JP4697518B2 - 車両操舵システム - Google Patents

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本発明は、EPS(electric power steering:電動パワーステアリング)による車両操舵システムに関し、より詳細には、VGR(variable steering gear ratio:可変ステアリングギアレシオ)を備えた車両操舵システムに関する。
近年、EPS装置による車両操舵システムに、VGR装置が使用されるようになってきている。従来、EPS装置のトルク制御とVGR装置のギア比制御とは、一般に、それぞれ別個の電動モータにより行われていた。さらに、特開2001―30922号公報(特許文献1)には、EPS装置のトルク制御と、VGR装置のギア比制御の両方を一つの1軸出力の電動モータで行う操舵システムが開示されている。
特開2001―30922号公報 特開2000−142135号公報 特開2001−78408号公報 特開2004−7975号公報 特開2001−30922号公報
しかしながら、自動車においては、車両操舵システムの占有空間をより一層小さくすることが求められている。
そこで、本発明は、大きなコストアップ、大幅なレイアウトの悪化を伴うことなく、トルク制御及びVGRのギア比制御を単一のモータで行うことができる、コンパクトな車両操舵システムを提供することを目的としている。
この目的を達成するため、本発明の車両操舵システムは、自動車の操舵ハンドルと車輪のギア比を可変に制御するVGR機構を備えた、操舵ハンドルの操舵力を電気的に助勢する車両操舵システムであって、自動車の操舵ハンドルから車輪へ操舵力を伝達する伝達機構に、上記操舵ハンドル側から順次に設けられた、第1減速機構と、操舵システムのトルク制御及びVGR機構のギア比制御の両方を行うための2出力モータと、第2減速機構と、を備え、2出力モータは、ステータと、ステータの外周側に配置されたアウターロータと、ステータの内周側に配置されたインナーロータと、から構成され、2出力モータの二つのロータのうちの一方のロータは、操舵ハンドルの操舵力を助勢するように、第1減速機構に連結され、2出力モータの二つのロータのうちの他方のロータは、操舵ハンドルの回転の伝達比を制御するように、第2減速機構に連結され、第1減速機構は、遊星歯車機構であり、第2減速機構は、波動歯車機構であることを特徴としている。
このように構成された本発明の車両操舵システムによれば、単一の2出力モータを用いて、EPS装置のトルク制御とVGR装置のギア比制御の両方を行う。ここで、2出力モータとは、一つのステータで二つのロータを駆動する回転電機をいい、インナーロータの回転とアウターロータの回転とは、ステータの多相コイルに複合電流を流すことにより、互いに独立に制御される(例えば、特許文献2〜4)。
これにより、大きなコストアップ、大幅なレイアウトの悪化を伴うことなく、トルク制御及びギア比制御を単一のモータで行うことができる。
また、遊星歯車機構は、簡単な構造で、高い減速比が得られ、且つ、大きなトルクを伝達することができる機構である。したがって、第1減速機構として遊星歯車機構を用いれば、大きなトルク容量を有するEPSを容易に構成することができる。
また、波動歯車機構は、「ハーモニックドライブ(登録商標)」として知られている減速装置であり、簡単な構造で、高精度で、高い減速比を容易に得ることができる機構である。したがって、第2減速機構として波動歯車機構を用いれば、ギア比を精度良く制御できるVGRを容易に構成することができる。
また、本発明において、好ましくは、2出力モータのアウターロータは、第1減速機構に連結され、2出力モータの上記インナーロータは、第2減速機構に連結されている。
アウターロータは、インナーロータよりも回転半径が大きいため、容易に高いトルクを発生させることができる。このため、アウターロータを第1減速機構に連結すれば、操舵力を助勢する大きなトルク容量を有するEPSを容易に構成することができる。また、インナーロータは、アウターロータよりも、容易に高い回転数を発生させることができる。このため、インナーロータを第2減速機構に連結すれば、ギア比制御の精度の高いVGRを容易に構成することができる。
また、本発明において、好ましくは、第1減速機構、2出力モータ、及び第2減速機構は、各々の回転中心軸線が同一直線上に位置するように、配置されている。
これにより、これらの減速機構及び2出力モータの配置構成がコンパクトとなり、優れたレイアウト性を与えることができる。
本発明の車両操舵システムによれば、大きなコストアップ、大幅なレイアウトの悪化を伴うことなく、トルク制御及びギア比制御を単一のモータで行うことができる。
