JP4693473B2 - 射出成形機 - Google Patents

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本発明は、射出成形機に関する。
射出成形機は、樹脂を溶融混練して金型に射出する射出成形部と、この射出成形部に対して金型を離型可能に固定保持し得る型締め機構部とを基本的な構成として具えている。例えば、特許文献1や特許文献2には射出成形部の射出シリンダが前進することで、型締め機構部側に取り付けられる金型に対し、射出シリンダの先端に取り付けられた射出ノズルが樹脂圧力に打ち勝って押し当たり、ノズルタッチ状態となる射出成形機が開示されている。この射出シリンダの前後進を行う駆動装置として、モータ,プーリ,ベルトなどを用いる電動式のものと、油圧シリンダ,ポンプ,配管などを用いる油圧式のものとが知られている。
特開平9−277306号公報 特開2000−167875号公報
特許文献1や特許文献2に開示された従来の射出成形機においては、射出シリンダの先端に取り付けられた射出ノズルが溶融樹脂を射出すべく比較的高温に保持されるのに対し、樹脂の成形キャビティが形成された金型は樹脂の硬化を促進するために比較的低温に保持される。このため、射出ノズルとこの射出ノズルが押し当たる金型との間で所定の温度差を形成する必要があるが、これらの接触に伴う熱伝導によって成形作業が不安定となる。また、必要以上に射出ノズルを加熱することによるドローリング(洟垂れ)などの問題が生ずる。
一方、射出シリンダの前後進を行う従来の駆動装置は、その構造が複雑である上にトン単位の大きな駆動力を発生させる必要があるため、そのための部品コストが嵩んでしまう原因となっている。しかも、ノズルタッチ状態において、射出ノズルと金型との接触部分に非常に大きな加圧応力が発生し、射出ノズルの先端部の撓み変形によって樹脂漏れが引き起こされてしまう場合があった。
本発明の目的は、ノズルタッチ状態において射出ノズルからの熱伝導を極力抑制することができ、しかも射出ノズルの先端部の撓み変形による樹脂漏れを回避し得る射出成形機を提供することにある。
本発明による射出成形機は、射出シリンダの先端部に連結されるノズルヘッドと、このノズルヘッドと一体に設けられ、外周が先細りのテーパ面となって当該ノズルヘッドから突出するノズルチップと、このノズルチップに形成され、基端が前記ノズルヘッドの溶融樹脂の通路に連通すると共に末端が当該ノズルチップの先端面に開口するゲートと、前記射出シリンダの基端部を支持する支持部材に固定プラテンを介して取り付けられるチップホルダと、前記ノズルチップのテーパ面を囲むように前記チップホルダに形成され、前記ノズルチップとの相対変位により内周面が前記ノズルチップのテーパ面の全周に亙って線接触状態となるように緊密に当接し得るシール穴とを具え、前記シール穴は、前記ノズルチップのテーパ面と同じ向きのテーパ面をその内周に有し、そのテーパ角が前記ノズルチップのテーパ面のテーパ角よりも小さく設定されていることを特徴とするものである。
本発明においては、射出成形時に固定プラテンおよびノズルチップの先端面が金型に押し当てられ、この状態にて射出シリンダ側からノズルヘッドを介して供給される溶融樹脂をノズルチップの先端面のゲートから金型キャビティへと射出する。この時、ノズルチップはチップホルダに形成されたシール穴に差し込まれた状態で位置決めされている。この射出成形時においては、ノズルチップとチップホルダとが相対変位し、チップホルダのシール穴がノズルチップのテーパ面の全周に亙って緊密に当接して線接触状態となり、これらの隙間が確実にシールされる。
本発明による射出成形機において、相対変位がノズルチップの熱膨張によってもたらされるものであってよい。この場合、ノズルチップの熱膨張がその半径方向および/またはその中心軸線と平行な方向に起こることとなる。あるいは、上述した相対変位が射出成形圧力によるチップホルダの弾性変形によってもたらされるものであってよい。
射出シリンダは、チップホルダからノズルチップが離れる方向に所定量だけ変位可能に支持部材に支持されているものであってよい。
