JP4691448B2 - 回転電機製造装置及び回転電機製造方法 - Google Patents

回転電機製造装置及び回転電機製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電動機、発電機、電動発電機等の回転電機の製造に係り、特に、回転電機の巻線コイルを含浸ワニスの硬化により固定する技術に関する。
電動機や発電機等の回転電機の固定子等の製造工程の中には、固定子のスロットに挿入された巻線コイルの絶縁強化、耐振、耐油、耐薬品、放熱性等の向上を目的として巻線コイルにワニスを塗布して硬化させる含浸ワニス工程がある。この含浸ワニス工程には、ワニス滴下工程のほかに、その前処理及び後処理のための加熱処理を伴う工程として、図17に処理フローを示すような予備乾燥、ゲル化、硬化の工程がある。含浸ワニス工程では、ワークを回転させながらコアの外側、内側にワニスが付着しないようにコイルエンド及びスロットからの立ち上がり部分のみにワニスを滴下する滴下含浸処理が行われる。加熱処理を伴う工程には、水分除去、巻線ストレス緩和を行う予備乾燥やワニス垂れ防止にワークを回転しながらワニス硬化する工程があり、これらの工程での加熱方法としては、オーブンや熱風循環炉等を用いて加熱する方法がある。
従来の一般的加熱方法としては、図18に示すようなオーブン加熱、図19に示すような熱風循環炉等による加熱が知られている。図18に示すオーブン加熱では、ワーク(図は、巻線コイル挿入済みの固定子を示す)をオーブン内に入れて、回転させながらヒータ加熱された空気により加熱する方法が採られる。したがって、この方法はバッチ処理となる。また、図19に示す熱風循環炉による加熱では、炉内のトンネルをワークを回転させながら通過させ、同じくヒータ加熱された空気で加熱する方法が採られる。この方法は、オーブン加熱とは異なり、連続処理が可能となる。
ところで、従来の含浸ワニス工程には次のような問題点がある。
(1)予備乾燥、硬化の加熱処理にオーブンや熱風循環炉等を用いているが、この加熱方法では、ヒータからの熱が空気を温め、それからワークを温めることになるので、ワークの深部に当たるコイルエンド内、スロット内を確実に温めるには長時間を要し、予備乾燥では1.5〜2時間、硬化では1.5〜3時間程度と長くかかり、全体の処理時間が3.5〜6時間と長くかかる。また、含浸ワニス工程の各段階の工程毎にワークを移動させる必要が有り、作業効率が悪い。
(2)含浸ワニス工程全体を通じて、予備乾燥〜冷却、ワニス滴下〜硬化、硬化〜冷却とワークを加熱する工程の前後にオーブンや熱風循環炉等からワークを出し入している。そのため、ワークを出し入れする治具や装置及び作業時間が発生して、無駄な仕事をしている。
(3)ワニス滴下時は、図20に示すように、最初にワニス粘度(図に実線で示す)が最も低くなるような温度をワークに持たせた状態でワニス塗布しているが、ワニスを滴下すると、ワーク温度(図に破線で示す)がワニスに吸収されて滴下開始時と終了時ではワーク温度が高温から低温に変動すると共にワニス粘度も低粘度から高粘度へ変動してしまう。このように粘度が高くなると、マグネットワイヤ間へのワニスの浸透性が悪くなるため、ゆっくり時間をかけて(0.5〜1時間程度)ワニスを浸透させている。
(4)従来、モータのコイル(ワーク)に電流を供給しながらワニスを含浸させる方法も提案されてはいる。しかし、ワークに電流を供給しながら滴下含浸させる際、そのまま回転させると給電線が捩れたり、回転軸に巻き付いたりして切断されてしまう。
なお、回転電機のワニス含浸処理を開示する技術として、特許文献1記載の技術がある。
特開平7−31108号公報
本発明は、上記のような事情に鑑み案出されたものであり、回転電機の製造における巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる一連の工程において、ワークをセットしたまま予備乾燥、ワニス滴下、硬化までを短時間で一環して行うことができるよう、ワークに電流を供給しながら当該ワークを回転させることができ、且つ作業効率を向上できる回転電機の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の側面は、回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程に使用する回転電機製造装置において、巻線コイルを配したワークを支持して回転させる回転装置と、前記巻線コイルに電力を投入する電源装置と、前記巻線コイルにワニスを供給するワニス含浸装置とを備え、前記回転装置は、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転装置であることを特徴とする回転電機製造装置にある。
