JP4686078B2 - 接合部を有する樹脂成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接合部を有する樹脂成形品に関する。さらに詳しくは、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品と、熱可塑性樹脂、金属およびセラミックス製の成形品とが、接着剤を介して強固に接着された接合部を有する樹脂成形品に関する。この接合部を有する樹脂成形品は、日用雑貨、自動車部品、電気・電子部品、情報機器、自動車、土木・建設材料などの広い分野において使用されるものであり、特に照明器具、光学部品、建造物の窓部品などに有用である。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、透明性などに優れているので、多くの分野で幅広く用いられている。この芳香族ポリカーボネート樹脂は、射出成形、押出成形、ブロー成形などの成形法によって、目的の製品・部品に成形されるが、これらの成形品単独で最終製品とされるほか、他の様々な素材からなる製品・部品と組み合わされて最終製品とされることも多い。後者の場合には、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品は他の部品と種々の方法で接合されるが、強度、コストの観点から接着剤による接着法が採用されている。しかし、芳香族ポリカーボネートは他の部品との接着性が十分とはいえず、接着強度を改良するために、接着剤の改良が種々行われてきたが、未だ十分とはいえない。一方、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品自体の接着性を高める試みは行われていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、かかる状況にあって、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品と、熱可塑性樹脂、金属およびセラミックス製の成形品とが、市販されていて容易に入手できる接着剤を介して強固に接着された接合部を有する樹脂成形品を提供することを目的として鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品を特定構造の芳香族ポリカーボネート樹脂によって構成すると、目的が効果的に達成されることをことを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明では、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)と、樹脂、金属およびセラミックスから選ばれた少なくとも1種の材料からなる成形品(C)とが、接着剤(D)を介して接合されてなる照明用部品であって、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)はその末端水酸基濃度が300ppm以上であり、かつ、残存するモノマー量が500ppm以下のものであることを特徴とする、接合部を有する照明用部品を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る接合部を有する照明用部品は、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)と、樹脂、金属およびセラミックスから選ばれた少なくとも1種の材料からなる成形品(C)とが接着剤(D)を介して接合されてなる照明用部品である。
【0006】
芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)によって構成される。芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)は、原料として芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)と炭酸結合を導入し得る化合物類(b2)などを用い、従来から知られている、界面重縮合法、エステル交換法などによって製造することができる。このうち、エステル交換法によって製造するのが好ましい。
【0007】
芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)の具体例としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテルなどが例示される。これらの中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]が好ましい。また、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物類は1種でも、必要に応じて2種以上を併用して共重合体とすることもできる。
【0008】
芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)製造用の他方の原料である炭酸結合を導入し得る化合物(b2)としては、ホスゲン、炭酸ジエステル類などが挙げられる。炭酸ジエステル類の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、およびジトリルカーボネートなどの置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも好ましいのは、ジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましいのはジフェニルカーボネートである。これらの炭酸ジエステル類は、1種でも2種以上を併用してもよい。
【0009】
