JP4696442B2 - 複合多孔質体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いられる複合多孔質体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多孔質体は、フィルタ、ガス拡散部材、放熱部材、吸水部材といった様々な用途に適用可能であり、種々の装置に備えられている。しかしながら、多孔質体は強度が低く、変形し易いという性質を有しているため、この取り扱いが困難であるという問題があった。
【0003】
そこで、多孔質体からなるフィルタ要素をフィルタ装置に組み込む際などの取り扱い時に生じる多孔質体の損傷を防止するために、フィルタ要素の端区域に異なる物質を充填して補強する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、金属発泡体を装置に取り付ける固定用穴等を設けるために、多孔質体の細孔中に金属やプラスチック等の固体を充填することにより、強度を向上させる部分を設ける技術が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭48−13956号公報
【特許文献2】
特開平08−53723号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、多孔質体の表面に樹脂等を重ねることにより強度を向上させようとすると、補強部分に固定用穴を設けようとする場合に、例えば樹脂と金属とのように二種類の材料を同時に切削することになり、加工しにくく、形状付与が困難となってしまう。
また、多孔質体は一般に製造が困難で、高価なものであるから、この多孔質体を無駄なく利用してその性質を存分に発揮させることが望まれる。これに対し、表面に樹脂や金属等を塗り重ねるような補強では、多孔質体の有効面積を小さくしてしまうため、結果的にコスト増大を招くことになる。
【0007】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたもので、多孔質体の有効面積を犠牲にせず、この多孔質体の取り扱い性を向上させることができるとともに、このような多孔質体を容易かつ確実に形成することができる複合多孔質体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いられる複合多孔質体において、三次元網目構造を有するシート状で気孔径が10μm〜2mm、気孔率が40〜98%に設定された多孔質体と、該多孔質体の外周縁に張り出すように配設された補強体とが接着剤を介して一体に形成され、前記接着剤が前記多孔質体の側部に開口する気孔中に5μm〜1000μmの深さまで含浸して硬化しており、前記多孔質体が複数枚互いに面方向に間隔をおいて配置され、前記補強体が、前記各多孔質体間を埋めるとともに該複数枚の多孔質体の全体の外周を囲むように配置されていることを特徴とする
【0009】
この発明によれば、強度の低い多孔質体の周縁に補強体が配設されるので、取り扱い性よい多孔質体を実現することができる。また、補強体は、多孔質体の周縁から張り出すように配設されるので、補強体のみに限定して例えば機械加工を施すことが可能になり、これにより、装置固定用の穴等の形状を容易に付与することができる。
なお、補強体を配設する個所は、多孔質体の全周に限らず、また外縁部にも限らず、必要に応じて部分的に配設することができる。また、複数の多孔質体を接着剤と補強体とを介して連結するような構成であってもよい。
【0010】
特に、この発明では、接着剤を介して補強体と多孔質体とが一体に形成されているので、この複合多孔質体を形成する際に要する加熱温度や、強度の低い多孔質体に作用する負荷を最小限に抑制することができ、複合多孔質体を容易かつ確実に形成することができる。
【0011】
すなわち、例えば、多孔質体をインサート部品とし、この多孔質体の周縁に連続するように補強体としての樹脂部を射出するインサート成形により、多孔質体の全周にわたって樹脂部を配設しようとすると、多孔質体と樹脂部との熱膨張係数差に起因して、形成された複合多孔質体に反りなどの変形が発生したり、また、溶融樹脂の射出圧により強度の低い多孔質体が変形し、複合多孔質体の前記変形をさらに増長させる虞がある。
しかしながら、この発明では、補強体と多孔質体とを接着剤を介して接合しているので、複合多孔質体を形成する際に多孔質体に作用する負荷を最小限に抑制することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の複合多孔質体において、前記接着剤が、紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、複合多孔質体を形成する際に多孔質体に作用する負荷をさらに抑制することができる。