本発明の第2の側面は、回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程を含む回転電機の製造方法において、巻線コイルを配したワークを支持して、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転をさせると共に、前記巻線コイルに電力を投入しながら、前記巻線コイルにワニスを供給することを特徴とする回転電機の製造方法にある。
本発明においては、ワークの回転装置を備えることで、ワニスの滴下を行う場合のワークの回転により、ワニス塗布の均一化が可能となる。
また、ワークの巻線コイルへの電力の直接供給により、巻線コイル内部からの自己発熱及び誘導加熱との併用によって予備乾燥やワニス硬化のための加熱処理を実行することができる。しかも、この加熱は、ワークを囲う手段を要しないため、ワニスの滴下含浸処理と併せて行うことができる。
また、電力の供給状態でワークを連続又は往復動回転させることができるため、供給電力の制御で、ワークの温度を適温に設定しながら、ワニスの滴下工程を実行可能とすることができる。
また、ワニス含浸装置を備えることで、含浸ワニス工程の予備乾燥、滴下、ゲル化及び硬化の全ての工程を実行することができる。
また、本発明の第1又は第2の側面にあるように、往復動回転させる場合には、ワニス滴下工程を行った場合のワニス塗布の均一化と、給電線の引回しの単純化を併せて実現することができる。
また、回転装置が往復動回転装置である場合には、前記電源装置からの給電線は、給電線ねじれ防止機構によって支持されていることが好ましい。この構成では、回転装置の往復動化に伴う給電線の暴れを防ぐことができる。
また、前記巻線コイルに電力を投入する前記電源装置は、商用電源よりも周波数の高い高周波電力を発する高周波電源装置であることが好ましい。これにより、加熱処理時間を大幅に短縮することができる。
また、ワークを回転電機の固定子とする場合には、含浸ワニス工程において、上記の各効果を特に有効に発現させることができる。
[図1]第1実施例の回転電機製造装置を示す一部断面側面図である。
[図2]回転電機製造装置を軸端方向から見た正面図である。
[図3]高周波電源装置の構成を示すブロック図である。
[図4]高周波加熱による加熱原理を従来の加熱原理と対比して示す模式図である。
[図5]第2実施例の回転電機製造装置を示す一部断面側面図である。
[図6A]第3実施例における、360°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示すワーク端面側から見た説明図。
[図6B]第3実施例における、360°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示すワークの軸方向断面から見た説明図。
[図7]第3実施例における、360°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示す説明図。
[図8]第3実施例における、360°以上の往復動回転の場合のコータロールタイプのワニス供給手段の構成及び配置を示す説明図。
[図9]第3実施例における、180°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示す説明図。
[図10A]第3実施例における、180°の往復動回転によりワニスを塗布している例を示す説明図。
[図10B]第3実施例における、180°の往復動回転によりワニスを塗布している例を示す説明図。
[図10C]第3実施例における、180°の往復動回転によりワニスを塗布している例を示す説明図。
[図11]第3実施例における、180°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示す説明図。
[図12]第3実施例における、180°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示す説明図。
[図13]第3実施例における、120°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示す説明図。
[図14A]第3実施例における、120°の往復動回転によりワニスを塗布している例を示す説明図。
[図14B]第3実施例における、120°の往復動回転によりワニスを塗布している例を示す説明図。
[図14C]第3実施例における、120°の往復動回転によりワニスを塗布している例を示す説明図。
[図15]第3実施例における、120°以上の往復動回転の場合の滴下ノズルの構成及び配置を示す説明図。
