JP4696372B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐半田クラック性に優れ、更には臭素化合物やアンチモン化合物等の難燃剤を実質的に含まない環境に優しい半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイオード、トランジスタ、IC、LSI等の半導体素子は、外的刺激(機械的・熱的衝撃、化学的作用等)から保護するために、生産性やコストの点を考慮してエポキシ樹脂組成物で封入成形するのが一般的になっている。近年の半導体素子の高集積度化に伴い半導体素子寸法の増大と相反して、最近の電子機器の小型化による半導体装置寸法の小型化・薄型化が進み、更にプリント回路基板への実装方法も従来のピン挿入型から表面実装型へ移行してきたため、表面実装半田処理時の熱衝撃による半導体装置のクラックや、半導体素子・リードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面での剥離といった問題が生じ易くなり、耐熱性に優れたエポキシ樹脂組成物が強く求められている。
これらのクラックや剥離は、半田処理前の半導体装置自身が吸湿し、半田処理時の高温下でその水分が水蒸気爆発を起こすことによって生じると考えられており、それを防ぐためにエポキシ樹脂組成物に低吸湿性を付与する等の手法がよく用いられ、その低吸湿化の手法の一つとして低粘度の結晶性エポキシ樹脂を用いて無機物を高充填化し、樹脂成分の含有量を減少させる技術がある。従来、このような手法に用いられるエポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂等がある。しかしながら、ビフェニル型エポキシ樹脂といえども、無機物をエポキシ樹脂組成物中に70vol%以上配合することは製造上、簡単ではなく、これを実現するためにはより高度な生産技術を必要とすることが多く、生産コストが高くなることにもなる。更に、低粘度の樹脂としては低分子のビスフェノール型エポキシ樹脂があるが常温で液状のため取り扱い作業性に劣り、半導体用封止材料に適用するには問題があった。
以上のことから、従来のエポキシ樹脂組成物よりも無機物を高充填化した、耐半田クラック性に優れ、更には臭素化合物やアンチモン化合物等の難燃剤を実質的に含まない環境に優しい半導体封止用エポキシ樹脂組成物が要求されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、常温で固形の超低溶融粘度のエポキシ樹脂を用いて、従来以上の無機物を高充填化することによって低吸湿化し、更に特定のフェノール樹脂と併用して更なる低吸湿化を図り、耐半田クラック性を向上させ、且つこの高充填化によって難燃剤としての臭素化合物やアンチモン化合物を実質的に含まない環境に優しい半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0004】
本発明は、
[1](A)一般式(1)で示されるビスフェノールA類(a)と、一般式(2)で示される化合物(b)との混合物をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)フェノールとクレゾールとをアルデヒドを介して縮合した変性ノボラック型フェノール樹脂、(C)無機物、及び(D)硬化促進剤を必須成分とし、aとbとの重量比(a/b)が0.1〜10であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、硬化促進剤が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であり、全無機物が全エポキシ樹脂組成物中に81〜91vol%であり、全エポキシ樹脂組成物中に含有される臭素原子及びアンチモン原子が、それぞれ0.1重量%未満であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、一般式(1)で示されるビスフェノールA類(a)が、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタンであり、一般式(2)で示される化合物が、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルから選ばれる1種以上である半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【化3】
(ただし、式中のR1は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なってもよい。mは0〜4の整数。)
【0005】
【化4】
(ただし、式中のR2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なってもよい。mは0〜4の整数。)
[2] 変性ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール(c)とクレゾール(d)とのモル比(c/d)が0.1〜10であり、全無機物が全エポキシ樹脂組成物中に77〜91vol%である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3]一般式(1)で示されるビスフェノールA類と一般式(2)で示される化合物との混合物をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂が、重量平均分子量1000以下で、且つ全エポキシ樹脂中に50重量%以上含まれ、フェノールとクレゾールとをアルデヒドを介して縮合した変性ノボラック型フェノール樹脂が、重量平均分子量2000以下で、且つ全フェノール樹脂中に50重量%以上含まれる第[1]、[2]又は[3]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[4]第[1]〜[3]項記載のいずれかのエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるエポキシ樹脂は、低粘度・低分子量の一般式(1)で示されるビスフェノールA類と一般式(2)で示される化合物との混合物(以下、混合フェノールという)をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に由来する低粘度化が図られており、従来のビフェニル型エポキシ樹脂より更に加熱時の溶融粘度の低い樹脂となるため、ビフェニル型エポキシ樹脂を主として用いたエポキシ樹脂組成物よりも流動性に優れ、無機物を更に高充填化することができ、ひいてはエポキシ樹脂組成物の硬化物の低吸湿化が可能となるため、耐半田クラック性の向上に寄与する。
