(1999), 13933-13937に記載された方法で調製した。得られたベクターは発現プラスミドベクターpSVL(アマシャム ファルマシア バイオテック社製)のXbaIサイトにN末端の57アミノ酸残基を欠失したEXTL2TとProtein Aを融合タンパク質として発現する塩基配列のDNA断片が挿入された構造を有していた。
【0051】
実施例2
本発明ベクターによる可溶化形態の酵素の発現
上記で得られた各々の発現ベクター(6.7μg)をφ100mmのプレート上で培養したCOS-1細胞にFuGENE6(Roche Molecular Biochemicals社製)を用いて導入した。導入後2日間培養を継続し、1mlの培地を回収し、10μlのIgG-セファロースビーズ(Amersham Pharmacia Biotech社製)を添加して4℃で1時間インキュベートして融合タンパク質をビーズに結合させた。ビーズは1分間遠心処理を行って(×2000g)回収した後洗浄し、活性測定用緩衝液(GlcNAc転移活性を測定する場合はpH6.5, 10mM MnCl2, 1mM ATP-2Na,受容体(表1参照)及び8.21×105dpmのUDP(ウリジン二リン酸)-[3H]GlcNAc(NEN Life Science Product社製)を含む30μlの100mMのMES緩衝液、GlcA転移活性を測定する場合はpH7.2, 10m MnCl2, 10mM MgCl2, 5mM CaCl2, 0.04% Triton X-100及び171μMのATP(アデノシン三リン酸)-2Na,受容体(表1参照)及び5.66×105dpmのUDP-[14C]GlcA(NEN Life Science Product社製)を含む30μlの50mM HEPES緩衝液、GlcNAc転移活性を測定する場合はpH6.5, 20mM MnCl2, 171μM ATP-2Na,受容体(表1参照)及び5.28×105dpmのUDP-[3H]GalNAc(NEN Life Science Product社製)を含む30μlの50mMのMES緩衝液)に10μlの該ビーズを懸濁して反応液とし、酵素活性を測定した。
使用した受容体の種類と濃度は下記表1の通りであった。
【0052】
【表1】
(表1)
注:▲1▼調製法は投稿準備中(H. Shimakawa, Y. Kano, H. Kitagawa, J. Tamura, J.D.Esko, and K. Sugahara)。
▲2▼国立理化学研究所小川 智也博士より恵与。
▲3▼n≧4、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89(1992),2267-2271に従って調製した。
▲4▼n≧4、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89(1992),2267-2271に従って調製した。
▲5▼国立理化学研究所小川 智也博士より恵与。
▲6▼国立理化学研究所小川 智也博士より恵与。
【0053】
上記反応液を37℃で1時間インキュベートし、シリンジカラム(Sephadex G-25(Amersham Pharmacia Biotech社製)又はSuperdex Peptideカラム(Amersham Pharmacia Biotech社製))を用いたゲル濾過及びNova-Pak C18カラム(3.9×150mm;Waters社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により放射能ラベルされた受容体を分画した。放射能ラベルされた受容体を含む画分を回収し、その画分に含まれる放射能を液体シンチレーションカウンターを用いて測定した(表2)。
【0054】
【表2】
(表2)
注:NDは検出不能(<0.1pmol/ml培地/時間)を示す
【0055】
また精製したrib-2Tタンパク質、インスリンシグナルペプチド及びProtein Aの融合タンパク質はウェスタンブロッティングにより分子量は約130kDaであり、Nグリコシダーゼ(生化学工業株式会社製)により消化した後の分子量は約110kDaだった。
【0056】
実施例3
反応生成物の同定
rib-2Tタンパク質、EXTL1Tタンパク質及びEXTL3Tタンパク質の酵素活性により、GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nにGlcNAcが転移して生じた実施例2の反応生成物の単離は0.25MのNH4HCO3/7% 1-プロパノールで平衡化したSuperdex Peptide HR10/30カラム(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用したゲル濾過で行った。酵素反応生成物が有する放射能ピークを含む画分を回収し、乾燥した。単離された約72pmolの生成物を▲1▼20μlの50mMクエン酸緩衝液中(pH4.5)で3mIUのβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼ(生化学工業株式会社製)又は▲2▼2mMの酢酸カルシウムを含む30μlの20mMの酢酸緩衝液中(pH7.0)で3mIUのヘパリチナーゼI(生化学工業株式会社製)により37℃で一晩消化した。酵素消化物を上記と同様にSuperdex Peptide HR10/30カラムを用いて解析した。
【0057】
