JP4701536B2 - 表面実装型圧電デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動子やフィルタ等として使用される表面実装型圧電デバイスに関し、特に圧電振動素子をパッケージ内に接続する手段として導電性接着剤を用いた場合に発生する種々の不具合を解決した表面実装型圧電デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話機等の移動体通信機器は、小型化、軽量化が進む一方で、高機能化についても強く求められており、高機能化に伴う部品点数の増加と小型化という相反する2つの要求を同時に満たす為に、電装部を構成するプリント基板の小面積化と、搭載部品等の高密度化による基板面積の有効利用が重要視されるようになっている。
移動体通信機器や伝送通信機器において周波数制御デバイスとして用いられる水晶共振子(振動子、フィルタ)についても小型化等が強く求められており、高密度実装化に対応するためにデバイスのパッケージ構造としては表面実装型が主流となっており、併せて高周波化の要求が強くなっている。
図10は高周波化を目的とした超薄肉部を有するATカット水晶振動素子の斜視図であり、この水晶振動素子1はATカット水晶基板の基本波厚みすべり振動波を利用した振動子であって、その共振周波数が板厚と反比例することから、機械的強度を保ちつつ高周波化を図る為に、水晶振動素子1を構成する水晶基板の一方の主面をエッチングによって凹陥せしめ、該凹陥部13の底面を超薄肉の振動部13aとするとともに、振動部13aの外周を全周に亙って支持する厚肉の環状囲繞部14を一体的に形成する。更に、金のマスク蒸着、又はフォトリソグラフィにより水晶基板の一方の主面上には励振電極を構成する主面電極11と、これより延出するリード電極15及びパッド電極16に加えて、パッド電極17を形成する。なお、パッド電極17は、他方の主面上に同様に形成した励振電極を構成する裏面電極12から延出したリード電極18の端部に位置しており、水晶基板の側面を通る等してリード電極18と導通している。
このタイプの水晶振動素子1にあっては、2つのパッド電極16、17は、幅方向に沿って間隔dを隔てて配置されている。
【0003】
図11は水晶振動素子1を用いた表面実装型水晶振動子のパッケージ構造を示す縦断面図である。この水晶振動子は、図10に示した水晶振動素子1をセラミックパッケージ2内に収納してから、セラミックパッケージ2の上面開口を金属の上蓋により気密封止した構造を備える。
セラミックパッケージ2は、底部を構成するセラミック基板21と、セラミック基板21の上面外周に一体化されたセラミック製の環状の枠体22と、上蓋3をシーム溶接するために枠体22の上面に環状に固定されたシームリング23と、からなり、上面中央に水晶振動素子1を収納するための凹所24を有した箱形状を呈している。セラミック基板21の上面、即ち凹所24の内底面には金メタライズにより形成された内部端子(導通パッド)25、26が露出しており、それぞれパッケージ下面等に設けた図示しない外部端子と接続されている。
水晶振動子1のパッド電極16、17を内部端子25、26上に一対一で対応させた上で導電性接着剤4を用いて両者を接続固定する。
このようなタイプの水晶振動子の構造においては、水晶振動素子1をセラミックパッケージ2に対して電気的機械的に接続する為の手法を如何に選択するかが、周波数の安定化を図る上で重要であり、従来は軟質のシリコーン系導電性接着剤4を用いてセラミックパッケージ2内底面の2つの内部端子(導通パッド)25、26と、水晶振動素子1側の2つのパッド電極16、17とを一対一で接続していた。
シリコーン系導電性接着剤は、軟質であるため、熱歪みを吸収するという利点を有する。しかし、シリコーン系導電性接着剤を用いた場合、接着強度が弱いので、衝撃等のショックにより剥離が発生し易く、また、接着剤から発生するアウトガスによる振動素子面の汚染、導通劣化が発生する等の不具合があり、水晶振動素子の諸特性、例えば周波数温度特性、信頼性、例えばエージング特性を著しく損ねる結果をもたらす。特に、携帯電話機に使用される水晶振動子にあっては、衝撃に対する仕様が厳しいため、接着強度の弱い軟質の接着剤は不向きであった。
特に図10に示したタイプの超薄肉振動部を有する水晶振動素子1にあっては、軟質の接着剤を用いることにより発生する前記不具合による悪影響は深刻であり、高周波化するために超薄肉振動部の厚みを更に薄くすると悪影響が更に深刻となる。
