JP4691008B2 - 光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
このような技術により製造される複合母材には、図4に示されるように一般に良質な光ファイバとなる外径一定部と、その両端に外径が端部に向かって徐々に小さくなるテーパ部とが形成されるが、このテーパ部は図に示されるように両端がほぼ同一傾斜である。
また、このようにして得られた複合母材を脱水焼結して光ファイバ母材とする工程においては、複合母材を加熱炉内に鉛直方向につり下げて、回転させながらゆっくり引き下げを行うことで処理するのが一般的である。
そして、脱水焼結して得られた光ファイバ母材は線引き炉に導入されてその下部を加熱溶融され、線引きされ光ファイバとなる。
まず、脱水焼結(ガラス化)工程における問題点として、複合母材のつり下げ部分に非常に大きな荷重が加わっており、つり下げ部分に焼結時の高温度が加わると軟化して母材が変形することが挙げられる。
例えば、図5に従って説明すると、良好な光ファイバ母材を十分に取ろうとして、テーパ部も含めガラス微粒子堆積部分を全てガラス化すると、ガラスロッド1が延びて図5(a)に示すように母材が落下することになる。したがって、これを回避するために、複合母材を脱水焼結して光ファイバ母材を得る際には、つり下げ部分に焼結時の高温度が加わらないように、つり下げ部分側のテーパ部の一部にガラス微粒子が完全に焼結されない部分(非焼結部)を適度に残しておく必要がある。それは、非焼結部が断熱材としての役割を果たし、つり下げ部分の軟化変形を抑制する効果をもつからである。
また、線引き工程における問題点として、良品を効率よく取ろうとしてテーパ部の傾斜を急にして長さを短くするために、脱水焼結工程と線引き工程との間に別の工程を必要とすることが挙げられる。
例えば、脱水焼結後の光ファイバ母材の線引き開始側の端部を、線引きに最適な傾斜に加工することが一般的に行われており、具体的には、光ファイバ母材を延伸したり、切り割ったりして線引きに最適な形状を作っている。しかし、この方法では、設備や多くの労力や時間を要し、また、光ファイバ母材にこの加工を施すと、良品部のロスも多くなり、甚だ効率が良くないものである。
しかし、特許文献2に開示されたテーパ部は、ガラスロッドと同一の径まで小さくなっていない。また、例示されたテーパ部は、かりにガラスロッドと同一の径まで小さくなっていたとしても、テーパ部は線引き開始部が線引き終了部より長くなってしまう。また、この公報に示されるテーパ部はあくまでも均質な光ファイバの一部として利用することを想定しており、ガラス特性の長手変動を低減させることが目的であり、本発明の解決すべき課題とは関連がない。
また、特許文献3に開示されたテーパ部は、ファイバ母材を加熱加工により所定の傾斜とされるが、加熱加工を行う前のテーパ部の傾斜については言及されておらず不明である。さらに、加熱加工を行うことを実質的に必須の要件としており、工程が追加されることによる生産性の低下をもたらすことは前述のとおりである。
すなわち、上記課題は以下の手段により解決された。
(1)光ファイバ化後にコアとなる部分を含むガラスロッドを形成する第1工程、該ガラスロッドをその軸を中心に回転させながらガラス微粒子発生装置を前記ガラスロッドの長手方向に相対的に往復移動させることにより前記ガラスロッドの外周にガラス微粒子を堆積させて複合母材を形成する第2工程、前記複合母材を加熱炉内にほぼ鉛直に支持しながら回転させて脱水焼結して光ファイバ母材を得る第3工程および前記光ファイバ母材の脱水焼結の際に下向きとなった側の端部の形状を実質的に維持したまま前記光ファイバ母材を線引き炉に導入して線引きする第4工程を有する光ファイバの製造方法であって、
前記第3工程で形成された前記脱水焼結後の光ファイバ母材の下部のテーパ部の傾斜S(%)が、
100≦S≦300
(テーパ部の傾斜S(%)は、前記テーパ部の長さをL[mm]、外径一定部の外径をD[mm]、ガラスロッドの平均外径をd[mm]としたとき、S=L×100/{(D−d)/2}で表される。)
であることを特徴とする光ファイバ製造方法。
(2)前記第3工程で形成された前記脱水焼結後の光ファイバ母材の上部のテーパ部の傾斜S(%)が、
200≦S≦600
であることを特徴とする(1)に記載の光ファイバ製造方法。
(3)前記第2工程で形成された前記複合母材の下部のテーパ部の傾斜S(%)が、
50≦S≦150
であることを特徴とする(1)または(2)に記載の光ファイバ製造方法。
(4)前記第2工程で形成された前記複合母材の上部のテーパ部の傾斜S(%)が、
150≦S≦350
であることを特徴する(1)〜(3)のいずれか1項に光ファイバ製造方法。
