以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の発熱具保持用ベルトの正面図及び背面図が示されている。なお以下の説明において、ベルトの正面側の面を肌面といい、背面側の面を外面という。図1及び図2に示すベルト1は、図3及び図4に示すように、着用者の胴部に巻き付けて用いられるものである。図3に示す着用状態では、発熱具100が着用者の腰部に位置する。この着用状態は、腰痛の緩和に効果がある。図4に示す着用状態では、発熱具100が着用者の腹部に位置する。この着用状態は、生理痛の緩和や便秘の改善に効果がある。
ベルト1は、発熱具100の収容保持が可能な矩形状の収容部2を中央に有し、その両側からそれぞれ延出した一対の腕部である第1腕部3a及び第2腕部3bを備えている。第1腕部3aと第2腕部3bとは略対称形になっている。
第1及び第2腕部3a,3bは、ベルト1の長手方向に延びる水平線Hに対して、角度θの方向に向けて傾斜して延びている。第1及び第2腕部3a,3bは、収容部2寄りに位置する基部4aと先端部寄りに位置する自由端部4bとから構成されている。基部4aは、収容部2から自由端部4bに向けてその幅が漸減している。基部4aの幅が変化しなくなった箇所において、基部4aと自由端部4bとが連接している。基部4の下辺部41は、内側にやや括れた湾曲形状になっている。一方、自由端部4bは、その幅が概ね一定となっている。自由端部4bの先端部、即ち腕部3a,3bの先端部は円弧状になっている。
図1に示すように、第1腕部3aの肌面における先端部には、面ファスナのループ部材又はフック部材5が取り付けられている。該部材5は、第1腕部3aの先端部の円弧形状と略同形の円弧部を有する略半円形になっている。図2に示すように、第2腕部3bの外面には、前記の部材5と係合可能な面ファスナのフック部材(部材5がループ部材の場合)又はループ部材(部材5がフック部材の場合)6が取り付けられている。部材6は、第2腕部3bの外面における自由端部4bの概ね全長に亘って延びている。また、部材6の幅は自由端部4bの幅よりも若干狭くなっている。
第2腕部3bにおいては、部材6を含めた自由端部4bの領域が、該第2腕部3bの延びる方向に伸縮性を有していることが好ましい。第2腕部3bにおいては、後述するように基部4aも伸縮性を有しているので、基部4a及び自由端部4bの何れもが伸縮性を有する場合には、第2腕部3bがその全体として伸縮性を有することになるので、ベルト1のサイズ適応性が高まる。即ち、使用者のウエスト周りのサイズは様々であるが、第2腕部3bが伸縮可能になることで、一種類のサイズのベルトさえ用意すれば、様々な体型の使用者への着用に対応できるようになる。
図2に示すように、第1腕部3aの外面における先端部には、アーチ形状の第1保形部材7が取り付けられている。第1保形部材7の取り付け位置は、先に述べた部材5の取り付け位置と表裏の関係にある。なお、部材5よりも第1保形部材7の面積の方が大きくなっている。第1保形部材7の円弧形状は、第1腕部3aの先端部の円弧形状と略同形となっている。また、第1保形部材7の幅は、第1腕部3aにおける自由端部4bの幅よりも若干狭くなっている。第1保形部材7は実質的に非伸縮性であるか又は伸縮性を有したとしても低い伸縮性を有するシート材料から構成されている。
同じく図2に示すように、第1腕部3aの外面においては、第1保形部材7の取り付け位置から所定間隔を置いて第2保形部材8が取り付けられている。第2保形部材8は、第1保形部材7と略対称形になっている。第2保形部材8は、第1保形部材7と同様に、実質的に非伸縮性であるか又は伸縮性を有したとしても低い伸縮性を有するシート材料から構成されている。
図1に示すように、第1腕部3aの内面においては、自由端部4bに縦長のタグ15が取り付けられている。タグ15の取り付け位置は、第2保形部材8の取り付け位置と表裏の関係にある。タグ15はその前後端が第1腕部3aに固定されており、前後端の間が第1腕部3aから離間している。タグ15の役割は、ベルト1を着用者に装着した状態において、第1腕部3の下側に位置する第2腕部3b(図6(c)及び(d)参照)の自由端部4bを、第1腕部3aとタグ15で形成される空間内に通すことで、該自由端部4bが位置ずれを起こすことを防止することにある。
図1及び図2に示すように、第1保形部材7と第2保形部材8との間には、メッシュ状の編地等のシート材料からなる高伸縮領域9が位置している。
図2に示すように、第1腕部3aは、上述した通り、その先端部から収容部2へ向けて配置された第1保形部材7、高伸縮領域9及び第2保形部材8が位置しており、それによって先端部から収容部2へ向けて配置された第1領域11、第2領域12及び第3領域13を有している。第1領域11は第1保形部材7の取り付け位置に対応し、第2領域12は高伸縮領域9に対応し、そして第3領域は第2保形部材8の取り付け位置に対応している。更に、第1腕部3aは、第3領域13と収容部2との間に第4領域14を有している。第4領域14は、基部4aに対応している。
前記の3つの領域11,12,13は、第2領域12の伸縮性が最も高いと共に曲げ剛性値が最も低く、第1領域11及び第3領域13は、第2領域12よりも伸縮性が低いと共に曲げ剛性値が高くなっている。本発明において曲げ剛性値とは、純曲げ試験機(カトーテック株式会社製のKES−FB2)を用いて測定された値をいう。曲げ剛性値は、以下の書籍に記載の方法に従い測定される(以下、曲げ剛性値というときにはこの方法で測定された値をいう)。3つの領域11,12,13をこのように構成する理由については後述する。3つの領域11,12,13の曲げ剛性値は、腕部3a,3bの長手方向を曲げの軸方向と定めて測定される。