又、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で結晶性を示し作業性の面で非常に扱い難いが、本発明のエポキシ樹脂は、ビスフェノールA類を高い結晶性を有するエポキシ樹脂の前駆体である一般式(2)で示される化合物と共にグリシジルエーテル化させることによって、常温で固体として取り扱うことができるため、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂に比べて、作業性が良い。
【0007】
一般式(1)で示されるビスフェノールA類としては、特に限定するものではなく、単独でも2種類以上併用して用いても良い。特に好ましいのはビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタンであり、これを用いると低粘度化への寄与が大きくなり、且つ置換基がない故にグリシジルエーテル化した場合、高い反応性を有するエポキシ樹脂を得ることができる。
【0008】
一般式(2)で示される化合物としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルビフェニル等(置換位置の異なる異性体を含む)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。
これらの内では、入手のし易さ、性能、原料価格等の点から、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルから選ばれる1種以上が好ましく、特に、低粘度化効果が大きく且つ反応性に富む4,4’−ジヒドロキシビフェニルが含まれているものが好ましい。これらの混合比、混合方法については限定しない。
【0009】
一般式(1)で示されるビスフェノールA類と一般式(2)で示される化合物との混合方法としては、特に限定しないが、溶剤を用いて溶解する方法や、加熱による溶融混合等の方法で、均一に混合することが好ましい。これは、不均一に混合されたものをグリシジルエーテル化すると、一般式(1)で示されるビスフェノールA類と一般式(2)で示される化合物をそれぞれ単独でグリシジルエーテル化してから混合した場合と同様の性質になってしまい、期待する低粘度化や常温での固形化が図れなくなるためである。
【0010】
一般式(1)で示されるビスフェノールA類(a)と一般式(2)で示される化合物(b)との混合比としては、重量比(a/b)で0.1〜10が好ましく、より好ましくは0.5〜5である。0.1未満だと、一般式(1)で示されるビスフェノールA類に由来する低粘度化の効果がなくなるので好ましくない。又、10を越えると結晶性エポキシ樹脂成分を混合したことによる作業性の向上がなくなるので好ましくない。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂の合成方法については特に限定しないが、例えば、混合フェノールを過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で50〜150℃で、好ましくは60〜120℃で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。生成したエポキシ樹脂の塩素イオン、ナトリウムイオン、その他フリーのイオンは極力少ないことが望ましい。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは1000以下、更に好ましくは500以下である。これは重量平均分子量を1000以下にすることで加熱溶融時の粘度を低く抑えることができ、本発明の目的とする無機物の高充填化を図れるからである。
本発明における重量平均分子量は、GPC(Gel Permiation Chromatography)法によりポリスチレン換算して求めた値である。即ち、東ソー(株)・製GPCカラム(G1000H×L:1本、G2000H×L:2本、G3000H×L:1本)を用い、流量1.0cm3/60秒、溶出溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度40℃の条件で示差屈折計を検出器に用いて測定しポリスチレン換算して求めた。
【0013】
又、本発明のエポキシ樹脂には、他のエポキシ樹脂を併用しても差し支えない。併用できるエポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。又、常温で液状のエポキシ樹脂や高軟化点のエポキシ樹脂を、作業性や流動性に問題ない範囲内で併用しても良い。併用する場合には、本発明の一般式(1)で示されるビスフェノールA類と一般式(2)で示される化合物との混合物をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂が、全エポキシ樹脂中に50重量%以上含まれることが好ましい。50重量%未満だと本発明のエポキシ樹脂の効果が充分に発揮されない場合がある。
【0014】
本発明で用いるフェノール(c)とクレゾール(d)とをアルデヒドを介して縮合した変性ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール樹脂の良好な硬化性とクレゾール樹脂の低吸湿性を兼ね備えた特性を発現する。変性ノボラック型フェノール樹脂中のcとdとのモル比(c/d)としては0.1〜10が好ましく、特に好ましくは0.2〜5である。
