JP4700360B2 - 墨壷 - Google Patents

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Description

本発明は、木工あるいは建築において、墨汁を付着させた糸を張設して線引きを行う墨壷に関する。
木工や建築において墨線を打つ線引き作業で使用される墨壷は、従来から、基本的にはケース内に糸巻及び墨汁浸透部材が設けられ、糸巻に巻かれた糸が、墨汁を沁み込ませた墨汁浸透部材に接触しながら、ケースの一端に形成された糸繰り出し口から外部へ繰り出されるようになっており、糸の先端に、この糸を墨打ち起点に止着するためのカルコが繋着された構造を備える。
この種の墨壷による墨打ち作業においては、まず、カルコを相手材の墨打ち起点に止着してからケースを移動させると、これに伴い、糸巻から引き出される糸には、墨汁浸透部材との接触によって墨汁が付着するので、この糸に適当なテンションを与えた状態で、墨打ち対象面に向けて手指ではじくことによって、直線状の墨線を転写することができる。
また、下記の特許文献に開示された墨壷は、糸巻収納部及び墨汁浸透部材充填部を開閉可能となるように、ケース全体が2分割されている。このような構造とすれば、糸が切れた時に、この糸をケース内に通し直す作業を容易に行うことができる。
実開昭53−150998号公報 実開昭60−127880号公報
ところが、上記従来構造の墨壷によれば、例えば墨汁浸透部材に墨汁を補充したり、建材に罫書き等を行うための墨差しの筆先部を、墨汁浸透部材に押し付けて、この筆先部に墨汁を付着させるような場合にも、ケース全体を開くことになるので、異物の侵入による糸の巻き取り障害が起こりやすくなったり、糸巻や墨汁浸透部材等、内部収納物が脱落したり、糸が所定の通り道から外れたりしやすくなる問題が指摘される。
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、糸通し作業を容易に行うことができ、また墨汁浸透部材に墨汁を補充する場合等に、内部収納物が脱落したり、糸が所定の通り道から外れたりしない構造とすることにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る墨壷は、ケースに、糸巻が回転可能に収納された糸巻収納室と、前記糸巻に巻回された糸を外部へ導出する糸導出孔と、前記糸巻収納室と前記糸導出孔との間に位置し墨汁浸透部材が収納された墨室が形成され、前記糸巻収納室、糸導出孔及び墨室が、それぞれ別々のカバーによって開閉可能となっているものである。
このため、例えば糸が切れた時などに、糸巻に巻かれた糸を糸導出孔へ通し直す場合には、糸巻収納室、糸導出端部及び墨室のカバーを開いて糸通し作業を行うことができる。また、例えば墨汁浸透部材に墨汁を補充したり、墨差しの筆先を墨汁浸透部材に押し付けて、前記筆先に墨汁を付着させるような場合には、墨室のカバーのみを開けば良い。
請求項1の発明に係る墨壷によれば、糸通しの際には、糸巻収納室、糸導出端部及び墨室にかけてケース全体を開くことによって、この糸通し作業を容易に行うことができる。また、墨汁浸透部材に墨汁を補充したり、墨汁浸透部材の墨汁を付着させる墨差しを用いる場合には、墨室のカバーのみを開けば良いため、糸巻などの内部収納物が脱落したり、糸が所定の通り道から外れるのを防止することができる。
以下、本発明に係る墨壷の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る墨壷の好ましい実施の形態を示す平面図、図2は図1におけるII方向の側面図、図3は図1におけるIII−III’断面図、図4は図2におけるIV−IV’断面図、図5は図2におけるV−V’断面図、図6は図2におけるVI−VI’断面図、図7は図1の墨壷における墨室カバーを開いた状態を示す平面図、図8は図7におけるVIII−VIII’断面図、図9は図1の墨壷における墨室カバー及び糸導出端部カバーを開いた状態を示す平面図、図10は図9におけるX−X’断面図、図11は図1の墨壷における糸巻カバー、墨室カバー及び糸導出端部カバーを開いた状態を示す平面図、図12は図11におけるXII−XII’断面図、図13は使用状態の説明図である。