川端季雄著、「風合い評価の標準化と解析」、第2版、社団法人日本繊維機会学会 風合い計量と規格化研究委員会、昭和55年7月10日発行
各腕部3a,3bにおいては、収容部寄りに位置する基部4aの剛性と、先端部寄りに位置する自由端部4bの剛性とが異なっている。具体的には、基部4aの剛性の方が、自由端部4bの剛性よりも低くなっている。つまり各腕部3a,3bは、基部4aからなる低剛性領域と、自由端部4bからなる高剛性領域とを有している。低剛性領域は、図3及び図4に示すように、ベルト1を着用者の胴部に巻き付けたときに、着用者の脇腹に当接する位置に形成されている。低剛性領域においては、曲げ剛性値が0.003×10-4〜0.1×10-4Nm2/m、好ましくは0.01×10-4〜0.05×10-4Nm2/mに設定されている。一方、高剛性領域においては、同様の方法によって測定された曲げ剛性値が0.1×10-4〜2.0×10-4Nm2/m、好ましくは0.2×10-4〜1.0×10-4Nm2/mに設定されている。各腕部3a,3bがこのような低剛性領域及び高剛性領域をそれぞれ有することによって、自然な着け心地や良好な着用感を発現させつつ、ベルト1を着用者の身体に巻き付けやすくなる。
低剛性領域の曲げ剛性値が0.1×10-4Nm2/m超となると、当該領域が着用者の身体に密着しづらくなる。また、着用中に違和感が発生しやすくなる。特に低剛性領域は、ベルト1を着用者の身体に巻き付けたときに、着用者の脇腹、とりわけ凹凸の起伏がはげしい腸骨に当接する位置に形成されているので、低剛性領域の剛性の上限値を0.1×10-4Nm2/m以下とすることは、当該領域を着用者の身体に密着させる上で重要となる。一方、低剛性領域の曲げ剛性値の下限については、当該下限値が0.003×10-4Nm2/m未満になると、当該領域の強度が低下しすぎて破れ等が生じるおそれがある。
一方、高剛性領域の曲げ剛性値が0.1×10-4Nm2/m未満では、ベルト1を着用者の身体に巻き付けるときに、当該領域が引き伸ばされる等の変形を起こしやすく、巻き付け作業の操作性が良好でなくなる。曲げ剛性値が2.0×10-4Nm2/m超となると、当該領域が変形しづらくなり、ベルト1の着用状態が安定せず、位置ずれが起こりやすくなる。
低剛性領域及び高剛性領域の曲げ剛性値は、腕部3a,3bの長手方向を曲げの軸方向と定めて測定される。なお、第1腕部3aにおいては、高剛性領域である自由端部4bの剛性が測定箇所によって異なるが、その場合には最も曲げ剛性値が高い部位での当該剛性値をもって、高剛性領域の曲げ剛性値とする。
各腕部3a,3bにおいては、低剛性領域(つまり第1腕部3aでは第4領域14、第2腕部3bでは基部4a)が伸縮性を有していることが好ましい。特に低剛性領域が、腕部3a,3bの延びる方向とそれに直交する方向の双方(図2中、矢印で示す方向)に伸縮性を有していることが好ましい。これによって、低剛性領域が着用者の脇腹、特に腸骨付近に一層密着しやすくなり、ベルト1の着用中に位置ずれが起きることが一層効果的に防止される。この観点から、低剛性領域は、いわゆるツーウエイの伸縮布地から構成されていることが好ましい。伸縮性の程度としては、2.25kg荷重時の伸度が100%〜400%、特に250%±40が好ましい。伸長性については定速伸長引張試験機を用いて測定される。試験片の寸法は25mm×16mmとする。引張速度は30±2mm/min、チャック間距離は100mmとする。
図5には、ベルト1における収容部2の縦断面図が示されている。収容部2は、3枚のシート材21,22,23を縫製して袋状に形成されている。外面側シート材21はベルト1の外面側に位置しており、矩形状をしている。第1肌面側シート材22及び第2肌面側シート材23は、ベルト1の肌面側に位置しており、それぞれ矩形状をしている。両肌面側シート材22,23の横幅は、外面側シート材21と同じになっている。両肌面側シート材22,23の縦の長さは、外面側シート材21の縦の長さよりも短くなっている。第1肌面側シート材22は、その上辺及び両側辺が、外面側シート材21の上辺及び両側辺と縫合されている。第2肌面側シート材23は、その下辺及び両側辺が、外面側シート材21の下辺及び両側辺と縫合されている。第1肌面側シート材22の下部と、第2肌面側シート材23の上部とは重ね合わせの状態になっており、且つ第1肌面側シート材22の下辺22a及び第2肌面側シート材23の上辺23aがそれぞれ自由縁部になっている。これによって収容部2には、その肌面側に、収容部2の幅方向に延びる発熱具挿入部24が形成される。発熱具100は、該挿入部24を通じて収容部2内に収容される。上述した通り、第1肌面側シート材22の下部と、第2肌面側シート材23の上部とは重ね合わせの状態になっているので、収容部2内に一旦収容された状態の発熱具100は収容部2の外へ飛び出しづらくなり、収容部2内に安定に保持される。また、挿入部24の間口が大きく且つ開けやすいので、発熱具100の出し入れが容易である。
本実施形態においては、発熱具挿入部24がベルト1の肌面側に形成されているが、該挿入部をベルト1の外面側に形成してもよい。尤も、挿入部を肌面側に形成することで、縫合によって収容部2を形成することで生じる凹凸、特に第1肌面側シート材22と第2肌面側シート材23との重なりによって生ずる凹凸が、上衣の外から見えづらくなる、即ちアウターに響かなくなるという利点がある。
