JP6392574B2 - フラックス組成物、はんだ組成物、および電子基板の製造方法 - Google Patents
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Description
一方で、はんだボールの抑制を改善するために、コハク酸、グルタル酸などの直鎖型ジカルボン酸を用いる場合には、はんだ組成物の保存安定性(ポットライフ)が低下してしまうという問題がある。
また、電子基板の小型化や電子部品の狭ピッチ化により、はんだ組成物中のはんだ粉末の粒子径を小さくすることが求められている。そして、このように微細なはんだ粉末を用いる場合には、はんだボールが発生しやすくなるとともに、はんだ組成物の保存安定性が低下する傾向にある。
本発明のフラックス組成物は、(A)ロジン系樹脂と、(B)活性剤と、(C)チクソ剤と、(D)溶剤とを含有し、前記(B)成分が、(B1)1,3−フェニレン二酢酸、1,2−フェニレン二酢酸、1,1−シクロペンタン二酢酸、1,1−シクロヘキサン二酢酸および1,1−シクロブタンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とするものである。
本発明のフラックス組成物においては、前記(B)成分が、さらに(B3)炭素数が6〜10のジカルボン酸を含有することが好ましい。
本発明のはんだ組成物は、前記フラックス組成物と、はんだ粉末とを含有することを特徴とするものである。
本発明の電子基板の製造方法は、前記はんだ組成物を用いて、電子部品を電子基板に実装することを特徴とする方法である。
すなわち、粒子径が微細なはんだ粉末(例えば、はんだ粉末の平均粒子径が20μm以下)を用いた場合に、はんだボールが発生する理由は次の通りであると本発明者らは推察する。つまり、リフロー工程でのプリヒートにおいて、微細なはんだ粉末の表面が酸化して異物となる。これにより、本加熱の際に、はんだ粉末同士の凝集が阻害される。そして、凝集ができなかったはんだ粉末は、フラックス成分とともにランド間に流れだし、これがはんだボールとなるものと本発明者らは推察する。
本発明のフラックス組成物においては、(B1)成分により、微細なはんだ粉末の表面の酸化膜を十分に除去できる。なお、ジカルボン酸の中でも、直鎖型ジカルボン酸は、電子供与性基がなく、酸性度が高いために、酸化膜除去能力は高い。しかし、直鎖型ジカルボン酸は、微細なはんだ粉末を用いる場合には、保存安定性の観点から使用しにくい。これに対し、(B1)成分は、熱的安定性が比較的に高く、酸性度が比較的に低く、立体障害もあるために、保存安定性への悪影響が少ない。そして、(B1)成分には、酸性度が比較的に低いにも拘わらず、その酸化膜除去能力は直鎖型ジカルボン酸と比較してもそれほど低下しない。この理由については、以下のようなメカニズムによるものと本発明者らは推察する。つまり、はんだ粉末の表面の酸化物(例えば、SnO)と、ジカルボン酸(HOOC−X−COOH)との反応においては、(i)ジカルボン酸の1分子内にSnとの塩を形成する他に、(ii)複数のジカルボン酸(HOOC−X−COOH)とSnOとの間で、下記のような塩を形成する。
SnO+(HOOC−X−COOH)→(*)
(*)H−(OOC−X−COO−Sn−OOC−X−COO)n−H+H2O
(B1)成分の場合には、立体障害の影響があるために、直鎖型ジカルボン酸と比較して、反応(i)による塩よりも反応(ii)による塩の形成が優位になる。そして、反応(ii)による塩は、流動性が低いために、フラックス成分の流れだしを抑制でき、その間に酸化膜を除去できる。また、反応(ii)による塩は、さらにSnOとの間で塩を形成でき、酸化膜を除去できる。このようなメカニズムにより、酸化膜除去能力の低下した分を補うことができる。
一方で、酸性度が低過ぎる場合や、立体障害が大き過ぎる場合には、上記メカニズムによっても、酸化膜除去能力の低下した分を補いきれない。
以上のようにして、上記本発明の効果が達成されるものと本発明者らは推察する。
まず、本発明のフラックス組成物について説明する。本発明に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物におけるはんだ粉末以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)チクソ剤、および(D)溶剤を含有するものである。
本発明に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、ディールス・アルダー反応の反応成分となり得る前記ロジン類の不飽和有機酸変性樹脂((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸等の変性樹脂)およびこれらの変性物などのアビエチン酸、並びに、これらの変性物を主成分とするものなどが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いる(B)活性剤は、以下説明する(B1)成分を含有する必要がある。
この(B1)成分は、環構造を有する2価の有機基を有するジカルボン酸を含有することが必要である。ジカルボン酸が環構造を有しない直鎖型ジカルボン酸などの場合には、はんだ組成物を作製した場合に保存安定性が低下してしまう。なお、この有機基は、炭素および水素からなる基であることが好ましく、環構造は、複素環でないことが好ましい。
(B1)成分の環構造を有する2価の有機基の炭素数は、4〜10であることが必要である。(B1)成分の有機基の炭素数が前記範囲内であれば、保存安定性を維持しつつ、酸化膜除去能力を確保することができる。
ここで、(B)成分の環構造は、脂環構造であっても芳香環構造であってもよい。また、脂環構造の場合には、保存安定性および酸化膜除去能力のバランスの観点から、(B1)成分の有機基の炭素数が、4〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。なお、脂環構造の場合、脂環を構成する1つの炭素に、2つの置換基があることが好ましい。
