JP4685305B2 - 微生物の培養中の気泡形成を減少させるための方法 - Google Patents

微生物の培養中の気泡形成を減少させるための方法 Download PDF

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Description

【0001】
(発明の背景)
本発明は、特許請求の範囲における請求項1の前提部分に記載の培養中における気泡形成を減少させるための新規な方法、請求項12の前提部分に記載の方法によって産生した産生物、請求項15の前提部分に記載の培養中の気泡形成を減少させた新規な産生宿主菌株に関する。さらに本発明は、請求項34の前提部分に記載のより多量の目的の産生物を産生させるための方法に関する。
【0002】
研究用容器中または小規模なもしくは大規模なバイオリアクタ中の液体生育培地で微生物を培養するとき、一般的な特徴は泡が形成することである。このことは、特に通気型バイオリアクタにおいて問題となる。すなわち、これら微生物は通常、発酵培養菌と呼ばれるからである。生化学的には「発酵」という語は、嫌気性代謝による酵母菌中でエタノールが生成するプロセスのことである。個々の選択した微生物についての現代の無菌液内「発酵」は、細胞の塊、酵素および抗体などのタンパク質、および抗生物質、アミノ酸および有機酸などの他の代謝産物を産生するために使用される。発酵の分野で使用される主な微生物は真菌、特に線状の真菌および酵母菌、およびBacillus spp.、Escherichia coliおよびStreptomyces spp.などの細菌である。
【0003】
発酵容器は、典型的には、その容量のわずか70〜80%が液体で満たされており、そのタンクの上の部分は気体の空間で占められている。液体の通気および液体の撹拌による作用が組み合わさって液体表面上に気泡の発生が促進され、標準的にはあらゆる通気発酵ブロス気泡の形成が促進され、このことが大きな気体空間が必要とされる原因である。気泡は気体塊がブロスからヘッドスペースに移動するのを妨げ、気泡は容器から追い出され、壊れた気泡が発酵槽に再び入るとき系を汚染してしまう。このことは、なんらかの気泡を制御する方法が発酵装置中に常に含まれていなければならないことを意味する。商業的な発酵用に最も一般的に使用される2つの方法は、機械的な気泡破砕機の使用および/または消泡剤の添加である。
【0004】
機械的な気泡破砕機は、遠心分離用パルプインペラーと設計が非常に良く似た高速インペラーである。気泡はインペラー中に引き込まれ、そこで強力な機械的な力によって破壊される。これは繊細な生物には適していない。インペラーはそれ自身のシャフト上に取り付けなければならず、メインの撹拌機と独立して駆動させなければならない。これには別個の撹拌機シールが必要であり、汚染源および他の問題の潜在的な源となる。また、機械的な気泡破砕機は相当な資金の支出ともなる。
【0005】
化学的な消泡剤は、気泡の表面張力の性質を変えることによって、気泡を破壊する。通常は追加の容器から自動的に、滅菌した消泡剤を発酵槽にポンプで送る。消泡剤の添加が、汚染の危険につながる可能性もある。なぜなら、ポリマー性の水を含まない液体剤は滅菌するのが困難であるからである。消泡剤の選択は発酵作用との適合性だけでなく、ダウンストリームプロセシングにおける生成物回収、濃度および精製との適合性に基づいても行うことができない。たとえば、特にシリコンをベースとする消泡剤は非常に低い濃度であっても、あるタイプの膜フィルタを介して透過性の流動を大幅に減らすことができる。疎水性消泡剤は疎水性の限外濾過膜に結合し、透過性の流動を低下させ、膜のみかけの分子量のカットオフを大幅に変えることができる。
【0006】
発酵において使用される第1の消泡剤は、シリコーンをベースとする流体である。ごく最近、たとえば長鎖の脂肪酸のエステルを有するエチレンおよびプロピレンオキシドなどのポリマー類からなる化学的構造を有する、油をベースとする消泡剤が一般的に使用されている。すべての消泡剤には「曇り点」があり、これを超えると本質的に水に溶けない。消泡剤の機能的性質は、曇り点を超える温度で働く。したがって、消泡剤の曇り点は発酵の温度未満でなければならない。しかしながら、たとえば膜による濾過は曇り点未満の温度で行われなければならず、したがって消泡剤は水溶性であり、したがって濾過手順に対する影響は最小限であるはずである。消泡剤は非常にさまざまな曇り点で利用可能である。
【0007】
大部分の消泡剤は、その疎水性のために滅菌するのが困難である。消泡剤は相当な資金の支出ともなる。優れた消泡調節システムはオプションも含み、気泡の形成がシステムを圧倒し発酵槽が空になる危険があるときは、空気の流れおよび撹拌速度を自動的に減少させなければならない。過度の気泡形成のために発酵槽が空になる場合、ドライブシステムへのダメージを避けるためにこのことが必要である。