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の複合多孔質体において、前記各多孔質体に金属薄板タブが溶着されていて、該金属薄膜タブが前記補強体の外周まで延びていることを特徴とする。
請求項に係る発明は、スタック型の固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いられる複合多孔質体において、三次元網目構造を有するシート状で気孔径が10μm〜2mm、気孔率が40〜98%に設定された多孔質体と、該多孔質体の外周縁に張り出すように配設された補強体とが接着剤を介して一体に形成され、前記接着剤が前記多孔質体の側部に開口する気孔中に5μm〜1000μmの深さまで含浸して硬化しており、前記多孔質体の周囲を囲み面方向に延びるように配置される前記補強体を備え、前記補強体には、前記多孔質体の気孔に連通する連通孔と前記多孔質体から離れた位置に設けられて該補強体を貫通する貫通孔とがそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の施形態について、図を参照して説明する。
本発明の基本的構成要素となる複合多孔質体10は、図1に示すように、シート状の多孔質体11と、この多孔質体11の面方向に延びる補強体12とが接着剤13を介して一体に形成された矩形薄板状とされている。
【0015】
多孔質体11は、三次元網目構造を有する矩形の薄板であり、側部に開口する気孔が各方向に連通していることにより通気性、吸水性を有し、軽量で表面積が大きいという特性を有している。なお、この多孔質体11は、金属製でも、結晶性の黒鉛や、結晶性でない無定形炭素を含むものとしての炭素質であってもよい。
補強体12は、多孔質体11の外周縁部に連なる薄板状で、多孔質体11と略同じ厚さで段差なく形成されている。なお、この補強体12は、合成樹脂製や金属製など、この材質はいずれにも限定されず、耐熱温度や硬度などを考慮し、用途に応じて適宜選択すればよい。
接着剤13は、多孔質体11の外面と補強体12の内面との間に、層状にまたは点在させて配置され、多孔質体11と補強体12とを接合している。この接着剤13は有機系でもガラスなどの無機系でもよく、多孔質体11および補強体12の材質に応じて、これらを良好に接着できるものであればよく、耐熱温度や硬度などを考慮し、用途に応じて適宜選択すればよい。
このように構成された複合多孔質体10は、全体として1枚の薄板部材をなしており、補強体12が固定あるいは挟持されるなどして装置に取り付けられて、フィルタ、吸水部材、放熱体等に用いられる。
【0016】
次に、金属製とされた多孔質体11、すなわち金属多孔質体の製造方法について説明する。
この多孔質体11は、各種方法により製造できるが、たとえば、金属粉末を含むスラリーSを、薄く成形して乾燥させたグリーンシートGを焼成することにより製造することができる。図2は、ドクターブレード法によりスラリーSを薄く成形するグリーンシート製造装置30である。
【0017】
スラリーSは、たとえばSUS316L等の金属粉末、有機バインダ(メチルセルロース)、溶媒(水)を混合したものであり、さらに必要に応じて、加熱処理により昇華あるいは気化する発泡剤(ヘキサン)や消泡剤(エタノール)等が添加される。
【0018】
グリーンシート製造装置30において、まず、スラリーSが貯蔵されたホッパ31から、ローラ32によって搬送されるキャリアシート33上にスラリーSが供給される。キャリアシート33上のスラリーSは、移動するキャリアシート33とドクターブレード34との間で延ばされ、所要の厚さに成形される。
【0019】
成形されたスラリーSは、さらにキャリアシート33によって搬送され、加熱炉35を通過する。そして、加熱炉35中で乾燥されることにより、SUS316L粉末が有機バインダによって接合された状態のグリーンシートGが形成される。
なお、スラリーSに発泡剤が含まれる場合、キャリアシート33上に延ばされた状態のスラリーSを、乾燥前に、高湿度雰囲気下にて加熱処理し、発泡剤を発泡させて発泡スラリーとしてから、乾燥処理を行ってグリーンシートGを形成する。
【0020】
このグリーンシートGは、キャリアシート33から取り外された後、図示しない真空炉にて脱脂・焼成されることにより、有機バインダが取り除かれ、金属粉末同士が焼結した多孔質体11とされる。
【0021】
このようにして形成された多孔質体11は、補強体12の内側に配置され、これら多孔質体11と補強体12との間に接着剤13を配置し、この接着剤13を硬化させ、図1に示す複合多孔質体10が形成される。
