JP4698386B2 - 繊維用抗菌性付加処理液 - Google Patents

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Description

この発明は、耐洗濯性に優れ、乾燥条件下においても効果を発揮する抗菌性繊維構造物を得るための繊維用抗菌性付加処理液に関する。
従来から、抗菌性を付与した繊維構造物は各種衣料、寝装寝具、インテリア製品などに広く利用されている。特に近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下「MRSA」という。)による院内感染が問題となっており、白衣、カーテンなどに抗菌性を付与する抗菌性繊維の使用が増大している。
その中で近年、実際の使用場面に則した評価法(菌転写法)での抗菌効力の付与、および繊維から肌への抗菌剤移動を考慮した安全性確保の問題から、菌転写法による低湿度条件下での抗菌力試験において、工業洗濯後でも高い抗菌活性を有し、さらに繊維からの抗菌剤の溶出が極めて少ない繊維構造物が必要とされている。
そのような繊維構造物を製造する方法としては、例えば、ピリジン系抗菌剤を浸透処理させることにより、菌転写法において、工業洗濯を50回行った後においても高い抗菌活性を示す抗菌性繊維の製造方法が知られている。
また、特許文献1には、フェノールアミド系化合物を含む少なくとも1種類以上の抗菌剤を付与することにより、着用快適性が良好でありかつ抗菌制菌効果を有する、主に医療用の白衣や介護用エプロンなどの予防衣について記載されている。
特開2005−23473号公報
しかしながら、ピリジン系抗菌剤を用いた方法では、低湿度条件下でも比較的効果の発現しやすいグラム陰性菌(肺炎桿菌など)では効果を発揮するものの、低湿度条件下では効果を発揮しにくいグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌など)では抗菌剤の添加量を増やしても十分な効果が発現できなかった。
また、特許文献1では、抗菌剤としてピリジン系抗菌剤が挙げられているものの、化合物や効果についての具体的な記載はなく、アミド化合物であるフェノールアミド系化合物を含む1種類以上の抗菌剤との併用が挙げられているのみであった。さらに、菌転写法による低湿度条件下での抗菌性についてはまったく検討されていなかった。
そこでこの発明は、湿潤条件下で抗菌効果が発現しやすい菌液吸収法だけでなく、実際の使用場面に則した低湿度条件下での効果を測定する比較的抗菌効果が発現しにくい菌転写法においても、十分に抗菌効果を発現し、さらに、この菌転写法では抗菌効果が発現しにくいグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌など)に対しても抗菌効果を発現する繊維構造物を提供でき、この繊維構造物が、工業洗濯50回後でも効果が持続する安全性の高い抗菌性繊維構造物となることを可能とする抗菌剤を提供することを目的とする。
この発明は、芳香族カルボン酸系化合物及びフェノール系化合物からなる抗菌性補助剤と、尿素系化合物とを有する補助剤から選ばれる少なくとも1種の化合物、及びピリジン系抗菌剤を含有する、繊維用抗菌性付加処理液により、上記の課題を解決したのである。
すなわち、ピリジン系抗菌剤に上記補助剤を加えることにより相乗効果が現れ、ピリジン系抗菌剤や上記抗菌性補助剤を単独で用いた場合には抗菌効果不足であった、低湿度条件下でのグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌など)に対してまで、抗菌効果を十分に発現できる繊維構造物を得ることができるようになった。
この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液を用いることで、湿潤条件下と、低湿潤条件下との、どちらにおいても、グラム陰性菌(肺炎桿菌)ばかりでなく、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌など)にまで抗菌効果を十分に発揮する繊維構造物を得ることができる。
以下、この発明について詳細に説明する。この発明は、芳香族カルボン酸系化合物及びフェノール系化合物からなる抗菌性補助剤と、尿素系化合物とを有する補助剤から選ばれる少なくとも1種の化合物、及びピリジン系抗菌剤を含有する、繊維用抗菌性付加処理液である。この繊維用抗菌性付加処理液により、繊維構造物を処理することで繊維構造物に抗菌性を与えて、抗菌性繊維構造物を得ることができる。
上記ピリジン系抗菌剤としては、例えば、下記化学式(1)の金属元素Mが銅である、2−ピリジンチオール銅−1−オキシド(以下、「ピリチオン銅」という。)、金属元素Mが亜鉛である、2−ピリジンチオール亜鉛−1−オキシド(以下、「ピリチオン亜鉛」という。)が挙げられ、この中でもピリチオン亜鉛を用いると、特に効果が高く好ましい。
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上記芳香族カルボン酸系化合物としては、例えば、下記化学式(2)又は下記化学式(3)で表される安息香酸系化合物が挙げられる。ここで、R及びRは水素原子または炭化水素基を示す。この炭化水素基の炭素原子数は、1〜10であると好ましい。10を超えるものは入手しにくく、また、分子量が大きすぎると扱いにくくなる場合があるためである。また、炭化水素基の中には、芳香環を有するものも含む。なお、下記化学式(3)の置換基の位置は任意である。