また、芳香環構造の場合には、保存安定性および酸化膜除去能力のバランスの観点から、(B1)成分の有機基の炭素数が、6〜10であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。
(B1)成分の環構造を有する2価の有機基は、保存安定性および酸化膜除去能力のバランスの観点から、ベンゼン環を有することが好ましい。また、このような場合、ベンゼン環のメタ位に2つの置換基があることが好ましい。
前記(B3)成分としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの中でも、保存安定性および酸化膜除去能力のバランスの観点から、スベリン酸、アゼライン酸が好ましい。
本発明に用いる(C)チクソ剤としては、硬化ひまし油、アミド類、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリットなどが挙げられる。これらのチクソ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いる(D)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。このような溶剤としては、沸点170℃以上の水溶性溶剤を用いることが好ましい。
このような溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5−ペン
タンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2−エチルヘキシルジグリコール(EHDG)、オクタンジオール、フェニルグリコール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(MTEM)が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いるフラックス組成物には、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分および前記(D)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、消泡剤、酸化防止剤、改質剤、つや消し剤、発泡剤などが挙げられる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
次に、本発明のはんだ組成物について説明する。本発明のはんだ組成物は、前記本発明のフラックス組成物と、以下説明する(E)はんだ粉末とを含有するものである。
前記フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上12質量%以下であることが特に好ましい。フラックス組成物の配合量が5質量%未満の場合(はんだ粉末の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ粉末とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、フラックス組成物の配合量が35質量%を超える場合(はんだ粉末の配合量が65質量%未満の場合)には、得られるはんだ組成物を用いた場合に、十分なはんだ接合を形成できにくくなる傾向にある。
本発明に用いる(E)はんだ粉末は、無鉛のはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズを主成分とする合金が好ましい。また、この合金の第二元素としては、銀、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。さらに、この合金には、必要に応じて他の元素(第三元素以降)を添加してもよい。他の元素としては、銅、銀、ビスマス、アンチモン、アルミニウム、インジウムなどが挙げられる。
無鉛のはんだ粉末としては、具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sbや、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Agなどが挙げられる。
また、本発明のはんだ組成物によれば、はんだ粉末の平均粒子径が小さい場合でも、保存安定性に優れ、かつはんだボールの発生を十分に抑制できる。
本発明のはんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(E)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
次に、本発明の電子基板について説明する。本発明の電子基板は、以上説明したはんだ組成物を用いて電子部品を電子基板(プリント配線基板など)に実装したことを特徴とするものである。そのため、本発明の電子基板では、はんだボールの発生を十分に抑制できる。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、ジェットディスペンサーなどが挙げられる。
また、前記塗布装置にて塗布したはんだ組成物上に電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱して、前記電子部品をプリント配線基板に実装するリフロー工程により、電子部品を電子基板に実装できる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒートを温度150〜200℃で60〜120秒行い、ピーク温度を230〜270℃に設定すればよい。
例えば、前記電子基板では、リフロー工程により、プリント配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、プリント配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、InGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO2、エキシマーなど)が挙げられる。
((A)成分)
ロジン系樹脂:水添酸変性ロジン、商品名「パインクリスタルKE−604」、荒川化学工業社製
((B1)成分)
活性剤A:1,3−フェニレン二酢酸(下記構造式(S1)参照)