【0008】
発酵ブロスの外側および内側の両方で空気が充填した気泡を破壊するその機能のために、消泡剤は酸素透過速度を大幅に低下させる。対照的に洗浄剤は、通常酸素透過速度を増大させる。消泡剤および洗浄剤が同時に存在するとき、これらは補正効果を発揮する。消泡剤の添加によって酸素透過速度が低下すると、一定の攪拌および通気速度で溶存酸素レベルが低下することになる。消泡剤は表面張力を低下させ、容積質量透過係数(ka)値を減少させる結果となる。これによって通気および撹拌を増大させることが必要となり、代わりに気泡形成が促進され、消泡剤のさらなる添加の必要性が増し、消泡剤によって生み出される問題がさらに増大する。気泡形成および撹拌/通気のポジティブなフィードバック効果は、多くの商業的発酵プロセスにおける主たる問題点である。さらなる実際上の欠点は、消泡剤のポリマー成分による目詰まりのためにプローブの感度が低下し老化が加速されることである。
【0009】
工業的な発酵において使用される産生培地は不溶性ポリマーを含むことが多い。これら不溶性の培地成分の存在によって、発酵中の気泡形成の問題が非常に悪化する。培養中に生ずる気泡は培地からの未使用固形粒子と結びついて、強力な物理的性質および望ましくない高度な持続性を有する複合気泡を形成する。この気泡−固体集合体は容器の側面に、および下部の支持体と独立した発酵槽のヘッドスペース中の他の鋼構造物に付着したままで残存する傾向があり、ブロス層と気泡層とは接触しなくなる。したがって、発酵材料へ消泡剤を添加しても、二次的な気泡構造を分解するのに成功することはない。したがって上部の気泡層と消泡プローブの先端とが接触した後は、その後消泡剤を自動的に添加することによっても気泡層を破壊することはない。この場合、添加容器が空になるまで消泡剤の添加が無限に続く可能性があるし、またそういうことが多い。消泡剤の添加を続けても、集合体気泡層は発酵槽のヘッドスペース中で上昇し続け、最終的には排出ラインに入りアウトレットフィルタを塞いでしまう。代わりにこれによってブロスを介した空気の通過が妨げられ、溶存酸素がゼロに減少し、生成方法に悪影響を及ぼす。この全体のサイクルは、わずか1〜2時間という短時間に起こる可能性がある。
【0010】
酸素透過速度は微生物の種類、その形態および濃度によって影響を受ける。より複雑な形態の種は、酸素透過速度の低下につながる(ペレット対フィラメント、ペレットは酸素要求量および取り込み量が非常に高いわけではないが最大酸素透過速度は明らかに高い)。菌糸体濃縮物(偽可塑性のカビ)の濃度が高いために粘度が増大すると、酸素透過速度が低下することになる。
【0011】
菌糸体の形態は、プロセスの生産性および動態にも影響を与える。小さなペレットが所望の生成物を産生するのに最適である場合もあるが、一方で他の場合は線状の生育が最適であることが分かっている。形態はダウンストリームプロセシングおよび培養液の濾過特性にも影響を与える。なぜなら大きな粒子は、たとえば真空ドラム濾過において分離するのが容易だからである。通常ペレットの形での生育は、拡散的な菌糸体の生育の場合よりも清澄性が高く粘度が低い隙間の培養流体につながる。
【0012】
発酵中の気泡形成によって引き起こされる課題があるために、気泡形成を妨げるか、または抑えるための新しい方法に対する要求は非常に高い。
【0013】
Bacillus菌株の細菌中でサーファクチン(surfactin)を産生することに関する、従来技術の刊行物がいくつかある。EP576050には、Bacillus subtilis中のsfp遺伝子の単離および特徴付けが記載されており、この遺伝子はリポペプチドサーファクチンを産生するためのタンパク質をコードする。サーファクチンは特異的なタンパク質であり、脂質部分がタンパク質部分に共有結合している。B.subtilisからのサーファクチンの気泡形成特性についてはRazafindralambo他(1996)において論じられており、B.subtilisのサーファクチンネガティブの表現型はD’souza他(1993)において論じられている。WO98/22598では、Bacillus細胞を改変して低レベルのサーファクチンを産生することを提案している。この改変によって、気泡形成が減少する結果となることが報告されている。しかしながら、これらの刊行物はBacillusのサーファクチンに限られていた。
【0014】
WO96/41882では、食品産業のために食用の真菌からのヒドロホビン(hydrofobin)の産生を提案している。この刊行物はヒドロホビンの過剰な発現について記載しているが、気泡形成の問題については論じていない。