[図16]第3実施例における、120°以上の往復動回転の場合の滴下ノズル及びコータロールタイプのワニス供給手段の構成及び配置を示す説明図。
[図17]一般的含浸ワニス工程の説明図である。
[図18]従来のオーブン加熱処理を概念的に示す模式図である。
[図19]従来の熱風循環炉による加熱処理を概念的に示す模式図である。
[図20]従来の方法によるワニス滴下中のワニス粘度変化を示すグラフである。
本発明における電源装置は、上記のごとく、商用電源よりも周波数の高い高周波電力を供給するものとするのが有効である。ここで、商用電源とは、電力供給業者から供給されている50Hzもしくは60Hzの電源又はこれに準じる電源であって、商用3相電力を発する商用3相電源を含む概念である。これにより予備乾燥、硬化の加熱処理に高周波電流をワークに流すことで、コイル内部からの自己発熱及び誘導加熱との併用によって予備乾燥では数分、硬化では数十分程度と処理を短時間で行うことができる。また、本発明の装置は、回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程における巻線コイルの予備乾燥工程、巻線コイルに含浸させたワニスのゲル化工程及び硬化処理工程の全てに適用可能であるが、特にワークを回転させることが望ましい滴下含浸工程に用いて特に有効なものである。
また、ワークは内径側で支持して回転させることが好ましく、これにより、ワークの支持に伴うワークを取巻く障害物がなくなり、ワニスの滴下のための装置の最適位置への配置が可能となる。
また、前記往復動回転装置によるワークの回転は、同一方向への360°以上の角度の回転を交互に繰り返すことが好ましい。これにより、ワニス含浸装置に設けるワニス供給手段の数を最低限にすることができ、設備を小型化することができる。
また、前記往復動回転装置によるワークの回転は、同一方向への180°以上360°未満の回転を交互に繰り返すこととすることもできる。この場合には、ワニス含浸装置におけるワニス供給手段を、前記巻線コイルにワニスを供給すべき1つのワニス塗布対象部分(たとえば、コイルエンドの外周面あるいは内周面)に対して、2箇所以上に設けることが好ましい。この場合には、すべてのワニス供給手段を、コイルの端子、コネクタ給電線等と干渉しないように配置し、回転させることができる。そして、端子側のコイルエンドの内周面に対してワニスを供給するワニス供給手段についても、コイルの外周側から伸ばして配置することができる。特に、上記ワークを内径側から支持する構造をとった場合には、支持部材にワニスが付着することを防止することができる。
また、前記往復動回転装置によるワークの回転は、同一方向への120°以上180°未満の回転を交互に繰り返すこととすることもできる。この場合には、ワニス含浸装置におけるワニス供給手段を、前記巻線コイルにワニスを供給すべき1つのワニス塗布対象部分に対して、3箇所以上に設けることが好ましい。
また、前記ワニス供給手段としては、ノズルから重力方向に滴下させる従来のタイプ以外に、インジェクターによりワニスを吐出するよう構成されたインジェクタータイプのもの、あるいは、ワニスを掻き上げたコータロールから転写させることにより当該ワニスを供給するよう構成されたコータロールタイプのものなどを適用することができる。
本発明を3相コイルを組込んだ固定子の製造に適用する場合を例として説明する。図1及び図2は第1実施例の回転電機製造装置を示す。図示するように、この装置は、装置機台1上に回転装置2と、それに付随するワーク支持手段としてのチャック3と、別位置に設置されるため図示しない高周波電源装置と、ワークSの外周支持手段5を配した構成とされている。ワニス滴下含浸装置6は、装置機台1とは別の支持枠に支持して配置され、その滴下ノズル61がワークSに向かって垂下されている。
回転装置2は、装置機台1に両端をベアリング11を介して回転自在に支持した主軸20と、主軸20をその一端側で、本例においてタイミングベルトとプーリからなるベルト伝動機構で構成される伝動機構21を介して往復回転駆動するモータ22とから構成されている。そして、この往復回転駆動に伴う給電線7の暴れを防ぐべく、主軸20を支持するベアリング11の間に、ケーブルベヤからなる給電線ねじれ防止機構70が配置され、これに電源装置からの給電線7が支持されている。主軸20の他端にはワークSを内径側から把持するチャック3が設けられている。この装置によりワニス滴下工程を実施する場合に、回転装置2の反転によるワニス塗布の不均一を分散させるために、反転位置を反転角度0〜360°で、10°間隔に任意に可変できる制御を可能とされている。外周支持手段5は、ワークSの下方に配置され、その支持枠内にワニスを受けるバット62が配置されている。