まず図1、図2及び図3において、参照符号1は、ABS等の合成樹脂材で成形されたケースである。このケース1は、円形の皿状の糸巻収納部11Aと、その前方(図2及び図3における右側)の墨室形成部11Bと、更にその前方の糸導出端部11Cが形成されたケース本体11を有する。そして、糸巻収納部11Aの上部開口には、糸巻カバー12が着脱可能に設けられ、墨室形成部11Bの上部開口には、墨室カバー13がヒンジ131を介して揺動可能に設けられ、糸導出端部11Cの上部開口には、糸導出端部カバー14が、墨室カバー13のヒンジ131と同じ側に設けられたヒンジ141を介して揺動可能に設けられている。
糸巻カバー12は、糸巻2をケース本体11における糸巻収納部11A内に回転自在に保持するものであって、後端に形成された掛合部121と、図4及び図12に示されるように、前記掛合部121と反対側の半筒状端部12aにそれぞれヒンジ122aを介して左右一対設けられた掛合爪122とを有する。そして、この糸巻カバー12は、図3に示されるように、掛合部121を、糸巻収納部11Aの後端に突設された掛合部11aに掛合すると共に、図4に示されるように、一対の掛合爪122を、糸巻収納部11Aと墨室形成部11Bの間の外側面に形成された一対の掛合凹部11bに、それぞれ掛合させることによって、糸巻収納部11Aの上側に固定され、この糸巻収納部11Aとの間に糸巻収納室10Aを画成する。
図1、図2及び図3に示されるように、糸巻収納部11Aと糸巻カバー12との衝合面間には、ゴム材からなるパッキン111が介在され、糸巻収納部11Aにおける墨室形成部11B側の端部近傍には、金属製の第一ガイドピン112が設けられている。パッキン111は、図11に示されるように、糸巻収納部11Aの外周の上面に周設されており、また、第一ガイドピン112は、図4及び図12に示されるように、上側へ開いたU字形をなし、糸巻2から導出された糸3を通すものである。
図3に示されるように、第一ガイドピン112の墨室形成部11B側には、金属製の第二ガイドピン113が配置されている。この第二ガイドピン113は、図3、図4及び図12に示されるように、両端を、糸巻カバー12における半筒状端部12aの内部に突設された一対のアームに保持されており、U字形の第一ガイドピン112を通る糸3が上側へ外れないように押えるものである。
糸巻2は、外周に糸3を巻回する糸巻本体21と、この糸巻本体21の内周に収納されて一端が糸巻本体21に固定されると共に他端が後述のばね芯51に固定されて糸巻本体21を糸3の巻き取り回転方向に付勢する渦巻きばね22と、糸巻本体21の軸方向一側に形成され糸巻カバー12の内周の円形窓12bから外部へ露出した巻き取りハンドル23とからなり、巻き取りハンドル23の外側面には、手指で回転操作するための複数の指掛け凹部23aが形成されている。これらの部材はABS等の合成樹脂材で成形されており、図11に示されるように、糸巻2は、糸巻カバー12をケース本体11の糸巻収納部11Aから取り外すことによって、糸巻収納室10A内から取り出すことができる。
図3及び図11に示されるように、糸巻2における糸巻本体21の外側面の外周部には、多数の被係止突起24aが等位相間隔で突設されている。一方、糸巻カバー12の半筒状端部12aには、糸巻2の回転と共に円周方向へ移動する前記被係止突起24aの移動経路へ向けて進退可能なロック部材123が設けられており、このロック部材123には、その進退動作を手指で操作するための操作部124が連結されている。すなわち、手指により操作部124を操作して、被係止突起24aの移動経路上にロック部材123を進出させることによって、多数の被係止突起24aのいずれかと干渉するので、糸巻2の回転をロックすることができる。