外面側シート材21は、風合いの良好な布地から構成されていることが好ましい。また外面側シート材21は、十分な通気性を有することが好ましい。更に伸縮性を有することも好ましい。外面側シート材21は、例えばトリコット編みの編地から構成することができる。同様に、第1及び第2肌面側シート材22,23も、風合いの良好な布地から構成されていることが好ましい。また、第1及び第2肌面側シート材22,23は伸縮性を有することも好ましい。発熱具100が水蒸気を発生するタイプのものである場合には、第1及び第2肌面側シート材22,23は十分な水蒸気透過性を有する素材から構成されていることが好ましい。そのような素材としては、例えばメッシュ状の編地が好ましく用いられる。
収容部2の構成材料である外面側シート材21及び第1及び第2肌面側シート材22,23の何れもが伸縮性を有する場合には、収容部2はその全体が伸縮性を発現する。その結果、ベルト1のサイズ適応性が高まるという利点がある。
特に、第1肌面側シート材22及び/又は第2肌面側シート材23が、立体構造に編成された厚手で嵩高の編地から構成されていると、着用者の身体と発熱具100との間に、十分な空間を有する空気層が形成されるので好ましい。この空気層が存在することによって、着用者の身体と発熱具100との間の保温効果が高まるからである。更に、発熱具100として、後述する図8及び図9に示す実施形態のものを用いた場合には、着用者の肌対向面に配置された透湿性フィルム103aを通じての空気の供給路が前記の空気層によって確保されるので、発熱具100が着用者の身体に密着し過ぎることに起因する発熱特性の予期せぬ低下を防止できるという利点もある。そのような編地としては例えばダブルラッセル編みの編地などが挙げられる。その厚みは1〜5mm程度であることが、十分な空気層の形成の点から好ましい。
前記のダブルラッセル編みの編地などを始めとする立体構造に編成された編地は、第1及び第2肌面側シート材22,23とは別材のシート材として、発熱具100と第1及び第2肌面側シート材22,23との間に配されてもよい。
収容部2においては、その左右両側縁の位置に、該収容部2の縦方向の長さにわたって板状部材16,16が取り付けられている。板状部材16は、収容部2に適度な剛性を付与して、収容部2内に収容された発熱具の着用者へのフィット性を高めるために用いられる。従って、板状部材16は適度な剛性を有すると共に可撓性を有することも好ましい。これらの観点から、板状部材16は例えば熱可塑性樹脂等の樹脂板や金属製のコイルボーン等から構成されていることが好ましい。板状部材16が樹脂板から構成される場合、その厚さは0.4〜2mm程度、幅は4〜15mm程度であることが好ましい。
図6(a)〜(e)には、ベルト1を着用者の胴部に装着する操作が順次示されている。図6(a)〜(e)に示す操作は、図3に示すように、発熱具100が着用者の腰部に位置するようにベルト1を装着するための操作である。先ず、図6(a)に示すように、左右の手でベルト1の各腕部3a,3bの先端部を把持し、着用者の背側においてベルト1の肌面を着用者の肌に臨ませる。そして、発熱具100が着用者の腰部に位置するようにベルト1の位置を調整する。次に図6(b)に示すように、各腕部3a,3bを適度に引き伸ばす。これによって各腕部3a,3bにおける基部4aが主として引き伸ばされる。次に図6(c)に示すように、第2腕部3bを引き伸ばした状態で、これを腹部に当てる。このとき、第2腕部3bの基部4aが引き伸ばされた状態で、着用者の脇腹に当接するようにする。第2腕部3bを腹部に当てた状態では、第2腕部3bの外面側が外を向いている。即ち、第2腕部3bに取り付けられているメカニカルファスナのループ部材又はフック部材6が外を向いた状態となる。この状態を保ちつつ、図6(d)に示すように、引き伸ばされた状態の第1腕部3aを、第2腕部3bの上に重ね合わせる。第1腕部3aの先端には、メカニカルファスナのフック部材(部材6がループ部材の場合)又はループ部材(部材6がフック部材の場合)5が取り付けられているので、第2腕部3bの上に第1腕部3aを重ね合わせると、両部材5,6が係合して両腕部3a,3bの重ね合わせ状態が保持される。このとき、第2腕部3bの自由端部4bを、第1腕部3aに取り付けられたタグ15(図1参照)と第1腕部3aとで形成される空間内に通す。部材6は、第2腕部3bにおける自由端部4bのほぼ全長にわたって配されているので、着用者の胴回り寸法に応じて、部材5の部材6への係合位置を自由に調整できる。つまり、ベルト1はサイズ適応性が高いものとなっている。第1腕部3aを第2腕部3bの上に重ね合わせる場合には、第1腕部3aの基部4aが引き伸ばされた状態で、着用者の脇腹に当接するようにする。最後に、図6(e)に示すように、ベルト1に浮きやヨレがないように、ベルト全体の固定位置を微調整する。
先に述べた通り、各腕部3a,3bは、ベルト1の長手方向に延びる水平線Hに対して角度θの方向に向けてそれぞれ上方に傾斜している。その結果、図6(e)に示す着用状態では、各腕部3a,3bが腰部のくびれに沿うようになり、脇腹から腹部にかけて各腕部が3a,3bが水平に巻き付く。その結果、ベルト1と着用者の身体とが一層良好に密着するようになり、隙間が生じにくくなる。各腕部が傾斜しておらず水平に延びている場合には、ベルトの着用状態において、各腕部が着用者の脇腹から腹部へ向かって下方に傾斜してしまう。ベルト1と着用者の身体とを一層良好に密着させる観点から、各腕部3a,3bの傾斜角は14〜34度、特に19〜29度であることが好ましい。
