JP4692091B2 - 車両制御システム - Google Patents

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Description

本発明は、交差点における円滑な交通を確保するための車両制御システムに関する。
従来から、路側に設置したセンサから送信されるセンサ情報及び前記センサから送信されたセンサ情報を含む通信情報の少なくとも一方を用いて、衝突発生の有無を確率的手法によって予測し、この予測の結果、衝突が発生すると判定した場合には、運転者に向けて衝突発生にかかわる情報を提供し、又は車両が有する情報処理装置に向けて衝突を回避するための情報を送信することを特徴とする交差点衝突防止支援方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この交差点衝突防止支援方法においては、運転者のとる挙動のばらつきが影響して、確定的に予測することが困難な物理量を、当該物理量の過去のデータから計算した統計的な性質を利用して予測する手法を利用して、異なる方向から交差点に接近する車両間に衝突が発生することの予測を行う。
また、スムーズな制動制御を行うための手法として、交差点通過ではなく追従走行の場合であるが、先行車などの環境から自車両に及ぼされる環境力という概念を導入し、環境力に応じた減速が実現されるように制動力制御を行って先行車に衝突しないための制動をスムーズにする手法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−140799公報 特開平8−11579号公報
しかしながら、上述の特許文献1による従来技術では、交錯の可能性が高い車両間の衝突を回避する観点から減速制御等を行うものであり、交錯可能性の高い車両に対して、交差点における円滑な交通制御を実現する観点から走行状態を制御するものでないため、交差点における円滑な交通制御を実現することが困難である。
そこで、本発明は、交差点における円滑な交通制御を実現することができる車両制御システムの提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一局面によれば、交差点に進入すべく交差点に接近する車両を検出する車両検出手段と、
車両検出手段により検出した車両の中から、交差点において交錯の可能性がある車両を選別する対象車両選択手段と、
対象車両選択手段により選択した対象車両のうち、交差点に対して同一方に接近する複数の車両に対して、車間距離を制御する車両制御手段と、を備え、
前記車両制御手段は、一の方向から接近する2台の車両間の車間を、他の対向する2つの方向から接近する2台の車両が略同時に交差点内で通過するように、これらの複数の車両の走行状態を制御することを特徴とする、車両制御システムが提供される。
本局面において、前記車両制御手段は、交差点に対して同一方に接近する3台以上の車両で形成される各車間距離が、これらの車両が交差点に進入する前までに等しい車間距離となるように制御することとしてもよい。前記車両制御手段は、車間距離が制御された複数の車両からなる車群に、新たな車両を合流させる場合、該新たな車両の走行状態を、該車群における制御された車間距離を乱さないように制御することとしてもよい。また、前記車両検出手段、前記対象車両選択手段及び前記車両制御手段の少なくとも一部の動作が、各車両に搭載される通信機能付き専用車載機器により協働して実現されてよい。
本発明によれば、交差点における円滑な交通制御を実現することができる車両制御システムを得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
図1は、本発明による車両制御システムの一実施例を示すシステム構成図である。図1には、車両側構成と、管制側構成とが示されている。図1に示す車両側構成は、1台の車両に係る構成であるが、本システムに関連する各車両には、同様の構成が搭載される。同様に、図1に示す管制側構成は、1つの交差点に係る構成であるが、本システムに関連する各交差点には、同様の構成が設定される。
図1に示すように、車両側構成は、車両に搭載され、車速記録装置10、高精度位置特定装置12、通信装置14、制駆動力発生装置16、及び、アクセルペダル反力発生装置18を備える。
車速記録装置10は、例えば車輪速センサのセンサ出力に基づいて車両の速度履歴を記録する。