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具体的には、上記化学式(2)で表される化合物としては、Rが水素原子である安息香酸、Rがメチル基である安息香酸メチル、Rがエチル基である安息香酸エチル、Rがブチル基である安息香酸ブチル、Rがオクチル基である安息香酸オクチルなどが挙げられる。また、上記化学式(3)で表される化合物としては、Rがメチル基であるパラオキシ安息香酸メチル(以下、「メチルパラベン」という。)、Rがエチル基であるパラオキシ安息香酸エチル(以下、「エチルパラベン」という。)、Rがブチル基であるパラオキシ安息香酸ブチル(以下、「ブチルパラベン」という。)、Rがオクチル基であるパラオキシ安息香酸オクチル(以下、「オクチルパラベン」という。)などが挙げられる。
上記フェノール系化合物としては、上記化学式(3)の化合物の他に、下記化学式(4)乃至(7)に記載の化合物などが挙げられる。ここで下記化学式(4)乃至(7)中のR乃至Rは、同様に水素原子又は炭化水素基を示し、下記化学式(4)乃至(7)の置換基の位置は任意である。また、同様に炭化水素基の炭素数は1〜10であると好ましく、炭化水素基の中には芳香環を有するものも含む。
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上記化学式(4)で表される具体的な化合物としては、上記化学式(4)中のR及びRがどちらもメチル基であるp,p−ジヒドロキシ−m,m−ジメチルジフェノール、R及びRがどちらも水素原子であるp,p−ジヒドロキシジフェノール、o,o−ジヒドロキシジフェノールなどが挙げられる。
また、上記化学式(5)で表される具体的な化合物としては、例えば、式中のRがフェニル基であるp−フェニルフェノール、o−フェニルフェノールなどのフェニルフェノール、Rがベンジル基であるo−ベンジルフェノールなどのベンジルフェノールが挙げられる。また、上記化学式(6)で表される具体的な化合物としては、例えば、R及びRの一方がメチル基で、他方がイソプロピル基である、3−メチル−4−イソプロピルフェノールなどのイソプロピルメチルフェノールなどが挙げられる。また、化学式(7)で表される具体的な化合物としては、例えば、Rがペンチル基であるペンチルオキシフェノールなどのアルコキシフェノールなどが挙げられる。
これらの中でも特に、上記化学式(2)のRが水素原子である安息香酸と、上記化学式(3)のRがブチル基であるパラオキシ安息香酸ブチルとが、安全性、抗菌性及び耐久性のバランスに優れるので、上記補助剤はこれらの化合物のいずれかを主成分とすることが好ましい。なお、主成分とは、上記補助剤のうち、50重量%を超える構成成分であることをいう。
この発明において用いる上記抗菌性補助剤は、上記芳香族カルボン酸系化合物と、上記フェノール系化合物との少なくとも1種からなり、1種類の化合物でもよいし、複数の化合物の混合物であってもよい。上記抗菌性補助剤には、単独で一定の抗菌効果を有するものが含まれるが、この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液は、これらの化合物と上記ピリジン系抗菌剤とを混合して用いることにより、単独では十分な抗菌効果が発揮できなかった菌にも抗菌効果を発揮できるようになる。
また、上記尿素系化合物としては、特に効果の高い化合物として尿素が挙げられる。上記尿素系化合物は単独では抗菌効果を有さない化合物であるが、上記抗菌性補助剤と同様に、ピリジン系抗菌剤と混合して用いることで、上記ピリジン系抗菌剤単独では十分な抗菌効果が発揮できなかった菌にも抗菌効果を発揮できる繊維構造物を得ることができる。なお、尿素を含む上記尿素系化合物の多くは水溶性であるために、上記繊維構造物中に含有されたままではなく洗濯によってほとんど溶け出してしまうが、上記尿素系化合物とともにピリジン系抗菌剤を使用することによる抗菌効果の向上は、上記尿素系化合物が溶け出した後も持続する。
この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液に用いる上記補助剤としては、上記抗菌性補助剤、及び上記尿素系化合物のうち、少なくとも1種の化合物を用い、複数の化合物を併用しても良い。この補助剤が存在することにより、上記ピリジン系抗菌剤を単独で用いた場合よりも高い抗菌効果を繊維構造物に付加することができる。
このように、上記ピリジン系抗菌剤単独では効果が不十分であり、上記補助剤との相乗効果によって十分な効果が得られる菌としては、例えば、Staphylococcus aureusやMRSAなどの黄色ブドウ球菌が挙げられる。これらの菌に対して、効果の発揮されやすい湿潤条件下だけでなく、効果が発揮されにくい低湿潤条件においても効果を発揮できる。また、これに限らず、上記ピリジン系抗菌剤のみで抗菌効果のあった菌に対しても、上記ピリジン系抗菌剤単独の場合と同様又はそれ以上の抗菌効果を発揮することができる。
この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液により、糸や織布、わた、不織布など、繊維である部分を有する合成繊維の繊維構造物を処理して、抗菌性繊維構造物を得ることができる。ここで処理とは、上記繊維用抗菌性付加処理液を含浸させて、抗菌効果を有する構成成分を含有させ、又は繊維構造物を変化させることをいう。この抗菌性繊維構造物は、少なくとも上記ピリジン系抗菌剤を含有し、また、上記抗菌性補助剤を用いた場合はそれらを含有する。さらに、上記尿素系化合物を用いた場合は、一旦含有させても、上記尿素系化合物の多くは水溶性であるためにほとんど溶け出てしまうが、一部含有し続けているものでもよいし、全て溶け出ているものでもよい。また、一旦含有させた上記尿素系化合物が全て溶け出ても、一旦上記尿素系化合物を含有させた抗菌性繊維構造物は、上記尿素系化合物を含有させない抗菌性繊維構造物よりも高い抗菌効果を示す。