【0015】
(概要)
従来技術に関する問題点を取り除いて、さまざまな種類の微生物の培養中の気泡形成によって引き起こされる課題の解決策を提供することは、本発明の目的の一つである。本発明は気泡形成に伴う問題を解決するための完全に新しい方法を提供し、これが結果として消泡剤を使用する必要性を最小限にするかまたはその必要性を失くす。
【0016】
本発明は詳細には、微生物の培養中の気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの生成を失くすかまたは減少させるための方法を提供する。この方法は、気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは生成することがない、または本質的に減少した量でしかこれらを生成しない、所望の微生物を遺伝学的に改変することからなる。これらのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、微生物の培養中に生成される気泡から回収可能である。微生物は酵母菌、真菌、細菌、植物細胞および動物細胞からなる群から選択される。これらの微生物は、所望のタンパク質、ポリペプチド、代謝産物またはバイオマスなどの関連の生成物を産生する際に使用される産生菌株であることが好ましい。典型的にはこれらの菌株は遺伝学的に改質されており、効率的な方法でこれらの生成物を産生する。
【0017】
本発明の目的の一つは、微生物の培養中における気泡形成のレベルを低下させるための方法であり、この方法は以下のステップを含む。
【0018】
微生物が微生物の培養中の気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを実質量産生しないように、微生物を改質または改変するステップ、および
適切な培養条件下で微生物を培養するステップ。
より詳細には、この方法は、特許請求の範囲の請求項1の特徴部分で述べたことに主に特徴がある。
【0019】
微生物の「改変」は「遺伝学的改変」であることが好ましく、これは気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするDNA配列の少なくとも1つ、またはその一部分が発現および/または分泌されないように改変されることを意味する。遺伝学的改変は、所望のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするDNA配列の調節領域を対象とするさまざまな方法、または突然変異誘発または欠失などのような、DNA配列を不活性化させることができるさまざまな方法からなり、すなわち遺伝学的改変は、気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの生成を調節するタンパク質をコードするDNA配列を対象とするさまざまな方法からなる。本発明の遺伝学的改変は、所望のDNA配列または気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの配列を不活性化させることによって行うことが好ましい。遺伝学的改変は、所望のDNA配列または配列を欠失させることによって行うことがより好ましい。これは、欠失が気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの効果を減少させるためのための最も強力な技術だからである。
【0020】
培養中の気泡形成に関係がある分子は、微生物の培養中に生成される気泡から、またはそれらの調節タンパク質から回収可能である、さまざまなタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドである。このような分子は、気泡形成の原因である気泡形成タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの調節をするタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。これらは、気泡を形成する、すなわち気泡形成の原因であるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドであることが好ましい。このようなタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドは、疎水性または両親媒性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、ヒドロフォビン(hydrophobin)、または両親媒性表面活性分子を含む。気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドはヒドロフォビンであることが好ましい。ヒドロフォビンは、真菌の最も豊富に生成されるタンパク質である。ヒドロフォビンの存在に関してこれまで研究されてきた真菌はすべて、1つまたはそれ以上のヒドロフォビンを産生することが示されている。
