JP4691632B2 - メタノール・ギ酸メチルの化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法 - Google Patents

メタノール・ギ酸メチルの化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学エネルギーを用いて発電所、製鉄所および各種プロセス設備等から排出される産業排熱等の熱回収と熱利用および発電を行う方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱エネルギーの回収、輸送および利用方法としては、水蒸気や熱水を用いる方法が一般的である。しかしこれらの方法は、熱損失および設備コストの面からの制約が大きく、低温排熱の回収には限界がある。
即ち発電所、製鉄所等のエネルギー多消費型の各種産業設備では近年省エネルギーが進行し、かなりの部分の排熱回収が行われているが、200〜300℃以下の低温排熱は自己設備内で適切に利用する手段がないことから廃棄され、そのために大きな冷却負荷を要していることが多い。
【0003】
近年、低温排熱を有効に回収して都市の地域冷暖房や給湯等に利用する方法として熱エネルギーを化学エネルギーに変換して熱回収と熱利用を行うことが検討されている。
この方法では熱回収側と熱利用側で熱エネルギーと化学エネルギーの変換が必要であるが、長距離の輸送と貯蔵が可能であり、輸送および貯蔵での熱損失が無く、エネルギー密度が大きいため、設備コスト面でも有利な方法とされている。
【0004】
熱エネルギーと化学エネルギーの変換系で有力なものとしては、(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル分解反応と(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル合成反応を用いる方法が提案されている(特公平6−323684号)。
CH3OH → 2H2 + CO (1)
2CH3OH → 2H2 + HCOOCH3 (2)
HCOOCH3 → CH3OH + CO (3)
2H2 + CO → CH3OH (4)
2H2 + HCOOCH3 → 2CH3OH (5)
CH3OH + CO → HCOOCH3 (6)
この方法は (1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル分解反応が吸熱反応であることから(1)〜(3)式を用いて熱回収を行い、得られた一酸化炭素、水素を輸送し、熱利用側で(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル発熱反応により熱エネルギーの供給が行われる。(4)〜(6)式により生成したメタノール、ギ酸メチルは熱回収側に循環して再利用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
(1)〜(6)式を用いる変換系は、安価で取扱性の良いメタノール、ギ酸メチルを用いて、容易に反応を行うことができることから、エネルギー変換系として有力と見られるが、次のような課題を有している。
(A)熱回収は(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル分解反応の下限温度により制約されることになるが、反応速度等の実用的見地から熱回収の下限温度は200℃前後が限界である。一方、熱回収を有効に行うために(1)〜(3)式の反応温度を低下させる必要があるが、(1)〜(3)式の反応の化学平衡関係は反応温度の低下および反応圧力の上昇と共に分解側に著しく不利となる。
(B)熱利用の面からは(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル合成反応を高温で行うことが有利であるが、(4)〜(6)式の反応の化学平衡関係は反応温度の上昇および反応圧力の低下と共に合成反応が著しく不利となる。また平衡関係を改善するためには合成反応を高圧下で行うことになるが、装置コストおよび操業費等の点から熱利用性が低く、反応温度および圧力特性の改善が望まれる。
(C)(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル分解反応を気相で行う場合、(1)〜(3)式の反応温度におけるメタノール、ギ酸メチル蒸気圧より低い圧力で反応を行う必要がある。また、(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル分解反応と(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル合成反応を、化学平衡関係を考慮し、効率よく行うには(1)〜(3)式の反応圧力を(4)〜(6)式の反応圧力より低い圧力で行う必要があり、熱回収側と熱利用側の間に圧縮機等が必要となり、新たな機械エネルギーを投入することになり、熱利用性が低くなる。
(D)(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル分解反応を液相で行う場合、液相を保持するため(1)〜(3)式の反応温度におけるメタノール、ギ酸メチル蒸気圧より高い圧力で反応を行う必要がある。このため、(1)〜(3)式の反応により生成した一酸化炭素と水素とともに(1)〜(3)式の反応温度におけるメタノール、ギ酸メチル蒸気圧に相当する未反応メタノール、ギ酸メチルが分解反応器より排出され、排出される未反応メタノール、ギ酸メチル量の蒸発潜熱分に相当する熱を分解反応熱以外に投入する必要があり、熱回収側において反応熱以外に投入された未反応メタノール、ギ酸メチル量の蒸発潜熱分に相当する熱の有効利用が望まれる。
【0006】