また、先に述べた通り、各腕部3a,3bにおける基部4aの下辺41は内側にやや括れた湾曲形状になっている。その結果、図6(e)に示す着用状態では、下辺41は足の付け根と干渉しにくくなり、着用者の動作に起因するベルト1の位置ずれが起こりにくくなる。
図3に示す装着状態及び図6(a)〜(e)に示す装着操作から明らかなように、両腕部3a,3bは、着用者の腹部上で重なり合って固定される。両腕部3a,3bの重なり位置には、剛性が比較的高い材料であるメカニカルファスナのフック部材及びループ部材5,6が存在しているので、当該位置においては、両腕部3a,3bが着用者の身体に密着しづらく、身体から離間しやすい。つまり浮きが生じやすい。浮きが生じると、ベルト1の着用中に位置ずれが起こりやすくなる。そこでベルト1においては、第1腕部3aの構造に工夫を施している。その工夫が、先に述べた第1領域ないし第3領域11,12,13の形成である。特に、第2領域12の形成が重要である。これに関して以下に詳述する。
先に述べた通り、3つの領域11,12,13は、第2領域12の伸縮性が最も高いと共に曲げ剛性値が最も低く、第1領域11及び第3領域13は、第2領域12よりも伸縮性が低いと共に曲げ剛性値が高くなっている。このような領域を有する第1腕部3aを第2腕部3b上に重ね合わせた状態が図7(a)に示されている。図7(a)は図6(e)における要部拡大図である。第1領域11は伸縮性が低く且つ曲げ剛性値が高い領域である。つまり引っ張り等の外力に抗して変形しづらい領域である。このことは、第1領域11に取り付けられている低伸縮性で且つ高曲げ剛性値の材料である第1保形部材7に起因している。従って第1領域は、第1腕部3aを第2腕部3b上に重ね合わせるときの把持部として有用である。第3領域13は、第1領域と同様に、伸縮性が低く且つ曲げ剛性値が高く、外力に抗して変形しづらい領域である。しかし、第3領域13は、第1腕部3aの先端に位置していないので、第1領域11と異なり把持部としては機能しづらい。第3領域13の機能は、第1腕部3aを引き伸ばしたときに、その引き伸ばしによって該腕部3aが変形して紐状にならないようにすることにある。このことは、第3領域13に取り付けられている低伸縮性で且つ高曲げ剛性値の材料である第2保形部材8に起因している。
第1領域11及び第3領域13の各機能に鑑みると、第1領域11においては、その横幅/縦の長さの比を0.5〜2.0、特に1.0〜1.5とすることが好ましい。第3領域13に関しては、その横幅/縦の長さの比を0.5〜2.0、特に1.0〜1.5とすることが好ましい。また、腕部の全長(4a+4b)に対する第1領域11の横幅は15〜35%、特に20〜30%とすることが好ましい。腕部の全長に対する第3領域13の横幅は15〜35%、特に20〜30%とすることが好ましい。
これらの領域11,13と異なり、第2領域12は、伸縮性が高いと共に曲げ剛性値が低くなっている。従って、第1腕部3aの引き伸ばしによって第2領域12は容易に変形する。そして、変形した状態下に、第2領域12は第2腕部3b上に重ね合わされる。その状態を図7(b)に模式的に示す。両腕部3a,3bが重ね合わされた状態においては、第2領域12は、第2腕部3bの先端部付近に位置する。その結果、剛性が比較的高く、浮きが生じやすい第2腕部3bが、伸縮性を有し容易に変形可能な第2領域12によって上から押さえ込まれ、第2領域12と共に第2腕部3bが着用者の身体に密着するようになる。その結果、両腕部3a,3bが着用者の身体から離間することが効果的に防止される。また、第2領域12は、伸縮性が高いと共に曲げ剛性値が低いことから、比較的薄手の布地から構成される。その結果、両腕部3a,3bの重ね合わせに起因する嵩高さが軽減される。
第2領域12による浮きの防止を効果的に発現させるためには、当該領域12は、引き伸ばしによって著しく変形して紐状になってはならない。その観点から、第2領域12は縦の長さに対して横幅が大きすぎないことが好ましい。特に、第2領域12は、横幅/縦の長さの比が0.2〜1.5、特に0.5〜1.0であることが好ましい。当該比率がこの範囲内であると、第2領域12の著しい変形が、剛性の高い領域である第1領域11及び第3領域13によって規制されて、第2領域12が紐状になりにくくなる。
以上の点を勘案すると、第2領域12の曲げ剛性値は0.003×10-4〜0.1×10-4Nm2/m、特に0.02×10-4〜0.06×10-4Nm2/mであることが好ましい。第2領域12の伸長性は、2.25kg荷重時の伸度が100%〜300%、特に180%±20が好ましい。第2領域12の伸長性は、腕部の長手方向に関して測定される。
一方、第1領域11及び第3領域13の曲げ剛性値は、0.1×10-4〜2.0×10-4Nm2/m、特に0.2×10-4×10-4〜1.0×10-4Nm2/mであることが好ましい。この場合、領域11,13の曲げ剛性値は同じでもよく、或いは異なっていてもよい。また、領域11,13の曲げ剛性値は、第2領域12の曲げ剛性値よりも大きければ、両者の大小関係に特に制限はない。第1領域11及び第3領域13の伸縮性に関しては、100%伸長させる前に材料破壊を起こす程度に非伸縮性又は低伸縮性であることが好ましい。第1領域11及び第3領域13の伸縮性は、腕部の長手方向に関して測定される。この伸縮性は、腕部の長手方向に関して測定される。
ベルト1の収容部2に収容される発熱具100の種類に特に制限はない。例えば鉄粉等の被酸化性金属の粉末を含む一般の使い捨てカイロを収容部2に収容して用いることができる。特に好ましくは、水蒸気の発生が長時間持続可能な発熱具がベルト1の収容部2に収容されてなる蒸気温熱付与具の形態で用いる。そのような発熱具100としては、例えば図8及び図9に示す構造のものが好適に挙げられる。