図2、図5、図7及び図8等に示されるように、墨室カバー13の揺動端部(ヒンジ131と反対側の端部)には、掛合爪132が形成されている。この掛合爪132は、ケース本体11における墨室形成部11Bの外側面に形成された掛合凹部11cにスナップ的に掛合されることによって、図5に示されるように、墨室カバー13を閉塞状態に固定するものである。
図3、図5及び図7等に示されるように、墨室カバー13の外周下縁には、ゴム状弾性材料からなるパッキン133が周設され、ケース本体11における墨室形成部11Bの上面に密接可能となっている。そして、墨室形成部11Bと墨室カバー13によって画成される墨室10B内には、スポンジ、脱脂綿あるいはフェルト等からなる墨汁浸透部材4が着脱可能に充填されている。
なお、この墨汁浸透部材4は、ケース本体11の墨室形成部11B及び墨室カバー13の内側の双方に充填され、図3及び図5に示されるように墨室カバー13を閉じた状態において、双方の墨汁浸透部材4が互いに衝合され、十分な量の墨汁を保持できるようになっている。
ケース本体11の墨室形成部11Bにおける糸巻収納部11A側の隔壁11dの上面、及び糸導出端部11C側の隔壁11eの上面には、図7等に示されるように、糸道スリット11f,11gが形成されており、この糸道スリット11f,11gには、ゴム状弾性材料からなるパッキン114,115が設けられている。また、墨室10B内の墨汁浸透部材4には、糸道スリット11f,11gの間を直線状に延びる糸道スリット4aが形成されている。
墨室カバー13の中央部には円形孔が開設されていて、この円形孔には、ゴム材からなるキャップ134が密嵌されており、このキャップ134の内面には合成樹脂材からなる押圧部材135が取り付けられている。また、この押圧部材135の先端には、糸押えピン136が取り付けられている。そして、墨室カバー13を閉じた状態では、押圧部材135は、墨室10Bにおける糸3の通り道の真上に位置しており、キャップ134を手指で押して凹ませることによって、押圧部材135及び糸押えピン136が押し下げられ、墨汁浸透部材4の糸道スリット4aを通る糸3を、墨汁浸透部材4に強制的に押し付けるものである。手指による押し付けを解除すれば、押圧部材135及び糸押えピン136は、キャップ134の復元力によって復帰動作される。また、墨室カバー13における円形孔の周囲は凹部13aとなっており、キャップ134は、この凹部13a内にある。
ケース本体11における糸導出端部11Cと糸導出端部カバー14は、漏斗状の糸導出孔10Cを分担形成するものである。すなわち、糸導出端部カバー14の揺動端部(ヒンジ141と反対側の端部)には、ヒンジ142aを介して掛合爪142が取り付けられており、この掛合爪142は、図6に示されるように、ケース本体11における糸導出端部11Cの外側面に形成された掛合凹部11hに掛合されることによって、糸導出端部カバー14を糸導出端部11Cの上面に衝合された状態に固定するものである。
ケース本体11の糸導出端部11Cにおける墨室10B側の端部の上面には、糸道部材116が取り付けられており、糸導出端部カバー14には、図3に示される固定状態において前記糸道部材116の外側に位置するもうひとつの糸道部材143が取り付けられている。
ケース本体11の糸導出端部11Cにおける外端部の内周には、金属製のガイドリング117が取り付けられている。詳しくは、ガイドリング117は、その半周が、前記糸導出端部11Cの外端部に一体的に取り付けられ、他の半周が、糸導出端部カバー14の外端部の内周溝14a(図9又は図11参照)に嵌合されるようになっている。また、ケース本体11の糸導出端部11Cには、糸導出孔10Cから引き出した糸3を相手材に押し付けるための金属製の糸押え15が、図3に示されるビス16によって取り付けられている。