【0021】
多くの微生物産生宿主は気泡形成するタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを培養中に生成することが知られているので、本発明を適用してさまざまな異なる種類の微生物を培養する際に生じうる気泡の問題を解決することができる。
【0022】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、微生物は真菌である。さらに好ましくは、その真菌はTrichodermaである。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、生産されることがなくまたは生産を減少した、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドはTrichodermaからのヒドロフォビンである。
【0024】
本発明の1つの非常に好ましい実施形態によれば、ヒドロフォビンはヒドロフォビンI(HFBI)またはヒドロフォビンII(HFBII)である。本発明は、必要量のHFBIおよび/またはHFBIIを生成しないように、Trichoderma菌株を遺伝学的に改変することを含む。ヒドロフォビンI(HFBI)またはヒドロフォビンII(HFBII)またはこの両方をコードするDNA配列は、Trichoderma菌株中で不活性化されることが好ましい。
本発明の他の好ましい実施形態によれば、微生物は真菌に属する。宿主菌株は、培養中の気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを生産する任意の細菌性宿主であってよい。宿主菌株はE.coliであるか、またはBacillus属またはStreptomyces属に属することが好ましい。
【0025】
本発明の他の目的は新規な産生宿主菌株であり、この産生宿主菌株は、未改変の産生宿主菌株を培養するとき、気泡形成に関係があるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを実質量産生しないように遺伝学的に改変されている。
【0026】
より詳細には、請求項15の特徴部分で述べたことにこの産生宿主菌株は主に特徴がある。
【0027】
本発明の他の目的は、請求項12の特徴部分で述べた本発明の方法によって培養される微生物によって産生される産生物である。この産生物は任意の天然または組換えタンパク質、ペプチド、代謝産物、抗生物質、溶融タンパク質または細胞自体であってもよい。生成物は組換えタンパク質であることが好ましい。
【0028】
本発明において、少なくとも1つの疎水性または両親媒性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを産生しないように改変した産生宿主は、より多量の目的の産生物を産生する能力があることも分かっている。この特徴は培養中においても見ることができ、この場合培養中における気泡形成に本質的な減少はない。
【0029】
したがって本発明の他の目的は、請求項24の特徴部分で特定するような、少なくとも1つの疎水性または両親媒性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを実質量産生しないように遺伝学的に改変した産生宿主菌株である。
【0030】
さらに本発明の一つの目的は、請求項34の特徴部分で述べるような、より多量の目的の産物を産生するための方法である。
【0031】
本発明は、さまざまな利点を提供する。微生物の培養中に気泡がほとんど形成しないかまたは実質的にまったく形成しないとき、消泡剤はまったく必要とされないかまたはごく低レベルしか必要とされない。これによって、結果としてダウンストリームプロセシングが大幅に容易になる。
【0032】
本発明に従って改変された微生物の培養によって、過剰な気泡形成はまったく生じないか、または実質的に減少する。したがって、産生物の損失量が小さいときは、収率が高くなる。
【0033】
1つの明白な利点は、滅菌するのが困難である消泡剤を加える必要がないとき、汚染の危険性が大幅に低下することでもある。なぜなら、生育培地はバイオリアクタシステムの表面またはその他の潜在的に非無菌状態の領域とは接触しないからである。
【0034】