ここで、接着剤13を硬化させる際に、これらの表面を加圧、または加圧及び加熱することにより、複合多孔質体10を高精度に形成することができるとともに、多孔質体11と補強体12との接合強度を向上させることができる。
また、接着剤13を多孔質体11と補強体12との間に配置した際、多孔質体11の側部に開口する気孔中、5μm〜1000μm程度の深さまで接着剤13が含浸して硬化することにより強固に接合されることになる(アンカー効果)。
さらに、接着剤13として紫外線硬化樹脂を使用すると、この接着剤13を硬化させる際に紫外線を照射すれば足り、これらを加熱することを要さない。従って、複合多孔質体10を形成する際に、強度の低い多孔質体11に作用する負荷を最小限とすることができるので、反りなどの変形を生じさせることなく良好に複合多孔質体10を形成することができる。なお、多孔質体11や補強体12が、紫外線により変質、変形する場合には、前記紫外線照射時に予め多孔質体11や補強体12をマスキングしておくことが好ましい。また、紫外線硬化樹脂は、硬化速度を比較的容易に制御することができるので、前述した、接着剤13の多孔質体11の側部からの含浸深さを高精度に制御することができる。
【0022】
多孔質体11は、気孔径や気孔率が小さすぎると接着剤13が気孔中に入り込めないので前述したアンカー効果が不十分となり、接着剤13との接合強度が十分に得られず、接合部で剥離する虞がある。一方、気孔径や気孔率が大きすぎると、強度が不足し、接着剤13硬化時の圧縮に耐えられず、変形してしまう虞がある。従って、気孔径10μm〜2mm程度、気孔率40〜98%程度であるとより好ましい。
【0023】
以上説明したように、本発明の基本的構成要素となる複合多孔質体によれば、強度の低い多孔質体11の外周縁に補強体12が配設されるので、取り扱い性よい多孔質体11を実現することができる。また、補強体12は、多孔質体11の周縁から張り出すように配設されるので、補強体12のみに限定して例えば機械加工を施すことが可能になり、これにより、装置固定用の穴等の形状を容易に付与することができる。
【0024】
特に、上記複合多孔質体においては、接着剤13を介して補強体12と多孔質体11とが一体に形成されているので、この複合多孔質体10を形成する際に要する加熱温度や、強度の低い多孔質体11に作用する負荷を最小限に抑制することができ、複合多孔質体10を容易かつ確実に形成することができる。
【0025】
すなわち、例えば、多孔質体11をインサート部品とし、この多孔質体11の周縁に連続するように補強体12としての樹脂部を射出するインサート成形により、多孔質体11の全周にわたって樹脂部を配設しようとすると、多孔質体11と樹脂部との熱膨張係数差に起因して、形成された複合多孔質体10に反りなどの変形が発生したり、また、溶融樹脂の射出圧により強度の低い多孔質体11が変形し、複合多孔質体10の前記変形をさらに増長させる虞がある。
しかしながら、上記複合多孔質体においては、補強体12と多孔質体11とを接着剤13を介して接合した構成とされているので、複合多孔質体10を形成する際に多孔質体10に作用する負荷を最小限に抑制することができる。
【0026】
なお、上記例においては、補強体12を図1に示すように平坦としたが、ねじ挿通孔用の穴や、装置に対する嵌合用の溝形状、強度向上のためのリブ形状、ボスなどを設けたものでもよい。
【0027】
このようにして製造された複合多孔質体10は、次のような用途に用いられる。
図3に、複合多孔質体10をフィルタ40として備える空気清浄機等の多層フィルタ装置において、フィルタ40を収容するフィルタユニット41を示す。フィルタユニット41は、樹脂や金属からなるフィルタボックス42に、複数枚のフィルタ40を挿入し、フィルタボックス42に蓋部材43を取り付けた構成である。
【0028】
このフィルタユニット41では、フィルタ40の補強体12をエラストマー等の弾性部材で形成することにより、フィルタボックス42および蓋部材43に対して気密性を持たせ、ろ過対象となる流体をもれなく多孔質体11部分に通過させることができる。なお、酸化チタンなどの光触媒を担持させて多孔質体11を製造すれば、フィルタに捕捉されたガス状汚染物質を光の照射により分解することができ、より空気清浄効果を高めることができる。
【0029】
図4に、複合多孔質体10を充填物支持板50として備える充填塔51を示す。充填塔51は、垂直な円筒形シェル52内に充填物53を充填したもので、充填物53の上部に配置された液分散板54を通じて上方から均一に分散された液が充填物53の表面を流下するとともに、下方から送り込まれたガスが充填物53の間隙を流れて液と接触しながら上昇する構造により、ガス中の成分を液中に吸収させる装置であり、脱臭、排ガスの洗浄等を行うことができる。