高精度位置特定装置12は、例えばRTK−GPS(リアルタイム・キネマチック全地球測位システム)や搬送波位相式測位法などによる高精度測位機能を備える。高精度位置特定装置12は、GPS測位による自車位置情報と道路情報を参照して地図上の自車両現在位置を特定する。本実施例において、道路情報は、適切なメモリに保持されるが、車載機器(例えばナビゲーション装置)などから取得してもよく、さらに、通信装置14を介して外部(他車両や外部の情報提供センタ)から取得してもよい。
通信装置14は、他車両及び/又は管制側と通信し、いわゆる車車間通信及び/又は路車間通信を実現する。アンテナの性能や形状並びに通信に利用する方式や周波数帯域などについては特段の制限はなく任意でよい。車車間通信及び路車間通信について様々な手法や装置構成が既に提案されており、通信装置14の更なる具体例は当業者には明らかである。
制駆動力発生装置16は、車輪毎に配されるブレーキ(機械ブレーキ)や、モータージェネレータによる回生ブレーキを含む制動力発生装置を含む。機械ブレーキの場合、各ブレーキは、それぞれに対して設けられるアクチュエータにより、運転者によるブレーキペダルの操作量に応じて電気的に制御され、また、必要に応じて、自動的に各車輪毎に個別に制御される。制駆動力発生装置16は、また、エンジンや電動モータのような駆動力発生装置を含む。尚、電動モータは、2次電池や燃料電池を電源として動作するものであってよい。
本実施例では、制駆動力発生装置16は、後述するように、管制側から通信装置14を介して受信する制御信号に応じて、制動力及び/又は駆動力を発生させる。尚、かかる介入による加減速制御中においても、運転者による自主的なブレーキ操作が行われた場合には、ブレーキ操作による制動が優先的に実現される。これは、特に安全面を考慮して運転者による制動意思を最も優先させるべきであるからである。
アクセルペダル反力発生装置18は、運転者が足で操作するアクセルペダルに設定されたアクチュエータにより、アクセルペダルの反力を制御して、制駆動力発生装置16による介入制動状態に応じた大きさのアクセルペダル反力を発生させる。アクセルペダル反力の制御については様々な手法や装置構成が既に提案されており、具体例は当業者には明らかである。
管制側構成は、インフラとして設置される基地局又は中継局であり、交差点(特に信号機のない交差点。)毎に配置されてもよいし、複数の交差点を統括するように配置されてもよい。
管制側構成は、図1に示すように、環境力発生部20、優先度設定部22、座標変換部24、対象車両選択部26、車両検出部27、通信装置28、及び、車両制御部42を備える。車両側と管制側とは、それぞれの通信装置14及び通信装置28を介して双方向通信(路車間通信)可能に構成される。
図2は、本実施例に係る交差点通過判断アルゴリズムの流れを示すフローチャートである。この交差点通過判断アルゴリズムは、交差点に進入してくる複数の車両を時間的にずらして該交差点を通過させるものである。尚、以下では、車両側と管制側とが協働して、交差点通過判断アルゴリズムを実現している。しかしながら、車両側に各種機能部20〜26、42を設定し、複数の車両が協働して、車車間通信を介して自律的に交差点通過判断アルゴリズムを実現してもよいし、また、車両側に各種機能部20〜26、42の一部を設定することも可能である。尚、車両側に各種機能部20〜26、42の全てを設定する場合には、管制側が不要、即ちインフラ自体が不要となる。
図2を参照するに、管制側は、通信装置28による各車両との路車間通信により、車両検出部27により交差点に接近してくる車両を検出する(S210)。例えば、管制側は、交差点中心から所定エリア又は所定時間半径内の車両を検出する。尚、複数の車両が協働して、車車間通信を介して自律的に交差点通過判断アルゴリズムを実現する構成では、各車両は、それぞれの車両位置情報と道路情報とに基づいて自車両の交差点への接近を検出する。
管制側は、通信装置28による各車両との路車間通信により、検出した各車両の位置及び速度を取得する(S220)。尚、複数の車両が協働して、車車間通信を介して自律的に交差点通過判断アルゴリズムを実現する構成では、各車両は、車車間通信を介して、他車両の位置及び速度を取得する。