また、上記のような炭素結合を導入し得る化合物(b2)と共に、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量でジカルボン酸類、またはジカルボン酸エステル類を使用することができる。このようなジカルボン酸類またはジカルボン酸エステル類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニルなどが挙げられる。このようなカルボン酸類、またはカルボン酸エステル類を炭酸ジエステル類と併用した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。また、末端停止剤として、p−ターシャリーブチルフェノール、クミルフェノールなどのフェノール類、2−メトキシカルボニルフェニルベンゾエート、4−クミル安息香酸−(2´−メトキシカルボニルフェニル)エステル、2−エトキシカルボニルフェニルベンゾエート、4−(o−メトキシカルボニルフェニル)オキシカルボニル安息香酸−(2´−メトキシカルボニルフェニル)エステルなどのエステル類を、必要量使用することができる。
【0010】
芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)と炭酸ジエステル類(b2)との混合比率は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)の分子量と末端水酸基濃度により決められる。芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)1モルに対して、炭酸ジエステル類(b2)を等モル量以上とするのが一般的であり、好ましくは1.01〜1.30モル、特に好ましくは1.01〜1.20モルである。
【0011】
エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)を製造する際には、通常エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては特に制限はないが、主としてアルカリ金属化合物類、および/または、アルカリ土類金属化合物類が使用され、これらの触媒は、1種類でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、補助的に塩基性ホウ素化合物類、塩基性リン化合物類、塩基性アンモニウム化合物類、またはアミン系化合物類などの塩基性化合物類を併用することもできる。
【0012】
アルカリ金属化合物類の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸水素塩、フェニルリン酸塩などの無機アルカリ金属化合物類や、ステアリン酸、安息香酸などの有機酸類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、石炭酸、ビスフェノールAなどのフェノール類との塩などの有機アルカリ金属化合物類が挙げられる。
【0013】
アルカリ土類金属化合物類の具体例としては、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、酢酸塩などの無機アルカリ土類金属化合物類や、有機酸類、アルコール類、フェノール類との塩などの有機アルカリ土類金属化合物類などが挙げられる。
【0014】
塩基性ホウ素化合物類の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素、等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、またはストロンチウム塩などが挙げられる。
【0015】
塩基性リン化合物類の具体例としては、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、または四級ホスホニウム塩などが挙げられる。
【0016】
塩基性アンモニウム化合物類の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
【0017】
アミン系化合物類の具体例としては、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリンなどが挙げられる。
【0018】
これらエステル交換触媒のうち、実用的にはアルカリ金属化合物類、塩基性アンモニウム化合物類、塩基性リン化合物類が望ましく、特にアルカリ金属化合物類が好ましい。
【0019】
触媒の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)1モルに対して、1×10-9〜1×10-3モルの範囲で選ぶことができる。特にアルカリ金属化合物類、アルカリ土類化合物類では、通常は芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)1モルに対して1×10-9〜1×10-4モル、好ましくは1×10-8〜1×10-5モルの範囲で選ばれる。塩基性ホウ素化合物類、塩基性リン化合物類、塩基性アンモニウム化合物類またはアミン系化合物類などの塩基性化合物類では、芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)1モルに対して1×10-9〜1×10-3モル、好ましくは1×10-7〜1×10-4モルの範囲で選ばれる。
【0020】
触媒量が上記範囲より少ない場合には、所定の分子量、所望の末端水酸基量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)を製造するのに必要な重合活性が得られず、上記範囲より多い場合は、後記する環状オリゴマー量の増加、ポリマー色調の悪化、耐熱性の低下、耐加水分解性の低下や、ゲルの発生による異物量が増大するなど、好ましくない。
【0021】
芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)の分子量は、粘度平均分子量で10000〜50000の範囲が好ましい。10000未満では芳香族ポリカーボネート樹脂の機械的強度が十分ではなく、50000以上では溶融粘度が高くなり過ぎて成形性に問題がある。上記範囲で好ましいのは12000〜40000であり、中でも特に好ましいのは17000〜30000である。なお、本発明において粘度平均分子量(Mw)とは、塩化メチレンを溶媒とし、ウベローデ粘度計によって20℃の温度で極限粘度[η]を測定し、次式、すなわち、[η]=1.23×10−4×(Mw)0.83、により算出した値を意味する。