本発明によれば、培養培地が発酵槽表面、電極、インペラーなどへ接触するのは少ないはずである。したがって発酵槽中では細胞の塊はより均質に分布する。加えて、電極の誤作動が減少し、そのことにより発酵の制御性が改善される。
【0035】
本発明の結果として、全体的な生産性が改善されるはずである。1つまたはいくつかの次のパラメータ:産生物/タンパク質分泌比、特異的生産性/タンパク質比(タンパク質/バイオマス)または生産性/発酵比(発酵槽中では液体が多い)は、本発明によって改変していない培養物における比と比較して高いはずである。
【0036】
驚くべきことに、可溶性タンパク質の量、すなわち産生宿主から分泌されるタンパク質の量は培養中に増加する。可溶性タンパク質の量は、本発明によって改変していない宿主によって産生されるタンパク質の量の少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、さらに好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは10倍であってよい。本発明において、実質量の両親媒性または疎水性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、好ましくはヒドロフォビンを産生しないように遺伝学的に微生物を改変することによって、宿主の産生レベルが増大する可能性があるという注目に値する発見がされた。本発明によれば、微生物宿主は好ましくは、少なくとも1つの両親媒性または疎水性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド、好ましくはヒドロフォビンを産生しないように改変されるべきである。本発明中で開示する遺伝学的改変は、改変型微生物の産生レベルを改善するために使用することができる。他のタンパク質の生産が増大したことは、実施例8で示す。
【0037】
気泡形成を減少し得るという効果は一定の培養中では明らかであるが、通気や培地またはその他のパラメータによっては、かかる気泡形成が減少することが気づかれないままである可能性も時にはある。他のタンパク質を多量に産生すると気泡形成が引き起こされる可能性があるので、もしもこれらの菌株中で他のタンパク質の産生が増大するとしたら、疎水性または両親媒性タンパク質の産生が減少させるという減少効果が隠され、明確に測定することができない可能性がある。
【0038】
1つの他の利点は、形態(morphology)を変化させることにより生産性がより良くなったことである。1つまたはそれ以上のヒドロフォビン遺伝子を不活性化させることによって、線状またはペレット形成生育間における菌株の形態を調節することが可能である。
【0039】
不溶性成分を含む培養培地上で微生物を培養するとき、本発明は特に有利である。消泡剤は、微生物代謝および未使用固形粒子によって生成されるタンパク質性気泡から形成される、複合気泡を効率よく分解することができない。本発明によれば、気泡はまったく形成されないか、またはごく少量しか気泡が形成されないので、したがって培養を妨げる非分解性の二次構造の気泡は存在しない。目的の産生物、特に目的のタンパク質を産生するために産生宿主を培養するとき、本発明は特に有利である。
【0040】
(発明の詳細な説明)
ここでは培養という語は、実験容器中でまたは大規模に微生物の細胞を生育させるために使用される任意の方法を意味する。本発明は通気および/または撹拌するバイオリアクタ培養に用いると非常に有用である。
【0041】
生育/培養培地は、用いる微生物に従って選択するべきである。微生物の最適な生育および/または所望の産物の最適な生産を達成するために、栄養分、通気およびpH条件は微生物にとって最適でなければならない。培養培地は、培養中の気泡形成に関係があるタンパク質またはポリペプチドの産生を誘導しないかまたは妨げる培地を選んでもよい。産物は細胞を含む培養培地でもいいし、細胞あるいは培地から、好ましくは培養培地から回収できる。
【0042】
ここでは発酵という語は、任意のバイオリアクタ培養を意味し、その中で通気および/または撹拌が使用される培養が好ましい。発酵槽は普通の発酵槽であることが好ましいが、本発明はエアリフトなど他のタイプの発酵槽にも適用できる。
【0043】
ここでは微生物という語は、細菌、酵母、真菌、植物および動物細胞を意味する。本発明は真菌または細菌に、より好ましくは真菌に適用することが好ましい。
【0044】
本発明の真菌性宿主菌株はAspergillus spp.、Trichoderma spp.、Neurospora spp.、Fusarium spp.、Penicillium spp.、Humicola spp.、Tolypocladium geodes、Kluyveromyces spp.、Pichia spp.、Hansenula spp.、Candida spp.、Yarrowia spp.、Schizosaccharomyces pombe、Saccharomyces spp.を含む。
