JP3903689B2 - 光ファイバの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光ファイバの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コアガラスロッドまたはコアとその外周に設けられたクラッドの一部からなるガラスロッドを出発ガラスロッドとし、該出発ガラスロッドの外周に、VAD法によりガラス微粒子を堆積させてガラスロッド/ガラス微粒子堆積体複合体を合成し、該複合体を加熱炉にて焼結してガラス体とし、要すれば該ガラス体を延伸工程に付して、光ファイバ用プリフオーム(以下、プリフォームと略記する)を形成した後、該プリフオームを線引炉にて紡糸することにより光ファイバを製造する方法において、出発ガラスロッドにダミー棒を接続することにより、このダミー棒上部を各工程における操作時の把持部とすると共に、ガラス微粒子堆積体のテーパー部分がこのダミー部分外周になるように合成してゆくことにより高価な出発ガラスロッドの全長を有効に利用することが行われている。
【0003】
また、図1に示すようにこの出発ガラスロッド1の両端部にそれぞれ円筒状あるいは円柱状のダミー棒2,3を予め溶着接続しておき、以降の工程に付す光ファイバ用母材の製造方法が、特開平4−24784に提案されている。図1において、4はガラス微粒子堆積体、5はガラスロッド/ガラス微粒子堆積体複合体、6は焼結炉、7はプリフォーム、8は線引炉、9は光ファイバである。
この方法により、大型の母材(プリフォーム)の把持が安定し、ガラス旋盤で延伸する際も両端把持が可能であり、しかもガラスロッドを傷付けることや、不純物混入、割れ、クラック発生等なしに大型プリフオーム及び光ファイバを製造できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
出発ガラスロッドがフッ素添加された柔らかいガラス部分を含む場合、従来どおりに石英製のダミー棒を接続すると次のような問題が生じた。
[1]ガラス微粒子堆積体を焼結する際、接続部近辺の縦収縮率が急激に変化し外径変動が大きくなる。プリフオームの外径変動は紡糸時の線径変動に繋がり、結果的に光ファイバの損失増加や接続時の接続損失をもたらす。
[2]プリフオームを加熱透明化すると、ダミー棒とガラスロッドとの接続部に気泡を生じる。気泡の存在は線引時に断線を発生し、また光ファイバの伝送特性を低下させる。
[3]下端に接続したダミー棒側から線引炉にて加熱溶融し紡糸すると、溶融部分がダミー棒部からガラスロッドへ移る際、線引速度が急激に変化し、断線を起こしやすい。
本発明の課題は上記の問題点を解消することにあり、本発明は焼結時の気泡発生や外径変動なく大型プリフォームを形成できるに加え、紡糸の際の断線等なく伝送特性に優れた光ファイバを製造できる方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 出発ガラスロッドの一端または両端にダミー棒を接続する工程を有する光ファイバの製造方法において、高温加熱時に該ダミー棒の粘度が純石英の粘度より小さく、かつ該出発ガラスロッドの最も粘度が小さい部分の粘度よりも大きいことを特徴とする光ファイバの製造方法、
(2) 出発ガラスロッドの一端または両端にダミー棒を接続する工程、及びダミーを棒を接続したガラスロッドをプリフオームとして線引炉で紡糸する工程を有する光ファイバの製造方法において、高温加熱時に該ダミー棒の粘度が純石英の粘度より小さく、かつ該出発ガラスロッドの最も粘度が小さい部分の粘度よりも大きいことを特徴とする光ファイバの製造方法、及び
(3) ダミー棒を接続したガラス棒の外周にVAD法によりガラス微粒子を堆積させガラス微粒子堆積体を合成する工程、上記ガラス微粒子堆積体を焼結して光ファイバ用プリフオームとする工程、及び上記光ファイバ用プリフオームを線引炉で紡糸する工程を有する光ファイバの製造方法において、高温加熱時に該ダミー棒の粘度が純石英の粘度より小さく、かつ該出発ガラスロッドの最も粘度が小さい部分の粘度よりも大きいことを特徴とする前記(1) または(2) に記載の光ファイバの製造方法、
に関する。
【0006】
また本発明の特に好ましい態様としては以下の事項が挙げられる。
(4) 石英ガラスにフッ素、塩素、ホウ素及びリンからなる群から選ばれる1種以上を添加することによりダミー棒の粘度を調整することを特徴とする上記(1)ないし(3) のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
(5) 上記出発ガラスロッドがコアロッドであることを特徴とする上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