図8及び図9に示す発熱具100は、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させてなり、且つ空気との接触により発熱可能な発熱シートと、少なくとも一部が通気性を有し且つ該発熱シートを収容する収容体とを備え、該収容体を通じて温熱スチームが外部に放出されるものであり、
前記成形シートは、60〜85重量%の被酸化性金属、5〜25重量%の反応促進剤、5〜35重量%の繊維状物を含み、
前記発熱シートには、前記成形シート100重量部に対して、1〜15重量%の電解質を含む前記電解質水溶液が40〜80重量部添加されており、
前記収容体のうち、通気性を有する部分の透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH)が300〜 2000g/m2・24hrである。
図8及び図9に示す発熱具100は扁平な矩形状であり、シート状の発熱材料としての発熱シート102及び該発熱シート102を収容する収容体103を備えている。発熱シート102は繊維シートから構成されており、収容体103よりも一回り小さく形成されている。収容体103は扁平な袋状のものであり、複数のシート材の周縁を貼り合わせて、内部が空洞の袋状となされている。収容体103は少なくともその一部が透湿性を有する通気性部位となっている。
以下の説明においては、深部温度を0.3℃以上上昇させ得るスチームのことを温熱スチームという。深部温度とは、表皮から深さ10mmの組織温度に相当する温度と考えられる。深部温度の上昇が0.2℃以下では、指先の表面温度上昇が顕著に確認されないのに対し、深部温度の上昇が0.3℃以上となると、指先の表面温度上昇または維持が確認される。また、指先温まりと全身の温まり実感に関しても、深部温度の上昇が0.2℃以下では実感されないが、深部温度の上昇が0.3℃以上となると顕著に実感される。皮膚表面温度とは、接触型温度計、例えば熱電対によって測定された皮膚表面の温度をいう。
発熱シート102は、空気との接触により発熱可能なものである。この目的のために、発熱シート102は被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物、電解質及び水を含んでいる。発熱シート102が空気と接触すると、該シート102に含まれている被酸化性金属の酸化反応が起こり、熱が発生する。この熱によって発熱シート102に含まれている水が加熱されて所定温度の水蒸気となり、収容体103を通じて外部へ放出される。水蒸気は、収容体103のうち通気性部位から外部へ放出される。
発熱具100は、水蒸気の発生を伴う熱を人体に与えるために用いられる。発熱具100は、水蒸気発生の持続時間が長いことによって特徴付けられるものである。このような特徴を有する発熱具100は、これを人体の腰部や腹部、肩等に適用してこれらの部位を温めることで、全身の血行が促進され、末梢温度が上昇することが判明した。また加温をやめた後も数十分に亘り温度の上昇が持続することが判明した。これとは対照的に、水蒸気の発生量の少ない一般の使い捨てカイロで同部位を同温度条件で温めても前記の効果は観察されない。この理由を本発明者らが検討したところ、水蒸気の発生を伴う熱は熱伝導性が高く、人体の深部の温度を高め得ることが判明した。人体の深部の温度が高くなることで、温熱中枢が刺激され、それによって血管が拡張して血流が増加し、また末梢温度が上昇すると推定される。従って発熱具100は、これを適用した人体の部位の温度上昇や血行の改善のみならず、体全体の血行の改善や、指先等の末梢温度の上昇、冷え性の改善に効果的である。
以上の効果を顕著なものとするため、発熱具100は、皮膚表面温度が38℃以上となる温熱スチームの放出が3時間以上、好ましくは5時間以上維持され且つ発熱具100が空気と接触してから90分後の温熱スチームの積算放出量が2.2mg/cm2以上、好ましくは2.2mg/cm2〜7.0mg/cm2、更に好ましくは2.5mg/cm2〜7.0mg/cm2であるようになされている(以下これを温熱スチーム放出特性という)。
水蒸気放出特性における水蒸気の積算放出量は次の方法で測定される。
温度20℃、湿度40%RHとした容積54000cm3(縦30cmx横50cmx奥行き36cm)の密閉系内に、その内部に水蒸気が蒸散可能なように発熱具100を静置して発熱させる。そして、前記密閉系内の空気の湿度を湿度計で測定し、発熱開始後に発生する水蒸気の量を求める。そして90分後の積算値を積算放出量とする。
先に述べた通り、発熱シート102は、被酸化性金属、反応促進剤、繊維状物及び電解質を含み且つ含水状態となっている。具体的には、本実施形態の発熱シート102は、被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物を含有する成形シートに、電解質水溶液を含有させて構成されている。本発明者らが検討したところ、これらの各種材料のうち、前述した発熱具100の温熱スチーム放出特性に大きく影響する材料は、成形シートに含まれる被酸化性金属、反応促進剤及び繊維状物であることが判明した。詳細には、成形シートに含まれる被酸化性金属の量が好ましくは60〜85重量%、更に好ましくは70〜80重量%、反応促進剤の量が好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは8〜15重量%、繊維状物の量が好ましくは5〜35重量%、更に好ましくは10〜20重量%であることが重要である。これらの材料の量が前述の範囲にあると、所望の温熱スチーム特性及び温度持続時間が期待できる。成形シートは好適には抄造によって得られるため、抄造工程における乾燥工程後の状態で5重量%以下の水分を含有するものである。