図3における参照符号5は、渦巻きばね22の付勢力を調整するためのばねチャージ部である。このばねチャージ部5は、糸巻2の内周に同心的かつ相対回転可能な状態に組み込まれたばね芯51と、ケース本体11における糸巻収納部11Aの底壁の外部にばね芯51と同心的に配置された円盤状のチャージハンドル52と、前記底壁に開設された軸孔に挿通されたチャージハンドル52の中心軸にビス54で固定されたクラッチ部材53と、チャージハンドル52に設けられたレバー55とを備える。
糸巻2に収納された渦巻きばね22は、外周側の一端が糸巻2における糸巻本体21に固定されると共に、内周側の他端が、ばね芯51に固定されている。したがって、渦巻きばね22は、糸巻2とばね芯51の相対回転によって蓄勢又は弛緩するものである。
ばね芯51の一端には円盤状のクラッチ盤51aが形成されており、クラッチ部材53は、ケース本体11における糸巻収納部11Aの底壁との間に圧縮状態に配置されたコイルスプリング56によってクラッチ盤51aに押し付けられ、このクラッチ盤51aに対して、渦巻きばね22の蓄勢方向にのみ掛合するワンウェイクラッチを構成している。
ばねチャージ部5のレバー55は、チャージハンドル52とケース本体11における糸巻収納部11Aの底壁との間にあって、長手方向中間部分が、不図示の支点を中心としてシーソー運動可能な状態に支持されている。レバー55の一端には、チャージハンドル52の円周方向一箇所に開設された指掛け孔52a内に露出した操作端部55aが形成されており、他端に、前記底壁側へ向けて突出した被係止部55bが形成されており、この被係止部55bとチャージハンドル52との間にはコイルスプリング57が適宜圧縮状態で配置されている。
一方、ケース本体11における糸巻収納部11Aの底壁には、チャージハンドル52をその中心軸52aの周りに回転させた時に、これと一体的に回転するレバー55の被係止部55bの軌跡と対応する円弧状に延び、糸巻2の巻き取り方向と反対の方向、言い換えれば渦巻きばね22を弛緩させる方向の端部へ向かって漸次深くなり、その最深部が前記被係止部55bと掛合可能な段差状を呈するスパイラル溝11iが形成されている。
図11に示されるように、糸巻収納部11Aにおける墨室形成部11B側の端部近傍に設けられた第一ガイドピン112及び第二ガイドピン113と、墨室形成部11Bにおける一方の隔壁11dの上面に形成された糸道スリット11f(パッキン114)と、墨汁浸透部材4に形成された糸道スリット4aと、墨室形成部11Bの他方の隔壁11eの上面に形成された糸道スリット11g(パッキン115)と、糸導出端部11C及び糸導出端部カバー14に設けられた糸道部材116,143は、互いに直線状に並んでおり、糸巻2の糸巻本体21に巻回された糸3は、これら第一ガイドピン112、第二ガイドピン113、糸道スリット11f,4a,11g及び糸道部材116,143を通って、糸導出孔10Cからケース1の外部へ導出される。
ケース1の外部へ導出された糸3の先端には、図13に示されるようなカルコ6が繋着されている。カルコ6は、基本的に、合成樹脂製の中空の柄61と、この柄61に一体的に、又は着脱自在に取り付けられた金属製の止着針62とを備える。
上述の構成を備える墨壷による墨打ち(線引き)作業においては、図13に示されるように、まずカルコ6を、その止着針62を相手材(木材)Wの表面における墨打ちの一方の起点に刺して止着する。
次に、ケース1を墨打ちの他方の起点へ向けて移動させると、糸巻2の回転を伴いながら、その糸巻本体21に巻かれた糸3が、ケース1の移動距離分だけ引き出されて行く。この糸3は、墨室10Bに充填された墨汁浸透部材4の糸道スリット4aを通って引き出される過程で、この墨汁浸透部材4に摺接することによって墨汁が付着する。
また、糸巻2の糸巻本体21は、糸3の引き出しに伴って回転されるのに対し、同方向へのばね芯51の回転は、ワンウェイクラッチを構成するクラッチ部材53とクラッチ盤51aの掛合によって阻止されるので、渦巻きばね22が糸巻本体21の回転に伴ってばね芯51に巻き込まれ、蓄勢される。