本発明の目的は、メタノール、ギ酸メチル分解反応とメタノール、ギ酸メチル合成反応を用いる熱エネルギーと化学エネルギー変換システムにおいて、熱回収の有効利用を図り装置コストおよび操業費等の点から熱利用性の高い方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者等は上記の如き課題を有する熱エネルギーと化学エネルギーの変換システムについて鋭意検討した結果、(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル液相分解反応(吸熱反応)と(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル液相合成反応(発熱反応)を組み合わせ、メタノールおよび/またはギ酸メチル分解反応圧力をメタノール、ギ酸メチル合成反応圧力より高い圧力とし、両者の圧力差を利用して膨張タービンを駆動し電気エネルギーに変換することで熱回収と熱利用および発電を極めて有利に行うことができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち本発明は、(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル液相分解反応(吸熱反応)を組み合わせて熱回収を行い、分解生成ガスを用いて膨張タービンにより発電した後、(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル液相合成反応(発熱反応)を組み合わせて熱利用を行う、メタノール・ギ酸メチルの化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法であって、液相分解反応を液相合成反応よりも高い圧力で行い、その圧力差により発電を行うことを特徴とする化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法である。
CH3OH→2H2+CO (1)
2CH3OH→2H2+HCOOCH3 (2)
HCOOCH3→CH3OH+CO (3)
2H2+CO→CH3OH (4)
2H2+HCOOCH3→2CH3OH (5)
CH3OH+CO→HCOOCH3 (6)
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル液相分解反応(吸熱反応)および(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル液相合成反応(発熱反応)を行う。いずれの反応も触媒の存在下で行う。メタノールおよび/またはギ酸メチル分解反応圧力をメタノール、ギ酸メチル合成反応圧力より高い圧力とし、両者の圧力差を利用して膨張タービン(第1膨張タービン)を駆動して電気エネルギーに変換する。
本発明において(2)式と(3)式を加えると(1)式が得られ、(1)〜(3)式は吸熱反応であるから熱回収に用いられる。熱回収は回収対象の熱エネルギーの温度レベルとその量的分布に対応して(1)〜(3)式の全部または一部の分解反応の吸熱によって行われる。従って熱回収においては供給されたメタノールおよび/またはギ酸メチルは、一酸化炭素および/または水素への化学エネルギーの形で熱利用側に輸送される。このようにして回収された熱エネルギーは、一酸化炭素および/または水素の形で気体輸送され、熱利用に供される。
熱利用は、(5)式と(6)式を加えると(4)式が得られ、供給対象の熱エネルギーの温度レベルとその量的分布に対応して(4)〜(6)式の全部または一部の合成反応の発熱によって行われる。受入れられた一酸化炭素および/または水素は最終的に液相取扱いの可能なメタノールおよび/またはギ酸メチルとなり、一酸化炭素および/または水素の化学エネルギーの一部を反応熱として放出して熱利用される。熱利用側で合成されたメタノールおよび/またはギ酸メチルは熱回収側に循環して再利用される。また両媒体は液体であるので、熱回収側または熱利用側に貯蔵することができる。
【0010】
(1)式のメタノール液相分解反応において反応温度と反応圧力および液空間速度は触媒の種類と触媒量、更には目標の反応率によって広い範囲で選び得るが、一般的な反応温度としては100℃からメタノール臨界温度近辺235℃であり、実用的には150〜230℃の範囲が好ましい。反応温度が低過ぎる場合には実用的な反応速度が得られず、反応温度が高過ぎる場合には副反応の併発や触媒の失活を招きやすい。
反応温度100〜235℃でのメタノール蒸気圧は0.35〜7.49MPaであり、反応圧力はこれより高い圧力1.39〜7.49MPaの範囲が好ましい。
液空間速度は0.1〜10(m3−メタノール/hr/m3−触媒)の範囲、特に0.2〜3(m3−メタノール/hr/m3−触媒)が一般的である。
【0011】
(2)式のメタノール液相分解反応は、脱水素反応によるギ酸メチルの生成反応である。反応温度と反応圧力および液空間速度は触媒量、更には目標の反応率によって広い範囲で選び得るが、一般的な反応温度としては100℃からギ酸メチル臨界温度付近の210℃であり、実用的には150〜205℃の範囲が好ましい。反応温度が低過ぎる場合には実用的な反応速度が得られず、反応温度が高過ぎる場合には副反応の併発や触媒の失活を招きやすい。
反応温度100〜210℃でのギ酸メチル蒸気圧は0.77〜5.54MPaであり、反応圧力はこれより高い圧力2.18〜5.54MPaの範囲が好ましい。
液空間速度は0.1〜10(m3−メタノール/hr/m3−触媒)の範囲、特に0.2〜3(m3−メタノール/hr/m3−触媒)が一般的である。
【0012】
(3)式のギ酸メチル液相分解反応において反応温度と反応圧力および液空間速度は触媒の種類と触媒量、更には目標の反応率によって広い範囲で選び得るが、一般的な反応温度としては0℃からギ酸メチル臨界温度付近の210℃であり、実用的には20〜200℃の範囲が好ましい。反応温度が低過ぎる場合には実用的な反応速度が得られず、反応温度が高過ぎる場合には副反応の併発や触媒の失活を招きやすい。
反応温度0〜210℃でのギ酸メチルの蒸気圧は0.03〜5.54MPaであり、反応圧力はこれより高い圧力1.03〜5.54MPaの範囲が好ましい。