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両操舵システムの実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、本実施形態の操舵システム1を構成し、自動車の操舵ハンドルから車輪へ操舵力を伝達する伝達機構について説明する。図1に示すように、操舵ハンドル2には、ステアリングシャフト4の上端が連結されている。このステアリングシャフト4の下端部には、自在継手5を介して、中間シャフト6の上端が連結されている。さらに、この中間シャフト6の下端部には、操舵ハンドル2側から順次に、第1減速機構7と、2出力モータ8と、第2減速機構9とが直列に連結されている。
さらに、この第2減速機構9の下には、中間シャフト10が連結されており、この中間シャフト10の下端部には、ステアリングギヤボックス12が設けられている。そして、このステアリングギヤボックス12の両側にはタイロッド14が連結されており、これらの各タイロッド14にはタイヤ(車輪)16が取り付けられている。なお、図1では、第1減速機構7、2出力モータ8及び第2減速機構9を収容するハウジングを示している。
次に、図2を参照して、本発明の実施形態の車両操舵システムについてより詳細に説明する。
図2は、車両操舵システムのうちの、第1減速機構7、2出力モータ8及び第2減速機構9を含む要部の模式図である。本実施形態では、第1減速機構は、遊星歯車機構7であり、第2減速機構は波動歯車機構9である。遊星歯車機構7、2出力モータ8、及び波動歯車機構9は、各々の回転中心軸線が同一直線上に位置するように配置されている。
この遊星歯車機構7は、図3に示すように、太陽歯車71と、この太陽歯車71上に配置された複数組の複合遊星歯車72,73と、これらの複合遊星歯車72、73の外側に配置された外輪歯車74と、さらに、図3には示さないが、複合遊星歯車72,73を支持する遊星キャリア75(図3では図示せず。)と、から構成されている。そして、太陽歯車71には、入力軸である中間シャフト6が固定されている。また、外輪車74には、遊星歯車機構7の出力軸としての外周シャフト11が固定されている。また、複合遊星歯車72及び73は、遊星キャリア75に固定されている。さらに、遊星歯車73の中心軸73aが、支持部材76によって車体に固定されている。したがって、この複合遊星歯車72及び73の各々は自転はするが、公転はしない。
波動歯車機構9は、図4に示すように、楕円形のウェーブ・ジェネレータ91と、その外周に設けられたフレクスプライン92と、更にその外周に設けられたサーキュラ・スプライン93とから基本的に構成されている。そして、フレクスプライン92には、波動歯車機構9の入力軸としての外周シャフト11が固定されている。また、サーキュラ・スプライン93には、出力軸である中間シャフト10が固定されている。
2出力モータ8は、図2に示すように、ステータ81と、このステータ81の外周側に配置されたアウターロータ82と、ステータ81の内周側に配置されたインナーロータ83とから構成されている。そして、ステータ81は、支持部材85を介して、遊星歯車機構7の遊星キャリア75に固定されている。また、アウターロータ82は、外周シャフト11に回転一体に固定されている。また、インナーロータ83は、中心シャフト84を介して、波動歯車機構9のウェーブ・ジェネレータ91に回転一体に固定されている。
そして、操舵ハンドル2の回転操舵力は、中間シャフト6を介して、遊星歯車機構7の太陽歯車71に伝達される。この操舵力は、公転しない複合遊星歯車72及び73を順次に介して、外輪歯車74に伝達される。これにより、回転が減速される。さらに、外輪歯車74の回転は、外周シャフト11を介して、波動歯車9のフレクスプライン92に伝達される。
その際に、外周シャフト11に固定された2出力モータのアウターロータ83を回転させることによって、操舵ハンドルの操舵力を助勢するように、外周シャフト11にトルクを与えることができる。この場合、特に、回転半径の大きい外周シャフト11に回転力を付与するので、高いトルク容量を容易に得ることができる。
さらに、中間シャフト6の高い回転速度が太陽歯車71に入力されるので、外周シャフト11の回転速度も高くなる。このため、アウターロータ83は、高い回転速度で使用される。その結果、回転速度を高精度で制御することができる。
続いて、外周シャフト11の回転は、波動歯車機構9のフレクスプライン92に入力される。フレクスプライン92の回転は、サーキュラ・スプライン93に伝達され、中間シャフト10から出力される。
さらに、2出力モータ8のインナーロータ82の回転が、中心シャフト84を介して、ウェーブ・ジェネレータ91に入力される。ウェーブ・ジェネレータ91が1回転する毎に、フレクスプライン92の回転は、サーキュラ・スプライン93に対して、歯数2枚分だけ遅れる。したがって、インナーロータ82の回転数を制御することにより、波動歯車機構9における伝達比を制御することができる。
2出力モータ2のアウターロータ92の回転とインナーロータ93の回転は、ステータ91の多相コイルに流す複合電流を制御することによって、それぞれ互いに独立に制御される。この複合電流は、コントローラ20によって制御される。
ここで、図5を参照して、コントローラ20の構成及び作動について説明する。
このコントローラ20には、車速センサ31、舵角センサ32、インナーロータ回転角センサ33、トルクセンサ34、及びアウターロータ回転角センサ35の各々から、それぞれ出力信号が入力される。