本発明の射出成形機によると、射出シリンダの先端部に連結されるノズルヘッドと、このノズルヘッドと一体に設けられ、外周が先細りのテーパ面となって当該ノズルヘッドから突出するノズルチップと、このノズルチップに形成され、基端がノズルヘッドの溶融樹脂の通路に連通すると共に末端が当該ノズルチップの先端面に開口するゲートと、射出シリンダの基端部を支持する支持部材に固定プラテンを介して取り付けられるチップホルダと、ノズルチップのテーパ面を囲むようにチップホルダに形成され、ノズルチップとの相対変位により内周面がノズルチップのテーパ面の全周に亙って緊密に当接し得るシール穴とを具えているので、射出成形時にチップホルダのシール穴をノズルチップのテーパ面の全周に亙って線接触状態となるように緊密に当接させ、これらの隙間を確実にシールして溶融樹脂の漏洩を未然に防止することができる。
また、シール穴がノズルチップのテーパ面と同じ向きのテーパ面をその内周に有し、そのテーパ角がノズルチップのテーパ面のテーパ角よりも小さく設定されているので、チップホルダのシール穴に対してノズルチップのテーパ面が線接触状態となり、ノズルチップからチップホルダ側への熱伝導を最小限に抑えることができる。
本発明による射出成形機をプランジャ射出方式の竪型成形機に応用した実施形態について、図1〜図7を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限らず、これらをさらに組み合わせたり、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の技術にも当然応用することができる。
本実施形態の外観を図1に示し、その主要部の断面構造を図2に示し、その射出ノズルの部分を図3に拡大して示す。すなわち、本実施形態による射出成形機は、図1に示す射出成形部10と、固定プラテン11を含む図示しない型締め機構部とを具えており、この型締め機構部は従来から周知のものを適宜採用することができる。
本実施形態における射出成形部10は、溶融樹脂を吐出するゲート12が先端面に開口する射出ノズル13と、この射出ノズル13内に介在する溶融樹脂を所定温度に加熱保温するためのリングヒータ14と、射出ノズル13が先端に取り付けられた射出シリンダ15と、この射出シリンダ15内に樹脂ペレットを供給するための後述する樹脂供給手段と、射出シリンダ15内に供給された樹脂を加熱溶融させるためのバンドヒータ16と、射出シリンダ15内の溶融樹脂を混練するためのトーピード17と、射出シリンダ15内の溶融樹脂を射出ノズル13側に押し出すプランジャ18と、このプランジャ18を前後進、つまり図1中上下方向に往復移動させるための後述するプランジャ駆動手段とを具えている。
上述した型締め機構部の一部を構成する固定プラテン11には、ノズル収容穴19が形成され、その一方の開口端側(図1中、上側)に射出シリンダ15の先端が嵌合支持される。このノズル収容穴19の他方の開口端側には、中央部に射出ノズル13の後述するノズルチップ20が嵌合するシール穴21を形成したチップホルダ22が一体的に固定されている。このチップホルダ22は、シール穴21に向けてその肉厚が漸減する円錐状のテーパ斜面23をノズル収容穴19側に臨ませており、金型24側を向く端面は、固定プラテン11の端面と同一平面状をなすように固定プラテン11に嵌め込まれた状態となっている。本実施形態におけるシール穴21は、その内径が軸線方向に沿って均一に設定されている。
下端部が固定プラテン11のノズル収容穴19の開口端に嵌合支持される射出シリンダ15の上部は、摺動貫通部25となって樹脂供給手段の一部を構成するジャケット26を貫通し、その上端部に形成された雄ねじ部27に調整ナット28と固定ナット29とがねじ込まれ、ジャケット26に対して連結された状態となっている。ジャケット26は、支持用スペーサ30を介して固定プラテン11に対して一体的に連結されており、このジャケット26を挟んでこれら一対のナット28,29と反対側には、射出シリンダ15を固定プラテン11側に付勢してノズルタッチ力をもたらすばね力を持ったばね座金の如き環状の板ばね31が組み込まれている。つまり、射出シリンダ15は板ばね31のばね力に抗して固定プラテン11から離れる方向(図2中、上方)に変位し得るようになっている。ジャケット26内に位置する射出シリンダ15の摺動貫通部25には、ジャケット26に形成された樹脂導入通路32に連通する樹脂供給孔33が形成されている。樹脂は、ジャケット26に連結された図示しないホッパから樹脂供給通路34を介して樹脂導入通路32内に流下し、この樹脂導入通路32内に先端部が摺動自在に嵌合された図示しないプランジャによって樹脂供給孔33から射出シリンダ15内に投入されるようになっている。つまり、射出シリンダ15の樹脂供給孔33,ジャケット26の樹脂導入通路32,樹脂供給通路34,図示しないホッパ,図示しないプランジャなどが上述した樹脂供給手段を構成しているが、この樹脂供給手段が本実施形態にのみ限定されるものでないことに注意されたい。