高周波電源装置4は、図3にブロックで示すように、商用の3相200V電源40にノイズ除去用のトランス41を介して接続するものとされている。この例の高周波電源装置4は、ノイズ除去により波形の乱れのない3相電流を直流に変換する、例えばコンバータからなる整流部42と、整流部42で整流された脈流を平滑化する、例えばコンデンサからなる平滑部43と、平滑化された直流を単相20kHz程度の高周波電流に変換する、例えばインバータからなる高周波発生部44を備えて構成されている。この高周波発生部44は、制御部45により制御するものとされ、制御部45へは温度情報と制御条件が入力されるように、例えば巻線コイルScに組込まれたサーミスタを検出素子とする温度情報取得手段46と、加熱条件の条件入力手段47が接続されている。なお、図3において、符号Sは、処理対象のワークSとしての回転電機の巻線コイル挿入済みの固定子を示す。
図1及び図2に戻って、高周波電源装置4とワークSの巻線コイルScは、給電線7により接続可能とされている。具体的には、ワークSへの給電のための高周波電源4からの3本の給電線7の3極コネクタ71がチャック3に支持されており、このコネクタ71に嵌め合わされるコネクタ72を備える結線手段がチャック3に取付け可能とされている。この結線手段は、3極の中継ターミナルを備える端子台73で構成されている。この端子台73は、コ字状の取付金具と、取付金具に絶縁材を介して固定された導体からなる3極の中継ターミナルを備え、取付金具の両脚部に、チャック3への取付けのためのボルト孔を備える構成とされている。各中継ターミナルは、導線74を介して端子台73側のコネクタ72に接続され、各ターミナルごとに巻線コイルのリード端子を着脱自在に接続する接続部が設けられている。
次に、この装置を用いて含浸ワニス工程の各段階の工程を実施する具体的方法を説明する。これら各工程の実施に先立ち、ワークSは、チャック3により把持して回転装置2にセットされ、更に巻線コイルScのU,V,W相のリード端子を端子台73の3極の中継ターミナルに接続される。その後、端子台73から延びる導線74のコネクタ72をチャック3側のコネクタ71にはめ込んで工程実施の準備が完了する。この工程準備は、後記する全ての工程の実施に共通である。
先ず、予備乾燥工程を実施する場合、高周波電源装置4だけを作動させて加熱処理を行う。この処理では、高周波電源装置4の高周波電流の出力側を、機台1にチャック3で設置したワークSの3相巻線コイルScに接続し、U−V相、V−W相、W−U相の巻線の順に電力を投入する。この電力供給によりワークSは、巻線コイルScの内部からの自己発熱及び誘導加熱により自身で内部から発熱する。こうしてワークSを加熱することにより、巻線コイルScに巻線及びスロットへの挿入時に生じた残留ストレスを緩和すると共に、ワークSの水分を蒸発乾燥させることができる。
次に、滴下含浸工程を実施する場合、高周波電源装置4を作動させると共に回転装置2を作動させ、更に滴下装置6を作動させて、加熱処理と滴下含浸処理を同時に実行する。この処理では、高周波電源装置4により、上記と同様の電力供給によりワークSをワニス粘度が最適となる温度に保ちながら、回転装置2によりワークSを回転させることで、滴下含浸装置6の各ノズル61から滴下されるワニスが適温保持による最適な流動性でワークSの深部まで万遍なく浸透し、均一なワニス塗布がなされる。
滴下含浸工程に続く硬化工程を実施する場合、高周波電源装置4を作動させると共に回転装置2を作動させて加熱処理を実行する。この処理では、高周波電源装置4により、上記と同様の電力供給によりワークSをワニスの硬化に適する適温に保ちながら、回転装置2によりワークSを回転させることで、塗布されたワニスが硬化初期の流動性で偏りを生じることが防止されながら硬化が進行し、最終的に均一な硬化状態が得られる。
図4は、高周波加熱による加熱原理を従来の加熱原理と対比して示す。図はワークの積層コアスロットの断面を模式化して示すもので、図の左側に示す従来のオーブンによる加熱では、ヒータの熱が空気を介してワークに伝達される。この場合、ワークは外側から徐々に温度上昇するため、硬化に長時間を要することになる。これに対して、本実施例の高周波加熱によると、スロット内部のマグネットワイヤM/Wに高周波電流を加えることで、マグネットワイヤは自身の電気抵抗により自己発熱すると共に、通電による磁界の発生で、コアに渦電流が発生し、コア側も発熱する作用が生じる。これによりワーク自体からの加熱で、スロット内に塗布されたワニスを短時間に硬化させることができる。
