JP4945368B2 - 能動型防振支持装置及びその制御方法 - Google Patents
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Description
また、エンジン及びエンジンの支承により決まる固有振動数にてアクチュエータの伸縮駆動を開始するので、エンジン及びエンジンの車体への搭載の仕方で決まるエンジンが発動したときの固有の振動が車体に伝達されるのが抑制できる。
また、エンジン及びエンジンの支承により決まる固有振動数にてアクチュエータの伸縮駆動を開始するので、エンジン及びエンジンの車体への搭載の仕方で決まるエンジンが発動したときの固有の振動が車体に伝達されるのが抑制できる。
(能動型防振支持装置の全体構成)
図1は本発明の実施形態に係る能動型防振支持装置を適用した車両におけるエンジン搭載状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図である。図2は、本実施形態に係わる能動型防振支持装置のエンジンマウント(アクティブ・コントロール・マウント)の構造を示す断面図である。
ここで、エンジン2は、クランク軸(図示せず)の一端にトランスミッション3が結合されるとともに、クランク軸が車両Vの本体に横向きに配置される、いわゆる横置きのV型6気筒エンジンである。従って、エンジン2はクランク軸方向が車両Vの左右方向に配置され、ACM10は、エンジン2によるロール方向の振動を抑制するため、エンジン2を挟んで車両Vの前後に1対備えられている。以降、車両Vに対してエンジン2の前方向に備わるACM10を前方ACM10a、後方向に備わるACM10を後方ACM10bと称する。
ACMECU62は、請求項に記載の制御手段に対応する。
ACMECU62はエンジン2の回転速度や出力トルク等を制御するエンジン制御ECU(以下、エンジンECUと称する)61と通信回線で接続されている。
なお、クランクパルスは、6気筒エンジンの場合、クランクシャフトの1回転につき24回、つまりクランク角の15°毎に1回出力される。
図2に示すように、ACM10は、軸線Lに関して実質的に軸対称な構造を有するもので、主に、略円筒状の上部ハウジング11と、その下側に配置された略円筒状の下部ハウジング12と、下部ハウジング12内に収容されて上面が開放した略カップ状のアクチュエータケース13と、上部ハウジング11の上側に接続したダイヤフラム22と、上部ハウジング11内に格納された環状の第1弾性体支持リング14と、第1弾性体支持リング14の上側に接続した第1弾性体19と等から構成されている。
ダイヤフラム支持ボス20の上面にはエンジン取付部20aが一体に形成され、エンジン2(図1参照)に固定される(詳細な固定方法は、図示省略してある)。また、下部ハウジング12の下端の車体取付部12bが車体フレームFに固定される。
このような構造によって、ACM10にエンジン2(図1参照)から大きな荷重が入力したとき、エンジン取付部20aがストッパラバー26に当接することで、エンジン2の過大な変位が抑制される。
そして、第2弾性体支持リング15の上面と第1弾性体支持リング14の下部との間に円板状の隔壁部材29が固定されており、第1弾性体支持リング14、第1弾性体19及び隔壁部材29により区画された第1液室30と、隔壁部材29及び第2弾性体27により区画された第2液室31とが、隔壁部材29の中央に開口している連通孔29aを介して相互に連通する。
図2に示すように駆動部41は、主に透磁率が高い金属又は合金からなる固定コア42、ヨーク44、可動コア54と、外周をコイルカバー47で覆われた電磁石のコイル46と、から構成されている。固定コア42は、下端部に受け座面のフランジ部を有する略円筒状で、円筒部の外周は円錐の周面形状をしている。可動コア54は略円筒状で上端が内周方向に突き出てばね座を形成し、円筒部の内周は円錐の周面形状をしている。
コイルカバー47には、アクチュエータケース13及び下部ハウジング12に開口する開口部を貫通して外部に延出するコネクタ部47aが一体に形成され、そこにコイル46に給電する給電線が接続される。
下部フランジ51aとヨーク44の円筒部の下端との間には、セットばね52が圧縮状態で配置されており、このセットばね52の弾性力で軸受け部材51の下部フランジ51aを下方に付勢して、下部フランジ51aの下面と固定コア42との間に配された弾性体53を介して、固定コア42の上面に押し付けることで、軸受け部材51がヨーク44にて支持される。
ロッド28a及びナット部材56は、固定コア42の中心に形成された中空部に緩く嵌合し、この中空部は下方がプラグ42aで閉塞されている。