一方、シリコーン系導電性接着剤と比較して、硬質のエポキシ系、ポリイミド系接着剤は、加熱された導電性接着剤により水晶振動子1内に熱応力が発生したり、接着剤が硬化する時に水晶振動素子1内に内部応力が発生する等、熱歪みに対する吸収性の点で問題があるが、耐衝撃性に優れるため、この点については携帯電話機等には適した接着剤である。
【0004】
ところで、図10、図11に示した導電性接着剤4として、硬質のエポキシ系、ポリイミド系接着剤を使用した場合、硬質の導電性接着剤4による2か所の固定部を結ぶ直線に対して直交する方向(側方)に水晶振動素子1の主振動部13aが位置することになる。この構造は、一見すると、主振動部が固定部から離間しているために理想的とも思えるが、実際には硬質の導電性接着剤4によってパッケージ内底面と水晶振動素子1とが固定されるため、導電性接着剤4間に熱膨張率差による応力歪みが加わり、これが主振動部13aにも影響し、水晶振動素子の安定性を損ねている。
これを更に詳述すると、硬質の導電性接着剤4による水晶振動素子の支持拘束力は大きいため、温度変化に起因した水晶振動素子1の膨張、収縮を硬質の導電性接着剤が妨げて、温度変化に起因して発生する熱応力が無視できない程度に達し、水晶振動素子の諸特性に悪影響を与えるという問題が生じていた。
因に、硬質の導電性接着剤4による拘束部に発生する応力は、矢印Aにて示す方向へ向うため、パット電極16と17との間に歪が生じ、また、主面電極11に対しては、点線Bを作用軸として矢印C方向へ向けて股裂き又は鋏の如き応力が加わることとなり、水晶振動素子1のエージング特性及び周波数温度特性等の周波数特性を悪化させる場合があった。
このことは、水晶振動子、フィルタ等の水晶共振子のみならず、圧電共振子一般に共通した問題でもあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解消しようとする課題は、硬質の導電性接着剤を用いたリジッドな支持部により圧電振動素子をセラミックパッケージ内底面に接続したとしても、温度変化に起因して発生する熱応力による諸特性の劣化を解決することができる表面実装型圧電デバイス(振動子、フィルタ)を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、請求項1の発明は、励振電極を備えた圧電振動素子を表面実装型パッケージの内底面に設けた導通パッド上に片持ち状態にて電気的機械的に接続保持した圧電デバイスであって、前記圧電振動素子の片面上の2つのパッド電極と前記表面実装型パッケージ内底面上の2つの導通パッドとの一対一の接続を、夫々導電性接着剤を用いて行ったものにおいて、前記2つのパッド電極上の前記各導電性接着剤を結んだ線分の延長上に、前記励振電極を配置したことを特徴とした。
請求項2の発明は、励振電極を備えた圧電振動素子を表面実装型パッケージの内底面に設けた導通パッド上に片持ち状態にて電気的機械的に接続保持した圧電デバイスであって、前記圧電振動素子に設けた3つのパッド電極と前記表面実装型パッケージ内の3つの導通パッドとを一対一にて接続する際に、少なくとも2組のパッド電極と導通パッド間を夫々導電性接着剤を用いて行ったものにおいて、前記2つのパッド電極上の前記各導電性接着剤を結んだ線分の延長上に、前記励振電極を配置したことを特徴とした。
請求項3の発明は、前記2つのパッド電極間の間隔を500μm以下としたことを特徴とした。
請求項4の発明は、記圧電振動素子を構成する圧電基板としてATカット水晶基板を用い、前記2つのパッド電極を該ATカット水晶基板の結晶軸X軸に対して60度若しくは120度の角度を有した前記線分に沿って隣接配置したことを特徴とした。
請求項5の発明は、前記2つのパッド電極上に固定される前記各導電性接着剤を前記線分に沿って一直線状に配列したことを特徴とした。
請求項6の発明は、前記圧電振動素子を構成する圧電基板として、超薄肉の振動部と、該振動部の外周を支持する厚肉の環状囲繞部とを一体的に構成した圧電基板を用いたことを特徴とした。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は高周波化を目的とした超薄肉部を有するATカット水晶振動素子の斜視図であり、この水晶振動素子1はATカット水晶基板の基本波厚みすべり振動波を利用した振動子であって、その共振周波数が板厚と反比例することから、機械的強度を保ちつつ高周波化を図る為に、水晶振動素子1を構成する水晶基板の一方の主面をエッチングによって凹陥せしめて凹陥部13とした構成を有する。従って、この水晶基板は、該凹陥部13の底面を超薄肉の振動部13aとするとともに、振動部13aの外周を全周に亙って厚肉の環状囲繞部14により一体的に支持した構成となっている。更に、マスクを用いて金を蒸着するか、又はフォトリソグラフィにより水晶基板の一方の主面(振動部13a)上には励振電極を構成する主面電極11と、これより延出するリード電極15及びパッド電極16に加えて、パッド電極17を形成する。なお、パッド電極17は、他方の主面上に同様に形成した励振電極を構成する裏面電極12から延出したリード電極18を水晶基板の側端面を通って表面側に引き出すことによりリード電極18と導通している。