液空間速度は0.1〜10(m3−ギ酸メチル/hr/m3−触媒)の範囲、特に0.2〜3(m3−ギ酸メチル/hr/m3−触媒)が一般的である。
【0013】
(1)〜(3)式の一般的な反応方法としては、懸濁床、或いは固定床、回分式、半回分式、流通式等の通常知られているあらゆる方法を用いることができる。また (1)式のメタノール液相分解反応は液相で行うことにより生成一酸化炭素ガス、水素ガスを系外に除去することにより、平衡反応が促進されることになる。(1)〜(3)式の反応で原料として使用するメタノール、ギ酸メチルは、炭酸ガスの副生等を回避するためおよび触媒への負担を軽減するために、使用に先だって乾燥剤等によりメタノール、ギ酸メチル中の水分を少なくすることが好ましい。
【0014】
(4)式の水素と一酸化炭素混合ガスからのメタノール液相合成反応において、反応温度と反応圧力および液空間速度は触媒の種類と触媒量、更には使用する溶媒種や目標の反応率によって広い範囲で選び得るが、一般的な反応温度としては80〜200℃であり、実用的には100〜150℃の範囲が好ましい。反応温度が低過ぎる場合には実用的な反応速度が得られず、反応温度が高過ぎる場合には副反応の併発や触媒の失活を招きやすい。条件によっては使用する溶媒を変質させることがある。
反応圧力は反応温度80〜200℃で使用する溶媒の沸点よりも高い圧力が好ましく、また(1)〜(3)式の分解反応圧力よりも低いことが必要であるから、1.0〜5MPaの範囲が好ましい。
ガス空間速度は100〜10000(m3−[一酸化炭素+水素]/hr/m3−触媒)の範囲、特に300〜5000(m3−[一酸化炭素+水素]/hr/m3−触媒)が一般的である。
【0015】
(5)式のギ酸メチルの水素化反応によるメタノール液相合成反応において、反応温度と反応圧力および液空間速度は触媒量、更には目標の反応率によって広い範囲で選び得るが、一般的な反応温度としては100℃から210℃であり、実用的には120〜200℃の範囲が好ましい。反応温度が低過ぎる場合には実用的な反応速度が得られず、反応温度が高過ぎる場合には副反応の併発や触媒の失活を招きやすい。
反応圧力は反応温度100〜200℃で使用するギ酸メチルの蒸気圧よりも高い反応圧力が好ましく、また、(1)〜(3)式の分解反応圧力よりも低いことが必要であるから、圧力は1.06〜4.84MPaの範囲が好ましい。
水素とギ酸メチルの比はギ酸メチルの反応を考慮して理論値よりも水素が多い方が好ましく、モル比は1〜100(水素/ギ酸メチル)であり、実用的には1.2〜50(水素/ギ酸メチル)の範囲が好ましい。
液空間速度は0.1〜10(m3−ギ酸メチル/hr/m3−触媒)の範囲、特に0.2〜3(m3−ギ酸メチル/hr/m3−触媒)が一般的である。
【0016】
(6)式のメタノールのカルボニル化反応によるギ酸メチル液相合成反応において反応温度と反応圧力および液空間速度は触媒の種類と触媒量、更には目標の反応率によって広い範囲で選び得るが、一般的な反応温度としては0℃から235℃であり、実用的には20〜200℃の範囲が好ましい。反応温度が低過ぎる場合には実用的な反応速度が得られず、反応温度が高過ぎる場合には副反応の併発や触媒の失活を招きやすい。
反応温度20〜200℃で使用するメタノールの蒸気圧よりも高い反応圧力が好ましく、また、(1)〜(3)式の分解反応圧力よりも低いことが必要であるから、圧力は0.01〜4.06MPaの範囲が好ましい。
一酸化炭素とメタノールの比はメタノールの反応を考慮して理論値よりも一酸化炭素が多い方が好ましく、モル比は1〜100(一酸化炭素/メタノール)であり、実用的には1.2〜50(一酸化炭素/メタノール)の範囲が好ましい。
液空間速度は0.1〜10(m3−メタノール/hr/m3−触媒)の範囲、特に0.2〜3(m3−メタノール/hr/m3−触媒)が一般的である。
【0017】
(4)〜(6)式の一般的な反応方法としては、懸濁床、或いは固定床、回分式、半回分式、流通式等の通常知られているあらゆる方法を用いることができる。触媒は均一触媒、不均一触媒何れも使用することができる。(4)〜(6)式の反応で原料として使用するメタノール、ギ酸メチルは、炭酸ガスの副生等を回避するため、および触媒への負担を軽減する目的で、使用に先だって乾燥剤等によりメタノール、ギ酸メチル中の水分を少なくすることが好ましい。また、溶媒を使用する反応では該溶媒中の水分についても原料と同等の配慮が必要である。
【0018】
(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル分解反応と(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル合成反応は互いに可逆な平衡反応であり、選択率が100%の場合は収支上問題ないが、化学反応である以上、若干の副反応は存在し、メタン、炭酸ガス等の蓄積があり得る。これらの副成物は主に(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル合成反応器の出口ガス中に濃縮されるので、これらを分離して燃焼すること等により熱エネルギーとして回収される。この際に補給される物質はメタノールになるが、メタノールは燃料価格に近い安価な物質であり、従って副成物の処理に伴う経済的損失は少なく抑えられる。
【0019】
本発明において熱利用効率を高めるために、分解生成ガスによる膨張タービン(第1膨張タービン)の排気ガスを利用したアンモニア水混合蒸気の膨張タービン(第2膨張タービン)を設置し、発電を行うことが好ましい。すなわち第1膨張タービン出口に、アンモニア水蒸発用熱交換器、気液分離器、第2膨張タービン、発電機、アンモニア水凝縮用熱交換器、アンモニア水液ポンプおよび予熱用熱交換器を取り付け、余剰の回収した熱エネルギーを利用しアンモニア水を蒸発、凝縮させることにより電気エネルギー変換する。