この抗菌性繊維構造物は、湿潤条件下だけでなく、低湿潤条件下でも抗菌効果を発揮する。上記合成繊維としては、ポリエステル系繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。なお、ポリエステル系繊維は、ポリエチレンテレフタレートのような石油由来の繊維だけでなく、ポリ乳酸のような天然材料に手を加えた繊維も含む。さらに、綿、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン繊維などの半合成繊維を、上記の合成繊維と併用しても良い。これらの中でも、ポリエステル系繊維が、工業洗濯耐久性に優れていて特に望ましい。
上記抗菌性繊維構造物中のピリジン系抗菌剤の濃度は特に制限されないが、0.01重量%以上であると好ましく、0.1重量%以上であるとより好ましい。0.01重量%未満であると、抗菌剤が少なすぎて抗菌効果が不十分となるおそれがある。一方で4重量%以下であると好ましく、1.5重量%以下であるとより好ましい。4重量%を超えると抗菌効果が十分確保できるが、堅牢度低下を起こすからである。
また、上記補助剤が上記抗菌性補助剤を含む場合、上記抗菌性繊維構造物中の、上記抗菌性補助剤の合計濃度は、特に制限されないが、0.01重量%以上であると好ましく0.1重量%以上であるとより好ましい。0.01重量%未満であると、これらの化合物を加えることによる相乗効果が十分に発揮されず、上記ピリジン系抗菌剤単独の場合と変わらなくなってしまうおそれがある。一方で10重量%以下であると好ましく、5.0重量%以下であるとより好ましい。10重量%を超えて含有させるのは構造上困難であり、また必要以上の量の使用となって無駄を生じやすいためである。
この発明に係る繊維用抗菌性付加処理液を繊維に含浸させて、上記ピリジン系抗菌剤や上記抗菌性補助剤を含有させる方法としては、例えば、上記ピリジン系抗菌剤が微粒子の状態で分散された分散懸濁液に、上記抗菌性補助剤及び上記尿素系化合物の少なくとも1種を含有させて水性懸濁液を調製し、この水性懸濁液である繊維用抗菌性付加処理液を、繊維構造物に含有させる方法が挙げられる。ただし、上記尿素系化合物が含まれている場合、上記尿素系化合物だけは水溶性であるので懸濁状態ではなく溶質として存在している。以下、水性懸濁液とは、上記尿素系化合物を用いた場合には溶解した上記尿素系化合物の溶質を含むものを示す。この水性懸濁液を上記合成繊維に含浸させる処理の方法としては、80〜160℃で液中処理する方法や、110〜200℃で気中熱浸透処理する方法などが挙げられる。
上記の分散懸濁液とは、界面活性剤等の分散剤と水との存在下で、上記ピリジン系抗菌剤を攪拌及び/又は粉砕することにより得られる、上記ピリジン系抗菌剤が微粒子の状態で分散された懸濁液である。この分散懸濁液中における、上記ピリジン系抗菌剤の平均粒子径は0.1〜2μmが好ましく、0.1〜1μmであるとより好ましい。平均粒子径が2μmを超えると沈殿を起こしてしまい、処理剤として不安定になるおそれがあり、また、粒子径が大きすぎて加工処理時に繊維への付着が悪くなったり、付着ムラがおきたりしてしまうおそれがある。そのため、粒子径が2μm以上の上記ピリジン系抗菌剤は、上記ピリジン系抗菌剤の全重量に対して5重量%以下であるとよく、3重量%以下であると好ましく、1重量%以下であるとより好ましく、0.5重量%以下であるとさらに好ましい。
上記分散剤としては、特に制限はなく、例えばリグニンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン系界面活性剤、4級アンモニウム塩系のカチオン系界面活性剤、PVA等が挙げられる。これらの分散剤に、必要に応じて増粘剤、凍結防止剤、消泡剤を加えてもよい。また、必要に応じてボールミル、セラミックミルやパールミルを用いて懸濁液にして、上記水性懸濁液である繊維用抗菌性付加処理液とする。
この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液は、予め上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを懸濁、又は溶解して調整しておいたものを、そのまま、又は希釈して上記繊維構造物に含浸させるものでもよい。また、上記分散懸濁液とは別に上記補助剤を懸濁、又は溶解した水性液を上記繊維構造物に含浸させる際に混合したものでもよい。
なお、上記の繊維用抗菌性付加処理液中における上記ピリジン系抗菌剤の粒子の平均粒子径は、JIS R 1629に準拠したレーザー回折粒度分布測定装置を用いて測定し、累積50%に相当するメジアン径として求めたものである。
上記水性懸濁液のpHは、4.5〜9.5であることが望ましく、5.5〜8であるとより望ましい。pHが4未満であっても、9を超えても、どちらも上記ピリジン系抗菌剤の分解が起こり、抗菌性が保持されなくなってしまうためである。
このような繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維に含有させる方法のうち、まず、上記の80〜160℃で液中処理する方法について具体的に説明する。この液中処理とは、上記の温度である繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維に吸尽させることをいう。