次いで、管制側の対象車両選択部26は、交差点に接近してくる各車両のうち、交錯の可能性のある車両を選択する(S230)。ここで、用語“交錯”とは、“衝突”とは異なる。即ち、本実施例では、以下詳説する如く、交差点手前で設定される適切な優先順位に従って各車両の交差点への接近態様が事前に制御されるので、交差点において衝突が起こる可能性は理論的にはゼロであり、従って、交錯の可能性のある車両とは、「交差点に対してそれぞれ異なる方向から接近して進入する車両」程度の意味しか持たない。交錯の可能性のある車両の選択の具体例を挙げると、例えば、ある着目車両に対して同じ車線を同じ方向に走行中の車両、着目車両が交差点を直進する場合の対向車両、着目車両の走行道路と立体交差した道路を走行中の車両、道路以外の場所を走行中の(例えば道路沿いの駐車場内を徐行中の)車両、及び、交差点から遠ざかって行っている車両などは対象外となり、着目車両と同様、交差点に向かって進行中の車両であって、着目車両との速度ベクトルの内積が0又は0に近い車両が選択対象となる。尚、複数の車両が協働して、車車間通信を介して自律的に交差点通過判断アルゴリズムを実現する構成では、自車両を着目車両として、該自車両と交錯の可能性のある他車両が選択されることになる。
次いで、管制側の優先度設定部22は、所定の優先度設定アルゴリズムに従って、交錯可能性のある各車両に対して優先順位ないし優先度(以下、単に「優先順位」という。)を決定する(S240)。優先度設定アルゴリズムは、基本的には、交差点における円滑で効率的な交通を実現する観点から構築される。優先順位は、2段階(即ち、優先権の有り、無し)で決定されてもよいし、3段階以上で決定されてもよい。以下では、優先順位を高い低いと表現するが、優先順位が2段階で表される構成の場合、高い優先順位とは優先権がある場合であり、低い優先順位とは優先権がない場合である。優先順位が3段階で表される構成の場合、高い優先順位とは、相対的に高いという程度、或いは、それよりも低い優先順位があるという程度の意味であり、特に明示しない限り、優先順位が最上位であることを必ずしも意味しない。また、以下で用いられる用語 “非優先車両”とは、優先権がない車両(優先順位が2段階で表される構成の場合。)、或いは、優先順位が最上位でない車両を意味し、“最優先車両” とは、優先権がある車両(優先順位が2段階で表される構成の場合。)、或いは、優先順位が最上位である車両を意味する。
本ステップ240における優先順位を決定する処理は、交差点に進入しているすべての車両において個々に行われる。尚、複数の車両が協働して、車車間通信を介して自律的に交差点通過判断アルゴリズムを実現する構成では、同じ交差点に向けて進行している交錯可能性を有する複数の車両は、通信により互いの位置情報(及び車速情報)を相互に把握していると共に、すべての車両が同じ優先度設定アルゴリズムに基づいて優先順位を決定するため、いずれの車両においても同じ結論が得られ、矛盾は生じない。
優先順位決定処理は、全車両に共通であって矛盾が生じない限り、任意の優先度設定アルゴリズムに基づくものであってよい。例えば、各車両の車速情報に基づいて、所定速度以下の車両は非優先車両とされる。次に、交差点で交差する各道路の特性によって判断される。道路幅に差があれば幅が広い道路の方が優先となる。道路情報に交差道路のうちいずれが優先道路か特別の指定がある場合、それに従ってもよい。次に、道路特性による優先度が同一の場合(例えば、道路幅が略等しい場合)、各車両の位置情報(及び車速情報)に基づいて、交差点に早く到達する順に優先順位が付される。尚、優先順位を決定する因子が数多くある場合は、各因子毎にポイント加算方式で各車両にポイントを付与し、ポイントの大きい車両から順に高い優先順位を付してもよい。
この優先順位決定処理は、各車両に関して、その車両が交差点を通過するまで繰り返し実行される。なぜなら、例えばある車両が前方障害物等により急減速又は急停止等した場合や道路沿いの駐車場等に入った場合に優先順位が変動し得るからである。また、最優先車両が交差点を通過し終えると、他の車両の優先順位が繰り上げられ、新たな最優先車両が決定される。
このようにして交錯可能性を有する複数の車両について優先順位が決定されると、最優先車両以外は非優先車両として最優先車両が交差点を通過するまで交差点を通過しないように時間差を生じさせるための処理に移行する。