アンモニア水のアンモニア濃度、アンモニア水蒸発用熱交換器の圧力はアンモニア水蒸発用熱交換器に供給される熱の温度レベルによって広い範囲で選び得るが、一般的なアンモニア水のアンモニア濃度は50〜100wt%であり、実用的には75〜100wt%の範囲が好ましい。アンモニア水蒸発用熱交換器の一般的な圧力は1〜8MPa、実用的には2〜5MPaが好ましい。
各膨張タービンはその効率を保つために、膨張タービン出口での蒸気と液の割合が90/10〜100/0になるように出口圧力を設定する必要が有り、実用的には膨張タービン出口での蒸気と液の割合が95/5〜100/0になるように出口圧力を設定する。
【0020】
また(1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル液相分解反応器、(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル液相合成反応器に1個以上の熱交換器を取り付けることで、余剰の回収した熱エネルギーを効率よく系内部へ熱交換ができる。熱交換器の数はメタノール、ギ酸メチル液相分解反応およびメタノール、ギ酸メチル液相合成反応の条件および膨張タービン出口圧力によってきまるが、実用的には1〜15個が好ましい。
【0021】
本発明の具体的なフローについては以下の実施例で説明するが、本発明によりメタノール、ギ酸メチル分解反応を反応温度におけるメタノール、ギ酸メチル蒸気圧よりも高くすることにより液相反応とし、且つメタノールおよび/またはギ酸メチル分解反応圧をメタノール、ギ酸メチル合成反応圧よりも高くして、メタノールおよび/またはギ酸メチル分解反応器出口に熱交換器、気液分離器、第1膨張タービン、発電機およびメタノール液ポンプを取り付け、電気エネルギーを回収すると共に、第1膨張タービン出口に、アンモニア水蒸発用熱交換器、気液分離器、第2膨張タービン、発電機、アンモニア水凝縮用熱交換器およびアンモニア液ポンプを取り付けることにより発電量を増加させることができる。またメタノール合成反応の反応熱から144℃程度の水蒸気や温水を発生させる。
なお本発明のシステムでは、メタノール、ギ酸メチル分解反応器からの分解ガスやメタノール、ギ酸メチル合成反応器からのメタノール、ギ酸メチルを常温付近で長距離輸送できるので、例えば工場からの200℃程度の廃熱の熱回収と都市部でのスチームや温水暖房への熱利用を距離が相当離れている場合でも有利に行うことができる。
【0022】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に詳しく説明する。但し本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
参考例1((1)式のメタノール液相分解反応)
内容積100mlの振とう式オートクレーブにメタノール24g(ナトリウムメチラート1.3wt%含有)および還元した銅−クロム触媒(日産ガドラー(株)製G-13A)3.0gを用いて、反応温度200℃で3.0時間反応したところ、圧力は7.10MPaに達した。その後オートクレーブを水中で冷却し、気相部のバルブを開いて徐徐に内部のガスを抜き出し、計量すると共にガスクロマトグラフで分析した。生成ガス量は1.07NL、一酸化炭素濃度は17.9vol%であった。
【0024】
参考例2((1)式のメタノール液相分解反応)
内容積500mlの攪拌機付き槽型反応器に200mlのメタノールおよびアルカリ水溶液で展開したラネー銅−クロム触媒(日興リカ(株)製)42.9gを仕込み、反応器を組み立てた。系内に窒素ガスを充填した後、排気する操作を数回繰り返し、系内のガス置換を行った。攪拌速度を1000rpmとし、反応器の加熱を開始して反応温度を192℃とした。温度の上昇と共に系内圧力も上昇し、圧力が所定の抜き出し圧力4.6MPaに達したところで出口側圧力調圧弁を調節して生成ガスの抜き出しを開始した。ガスの抜き出しは反応器の上に設置した冷却器を通して行い、ガスに同伴されたメタノール等の凝縮成分を該冷却器(0℃)にて冷却、凝縮し反応器へ戻した。ガス量はガスメーターにより測定し、経時的にサンプリングし、ガスクロマトグラフにより分析した。
なお、原料メタノールは触媒成分の一つであるナトリウムメチラートを0.5wt%溶解させたものを使用し、プランジャーポンプにより所定の流量で供給した。
反応生成液は、反応器内の液面が一定(滞留液量300ml)となるようにコントロールバルブ(電磁弁)を通して抜き出した。
その結果、一酸化炭素濃度33.5vol%の生成ガスが15.6NL/hの割合で得られ、メタノール供給量に対するメタノール反応率は62.2%であった。
【0025】
参考例3((1)式のメタノールの液相分解反応)
内容積500mlの槽型反応器に還元した銅−クロム−マンガン−バリウム触媒(日産ガードラー(株)製G-99-B-0)120gと5mol%のギ酸メチルを含むメタノール30mlを仕込み、系内のガス置換後加熱を開始した。反応器内に挿入した電極により反応器内の液面を検知し、液面が一定となるようにプランジャーポンプで連続的に5mol%のギ酸メチルを含むメタノールを供給した。生成ガスに同伴されたメタノール等の凝縮成分は該冷却器(0℃)で冷却、凝縮し反応器内に戻した。生成ガス量はガスメーターにより測定した。触媒層温度を197℃、反応圧力5.1MPaおよび原料供給量12.2g/h の条件で、水素65.1%、一酸化炭素31.4%を有するガスが25.2NL/hの割合で生成した。
【0026】
参考例4((2)式のメタノール液相分解反応)
内容積500mlの槽型反応器に水酸化ナトリウム水溶液で展開したラネー銅触媒(日興リカ(株)製)44.2gと30mlのメタノールを仕込み、系内のガス置換後加熱を開始した。反応器内に挿入した電極により反応器内の液面を検知し、液面が一定となるようにプランジャーポンプでメタノールを供給した。生成ガスに同伴された原料メタノールおよび目的生成物であるギ酸メチル等の凝縮成分は該冷却器(0℃)で冷却、凝縮し反応系外に取り出した。生成ガス量はガスメーターにより測定した。