rib-2Tタンパク質及びEXTL3Tタンパク質のGlcAβ1-3Galβ1-O-C2H4NHCbzにGlcNAcを転移するGlcNAc-TI活性によって生じた反応生成物の単離はNova-Pak C18カラム(3.9×150mm:Waters社製)とLC-10ASシステム(株式会社島津製作所製)とを用いたHPLCにより行った。カラムは室温、流速1.0ml/分で15分間純水を流し反応生成物をカラムに吸着させ、その後0〜100%のメタノールの直線濃度勾配により40分かけて展開した。放射能ピークを含む画分を集めて乾燥し、約74pmolの生成物を▲1▼20μlの50mMのクエン酸緩衝液中(pH4.5)で1mIUのβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼ又は▲2▼2mMの酢酸カルシウムを含む30μlの20mMの酢酸緩衝液中(pH7.0)で1mIUのヘパリチナーゼIにより37℃で一晩消化した。消化産物は上記と同様にNova-Pak C18カラムを用いて解析した。
【0058】
その結果、 rib-2Tタンパク質、EXTL1Tタンパク質及びEXTL3Tタンパク質の酵素活性によりGlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-)nを受容体としてをGlcNAcを転移するGlcNAc-TII活性によって生じた反応生成物は、いずれもβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼではGlcNAcが遊離せず、またヘパリチナーゼIによって消化されていたため、転移されたGlcNAcはα1→4結合で転移されたことが明かとなった。
【0059】
また、 rib-2Tタンパク質及びEXTL3Tタンパク質のGlcNAc-TI活性によりGlcAβ1-3Galβ1-O-C2H4NHCbzを受容体としてGlcNAcを転移して生じた反応生成物は、いずれもβ-N-アセチルヘキソサミニダーゼではGlcNAcが遊離せず、またヘパリチナーゼIによって消化されていたため、転移されたGlcNAcはα1→4結合で転移されたことが明かとなった。
【0060】
従って、rib-2Tタンパク質、EXTL1Tタンパク質、及びEXTL2Tタンパク質のGlcNAc転移活性はいずれもα1,4-GlcNAc転移活性であることが判明した。
【0061】
【発明の効果】
本発明により、ヘパリン骨格の合成に関与する単機能型のα1,4-N-アセチルグルコサミン転移酵素、及びそれを調製するためのベクター、組換体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で調製したpEF-BOS(rib-2T)の構造を示す図面。
【図2】実施例1で調製したpEF-BOS(EXTL1T)の構造を示す図面。
【図3】実施例1で調製したpEF-BOS(EXTL3T)の構造を示す図面。
【配列表】
Claims (9)
- 配列番号3、配列番号7、又は配列番号11に示す塩基配列からなる核酸。
- 請求項1に記載のDNAを含む発現ベクター。
- 発現ベクターが、N-アセチルグルコサミン転移酵素とマーカーペプチドとの融合タンパク質を発現するように構築されていることを特徴とする請求項2に記載の発現ベクター。
- 請求項2又は3に記載の発現ベクターによって宿主が形質転換された形質転換体。
- 請求項4に記載の形質転換体を生育させ、生育物からN-アセチルグルコサミン転移酵素を単離することを特徴とする、N-アセチルグルコサミン転移酵素の製造法。
- 配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示すアミノ酸配列からなるN-アセチルグルコサミン転移酵素。
- 配列番号4、配列番号8又は配列番号12に示すアミノ酸配列をその配列中に含み、且つ下記(a)〜(d)の触媒活性を有するタンパク質を含むN-アセチルグルコサミン転移用試薬。
(a)GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-) n の非還元末端にUDP-GlcNAcを供与体としてGlcNAcを転移してGlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-) n を生成する活性を有する。
(b)GlcNAcα1-(4GlcAβ1-4GlcNAcα1-) n の非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(c)GlcNAcα1-4GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GlcAを供与体としてGlcAを転移する活性を有しない。
(d)GlcAβ1-3Galβ1-3Galβ1-4Xylβ1-O-Serの非還元末端にUDP-GalNAcを供与体としてGalNAcを転移する活性を有しない。 - 請求項7に記載のN-アセチルグルコサミン転移用試薬を用い、一般式GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-) n で表される受容体の非還元末端にN-アセチルグルコサミンを転移することを特徴とする一般式GlcNAcα1-4GlcAβ1-(4GlcNAcα1-4GlcAβ1-) n で表される糖鎖の製造法。
- nが1以上の整数であることを特徴とする請求項8に記載の糖鎖の製造法。
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