ケース1を墨打ちの他方の起点まで移動させたら、このケース1から突出した糸押え15の先端で糸3を相手材Wの表面に押止することによって、糸3をカルコ6との間に張設する。このとき、操作部124を手指でスライドさせることによって、糸巻本体21の回転による被係止突起24aの移動経路上にロック部材123を進出させれば、このロック部材123が被係止突起24aと干渉して糸巻2の糸繰り出し方向の回転を制止するので、糸3に十分な張力を与えることができる。そして、この糸3を、相手材Wの表面に向けて指ではじいて打ち付ければ、糸3に付着している墨汁によって、直線状の墨線を転写することができる。
墨打ち作業終了後は、カルコ6を相手材Wから引き抜けば、糸3の引き出し過程で蓄勢された渦巻きばね22の弛緩動作によって、糸巻2が巻き取り方向に回転するため、糸3は、カルコ6がケース1の糸導出端部11C及び糸導出端部カバー14による糸導出孔10Cに半収納状態に係止されるまで、糸巻本体21に自動的に巻き取られる。
カルコ6が糸導出孔10Cに半収納状態に係止されるまで、糸3を糸巻本体21に完全に巻き取った状態、あるいは図13に示されるように糸3を張設した状態では、ばねチャージ部5によって、渦巻きばね22の付勢力を任意に調整することができる。この調整においては、図3に示されるレバー55の操作端部55aを、チャージハンドル52の指掛け孔52a内に手指を挿入して押圧し、このレバー55をコイルスプリング57の圧縮方向へ梃子運動させることにより、その被係止部55bとスパイラル溝11iの最深部との掛合を解除した状態で、前記手指によりチャージハンドル52を渦巻きばね22の蓄勢又は弛緩方向へ適宜回転させれば良い。
また、チャージハンドル52の指掛け孔52aから手指を離せば、チャージハンドル52が渦巻きばね22の弛緩方向へ回転する過程で、レバー55の被係止部55bがコイルスプリング57の付勢力によって再びスパイラル溝11iの最深部と掛合され、弛緩方向へのチャージハンドル52の回転が阻止される。
墨室10B内の墨汁浸透部材4に浸透保持された墨汁の量が、墨打ち作業の繰り返し等によってある程度少なくなった場合は、糸3を繰り出す際に、手指でキャップ134を押圧すれば、このキャップ134の内側の押圧部材135が下方変位して、糸押えピン136が、墨室10B内を通る糸3を、墨汁浸透部材4に強制的に押し付けるため、糸3に墨汁を十分に付着させることができる。
また、キャップ134を押圧しても糸3への墨汁の十分な付着量が得られなくなった場合は、墨室カバー13を開き、墨室10B内の墨汁浸透部材4に墨汁を補充する。この墨室カバー13は、掛合爪132に手指を掛けて、ケース本体11の墨室形成部11Bの外側面に形成された掛合凹部11cに対する掛合を強制的に解除することによって、図7及び図8に示されるように、ヒンジ131を中心として揺動させて開くことができる。
また、相手材Wの表面に罫書きするような場合、不図示の墨差しを用いることがある。墨差しは、多数の薄板を束ねた構造の筆先に、墨汁を付着させながら用いる筆記具の一種であり、前記罫書き等に用いる場合は、上述と同様にして墨室カバー13を開き、前記墨差しの筆先を墨室10B内の墨汁浸透部材4に押し付けて墨汁を付着させることができる。
そして、上述のように、墨汁浸透部材4への墨汁の補充や、墨差しに墨汁浸透部材4の墨汁を付着させる場合には、先に説明した従来構造のようにケース全体を単一のカバーで開閉するものとは異なり、墨室カバー13のみを開くことができるので、糸巻カバー12及び糸導出端部カバー14によって、第一ガイドピン112から糸導出孔10Cに到る糸道が保持される。このため糸3が糸道から外れてしまったり、糸巻収納室10Aへの異物の侵入による糸3の巻き取り障害が発生したり、糸巻収納室10Aから糸巻2が脱落したりするのを防止することができる。