車両Vの走行中に低周波数(例えば、7〜20Hz)のエンジン、車体、サスペンションの連成系において車体の剛体振動とエンジン系の共振により発生する低周波振動であるエンジンシェーク振動が発生したとき、エンジン2からダイヤフラム支持ボス20及び第1弾性体支持ボス18を介して入力される荷重で第1弾性体19が変形して第1液室30の容積が変化すると、連通路32を介して接続された第1液室30及び第3液室35の間で液体が流通する。この状態で、第1液室30の容積が拡大・縮小すると、それに応じて第3液室35の容積は縮小・拡大するが、この第3液室35の容積変化はダイヤフラム22の弾性変形により吸収される。このとき、連通路32の形状及び寸法、並びに第1弾性体19のばね定数は、前記エンジンシェーク振動の周波数領域で低ばね定数及び高減衰力を示すように設定されているため、エンジン2から車体フレームFに伝達される振動を効果的に低減することができる。
なお、上記エンジンシェーク振動の周波数領域では、エンジン2が定常回転の場合は、ACM10の駆動部41は駆動しない非作動状態に保たれる。
そこで、駆動部41を駆動するため、図2に示すACM10を含む能動型防振支持装置1(図1参照)には、エンジン2のクランクパルスを検出するクランクパルスセンサ(センサ)60、エンジンECU61、及びACMECU62が備わる。
図3は、クランクパルスセンサ、エンジンECU及びACMECUの接続を示すブロック図である。
クランクパルスセンサ60は、エンジン2の図示しないクランク軸が発生するクランクパルスを検出するセンサである。6気筒エンジンの場合、クランクパルスは、エンジン2におけるクランク角が15°ごとに発生し、クランクパルスセンサ60はこのクランクパルスを検出してエンジンECU61に入力する。
エンジンECU61は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えるマイクロコンピュータ及び周辺回路等から構成され、エンジン2の回転速度を制御したり、エンジン2に備わる図示しない回転速度センサを介してエンジン2の回転速度を検出したりする。そして、検出した回転速度やクランクパルスセンサ60から入力されるクランクパルスをACMECU62に入力する機能を有する。
また、ACMECU62にはフラッシュメモリ等の記憶部62eが備わり、ACM10を制御するために必要なデータ等が記憶される。
次に本発明の特徴であるエンジン2の始動時の振動の車体への伝達抑制について説明する。これまでの能動型防振支持装置では、エンジン2のアイドリング時や6気筒運転から3気筒運転に切り換えた場合等、エンジン2が定常回転をしている場合のエンジン振動を吸収することに着目されたものであった。
本実施形態に係わる能動型防振支持装置1(図1の(a),(b)参照)は、ACM10でエンジン2を支承し、特にエンジン始動時に発生する後記するロール固有値振動を、ACM10の駆動部(アクチュエータ)41(図2参照)を伸縮駆動することで車体に伝達されるのを抑制するものである。
そして、エンジン2が発動して点火周期(エンジン振動の3次成分)がロール固有値と一致したエンジン回転速度NEのとき、共振して振動が最大になる。
そして、ロール固有値振動は、例えばエンジン始動時等クランク軸が不安定な回転をしている場合に発生する振動である。
ちなみに、直列4気筒エンジンの場合は、1回転に2回気筒爆発があるので、エンジン回転速度NEに応じた振動をエンジン振動2次と称し、V型6気筒エンジンにおける3気筒での運転状態、つまり、休筒運転時の場合は1回転に1.5回気筒爆発があるので、エンジン回転速度NEに応じた振動をエンジン振動1.5次と称する。
破線で示すように、「エンジン振動3次」(図中、「ENG振動3次」と表示)の振動成分は、エンジン2が発動した時間t0以降、アイドリング状態のエンジン回転速度NEよりやや低い所定のエンジン回転速度NEmに達した時間t2までの間では、前記固有振動数(ロール固有値)での振動とエンジン振動3次成分の混成振動域である。そして、エンジン回転速度NEが前記したロール固有値と一致したとき最大の振動になる。
時間t2以降は、エンジン振動3次成分が主成分になるのが分かる。
次に図5から図7を参照しながらACMECUの作用について説明する。
図5は、本実施形態におけるACMECUの機能構成ブロック図である。図6はクランクパルスの移動平均の算出を説明する図であり、図7は前方ACMと後方ACMのアクチュエータを伸縮駆動制御する電流の出力タイミングを説明する図である。
ACMECUの各機能構成ブロックの機能は、ROM62c(図3参照)に記憶されたプログラムをCPU62bが実行することで実現される。具体的には、クランクパルス間隔算出部621、エンジン回転モード判定部622、振動状態推定部623、位相検出部624、アクチュエータ駆動制御部625を含んで構成されている。
クランクパルス間隔算出部621で算出されたクランクパルス間隔は、エンジン回転モード判定部622と振動状態推定部623に入力される。