その結果、触媒層温度を177℃、反応圧力3.1MPaおよびメタノール供給量107.9g/h の条件で、メタノール反応率は25.4%、ギ酸メチル収率は10.3 %であった。
【0027】
参考例5((3)式のギ酸メチル液相分解反応)
内径35mm、長さ200mmの反応管にイオン交換樹脂(三菱化学(株)製SA-10A)100mlを充填した。反応条件を触媒層温度70℃、反応圧力0.6MPaとし、ギ酸メチルは触媒容量に対する液空間速度0.5/hとして反応管下部より連続で供給した。
その結果、ガスクロマトグラフによる分析で、同伴する蒸気圧相当のメタノールおよびギ酸メチル以外の成分を含まない実質的に一酸化炭素のみの分解ガスが得られ、供給ギ酸メチルに対する一酸化炭素収率は55.1%であった。
【0028】
参考例6((3)式のギ酸メチル液相分解反応)
内容積500mlの槽型反応器に、ギ酸メチルに対して2.5wt%濃度になる量の炭酸セシウムを溶解したギ酸メチルとメタノールが等モルの混合溶液200mlを仕込み、系内のガス置換後加熱を行った。反応条件は触媒層温度を180℃、反応圧力9.1MPaとして流通式で実験した。ガスに同伴されたギ酸メチルおよびメタノール等の凝縮成分は該冷却器(0℃)で冷却、凝縮しガスを分離した後反応器に戻した。生成ガス量はガスメーターにより測定した。原料溶液ははプランジャーポンプでギ酸メチルとメタノールおよび炭酸セシウム触媒との混合溶液の形で供給し、反応器内に挿入した電極により反応器内の液面を検知し、液面が一定(滞留液量300ml)となるように反応液を一部反応系外に抜き出した。反応液基準の液空間速度は0.14/hであった。
その結果、ギ酸メチル反応率は80.3%、一酸化炭素収率は78.1 %であった。
【0029】
参考例7((3)式のギ酸メチル液相分解反応)
内径13mm、長さ300mmの反応管にイオン交換樹脂(三菱化学(株)製SA-10A)15mlを充填した。原料はメタノールとギ酸メチルのモル比が1:0.9の混合液を用い反応管下部より連続で供給した。
触媒容量に対する液空間速度を0.25/h、触媒層温度70℃、反応圧力0.6MPaの条件で実験した結果、ガスクロマトグラフィによる分析で、同伴する蒸気圧相当のメタノールおよびギ酸メチル以外の成分を含まない実質的に一酸化炭素のみの生成ガスが得られ、供給ギ酸メチルに対する反応率は87.8%であった。
【0030】
参考例8((4)式のメタノール液相合成反応)
内容積500mlの攪拌機付き槽型ステンレス反応器に溶媒として100mlのメタキシレン、アルカリ水溶液で展開した日興リカ(株)製ラネー銅触媒40.4gおよび28wt%のナトリウムメトキシドメタノール溶液15gを仕込み、反応器を組み立てた。系内に窒素ガスを充填した後、排気する操作を数回繰り返し、系内のガス置換を行った。続いて水素/一酸化炭素の比が2である混合ガスを4.00MPa充填した。攪拌速度を1000rpmとし、反応器を温度110℃に加熱した。この温度で1時間維持し反応させた。その後、反応器を冷却した。気相部を徐徐に抜き出し、ガス量を計量するとともに分析した。その結果、一酸化炭素の反応率は78.6%、メタノールの選択率は88.9%であった。
【0031】
参考例9((5)式のギ酸メチル水素化反応)
内径15mm、長さ200mmの反応管に、5W%水酸化ナトリウム水溶液で展開した粒状ラネー銅触媒(日興リカ(株)製)10mlを充填した。反応条件を触媒層温度160℃、反応圧力3.3MPa、水素/ギ酸メチルのモル比を2.2とし、ギ酸メチル供給量は触媒容量に対する液空間速度1.87/hとした。ギ酸メチルおよび水素は反応管上部より連続で供給した。
その結果、ギ酸メチル反応率は80.7%、メタノール選択率は94.0%であった。
【0032】
参考例10((6)式のメタノールカルボニル化反応)
内容積100mlの攪拌機付き槽型ステンレス反応器にイオン交換樹脂(バイエル(株)製)15mlとメタノール50gを充填した。反応条件を触媒層温度60℃、反応圧力5.1MPaとして5時間反応させた。なお、反応圧力が一定圧力になるように一酸化炭素を供給した。
その結果、メタノール反応率は82.1%、ギ酸メチル収率は76.9%であった。
【0033】
実施例1
以上の参考例のデータを用い、図1のフローに基づき本発明による熱回収と熱利用および発電システムの計算を行った(Aspen Technology, Inc.のプロセスシミュレータASPEN PLUS使用)。
図1は本発明の熱回収と熱利用のシステムを示すフロー図の一例である。
【0034】
(メタノール、ギ酸メチル分解反応に関わる系)
図1において、(1)および(3)式の反応の原料となるメタノールおよびギ酸メチルは流路100、熱交換器E100、流路110を経て系内部熱交換による予熱が行われ、ギ酸メチル液相分解反応器R100に供給される。ギ酸メチル液相分解反応器R100は参考例7に用いたイオン交換樹脂が充填されており、温度70℃、圧力0.61MPaでギ酸メチル液相分解反応が行われる(ギ酸メチル反応率54.4%)。ギ酸メチルの液相分解反応により生成したメタノール(未反応供給メタノールを含む)、一酸化炭素および未反応ギ酸メチルは流路120、熱交換器E100、流路125を経て気液分離器F130に入る。気液分離器F130より排出されたガス相(気液分離器F130温度51.3℃のメタノール、ギ酸メチル蒸気圧に相当するメタノール/ギ酸メチル、液相メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素を除く生成した一酸化炭素)は流路130よりCOガス圧縮機C100を経て加圧され、流路140を経て気液分離器F100に供給される。なお、流路1040より系外部からの冷却水が気液分離器F100に供給され、流路1050より系外に排出され、気液分離器F100での冷却熱に使われる。