また、使用中に糸3が切れてしまったような場合は、渦巻きばね22の付勢力によって糸巻2に糸3がすべて巻き取られるので、再使用のためには、巻き取られた糸3を糸道を通して糸導出孔10Cから引き出し、図13に示されるカルコ6に結び付ける必要がある。そして図示の形態の墨壷においては、糸巻カバー12、墨室カバー13及び糸導出端部カバー14を、それぞれの掛合爪122,132,142の掛合解除によって開けば、図11に示されるように、ケース1全体を開放させることができ、すなわち糸巻収納室10A及び墨室10Bが開放されると共に、第一ガイドピン112から糸導出孔10Cに到る糸道が開放されるので、糸巻2から糸3を、前記糸道を通して糸導出孔10Cから引き出し、カルコ6に結び付ける作業を容易に行うことができる。
また、図3及び図7に示されるように、この形態においては、糸巻カバー12の半筒状端部12aにおける墨室カバー13側の端面には、被掛合突条12cが形成される一方、墨室カバー13における糸巻カバー12側の端面には、前記被掛合突条12cの外周に掛合される掛合段部13bが形成され、同様に、糸導出端部カバー14における墨室カバー13側の端面には、被掛合突条14bが形成される一方、墨室カバー13における糸導出端部カバー14側の端面には、前記被掛合突条14bの外周に掛合される掛合段部13cが形成されている。
このようにすれば、ケース1を閉じた状態では、糸巻カバー12及び糸導出端部カバー14は、被掛合突条12c,14bが墨室カバー13の掛合段部13b,13cと掛合しているので、掛合爪122,142の掛合を解除しても、墨室カバー13を掛合爪132の掛合の解除によって開かなければ、開くことができない。このため、糸巻カバー12及び糸導出端部カバー14が不用意に開くようなことはなく、糸巻カバー12と墨室カバー13との間、あるいは墨室カバー13と糸導出端部カバー14との間から異物等が侵入するのを防止することもできる。
なお、上述のような被掛合突条12c,14bと掛合段部13b,13cとの掛合構造を設けず、糸巻カバー12、墨室カバー13及び糸導出端部カバー14を、互いに独立して開閉することができるようにしても良い。この場合は、糸巻2への巻き取り過程で糸3が外れた場合などに、糸巻カバー12のみを開いて糸巻2に糸3を巻き直したり、あるいは糸導出孔10Cや糸道部材116,143の掃除をするような場合に、糸導出端部カバー14のみを開くことができる。
本発明に係る墨壷の好ましい実施の形態を示す平面図である。 図1におけるII方向の側面図である。 図1におけるIII−III’断面図である。 図2におけるIV−IV’断面図である。 図2におけるV−V’断面図である。 図2におけるVI−VI’断面図である。 図1の墨壷における墨室カバーを開いた状態を示す平面図である。 図7におけるVIII−VIII’断面図である。 図1の墨壷における墨室カバー及び糸導出端部カバーを開いた状態を示す平面図である。 図9におけるX−X’断面図である。 図1の墨壷における糸巻カバー、墨室カバー及び糸導出端部カバーを開いた状態を示す平面図である。 図11におけるXII−XII’断面図である。 使用状態の説明図である。
符号の説明
1 ケース
10A 糸巻収納室
10B 墨室
10C 糸導出孔
11 ケース本体
11A 糸巻収納部
11B 墨室形成部
11C 糸導出端部
11a 掛合部
11b,11c,11h 掛合凹部
12 糸巻カバー
122,132,142 掛合爪
122a,131,141,142a ヒンジ
13 墨室カバー
14 糸導出端部カバー
2 糸巻
22 渦巻きばね
3 糸
4 墨汁浸透部材
5 ばねチャージ部
6 カルコ

Claims (1)

  1. ケースに、糸巻が回転可能に収納された糸巻収納室と、前記糸巻に巻回された糸を外部へ導出する糸導出孔と、前記糸巻収納室と前記糸導出孔との間に位置し墨汁浸透部材が収納された墨室が形成され、前記糸巻収納室、糸導出孔及び墨室が、それぞれ別々のカバーによって開閉可能であることを特徴とする墨壷。
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