なお、この水晶基板は例えば縦横寸法が夫々3mm、肉厚が80μm、振動部13aの肉厚が10μm前後の寸法を有するものとして説明する。この振動部13aによれば100MHzを越える共振周波数を得ることができる。
【0008】
図2は前記水晶振動素子1を用いた圧電デバイスの一例としての表面実装型水晶振動子の構造を示す断面図である。なお、セラミックパッケージ自体の構造は図11に示したものと同様であり、同一箇所には同一符号を付して説明する。
この図1に示した水晶振動素子1をセラミックパッケージ2内に収納してから、セラミックパッケージ2の凹所24の上面開口を金属の上蓋3により気密封止した構造を備える。
セラミックパッケージ2は、底部を構成するセラミック基板21と、セラミック基板21の上面外周に立設一体化されたセラミック製の環状の枠体22と、上蓋3をシーム溶接するために枠体22の上端面に環状に固定されたシームリング23と、からなり、全体として中央に水晶振動素子1を収納するための凹所24を有し、外周に環状部を有した箱形状を呈している。セラミック基板21の上面には金メタライズにより形成された内部端子(導通パッド)25、26が露出しており、それぞれパッケージ底面等に設けた図示しない外部端子と接続されている。内部端子25、26は、水晶振動子側のパッド電極16、17と対応する位置関係、間隔にて配置されている。
水晶振動素子1をセラミックパッケージ2内に片持ち接続する際には、水晶振動素子1のパッド電極16、17とセラミックパッケージの入出力用内部端子25、26とを一対一の対応関係で対向させた上で、所要量の硬質の導電性接着剤(エポキシ系、ポリイミド系接着剤)4を介した固定が行われる。
【0009】
図10に示した水晶振動素子にあっては、2つのパッド電極16、17を水晶振動素子の幅方向(ATカット水晶の場合Z軸方向)両端部に距離dだけ離間させて配置したが、この実施形態の水晶振動素子においては2つのパッド電極16、17は幅方向に離間しておらず、むしろ各パッド電極の幅方向内側端部16a、17aが幅方向に一部オーバーラップするように近接している。このオーバーラップした各パッド電極の内側端部16a,17aは幅方向と直交する方向(ATカット水晶の場合X軸方向)に所定のギャップd1を隔てて離間配置されている。ここで、水晶振動素子1のパッド電極16と17との間のギャップd1は、500μm以下の近接した値とし、導電性接着剤4は各パッド電極16、17のオーバーラップ部上に配置する。この実施形態では各パッド電極16、17上の各導電性接着剤4の幅方向位置は一致しており、励振電極としての主面電極11の中心部から延びるX軸線に沿ってずれがない状態で直線状に配置されている。
また、硬質の導電性接着剤4を介して各パッド電極16、17と一対一で接続されるセラミックパッケージ2内の内部端子25、26の配置も、各パッド電極16、17と対向するように配慮する。つまり、内部端子25、26は幅方向と直交する方向に500μm以下のギャップを隔てて対向配置される。
前記のように硬質の導電性接着剤4が水晶振動素子を支持拘束する力は軟質のシリコーン系導電性接着剤に比して相当大きいが、この実施形態のようにパッド電極16と17の一部を幅方向にずらすと共に各パッド電極のオーバーラップ部上に夫々硬質の導電性接着剤4を一列(一直線状)に配置したので、各導電性接着剤は水晶振動素子1の一端縁中央部をリジッドに支持することとなる。各導電性接着剤4が水晶振動子の一端縁中央部に一列に配置されているため、導電性接着剤4の配列と直交する方向については温度変化に起因した水晶振動素子1の膨張、収縮を導電性接着剤が妨げることがなくなり、更に、導電性接着剤にて固定したことにより水晶振動子1に生じる応力は、パッド電極16と17との間でとどまることになるので、温度変化に起因して発生する熱応力によって振動部13aに歪みが生じることなく、水晶振動素子の諸特性に悪影響を与えるという不具合もなくなる。例えば、図3は周波数温度特性についてのヒステリシス特性の一例を示す表であり、この表から明らかなように熱ヒステリシスの小さい極めて安定した特性を得ることができた。更に、その他の信頼性、例えばエージング持性やリフロー特性においても熱応力を抑制し、特性劣化を回避できることが明らかである。