上記の繊維用抗菌性付加処理液に含まれる上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを上記合成繊維に吸尽させることができるのは、一般に高分子からできている合成繊維は、分子の集まり方が密な部分(結晶部分)と疎な部分(非結晶部分)からなり、ガラス転移温度(以下、「Tg」と略す。)以上になると非結晶部分の分子鎖がゆるみ流動性が増し抗菌剤等の分子が入りやすくなる。そのため、上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを合成繊維に吸尽させる際に、Tg以上の上記適温で行うと、上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とは繊維内に効率良く吸尽され、良好な固着状態となるからである。
このため、この液中処理の方法は、上記合成繊維の種類により好ましい方法が異なる。まず、アクリル繊維やナイロン繊維である場合には、上記合成繊維を上記繊維用抗菌性付加処理液中で加熱することにより、上記ピリジン系抗菌剤と、上記補助剤とを、上記合成繊維に吸尽させる。また、ポリエステル系繊維である場合には、アクリル繊維やナイロン繊維よりTgが高く吸尽させにくいために、より高温で行うことが好ましいが、常圧では水が100℃で沸騰してしまうため、上記合成繊維と上記繊維用抗菌性付加処理液とを、密閉した加温加圧条件下で流動させることにより100℃以上の環境として、上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを上記合成繊維に吸尽させる。
このような吸尽を行う際には、この繊維用抗菌性付加処理液を構成する化合物のうち、水溶性である上記尿素系化合物を除いた、上記ピリジン系抗菌剤及び上記抗菌性補助剤(以下、これらをまとめて「抗菌剤群」と表記する。)を上記水性懸濁液にすることが必要である。また、上記尿素系化合物を用いる場合、上記尿素系化合物は水溶性なので懸濁液にする必要はなく、上記のように水溶液の状態で用いればよい。
なお、ここで言う水性懸濁液にするとは常温常圧下における状態がそうであるようにすることをいい、加温加圧下ではより多くの抗菌剤群が溶解する可能性がある。この発明では、常温常圧下における上記の水性懸濁液が、上記の吸尽を行う加温加圧下において全ての上記抗菌剤群が溶解して、懸濁状態ではなくなるものでも構わない。
上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを液中処理により上記合成繊維に吸尽させる際には、上記水性懸濁液中の上記ピリジン系抗菌剤の濃度が、50重量ppm以上であると好ましく、100重量ppm以上であるとより好ましく、200重量ppm以上であるとさらに好ましい。また、上記補助剤の濃度は、100重量ppm以上であると好ましく、400重量ppm以上であるとより好ましく、800重量ppm以上であるとさらに好ましい。それぞれの下限濃度未満であると、上記合成繊維中のそれぞれの濃度が低いために、低湿度条件下での試験では十分な抗菌効果を発揮できない。一方で、ピリジン系抗菌剤の濃度が、1600重量ppm以下であると好ましく、900重量ppm以下であるとより好ましく、500重量ppm以下であるとさらに好ましい。また、上記補助剤の濃度は、5重量%以下であると好ましく、3重量%以下であるとより好ましく、1重量%以下であるとさらに好ましい。それぞれの上限濃度を超えると堅牢度低下を起こす危険性があるため好ましくない。
なお、上記繊維用抗菌性付加処理液中の上記ピリジン系抗菌剤及び上記補助剤の濃度が上記の濃度範囲になるものをそのまま上記合繊繊維に吸尽させても良いが、通常は、濃厚な懸濁液を作成しておき、使用時にそれを希釈して使用するのが好ましい。例えば、10〜30重量%の原液を作っておき、使用時にそれを希釈して使用する。このようにすることによって、液を安定に長期間保存することができ、また、使用現場への輸送コストも安く抑えることができる。また、予め上記分散懸濁液と上記補助剤の懸濁液とのそれぞれ濃厚な液を別々に作成しておき、使用時にこれらを混合するとともに希釈して使用しても良い。
なお、上記繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維に吸尽させる際には、その繊維用抗菌性付加処理液に、染色剤や染色補助剤を加えても良い。例えば、一般に繊維に用いられている分散染料、酸性染料、カチオン染料、蛍光増白剤、撥水剤、防汚剤等である。さらに、必要に応じて、酸化亜鉛、酸化チタンなどの抗菌剤、殺虫剤、防ダニ剤、防炎剤、酸化防止剤、フィックス剤等を加えてもよい。
特に、上記の分散染料、酸性染料、カチオン染料、蛍光増白剤などの着色物を用いる場合は、先に上記ピリジン系抗菌剤及び上記抗菌性補助剤を含有させた後に着色しようとすると、着色処理の過程で上記ピリジン系抗菌剤及び上記抗菌性補助剤が脱離して抗菌性が低下してしまう。逆に先に着色してから上記ピリジン系抗菌剤及び上記補助剤を吸尽させる加熱処理を行うと、着色物が上記合成繊維から脱離してしまい、所望の着色性が得られない。このため、着色物を用いる場合には、上記のように、上記繊維用抗菌性付加処理液を吸尽させるのと同時に用いるのが好ましい。
上記の繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維とともに常圧又は加圧下で液中に置いて80〜160℃で加熱処理することにより、上記繊維用抗菌性付加処理液の構成成分である上記ピリジン系抗菌剤や上記補助剤を上記合成繊維に吸尽させる。その際、上記合成繊維がポリエステル系繊維の場合の温度は、110〜160℃であると好ましく、120〜140℃であるとより好ましい。また、ナイロン系繊維及びアクリル系繊維の場合の温度は、80〜130℃であると好ましく、80〜110℃であるとより好ましい。このような条件下で吸尽させることによって、上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とが、上記合成繊維の非晶質である部分に選択的に吸尽される。温度が上記の範囲より低いと、上記合成繊維の非晶質部分の膨潤が不十分であるために、上記繊維用抗菌性付加処理液の構成成分が上記合成繊維に吸尽されにくくなってしまう。一方で、温度が上記範囲より高いと、上記合成繊維が風合い劣化を起こす可能性がある。