活性剤B:1,2−フェニレン二酢酸(下記構造式(S2)参照)
活性剤C:1,1−シクロペンタン二酢酸(下記構造式(S3)参照)
活性剤D:1,1−シクロヘキサン二酢酸(下記構造式(S4)参照)
活性剤E:1,1−シクロブタンジカルボン酸(下記構造式(S5)参照)
((B2)成分)
活性剤F:ダイマー酸、商品名「UNIDYME14」、ARINONA CHEMICAL COMPANY製
((B3)成分)
活性剤G:アゼライン酸
((B4)成分)
活性剤H:ジブロモブテンジオール
((C)成分)
チクソ剤:商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製
((D)成分)
溶剤A:2−エチルヘキシルジグリコール(EHDG)
溶剤B:テトラエチレングリコールジメチルエーテル(MTEM)
((E)成分)
はんだ粉末:平均粒子径10〜14μm、はんだ融点216〜220℃、はんだ組成Sn/Ag/Cu
(他の成分)
活性剤I:イミノ二酢酸
活性剤J:1−ナフタレン酢酸
活性剤K:DL−トロパ酸
活性剤L:3−メチルフェニル酢酸
活性剤M:4−ブロモフェニル酢酸
活性剤N:4−クロロフェニル酢酸
活性剤O:シクロヘキサン酢酸
活性剤P:グルタル酸
ロジン系樹脂43質量部、チクソ剤7質量部、溶剤A16質量部、溶剤B10質量部、活性剤A5質量部、活性剤E13.5質量部、活性剤F1質量部、および活性剤G1.5質量部を容器に投入し、プラネタリーミキサーを用いて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物11質量%およびはんだ粉末89質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、プラネタリーミキサーにて混合することではんだ組成物を調製した。
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
[比較例1〜9]
表2に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、はんだ組成物を得た。
はんだ組成物の評価(ランド間ボール、微小ランドのぬれ性、保存時の粘度変化)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1および表2に示す。
(1)ランド間ボール
QFP(ピッチ:0.65mm)を有する、厚みが1.6mmの基板上に、対応するパターンを有するマスク(厚み:0.15mm)を用い、はんだ組成物を印刷した。その後、プリヒート温度を150〜200℃で90〜120秒間、220℃以上の保持時間を30〜60秒間、ピーク温度を240℃とする条件でリフローを行い、試験基板を作製した。試験基板を顕微鏡にて観察(バックライト)して、ランド間にあるはんだボールの数(ランド間ボール数)を測定し、以下の基準に従って、ランド間ボールを評価した。
◎:ランド間ボール数が、比較例1と比較して、著しく減少した。
○:ランド間ボール数が、比較例1と比較して、減少した。
△:ランド間ボール数が、比較例1と比較して、同等であった。
×:ランド間ボール数が、比較例1と比較して、増加した。
(2)微小ランドのぬれ性
大きさの異なるランド(ランド直径:0.16mm〜0.5mm)QFP(ピッチ:0.65mm)を有する、厚みが1.6mmの基板上に、対応するパターンを有するマスク(厚み:0.1mm)を用い、はんだ組成物を印刷した。その後、プリヒート温度を200℃で100〜120秒間、220℃以上の保持時間を40〜90秒間、ピーク温度を240℃とする条件でリフローを行い、試験基板を作製した。試験基板を顕微鏡にて観察して、最小溶融ランドの直径を測定し、以下の基準に従って、微小ランドのぬれ性を評価した
◎:最小溶融ランドの直径が、比較例1と比較して、著しく小さくなった。
○:最小溶融ランドの直径が、比較例1と比較して、小さくなった。
△:最小溶融ランドの直径が、比較例1と比較して、同等であった。
×:最小溶融ランドの直径が、比較例1と比較して、大きくなった。
(3)保存時の粘度変化
まず、はんだ組成物を試料として、粘度を測定する。その後、試料を密封容器に入れ、温度30℃の恒温槽に投入し、15日間保管し、保管した試料の粘度を測定する。そして、保管前の粘度値(η1)に対する、温度30℃にて15日間保管後の粘度値(η2)との差(η2−η1)を求める。なお、粘度測定は、スパイラル方式の粘度測定(測定温度:25℃、回転速度:10rpm)によりを行う。
そして、粘度値の差の結果に基づいて下記の基準に従って、粘度変化を評価した。
○:粘度値の差が、−15Pa・s以上15Pa・s以下である。
×:粘度値の差が、30Pa・s以上である。
これに対し、(B1)成分を含有しないはんだ組成物を用いた場合(比較例1〜9)には、ランド間ボールおよび保存時の粘度変化のうちのいずれかが不十分となることが分かった。
Claims (5)
- (A)ロジン系樹脂と、(B)活性剤と、(C)チクソ剤と、(D)溶剤とを含有し、
前記(B)成分が、(B1)1,3−フェニレン二酢酸、1,2−フェニレン二酢酸、1,1−シクロペンタン二酢酸、1,1−シクロヘキサン二酢酸および1,1−シクロブタンジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有する
ことを特徴とするフラックス組成物。 - 請求項1に記載のフラックス組成物において、
前記(B)成分が、さらに(B2)ダイマー酸を含有する
ことを特徴とするフラックス組成物。 - 請求項1または請求項2に記載のフラックス組成物において、
前記(B)成分が、さらに(B3)炭素数が6〜10のジカルボン酸を含有する
ことを特徴とするフラックス組成物。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフラックス組成物と、はんだ粉末とを含有することを特徴とするはんだ組成物。
- 請求項4に記載のはんだ組成物を用いて、電子部品を電子基板に実装することを特徴とする電子基板の製造方法。
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