また、パッド電極及び導電性接着剤4は必ずしもX軸に沿って配列する必要はなく、励振電極を中心として放射線状に延びる直線の一本に沿って配列すれば良いのである。
【0010】
つまり、図4に示すように励振電極としての主面電極11(又は裏面電極12)の中心点を通って放射状に延びる直線Lの内のいずれか一本に沿って励振電極及び導電性接着剤4が配列されるように構成することにより、応力は、当該直線に沿ったパッド電極16と17との間の当該直線と直交する矢印方向にのみ発生する。また、僅かに振動部13aに伝播する応力に対しては、励振電極11、12をパッド電極16の位置から例えば遠避けることにより回避すればよい。
但し、このように僅かでも周波数に影響が及ぶ事態を回避することが求められる場合には、次のように特定の角度を備えた放射線にほぼ沿って励振電極及び導電性接着剤4を直線状に配列することが有効である。
即ち、例えば、ATカット水晶基板を用いた場合、パッド電極16、17及び導電性接着剤4の各々を水晶結晶軸X軸に対し、60度若しくは120度の角度を有する直線に沿って近接配置すれば、圧縮(引張り)応力感度が零となるため、更に熱応力の発生を抑制することができる。つまり、上記いずれかの直線に沿ってパッド電極及び導電性接着剤を配置すれば、導電性接着剤の拘束力に起因した応力が発生したとしても、この直線上に沿った部分はそもそも応力によって周波数変動が発生しない特異な角度領域である為、周波数の変化はほとんど生じない。
【0011】
即ち、図5(a)は各パッド電極を水晶結晶軸X軸に対して60度もしくは120度の角度を有した直線に沿って近接配置させると共に、各パッド電極上に一直線状に導電性接着剤を配置する場合の各パッド電極の配置例を示す図であり、(b)はX軸に対して60度の位置に沿って各パッド電極を配置した水晶振動素子の平面図を示している。
図5(a)に示すように各パッド電極16、17を水晶結晶軸X軸に対して60度もしくは120度の角度を有した直線に沿って近接配置(d2≦500μm)し、各パッド電極16、17と夫々対向する内部端子25、26とを硬質の導電性接着剤4を介してリジッドに固着したことにより、この固着部での支持拘束力に起因した応力が発生したとしても、この水晶振動素子の周波数特性に悪影響が発生することがなくなる。しかも、この実施形態では、各線に沿って配置された2つのパッド電極16、17上の硬質の導電性接着剤4が直線状に配列されているため、配列方向と直交する向きの応力が発生しにくい状態となっている。つまり、温度変化に起因した水晶振動素子1の膨張、収縮を硬質の導電性接着剤が妨げることがなくなり、温度変化に起因して発生する熱応力によって水晶振動素子の諸特性に悪影響を与えるという不具合もなくなるので、水晶振動素子の特性を安定させることができる。
図5(b)はX軸に対して60度の角度を有した直線に沿って2つのパッド電極を近接配置した場合の水晶振動素子の具体的構成例を示しており、各リード電極15、18は例えば図示のような経路にて配線する。そして、図示しないパッケージの内底面に設けた内部端子25、26に対して導電性接着剤4を介して各パッド電極16、17を接続固定することにより、片持ち支持構造を実現することができる。
【0012】
更に、図6は、本発明に基づく水晶振動素子の他の実施形態の構成図を示すものである。
同図(a)に示す水晶振動素子1の構成が図1の水晶振動素子1の構成と異なる点は、パッド電極16とパッド電極17とのオーバーラップ部のギャップd1の中間に幅方向に延長するよう溝を形成したところにあり、このような溝は、例えば凹陥部13を形成する際のエッチング加工の際に同じに形成することができる。
そして、同図(b)に示すようにこのような構成の水晶振動素子1をセラミックパッケージ2内に収納する際には、水晶振動素子1を凹陥部13がセラミック基板21側と対面するような配置状態となるようパット端子16、17と内部端子25、26とを導電性接着剤4にて接着する。
尚、溝19と凹陥部13とを同主面側に形成した水晶振動素子1を用いて説明したが、溝19を凹陥部13とは異なる一方の主面に形成したものでも良く、この場合、水晶振動素子1のセラミックパッケージ2内での搭載状態は図2に示した状態と同じように、凹陥部13が上蓋3側を向くよう搭載することが望ましい。
そして、このような構成の水晶振動素子1は、パッド電極16、17の間に発生した応力が溝19によって緩和(吸収)されるので、振動部13aへ伝達される応力の絶対的値を更に小さくすることができる。
【0013】
更に、図7は本発明に基づく水晶振動素子の他の実施形態の構成図を示すものである。