上記の液中で加熱する時間又は加温加圧条件下で流動させる時間は10〜90分間であることが望ましく、15〜80分間であるとより望ましく、20〜60分間であるとさらに望ましい。10分未満であると上記ピリジン系抗菌剤及び上記補助剤が十分に上記合成繊維に吸尽されず、抗菌性が不十分となってしまうおそれがある。一方で、時間が長すぎると、上記ピリジン系抗菌剤及び上記補助剤の吸尽はほとんど終わってしまっているので、余計な時間がかかるだけとなってしまい、生産効率が下がることとなる。
なお、上記尿素系化合物に関しては、水溶性であるために、一旦上記合成繊維中に吸尽されても、上記処理後には上記合成繊維中にほとんど、又はまったく含有されないが、繊維表面物性を変質させると考えられる。その結果、低湿度条件下での抗菌効果を向上させると考えられる。
上記の工程により上記繊維用抗菌性付加処理液を用いて上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを吸尽させる合成繊維としては、上記ポリエステル系繊維が、工業洗濯耐久性に優れていて望ましい。ポリエステル系繊維は、ポリエチレンテレフタレートのような石油由来の繊維だけでなく、ポリ乳酸のような天然材料に手を加えた繊維も含む。さらに、綿、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン等の半合成繊維を上記の合成繊維と併用したものでも良い。用いる上記合成繊維の形態としては、糸、織布、不織布など、特に限定されるものではない。
また次に、上記の繊維用抗菌性付加処理液を、気中にて110〜200℃で熱浸透処理して上記合成繊維に固定化する方法について説明する。この方法は、上記繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維に付着させ、その後気中にて110〜200℃で熱浸透させて、上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを含有させる方法である。
上記の水性懸濁液を上記合成繊維に付着させる方法としては、特に制限はなく、浴槽に入れた上記水性懸濁液に付けて付着させるパディング法、スプレーで上記合成繊維に吹き付けて付着させるスプレー法などを用いてよい。
また、上記繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維に付着させる際には、上記繊維用抗菌性付加処理液中の上記ピリジン系抗菌剤の濃度が、水に対して0.01重量%以上であると好ましく、0.1重量%以上であるとより好ましい。また、上記補助剤の濃度は、0.1重量%以上であると好ましく、0.5重量%以上であるとより好ましい。それぞれの濃度が下限濃度未満では、繊維への付着量が少なく、低湿度条件下での試験では十分な抗菌効果が発揮できない。一方で、上記ピリジン系抗菌剤の濃度が、4重量%以下であると好ましく、1.5重量%以下であるとより好ましい。また、上記補助剤の濃度は、10重量%以下であると好ましく、5重量%以下であるとより好ましい。それぞれの濃度が前記濃度の上限を超えると、堅牢度低下を起こす可能性があるため好ましくない。
なお、上記繊維用抗菌性付加処理液は、そのまま付着させても良いが、通常は、濃厚な上記繊維用抗菌性付加処理液を作製しておき、使用時にそれを希釈して使用するのが好ましい。例えば、10〜30%の原液を作っておき、使用時に好ましい濃度に希釈して使用する。このようにすることによって、液を安定して長期間保存することができ、また、使用現場への輸送コストも安く抑えることができる。また、予め上記分散懸濁液と上記補助剤の懸濁液とのそれぞれ濃厚な液を別々に作成しておき、使用時にこれらを混合するとともに希釈して使用しても良い。
さらに、上記繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維に付着させる際に、その水溶液に、染色剤や染色補助剤を加えてもよい。例えば、一般に繊維に用いられている分散染料、酸性染料、カチオン染料、蛍光増白剤、撥水剤、防汚剤等である。さらに、必要に応じて、酸化亜鉛、酸化チタン等の抗菌剤、殺虫剤、防ダニ剤、防炎剤、酸化防止剤、フィックス剤等を加えてもかまわない。
上記繊維用抗菌性付加処理液により上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とを付着させる上記合成繊維としては、上記したポリエステル系繊維、アクリル繊維のほかに、ナイロン繊維なども挙げられる。なお、ポリエステル系繊維は、ポリエチレンテレフタレートのような石油由来の繊維だけでなく、ポリ乳酸のような天然材料に手を加えた繊維も含む。さらに、綿、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン繊維などの半合成繊維を、上記の合成繊維と併用しても良い。これらの中でも、ポリエステル系繊維が、工業洗濯耐久性に優れていて特に望ましい。このように用いる上記合成繊維の形態としては、糸、織布、不織布など、特に限定されるものではない。
上記の熱浸透処理を行う適温とは、上記合成繊維を構成する合成樹脂のTg(ガラス転移温度)以上であって、かつ、その合成繊維自体が分解などの不都合な変質を起こさない温度範囲であることが必要である。なお、ここでいうTgはJIS K 7121に記載された方法で測定した値である。