【0045】
本発明の細菌性宿主菌株はBacillus spp.、Zymomonas spp.およびStreptomyces spp.などのActinomycetales、Nocardia spp.およびEscherichia coliを含む。
【0046】
ここでは生産宿主菌株とは所望の産物を効率的に産生するよう選択されるかまたは遺伝学的に改変されて、産業上の用途にも有用である任意の微生物を意味する。宿主菌株は、目的の産物を効率的に産生するために遺伝子技術手段によって改変された組換え菌株であることが好ましい。
【0047】
遺伝学的改変という語は組換えDNA技術または遺伝子技術、細胞融合およびハイブリダイゼーション、突然変異誘発、誘導多核、接合、形質導入、形質転換および遺伝性物質の細胞内への注入を含む。
【0048】
改変されていない微生物を培養する際の気泡形成に関与しているタンパク質またはペプチドを気泡形成に必要な量作らないように微生物を遺伝的に改変するには、さまざまな遺伝学的方法によって、気泡形成に関係がある少なくとも1つのタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドをコードしているDNA配列を改変して発現または分泌させないようにする、あるいは、気泡形成性のタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドの産生や気泡形成性タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドをコードしているDNA配列を調節している調節タンパク質をコードしているDNA配列を遺伝的に改変するなどである。さらに遺伝的改変は、気泡形成に関係があるタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドをコードしている遺伝子の調節領域を遺伝学的に改変することもふくむ。本発明の好ましい実施形態では、気泡形成タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドをコードしているDNA配列を不活化する。不活化は当分野でよく知られている任意の適切な従来法すなわち分子生物学的方法でできる。改変は部位特異的突然変異導入法または欠失などの組換えDNA技法によって行うことが好ましい。選んだタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドをコードしているDNA配列を欠失させることによって、不活性化を行うことが最も好ましい。
【0049】
前述の方法は、両親媒性または疎水性のタンパク質またはポリペプチドまたはペプチド(好ましくはヒドロフォビン)を産生しないように微生物を改変することにより目的とする産物の産生量を増加させるために使用してもよい。これらの両親媒性または疎水性タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、微生物の宿主の細胞壁中に見出されるものであることが好ましい。
【0050】
培養産物とは、所望のタンパク質や、ポリペプチド、ペプチド、代謝産物または菌体であってよい。
【0051】
ここでは気泡形成に関係があるタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドとは、微生物の培養中の気泡形成に関係があり、微生物の培養中に形成される気泡から回収できる分子ならばいかなるものでもよい。このグループは気泡形成性のタンパク質またはポリペプチドまたはペプチド、および気泡形成性のタンパク質またはペプチドの産生を調節するタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドを含む。このグループは疎水性または両親媒性タンパク質またはポリペプチドまたはペプチド、ヒドロフォビン、疎水性または両親媒性表面活性分子およびタンパク質を含むことが好ましい。気泡形成に関係があるタンパク質またはペプチドはヒドロフォビン(hydrophobin)またはヒドロフォビン様分子であることが好ましい。
【0052】
