JP4686817B2 - 平版印刷インキ用ドライヤー及びそれを含有する印刷インキ組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、枚葉平版インキに代表される酸化重合乾燥型印刷インキの乾燥促進剤として用いる印刷インキ用ドライヤー、およびそれを含有する印刷インキに関するものである。更に詳しくは、印刷インキ貯蔵時における容器中、および印刷時における印刷機上では、インキ表面の乾燥を抑制し、かつ印刷後、紙面上でのインキの乾燥を遅延させることのない印刷インキ用ドライヤー、それを含有する印刷インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
枚葉平版インキに代表される酸化重合乾燥型印刷インキには、インキを乾燥させるための乾燥促進剤として、いわゆるドライヤーが添加される。印刷インキ用ドライヤーとしては、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛等の金属とオクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸等のカルボン酸との塩、すなわち金属石鹸が用いられる。
【0003】
一方、印刷インキ貯蔵時における容器中、および印刷時における印刷機上でのインキ表面の乾燥による皮張りを抑制するため、乾燥抑制剤として、ハイドロキノン、メトキノン、t-ブチルハイドロキノン等の酸化防止剤が印刷インキ組成物中に添加される。
【0004】
市販の印刷インキ組成物は、上記のいわゆるドライヤーと乾燥抑制剤とを併用して、インキ貯蔵時や印刷時における印刷機上でのインキ表面の皮張り防止性と印刷紙面上での印刷インキの乾燥性とをバランスさせるのが一般的である。しかしながら、この方法は、印刷時の乾燥性を犠牲にして、インキ貯蔵時や印刷時におけるインキ表面の皮張りを防止しており、また、その皮張り防止効果も十分なものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、インキ貯蔵時における容器中や印刷機上におけるインキ表面の皮張り防止性と、印刷インキの紙面上での乾燥性とを高度にバランスさせた平版印刷インキ用ドライヤー及びそれを含有する印刷インキを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、酸化重合乾燥型印刷インキ用乾燥促進剤として用いられるドライヤー及び酸化防止剤等の乾燥抑制剤とを吸着させた多孔質粒子を印刷インキ中に添加することにより、上記の課題の解決に至った。即ち、本発明の第一の構成は、脂肪酸金属塩及び酸化防止剤を多孔質粒子に吸着させたことを特徴とする平版印刷インキ用ドライヤーである。
【0007】
多孔質粒子は、吸油量0.05ml/g〜5ml/gで、平均粒径0.1μm〜10μmの多孔質粒子であることが好ましく、又、シリカゲルであることが好ましい。脂肪酸金属塩は、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアースから選ばれる金属と、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸から選ばれるカルボン酸との塩であることが好ましい。更に、多孔質粒子が疎水性のシリカゲルであり、酸化防止剤が水溶性の酸化防止剤であることが好ましい。
【0008】
本発明の第二の構成は、脂肪酸金属塩及び酸化防止剤を多孔質粒子に吸着させた平版印刷インキ用ドライヤーを含有することを特徴とする平版印刷インキ組成物である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の構成は、インキの乾燥促進剤として用いられるドライヤーと酸化防止剤等の水溶性乾燥抑制剤を、多孔質粒子に吸着させた形態で印刷インキ中に添加するものである。本発明により、インキ貯蔵時の容器中や印刷機上において、ドライヤーと乾燥抑制剤とが局在化し、ドライヤーが失活する。そのため、容器中や、印刷機上でのインキの乾燥、すなわち皮張りが抑制される。一方、紙面上にインキが印刷される際には、平版印刷に用いられる湿し水中へ水溶性乾燥抑制剤が溶出し、活性を持ったドライヤーが印刷紙面上でのインキの乾燥を促進する。本発明により、インキ貯蔵時の容器中や印刷機上でのインキ表面の皮張り防止と、紙面上での印刷インキの乾燥性とを高度に両立することが可能となる。
【0010】
本発明で用いるドライヤーとしては、平版印刷用インキに代表される酸化重合乾燥型印刷用インキにドライヤーとして通常用いられるものならば、いずれでも良い。例えば、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアース等の金属と、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸等のカルボン酸との塩、すなわち金属石鹸、あるいは、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム等の金属とのホウ酸塩等が用いられる。また、本発明では、これらのドライヤーを単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0011】