即ち、優先順位付け(S240)後、座標変換部24は、非優先とされた車両を対象に座標変換処理を行う(S250)。尚、最優先とされた車両は、原則的に、管制側による減速のための制御介入が何ら実行されず、運転者の操作するままの車速が許容される。この座標変換処理では、各対象車両の位置及び速度が、交差点形状に応じた直交座標系に変換される(即ち、各対象車両が、それぞれの速度ベクトルを持った座標点に変換される。)。
ここで、図3(A)に示すように、同一方向から優先順位が連続する複数の車両X1〜X4が交差点に接近してくる場合(S260のYES)(即ち、優先順位の高い順に、X1、X2、X3、X4)、管制側の車両制御部42は、これら複数の車両が群をなして一まとまりになって交差点を通過するように、当該複数の車両の走行状態を制御する(S270)。具体的には、車両制御部42は、車間距離を積極的に増減させたり、車両間での相対速度を積極的に増減させたりして、等間隔・等速度で各車両が連なる車群を形成させる。例えば、各車両が制駆動力発生装置16による先行車追従機能(先行車両に対して所望の車間距離ないし車間時間で追従するように加減速度を制御できる機能。)を備える場合、車両制御部42は、車群候補内の各車両に対して路車間通信を介して指示を出して、通常の追従制御時の目標車間距離ないし目標車間時間(以下、「目標車間距離」で代表させる)よりも小さい目標値で追従制御を実行させてもよい。尚、複数の車両が協働して、車車間通信を介して自律的に交差点通過判断アルゴリズムを実現する構成では、同一方向から優先順位が連続する複数の車両同士で、車車間通信を介して、等間隔・等速度で各車両が連なる車群が形成されるように指示を出し合ってもよい。
尚、図3(A)に示すように、管制側の車両制御部42は、複数の車両X1〜X4を群として交差点を通過させた後に、他の方向から交差点に接近してくる複数の車両Y1〜Y3が同様に群として交差点を通過するように、当該複数の車両の走行状態を制御する。即ち、管制側の車両制御部42は、車両X4との関係で、車両Y1の走行状態を制御すると共に(例えば、車両X4を仮想の先行車両として後述の環境力を作用させると共に)、車両Y2〜Y3に対して等間隔・等速度でそれぞれの先行車両を追従するように制御する。
また、図3(B)に示すように、交錯の可能性のある2つの方向から優先順位が連続する複数の車両が交互に交差点に接近してくる場合(S280のYES)(即ち、優先順位の高い順に、X1、Y1、X2、Y2、X3、Y3)、管制側の車両制御部42は、一の方向から接近する2つの車両間の車間距離L2を利用して、他の方向から接近する1台の車両が交差点を通過するように、当該複数の車両の走行状態を制御する(S290)。具体的には、管制側の車両制御部42は、各方向に係る道路毎に、車間距離を積極的に増減させたり、車両間での相対速度を積極的に増減させたりして、等間隔・等速度で各車両が連なる車群を形成させる。この場合、一の方向から接近する2つの車両間の車間距離L2は、他の方向から接近する1台の車両が安全に交差点を通過できるように、適切な車間距離に制御される。例えば、車両X1と車両X2と間の車間距離L2は、車両X1が交差点を通過した後から車両X2が交差点を進入するまでに車両Y1が交差点を通過できるように、制御される。従って、一般的には、本ステップ290で制御目標とされる車間距離L2(図3(B)参照)は、上記ステップ270で制御目標とされる車間距離L1(図3(A)参照)よりも大きな値に設定される(即ち、車間距離L2>車間距離L1)。
また、図4(A)に示すように、交錯の可能性のある3つの方向から優先順位が連続する複数の車両が周期的に交差点に接近してくる場合(S300のYES)(即ち、優先順位の高い順に、X1、Y1、Y’1、X2、Y2、Y’2、X3、Y3、Y’3)、同様に、管制側の車両制御部42は、一の方向から接近する各2つの車両間の車間距離L2を利用して、2つの対向方向から接近する優先順位が連続する2台の車両が略同時に交差点を通過するように、当該複数の車両の走行状態を制御する(S310)。具体的には、管制側の車両制御部42は、各方向に係る道路毎に、車間距離を積極的に増減させたり、車両間での相対速度を積極的に増減させたりして、等間隔・等速度で各車両が連なる車群を形成させる。この場合、一の方向から接近する2つの車両間の車間距離L2は、他の2方向から対向して接近する2台の車両が安全に交差点を略同時に通過できるように、適切な車間距離に制御される。例えば、車両X1と車両X2と間の車間距離L2は、車両X1が交差点を通過した後から車両X2が交差点を進入するまでに車両Y1及び車両Y’1が略同時に交差点を通過できるように、制御される。