上記の処理内容から明らかなように、本実施例装置による加熱処理は、高周波電源装置4とワークSの結線のみにより実行されるため、特にワークSを取り囲む装置を要することなく行われる。したがって、最適位置にワニス滴下のための装置6を配置して、従来のオーブンや熱風循環炉による加熱処理のように、ワニスの滴下のためのステージ替えをなくし、予備乾燥から硬化までの全ての処理を1ステージで実施することが可能である。しかも、ワークSを回転しながら高周波電流をワークSに流すことによりコイル加熱ができるため、コイル内に組み込まれているサーミスタ46が温度を感知して、その温度信号を高周波電源4にフィードバックして、流す電流量や通電時間を制御することで、コイル温度を任意の温度に保つことができる。それによりワニス滴下時にこの加熱処理を行った場合、ワーク温度変動がなくなり、且つ、ワニス粘度の変動もなくなって、滴下に最適なワニス粘度を保つことで、マグネットワイヤ間へのワニスの浸透性がスムーズになり、時間も短縮される。
以上詳述したように、この第1実施例によれば、巻線コイルScに高周波電力を直接投入することで、巻線コイルScの内部からの自己発熱及び誘導加熱の併用によって、予備乾燥、ゲル化、硬化処理を短時間(0.5〜1時間程度)で加熱処理できる。また、巻線コイルScを加熱する装置として、オーブン、熱風循環炉等の大型装置は必要とせず、高周波電源装置4のみの使用で装置を小型化できる。更に、万一、不良品が発生した場合でも、処理時間が短いことで、処理結果も短時間で分かるため、早期に不良品を発見でき、ロスを最小限に抑えることができる。しかも、巻線コイルScに組込まれているサーミスタ46を用いて、温度関連情報としての巻線コイル温度自体あるいは温度により変化する抵抗をモニタして温度制御することで、ワニス硬化を確実に行うことができ、品質が安定する。
なお、温度関連情報の取得手段は、サーミスタに限るものではなく、非接触温度計、熱電対、サーモトレサー等でも代用できる。また、高周波電力を投入すると、誘導加熱によりワークSを支持しているチャック3の材質に鉄等の磁性体を使用すると、チャックが高温となって、巻線コイルScにチャック温度が伝達されて、温度のばらつきを生じてしまう。このため、チャック3の材質には、導伝率の高いアルミニウム、銅及びセラミック等の材質のものを使用して、チャックSの発熱を抑えることが望ましい。そうすることで、コイル温度のバラッキを発生させずに済む。
図5は第2実施例の回転電機製造装置を示す。この装置は、本質的には回転装置2を除き前記第1実施例と同様のものであるので、第1実施例と対応する部分に同様の参照符号を付して説明に代え、以下に相違点のみ説明する。この装置では、回転装置2として連続回転装置が採用されている。回転駆動機構は先のものと同様であるので、図4には伝動装置21の従動側のプーリのみが示され、モータを含む関連機構の図示は省略されている。この連続回転機構の採用に伴い、図示しない高周波電源装置とワークSの巻線コイルScを接続する給電線の途中に、相対回転部で摺動により固定側と回転側の間で電流の授受を連続的に行うスリップリング8が主軸20を支持する両ベアリング11の間に設けられている。このスリップリング8は、ワークSの3相の巻線コイルScに通電するための3条のリングの他に、ワークSの巻線コイル内に組込まれたサーミスタ46の信号を供給電力制御のために高周波電源装置にフィードバックするための別のリングも設けられている。
この装置を用いて含浸ワニス工程の各段階の工程を実施する具体的方法は、先の第1実施例の場合と同様であるので説明を省略する。
この装置によると、給電線7の引回しが反転分の余裕やケーブルベヤを要しないことで最短のものとなる反面、装置構成がスリップリング8の配置分だけ若干複雑になるが、ワニス滴下含浸工程を実施する場合に、ワークSを常に一定方向に回転にすることで、ワニス塗布を一層均一にすることができる利点が得られる。また、先の第1実施例のワーク揺動方式に比べて、反転位置の制御が不要となる分だけ、高周波電源装置4の制御と、回転装置2の駆動モータの運転制御が単純化する。その余の効果については、全て第1実施例の装置により得られえる効果と同様である。
本例は、実施例1に示した回転装置2の往復動回転角度と、ワニス99を供給する滴下ノズル61等の配置構造の変形例を示すものである。
まず、図6〜図8には、回転装置2を、360°ごとに反転する往復動回転装置とした場合を示す。
図6に示す例は、ワニス99を鉛直下方に向けて滴下させるタイプの滴下ノズル61を、それぞれのワニス塗布対象部分に1カ所ずつ配置した例である。これは実施例1と同様の例である。すなわち、同図に示すごとく、巻線コイルScのコイルエンド91、92の外周面911、921にそれぞれ対面して1本ずつの滴下ノズル61を配置し、コイルエンド91、92の内周面912、922にそれぞれ対面して1本ずつの滴下ノズル61を配置した。