【0030】
この充填塔51において、充填物支持板50としての複合多孔質体10は、固定用穴が設けられた補強体12がシェル52にねじ止め等により固定されて、多孔質体11で液体およびガスを通過させながら充填物を支持している。
【0031】
図5に、複合多孔質体10を吸水部材60として備える加湿器61を示す。この加湿器61は、水を保持するタンク62の底部63に吸水部材60を立設した構成を有し、微細な連通気孔の浸透圧により吸水部材60の気孔中にタンク62から水を吸い上げさせ、表面積の大きい多孔質体11から蒸発させることにより、空気中の湿度を高めることができる。この加湿器61において、吸水部材60としての複合多孔質体10は、タンク62の底部63に形成された溝部64に補強体12を挿入させることにより固定され、多孔質の多孔質体11の一部が水没している。
【0032】
図6に、電極70およびフィルタ71として複合多孔質体10を備え、塵埃を帯電させて集塵する集塵装置72を示す。この集塵装置72では、複合多孔質体10である電極70と電極73との間に電圧を印加して放電させ、これら電極間で帯電した塵埃をフィルタ71で集塵させることができる。複合多孔質体10である電極70およびフィルタ71は、補強体12に穴等の固定用形状が設けられ、装置にねじ止め等により固定されている。
【0033】
この電極70およびフィルタ71は、補強体12の部分で装置に固定することができるので、補強体12を電気絶縁性材料で形成することにより容易に絶縁でき、装置構成を単純化することができる。また、電極70において多孔質体11と電源とを接続するために、補強体12を導電性樹脂で形成したり、補強体12の表面に金属配線をプリントしたりしてもよい。
【0034】
図7に、放熱体80として複合多孔質体10を備えるクーラーユニット81を示す。このクーラーユニット81は、基板部82に補強体12が固定されて並列する複合多孔質体10の多孔質体11がヒートシンクを構成しており、ファン83の送風で多孔質体11が冷却されることにより、基板部82側に配置されたコンピュータのCPU等を冷却するための装置である。この場合、補強体12には熱伝導性樹脂が使用される。複合多孔質体10は多孔質体11の表面積が大きく軽量であるので、このようなCPUクーラの他、種々の装置における放熱体に好適である。
【0035】
図8に、本発明の実施形態である固体高分子型燃料電池のガス拡散電極90,91に適用された複合多孔質体10を示す。このガス拡散電極90,91は、複数枚の多孔質体11が面方向に間隔をおいて配置された状態で、各多孔質体11間を埋めるとともに全体の外周を囲むように補強体12が設けられている。そして、各多孔質体11の一端には、補強体12の外周まで延びる金属薄板タブ92が接続されている。金属薄板タブ92は、インサート成形前の各多孔質体11に溶着されていて、インサート成形により補強体12と一体とされている。
【0036】
この燃料電池は、図9に示すように、陽極のガス拡散電極(空気極)90と陰極のガス拡散電極(燃料極)91との間に電解質膜93を挟んだ層状構造となっていて、各ガス拡散電極90,91の多孔質体11の表面には、電解質膜93に接する触媒94が塗布形成されている。電解質膜93を挟んで対向する空気極90および燃料極91は、各多孔質体11が交互に直列に接続されるように、各金属薄板タブ92が配線97により接続されており、直列の両端に位置する多孔質体11(金属薄板タブ92)が電池の陽極95、陰極96として機能する。
【0037】
ここで、燃料極91に燃料を供給する燃料供給部98は、毛管作用により燃料を供給保持する多孔質部99と、シールのために外周に設けられた樹脂部100とからなる構造となっている。燃料供給部98と燃料極91とは、燃料供給部98の樹脂部100と燃料極91の補強体12とをたとえば超音波接合することにより固定される。
【0038】
また、本発明の複合多孔質体10は、図10および図11に示すような構成の燃料電池においても、ガス拡散電極110として用いることもできる。
このガス拡散電極110(10)は、複数枚の多孔質体11が面方向に間隔をおいて配置された状態で、各多孔質体11間を埋めるとともに全体の外周を囲むように補強体12が設けられていて、各多孔質体11の一方の面に触媒層(図示せず)が形成されている。そして燃料電池は、2枚のガス拡散電極110間に電解質層111を挟み込み、各ガス拡散電極110の触媒層を電解質層111に臨ませて、各多孔質体11を順次直接に配線する構成となっている。
【0039】
図10に示す構成は、多孔質体11に食い込む突起112aを有する導電性コ字状の接続部材112によって、互いに対向して配置された多孔質体11をたすきがけ状に順次接続するものである。