エンジン回転モード判定部622は、これらの信号にもとづいて、エンジン2の回転モードをエンジン始動時のエンジン発動を検出してエンジン起動状態と判定したり、その後エンジン回転速度NEの上昇を監視して所定のエンジン回転速度NEm以上に達したときアイドリング状態と判定したり、シリンダ・オフ信号にもとづいてエンジン2の運転状態が全筒運転状態か休筒運転状態かを判定したり、アクセル・ポジション・センサ信号にもとづいてアイドリング状態と判定したりする。
エンジン発動の検出、つまり、エンジン始動時のエンジン2の回転変動を検出する方法は、図8に示すエンジン始動時のACM制御の流れのフローチャートの説明の中で後記する。
振動状態推定部623は、エンジン回転モード判定部622からの回転モードの判定がエンジン起動状態(エンジン2が発動直後からアイドリング状態に入るまでの間の期間)の場合、予め記憶部62eに記憶された所定の固有振動数(ロール固有値)の振動周期及び振動の大きさをアクチュエータ駆動制御部625及び位相検出部624に出力する。
アクチュエータ駆動制御部625は、それを受けてエンジン回転速度NE信号にもとづいて前記エンジン振動3次、又はエンジン振動1.5次に合わせて、前方ACM10aと後方ACM10bのそれぞれを振動の周期毎にエンジン振動波形を相殺できるマウント動作となるように、駆動周期内にデューティ信号の集合体を用いて組み合わせ、TDC毎の基準パルスから求めた位相により駆動部41(図2参照)の伸縮駆動制御を行う。
ちなみに、このアクチュエータ駆動制御部625による駆動周期内にデューティ信号の集合体を用いて行なう制御は、特開2002−139095号公報の発明の詳細な説明の段落[0030],[0031]及び図5、図6を参照されたい。
その場合、位相検出部624は、振動状態推定部623からの所定の固有振動数(ロール固有値)の振動周期と、エンジンECU21からのクランクパルス信号、各気筒のTDCパルス信号、とにもとづいて、エンジン2が発動したと判定したタイミングt1から所定の時間差Δtだけ位相を遅らせて(図7参照)、例えば、後方ACM10bに、そして、半周期遅れて前方ACM10aに出力するようにアクチュエータ駆動制御部625に出力する。例えば、Δtは予め設定されている。
アクチュエータ駆動制御部625は、それを受けて、前方ACM10と後方ACM10bそれぞれを振動の周期毎にエンジン振動波形を相殺できるマウント動作となるように、駆動周期内にデューティ信号の集合体を用いて組み合わせ、以後固定された周期により出力制御を行う。
次に本実施形態の特徴であるエンジン始動時のACM制御の流れについて図8及び図9を参照しながら(適宜、図3、図5〜図7を参照して)説明する。図8はエンジン始動時のACM制御の流れのフローチャートであり、図9はエンジン始動時のエンジン点火タイミング、クランクパルス、エンジン振動、エンジン回転速度NEの時間推移を示す図である。
ステップS11では、IG−SWがオンになって、ACMECU62が起動すると初期設定として、エンジン回転モード判定部622は、クランクパルス間隔の移動平均値算出の初期設定としてn=0とする。
ステップS12では、エンジン回転モード判定部622は、IG−SWの信号がスタータ・オン(スタータON)を示しているか否かをチェックする。スタータ・オンの場合(Yes)はステップS13に進み、そうでない場合はステップS12を繰り返す。
ステップS15では、エンジン回転モード判定部622は、クランクパルス間隔を読み込み、次いで、移動平均値TCRKAVEを算出する(ステップS16)。ただし、nがN(=8)以上に達するまでは移動平均値を算出しない。
ちなみに、移動平均値TCRKAVEは、図6に示すように、クランクパルス間隔T1〜T8の最寄りの8個のクランクパルス間隔により算出される。nがN+1(=9)以上のときは、新しいクランクパルス間隔が加えられるたびに、一番古いクランクパルス間隔を差し引いて、常に8個の移動平均値TCRKAVEとする。
ステップS17では、エンジン回転モード判定部622は、n=N(=8)以上か否かをチェックする。nがN以上の場合はステップS18へ進み、そうでない場合はステップS12へ戻る。つまり、8個のクランクパルス間隔が入力された移動平均値TCRKAVEが算出されて始めてステップS18へ進む。
移動平均値TCRKAVEが所定の判定の閾値Tth以下の場合は、ステップS19へ進み、そうでない場合はステップS12へ戻り、ステップS12〜ステップS18の処理を繰り返す。
ここで、クランクパルス間隔の移動平均値TCRKAVEは、請求項に記載の回転変動の変化率に対応し、「移動平均値TCRKAVEが判定の閾値Tth以下になった場合」が、請求項に記載の「エンジンの回転変動の変化率が所定値以上の場合」に対応する。