射出シリンダ15に対して先端部が摺動自在に嵌合するプランジャ18の基端部には、ボールねじ軸35が一体的に連結されており、このボールねじ軸35の先端部、つまりプランジャ18の基端部は、連結用スペーサ36を介してジャケット26に連結された案内板37により摺動回転自在に支持されている。ボールねじ軸35は、案内用スペーサ38を介して案内板37に連結された軸受ホルダ39に取り付けられたボールナット40に螺合し、軸受ホルダ39を貫通するその末端部に従動スプロケット41が固定されている。軸受ホルダ39にはブラケット42を介して減速機43も取り付けられており、この減速機43の出力軸44に取り付けられた駆動スプロケット45と先の従動スプロケット41とには無端の歯付きベルト46が巻き掛けられている。減速機43は、周知の張力調整機構47によりブラケット42に対して軸受ホルダ39との対向方向に位置調整可能であり、歯付きベルト46の張力を適切に設定することができる。この減速機43の図示しない入力軸には、ボールねじ軸35を介してプランジャ18を駆動するためのプランジャ駆動モータ48が連結されている。つまりプランジャ駆動モータ48,減速機43,歯付きベルト46,ボールねじ軸35,ボールナット40などが上述したプランジャ駆動手段を構成しており、プランジャ駆動モータ48の正逆転により、ボールねじ軸35が正逆転しながらボールナット40に対してその軸線方向に移動し、これによってプランジャ18の先端部が射出シリンダ15内を往復動するようになっている。しかしながら、プランジャ駆動手段は本実施形態のような構成のものに限定されるわけではないことに注意されたい。特に、プランジャ駆動モータ48に代えてリニアモータや流体圧シリンダなどを採用することが可能である。
射出シリンダ15内に一対の案内筒49と共に組み込まれたトーピード17は、バンドヒータ16により加熱されて溶融する樹脂を混練し、この溶融樹脂中に含まれる気泡を排除した状態で射出ノズル13側に導くものであり、射出シリンダ15の先端側からこの射出シリンダ15にねじ込まれる射出ノズル13によって射出シリンダ15内に固定された状態となっている。
本実施形態における射出ノズル13は、射出シリンダ15の先端部にねじ止めされるノズルヘッド50と、このノズルヘッド50とねじ部51を介して一体に設けられ、外周が先細りのテーパ面52となって当該ノズルヘッド50から突出するノズルチップ20と、このノズルチップ20に形成され、基端がノズルヘッド50の溶融樹脂の通路に連通すると共に末端が当該ノズルチップ20の先端面に開口するゲート12と、ノズルヘッド50内に収容されてゲート12を開閉し得るゲートピン53とを具えている。ノズルチップ20の先端外周のテーパ面52のテーパ角は、例えば1〜5度程度に設定されており、初期設定状態においては図4に示すように、チップホルダ22のシール穴21に対してノズルチップ20のテーパ面52が非接触状態となるのに対し、射出成形作業中においては図5に示すようにノズルチップ20がその熱膨張によって特に軸線方向に変位し、テーパ面52の一部がチップホルダ22のシール穴21の開口端に押し当たってノズルタッチ状態となるように、ジャケット26に取り付けられる射出シリンダ15の位置が調整ナット28により予め設定されている。ゲートピン53は、射出ノズル13内に組み込まれた2分割構造の第2のトーピード54内に圧縮コイルばね55と共に収容され、この圧縮コイルばね55のばね力によりゲート12を塞ぐようなばね力がゲートピン53に付勢されている。プランジャ18の前進運動により、射出ノズル13内の溶融樹脂の圧力が上昇すると、圧縮コイルばね55のばね力に抗してゲートピン53が第2のトーピード54内に押し戻され、ゲート12が開いて溶融樹脂がゲート12から金型24のスプルー56側へと射出供給されるようになっている。
上述したように、射出成形時にはリングヒータ14からの熱によってノズルチップ20が熱膨張し、そのテーパ面52の一部がチップホルダ22のシール穴21の開口端の全周に亙って緊密に当接してノズルタッチ状態となる結果、ゲートピン53が後退してゲート12が開き、溶融樹脂をスプルー56から金型24の図示しない成形キャビティ内に射出する際に、チップホルダ22のシール穴21とノズルチップ20のテーパ面52との隙間57から溶融樹脂が漏洩するような不具合は発生しない。この場合、ノズルチップ20の熱膨張はその長手方向と平行な方向のみならず、径方向にも起こることに注意されたい。