被酸化性金属に対する反応促進剤及び繊維状物それぞれの重量比も発熱具100の温熱スチーム放出特性に影響する。具体的には、発熱シート102において、被酸化性金属に対する反応促進剤の重量比は好ましくは0.1〜0.3であり、更に好ましくは0.11〜0.25である。また被酸化性金属に対する繊維状物の重量比は好ましくは0.1〜0.3であり、更に好ましくは0.12〜0.29である。これらの範囲内であれば、所望の皮膚表面温度を38℃以上に向上させ且つ所望の蒸気発生量を得ることが容易であり、発熱具100を収容したピロー袋を開封した後、目的とする温度への到達時間が短く、適度な湿熱を3時間以上提供することが容易となる。
発熱具100の温熱スチーム放出特性に影響する他の重要な要因としては、発熱シート102における電解質水溶液の濃度及び電解質水溶液の添加量が挙げられる。詳細には、発熱シート102における電解質水溶液の濃度は好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは2〜10重量%である。また電解質水溶液は、成形シート100重量部に対して好ましくは40〜80重量部、更に好ましくは50〜70重量部添加される。
発熱具100の温熱スチーム放出特性に影響する他の大きな要因として、収容体103の透湿度(JIS Z0208、40℃、90%RH、以下透湿度というときにはこの方法で測定された値をいう)が挙げられる。発熱シート102として前述の各成分を前述の配合量で含有したものを用い、且つ収容体103として以下に述べる透湿度を有するものを用いることで、発熱具100の温熱スチーム放出特性を所望のものとすることができる。詳細には、収容体103のうち、通気性を有する部分の透湿度を好ましくは300〜2000g/m2・24hr、更に好ましくは600〜1000g/m2・24hrとしている。
適切な温度制御及び所望とする温度での持続時間を得る観点から、収容体103はその通気度(JIS P8117、以下通気度というときにはこの方法で測定された値をいう)が8000〜15000s/100cm3であることが好ましく、9000〜12000s/100cm3であることが更に好ましい。
図8及び図9に示すように、発熱具100においては、収容体103は、透湿性フィルム103aと難透湿性フィルム103bとの周縁が互いに接合されて扁平な袋状に形成されている。つまり収容体103の一方の側が透湿性フィルム103aを有しており、他方の側が難透湿性フィルム103bを有している。透湿性フィルム103aは、発熱シート102から発生した温熱スチームを通過させる。しかし難透湿性フィルム103bは温熱スチームを通過させにくい。つまり温熱スチームは収容体103の一方の側、即ち透湿性フィルム103aの側からのみ外部へ放出される。透湿性フィルム103aの透湿度及び通気度は、前述した範囲となっている。これによって発熱具100はその温熱スチーム放出特性が前述した所望のものとなる。
透湿性フィルム103aとしては、温熱スチームは透過させるが水は透過させにくいフィルムが用いられる。そのようなフィルムとしては、例えば微細孔を有するポリオレフィン系フィルムなどが挙げられる。このようなフィルムは例えば使い捨ておむつや生理用ナプキンなどのサニタリー製品における透湿性バックシートとして良く知られたものである。なお前述した通り温熱スチームは透湿性フィルム103aを通じて外部へ放出されることから、発熱具100は、透湿性フィルム3aの側が人体と対向するようにベルト1の収容部2内に収容される。そこで装着感を高める観点から、図8及び図9に示すように、透湿性フィルム310aの外面には風合いの良好なシート材料である不織布103cが配されている。
一方、難透湿性フィルム103bとしては、温熱スチームも水も透過させにくいフィルム、例えば微細孔を有しないポリオレフィン系フィルムやポリエステル系フィルムなどが用いられる。なお図9に示すように、難透湿フィルム103bの外面には、不織布103dがラミネートされている。これによって発熱具100の風合いが一層良好になる。
発熱シート102に含まれる各材料の詳細について説明すると、被酸化性金属としては例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の粉末や繊維が挙げられる。これらの中でも取り扱い性、安全性、製造コストの点から鉄粉が好ましく用いられる。被酸化性金属が粉末である場合その粒径は0.1〜300μmであることが、繊維状物への定着性、反応のコントロールが良好なことから好ましい。同様の理由により、粒径が0.1〜150μmものを50重量%以上含有するものを用いることも好ましい。
反応促進剤としては、水分保持剤として作用する他に、被酸化性金属への酸素保持/供給剤としての機能も有しているものを用いることが好ましい。例えば活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ等が挙げられる。これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。反応促進剤の粒径は0.1〜500μmであることが、被酸化性金属と効果的に接触し得る点から好ましい。同様の理由により、0.1〜200μmのものを50重量%以上含有するものを用いることも好ましい。