【0022】
芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)の末端水酸基濃度は、芳香族ポリカーボネート樹脂の接着性に大きな影響を及ぼし、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)と成形品(C)とを市販されている接着剤(D)を介して接合する際に、実用上問題にならない接着強度を発揮させるためには、発明者に実験によれば300ppm以上とする必要がある。末端水酸基濃度は、300〜2,000ppmの範囲が好ましく、さらに好ましいのは400〜1000ppm、特に好ましいのは500〜800ppmの範囲である。
【0023】
本発明において芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)の末端水酸基濃度(ppm)は、Macromol.Chem.88 215(1965)に記載されている、四塩化チタンと酢酸を用いる比色定量法により測定することができ、ビスフェノールAを基準物質として次式、すなわち、末端水酸基濃度(ppm)=芳香族ポリカーボネート樹脂中の末端水酸基量(μモル/g)×17、で算出することができる。
【0024】
上記の特性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)は、前記芳香族ジヒドロキシ化合物類(b1)と、前記炭素結合を導入し得る化合物類(b2)とを選び、通常は上記エステル交換触媒を使用して製造される。エステル交換反応を行う際には、140〜320℃の温度範囲、圧力は常圧または減圧が選ばれ、芳香族ヒドロキシ化合物などの副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0025】
溶融重縮合反応は、バッチ式または連続的に行うことができるが、製品の安定性などの観点から連続式で行うことが好ましい。反応は通常、温度、圧力条件を変化させた2段以上の多段工程で行われる。各段階の反応温度は、上記範囲内で反応生成物が溶融状態にあれば特に制限はなく、また反応時間は、反応の進行の程度により適宜定められるが、0.1〜10時間で選ばれる。具体的には、第1段目の反応は常圧または減圧下で、温度は140〜260℃、好ましくは180〜240℃で、反応時間は0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。ついで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高め、最終的には2mmHg以下の減圧下、240〜320℃の温度で重縮合反応を行う。
【0026】
溶融重縮合反応を行う装置には特に制限がなく、槽型、管型または塔型のいずれの型式であってもよく、各種の撹拌翼を備えた竪型重合槽、横型1軸撹拌翼型または横型2軸撹拌翼型などの重合槽を使用することができる。溶融重縮合反応中の雰囲気は特に制限はないが、反応生成物の品質の観点から、窒素ガスなどの不活性ガス存在下または減圧下で行うのが好ましい。
【0027】
溶融重縮合反応終了後、製造された芳香族ポリカーボネート樹脂は通常、ペレットとして回収されるが、その際、生成した芳香族ポリカーボネート樹脂中に残存するモノマーや副生物などの低分子量成分を除去するために、ベント式押出機で溶融混練しつつ強制的に揮発させて除去できる。芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)中の残存モノマーとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物類、炭酸ジエステル類、これらの重縮合反応時の副生物および末端停止剤であるものモノヒドロキシ化合物類が挙げられる。
【0028】
芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)中に含まれるこれら残存モノマーは、合計量を500ppm以下とする。残存モノマーが500ppmを越えると、接合部の接着強度が低下するので好ましくない。芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)中の残存モノマー量は、300ppm以下がより好ましい。さらに、各残存モノマーの残存量としては、モノヒドロキシ化合物類が100ppm以下、芳香族ジヒドロキシ化合物類が100ppm以下、炭酸ジエステル類が300ppm以下であると、さらに好ましい。
【0029】
溶融重縮合を行う際に触媒、特にアルカリ金属化合物類触媒を用いた場合には、エステル交換法ポリカーボネート中の残存触媒を、失活剤によって中和するのが好ましい。残存触媒を中和する失活剤としては、例えばイオウ含有酸性化合物類またはそれより形成される誘導体類が挙げられる。失活剤の使用量は、触媒のアルカリ金属化合物類の量に対して0.5〜10当量の範囲が好ましく、特に好ましいのは1〜5当量の範囲である。生成する芳香族ポリカーボネート樹脂を基準とする場合には、通常1〜100ppmの範囲であり、特に好ましいのは1〜20ppmである。
【0030】
イオウ含有酸性化合物類またはそれより形成される誘導体類の例としては、スルホン酸、スルフィン酸、硫酸またはそれらのエステル類であり、具体的にはジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、そのメチル、エチル、ブチル、オクチルおよびフェニルエステル類、ベンゼンスルホン酸、そのメチル、エチル、ブチル、オクチル、フェニルおよびドデシルエステル類、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ナフタレンスルホン酸などが挙げられる。これらの化合物のうち、p−トルエンスルホン酸のエステルまたはベンゼンスルホン酸のエステル類が好ましく、これらの化合物は1種でも2種以上を併用することもできる。
