JP4691075B2 - 能動型防振支持装置、及びその制御方法 - Google Patents
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Description
なお、車両のエンジンは、例えばエンジン始動時などの低いエンジン回転速度による振動による振動の振動数が固有振動周波数になるように構成される。したがって、最初の点火後に発生する固有振動周波数における振動は、エンジン始動時に発生する過渡振動を示す。
(能動型防振支持装置の全体構成)
図1は本発明の実施形態に係る能動型防振支持装置を適用した車両におけるエンジン搭載状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。図2は、本発明に係わる能動型防振支持装置の構造を示す断面図である。
ここで、エンジン2は、クランク軸(図示せず)の一端にトランスミッション3が結合されるとともに、クランク軸が車両Vの本体に横向きに配置される、いわゆる横置きのV型6気筒エンジンである。したがって、エンジン2はクランク軸方向が車両Vの左右方向に配置され、ACM10は、エンジン2によるロール方向の振動を抑制するため、エンジン2を挟んで車両Vの前後に1対備える。以降、車両Vに対してエンジン2の前方向に備わるACM10を前方ACM10a、後方向に備わるACM10を後方ACM10bと称する。
図2に示すように、能動型防振支持装置1(図1参照)には、ACM10を制御するアクティブコントロール・マウント制御ECU(Electric Control Unit、以下ACMECUと称する)62を備え、ACMECU62はエンジン2(図1の(b)参照)の回転速度や出力トルク等を制御するエンジン制御ECU(以下、エンジンECUと称する)61と通信回線で接続されている。
なお、ACMECU62は、エンジンECU61からエンジン回転速度NE信号、クランクパルスセンサ60が検出するクランクパルス信号、各気筒の上死点のタイミングを示すTDC信号、V型6気筒のエンジン2を全気筒運転しているのか、半気筒運転をしているのか示すシリンダ・オフ信号、イグニッション・スイッチ信号(以下、IG−SW信号と称する)が入力される。
なお、クランクパルスは、V型6気筒エンジンの場合、クランクシャフトの1回転につき24回、つまりクランクアングルの15°毎に1回出力される。
図2に示すように、ACM10は、軸線Lに関して実質的に軸対称な構造を有するもので、主に、概略円筒状の上部ハウジング11と、その下側に配置された概略円筒状の下部ハウジング12と、下部ハウジング12内に収容された上面が開放した概略カップ状のアクチュエータケース13と、上部ハウジング11の上側に接続したダイヤフラム22と、上部ハウジング11内に格納された環状の第1弾性体支持リング14と、第1弾性体支持リング14の上側に接続した第1弾性体19等から構成されている。
ダイヤフラム支持ボス20の上面にはエンジン取付部20aが一体に形成され、エンジン2(図1の(b)参照)に固定される。また下部ハウジング12の下端の車体取付部12bが車体フレームFに固定される。
このような構造によって、ACM10にエンジン2(図1の(b)参照)から大きな荷重が入力したとき、エンジン取付部20aがストッパラバー26に当接することで、エンジン2の過大な変位が抑制される。
そして、第2弾性体支持リング15の上面と第1弾性体19の外周部との間に円板状の隔壁部材29が固定されており、隔壁部材29及び第1弾性体19により区画された第1液室30と、隔壁部材29及び第2弾性体27により区画された第2液室31とが、隔壁部材29の中央に開口している連通孔29aを介して相互に連通する。
コイルカバー47には、アクチュエータケース13及び下部ハウジング12に開口する開口部を貫通して外部に延出するコネクタ部47aが一体に形成され、そこにコイル46に給電する図示しない給電線が接続される。
下部フランジ51aとヨーク44の円筒部の下端との間には、セットばね52が圧縮状態で配置されており、このセットばね52の弾性力で軸受け部材51の下部フランジ51aを下方に付勢して、下部フランジ51aの下面と固定コア42との間に配された弾性体53を介して、固定コア42の上面に押し付けることで、軸受け部材51がヨーク44にて支持される。
また、可動コア54の上面が内周側に突き出て形成されるばね座とヘッド部28bの下面との間には、セットばね58が圧縮状態で配置され、このセットばね58の弾性力で可動コア54は下方に付勢され、可動コア54の前記ばね座の下面がナット部材56の上端面に押し付けられて固定される。この状態で、可動コア54の下面と固定コア42の上面とが、円錐状のエアギャップgを介して対向する。
ロッド28a及びナット部材56は、固定コア42の中心に形成された開口部に緩く嵌合し、この開口部は下方がプラグ42aで閉塞されている。