また、図4(B)に示すように、交錯の可能性のある4つの方向から優先順位が連続する複数の車両が周期的に交差点に接近してくる場合(S320のYES)(即ち、優先順位の高い順に、X1、X’1、Y1、Y’1、X2、X’2、Y2、Y’2、X3、X’3、Y3、Y’3)、同様に、管制側の車両制御部42は、2方向から対向して接近する車両間に形成される車間距離L2を利用して、他の2方向から接近する優先順位が連続する2台の車両が略同時に交差点を通過するように、当該複数の車両の走行状態を制御する(S330)。具体的には、管制側の車両制御部42は、各方向に係る道路毎に、車間距離を積極的に増減させたり、車両間での相対速度を積極的に増減させたりして、等間隔・等速度で各車両が連なる車群を形成させる。この場合、一の方向から接近する2つの車両間の車間距離L2は、他の2方向から接近する2台の車両が安全に交差点を通過できるように、適切な車間距離に制御される。例えば、車両X1と車両X2と間の車間距離L2、及び、車両X’1と車両X’2と間の車間距離L2は、車両X1及び車両X’1が略同時に交差点を通過した後から車両X2及び車両X’2が略同時に交差点を進入するまでに車両Y1及び車両Y’1が略同時に交差点を通過できるように、制御される。
尚、上述のステップ270、290、310、330の処理において、管制側の車両制御部42は、路車間通信を介して、各制御中の車両に対して車間制御中であることを運転者に知らせるように指示を出してもよい。かかる車間制御中である旨の運転者への報知は、各車両に搭載されるディスプレイ、メーター等の情報提供装置を利用して実現されてよい。
また、上述の290、310、330の処理において、車間距離L2は、原則として、車群速度に応じた一定値となるが、当該車間距離を利用して交差点を通過する車両の交差点への進入態様に応じて修正される。従って、例えば図3(B)の例において、車両Y2〜Y3が全て交差点を直進する場合は、車両X1〜Xの各車間距離L2は、車両Y〜Y3の速度に応じた一定値となるが、車両Y〜Y3のうちの例えば車両Yが交差点を右左折する場合は、当該車両Yのための車両X2〜X3間の車間距離は、車間距離L2よりも大きな値に修正されてよい。
図2に戻る。上述の図3ないし図4に例示したような交通状況でない場合、管制側の環境力発生部20は、非優先とされた車両を対象に環境力アルゴリズムを適用する。具体的には、環境力発生部20は、最優先車両に係る直交座標変換された位置及び速度を、最優先車両よりも優先順位が低い車両の走行道路上(即ち、最優先車両と交錯可能性のある車両が存在する道路上)に写像し、該写像した最優先車両を先行車両として見立て、後続の車両に関する追従環境力を算出する(S340)。追従環境力は、特開平8−11579号公報(特許文献2)に記載されるように、後続車両が先行車両に衝突しないように場から受ける環境力である。したがって、この仮想先行車両から追従環境力を受けるものとして仮想先行車両の後続車両(非優先車両)を減速させることにより、最優先車両が最優先車両より優先順位が低い車両と交差点において交錯しないようにすることができる。
ここで、上記特許文献2によれば、追従環境力Cは、
Figure 0004692091
と表される(特許文献2の段落[0055]の記載参照)。ここで、aは運転者固有の最大加速度であり、x及びx’は非優先車両の位置及び速度であり、x−1及びx’−1は先行車両の位置及び速度であり、Tは運転者固有の車間時間であり、Lは運転者固有の停止時車間距離であり、pは環境条件の有効な範囲の大きさを決めるパラメータである。
ここで、写像された仮想先行車両の位置及び速度をy−1及びy’−1とすると、上記式(1)は、仮想先行車両に対して、
Figure 0004692091
と書き換えることができる。ここで、Tcrossは運転者固有の交錯車間時間であり、Lcrossは運転者固有の交錯停止時車間距離である。
−1及びy’−1は、直交座標変換により、
Figure 0004692091
Figure 0004692091
である。ここで、y及びy’は仮想先行車両の位置及び速度であり、(Xsig、Ysig)は交差点位置である。ここで、式(4)の右辺には2階微分が入っているため、これを解くと解が2つ現れ、一方の解が発散してしまう。そこで、本実施例では、便宜上、2階微分の項を丸めて、式(4)を