これは、フェノールの比率が高くなると、硬化性や強度は向上するものの耐吸湿性が低下し、クレゾールの比率が高くなると、耐吸湿性は向上するものの硬化性や強度が低下するためである。
クレゾールとしては、オルソクレゾール、パラクレゾール、及びメタクレゾールの3種の異性体があり、これらは単独でも2種類以上を併用して用いても良いが、工業製品としての入手の容易さからオルソクレゾール、もしくは3種の混合物を用いることが好ましい。
合成に用いるアルデヒド源としては特に限定しないが、ホルムアルデヒドあるいはパラホルムアルデヒドが工業的に大量生産され安価である点で好ましい。
本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の合成方法としては、例えば、オルソクレゾールとホルムアルデヒドを酸触媒の存在下で反応させた後、フェノールとホルムアルデヒドを添加して縮合反応を行って得る方法や、オルソクレゾールとフェノールにホルムアルデヒドを添加して酸触媒の存在下で縮合反応を行い、未反応物を除去して固形樹脂として得る方法等があるが、得られた変性ノボラック型フェノール樹脂中のモル比(c/d)が0.1〜10であれば、特に合成方法は限定しない。
本発明における変性ノボラック型フェノール樹脂中のモル比(c/d)は、1H−NMR(日本電子(株)・製、JNM−EX90)を用いてフェノール含有率及びクレゾール含有率を測定して求めた。
【0015】
本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量としては、2000以下が好ましい。これは重量平均分子量を2000以下にすることで、加熱溶融時の粘度が低く抑えられ、本発明の目的とする無機物の高充填化が図れるからである。
本発明における変性ノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量は、前記のGPC法で測定した。本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂は、低吸湿性のフェノールアラルキル樹脂と比較すると、より低吸湿性で且つ硬化性が良好であるため、より品質に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
又、本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂には、他のフェノール樹脂を併用しても差し支えない。併用できるフェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。これらのフェノール樹脂は、分子量、軟化点、水酸基当量等に制限なく用いることができるが、軟化点90℃以下の比較的低粘度のフェノール樹脂が好ましい。軟化点が90℃を越えると、本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の低粘度化の効果が少なくなる場合がある。
併用する場合には、変性ノボラック型フェノール樹脂が、全フェノール樹脂中に50重量%以上含まれることが好ましい。50重量%未満だと本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の効果が充分に発現されない場合がある。
全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂のフェノール性水酸基の当量比としては、好ましくは0.5〜2.0、特に好ましくは0.7〜1.5である。0.5〜2.0の範囲を外れると、硬化性、耐湿信頼性等が低下するので好ましくない。
【0017】
本発明で用いる無機物とは、一般に封止材料として用いられる無機充填材と、その他の必要に応じて配合される無機物の添加剤を含めたものである。
本発明の無機充填材の種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、ガラス繊維等が挙げられ、これらは単独でも2種類以上併用して用いても良い。特に溶融球状シリカが好ましい。形状は限りなく真球状であることが好ましく、又、粒子の大きさの異なるものを混合することによって充填量を多くすることができる。
本発明では必要に応じて無機物の添加剤を適宜配合することができ、種類については特に制限はなく、一般に封止材料に用いられているものを使用することができる。例えば、水酸化マグネシウム、ホウ酸化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等のイオン捕捉剤として用いられる無機イオン交換体等が挙げられる。
【0018】
この全無機物は全エポキシ樹脂組成物中に少なくとも62vol%以上であることが好ましい。62vol%未満だと、無機充填材による補強効果が十分に発現せず、且つ吸湿要因である樹脂成分の含有量が多くなるので、吸湿性が増大するおそれがある。又、全無機物の配合量の上限は、エポキシ樹脂組成物として必要な流動性が確保できれば、特に限定するものではないが、全エポキシ樹脂組成物中に91vol%を越えて配合しようとすると、特殊な無機充填材の採用あるいは潜伏性触媒の使用等といった原料面の対応や、非加熱混練法等の特殊な製造方法が必要になるため、経済的でない。
本発明の効果を充分且つ経済的に発現させるには、全無機物は全エポキシ樹脂組成物中に77〜91vol%であることが好ましい。
更に、全無機物が、全エポキシ樹脂組成物中に81〜91vol%になるように設定すれば、臭素化エポキシ樹脂や酸化アンチモン等の難燃剤類を実質的に含まなくとも、実用上必要な難燃性が確保でき、環境に優しいエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0019】