この場合には、ワークである巻線コイルScを360°ごとに往復動回転させながら、滴下ノズル61からワニス99を滴下させることにより、コイルエンド91,92の外周面912,921及び内周面912、922に均一にワニス99を供給することができる。
図7に示す例は、ワニス99を噴射するインジェクタータイプの滴下ノズル612を、ワニス塗布対象部分にそれぞれ1カ所ずつ配置した例である。なお、図7及び後述する図8〜図16においては、図をわかりやすくするために、ワークと滴下ノズル類のみを主体に描いた図を用いた。
図7にしめす例の場合には、重力によるワニス99の滴下方向にとらわれることなく所望の位置に滴下ノズル612を配置することができるので、装置構成の自由度を高めることができる。
図8に示す例は、コイルエンド91,92の外周面へのワニス99の塗布を、いわゆるロールコーティングにより行う例である。この例では、ワニス99を溜めるパン616と、ワニス99を掻き上げるコータロール615とを備えたワニス含浸装置を用いる。
この場合には、上記コータロール615の幅によって塗布領域を正確に調整することができ、これによる塗布精度の向上を図ることができる。
次に、図9〜図12には、回転装置2を、180°以上360°未満の範囲の角度ごとに反転する往復動回転装置とした場合を示す。
図9に示す例は、ワニス99を鉛直下方に向けて滴下させるタイプの滴下ノズル61を、ワニス塗布対象部分にそれぞれ2カ所ずつ配置した例である。すなわち、巻線コイルScのコイルエンド91、92の外周面911、921に対面して、2本ずつ約180°ずらした位置に滴下ノズル61を配置し、また、コイルエンド91、92の内周面912、922にも、2本ずつ約180°ずらした位置に滴下ノズル61を配置した。
この場合には、図10に示すごとく、ワークである巻線コイルScを約180°ごとに往復動回転させながら、滴下ノズル61からワニス99を滴下させる。すなわち、第1の方向(反時計回り)に約180°回転させ((a)→(b))、その後、逆方向(時計回り)に約180°回転させる((b)→(c))ことにより、コイルエンド91,92の外周面912,921及び内周面912、922に均一にワニス99を供給することができる。
図11に示す例は、通常の滴下ノズル61とインジェクタータイプの滴下ノズル612とを組み合わせた例である。より具体的には、同図に示すごとく、コイルエンド91,92の外周面911,921に塗布するものとしては、ワークの最上点に対向した滴下ノズル61と、ワークの最下点に対向したインジェクタータイプの滴下ノズル612との組み合わせを用いた。また、コイルエンド91,92の内周面912,922に塗布するものとしては、ワークの最下点に対向した滴下ノズル61と、ワークの最上点に対向したインジェクタータイプの滴下ノズル612との組み合わせを用いた。
この場合には、いずれの塗布位置においても、コイルエンド91,92の外周面911、921あるいは内周面912、922に対して正面から垂直にワニス99を供給することができる。それ故、塗布精度をさらに向上させることができる。
図12に示す例は、2個1組のノズルのすべてをインジェクタータイプの滴下ノズル612にした例である。
この場合には、重力によるワニス99の滴下方向にとらわれることなく所望の位置に滴下ノズル612を配置することができるので、装置構成の自由度を高めることができる。
次に、図13〜図16には、回転装置2を、120°以上180°未満の範囲の角度ごとに反転する往復動回転装置とした場合を示す。
図13に示す例は、ワニス99を鉛直下方に向けて滴下させるタイプの滴下ノズル61を1つと、2つのインジェクタータイプの滴下ノズル612を2つとを組み合わせて1組とし、ワニス塗布対象部分に約120°ずらして配置した例である。すなわち、巻線コイルScのコイルエンド91、92の外周面911、921に対面して、その最上点に1つの滴下ノズル61を配置し、これから約120°ずらした位置に、それぞれインジェクタータイプの滴下ノズル612を配置した。また、コイルエンド91、92の内周面912、922に対面して、その最下点に1つの滴下ノズル61を配置し、これから約120°ずらした位置に、それぞれインジェクタータイプの滴下ノズル612を配置した。
この場合には、図14に示すごとく、ワークである巻線コイルScを約120°の往復動回転させながら、滴下ノズル61、612からワニス99を滴下又は噴射させる。すなわち、第1の方向(反時計回り)に約120°回転させ((a)→(b))、その後、逆方向(時計回り)に約120°回転させる((b)→(c))ことにより、コイルエンド91,92の外周面912,921及び内周面912、922に均一にワニス99を供給することができる。