気液分離器F100より排出されたガス相(気液分離器F100温度50.0℃のメタノール、ギ酸メチル蒸気圧に相当するメタノール/ギ酸メチル、液相メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素を除く生成した一酸化炭素)は流路150よりCOガス圧縮機C110を経てさらに加圧され、流路160を経て気液分離器F110に供給される。気液分離器F100より排出された液相(メタノール/ギ酸メチル、メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素)は流路170、流路190、熱交換器E110、流路200を経て系内部熱交換による予熱が行われ、メタノール/ギ酸メチル液ポンプP100に供給される。なお、気液分離器F130より排出された液相(メタノール/ギ酸メチル、メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素)は流路180を経て流路170に合流される。(1)および(3)式の反応の原料となるメタノールおよびギ酸メチルはメタノール/ギ酸メチル液ポンプP100の出口流路210から、熱交換器E120、流路220、熱交換器E130、流路230を経て系内部熱交換による予熱が行われ、メタノール/ギ酸メチル液相分解反応器R110に供給される。なお、流路1000より系外部からの排ガスがメタノール/ギ酸メチル液相分解反応器R110に供給され、流路1010より排出され、系外部からの加熱による排ガスからの熱回収が行われる。メタノール/ギ酸メチル液相分解反応器R110は参考例3に用いた銅−クロム−マンガン−バリウム触媒が充填されており、温度197℃、圧力5.56MPaでメタノールおよびギ酸メチル液相分解反応が行われる(メタノール反応率10.8%、ギ酸メチル反応率97.4%)。メタノールおよびギ酸メチルの液相分解反応により生成した一酸化炭素、水素および未反応メタノール、ギ酸メチルは流路240、熱交換器E130、流路260を経て気液分離器F120に入る。気液分離器F120より排出された液相(未反応メタノール/ギ酸メチル、未反応メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素)は流路270、メタノール/ギ酸メチル液ポンプP110、流路280を経てメタノール/ギ酸メチル液相分解反応器R110に供給され、ガス相(気液分離器F120温度194.3℃のメタノールおよびギ酸メチル蒸気圧に相当する未反応メタノール/ギ酸メチル、液相未反応メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素を除く生成した一酸化炭素/水素)は流路290より第1膨張タービンEX100に供給される。第1膨張タービンEX100で減圧されたガスは流路300、熱交換器E120、流路310、熱交換器E140、流路320を経て、ギ酸メチル液相分解反応器R100で系内部熱交換により反応熱および未反応メタノール/ギ酸メチルの蒸発潜熱分相当の熱供給が行われ、流路325を経て気液分離器F140に入る。気液分離器F140より排出されたガス相(気液分離器F140温度70.0℃のメタノール、ギ酸メチル蒸気圧に相当するメタノール/ギ酸メチル、液相メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素を除く生成した一酸化炭素/水素)は流路340、熱交換器E110、流路350を経て気液分離器F110に供給される。なお、流路1020より系外部からの冷却水が気液分離器F110に供給され、流路1030より系外に排出され、気液分離器F110での冷却熱に使われる。気液分離器F110より排出された液相(メタノール/ギ酸メチル、メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素)は流路370、流路380を経てメタノール/ギ酸メチル液ポンプP100に供給される。なお、気液分離器F140より排出された液相(メタノール/ギ酸メチル、メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素)は流路330を経て、流路370に合流される。気液分離器F110より排出されたガス相(気液分離器F110温度25℃のメタノール、ギ酸メチル蒸気圧に相当する未反応メタノール/ギ酸メチル、液相未反応メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素を除く生成した一酸化炭素/水素)は流路360により長距離輸送される(輸送距離10km、圧力損失0.05MPa)。一方、熱交換器E520より排出された液相(メタノール/ギ酸メチル、メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素)は、流路100により長距離輸送される(輸送距離10km、圧力損失0.303MPa)。
【0035】
(メタノール合成反応に関わる系)
(5)および(6)式の反応の原料となる一酸化炭素および水素は流路360、熱交換器E500、流路500、流路530を経て系内部熱交換による予熱が行われ、メタノールカルボニル化液相合成反応器R500に供給される。メタノールカルボニル化液相合成反応器R500は参考例10に用いたイオン交換樹脂が充填されており、温度60℃、圧力3.03MPaでメタノールカルボニル化液相合成反応が行われる(メタノール反応率16.3%)。メタノールカルボニル化液相合成反応により生成したギ酸メチル(未反応供給ギ酸メチルを含む)および未反応メタノール、一酸化炭素および未反応供給水素は流路540を経て気液分離器F500入る。気液分離器F500より排出されたガス相(気液分離器F500温度60.0℃のメタノール、ギ酸メチル蒸気圧に相当するメタノール/ギ酸メチル、液相メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素を除く一酸化炭素/水素)は流路550よりCO/水素ガス圧縮機C500、流路560、流路610、熱交換器E510、流路620を経て加圧および内部熱交換による予熱が行われ、ギ酸メチル水素化液相合成反応器R510に供給され、液相(メタノール/ギ酸メチル、メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素)は流路570から分岐された流路590、メタノール/ギ酸メチル液ポンプP500、流路600を経て加圧され、流路560に合流される。