まず、第1工程は、光ファイバ化後にコアとなる部分を含むガラス微粒子集合体を例えば周知のVAD法などにより形成し、その集合体を脱水焼結し、必要に応じて目的の外径となるように延伸し、所望のガラスロッドを得る。その外径は30mm〜50mm、長さ500〜2000mmが好ましい。
ここで、第2工程では、複合母材両端部に形成されるテーパ部の傾斜が異なるように前記ガラスロッドの外周にガラス微粒子を堆積させることが望ましい。
本発明の複合母材3の形状の一例を図1(a)に正面図として示す。図1(a)の複合母材は、その両端のテーパ部の傾斜が異なるものであり、本発明の光ファイバ母材の製造方法は、図1(b)に例示される傾斜のファイバ母材を製造するために適するものである。本発明の母材のテーパ部は、その面の母線が直線だけでなく、図1(a)や図4に示すように曲線であってもよい。
ここで、テーパ部の傾斜S(%)は、テーパ部の長さをL、外径一定部の外径をD、ガラスロッドの平均外径をdとしたとき、
S=L×100/{(D−d)/2}で表される。
図1(a)におけるテーパ部の傾斜Sは、傾斜が緩やかな側(上部)のテーパ部で150〜350%の範囲が好ましく、さらに好ましくは200〜300%であり、傾斜が急な側(下部)のテーパ部は50〜150%の範囲が好ましく、さらに好ましくは70〜120%である。
図1(b)は、図1(a)の複合母材を脱水焼結した場合の本発明の光ファイバ母材の形状の一例を示す正面図である。図1(b)におけるテーパ部の傾斜Sは、傾斜が緩やかな側のテーパ部で200〜600%の範囲が好ましく、さらに好ましくは350〜550%であり、傾斜が急な側のテーパ部で100〜300%の範囲であり、好ましいのは130〜250%である。
また、未焼結部の外径は焼結後の外径一定部の外径の約95〜120%の範囲が好ましい。
まず、ガラス微粒子発生装置の移動速度を変更することによる方法である。例えば光ファイバ化後にコアとなる部分を含むガラスロッドをその長手軸を中心に回転させながらその外周にガラス微粒子を堆積させて複合母材を製造するものであるが、ガラス微粒子発生装置を長手軸方向(上下方向)に往復移動させる場合の複合母材製造中のガラスロッド1とガラス微粒子発生装置(バーナ)Aとの位置関係を図2(a)に示す。図2(a)の位置関係に配置されたガラス微粒子発生装置(バーナ)Aの移動速度の様子を図2(b)にグラフで示す。図2(b)において、縦軸のバーナの位置は図2(a)のバーナ位置に相当するものであり、点線は折り返し点を示し、横軸はその位置でのバーナの速度を表す。
原料ガス及び燃料ガス等の供給条件を同じにしてガラス微粒子発生装置を定速度で移動させた後、往復移動の一方(図では上方)の折り返し点付近(点P)で徐々に移動速度を上昇し、折り返し後はP点までは徐々に速度を下降し、以後定速で移動させる。移動速度はガス供給量やガラスロッドの長さ等に応じて適宜定まるが、定速度は約20〜50mm/秒の範囲内に設定するのが好ましく、速度上昇後の最大速度は約100〜300mm/秒程度が好ましい。したがって、移動速度が上昇する位置においては、母材の単位面当たりのガラス微粒子の付着量が減少するため、図1(a)に示すような両端部に形成されるテーパ部の傾斜が異なる複合母材を容易に得ることができる。テーパ部の終了端は図示のようにバーナの折り返し点(点線位置)より外側となる。
ここでは、ガラス微粒子発生装置の移動について述べたが、ガラス微粒子発生装置を定位置に固定し、ガラスロッドを移動させて同様の操作を行っても良いのは勿論である。
次に、ガラス微粒子発生装置への原料ガス供給量を変更することによる方法を示す。図2(c)はガラス微粒子発生装置の位置と原料ガス供給量の関係を示すグラフの一例である。図2(c)において、縦軸のバーナの位置は図2(a)のバーナ位置に相当するものであり、横軸はその位置でのバーナからの原料ガス供給量を表す。
相対移動速度を一定にして原料ガス供給量を図2(c)に示すように往復移動の一方の折り返し点付近(点P)で徐々に減少させるようにしても、折り返し点付近で徐々に母材の単位面当たりのガラス微粒子の付着量が減少するため、同様に図1(a)に示すような複合母材が得られる。
さらに、図2(b)と図2(c)とを組み合わせた、移動速度と原料供給量をともに制御する方法をガラス微粒子発生装置に対して行っても同様にテーパ部の傾斜が異なる複合母材が得られることはいうまでもない。
図3(a)は、複数のガラス微粒子発生装置(バーナ)を上下方向に往復移動させてガラスロッドの外周にガラス微粒子を堆積させるものであり、複数のガラス微粒子発生装置(この場合は3本)は、お互いに接触しないように配置されており独立して往復移動を行うものである。