繊維状物としては、天然又は合成の繊維状物を特に制限無く用いることができる。天然繊維状物としては、例えばコットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等の植物繊維が挙げられる。また羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等の動物繊維が挙げられる。更に、石綿等の鉱物繊維が挙げられる。一方、合成繊維状物としては、例えばレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ、ビスコースレーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等の半合成繊維が挙げられる。またナイロン、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等の合成高分子繊維が挙げられる。更に金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等を用いることもできる。また、これらの繊維の回収再利用品を用いることもできる。これらの中でも、被酸化性金属や反応促進剤との定着性、発熱シート102の柔軟性、酸素透過性、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットン、ポリエステルが好ましく用いられる。繊維状物はその平均繊維長が0.1〜50mm、特に0.2〜20mmであることが、発熱シート102の強度確保及び繊維状物の水分散性の点から好ましい。
繊維状物は、そのCSF(カナダ標準濾水試験方法 JIS P8121)が、600ml以下であることが好ましく、450ml以下であることがより好ましい。これによって、繊維状物と被酸化性金属との定着性が良好になり、発熱シート102の発熱性を良好にすることができる。また、後述する裂断長を後述する範囲内に調整することが容易となり、その結果、発熱シート102からの被酸化性金属の脱落や、発熱シート102の機械的強度を適度に維持することができる。繊維状物のCSFは低い程好ましい。しかし通常のパルプ繊維のみを繊維状物として用い、これを原料として抄造を行うと、繊維状物以外の成分比率が低い場合、CSFが100ml未満であると濾水性が悪くなる傾向にあり、脱水が困難となって均一な厚みの発熱シートが得られないことがある。また、乾燥時にブリスター破れが生じたりする等の成形不良が生じることがある。これに対して発熱シート102においては、繊維状物以外の成分比率が比較的高いことから、濾水性も良好で均一な厚みの発熱シート102を得ることができる。また、CSFが低い程フィブリルが多くなるため、繊維状物と該繊維状物以外の成分との定着性が良好となり、高いシート強度を得ることができる。繊維状物のCSFの調整は、叩解処理などによって行うことができる。CSFの低い繊維と高い繊維とを混ぜ合わせ、CSFの調整を行っても良い。
電解質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点からアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物が好ましく用いられ、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄が好ましく用いられる。
発熱シート102には、必要に応じ凝集剤、サイズ剤、着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、増粘剤、pHコントロール剤、嵩高剤等、抄紙の際に通常用いられる添加物を特に制限無く添加することもできる。
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においてはベルト1を着用者の胴部に巻き付けて使用したが、これに代えて腕部や脚部などベルト1を巻き付けられる身体の部位であれば特に制限無くベルト1を適用することができる。
また、前記実施形態においては、第1腕部3a及び第2腕部3bの双方における低剛性領域と高剛性領域とが、先に述べた範囲の曲げ剛性値を有しているが、これに代えて第1腕部3a及び第2腕部3bの一方のみが斯かる曲げ剛性値を有していてもよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
図1、図2及び図5に示す構造のベルト1を作製した。第1腕部3aにおいては、肌面の先端部に面ファスナのフック部材を用いた。外面における第1保形部材7及び第2保形部材8としては、面ファスナのループ部材を用いた。第1保形部材7と第2保形部材8との間の高伸縮領域9としては、メッシュ状の編地を用いた。基部4aとしては、ツーウエイに伸縮可能な編地を用いた。
一方、第2腕部3bにおいては、外面の自由端部4bに面ファスナのループ部材を用いた。基部4bとしては、第1腕部3aと同様のツーウエイに伸縮可能な編地を用いた。
収容部2においては、外面側シート材21としてトリコット編みの編地を用いた。また、第1肌面側シート材22及び第2肌面側シート材23としてメッシュ状の編地を用いた。
これらの材料を組み合わせて縫製し、目的とするベルト1を作製した。ベルト1における各腕部3a,3bは、ベルト1の長手方向に延びる水平線Hに対して、24度の方向に向けてそれぞれ上方に傾斜していた。第1腕部3aにおける第1領域11の横幅/縦の長さの比は1.2であった。第2領域12の横幅/縦の長さの比は0.6であった。第3領域13の横幅/縦の長さの比は1.2であった。また、腕部の全長に対する第1領域11の横幅は25%、第3領域13の横幅は25%であった。また、腕部の全長に対する、第2領域12の横幅は15%であった。