本発明に用いる無機充填材は、予め十分に混合しておくことが好ましい。又、必要に応じて無機充填材をカップリング剤やエポキシ樹脂、あるいはフェノール樹脂で予め処理して用いてもよく、処理の方法としては、溶剤を用いて混合した後に溶媒を除去する方法や直接無機充填材に添加し、混合機を用いて処理する方法等がある。
【0020】
本発明で用いる硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応を促進するものであれば良く、例えば、1,8−ジアザビシク口(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも2種類以上併用して用いても良い。
含有量としては、全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂との合計量100重量部当たり0.4〜20重量部が好ましい。0.4重量部未満だと、加熱成形時に十分な硬化性が得られないおそれがあり、一方、20重量部を越えると、硬化が速すぎて成形時に流動性の低下による充填不良等を生じるおそれがあるので好ましくない。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン等の難燃剤を含有することは差し支えないが、半導体装置の150〜200℃の高温下での電気特性の安定性が要求される用途では、臭素原子、アンチモン原子の含有量が、それぞれ全エポキシ樹脂組成物中に0.1重量%未満であることが好ましく、完全に含まれない方がより好ましい。臭素原子、アンチモン原子のいずれかが0.1重量%以上だと、高温下に放置したときに半導体装置の抵抗値が時間と共に増大し、最終的には半導体素子の金線が断線する不良が発生する可能性がある。又、環境保護の観点からも、臭素原子、アンチモン原子のそれぞれの含有量が0.1重量%未満で、極力含有されていないことが望ましい。
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じてリン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類、あるいはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて常温混合し、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混合し、冷却後粉砕する一般的な方法で得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形硬化すればよい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。
実施例及び比較例で用いたエポキシ樹脂A〜Eの合成には、一般式(1)で示されるビスフェノールA類として式(3)のビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、及び一般式(2)で示される化合物として式(4)の4,4’−ジヒドロキシビフェニル、式(5)の4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを用いた。以下にそれらの構造式を示す。
【化5】
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
実施例及び比較例で用いた変性ノボラック型フェノール樹脂F〜Iの合成には、フェノール及びオルソクレゾールを用いた。又、比較例に用いたフェノールアラルキル樹脂の構造式(6)を以下に示す。
【化8】
【0026】
本発明のエポキシ樹脂A〜Eと従来のビフェニル型エポキシ樹脂(市販品)、本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂F〜Iと従来のフェノールノボラック樹脂(市販品)、及びフェノールアラルキル樹脂(市販品)について、その原料の配合割合及び特性を表1、表2に示す。原料の配合割合は重量部とする。
エポキシ樹脂A〜Eは、表1の配合に従い原料を常法でグリシジルエーテル化したものである。変性ノボラック型フェノール樹脂F〜Iは、表2の配合に従い原料を常法でノボラック化したものである。
溶融粘度:ICIコーンプレート粘度計(Research Equipment社・製)を用いて、150℃での粘度を測定した。単位はポイズ。
重量平均分子量:前記の方法で測定した。
変性ノボラック型フェノール樹脂中のモル比(c/d):前記の方法で測定した。
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【実施例】
実施例の配合割合を以下に示す。配合割合は重量部とする。
実施例1
エポキシ樹脂B 5.5重量部
変性ノボラック型フェノール樹脂H 3.6重量部
トリフェニルホスフィン 0.1重量部
溶融球状シリカ(平均粒径23μm) 89.5重量部
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5重量部
カーボンブラック 0.3重量部
モンタン酸エステル 0.5重量部
をミキサーを用いて混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0029】
評価方法
・流動性/スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃で、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
・硬化性/ゲル化時間:175℃の熱板上で溶融硬化させることによりゲル化時間を求めた。
・熱時強度/曲げ強さ:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で試験片を成形し、175℃、8時間のポストキュアを行い、熱時曲げ強度をJIS K 6911に準じて(240℃で)測定した。単位はいずれもMPa。