一般に高分子からできている合成繊維は、分子の集まり方が規則的で密な部分(結晶部分)と不規則で疎な部分(非結晶部分)からなり、Tg以上になると非結晶部分の分子鎖がゆるみ流動性が増し、柔らかくなるので抗菌剤等の分子が入りやすくなる。そのため、上記繊維用抗菌性付加処理液と合成繊維とを熱処理する際に、Tg以上の適温で行うと、上記繊維用抗菌性付加処理液の構成成分は繊維内に効率良く浸透していき、上記ピリジン系抗菌剤や上記補助剤が良好な固着状態となる。
上記合成繊維がポリエステル系繊維の場合は、適温として(Tg+80)〜(Tg+120)℃で熱浸透処理すると、最も効率的に上記繊維用抗菌性付加処理液の構成成分を上記合成繊維に浸透させることができるので望ましい。具体的には、多くのポリエステル系繊維のTgは70〜80℃であるので、上記適温は150〜200℃であるのがよく、好ましくは160℃〜190℃である。上記熱浸透処理を行う時間は、20秒〜10分の範囲から適宜選択決定して行う。好ましくは30秒〜5分である。
上記合成繊維がナイロン繊維の場合は、上記適温として(Tg+40)〜(Tg+100)℃で熱処理すると、最も効率的に上記繊維用抗菌性付加処理液を上記合成繊維に浸透させることができるので望ましい。一般的なナイロン繊維のTgは40〜50℃であるので、上記適温は80〜150℃であるのがよく、好ましくは100〜130℃である。上記熱浸透処理を行う時間は、20秒〜3分の範囲から適宜選択決定して行う。好ましくは30秒〜3分である。また、上記合成繊維がアクリル繊維の場合は、Tg〜(Tg+60)℃が好ましく、アクリル繊維のTgが80〜90℃であるので、適温は80〜150℃である。
上記のどちらの繊維の場合でも、適温未満では上記ピリジン系抗菌剤と上記補助剤とが強固に付着されず、適温の範囲を超えてしまうと上記合成繊維自体が黄変や脆化を起こしたり、上記ピリジン系抗菌剤や上記補助剤の分解を起こしたりするおそれがあるため好ましくない。
上記熱浸透処理の方法としては、乾燥機内を通過させる方法、熱ローラーを通過させる方法、高温蒸気加熱処理法(パッド・スチーム法)等が挙げられ、特に限定されるものではない。
なお、上記熱浸透処理後に、上記合成繊維上に残った余分な加工剤や不純物を取り除く為に、水又はアルカリ性液等で洗浄して乾燥してもよい。この場合も、上記ピリジン系抗菌剤や上記抗菌性補助剤は上記合成繊維内に固着しているので、洗浄しても抗菌性には影響しない。
このような熱浸透処理によって抗菌剤が強く固着されているため、洗濯などの水処理をしても上記抗菌剤群がほとんど溶出せずに、抗菌力が高く維持され、安全で優れた抗菌性繊維となる。なお、上記尿素系化合物に関しては、水溶性であるために、上記洗浄後や上記処理後には上記合成繊維中にほとんど、又はまったく含有されないが、繊維表面物性を変質させると考えられる。その結果、低湿度条件下での抗菌効果を向上させると考えられる。
以下、この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液である水性懸濁液を、加温加圧条件下で液中処理により上記合成繊維に吸尽させる方法について実施例を挙げて、この発明をより具体的に説明する。なお、以下の文中で「%」とは「重量%」を示す。まず、それぞれの評価方法と洗濯方法について説明する。
(抗菌試験の供試菌及び評価方法)
黄色ブドウ球菌2種(Staphylococcus aureus、及びMRSA)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)を用いて抗菌性の評価を行った。評価対象としては、洗濯前及び上記洗濯後の加工布を用いた。
まず、第一の評価方法として、JIS L 1902(2002)に定められる菌液吸収法を実施した。判定は、各試験布の静菌活性値が2.2以上であった場合を有効(○)、2.2未満の場合を無効(×)とした。
また、第二の評価方法として、JIS L 1902(2002)に定められる繊維製品の抗菌性試験方法記載の菌転写法を実施した。判定は、低湿度下での4時間培養後の菌数の減少を、各試験布の回収菌数によって比較し、比較対照である無処理布に比べて菌数対数値で0.5以上減少した場合を有効(○)、0.5未満の場合を無効(×)とした。
(洗濯方法)
工業洗濯は(社)繊維評価技術協議会(JTETC)の定める、JAFET標準配合洗剤を用いた厚生省令第13号に準拠した洗濯方法で実施した。具体的には、80℃条件下(工業洗濯)で50回実施した。
(水性懸濁液の製造)
次に、水生懸濁液の製造方法について説明する。
ピリジン系抗菌剤として、ピリチオン亜鉛(アーチケミカル社製、表中「ZPT」と略す。)を用いた。物性は以下の通りである。
(ピリチオン亜鉛物性)
・水溶解度:8ppm(25℃)
・有機溶剤溶解度(オクタノール):5ppm
・平均粒子径:0.5μm
・2μm以上の粒子の割合:0%
・pH:6.6
このピリチオン亜鉛を以下の成分比で混合したものをペースト化した後、セラミックミルにより、ピリジン系抗菌剤が平均粒径0.5μmで分散された分散懸濁液を作成した。
・ピリチオン亜鉛……20重量部
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(分散剤 第一工業製薬(株)製:ハイテノール08E)……3重量部
・グリセリン(凍結防止剤 和光純薬工業(株)製)……2重量部
・精製水……75重量部