本発明で用いられる水溶性乾燥抑制剤としては、アスコルビン酸、リン酸などの酸化防止剤、ソルビトールなどの糖アルコール、多価アルコール、アミンなどが用いられる。本発明では、これらの水溶性乾燥抑制剤を単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
【0012】
本発明に用いられる多孔質粒子としては、吸油量0.05ml/g〜5ml/gで、粒径が0.1〜10μm範囲のものが好ましい。具体的には、多孔質シリカゲル等が挙げられる。また、多孔質粒子として、親水性のものより、疎水性のものを用いる方が好ましい。これは、親水性粒子を用いた場合、粒子との親和力の違いにより、親水性の乾燥抑制剤が粒子の内部に、乾燥促進剤がこれを被覆する構造となり、印刷機上で湿し水と接触した際、水溶性の乾燥抑制剤が溶出しにくくなるためである。
【0013】
ドライヤーや乾燥抑制剤を多孔質粒子に吸着させる際、ドライヤーについては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの揮発性有機溶剤に、乾燥抑制剤については、水、アルコール類などの親水性溶剤に、それぞれ溶解させたものを用いるのが好ましい。溶液の濃度としては、いずれも5〜70wt%の範囲で用いることが好ましい。多孔質粒子に吸着させる順番は、先にドライヤーを吸着させても良いし、乾燥抑制剤を先に吸着させても良い。あるいは、ドライヤーと乾燥抑制剤との混合物を吸着させても良い。ドライヤーと乾燥抑制剤を多孔質粒子に吸着後、真空乾燥等により、粒子中の揮発成分を除去することが好ましい。添加する乾燥抑制剤の量としては、ドライヤーに対して0.1〜40wt%の範囲であることが好ましい。
【0014】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を説明する。例中、部とは重量部を、%とは重量%をそれぞれ表す。また、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】
(実施例1 )
ナフテン酸コバルト(大日本インキ化学工業製)の30%ベンゼン溶液50部を疎水性シリカゲル(吸油量2.5ml/g、平均粒径4.5μm)20部と混合し、その後、1時間真空乾燥してベンゼンを除去する。乾燥後に得られる混合物を5%アスコルビン酸水溶液20部と混合する。その後、1時間の真空乾燥により、ナフテン酸コバルトとアスコルビン酸とを吸着したシリカゲル微粒子、(ドライヤーA)を得た。
【0016】
(実施例2)
ナフテン酸コバルト(大日本インキ化学工業製)の30%ベンゼン溶液50部を疎水性シリカゲル(吸油量2.5ml/g、平均粒径4.5μm)20部と混合し、その後、1時間真空乾燥してベンゼンを除去する。乾燥後の混合物を20%ソルビトール水溶液20部と混合する。その後、1時間の真空乾燥により、ナフテン酸コバルトとソルビトールとを吸着したシリカゲル微粒子、(ドライヤーB)を得た。
【0017】
実施例1、または2で得られた(ドライヤーA)及び乾燥抑制剤含有シリカゲル微粒子である、(ドライヤーB)を以下の印刷インキ組成にて、3本ロール上で混合した。得られたインキ(以下生インキ)と、これに15%の水を加えて自動乳鉢で5分間混合したもの(以下乳化インキ)について、25℃、湿度60%の下でそれぞれの乾燥時間を評価した。
【0018】
生インキの乾燥時間は、当該印刷インキ貯蔵時の容器中、および印刷時の印刷機上におけるインキ表面の乾燥時間の目安となる。これに対し、乳化インキの乾燥時間は、印刷紙面上におけるインキの乾燥時間の目安となる。表1に生インキとそれに対応する乳化インキの乾燥時間を示す。表には、比較のため、ドライヤーとして、シリカゲル粒子に吸着させていないナフテン酸コバルトを添加した印刷インキと、ドライヤーを添加しない印刷インキの乾燥時間も併せて示す。
【0019】
(インキ組成)
顔料(大日本インキ化学工業製フタロシアニンブルー) 20%
ワニス(大日本インキ化学工業製) 60%
溶剤(日石三菱製6号ソルベント) 17%
ドライヤー 含有率は表1に記載
【0020】
【表1】
Figure 0004686817
【0021】
【発明の効果】
本発明で得られる酸化重合型印刷インキ用ドライヤーと水溶性乾燥抑制剤とを吸着させた多孔質粒子を印刷インキ中に添加することにより、印刷インキ貯蔵時の容器中や印刷時の印刷機上におけるインキ表面の皮張り防止と、印刷紙面上でのインキの乾燥性とを高度なレベルで達成できる、ドライヤー及び印刷インキを提供することが可能となる。

Claims (3)

  1. 脂肪酸金属塩及び酸化防止剤を多孔質粒子に吸着させたことを特徴とする平版印刷インキ用ドライヤーであって、脂肪酸金属塩がナフテン酸コバルトであり、多孔質粒子が、吸油量0.05ml/g〜5mlで、平均粒径0.1μm〜10μmの疎水性のシリカゲルである平版印刷インキ用ドライヤー。
  2. 酸化防止剤が水溶性の酸化防止剤である請求項1 に記載の平版印刷インキ用ドライヤー。
  3. 請求項1、2のいずれか一項に記載の平版印刷インキ用ドライヤーを含有することを特徴とする印刷インキ組成物。
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