この車速センサ31は、車両の速度を検出するものである。舵角センサ32は、操舵ハンドルの操舵角を検出するものである。インナーロータ回転角センサ33は、2出力モータ9のインナーロータ93の回転角を検出するものである。トルクセンサ34は、中間シャフト10に作用している操舵トルクを検出するものである。また、アウターロータ回転角センサ35は、2出力モータ9のアウターロータ91の回転角を検出するものである。
コントローラ20は、特性記憶部21と、基本操舵比演算部22と、補正操舵比演算部23と、目標制御量演算部24と、インナーロータ駆動部25と、アウターロータ駆動部26と、から構成されている。
この特性記憶部21には、例えば、車速Vに対する目標伝達比Rを設定した第1マップと、操舵ハンドル2の操舵角θHに応じた補正伝達比を設定した第2マップとが記憶されている。そして、操舵比演算部22が、車速センサ31によって検出された車速Vに対応する目標伝達比を、第1マップを参照して演算する。続いて、補正操舵比演算部23が、舵角センサ32によって検出された操舵角θHに対応する補正伝達比を、第2マップを参照して演算し、これを目標伝達比として設定する。続いて、目標制御量演算部24が、その目標伝達比に対応するインナーロータ93の目標回転角θmを演算する。そして、インナーロータ駆動部25は、インナーロータ回転角センサ33の検出値θiが目標回転角θmと一致するように、インナーロータ91を回転駆動させる。
また、アウターロータ駆動部26は、トルクセンサ34により検出された運転者の操舵力(操舵トルク)、及び、アウターロータ回転角センサ35の検出値に基づいて、所定の補正トルクを発生させるようにアウターロータ93を回転駆動させて、運転者の操舵力の軽減を図っている。
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態においては、第1減速機構として遊星歯車機構を使用し、且つ、第2減速機構として波動歯車機構を使用した例について説明したが、第1及び第2減速機構それぞれの構成はこれに限定されない。
本発明の車両操舵システムの概略図である。 本発明の実施形態の車両操舵システムの要部模式図である。 遊星歯車機構の構造を説明するための、図2のA−Aに沿った断面図である。 波動歯車機構の構造を説明するための、図2のB−Bに沿った断面図である。 コントローラを説明するための機能ブロック図である。
符号の説明
1 車両操舵システム
2 操舵ハンドル
4 ステアリングシャフト
5 自在継手
6 中間シャフト
8 第1減速機構
9 2出力モータ
9 第2減速機構
10 中間シャフト
11 外周シャフト
12 ステアリングギアボックス
14 タイロッド
16 タイヤ
20 コントローラ
21 特性記憶部
22 基本操舵比演算部
23 補正操舵比演算部
24 目標制御量演算部
25 インナーロータ駆動部
26 アウターロータ駆動部
31 車速センサ
32 舵角センサ
33 インナーロータ回転角センサ
34 トルクセンサ
35 アウターロータ回転角センサ
71 太陽歯車
72、73 遊星歯車
74 外輪歯車
75 遊星キャリア
76 支持部材
81 ステータ
82 アウターロータ
83 インナーロータ
84 中心シャフト
85 支持部材
91 ウェーブ・ジェネレータ
92 フレクスプライン
93 サーキュラ・スプライン

Claims (3)

  1. 自動車の操舵ハンドルと車輪のギア比を可変に制御するVGR機構を備えた、操舵ハンドルの操舵力を電気的に助勢する車両操舵システムであって、
    自動車の操舵ハンドルから車輪へ操舵力を伝達する伝達機構に、上記操舵ハンドル側から順次に設けられた、第1減速機構と、操舵システムのトルク制御及びVGR機構のギア比制御の両方を行うための2出力モータと、第2減速機構と、を備え、
    上記2出力モータは、
    ステータと、
    上記ステータの外周側に配置されたアウターロータと、
    上記ステータの内周側に配置されたインナーロータと、
    から構成され、
    上記2出力モータの上記二つのロータのうちの一方のロータは、上記操舵ハンドルの操舵力を助勢するように、上記第1減速機構に連結され、
    上記2出力モータの上記二つのロータのうちの他方のロータは、上記操舵ハンドルの回転の伝達比を制御するように、上記第2減速機構に連結され、
    上記第1減速機構は、遊星歯車機構であり、
    上記第2減速機構は、波動歯車機構である
    ことを特徴とする、車両操舵システム。
  2. 上記2出力モータの上記アウターロータは、上記第1減速機構に連結され、
    上記2出力モータの上記インナーロータは、上記第2減速機構に連結されている、請求項1記載の車両操舵システム。
  3. 上記第1減速機構、上記2出力モータ、及び上記第2減速機構は、各々の回転中心軸線が同一直線上に位置するように配置されている、請求項1又は2記載の車両操舵システム。
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