同図に示す水晶振動素子1の構成が特徴とする点は、パッド電極16と凹陥部13との中間に幅方向に延長するよう溝20を形成した所にある。
そしてこのような構成の水晶振動素子1は、導電性接着剤4を用いてパッド電極16、17とセラミックパッケージ2の内部端子25、26とを接着されるが、この構成に伴ってギャップd1間に発生した応力の一部が振動部13aに伝達しようとしても、溝20が応力の伝達経路を遮断、及び、伝達する応力を緩和するよう機能するので、振動部13aへ応力が伝達されるのを抑圧することができる。
【0014】
更に、図6に示した水晶振動素子の特徴と図7に示した水晶振動素子との特徴とを足し合わせたものとして図8に示すような水晶振動素子であっても良い。
即ち、図8は、本発明に基づく水晶振動素子の他の実施形態の構成図を示すものである。
同図に示す水晶振動素子1が特徴とする点は、ギャップd1の中間に幅方向に延長した溝19を形成すると共に、パッド電極16と振動部13aとの中間に幅方向に延長した溝20を形成したところにある。
このような構成の水晶振動素子1は、図6に示した水晶振動素子の機能と図7に示した水晶振動子の機能とを併せ持った機能が得られる為、より効果的に振動部13aへ応力が伝達するのを遮断することが可能である。
なお、前記実施形態では、超薄肉の振動部13aの外周を厚肉の環状囲繞部14により包囲一体化した構成の圧電振動素子をパッケージ内に片持ち支持する例を示したが、これは一例に過ぎず、本発明は平板、コンベックス、ベベル加工板等のあらゆる種類、形状の圧電基板を用いた圧電振動素子、フィルタについても適用することができ、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0015】
次に、本発明の圧電振動素子の支持構造は、モノリシック多重モードフィルタにも適用可能である。即ち、図9(b)は従来のモノリシック多重モードフィルタに用いるフィルタ素子30の平面図であり、平板状の圧電基板31の主振動部32の片面には電極33、34が、他面には電極35が夫々形成され、各電極33、34、35から基板の一端縁に向けて延びたリード電極33a,34a,35aの端部にはパッド電極33b,34b,35bが配置されている。このフィルタ素子30は、図示しない表面実装用のセラミックパッケージ内に封止されるが、その際にパッケージ内底面に設けた内部端子に対して少なくとも2つのパッド電極、この例ではパッド電極33b,34bが導電性接着剤により固定される。
この導電性接着剤として硬質の導電性接着剤を使用した場合には、上記従来例にて述べた水晶振動子の場合と同様に、温度変化に起因して発生する熱応力による諸特性の劣化を回避することができない。
そこで、本実施形態では、図9(a)に示した如く、少なくとも2つのパッド電極33b,34bを直線状に配列すると共に、該直線の延長上に主振動部32が位置するように構成した。
このように、本実施形態では、2つのパッド電極33b,34b上の硬質の導電性接着剤4が直線状に配列されているため、配列方向と直交する向きの応力が発生しにくい状態となっている。つまり、温度変化に起因したフィルタ素子30の膨張、収縮を硬質の導電性接着剤4が妨げることがなくなり、温度変化に起因して発生する熱応力によってフィルタ素子の諸特性に悪影響を与えるという不具合もなくなるので、フィルタ素子の特性を安定させることができる。
なお、上記実施形態では、フィルタ素子として平板状の圧電基板を使用した例を示したが、これは一例であり、超薄肉の振動部の外周を厚肉の環状囲繞部により包囲一体化した構成の圧電基板を用いてもよい。
【0016】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、圧電振動素子に設ける2つのパッド電極を僅かなギャップを隔てて隣接配置するとともに、各パッド電極上に固定する導電性接着剤を一直線状に配列した上で、導電性接着剤を介して圧電振動素子をセラミックパッケージ内底面に接続したので、導電性接着剤固着部の支持拘束力が圧電振動素子の温度変化に付随した膨張、収縮を妨げることを防止し、熱応力の発生を抑制し、諸特性の劣化を防止することができる。
このように本発明では、直線状に配列された導電性接着剤を介して、圧電振動素子の片側端部をパッケージ内底面が固定的に支持することとなり、圧電振動素子の温度変化に付随する膨張、収縮を妨げることなく、熱応力の発生を抑制することができる。特に、熱ヒステリシスの小さい極めて安定した特性を得ることができ、更に、その他の信頼性、例えばエージング持性やリフロー特性においても熱応力を抑制し、特性劣化を回避できることが明らかである。