芳香族カルボン酸系化合物及びフェノール系化合物としては、安息香酸、安息香酸メチル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル(以上、東京化成(株)製:試薬)、メチルパラベン、ブチルパラベン、オクチルパラベン、イソプロピルメチルフェノール(3−メチル−4−イソプロピルフェノール)、o−フェニルフェノール(以上、キシダ化学(株)製:試薬)を用いた。また、尿素系化合物として、尿素(キシダ化学(株)製:試薬)を用いた。
上記の芳香族カルボン酸系化合物、フェノール系化合物は、それらを20重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤(株)製:BDG−NS)を70重量部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(日本乳化剤(株)製:ニューコール N−610)を10重量部の割合で混合して懸濁液とした。また、尿素については水溶性であるので水溶液とした。
得られた懸濁液と、先に調製したピリジン系抗菌剤を含む分散懸濁液とを、ピリジン系抗菌剤が0.8%、芳香族カルボン酸系化合物、フェノール系化合物又は尿素が1.7%となるように、水で希釈して水性懸濁液又は水溶液とした。
(合成繊維)
合成繊維としては、ポリエステル系繊維(色染社試験用繊維トロピカル:東レ(株)製 150デニール×48フィラメント)を用いた。
(実施例1)
ピリチオン亜鉛及び安息香酸による上記の水性懸濁液を、ピリチオン亜鉛濃度が400ppm、安息香酸濃度が800ppmとなるように水で希釈して水溶液を得た。この水溶液150mlに対して、ポリエステル系繊維が15gとなる比率で密閉溶液に入れる。この容器を高温高圧機内で回転させ、温度130℃で1時間高温高圧処理を行った。その後、取り出した繊維を水洗いした後、130℃で1分間乾燥し、抗菌性繊維構造物である加工布を得た。この加工布についての工業洗濯前後における抗菌性の評価結果を表1に示す。
Figure 0004698386
(実施例2〜10)
実施例1の安息香酸の代わりに、それぞれ、安息香酸メチル(実施例2)、安息香酸ブチル(実施例3)、安息香酸オクチル(実施例4)、メチルパラベン(実施例5)、ブチルパラベン(実施例6)、オクチルパラベン(実施例7)、イソプロピルメチルフェノール(実施例8)、o−フェニルフェノール(実施例9)、尿素(実施例10)を用いた以外は、同様の方法で抗菌性繊維構造物である加工布を得た。この加工布についての評価結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の水性懸濁液を作製する際に、安息香酸の懸濁液を添加せずに、ピリチオン亜鉛の濃度が400ppmである懸濁液にした以外は、実施例1と同様の方法で加工布を得た。この加工布についての評価結果を表1に示す。
(比較例2〜4)
比較例1の懸濁液において、ピリチオン亜鉛の濃度をそれぞれ800ppm(比較例2)、1600ppm(比較例3)、2400ppm(比較例4)とした以外は、比較例1と同様の方法で加工布を得た。この加工布についての評価結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例1の水溶液にピリチオン亜鉛を含む分散懸濁液を添加せずに、安息香酸の濃度が800ppmである懸濁液にした以外は、実施例1と同様の方法で加工布を得た。この加工布についての評価結果を表1に示す。
(比較例6〜8)
比較例5の懸濁液において、安息香酸の濃度をそれぞれ1600ppm(比較例6)、2400ppm(比較例7)、3200ppm(比較例8)とした以外は、比較例5と同様の方法で加工布を得た。この加工布についての評価結果を表1に示す。
(比較例9〜12)
比較例5乃至8それぞれにおいて、安息香酸の代わりにブチルパラベンを用いた以外は比較例5乃至8と同様の方法によりそれぞれ加工布を得た。この加工布についての評価結果を表1に示す。
(結果)
湿潤環境での抗菌性を示す菌液吸収法による試験では、いずれの実施例及び比較例でも有効であった。しかし、低湿潤環境での抗菌性を示す菌転写法による試験では、ピリチオン亜鉛と、芳香族カルボン酸系化合物である安息香酸、フェノール系化合物であるブチルパラベン等又は尿素とを併用した実施例1〜10では、菌転写法による試験でも、いずれの菌に対しても有効であったが、ピリチオン亜鉛のみである比較例1〜4においてはピリチオン亜鉛の濃度に関わらず、二種類の黄色ブドウ球菌(表中の「S」及び「M」)では有効ではなかった。また、ピリチオン亜鉛を用いずに芳香族カルボン酸系化合物である安息香酸又はフェノール系化合物であるブチルパラベンのみを抗菌剤とした比較例5〜12では、その濃度にかかわらず、いずれの菌に対しても有効ではなかった。
(結論)
この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液により上記ピリジン系抗菌剤等を吸尽させた合成繊維は、従来のピリジン系抗菌剤や芳香族カルボン酸系化合物、フェノール系化合物を抗菌剤として単独で用いた場合には濃度を高めても抗菌効果を十分に発揮しきれなかった低湿潤条件における黄色ブドウ球菌に対しても、はっきりと抗菌効果を示すことができた。
以下、この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液を、上記水性懸濁液として、気中熱浸透処理する方法について実施例を挙げて、この発明をより具体的に説明する。
(抗菌試験の供試菌、合成繊維、評価方法、選択方法、及び水性懸濁液の製造)
いずれも上記実施例1と同様の方法を採用した。
(実施例11)