【0031】
上記失活剤を生成した芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)へ添加する方法は、特に限定されるものではなく、従来から知られている方法によることができる。例えば、上記の失活剤を直接または希釈剤で希釈して、溶融または固体状態にある生成した芳香族ポリカーボネート樹脂に添加し、混合する方法によることができる。具体的には重縮合反応器、反応器からの樹脂移送ライン、または押出機で溶融混練する際のいずれかで失活剤を添加することにより、芳香族ポリカーボネート樹脂に混合することができる。また、ミキサーなどで芳香族ポリカーボネート樹脂のペレット、フレーク、粉末などに失活剤を混合した後、押出機によって溶融混練する方法であってもよい。
【0032】
芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)には、このほかリン系、イオウ系、ヒンダードフェノール系などの熱安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、難燃剤、顔料や染料などの着色剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、熱線吸収剤、天然油、合成油、ワックス、ガラス繊維や炭素繊維などの有機系または無機系充填剤、ポリエチレンテレフタレートなどの他の熱可塑性樹脂を添加することもできる。
【0033】
上記の各種添加剤および他の熱可塑性樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)が溶融状態にある間に添加することもできるし、また、一旦ペレット化した芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)を再度溶融して添加することもできる。これらの各種添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲とするのが好ましい。特に、グレージング用途などの視認性を要求される用途では、ヘイズが低いことが好ましく、芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)に添加する物質が充填剤、他の熱可塑性樹脂の場合には、成形品の透明度が低下することがあり、この場合の添加量はヘイズが一定値以下となる量とすることが好ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)のヘイズは、内面を800番以上番手の研磨剤で研磨した金型を用い、射出成形法によって成形した厚さが3mmの平板について測定した値が50%以下が好まく、さらに好ましいのは20%以下であり、特に好ましいのは5%以下である。
【0034】
上記の芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)は、射出成形法、押出成形法、中空成形法、回転成形法、ブロー成形法、トランスファー成形法など、従来から知られている熱可塑性樹脂の成形法によって成形し、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)とすることができる。成形品(B)の形状、構造、大きさ、寸法精度などは、上記成形法によって成形できるものであれば特に制限がなく、例えば、フィルム状、シート状、平板型状、棒型状、チューブ型状、筒型状、球型状、箱型状、枠型状、額縁型状、窓枠型状などが挙げられる。
【0035】
芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)は、用途によっては、少なくとも1つの表面に、ハードコート層、導電層、帯電防止層、防曇層、赤外線吸収層、光反射性被膜、印刷層、耐候性向上のための層から選ばれる少なくとも1種の機能層が設けられているのが好ましい。これらの機能層を設ける方法は特に限定されるものではなく、従来から知られている方法によることができる。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)の表面に直接設けることもできるし、機能性層を別途熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(b)の表面に形成し、これらと芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)とを積層一体化して機能層を有する成形体とすることもできる。このとき熱可塑性フィルムまたはシート(b)を構成する樹脂は、特に制限はないが、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂が好ましい。
【0036】
芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)の表面に直接または、熱可塑性樹脂フィルムまたはシート(b)の表面に、ハードコート層を設けるには、必要があればあらかじめプライマー層を設け、その上にエポキシ系、アクリル系、アミノ樹脂系、ポリシロキサン系、コロイダルシリカ系などのハードコート剤を塗布し、熱または紫外線などの手段により硬化する方法によることができる。防曇層を設けるには、通常水溶性または親水性樹脂と界面活性剤を必須成分として含有する防曇塗料を塗布し、硬化する方法によることができる。
【0037】
そのほか、帯電防止層、反射防止層、熱線遮断層なども、これらの機能を与える塗料を塗布し硬化させるか、またはこれらの機能を有する薄膜層を真空蒸着法などの方法により、設けることができる。また、これらの機能性層を複合層として、二種以上の機能を同時に備えたものとすることもできる。さらに、これらの機能性層の他にまたはこれら機能性層に、印刷などにより予め美装用塗装処理を施して優れた意匠性を発揮する印刷層を設けることもできる。
【0038】