更に、本発明によれば、圧電振動素子が2つのパッド電極の中間に2つのパッド電極を結ぶ延長線と交わる方向に延長した溝を有した構造としたのでパット電極間に発生した応力が溝によって緩和・吸収されるので振動部へ伝達される応力の絶対的値を更に小さくすることができる。
そして更に、本発明によれば、圧電振動素子が2つのパッド電極のうち励振電極に近い方のパッド電極と励振電極との中間にパッド電極と励振電極とを結ぶ延長線と交わる方向に延長した溝を有したものであるのでパット電極間に発生した応力が溝によって緩和・吸収されるので振動部へ伝達される応力の絶対的値を更に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本究明の一実施の形態例としてのATカット水晶振動子の斜視図。
【図2】本発明の一実施の形態例としての圧電デバイスのパッケージ構造を示す断面図。
【図3】本発明の実施の形態例を用いた場合の改善効果を示す図。
【図4】本発明の原理を説明する図。
【図5】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態の水晶振動素子の構成説明図。
【図6】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態の水晶振動素子の構成説明図。
【図7】本発明の他の実施形態の水晶振動素子の構成説明図。
【図8】本発明の他の実施形態の水晶振動素子の構成説明図。
【図9】(a)は本発明の他の実施形態の説明図、(b)は従来例の説明図。
【図10】従来のATカット水晶振動子の斜視図。
【図11】従来の圧電デバイスのパッケージ構造を示す断面図。
【符号の説明】
1 水晶振動素子、2 セラミックパッケージ、3 上蓋、4 硬質の導電性接着剤、11 主面電極、12 裏面電極、13 凹陥部、13a 振動部、14環状囲繞部、15 リード電極、16、17 パッド電極、18 リード電極、19、20 溝、21 セラミック基板、22 環状枠体、23 シームリング、24 凹所、25、26 内部端子、30 フィルタ素子、31 圧電基板、32 主振動部、33、34 電極、35 電極、33a,34a,35a リード電極、33b,34b,35b パッド電極。
Claims (6)
- 励振電極を備えた圧電振動素子を表面実装型パッケージの内底面に設けた導通パッド上に片持ち状態にて電気的機械的に接続保持した圧電デバイスであって、前記圧電振動素子の片面上の2つのパッド電極と前記表面実装型パッケージ内底面上の2つの導通パッドとの一対一の接続を、夫々導電性接着剤を用いて行ったものにおいて、前記2つのパッド電極上の前記各導電性接着剤を結んだ線分の延長上に、前記励振電極を配置したことを特徴とする表面実装型圧電デバイス。
- 励振電極を備えた圧電振動素子を表面実装型パッケージの内底面に設けた導通パッド上に片持ち状態にて電気的機械的に接続保持した圧電デバイスであって、前記圧電振動素子に設けた3つのパッド電極と前記表面実装型パッケージ内の3つの導通パッドとを一対一にて接続する際に、少なくとも2組のパッド電極と導通パッド間を夫々導電性接着剤を用いて行ったものにおいて、前記2つのパッド電極上の前記各導電性接着剤を結んだ線分の延長上に、前記励振電極を配置したことを特徴とする表面実装型圧電デバイス。
- 前記2つのパッド電極間の間隔を500μm以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面実装型圧電デバイス。
- 前記圧電振動素子を構成する圧電基板としてATカット水晶基板を用い、前記2つのパッド電極を該ATカット水晶基板の結晶軸X軸に対して60度若しくは120度の角度を有した前記線分に沿って隣接配置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の表面実装型圧電デバイス。
- 前記2つのパッド電極上に固定される前記各導電性接着剤を前記線分に沿って一直線状に配列したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の表面実装型圧電デバイス。
- 前記圧電振動素子を構成する圧電基板として、超薄肉の振動部と、該振動部の外周を支持する厚肉の環状囲繞部とを一体的に構成した圧電基板を用いたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の表面実装型圧電デバイス。
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