ピリチオン亜鉛濃度が0.8%、安息香酸濃度が1.7%となるように水で希釈した繊維用抗菌性付加処理液を浴槽に入れ、この中に10gのポリエステル系繊維を浸した。次にそのポリエステル系繊維の繊維重量に対して繊維用抗菌性付加処理液の付着量が60%になるように圧力をかけたローラーに通した。その後190℃で2分間、常圧乾熱機にて熱浸透処理を行い、最後に常温の水で5分洗浄後、120℃で2分乾燥を行い、抗菌性繊維構造物である加工布を得た。この加工布についての工業洗濯前後における抗菌性の評価結果を表2に示す。
Figure 0004698386
(実施例12〜20)
実施例11の安息香酸の代わりに、それぞれ、安息香酸メチル(実施例12)、安息香酸ブチル(実施例13)、安息香酸オクチル(実施例14)、メチルパラベン(実施例15)、ブチルパラベン(実施例16)、オクチルパラベン(実施例17)、イソプロピルメチルフェノール(実施例18)、o−フェニルフェノール(実施例19)、尿素(実施例20)を用いた以外は、同様の方法で抗菌性繊維構造物である加工布を得た。この加工布についての評価結果を表2に示す。
(比較例13)
実施例11の水性懸濁液を作製する際に、安息香酸の懸濁液を使用せず、ピリチオン亜鉛の濃度が0.8%である懸濁液にした以外は、実施例11と同様の方法で加工布を得た。この加工布についての評価結果を表2に示す。
(比較例14〜16)
比較例13のピリチオン亜鉛の濃度を、それぞれ1.6%(比較例14)、3.2%(比較例15)、4.8%(比較例16)とした以外は、比較例13と同様の方法で加工布を得た。この加工布についての評価結果を表2に示す。
(比較例17)
実施例11の水性懸濁液を作製する際に、ピリチオン亜鉛の懸濁液を添加せずに、安息香酸の濃度が0.8%である懸濁液にした以外は、実施例11と同様の方法で加工布を得た。この加工布についての評価結果を表1に示す。
(比較例18〜20)
比較例17の懸濁液において、安息香酸の濃度をそれぞれ1.7%(比較例18)、3.4%(比較例19)、6.8%(比較例20)とした以外は同様の方法によりそれぞれ加工布を得た。この加工布についての評価方法を表2に示す。
(比較例21〜24)
比較例17乃至20のそれぞれにおいて、安息香酸の代わりにブチルパラベンを用いた以外は比較例17乃至20と同様の方法により、それぞれ加工布を得た。この加工布についての評価結果を表2に示す。
(結果)
湿潤環境での抗菌性を示す菌液吸収法による試験では、いずれの実施例及び比較例でも有効であった。しかし、低湿潤環境での抗菌性を示す菌転写法による試験では、ピリチオン亜鉛と芳香族カルボン酸系化合物である安息香酸、フェノール系化合物であるブチルパラベン等又は尿素とを併用した実施例11〜20では、菌転写法による試験でも、いずれの菌に対しても有効であったが、ピリチオン亜鉛のみである比較例13〜16においてはピリチオン亜鉛の濃度に関わらず、二種類の黄色ブドウ球菌(表中の「S」及び「M」)では有効ではなかった。また、ピリチオン亜鉛を用いずに芳香族カルボン酸系化合物である安息香酸又はフェノール系化合物であるブチルパラベンのみを抗菌剤とした比較例17〜24では、その濃度にかかわらず、いずれの菌に対しても有効ではなかった。
(結論)
この発明にかかる繊維用抗菌性付加処理液により上記ピリジン系抗菌剤等を熱浸透処理した合成繊維は、従来のピリジン系抗菌剤や芳香族カルボン酸系化合物、フェノール系化合物を抗菌剤として単独で用いた場合には濃度を高めても抗菌効果を十分に発揮しきれなかった低湿潤条件における黄色ブドウ球菌に対しても、はっきりと抗菌効果を示すことができた。

Claims (6)

  1. 下記化学式(2)乃至(7)で表される化合物、及び尿素系化合物から選ばれる少なくとも1種の補助剤並びに下記化学式(1)で表される2−ピリジンチオール亜鉛−1−オキシド、2−ピリジンチオール銅−1−オキシド、又はそれらの混合物であるピリジン系抗菌剤を含有する水性懸濁液であり、
    上記水性懸濁液中における上記ピリジン系抗菌剤の濃度が50重量ppm以上、1600重量ppm以下であり、上記補助剤の濃度が100重量ppm以上、5重量%以下である、繊維用抗菌性付加処理液。
    Figure 0004698386
    (式中、Mは亜鉛又は銅を示す。)
    Figure 0004698386
    (式中、R は水素又は炭化水素基を示す。)
    Figure 0004698386
    (式中、R は水素又は炭化水素基を示す。)
    Figure 0004698386
    (式中、R ,R は水素又は炭化水素基を示す。)
    Figure 0004698386
    (式中、R は水素又は炭化水素基を示す。)
    Figure 0004698386
    (式中、R ,R は水素又は炭化水素基を示す。)
    Figure 0004698386
    (式中、R は水素又は炭化水素基を示す。)
  2. 請求項に記載の繊維用抗菌性付加処理液で繊維構造物を処理した抗菌性繊維構造物。
  3. 上記ピリジン系抗菌剤を0.01重量%以上、4重量%以下、及び上記化学式(2)乃至(7)で表される化合物を0.01重量%以上、10重量%以下含有する、請求項2に記載の抗菌性繊維構造物。
  4. ポリエステル系繊維である上記繊維構造物とともに、上記繊維用抗菌性付加処理液を加圧下で液中において110〜160℃で加熱処理した、請求項2又は3に記載の抗菌性繊維構造物。
  5. ポリエステル系繊維である上記繊維構造物とともに、請求項1に記載の繊維用抗菌性付加処理液を加圧下で液中において110〜160℃で加熱処理する、抗菌性繊維構造物の製造方法。
  6. 請求項1に記載の繊維用抗菌性付加処理液を合成繊維である繊維構造物に付着させ、気中にて110〜200℃で熱浸透させる、抗菌性繊維構造物の製造方法。
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