成形品(C)を構成する樹脂(c1)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、好ましくは熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66などのポリアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどの樹脂があげられる。
【0039】
金属(c2)としては、鉄、ニッケル、クロム、銅、錫、亜鉛、鉛、タングステン、金、銀、アルミニウム元素から選ばれた少なくとも1種を含有する金属であり、セラミックスとしては、ガラス、陶器、セメント、SiC、SiN等があげられるが、セラミックスとしてはガラス、陶器、セメントが好ましい。
【0040】
成形品(C)は芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)と接着剤を介して接着されて接合部を有する照明用部品を構成するものである。成形品(C)の形状、構造、大きさ、寸法精度などは、照明用部品の用途に応じて適宜選ぶことができる。
【0041】
芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)と成形品(C)との接合は、接着剤(D)を介して行うものとする。接着剤(D)としては、イソシアネート基、エポキシ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、クロルから選ばれた少なくとも1種の官能基、またはこれらの官能基間の反応により生成する結合を有するホットメルト型接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤などが挙げられる。さらに具体的には、エポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、アクリル系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、クロロプレン系接着剤などをあげることができる。これらの中では、エポキシ樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤が特に好ましい。
【0042】
接合部を有する照明用部品を調製するには、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)と成形品(C)とを接着剤(D)によって接合する。両者を接合する方法は特に限定されないが、例えば、いずれか一方の成形品の他方を接合したい箇所に接着剤(D)を塗布し、他方の成形品を位置合わせして接着すればよい。使用する接着剤(D)によっては、加熱処理または紫外線を照射する必要があり、数秒間ないし数時間静置して養生することによって接着強度を高めることができる。
【0043】
本発明に係る接合部を有する照明用部品としては、ゲーム機器の表示画面部、サンバイザーなどの日用雑貨、インスツルメンタルパネル、ナビゲーター画面部、計器類カバー類、サイドミラー、ヘッドランプなどのランプレンズ、サンルーフ、サイドウインドウ、リアウインドウなどの自動車部品、各種機器のキートップ部、運転・操作条件設定パネル、リモートコントローラーのケース、蛍光管などの電気・電子機器部品、携帯電話機の表示画面、携帯電話機の表示画面部とキートップ部、ブック型コンピュータの表示画面部、DVDなどの光ディスク基板、電子辞書の表示画面部などの情報機器部品、建造物の窓部品などの土木・建設材料など、広い分野において使用されるものである。特に、車両ヘッドランプなどのランプレンズ類の照明器具、光学部品として好適である。
【0044】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0045】
なお、以下の記載例において、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造は、以下の参考例に記載した方法によって製造したものであり、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、以下に記載した方法によって粘度平均分子量、末端水酸基量を測定した。
【0046】
(a)粘度平均分子量:上に記載したとおりの方法によって測定した。
(b)末端水酸基量:上に記載したとおりの方法によって測定した。
(c)残留モノマー量:カラムにWaters社製のμ−Bondersphereを使用し、溶媒としてアセトニトリルと酢酸水との混合液を使用し、UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフによって測定した。
【0047】
[参考例]
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを原料とし、エステル交換触媒として炭酸セシウムをビスフェノールA1モルに対して0.5×10-6モル添加して、エステル交換反応を行い、末端水酸基濃度とモノマー残留量の異なる3種類の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−1、PC−2、PC−3)を製造した。得られた3種類の芳香族ポリカーボネート樹脂が溶融状態にある間に、パラトルエンスルフォン酸ブチル(失活剤)を5ppm添加した後、押出機で混練してペレット化した。
【0048】
得られた3種類の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−1、PC−2、PC−3)と、比較例に使用した市販されている芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−4)についての分析値は、次の表−1に示したとおりであった。また、各材料のヘイズは、3000番の研磨剤で表面を研磨した金型を使用して、射出成形法によって厚さ3mmの平板を製造し、ヘイズ測定装置(日本電色工業社製、NDH2000)で測定した。4種類の芳香族ポリカーボネート樹脂(PC−1〜PC−4)とも、1%以下であることを確認した。
