JP4692354B2 - 錫−亜鉛系はんだペースト用フラックス及びはんだペースト - Google Patents
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Description
フラックスに用いられる活性剤のうち、有機酸に代表されるカルボキシル性活性剤は、そのマイルドなフラックス活性から、はんだペースト成分として広く用いられている。カルボキシル性活性剤は、その分子内に存在するカルボキシル残基が、リフロー時にはんだ金属表面の酸化皮膜と金属石鹸を生成して、酸化皮膜を除去することによって、フラックス活性を発現する。ロジン化合物もまた、そのカルボキシル残基が微弱ながらフラックス活性を有することから、樹脂としての性質も合わせ持つカルボキシル性活性剤であり、はんだペースト成分として多用されている。
近年、環境問題からはんだの鉛フリー化が検討され、従来の錫−鉛合金の融点(183℃)に近い錫−亜鉛合金(200℃以下)が注目されている。しかしながら、錫−亜鉛系はんだペーストはもともと、合金中の亜鉛の酸化のしやすさから濡れ性が非常に悪く、ハンダボールの発生等のはんだ付け不良が発生しやすい。
また、はんだの濡れ性不良に伴い、はんだ接合部には、多くのボイドが発生することとなり、接合信頼性が低下する場合がある。さらに最近の潮流として、1つの基板から多面取りを行って生産効率を上げるよう、基板の大型化が望まれている。大型の基板をムラなく加熱するために、プレヒート(予熱)は、より高温で長時間になり、このプレヒート中のはんだペーストの酸化がよりいっそう問題になってくる。
また、特許文献4では有機溶媒に可溶なキレート化合物を活性剤として含有することを特徴とするはんだペーストが、特許文献5ではフラックス作用を有する水溶性キレート化合物を含有するフラックスが提案されている。
しかし、これらの開示技術を用いたはんだペーストで濡れ性を改善しても、近年の過酷なリフロー条件下では、はんだペーストがプレヒート中に酸化劣化し、目指すはんだ付け性の改善が得られないという問題があった。
しかしながら、特許文献6に開示された技術では、はんだ粉末を被覆しない場合に、経時安定性が低下する場合があり、特許文献7においては、鉛フリーはんだを用いた場合には、溶融はんだのはんだ付けランド部に対する濡れ性が悪くなる可能性がある。
特許文献8および特許文献9に開示された技術では、有機酸塩の金属がはんだの金属と置換反応を起こし、はんだペーストの経時安定性が低下し、長期保存には耐えない。
また、これらの開示技術を錫−亜鉛はんだに用いた場合には、見かけの濡れ性の向上に寄与できるとしても、はんだペーストがプレヒート中に酸化劣化し、目指すはんだ付け性の改善が得られないという問題がある。さらに、はんだ接合部内に生じるボイドが増え、はんだ接合した電子部品、電子モジュール、プリント配線板等の信頼性に重大な影響を及ぼす恐れがある。
上記アルミニウム配位化合物を0.3〜10重量%及び上記カルボキシル性活性剤40〜70重量%を含有する錫−亜鉛系はんだペースト用フラックスが提供される。
また本発明によれば、上記チクソトロピー性付与剤の含有割合が5.5〜7.5重量%であり、上記溶剤の含有割合が11.0〜34.5重量%である請求項1記載のフラックス。
更に本発明によれば、下記のフラックス(F)5〜20重量%と金属粉末(M)80〜95重量%からなる、錫−亜鉛系はんだペーストが提供される。
(F)上記いずれかのフラックス
(M)SnおよびZnを含む合金である金属粉末
本発明のはんだペーストは、フラックス(F)5〜20重量%、より好ましくは8〜13重量%と、金属粉末(M)80〜95重量%、より好ましくは87〜92重量%からなる。金属粉末(M)の配合量が80重量%未満または95重量%を超える場合は、はんだペーストとして必要な印刷特性を満足できない。
本発明のはんだペーストに用いるフラックス(F)は、アルミニウム配位化合物0.3〜10重量%と潜在化されたカルボキシル基を1個以上有するカルボキシル性活性剤40〜70重量%を含有する。
アルミニウム配位化合物が0.1重量%より少ない場合や20重量%より多い場合は、リフロー性が低下する。カルボキシル性活性剤が5重量%未満の場合ははんだが溶融せず、80重量%より多い場合はリフロー後のフラックス残渣中にカルボン酸が残留し、絶縁性を低下してしまい、本発明の効果が得られない。
本発明に用いるフラックス(F)は、アルミニウム配位化合物を含有する。
本発明において、アルミニウム配位化合物とは、中心金属であるアルミニウムに、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、およびケト・エノール互変異性体を構成しうる化合物から選ばれる少なくとも1種の配位子3個が結合した化合物を意味する。ケト・エノール互変異性体を構成しうる化合物としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン類、アセト酢酸メチル等のアセト酢酸エステル類、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類、およびダイアセトンアルコール等のβ位に水酸基を有するケトン類、サリチル酸アルデヒド等のβ位に水酸基を有するアルデヒド類が挙げられる。