(6) 上記出発ガラスロッドがコアとクラッドの少なくとも一部とを有することを特徴とする上記(1) ないし(4) のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
【0007】
本発明者らは、フッ素等を添加された柔らかいガラス部分を含む出発ガラスロッドに石英製ダミー棒を接続すると、高温で加熱された際の出発ガラスロッドの柔らかさとダミー棒の柔らかさ、すなわち両者の粘度が大きく異なるため、前記[1][3]の問題が生じると考えつき、本発明に到達した。[1][2]については、出発ガラスロッド及びダミー棒の外周にガラス微粒子を体積させた母材を焼結すると、出発ガラスロッド周囲のガラス微粒子体が収縮する際に、縦方向(中心軸方向)にも縮むため、出発ガラスロッドとガラス微粒子堆積体が一緒に縦方向に収縮する。図2に示すように出発ガラスロッドとダミー棒の粘度が異なると、粘度が小さいもの(図2では出発ガラスロッド)の方が縦方向に縮みやすく、すなわち収縮率が大きくなり、その分外径が太くなる。このため、両者の接続部近辺では縦方向の収縮率が大きく変動してしまう。このとき、接続部の出発ガラスロッド/ダミー棒界面では空隙が生じ気泡となる。このように、収縮率が大きい出発ガラスロッド側は縦に大きく縮んだ分だけダミー棒側よりガラス径が太くなり、縦方向に外径変動が生じる、と考えられる。[3]については、ダミー棒側の線引から出発ガラスロッド側への線引に移る際、ガラスが急激に柔らかくなるため、線引張力が急激に下がったり、線引速度が急激に上昇したりし、制御が追いつかずファイバが切れる、と考えられる。
【0008】
そこで本発明は、ダミー棒の「焼結工程や紡糸工程等の高温加熱時の粘度(以下、単に「粘度」という)」が、出発ガラスロッドの粘度に近い粘度であり、出発ガラスロッドがコアとコア外周に設けられたコアとは別異の粘度を有するクラッド層からなる場合には、コアとコア外周層のそれぞれの粘度の中間にあるように、ダミー棒の材質を選択することにより、[1][2]及び[3]の問題を解決するものである。
【0009】
一般に光ファイバ材質としては、石英ガラス(SiO2 、純石英ともいう)と、石英ガラスに屈折率調整剤等のドーパントを添加したドープト石英ガラスが用いられている。ドープト石英ガラスは純石英より粘度が小さくなる。本発明においてはダミー棒の粘度を、石英ガラスの粘度よりは小さく、かつ出発ガラスロッドの粘度に近くする、または出発ガラスロッドが粘度差を有する二材質からなる場合には、両者の中間の粘度を有するようにする。具体的には光ファイバ用石英ガラスに添加される各種のドーパントを添加すればよく、特に好ましくは、石英にフッ素(F)、塩素(Cl)、ホウ素(B)及びリン(P)からなる群から選ばれる1種以上の適宜量を添加して粘度調整して用いる。
【0010】
本発明における出発ガラスロッド(コア−クラッド)構成とダミー棒の組合せの具体例としては、それぞれの粘度の大小関係を次のようにすることが挙げられるが、例示したものに限定されるところはない。
【0011】
【表1】
Figure 0003903689
【0012】
ダミー棒と出発ガラスロッド(コア、クラッド)との粘度差は、該出発ガラスロッドが単一材質、または二材質のいずれであっても、余りに大きくなると特に前記[1]、[2]が問題となることが考えられる。石英にドーパントを添加する方法はこの種技術分野において公知の手段のいずれによってもよく、例えばVAD法においてドーパントを含むガスをガラス原料とともに反応させる方法、あるいはドーパントを含むガス雰囲気中でガラス微粒子堆積体を焼結する方法などがある。
【0013】
このように出発ガラスロッドに近い粘度のダミー棒は、出発ガラスロッドの両端に取り付けてもよいし、あるいは一端にのみ取り付け他端には従来と同様に石英ガラス製ダミー棒を取り付けてもよい。後者のようにすると、石英ガラス製ダミー棒側を把持して、粘度調整したダミー棒側から紡糸しても気泡発生や断線、外径変動を起こさないし、上側の石英ガラスにより安定した把持が可能となる。
【0014】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
コア(純石英からなり外径φ4.6mm)及びクラッドの一部を有する外径23mm、長さ500mmの出発ガラスロッドを準備した。なお、このクラッドはフッ素を1.25質量%添加された石英からなる。この出発ガラスロッドの上部には外径23mmの石英製ダミー棒を接続するが、下部にはフッ素を1質量%添加した石英からなるダミー棒を接続した。