Figure 0004692091
と変形して用いるものとする。これによる実質的な問題は生じない。
このようにして、最優先車両を仮想先行車両とした場合に追従環境力を受ける各車両に対して、それぞれの追従環境力が算出されると、管制側は、この算出された環境力に応じて、各車両の制駆動力発生装置16に対して、それぞれ発生させるべき制動力を指示する(S350)。これに応じて各車両の制駆動力発生装置16が作動し、算出された環境力に応じた減速度及び/又は車速が実現され、各車両において、必要に応じた減速、徐行ないし一時停止線での停止が実現される。尚、各車両の追従環境力は、上述の算出方法の他、それぞれの車両の1つ上の優先順位を持つ車両を仮想先行車両として算出されてもよいし、該車両よりも上位順位の全ての車両をそれぞれ仮想先行車両として算出した各追従環境力を、積算することで算出されてもよい。
このステップ350では、アクセルペダル反力発生装置18は、車両側において速度制御中である旨を車両乗員(特に運転者)に伝達すべく、制駆動力発生装置16が発生する制動力に応じて、アクセルペダル反力を制御する。これにより、運転者(及び他の乗員)は、自動的にブレーキが掛かったことについて視覚的、聴覚的、及び/又は触覚的に伝達を受けるため、事態を把握できる。尚、このアクセルペダル反力発生装置18によるアクセルペダル反力制御は、上述のステップ270、290、310、330の処理において、減速制御を行う際に実行されてもよい。
各車両を時間差をもって交差点を円滑に通過させるために、下位の方の優先順位の車両が一時停止することも許容される。しかしながら、交通の円滑化の観点からは、できる限り一時停止する車両が生じないように非優先車両の車速が制御されることが好ましい。
もし一時停止した場合には、その車両については、横断発進判断支援アルゴリズムにより、一時停止状態から発進する際の発進支援が実行される(S30)。横断発進判断支援アルゴリズムについては様々な手法が既に提案されており、具体例は当業者には明らかである。例えば、簡易的には、管制側は、路車間通信により、待機中の各車両の進入方向(直進・右左折)を把握し、待機中の車両の優先順位が最上位になったときに、該車両のアクセルペダル反力制御が解除されるようアクセルペダル反力発生装置18に対して指示を出して、運転者に発進許可状態を把握させてもよい。
このように、本実施例によれば、交錯可能性を有する2台以上の車両がそれぞれの車両の減速度を最小限に留めながら交差点を時間差をもって接触・衝突することなく通行することができるため、信号機のない交差点において同一の2次元平面上に存在しながらあたかも交差する道路が立体交差しているかのような円滑な交通が実現される。
特に、本実施例によれば、上述の如く、同一方向から交差点に接近する複数の車両に対して、交差点の手前までに車間距離を適切に制御することで、交錯可能性を有する2台以上の車両をして、効率的に交差点を通過させることができる。尚、本実施例では、優先順位を付与した後、当該優先順位に応じて、車間距離を制御する複数の車両を決定しているが、上述の如く車間距離を制御した後で優先順位を決定してもよく、又は、優先順位を決定しつつ、上述の如く車間距離を制御してもよい。例えば、各方向の道路において交差点所定距離手前に仮想のゲート地点を設定し、当該ゲート地点から図3ないし図4に示すような隊列及び優先順位で車両が交差点に接近していくように、当該ゲート地点に至るまでの各車両の走行状態を制御してもよい。この場合、上述の車間距離が実現できないほど車両数が多い場合は、当該ゲート地点で車両を一旦停止させてから所定のタイミングで通過させることとしてよい(即ち、ゲート地点から交差点までの間の車両が所定数を超えた場合は、ゲート地点でゲートが閉められた状態を仮想的に形成して、ゲート手前で各車両に順番待ちさせることとしてよい。)。
図5は、上述の如く制御された車群に新たな車両が加わる際に車両制御部42により実行される処理の流れを示すフローチャートである。
先ず、ステップ400では、車群に新たに加わろうとする車両(以下、「新規参入車両」という)が存在するか否かが判断される。新規参入車両の具体例としては、車群が形成されている道路に対して合流路から合流してくる車両や、車群が形成されている道路に隣接する駐車場から該道路に合流してくる車両等が挙げられる。