これらのアルミニウム配位化合物の中でも、錫−亜鉛系はんだペーストに配合した際の耐熱性向上の点から、β−ジケトン類、アルコキシ基、あるいはその双方を配位子として有するアルミニウム配位化合物が好ましく挙げられ、具体的には、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、モノアセチルアセトナト・ビス(エチルアセトナトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナトアルミニウム、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド等が挙げられる。これらのアルミニウム配位化合物は1種単独であるいは2種以上を混合して使用することが出来る。
本発明に用いるフラックス(F)は、アルミニウム配位化合物を0.3〜10重量%配合する。0.1重量%より少ない場合は、濡れ性に効果が生じにくく、20.0重量%より多い場合には、残渣の発泡が生じて接合信頼性が低下する。
また、カルボキシル性活性剤が、分子内に少なくとも1個有するカルボキシル残基は、保護化されていて加熱によって解離してカルボキシル基を生成するカルボキシル残基、すなわち潜在化されたカルボキシル基を構成していてもよい。
潜在化されたカルボキシル基を1個以上含有する化合物としては、具体的には、ヘミアセタールエステル化合物およびポリヘミアセタール化合物が挙げられる。より具体的には、多価カルボン酸化合物とモノビニルエーテル化合物とを反応させて得られる化合物(X)、無水カルボン酸化合物とヒドロキシビニルエーテル化合物とを反応させて得られる化合物(Y)、ジカルボン酸化合物とジビニルエーテル化合物とを反応させて得られる化合物(Z)が挙げられる。
前記のトリオール化合物としては、例えばグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,7−ヘプタントリオール、1,2,8−オクタントリオール、1,2,9−ノナントリオール、1,2,10−デカントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,4−シクロヘキサントリオール、1,3,5−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−クレゾール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどが挙げられる
前記のテトラオール化合物としては、例えばジグリセリン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
無水カルボン酸化合物とヒドロキシビニルエーテル化合物とを反応させて得られる化合物(A2)は、無触媒あるいはトリエチルアミン等の塩基触媒の存在下で、50〜120℃の温度で反応させることによって得られる。
ジカルボン酸化合物とジビニルエーテル化合物とを反応させて得られる化合物(A3)は、無触媒あるいは酸性リン酸エステル化合物等の酸触媒の存在下で、60〜140℃の温度で反応させることによって得られる。
本発明において、アルミニウム配位化合物をカルボキシル化合物と組合せて用いることによって特異的に効果の出る作用機構は検証されてはいないが、アルミニウム配位化合物が錫−亜鉛はんだ粉末表面に吸着することで、はんだ粉末表面における酸化を防止しながら、カルボキシル化合物による表面酸化膜の除去が進むためであると推測される。
前記の樹脂としては、天然物由来の樹脂、および合成樹脂が挙げられ、天然物由来の樹脂としては、アラビアゴム、アカシアゴム、セルロース系樹脂、ロジン樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂等が用いられる。これらの樹脂は、1種または2種以上を配合して用いることができる。前記樹脂を配合する場合、通常、フラックス(F)全量のうち、0.1〜70重量%の割合で配合される。
活性剤としては前記カルボキシル性活性剤以外に、ヘキシルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン等の有機アミン類;イソプロピルアミン塩酸塩、ジフェニルグアニジン臭化水素塩等の有機ハロゲン化水素塩、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等の有機ハロゲン化物が挙げられる。