車両Vの走行中に低周波数(例えば、7〜20Hz)のエンジン、車体、サスペンションの連成系において車体の剛体振動とエンジン系の共振により発生する低周波振動であるエンジンシェーク振動が発生したとき、エンジン2からダイヤフラム支持ボス20及び第1弾性体支持ボス18を介して入力される荷重で第1弾性体19が変形して第1液室30の容積が変化すると、連通路32を介して接続された第1液室30及び第3液室35の間で液体が行き来する。この状態で、第1液室30の容積が拡大・縮小すると、それに応じて第3液室35の容積は縮小・拡大するが、この第3液室35の容積変化はダイヤフラム22の弾性変形により吸収される。このとき、連通路32の形状及び寸法、並びに第1弾性体19のばね定数は、前記エンジンシェーク振動の周波数領域で低ばね定数及び高減衰力を示すように設定されているため、エンジン2から車体フレームFに伝達される振動を効果的に低減することができる。
なお、前記エンジンシェーク振動の周波数領域では、ACM10の駆動部41は駆動しない非作動状態に保たれる。
そこで、駆動部41を駆動するため、図2に示すACM10を含む能動型防振支持装置1(図1参照)には、エンジン2のクランクパルスを検出するクランクパルスセンサ60、エンジンECU61、及びACMECU62が備わる。
クランクパルスセンサ60は、エンジン2の図示しないクランク軸が発生するクランクパルスを検出するセンサである。V型6気筒エンジンの場合、クランクパルスは、エンジン2におけるクランク角が15°ごとに発生し、クランクパルスセンサ60はこのクランクパルスを検出してエンジンECU61に入力する。
エンジンECU61は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えるマイクロコンピュータ及び周辺回路等から構成され、エンジン2の回転速度を制御したり、エンジン2に備わる図示しない回転速度センサを介してエンジン2の回転速度を検出したりする。そして、検出した回転速度やクランクパルスセンサ60から入力されるクランクパルスをACMECU62に入力する機能を有する。
さらに、ACMECU62は、前方ACM10a及び後方ACM10bがそれぞれ備えるコイル46(図2参照)に電流を通電する図示しないスイッチング回路を含む給電部62fを備える。給電部62fの前記スイッチング回路はCPU62bに制御され、給電部62fが図示しないバッテリから供給される直流電源を、コネクタ部47a(図2参照)を介してコイル46(図2参照)に供給可能となっている。そして、ACMECU62は、例えばROM62cに格納されるプログラムによって動作する。
また、ACMECU62にはフラッシュメモリ等の記憶部62eが備わり、ACM10を制御するために必要なデータ62e1等が記憶される。
また、前記のように、本実施形態にかかるエンジン2は、車両Vに対して横置きされるため、前方ACM10a及び後方ACM10bはエンジン2の側面に配置される。したがって、クランク軸の回転方向に沿って発生するロール振動を抑制することができる。
本実施形態にかかる能動型防振支持装置1(図1の(a)参照)は、ACM10(図1の(a)参照)でエンジン2(図1の(a)参照)を支持し、特にエンジン始動時に発生するロール振動を、ACM10のアクチュエータを駆動することで抑制するものである。
そして、ロール振動は、例えばエンジン始動時等クランク軸が不安定な回転をしている場合に発生する振動である。
ちなみに、直列4気筒エンジンの場合はクランク軸の1回転で2回気筒爆発があるので、エンジン回転速度NEに応じた振動をエンジン振動2次と称し、V型6気筒エンジンにおける3気筒での運転状態、つまり、休筒運転時の場合は1回転に1.5回気筒爆発があるので、エンジン回転速度NEに応じた振動をエンジン振動1.5次と称する。
破線で示すように、エンジン振動3次(図中、「ENG振動3次」と表示)の振動成分は、エンジン2が発動した時間t0以降、アイドリング状態のエンジン回転速度NEよりやや低い所定のエンジン回転速度NEmに達する時間t2までの間では、前記固有振動周波数(ロール固有値)での振動とエンジン振動3次成分の混成振動域である。そして、時間t2以降は、エンジン振動3次成分が主成分になるのが分かる。
なお、以降においては、ロール振動の大きさ及び振動期間をまとめて、ロール振動の振動状態と称する場合がある。
このように作成されるマップを、ACMECU62(図3参照)の記憶部62e(図3参照)に記憶しておくことで、ACMECU62は、このマップを参照して、エンジン回転速度の上昇率に対応した、エンジン2(図1の(b)参照)の始動時におけるロール振動の振動状態を推定できる。
このような計算式を設定することで、エンジン回転速度の上昇率に基づいた、エンジン2(図1の(b)参照)の始動時におけるロール振動の振動状態を、ACMECU62(図3参照)は計算式によって算出(推定)することができる。
図6に示すように、クランクパルスCpは、スタータ駆動期間においては、エンジン回転速度が小さいことから周期が長いが、初爆の発生によるエンジン回転速度の上昇に伴って周期が短くなる。したがって、クランクパルス1周期あたりの平均値が小さくなると、ACMECU62(図3参照)は、エンジン回転速度が大きくなったことを判定できる。図6に示すように初爆の発生後は、エンジン回転速度が急速に大きくなることから、エンジン回転速度が大きくなったことを判定することで、ACMECU62は初爆を検出できる。