次いで、ステップ410では、車両制御部42は、新規参入車両との路車間通信を介して得た情報に基づいて、新規参入車両の車群への合流が可能か否かを判断する。この際、車両制御部42は、新規参入車両の車群への合流により、上述の如く制御されている車群の車間距離が乱される場合は、現時点での新規参入車両の車群への合流は不能であると判断する。例えば、図6(A)に示すように、新規参入車両Zが合流しようとする車群の車間距離が目標どおり制御されている場合は、車両制御部42は、車群の最後尾車両X4の通過を待ってから、新規参入車両に対して合流を許可する(S420)。これにより、以後、新規参入車両は、車両X4に対して目標車間距離となるように制御される。
一方、図6(B)に示すように、新規参入車両Zが合流しようとする車両X2,X3間の距離が目標車間距離よりも十分大きいときは、車両制御部42は、新規参入車両に対して合流を許可する(S440)。これにより、以後、車両X3は、新規参入車両に対して所定車間距離となるように制御される。
このように本実施例によれば、車両制御部42は、新規参入車両の車群への合流により、上述の如く制御されている車群の車間距離が乱されないように、新規参入車両の車群への合流タイミングを決定するので、車群への新たな車両の合流が適切なタイミングで実現され、上述の交差点における円滑な交通が維持することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述した実施例では、環境力アルゴリズムや車群形成アルゴリズムの適用の結果として、各車両において制駆動力発生装置16による加減速のための介入制御が行われているが、介入制御に代えて又は加えて、運転者による自主的な操作を促す操作案内が行われてもよい。
本発明による車両制御システムの一実施例を示すシステム構成図である。 本実施例に係る交差点通過判断アルゴリズムの流れを示すフローチャートである。 本実施例に係る車両制御部42による幾つかの車間制御態様の説明図である。 本実施例に係る車両制御部42による幾つかの車間制御態様の説明図である。 車群に新たな車両が加わる際に車両制御部42により実行される処理の流れを示すフローチャートである。 車群に新たな車両が加わる際に車両制御部42により実行される車両制御態様の説明図である。
符号の説明
10 車速記録装置
12 高精度位置特定装置
14 通信装置
16 制駆動力発生装置
18 アクセルペダル反力発生装置
20 環境力発生部
22 優先度設定部
24 座標変換部
26 対象車両選択部
28 通信装置
42 車両制御部

Claims (5)

  1. 交差点に進入すべく交差点に接近する車両を検出する車両検出手段と、
    車両検出手段により検出した車両の中から、交差点において交錯の可能性がある車両を選別する対象車両選択手段と、
    対象車両選択手段により選択した対象車両のうち、交差点に対して同一方に接近する複数の車両に対して、車間距離を制御する車両制御手段と、を備え、
    前記車両制御手段は、一の方向から接近する2台の車両間の車間を、他の対向する2つの方向から接近する2台の車両が略同時に交差点内で通過するように、これらの複数の車両の走行状態を制御することを特徴とする、車両制御システム。
  2. 前記車両制御手段は、2方向から対向して接近する車両間に形成される車間を、他の2方向から接近するそれぞれの車両が略同時に交差点内で通過するように、これらの複数の車両の走行状態を制御する、請求項1に記載の車両制御システム。
  3. 前記車両制御手段は、交差点に対して同一方に接近する3台以上で形成される各車間距離が、これらの車両が交差点に進入する前までに等しい車間距離となるように制御する、請求項1又は2に記載の車両制御システム。
  4. 前記車両制御手段は、車間距離が制御された複数の車両からなる車群に、新たな車両を合流させる場合、該新たな車両の走行状態を、該車群における制御された車間距離を乱さないように制御する、請求項1〜3の何れかに記載の車両制御システム。
  5. 前記車両検出手段、前記対象車両選択手段及び前記車両制御手段の少なくとも一部の動作が、各車両に搭載される通信機能付き専用車載機器により協働して実現される、請求項1〜4の何れかに記載の車両制御システム。
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