ベルト1においては、基部4a(低剛性領域)の曲げ剛性値が0.0179×10-4Nm2/m、自由端部4b(高剛性領域)の曲げ剛性値が0.38×10-4Nm2/mであった。基部4a(低剛性領域)の伸長性は、腕部の長手方向で250%±40であった。長手方向と直交する方向での伸長性は125%±20であった。
また、第1腕部3aにおいては、第1領域11の曲げ剛性値が0.38×10-4Nm2/mであった。伸縮性に関しては、100%伸長させる前に材料破壊してしまった。第2領域12の曲げ剛性値は0.038×10-4Nm2/mであり、伸長性は180%±20であった。第3領域13の曲げ剛性値は0.38×10-4Nm2/mであった。伸縮性に関しては、100%伸長させる前に材料破壊してしまった。
次に、ベルト1に収容される発熱具100を製造した。
<スラリーの配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」、160g
・繊維状物:パルプ繊維(NBKP、スキーナ(株)製、商品名「スキーナ」、平均繊維長さ=2.1mm)、20g
・反応促進剤:活性炭、武田薬品(株)製、商品名「カルボラフィン」)、20g
・凝集剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業薬品(株)製、商品名「セロゲン」WS−C)0.5g、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(日本PMC(株)製、商品名「WS547」)0.5g
・水:工業用水、99800g
<抄紙条件>
前記スラリーを用い、傾斜型短網小型抄紙機(高知県紙産業技術センター所有)によって、ライン速度7m/分で抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
<脱水・乾燥条件>
フェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま120℃の加熱ロール間にライン速度7m/分で通し、含水率が5重量%以下になるまで乾燥して成形シートを得た。成形シートの厚みを表1に示す。
<電解質水溶液添加条件>
得られた成形シートを4枚重ね合わせてから、下記電解質水溶液をスプレー塗布して含浸させて含水率が39%の発熱シートを作製した。発熱シートにおける各成分の配合割合を表1に示す。
<電解液>
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5重量%
<収容体への収容>
炭酸カルシウムを含有するポリエチレン製の透湿性フィルム3a(透湿度800g/m2・24hr、通気度10000s/100cm3)、線状低密度ポリエチレン製の難透湿性フィルム3b及びエアスルー不織布3c,3dを用いて図8及び図9に示す袋状の収容体を作製した。この中に含水発熱シートを収容して、図8及び図9に示す発熱具100を得た。
〔比較例1〕
実施例1において第1腕部3aに第2領域12及び第3領域13を形成せず、基部4aからの低剛性領域の延長部分となして、高伸縮で且つ低剛性とした。これら以外は実施例1と同様にしてベルトを得た。
<性能評価>
上述のようにして得られた発熱具100を実施例及び比較例のベルトに収容し、図6(a)〜(e)に示す手順で30人のパネラーに装着させた。そして、パネラーにベルトの全体的な使いやすさ、装着のし易さ、及び身体へのフィット性を評価させた。その結果を表2示す。
表2に示す結果から明らかなように、実施例1において約8割の人が「使いやすい」と評価し、7割の人が「フィット性」が良いと答えた。比較例1では、「帯が腹部に食い込む」「お腹の帯の収まりが悪い」「フィットしない」等の声があり評価が悪かった。
上記の評価とは別に、発熱具100について、温熱スチームの最高到達温度、40℃の温熱スチームの放出持続時間及び空気との接触から90分経過後までの温熱スチームの積算放出量を測定した。ここでの最高到達温度は、JIS S4100にて測定した。最高到達温度とは、JIS法にて測定し、最高点に到達した温度の値を言う。最高到達温度が、38℃未満であるような低い温度では深部温度が上昇せず、体全体の温まりもない。一方60℃以上であると熱すぎて使用できない。また、発熱具100をベルト1に収容してパネラーに装着させ、腰部の深部温度を以下の方法で測定した。更に、以下の方法で体全体温まり割合を求めた。これらの結果を表3に示す。
<深部温度の測定>
20℃、40%RHの環境下にて、発熱具100を装着する部分の腰部付近(発熱具100の適用部位の上部)に深部温度計(コアテンプCM−210、深部温プローブPD1、テルモ株式会社製)を装着した。あらかじめ、発熱具100の装着前に深部温度計を装着し、深部温度が安定になることを確認した後、発熱具100を60分間適用し、深部温度測定を実施した。深部温プローブPD1を用いて測定される深部温度とは、表皮から深さ10mmの組織温度に相当する温度と考えられる。発熱具100の適用前の深部温度をA、測定中の深部最高温度をBとして、B―Aを深部上昇温度と定義した。
<体全体温まり割合>
20℃、40%RHの環境下にて、10名のパネラーに発熱具100を60分間適用し、適用中に体全体が温まる実感を「温まる、温まらない」で聞き取り、その割合を求めた。
表3に示す結果から明らかなように、発熱具100は、最高到達温度が40℃以上であり、40℃の湿熱スチームの放出持続時間が3時間以上と長いものであることが判る。