【0049】
【表1】
【0050】
以下の例で使用した接着剤は、次のとおりである。
(1)接着剤1:ウレタン系接着剤(コニシ社製、商品名:ボンドKU661/KU662)
(2)接着剤2:エポキシ系接着剤(コニシ社製、商品名:ボンドEセットH)
【0051】
[実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例2]
上記ポリカーボネート樹脂(PC−1〜PC−3)から、射出成形機(名機製作所社製、型式:M−150AII−SJ)を使用し、シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃として、12.7mm×63mm×3.2mmの長方形の平板を成形した。得られた平板を表−1に示したような組合わせとし、一方の平板に接着面が12.7mm×10mmとなるように接着剤を塗布し、他方の平板を重ね合せて接着面をクリップで固定し、80℃で4時間放置して接着剤を硬化させた後、室温で24時間放置して養生させた。接着部を中央にして平板の両側から引っ張り、接着部の剥離強度を測定した。実施例3では、ステンレススチール製(SUS304)製で、2.7mm×63mm×3.2mmの長方形の平板である。引っ張り試験での引っ張り速度は5mm/分とし、引っ張り試験は温度を室温および80℃の2条件で行った。測定結果を、表−2に示した。
【0052】
【表2】
【0053】
表−1および表−2より、次のことが明らかとなる。
(1)実施例の照明用部品は、芳香族ポリカーボネート樹脂製成形品(B)を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂が、末端水酸基濃度が300ppm以上のものであるので、芳香族ポリカーボネート樹脂製成形品(B)と樹脂製成形品(C)(実施例1〜実施例2、実施例4参照)との接合部、芳香族ポリカーボネート樹脂製成形品(B)と金属(C)との接合部は、双方とも強度に優れている(実施例3参照)。
(2)これに対して末端水酸基濃度が300ppm未満の芳香族ポリカーボネート樹脂製成形品と樹脂成形品(C)との接合部は、実施例のものより劣る(比較例1〜比較例3参照)。
【0054】
[実施例5]
片面にシリコン系熱硬化型ハードコート層を施した、厚さが0.5mmのポリカーボネート樹脂シート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ユーピロンシートCFI−1。シートの原料樹脂の粘度平均分子量は28000)を、ハードコート層が成形品の外側面となるように金型キャビティ面に装着し、金型温度60℃として射出成形法によって製造した試験片を、実施例1の材料−Aに代えて使用し、同例におけると同様の手順で接着部の剥離強度を測定した。接着部の室温での剥離強度は、25kg/cm2であり優れていた。
【0055】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明に係る接合部を有する照明用部品は、芳香族ポリカーボネート樹脂製成形品(B)と、樹脂、金属および/またはセラミックから選ばれた少なくとも1種の成形品(C)との接着剤を介しての接合部の強度が優れている。
2.本発明に係る接合部を有する照明用部品は、特別の接着剤を使用する必要がなく、市販されている通常の接着剤によって実用上問題のない接合強度を有するので、各種の用途に活用される。
3.本発明に係る接合部を有する照明用部品は、他材料との接着強度に優れているので、従来のように、成形品表面のコロナ放電処理などの前処理が不要となるので、製造工程を短縮することができる。
4.本発明に係る接合部を有する照明用部品は、従来は接着剤による接合では十分な強度が得られず、信頼性が十分に得られなかった製品・部品の用途であっても、接合部の強度が優れているので、照明用部品の信頼性は高い。
Claims (5)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)と、樹脂、金属およびセラミックスから選ばれた少なくとも1種の材料からなる成形品(C)とが、接着剤(D)を介して接合されてなる照明用部品であって、芳香族ポリカーボネート樹脂成形品(B)を構成する芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)はその末端水酸基濃度が300ppm以上であり、かつ、残存するモノマー量が500ppm以下のものであることを特徴とする、接合部を有する照明用部品。
- 接着剤(D)が、ポリウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載の接合部を有する照明用部品。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)が、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により製造された芳香族ポリカーボネート樹脂である、請求項1または請求項2に記載の接合部を有する照明用部品。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(B1)が、厚さ3mmの平板について測定したヘイズが50%以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の接合部を有する照明用部品。
- 接合部を有する照明用部品の少なくとも1つの表面に、ハードコート層、導電層、帯電防止層、赤外線吸収層、光反射性被膜層、印刷層、耐候性向上のための層からなる群から選ばれた少なくとも1種の機能層が設けられてなるものである、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の接合部を有する照明用部品。
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