図15に示す例は、3個1組のノズルのすべてをインジェクタータイプの滴下ノズル612にした例である。
この場合には、重力によるワニス99の滴下方向にとらわれることなく所望の位置に滴下ノズル612を配置することができるので、装置構成の自由度を高めることができる。
図16に示す例は、ワニス99を鉛直下方に向けて滴下させるタイプの滴下ノズル61を1つと、インジェクタータイプの滴下ノズル612を1つと、ロールコーティング用のコータロール615とを組み合わせて1組とし、ワニス塗布対象部分に約120°ずらして配置した例である。すなわち、巻線コイルScのコイルエンド91、92の外周面911、921に対面して、その最上点に1つの滴下ノズル61を配置し、これから約120°ずらした位置に、それぞれインジェクタータイプの滴下ノズル612とコータロール615を配置した。また、コイルエンド91、92の内周面912、922に対面して、その最下点に1つの滴下ノズル61を配置し、これから約120°ずらした位置に、それぞれインジェクタータイプの滴下ノズル612を配置した。
この場合にもコイルエンド91,92の外周面912,921及び内周面912、922に均一にワニス99を供給することができる。
本発明は、一般的な多相回転電機の固定子又は回転子の製造に広く使用可能なものであり、例えば、3相の誘導電動機や発電機における、3相コイルの含浸ワニス工程における各細工程に使用可能なものである。

Claims (16)

  1. 回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程に使用する回転電機製造装置において、
    巻線コイルを配したワークを支持して回転させる回転装置と、
    前記巻線コイルに電力を投入する電源装置と、
    前記巻線コイルにワニスを供給するワニス含浸装置とを備え、
    前記回転装置は、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転装置であり、
    該往復動回転装置は、前記巻線コイルと前記電源装置とをスリップリングを介することなく給電線により接続したまま、同一方向への360°以上の角度の回転を交互に繰り返すよう構成され、
    かつ、前記ワニス含浸装置は、前記巻線コイルにワニスを供給すべき1つのワニス塗布対象部分に対してワニスを供給するワニス供給手段を、1箇所以上に有していることを特徴とする回転電機製造装置。
  2. 回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程に使用する回転電機製造装置において、
    巻線コイルを配したワークを支持して回転させる回転装置と、
    前記巻線コイルに電力を投入する電源装置と、
    前記巻線コイルにワニスを供給するワニス含浸装置とを備え、
    前記回転装置は、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転装置であり、
    該往復動回転装置は、前記巻線コイルと前記電源装置とをスリップリングを介することなく給電線により接続したまま、同一方向への180°以上360°未満の回転を交互に繰り返すよう構成されており、
    かつ、前記ワニス含浸装置は、前記巻線コイルにワニスを供給すべき1つのワニス塗布対象部分に対してワニスを供給するワニス供給手段を、2箇所以上に有していることを特徴とする回転電機製造装置。
  3. 回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程に使用する回転電機製造装置において、
    巻線コイルを配したワークを支持して回転させる回転装置と、
    前記巻線コイルに電力を投入する電源装置と、
    前記巻線コイルにワニスを供給するワニス含浸装置とを備え、
    前記回転装置は、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転装置であり、
    該往復動回転装置は、前記巻線コイルと前記電源装置とをスリップリングを介することなく給電線により接続したまま、同一方向への120°以上180°未満の回転を交互に繰り返すよう構成されており、
    かつ、前記ワニス含浸装置は、前記巻線コイルにワニスを供給すべき1つのワニス塗布対象部分に対してワニスを供給するワニス供給手段を、3箇所以上に有していることを特徴とする回転電機製造装置。