ステップS20では、振動状態推定部623は、エンジン回転モード判定部622からエンジン起動回転モードのフラグ信号を受信して、記憶部62eに記憶されているロール固有値と振動の大きさを読み出し、ロール固有値での所定の振動の大きさを設定し、アクチュエータ駆動制御部625に出力する。
位相検出部624は、エンジン回転モード判定部622からエンジン起動回転モードのフラグとエンジン発動と判定したタイミングを受信して、それらとエンジンECU61からのTDCパルス信号とクランクパルス信号にもとづいて、位相遅れのΔtを設定する(ステップS21)。
発動のタイミングとクランク軸角度位置によっては、前方ACM10aに所定の位相遅れΔtが掛けられ、その後ロール固有値に従って後方ACM10bにもアクチュエータ駆動電流が出力制御される。
図9はエンジンを始動してアイドリング状態に至るまでのエンジン状態の時間推移を示したものであり、(a)は点火タイミングパルス(IGパルス)を、(b)はクランクパルス(CRKパルス)を、(c)はエンジン振動(ENG振動)を、(d)はエンジン回転速度NE(rpm)を示したものである。
また、移動平均値TCRKAVEを用いることにより、過早な誤判定を防止でき確実にエンジン発動を検知することができる。
エンジン発動の検出にエンジン2の回転変動の時間変化率、つまり、クランクパルス間隔の移動平均値TCRKAVEを用いることとしたが、それに限定されない。
例えば、各気筒に筒圧検出センサ(エンジン発動検知手段)を設けて、筒圧検出センサの示す筒圧が点火を示す閾値以上のときにエンジン発動と判定するようにしても良い。
この場合もエンジン発動の検知の方法のみが実施の形態と異なるだけで、他の部分は前記した実施の形態と同じにできる。
2 エンジン
3 トランスミッション
10,10a,10b アクティブ・コントロール・マウント
41 駆動部(アクチュエータ)
60 クランクパルスセンサ(センサ)
61 エンジンECU
62 ACMECU(制御手段)
62a 信号入力部
62b CPU
62c ROM
62d RAM
62e 記憶部
62f 給電部
621 クランクパルス間隔算出部
622 エンジン回転モード判定部
623 振動状態推定部
624 位相検出部
625 アクチュエータ制御部
Claims (3)
- エンジンを車体に支承するとともに、前記エンジンの回転変動を検出するセンサからの出力にもとづいて前記エンジンの振動状態を推定する制御手段がアクチュエータを伸縮駆動して、振動の伝達を抑制する能動型防振支持装置において、
前記制御手段は、
前記エンジンの始動からアイドリング状態に達するまでの期間に、前記センサからの出力にもとづく前記エンジンの回転変動の変化率が所定値以上のときに、前記エンジンが発動を開始したと判定し、
前記エンジン及び前記エンジンの支承により決まる固有振動数と、前記センサからの出力にもとづく前記エンジンが発動を開始したと判定したタイミングで求めた位相遅れと、により前記アクチュエータの伸縮駆動を開始することを特徴とする能動型防振支持装置。 - エンジンを車体に支承するとともに、前記エンジンの回転変動を検出するセンサからの出力にもとづいて前記エンジンの振動状態を推定する制御手段がアクチュエータを伸縮駆動して、振動の伝達を抑制する能動型防振支持装置において、
前記エンジンの発動を検知するエンジン発動検知手段を備え、
前記制御手段は、
前記エンジンの始動からアイドリング状態に達するまでの期間に、前記エンジン発動検知手段により前記エンジンの発動の開始を検知したときに、前記エンジンが発動を開始したと判定し、
前記エンジン及び前記エンジンの支承により決まる固有振動数と、前記エンジン発動検知手段にもとづく前記エンジンが発動を開始したと判定したタイミングで求めた位相遅れと、により前記アクチュエータの伸縮駆動を開始することを特徴とする能動型防振支持装置。 - エンジンを車体に支承するとともに、前記エンジンの回転変動を検出するセンサからの出力にもとづいて前記エンジンの振動状態を推定する制御手段がアクチュエータを伸縮駆動して、振動の伝達を抑制する能動型防振支持装置における制御方法であって、
前記制御手段は、
前記エンジンの始動からアイドリング状態に達するまでの期間に、前記センサからの出力にもとづく前記エンジンの回転変動の変化率が所定値以上のときに、前記エンジンが発動を開始したと判定し、
前記エンジン及び前記エンジンの支承により決まる固有振動数と、前記センサからの出力にもとづく前記エンジンが発動を開始したと判定したタイミングで求めた位相遅れと、により前記アクチュエータの伸縮駆動を開始することを特徴とする能動型防振支持装置における制御方法。
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