・吸湿性/煮沸吸水率:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で直径50mm、厚さ3mmの円盤状試験片を成形し、ポストキュアとして175℃で8時間処理した。試験片の吸湿処理前と煮沸水中に24時間放置した後の重量変化を測定し、試験片の吸湿率を百分率で示した。単位は%。
・難燃性/UL−94:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で試験片を成形し、ポストキュアとして175℃、8時間で処理した後、UL−94垂直試験(試験片厚さ1/8inch)に準じて難燃性を判定した。
・成形性/充填性・離型性:マルチプランジャー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間60秒で144pLQFP(パッケージサイズは20×20mm、厚み1.4mm、半導体素子の寸法は12×12mm、リードフレームはCu製)を成形し、充填性と離型性を評価した。
・半田耐熱性/外部クラック・内部クラック・剥離:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒で80pQFP(厚さ2.0mm、チップサイズ6mm×6mm)を成形した。ポストキュアとして175℃で8時間処理したパッケージ6個を、85℃、相対湿度85%の環境下で168時間処理した後、赤外線リフロー装置を用いて235℃以上で10秒、最高温度245℃に加熱した。顕微鏡でパッケージの外部クラックを、又、超音波探傷装置でパッケージ内部のクラック又は剥離の有無を観察し、不良パッケージの個数を数えた。不良パッケージの個数がn個であるとき、n/6と表示する。
・臭素原子、アンチモン原子含有量:圧力5.9MPaで直径40mm、厚さ5〜7mmに圧縮成形し、得られた成形品を蛍光X線分析装置を用いて、全エポキシ樹脂組成物中の臭素原子、アンチモン原子の含有量を定量した。単位は重量%。
【0030】
実施例2〜9、12、13、参考例10、11、比較例1〜6
表3、表4の配合(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5重量部、カーボンブラック0.3重量部、モンタン酸エステル0.5重量部は、表3、表4中では「その他の添加物」と表した。)に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表3、表4に示す。なお表3、表4における全エポキシ樹脂組成物中の全無機物の含有量(vol%)は、各原料の真比重と配合割合から体積を計算して求めたものである。
実施例1以外に使用した原料の特性を以下に示す。
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量359、150℃での溶融粘度13ポイズ)、三酸化アンチモン(平均粒径1μm)。
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【発明の効果】
本発明に従うと、低吸湿性、耐半田クラック性に優れ、且つ臭素化合物やアンチモン化合物を実質的に含まない環境対応の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び半導体装置が得られる。
Claims (4)
- (A)一般式(1)で示されるビスフェノールA類(a)と、一般式(2)で示される化合物(b)との混合物をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、(B)フェノールとクレゾールとをアルデヒドを介して縮合した変性ノボラック型フェノール樹脂、(C)無機物、及び(D)硬化促進剤を必須成分とし、aとbとの重量比(a/b)が0.1〜10であり、全エポキシ樹脂のエポキシ基に対する全フェノール樹脂のフェノール性水酸基の当量比が0.5〜2.0であり、硬化促進剤が全エポキシ樹脂と全フェノール樹脂の合計量100重量部当たり0.4〜20重量部であり、全無機物が全エポキシ樹脂組成物中に81〜91vol%であり、全エポキシ樹脂組成物中に含有される臭素原子及びアンチモン原子が、それぞれ0.1重量%未満であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、一般式(1)で示されるビスフェノールA類(a)が、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタンであり、一般式(2)で示される化合物が、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルから選ばれる1種以上である半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 変性ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール(c)とクレゾール(d)とのモル比(c/d)が0.1〜10であり、全無機物が全エポキシ樹脂組成物中に77〜91vol%である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 一般式(1)で示されるビスフェノールA類と一般式(2)で示される化合物との混合物をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂が、重量平均分子量1000以下で、且つ全エポキシ樹脂中に50重量%以上含まれ、フェノールとクレゾールとをアルデヒドを介して縮合した変性ノボラック型フェノール樹脂が、重量平均分子量2000以下で、且つ全フェノール樹脂中に50重量%以上含まれる請求項1、2又は3記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜3記載のいずれかのエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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