次にこの出発ガラスロッド(及びダミー棒)の周囲に外径が150mmで均一なガラス微粒子(純SiO2 )堆積体を合成した。得られた出発ガラスロッド(及びダミー棒)とガラス微粒子堆積体の複合体を焼結炉にて1500℃に加熱、透明ガラス化し、光ファイバ用プリフォームを得た。該プリフォームのフッ素を添加したダミー棒と出発ガラスロッドの接続部を観察したが、内部に気泡はなく、プリフォームの外径にも変動は見られなかった。このプリフォームを線引炉にて紡糸した結果、1000kmの間、断線もなく光ファイバを製造することができた。
なお、加熱透明ガラス化の際の出発ガラスロッドとフッ素添加石英製ダミー棒粘度は、各々2.1×107 Pa・s,3×107 Pa・s(+43%)、紡糸時の粘度は各々1.4×105 Pa・s,2×105 Pa・s(+43%)であった。
【0015】
(比較例1)
実施例1と同様にコア(純石英からなり外径φ4.6mm)及びクラッドの一部を有する外径23mm、長さ500mmの出発ガラスロッドを準備した。なお、このクラッドはフッ素が1.25質量%添加された石英からなる。この出発ガラスロッドの上部には石英製ダミー棒を接続し、下部にも石英製ダミー棒を接続した。次にこの出発ガラスロッドの周囲に外径が150mmで均一なガラス微粒子(純SiO2 )堆積体を合成した。得られた出発ガラスロッドとガラス微粒子堆積体の複合体を焼結炉にて1500℃に加熱、透明ガラス化し、光ファイバ用プリフオームを得た。下部のダミー棒のコアロッドの接続部を観察したところ、ちょうど接続界面の周囲に気泡があり、プリフオーム体の外径もコアロッド側が太くなっていた。このプリフオームを線引ロッドにて紡糸したところ、丁度接続界面近傍部を線引している時、急激に線引速度が上昇して断線してしまった。
なお、加熱透明ガラス化の際の出発ガラスロッドと純石英製ダミー棒粘度は、各々2.1×107 Pa・s,1×108 Pa・s(+476%)、紡糸時の粘度は各々1.4×105 Pa・s,4×105 Pa・s(+285%)であった。
【0016】
【発明の効果】
出発ガラスロッド粘度に近い粘度をもつダミー棒を使用することにより、縦方向の収縮率の差を小さくできるので、出発ガラスロッド/ダミー棒界面近傍での気泡発生を防止できる。また、線引時の断線発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施態様の概略説明図である。
【図2】 焼結の際のガラス粘度と収縮の関係を模式的に示した説明図である。
【符号の説明】
1 出発ガラスロッド、 2 ダミー棒、 3 ダミー棒、
4 ガラス微粒子堆積体、 5 ガラスロッド/ガラス微粒子堆積体複合体
6 焼結炉 、 7 プリフォーム、 8 線引炉、
9 光ファイバ。

Claims (6)

  1. 出発ガラスロッドの一端または両端にダミー棒を接続する工程を有する光ファイバの製造方法において、高温加熱時に該ダミー棒の粘度が純石英の粘度より小さく、かつ該出発ガラスロッドの最も粘度が小さい部分の粘度よりも大きいことを特徴とする光ファイバの製造方法。
  2. 出発ガラスロッドの一端または両端にダミー棒を接続する工程、及びダミー棒を接続したガラスロッドをプリフオームとして線引炉で紡糸する工程を有する光ファイバの製造方法において、高温加熱時に該ダミー棒の粘度が純石英の粘度より小さく、かつ該出発ガラスロッドの最も粘度が小さい部分の粘度よりも大きいことを特徴とする光ファイバの製造方法。
  3. ダミー棒を接続したガラス棒の外周にVAD法によりガラス微粒子を堆積させガラス微粒子堆積体を合成する工程、上記ガラス微粒子堆積体を焼結して光ファイバ用プリフオームとする工程、及び上記光ファイバ用プリフオームを線引炉で紡糸する工程を有する光ファイバの製造方法において、高温加熱時に該ダミー棒の粘度が純石英の粘度より小さく、かつ該出発ガラスロッドの最も粘度が小さい部分の粘度よりも大きいことを特徴とする光ファイバの製造方法。
  4. 石英ガラスにフッ素、塩素、ホウ素及びリンからなる群から選ばれる1種以上を添加することによりダミー棒の粘度を調整することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
  5. 上記出発ガラスロッドがコアロッドであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
  6. 上記出発ガラスロッドがコアとクラッドの少なくとも一部とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
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