本発明のはんだペーストは、常法にしたがって、メタルマスク版を通してはんだ印刷機を用いてはんだ印刷し、電子部品、電子モジュール、プリント配線板等の製造時のリフロー工程はんだ付け用のはんだとして使用することができる。具体的には例えば、本発明のはんだペーストをプリント配線板の電極部にプリントする工程、該プリント工程で得られたプリント配線板に電子部品を搭載する工程、および該搭載工程で得られた電子部品を備えるプリント配線板をリフローして実装する工程を含む方法が挙げられる。
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、協和発酵工業(株)製
XBSA:m−キシリレンビスステアリン酸アミド
EBHSA:エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド
TEGDME:テトラエチレングリコールジメチルエーテル
DEGMBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
水添ロジン:荒川化学工業(株)製「パインクリスタルKE−604」(商品名)
重合ロジン:イーストマンケミカル(株)製「ダイマレックス」(商品名)
OXBP:4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、宇部興産(株)製「ETERNACOLL OXBP」(商品名)
Al(acac)3:トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム
Al(OiPr)2(eacac):ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム
Al(OEt)3:アルミニウムエトキシド
Al(Stea)3:ステアリン酸アルミニウム
Sn−9.0Zn
Sn−8.0Zn−3.0Bi
Sn−9.0Zn−0.003Al
(いずれも、平均粒径25μm、三井金属鉱業(株)製)
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた容量200mLの4つ口フラスコに、無水コハク酸21.3g、水添ロジン14.1g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)20.4gを仕込み、温度を65℃に昇温し、ヒドロキシエチルビニルエーテル22.7g、トリエチルアミン0.6gの混合液を1時間かけて等速滴下した。同温度で2時間反応を続けた後、ヒドロキシエチルビニルエーテル5.1gを投入し、系内の温度を110℃に昇温し、さらに2時間反応を続けた。
その後、系内の温度を70℃に下げて、イソプロピルビニルエーテル15.8gを30分かけて等速滴下し、同温度で4時間反応を続け、混合物の酸価が5mgKOH/g以下になった時点で反応を終了した。放冷後、ロータリーエバポレーターで、未反応のイソプロピルビニルエーテルと溶媒(PMA)を留去し、さらに真空ポンプで真空乾燥することにより、ポリヘミアセタールエステル樹脂(A−1)を得た。
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた容量200mLの4つ口フラスコに、アジピン酸32.5重量部、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル67.5重量部を仕込み、30分かけて常温から110℃まで昇温させた。続いて、110℃を維持して反応を続け、混合後の酸価が10mgKOH/g以下になった時点で反応を終了した。放冷後、ヘキサン/アセトン=9/1(重量比)の混合溶剤により、ポリマー分の再沈精製を行った。さらに、ロータリーエバポレーターを用い、混合液から溶剤を留去して、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより淡黄色透明のポリヘミアセタールエステル樹脂(A−2)を得た。
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた200mLの4つ口フラスコに、水添ロジン57.8g、イソプロピルビニルエーテル42.2gを仕込み、温度を65℃に昇温させた。その後、同温度で反応を続け、混合後の酸価が5mgKOH/g以下であることを確認後、反応を終了した。放冷後、ロータリーエバポレーターで、未反応のイソプロピルビニルエーテルを留去することにより、無色透明液状のカルボキシル性活性剤(A−3)を得た。
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた200mLの4つ口フラスコに、アジピン酸32.7g、n−ブチルビニルエーテル67.3g仕込み、30分かけて常温から90℃まで昇温させた。その後、同温度で反応を続け、混合後の酸価が5mgKOH/g以下であることを確認後、反応を終了した。放冷後、ロータリーエバポレーターで、未反応のn−ブチルビニルエーテルを留去することにより、無色透明液状のカルボキシル性活性剤(A−4)を得た。