また、図11に示す構成は、対向する2対の多孔質体11近傍の補強体12部分を挟み込む挟持部113aと、この挟持部113aから多孔質体11へ向かって延びる接続部113bとを有する導電性クリップ状の接続部材113によって、互いに対向して配置された多孔質体11をたすきがけ状に順次接続するものである。
このような接続部材112,113を用いて多孔質体11を接続する構成とすれば、図8に示すような別部材の金属薄板タブ92を設ける必要がない。
【0040】
さらに、上記複合多孔質体10は、電極120、電解質層121およびセパレータ板122を多層に積層する構成のスタック型の固体高分子型燃料電池(図12)におけるガス拡散電極120として用いることもできる。なお、セパレータ板122は、空気や燃料となるガスまたは液体を通過させず、導電性を有するたとえばカーボン板や耐食性のある金属板などで形成されている。
【0041】
図13および図14に、本実施形態の複合多孔質体10(ガス拡散電極120)を示す。このガス拡散電極120は、多孔質体11の周囲を囲み面方向に延びる補強体12とからなる板状の部材で、多孔質体11に隣接して補強体12を貫通し、多孔質体11の気孔に連通する2つの連通孔120a,120bと、多孔質体11から離れた位置に設けられて補強体12を貫通する2つの貫通孔120c,120dと、補強体12の四隅に設けられて固定用のボルト等を挿通させるボルト挿通孔120eとを有している。これら連通孔120a,120b、貫通孔120c,120d,120eは、複合多孔質体10の製造時に金型によって成形することができる。
【0042】
電解質層121には、ガス拡散電極120の各孔に連通する貫通孔が設けられている。すなわち、電解質層121には、ガス拡散電極の連通孔120a,120bおよび貫通孔120c,120dに連通する貫通孔121aと、ボルト挿通孔120eに連通するボルト挿通孔(図示せず)が形成されている。
また、セパレータ板122にも、ガス拡散電極120の各孔に連通する貫通孔が設けられている。すなわち、セパレータ板122には、ガス拡散電極の連通孔120a,120bおよび貫通孔120c,120dに連通する貫通孔122aと、ボルト挿通孔120eに連通するボルト挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0043】
積層されたガス拡散電極120、電解質層121およびセパレータ板122は、各ボルト挿通孔にボルトを挿通させてナットで固定することにより、一体に固定することができる。
【0044】
電解質層121を挟んで積層された2枚のガス拡散電極120は、表裏を異ならせて配置され、一方が燃料極120A、他方が空気極Bとなっている。
すなわち、燃料極120Aの連通孔120aと空気極120Bの貫通孔120d、燃料極120Aの連通孔120bと空気極120Bの貫通孔120cとが連通して、燃料電池の厚さ方向(図12の左右方向)に延びる燃料供給路F1および燃料排出路F2が形成される。燃料供給路F1に供給された燃料は、各燃料極120Aの多孔質体11の連通気孔中を通過しながら電解質層121と触媒層の界面に水素を供給し、残ガスは燃料排出路F2を通じて排出される。なお、図12は、図13に示すA−A線に沿う断面図であり、燃料の供給経路のみを示している。
【0045】
同様に、燃料極120Aの連通孔120cと空気極120Bの貫通孔120bとが連通して、燃料電池の厚さ方向に延びる空気供給路(図示せず)が形成されるとともに、燃料極120Aの連通孔120dと空気極120Bの貫通孔120aとが連通して、燃料電池の厚さ方向(図12の左右方向)に延びる空気排出路(図示せず)が形成される。空気供給路に供給された空気は、各空気極120Bの多孔質体11の連通気孔中を通過しながら電解質層121と触媒層の界面に酸素を供給し、反応により生成した水とともに空気排出路を通じて排出される。
【0046】
すなわち、本実施形態の燃料電池は、2枚のガス拡散電極120間に電解質層121を挟み、これらの両面をセパレータ板122に覆うことにより、単独のセルが構成されている。そして、セパレータ板122を挟んで燃料極120Aと空気極120Bとを配置することにより、これら燃料極120Aと空気極120Bとを気密に隔てるとともにセパレータ板122を通じて電子のやりとりが行われる構成とすることができ、複数のセルを直列に接続した燃料電池を構成することができる。
【0047】