この方法はガラス微粒子発生装置の往復移動について、その振幅をそれぞのガラス微粒子発生装置(バーナ)で異ならせながら周期をほぼ等しくするものである。図3(b)及び(c)は、それぞれのガラス微粒子発生装置(バーナ)の振幅即ち移動範囲を図3(a)に対応させて表示するものである。形成されるテーパ部の傾斜が異なるようにするならばその振幅はどのような範囲でも適宜設定できるが、例えば、図3(a)に示すように上部折り返し位置では、それぞれのバーナ折り返し位置は、150mmずつずらすのが好ましく、下部折り返し位置では、50mmずつずらすのが好ましい。図3(c)の場合は、3本のバーナの移動範囲の差を小さくしたパターンである。いずれの場合でも、バーナは一往復の時間が同じになるようにその速度は異なる設定となっている。
このように複数のガラス微粒子発生装置のそれぞれの振幅を変えることにより、図1(a)に示すような両端部のテーパ部の傾斜が異なる複合母材を容易に得ることができる。そして、それぞれのバーナ折り返し位置を適宜ずらすことで、テーパ傾斜を容易に調節することもできる。なお、この場合には、ガラス微粒子発生装置への原料ガス供給量は、適宜調整してよく、図2(c)に相当するような折り返し点付近で供給量を減少させるといった供給量調整を行ってもよい。
続いて、第4工程として、得られた光ファイバ母材に望むなら適宜の処理を加えてもよいが、さらに形状が変化するような特別な処理や加工を施すことなく、そのまま線引き炉へ導入し線引きを行うことができる。そして、伝送損失の少ない良好で均質な光ファイバを得ることができる。
この結果従来の光ファイバの製造方法と比較して、光ファイバ母材製造後線引きまでに光ファイバ母材を加熱加工する工程を必要としないため工程が数時間短縮し、得られる光ファイバの良品率が約10〜20%増加した。
なお、本発明の実施の形態は上述のものに限られず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
図2(b)に示すように上部折り返し点より約200mm下方に速度変更点Pを設定した。バーナは下部折り返し点からP点まで50mm/秒の一定速度で移動し、P点から上部折り返し点までその速度を徐々に上げ、折り返し直前には最高速度150mm/秒とした。このバーナ移動を繰り返し、ガラス微粒子を堆積した。
得られた光ファイバ母材は、外径一定部の外径が150mmであり、上部の未ガラス化部分を含むテーパ部の最大外径は約160mmであった。そして、上部のテーパ部の長さが約300mm、下部テーパ部の長さ100mmは変わりなかった。したがって、その傾斜は上部で約530%、下部で約180%である。このように両端部に形成されるテーパ部の傾斜が異なった光ファイバ母材が得られた。
この光ファイバ母材は、このまま線引き炉に投入し良好に線引きを行うことができた。
2 ガラス微粒子
3 複合母材
4 光ファイバ母材
5 未焼結部
A、B、C ガラス微粒子発生装置(バーナ)
Claims (4)
- 光ファイバ化後にコアとなる部分を含むガラスロッドを形成する第1工程、該ガラスロッドをその軸を中心に回転させながらガラス微粒子発生装置を前記ガラスロッドの長手方向に相対的に往復移動させることにより前記ガラスロッドの外周にガラス微粒子を堆積させて複合母材を形成する第2工程、前記複合母材を加熱炉内にほぼ鉛直に支持しながら回転させて脱水焼結して光ファイバ母材を得る第3工程および前記光ファイバ母材の脱水焼結の際に下向きとなった側の端部の形状を実質的に維持したまま前記光ファイバ母材を線引き炉に導入して線引きする第4工程を有する光ファイバの製造方法であって、
前記第3工程で形成された前記脱水焼結後の光ファイバ母材の下部のテーパ部の傾斜S(%)が、
100≦S≦300
(テーパ部の傾斜S(%)は、前記テーパ部の長さをL[mm]、外径一定部の外径をD[mm]、ガラスロッドの平均外径をd[mm]としたとき、S=L×100/{(D−d)/2}で表される。)
であることを特徴とする光ファイバ製造方法。 - 前記第3工程で形成された前記脱水焼結後の光ファイバ母材の上部のテーパ部の傾斜S(%)が、
200≦S≦600
であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ製造方法。 - 前記第2工程で形成された前記複合母材の下部のテーパ部の傾斜S(%)が、
50≦S≦150
であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ製造方法。 - 前記第2工程で形成された前記複合母材の上部のテーパ部の傾斜S(%)が、
150≦S≦350
であることを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に光ファイバ製造方法。
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