  4. 請求項2又は3において、前記ワニス供給手段のうち少なくとも1つは、インジェクターによりワニスを吐出するよう構成されていることを特徴とする回転電機製造装置。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項において、前記ワニス供給手段のうち少なくとも1つは、ワニスを掻き上げたコータロールから転写させることにより当該ワニスを供給するよう構成されていることを特徴とする回転電機製造装置。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項において,上記回転装置は,上記ワークを内径側から支持するように構成されていることを特徴とする回転電気製造装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項において、前記電源装置は、商用電源よりも周波数の高い高周波電力を発する高周波電源装置であることを特徴とする回転電機製造装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項において、前記ワークは、回転電機の固定子であることを特徴とする回転電機製造装置。
  9. 回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程を含む回転電機の製造方法において、
    巻線コイルを配したワークを支持して、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転をさせると共に、
    前記巻線コイルに電力を投入する電源装置と前記巻線コイルとをスリップリングを介することなく給電線により接続して前記巻線コイルに電力を投入しながら、
    前記巻線コイルにワニスを供給し、
    かつ、前記往復動回転は、前記巻線コイルと前記電源装置とを前記給電線により接続したまま、同一方向への360°以上の角度の回転を交互に繰り返すことにより行い、かつ、前記巻線コイルへのワニスの供給は、1つのワニス塗布対象部分に対して、1箇所以上に設けたワニス供給手段から行うことを特徴とする回転電機製造方法。
  10. 回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程を含む回転電機の製造方法において、
    巻線コイルを配したワークを支持して、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転をさせると共に、
    前記巻線コイルに電力を投入する電源装置と前記巻線コイルとをスリップリングを介することなく給電線により接続して前記巻線コイルに電力を投入しながら、
    前記巻線コイルにワニスを供給し、
    かつ、前記往復動回転は、前記巻線コイルと前記電源装置とを前記給電線により接続したまま、同一方向への180°以上360°未満の回転を交互に繰り返すことにより行い、かつ、前記巻線コイルへのワニスの供給は、1つのワニス塗布対象部分に対して、2箇所以上に設けたワニス供給手段から同時に行うことを特徴とする回転電機製造方法。
  11. 回転電機の巻線コイルにワニスを含浸させて硬化させる工程を含む回転電機の製造方法において、
    巻線コイルを配したワークを支持して、第1の方向への回転とその逆方向への回転を交互に行う往復動回転をさせると共に、
    前記巻線コイルに電力を投入する電源装置と前記巻線コイルとをスリップリングを介することなく給電線により接続して前記巻線コイルに電力を投入しながら、
    前記巻線コイルにワニスを供給し、
    かつ、前記往復動回転は、前記巻線コイルと前記電源装置とを前記給電線により接続したまま、同一方向への120°以上180°未満の回転を交互に繰り返すことにより行い、かつ、前記巻線コイルへのワニスの供給は、1つのワニス塗布対象部分に対して、3箇所以上に設けたワニス供給手段から同時に行うことを特徴とする回転電機製造方法。
  12. 請求項10又は11において、前記ワニス供給手段のうち少なくとも1つは、インジェクターによりワニスを吐出するよう構成されていることを特徴とする回転電機製造方法。
  13. 請求項10〜12のいずれか1項において、前記ワニス供給手段のうち少なくとも1つは、ワニスを掻き上げたコータロールから転写させることにより当該ワニスを供給するよう構成されていることを特徴とする回転電機製造方法。
  14. 請求項9〜13のいずれか1項において,上記ワークの回転は、該ワークを内径側から支持して行うことを特徴とする回転電気製造方法。
  15. 請求項9〜14のいずれか1項において、前記巻線コイルに投入する電力は、商用電源よりも周波数の高い高周波電力であることを特徴とする回転電機の製造方法。
  16. 請求項9〜15のいずれか1項において、前記ワークは、回転電機の固定子であることを特徴とする回転電機の製造方法。
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