なお、以上の実施形態において示した各構成部材、その諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求に基づき種々変更可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る複合多孔質体によれば、強度の低い多孔質体の周縁に補強体が配設されるので、取り扱い性よい多孔質体を実現することができる。また、補強体は、多孔質体の周縁から張り出すように配設されるので、補強体のみに限定して例えば機械加工を施すことが可能になり、これにより、装置固定用の穴等の形状を容易に付与することができる。
【0049】
特に、接着剤を介して補強体と多孔質体とが一体に形成されているので、この複合多孔質体を形成する際に要する加熱温度や、強度の低い多孔質体に作用する負荷を最小限に抑制することができ、複合多孔質体を容易かつ確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の基本的構成要素となる複合多孔質体を示す平面図である。
【図2】 図1に示す多孔質体を製造する方法の一例を示す模式図である。
【図3】 空気清浄機のフィルタとして用いた複合多孔質体の例を示す斜視分解図である。
【図4】 充填塔の充填物支持板として用いた複合多孔質体の例を示す模式図である。
【図5】 加湿器の吸水部材として用いた複合多孔質体の例を示す模式図である。
【図6】 電気集塵装置の電極および集塵フィルタとして用いた複合多孔質体の例を示す模式図である。
【図7】 CPUクーラのヒートシンクに用いた複合多孔質体の例を示す模式図である。
【図8】 燃料電池のガス拡散電極として用いた本発明の複合多孔質体の例を示す斜視図である。
【図9】 図8に示すガス拡散電極を備えた燃料電池において、燃料供給部を一体化した例を示す模式図である。
【図10】 本発明の複合多孔質体をガス拡散電極として用いた燃料電池の一例を示す斜視図である。
【図11】 本発明の複合多孔質体をガス拡散電極として用いた燃料電池の他の例を示す斜視図である。
【図12】 本発明の複合多孔質体をガス拡散電極として用いたスタック型の燃料電池の例を示す断面図である。
【図13】 図12に示す燃料電池を構成する複合多孔質体(燃料極)を示す平面図である。
【図14】 図12に示す燃料電池を構成する複合多孔質体(空気極)を示す平面図である。
【符号の説明】
10 複合多孔質体
11 多孔質体
12 補強体
13 接着剤
40 フィルタ(複合多孔質体)
50 充填物支持板(複合多孔質体)
60 吸水部材(複合多孔質体)
70 電極(複合多孔質体)
71 フィルタ(複合多孔質体)
80 放熱体(複合多孔質体)
90,91,110,120 ガス拡散電極(複合多孔質体)

Claims (4)

  1. 固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いられる複合多孔質体において、
    三次元網目構造を有するシート状で気孔径が10μm〜2mm、気孔率が40〜98%に設定された多孔質体と、該多孔質体の外周縁に張り出すように配設された補強体とが接着剤を介して一体に形成され、
    前記接着剤が前記多孔質体の側部に開口する気孔中に5μm〜1000μmの深さまで含浸して硬化しており、
    前記多孔質体が複数枚互いに面方向に間隔をおいて配置され、前記補強体が、前記各多孔質体間を埋めるとともに該複数枚の多孔質体の全体の外周を囲むように配置されていることを特徴とする複合多孔質体。
  2. 請求項記載の複合多孔質体において、
    前記接着剤が、紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする複合多孔質体。
  3. 請求項1または2に記載の複合多孔質体において、
    前記各多孔質体に金属薄板タブが溶着されていて、該金属薄膜タブが前記補強体の外周まで延びていることを特徴とする複合多孔質体。
  4. スタック型の固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いられる複合多孔質体において、
    三次元網目構造を有するシート状で気孔径が10μm〜2mm、気孔率が40〜98%に設定された多孔質体と、該多孔質体の外周縁に張り出すように配設された補強体とが接着剤を介して一体に形成され、
    前記接着剤が前記多孔質体の側部に開口する気孔中に5μm〜1000μmの深さまで含浸して硬化しており、
    前記多孔質体の周囲を囲み面方向に延びるように配置される前記補強体を備え、
    前記補強体には、前記多孔質体の気孔に連通する連通孔と前記多孔質体から離れた位置に設けられて該補強体を貫通する貫通孔とがそれぞれ形成されていることを特徴とする複合多孔質体。
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