特に、数トン程度の型締め力が作用する場合、図6に示すように肉厚の薄いチップホルダ22のシール穴21の周囲がノズルチップ20側にめくられるように弾性変形し、より確実にチップホルダ22のシール穴21とノズルチップ20のテーパ面52との密着性を高めることができる。何れの場合においても、ノズルチップ20のテーパ面52に対してチップホルダ22のシール穴21の開口端が線接触状態となるため、ノズルチップ20側からチップホルダ22側への熱伝導を最小限に抑えることができ、熱的に安定した成形作業を行うことが可能である。
上述した実施形態では、チップホルダ22のシール穴21の内径を一定に設定したが、ノズルチップ20のテーパ面52と同じ向きのテーパ面をその内周に形成することも有効である。このような本発明の他の実施形態の主要部の構造を図7に示す。すなわち、チップホルダ22のシール穴21の内周には、ノズルチップ20のテーパ面52と同じ向きのテーパ面58が形成されているが、このテーパ面58のテーパ角は、ノズルチップ20のテーパ面52のテーパ角よりも小さく設定されており、ノズルチップ20が熱膨張した場合や、チップホルダ22のシール穴21の部分が弾性変形した場合であっても、ノズルチップ20のテーパ面52がチップホルダ22のシール穴21のテーパ面58の鈍角側の開口端(図中、上側)にのみ線接触状態で当接するように設定されている。
なお、本発明による射出成形機は、上述したプランジャ射出方式の竪型成形機のみならず、インラインスクリュー方式やプリプランジャ方式のものを採用したり、横形の成形機としてもよい。また、ゲート12を開閉するためのゲートピン53に代えてホットランナのバルブピンを用いたり、あるいはこのようなゲートピン53を持たないオープンタイプの射出ノズルを採用することも可能である。
本発明による射出成形機の一実施形態の外観を表す正面図である。 図1に示した射出成形機の主要部の内部構造を表す断面図である。 図2に示した射出ノズルの部分の抽出拡大断面図である。 図3に示した射出ノズルの先端部分の抽出拡大断面図であり、射出成形前の状態を表す。 図3に示した射出ノズルの先端部分の抽出拡大断面図であり、ノズルチップの熱膨張を伴った射出成形中の状態を表す。 図3に示した射出ノズルの先端部分の抽出拡大断面図であり、チップホルダの弾性変形を伴った射出成型中の状態を表す。 本発明の他の実施形態における射出ノズルの先端部分の抽出拡大断面図である。
符号の説明
10 射出成形部
11 固定プラテン
12 ゲート
13 射出ノズル
14 リングヒータ
15 射出シリンダ
16 バンドヒータ
17 トーピード
18 プランジャ
19 ノズル収容穴
20 ノズルチップ
21 シール穴
22 チップホルダ
23 テーパ斜面
24 金型
25 摺動貫通部
26 ジャケット
27 雄ねじ部
28 調整ナット
29 固定ナット
30 支持用スペーサ
31 板ばね
32 樹脂導入通路
33 樹脂供給孔
34 樹脂供給通路
35 ボールねじ軸
36 連結用スペーサ
37 案内板
38 案内用スペーサ
39 軸受ホルダ
40 ボールナット
41 従動スプロケット
42 ブラケット
43 減速機
44 出力軸
45 駆動スプロケット
46 歯付きベルト
47 張力調整機構
48 プランジャ駆動モータ
49 案内筒
50 ノズルヘッド
51 ねじ部
52 テーパ面
53 ゲートピン
54 トーピード
55 圧縮コイルばね
56 スプルー
57 隙間
58 テーパ面

Claims (1)

  1. 射出シリンダの先端部に連結されるノズルヘッドと、
    このノズルヘッドと一体に設けられ、外周が先細りのテーパ面となって当該ノズルヘッドから突出するノズルチップと、
    このノズルチップに形成され、基端が前記ノズルヘッドの溶融樹脂の通路に連通すると共に末端が当該ノズルチップの先端面に開口するゲートと、
    前記射出シリンダの基端部を支持する支持部材に固定プラテンを介して取り付けられるチップホルダと、
    前記ノズルチップのテーパ面を囲むように前記チップホルダに形成され、前記ノズルチップとの相対変位により内周面が前記ノズルチップのテーパ面の全周に亙って線接触状態となるように緊密に当接し得るシール穴と
    を具え、前記シール穴は、前記ノズルチップのテーパ面と同じ向きのテーパ面をその内周に有し、そのテーパ角が前記ノズルチップのテーパ面のテーパ角よりも小さく設定されていることを特徴とする射出成形機。
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