なお、ACMECU62で算出される、8個のクランクパルスの1周期あたりの平均値の大きさが、請求項に記載の回転変動の大きさに相当する値である。
また、本実施形態においては8個のクランクパルス1周期あたりの平均値を算出したが、8個のクランクパルスは限定される個数ではない。
NE1=(1/3)/(P1/60) ・・・(1)
また、ACMECU62は、初爆が発生した直後、すなわち図6においてA点直後のエンジン回転速度NE2(rpm)を次式(2)で算出する。
NE2=(1/3)/(P2/60) ・・・(2)
このようにして、ACMECU62は、初爆直前のエンジン回転速度NE1と初爆直後のエンジン回転速度NE2とを算出する。そして、ACMECU62は、NE2−NE1を、初爆直後のエンジン回転速度の上昇として算出する。
したがって、初爆直後の単位時間あたりのエンジン回転速度の上昇率NErは、次式(3)で算出される。
NEr=(NE2−NE1)/(P2/60)・・・(3)
これに対して、本実施形態のように8個のクランクパルスCpを測定する場合、前記のようにクランク軸が1/3回転すればよく、初爆の前後でそれぞれ8個のクランクパルスCpを測定する場合であっても、クランク軸が2/3回転する時間で測定できる。したがって、エンジン2の回転速度を測定するよりも短時間で測定できるという優れた効果を奏する。
ちなみに、このアクチュエータ駆動制御手段621による駆動周期内にデューティ信号の集合体を用いて行なう制御は、特開2002−139095号公報の発明の詳細な説明の段落[0030],[0031]及び図5、図6を参照されたい。
その場合、位相算出手段623は、振動状態推定手段620からの所定の固有振動周波数(ロール固有値)の振動周期と、クランクパルスセンサ60が検出するクランクパルス、図示しないセンサが検出する各気筒のTDCパルス信号、とに基づいて、エンジン2(図1の(b)参照)が発動したと判定したタイミングから所定の時間差だけ位相を遅らせて、例えば、後方ACM10bに、そして、半周期遅れて前方ACM10aに出力するようにアクチュエータ駆動制御手段621に出力する。
アクチュエータ駆動制御手段621は、それを受けて、前方ACM10aと後方ACM10bそれぞれを振動の周期毎にエンジン振動波形を相殺できるマウント動作となるように、駆動周期内にデューティ信号の集合体を用いて組み合わせ、以後固定された周期により出力制御を行う。
図8に示すように、ACMECU62のエンジン始動判定手段622は、クランクパルスセンサ60が検出するクランクパルスCpを入力して、8個のクランクパルスCpの時間間隔の平均値を算出する(ステップS1)。
初爆直後のエンジンは約400rpmであることから、V型6気筒エンジンの場合、初爆直後における8個のクランクパルスの時間間隔は約0.05秒になる。換言すると、本実施形態にかかる能動型防振支持装置及び制御方法においては、初爆後0.05秒程度でエンジン始動時に発生するロール振動の振動状態を推定でき、能動型防振支持装置の制御を開始できる。
2 エンジン
10 ACM
41 駆動部(アクチュエータ)
60 クランクパルスセンサ
61 エンジンECU
62 ACMECU(制御手段)
620 振動状態推定手段
621 アクチュエータ駆動制御手段
622 エンジン始動判定手段(初爆検出手段、変動検出手段)
F 車体フレーム(車体)
V 車両
Claims (2)
- エンジンを車体に支承するとともに、前記エンジンの回転変動の大きさに基づいて前記エンジンの振動状態を推定する制御手段がアクチュエータを伸縮駆動して、前記エンジンの振動の伝達を抑制する能動型防振支持装置であって、
前記制御手段は、前記エンジンの最初の点火を検出する初爆検出手段と、前記エンジンの回転変動の大きさを検出する変動検出手段を備え、前記エンジンの最初の点火から所定の回転速度に達するまでの時間を計測し、その時間に基づき前記エンジンの固有振動周波数における振動の大きさ及び期間を推定することを特徴とする能動型防振支持装置。 - エンジンを車体に支承するとともに、前記エンジンの回転変動の大きさに基づいて前記エンジンの振動状態を推定する制御手段がアクチュエータを伸縮駆動して、前記エンジンの振動の伝達を抑制する能動型防振支持装置の制御方法であって、
前記制御手段は、
前記エンジンの最初の点火を検出する初爆検出手段を介して前記エンジンの最初の点火を検出するステップと、
前記エンジンの最初の点火を検出してから、前記エンジンが所定の回転速度に達するまでの時間を計測するステップと、
前記計測された時間に基づいて、前記エンジンの回転変動の大きさを検出するステップと、
前記検出されたエンジンの回転変動の大きさに基づいて、前記エンジンの固有振動周波数における振動の大きさ及び期間を推定するステップと、
を有することを特徴とする能動型防振支持装置の制御方法。
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