また、流路570の液相の一部は流路580に分岐され、流路690に合流される。ギ酸メチル水素化液相合成反応器R510は参考例9に用いた粒状ラネー銅触媒が充填されており、温度150℃、圧力3.03MPaでギ酸メチル水素化液相合成反応が行われる(ギ酸メチル反応率11.4%)。ギ酸メチル水素化液相合成反応により生成したメタノール(未反応供給メタノールを含む)および未反応ギ酸メチル、未反応供給一酸化炭素および未反応水素は流路630、熱交換器E510、流路635、熱交換器E530を経て気液分離器F510入る。
気液分離器F510より排出されたガス相(気液分離器F510温度150.0℃のメタノール、ギ酸メチル蒸気圧に相当するメタノール/ギ酸メチル、液相メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素を除く一酸化炭素/水素)は流路650よりCO/水素ガス圧縮機C510、流路510、流路520を経て加圧され流路500に合流され、液相(メタノール/ギ酸メチル、メタノール/ギ酸メチルに溶解した一酸化炭素/水素)は流路660から分岐された流路670、メタノール/ギ酸メチル液ポンプP510、流路680を経て加圧され、流路510に合流される。また、流路660の液相の一部は流路690、流路700、熱交換器E500、流路710を経て熱交換器E520に供給される。なお、流路1060より系外部からの冷却水が熱交換器E520に供給され、流路1070より系外に排出され、熱交換器E520での冷却熱に使われる。ここで、流路1200から温水および水蒸気を作るのに使用される水が系外から供給され、メタノールカルボニル化液相合成反応器R500で加熱され、流路1210から分岐された流路1220より温水が系外に排出され、熱利用される。また、流路1210の温水の一部は流路1230に分岐され、熱交換器E530で系内部熱交換による予熱が行われ、流路1240、ギ酸メチル水素化液相合成反応器R510、流路1250を経て水蒸気が系外に排出され熱利用される。
【0036】
(アンモニア水の蒸発と凝縮に関わる系)
熱交換器E410で凝縮されたアンモニア水は流路400を経てアンモニア水液ポンプP400に供給される。なお、流路1100より系外部からの冷却水が熱交換器E410に供給され、流路1110より系外に排出され、熱交換器E410での凝縮熱に使われる。アンモニア水液ポンプP400の出口流路410から、凝縮されたアンモニア水が熱交換器E400で系内部熱交換による予熱が行われ、流路420を経て熱交換器E140で系内部熱交換により大部分が蒸発され、流路430を経て気液分離器F400に供給される。気液分離器F400より排出された液相は流路440、熱交換器E400、流路450を経て熱交換器E410に供給され、ガス相は流路460より第2膨張タービンEX400に供給され、減圧されたガスは流路470を経て熱交換器E410に供給される。なお、第1膨張タービンEX100と第2膨張タービンEX400に接続されている発電機M100から動力が発生する。
【0037】
各流路における温度、圧力、各成分組成を表1〜表4に記載する。なお以下の表においてブランク部分は前流路と変わらないことを示し、各成分組成の欄の「液」は液体、「気」は気体、「混」は気液状態を示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004691632
【0039】
【表2】
Figure 0004691632
【0040】
【表3】
Figure 0004691632
【0041】
【表4】
Figure 0004691632
【0042】
また熱交換器、気液分離器および反応器の熱交換量は以下の通りである。
【表5】
Figure 0004691632
【0043】
液ポンプ、膨張タービン、ガス圧縮機の仕様は以下の通りにした。
メタノール/ギ酸メチル液ポンプ(ポンプ効率90%)
P100:消費動力63 KWH 、P110:消費動力 1 KWH
P500:消費動力 6 KWH 、P510:消費動力 6 KWH
アンモニア水液ポンプ(ポンプ効率90%)
P400:消費動力58 KWH
膨張タービン(断熱効率80%)
EX100:発生動力 794KWH 、EX400:発生動力1061KWH
ガス圧縮機(断熱効率85%)
C100:消費動力 53KWH 、C110:消費動力 54KWH
C500:消費動力 67KWH 、C510:消費動力 55KWH
【0044】
以上のシステムにおいて、(1)および(3)式の反応によるメタノール、ギ酸メチル液相分解反応における外部からの回収熱量▲1▼(200℃の排ガス利用)は60.678 ×106 kJ/hr、(5)および(6)式の反応によるメタノール、ギ酸メチル液相合成反応における外部での利用熱量▲2▼(144℃の水蒸気および55℃の温水利用)は(6.555+10.339+11.498)×106=28.392 ×106kJ/hr、発電量(発生動力と消費動力の差)▲3▼は[(794+1061)−(63+1+6+6+58+53+54+67+55)]=1492KWHであり発電効率を38.2%として14.051×106 kJ/hrとなる。これより本システムの熱輸送効率〔(▲2▼+▲3▼)/▲1▼〕は70.0%となる。従って本システムでは200℃の比較的低温の排熱源から144℃の水蒸気利用および55℃の温熱利用と発電を極めて高効率に行うことができることが分かる。
【0045】
実施例2
次に示す条件以外は実施例1と同様にして、参考例に基づき本発明による熱回収と熱利用および発電システムの計算を行った。