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた200mLの4つ口フラスコに、無水コハク酸24.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)16.8gを仕込み、温度を65℃に昇温し、ヒドロキシエチルビニルエーテル25.3g、トリエチルアミン0.6gの混合液を1時間かけて等速滴下した。同温度で2時間反応を続けたあと、系内の温度を110℃に昇温し、さらに2時間反応を続けた。
その後、系内の温度を70℃に下げて、イソプロピルビニルエーテル13.2gを添加し、同温度で4時間反応を続け、混合物の酸価が5mgKOH/g以下になった時点で反応を終了した。放冷後、ロータリーエバポレーターで、未反応のイソプロピルビニルエーテルと溶媒(PMA)を留去することにより、淡黄色透明樹脂状のカルボキシル性活性剤(A−5)を得た。
表1に示す配合組成でフラックスを配合し、さらにこのフラックスにはんだ粉末を加えて混合しはんだペーストを作製した。このはんだペーストに対して、下記の方法で濡れ性(リフロー性)、ボイド特性、経時安定性の評価を行った。結果を表1、表2に示す。
[比較例1〜5]
実施例と同様にして、はんだペーストの濡れ性(リフロー性)、ボイド特性、経時安定性を評価した。配合組成および結果を表3に示す。
[評価方法]
実施例1、2、4〜11、比較例1〜6について得られたはんだペーストに対して、はんだペーストの濡れ性(リフロー性)、ボイド特性、経時安定性について調べた。試験方法は以下のとおりである。
リフロー性は、FR−4基板に銅をパターニングしたものにメタルマスクを使用してソルダーペーストを印刷し、リフロー炉を通炉したものについて濡れ性を確認した。
リフロー条件は次の通りである。
リフロー条件・X;プレヒート:150℃−90秒、トップ温度:230℃
リフロー条件・Y;プレヒート:170℃−90秒、トップ温度:230℃
リフロー条件・Z;プレヒート:160℃−120秒、トップ温度:230℃
評価は下記の基準に基づいて行った。
◎:ハンダボールがなく、銅ランド上に一様に濡れ広がった状態
〇:ハンダボールが若干数見られるものの、実使用上耐えうる状態
×:ハンダボールが多数見られ、ランドの端部が見えている状態
QFP搭載用試験基板(ランドサイズ0.35×2.3mm、ピッチ間距離0.3mm)に上記で得られたはんだペーストを印刷し、QFP部品を載置後、エアーリフローによりはんだ付けを行い、これを試験片とした。この試験片について、X線装置(東芝ITコントロールシステム(株)製TOSMICRON−6090FP)によりその内部を観察し、接合数100個について測定を行った。ボイド面積(%)=(発生したボイドの面積)/(はんだ付けランド部の面積)×100と、ボイドの直径(最大長径)の値によりボイド特性を評価した。表記の値は、100個の平均値を示す。なお、試験片作成時のリフロー条件は以下のとおりである。
・ プレヒート:160℃×100秒
・ ピーク温度:220℃
・ 200℃以上温度(リフロー温度):30秒
はんだペースト製造後、5℃条件下で3ヶ月保存を行い、リフロー性、ボイド特性の試験を行った。リフロー性、ボイド特性の試験方法は、前記に示したのと同様の方法で行った。
一方、本発明に用いるアルミニウム配位化合物を用いない比較例1〜4や、それ以外のアルミニウム化合物を用いた比較例5、アルミニウム配位化合物以外の有機金属化合物を用いた比較例6は、プレヒート温度が高く、また長くなったリフロー条件下で、はんだ濡れ性が実用レベルに満たなく、本発明の効果が得られないことが確認された。また、ボイド特性に関しても、はんだ接合部に多量のボイドが発生しており、さらに、その大きさについても100〜130μmと大きなボイドであった。5℃/3ヶ月保管後の評価では、リフロー性、ボイド特性の低下が確認され、経時安定性に劣ることが確認された。
Claims (3)
- アルミニウム配位化合物と、潜在化されたカルボキシル基を1個以上有するカルボキシル性活性剤と、チクソトロピー性付与剤と、溶剤とを含み、
上記アルミニウム配位化合物を0.3〜10重量%及び上記カルボキシル性活性剤40〜70重量%を含有する錫−亜鉛系はんだペースト用フラックス。 - 上記チクソトロピー性付与剤の含有割合が5.5〜7.5重量%であり、上記溶剤の含有割合が11.0〜34.5重量%である請求項1記載のフラックス。
- 下記のフラックス(F)5〜20重量%と金属粉末(M)80〜95重量%からなる、錫−亜鉛系はんだペースト。
(F)請求項1又は2記載のフラックス
(M)SnおよびZnを含む合金である金属粉末
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