メタノールおよびギ酸メチル液相分解反応圧力6.77MPa(R110:メタノール反応率20.4%、ギ酸メチル反応率98.6%)、メタノールカルボニル化液相合成反応温度70℃、圧力4.04MPa(R500:メタノール反応率21.9%)およびギ酸メチル水素化液相合成反応温度160℃、圧力4.04MPa(R510:ギ酸メチル反応率14.8%)
【0046】
各流路における温度、圧力、各成分組成を表6〜表9に記載する。なお以下の表においてブランク部分は前流路と変わらないことを示し、各成分組成の欄の「液」は液体、「気」は気体、「混」は気液状態を示す。
【0047】
【表6】
Figure 0004691632
【0048】
【表7】
Figure 0004691632
【0049】
【表8】
Figure 0004691632
【0050】
【表9】
Figure 0004691632
【0051】
また熱交換器、気液分離器および反応器の熱交換量は以下の通りである。
【表10】
Figure 0004691632
【0052】
液ポンプ、膨張タービン、ガス圧縮機の仕様は以下の通りにした。
メタノール/ギ酸メチル液ポンプ(ポンプ効率90%)
P100:消費動力46 KWH 、P110:消費動力 1 KWH
P500:消費動力 5 KWH 、P510:消費動力 5 KWH
アンモニア水液ポンプ(ポンプ効率90%)
P400:消費動力35 KWH
膨張タービン(断熱効率80%)
EX100:発生動力 493KWH 、EX400:発生動力 503KWH
ガス圧縮機(断熱効率85%)
C100:消費動力 64KWH 、C110:消費動力 62KWH
C500:消費動力 39KWH 、C510:消費動力 29KWH
【0053】
以上のシステムにおいて、(1)および(3)式の反応によるメタノール、ギ酸メチル液相分解反応における外部からの回収熱量▲1▼(200℃の排ガス利用)は44.104 ×106 kJ/hr、(5)および(6)式の反応によるメタノール、ギ酸メチル液相合成反応における外部での利用熱量▲2▼(144℃の水蒸気および65℃の温水利用)は(5.222+ 9.627+13.354)×106=28.203 ×106kJ/hr、発電量(発生動力と消費動力の差)▲3▼は[(493+ 503)−(46+1+5+5+35+64+62+39+29)]= 710KWHであり発電効率を38.2%として 6.686×106 kJ/hrとなる。これより本システムの熱輸送効率〔(▲2▼+▲3▼)/▲1▼〕は79.1%となる。従って本システムでは200℃の比較的低温の排熱源から144℃の水蒸気利用および65℃の温熱利用と発電を極めて高効率に行うことができることが分かる。
【0054】
【発明の効果】
以上の実施例より明らかなように本発明による熱回収と熱利用および発電の方法では、従来高効率で熱利用が困難であった150〜250℃程度の排熱源から144℃程度の水蒸気発生と55〜65℃の温水発生および電気発生を、従来得られなかったような極めて高効率で熱利用を行い、工場や都市部の熱需要地での種々の熱源や冷暖房に有効に用いることができる。また、電気発生することにより熱回収側と熱利用側との距離による制約が無くなる。
本発明の方法は比較的低温の温和な条件で反応が行われるので装置コストが少なくて済み、また液相反応を用いれば効率良く熱回収と熱利用および発電を行うことができるので、省エネルギー対策として極めて優れた方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱回収と熱利用のシステムを示すフロー図の一例である。
【符号の説明】
C100、C110 COガス圧縮機
C500、C510 CO/H2ガス圧縮機
E100、E110、E120、E130、E140、E400、E410、
E500、E510、E520、E530 熱交換器
EX100 第1膨張タービン
EX400 第2膨張タービン
F100、F110、F120、F130、F140、F400、F500、
F510 気液分離器
M100 発電機
P100、P110、P500、P510 メタノール/ギ酸メチル液ポンプ
P400 アンモニア水液ポンプ
R100 ギ酸メチル液相分解反応器
R110 メタノール/ギ酸メチル液相分解反応器
R500 ギ酸メチル水素化液相合成反応器
R510 メタノールカルボニル化液相合成反応器

Claims (3)

  1. (1)〜(3)式のメタノール、ギ酸メチル液相分解反応(吸熱反応)を組み合わせて熱回収を行い、分解生成ガスを用いて膨張タービンにより発電した後、(4)〜(6)式のメタノール、ギ酸メチル液相合成反応(発熱反応)を組み合わせて熱利用を行う、メタノール・ギ酸メチルの化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法であって、液相分解反応を液相合成反応よりも高い圧力で行い、その圧力差により発電を行うことを特徴とする化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法
    CH3OH→2H2+CO (1)
    2CH3OH→2H2+HCOOCH3 (2)
    HCOOCH3→CH3OH+CO (3)
    2H2+CO→CH3OH (4)
    2H2+HCOOCH3→2CH3OH (5)
    CH3OH+CO→HCOOCH3 (6)
  2. 分解生成ガスによる膨張タービンの排気ガスを利用したアンモニア水混合蒸気の膨張タービンを設置し、更に発電を行う請求項1に記載の化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法。
  3. 相分解反応の反応器内に取り付けた熱交換器によ熱回収、液相合成反応の反応器内に取り付けた熱交換器による熱利用の少なくとも一方を行う請求項1または請求項2に記載の化学エネルギーを用いる熱回収と熱利用および発電の方法。
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