培養中の気泡形成の原因となる分子の例は、疎水性、両親媒性のタンパク質またはペプチドである。ヒドロフォビンは最近糸状菌から発見された興味深い物理化学的性質を有する両親媒性の分泌タンパク質である(Wessels、1994;WostenおよびWessels、1997;KershawおよびTalbot、1998)。最初にこれらはDNAレベルで記載され(SchurenおよびWessels、1990)その後菌の表面と環境の間の相互作用に働くタンパク質であることがわかった。「ヒドロフォビン」という語は最初は任意の疎水性物質を表すために使用されていたが、Wesselsはこれらのタンパク質をヒドロフォビンと命名した(Wessels他、1991a,b)。ヒドロフォビンは最も豊富に産生される真菌のタンパク質であり、研究されている真菌はすべて1つまたは複数のヒドロフォビンを産生している。これらはたとえば細胞壁、分生胞子、子実体または培養培地から量こそ違え回収することができる。
【0053】
このタンパク質独自の特徴の1つは、その適度な疎水性である。通常これらは小さなタンパク質であり、約70〜160個のアミノ酸中には6〜10個、通常は8個のシステイン残基が保存されたパターンで含まれている。この8個のシステイン残基(Cys)はX2〜38−Cys−X5〜9−Cys−Cys−X11〜39−Cys−X8〜23−Cys−X5〜9−Cys−CysX6〜18−Cys−X2〜13という保存された間隔を有し、この中でXは任意の他のアミノ酸を意味する。しかしながら、たとえばプロリンが豊富なまたはアスパラギン/グリシンの繰り返しを有する1つまたは数個のヒドロフォビン領域を有するマルチモジュラータンパク質も、8個未満のシステイン残基を含むヒドロフォビンも解明されている(Lora他、1994;Lora他、1995;ArntzおよびTudzynski、1997;de Vries他、1999)。
【0054】
ヒドロフォビンは、そのヒドロパシープロファイルおよび物理化学的性質に基づいて2つのクラスに分類されている(Wessels、1994)。クラスIのヒドロフォビンは非常に不溶性の集合体を形成するが、クラスIIのヒドロフォビン集合体は安定性が低く、たとえば60%エタノールおよび2%SDS中で溶ける。しかしながら、ヒドロフォビンによってはおそらくこれら2つのクラスの間の性質を示す。ヒドロフォビンに関する30以上の遺伝子が公開されているが(WostenおよびWessels、1997)、タンパク質で単離され研究されているのはわずか数個である。今日あるほとんどのタンパク質データはSchizophyllum communeのSC3(クラスI)、Ophiostoma ulmiのセラト−ウルミン(cerato-ulmin)およびCryponectria parastiticaのクリパリン(cryparin)(クラスII)のヒドロフォビンに関するものである。他に単離されたヒドロフォビンとしては少なくともS.communeのSC4、Agaricus bisporusのABH1およびABH2およびNeurospora crassaのEASがある。
【0055】
ヒドロフォビンの最も独特な特徴は、それらが親水性/疎水性界面において自己集合することである。親水性の細胞壁と疎水性環境(空気、油、老廃物)の間の界面において自己集合することによって、新生構造は両親媒性の膜で覆われる。細胞表面が親水性から疎水性になることにより、気生菌糸の形成が可能になり、風による胞子の分布が助長され、子実体内部の通気チャンネルが維持され、菌糸の接着および表面の疎水性のシグナリングを仲介する。ヒドロフォビンは、気生菌糸を耐水性および撥水性にする。さらにヒドロフォビンは、複雑な菌糸同士の相互作用に関わる。
【0056】
ヒドロフォビンは、細胞壁/空気または液体界面においてだけでなく、親水性細胞壁と疎水性の固体の間の界面においても集合する。ヒドロフォビンは、真菌の菌糸と疎水性表面とを強固に接着する(Wosten他、1994a)。菌糸の固体表面への接着は、ヒドロフォビン膜の両親媒的な性質によるものである(すなわち、それぞれの側が2つの表面のどちらかと相互作用する)。
【0057】
ヒドロフォビンは、液体−空気界面においても集合する。S.communeのSC3、Coprinus cinereusのCOH1、A.bisporusのABH3、Pleurotus ostreatusのPOH2およびPOH3などのいくつかのヒドロフォビンは、培地中に分泌される(Wosten他、1999)。Aspergillus nidulans、A.niger、A.oryzae、Neurospora crassaおよびPenicillium chrysogenumなどの糸状菌は両親媒性タンパク質、おそらくはヒドロフォビンを培地中に産生する(de Vries他、1993、Wessels、1997)。
【0058】
ヒドロフォビンはモノマーとして分泌されるが、ヒドロフォビンが空気−水界面または疎水性表面との界面で出会うと、凝集して1つの大きなポリマー複合体になる。形成されるこの薄膜は一方の側が疎水性であり、もう一方の側は親水性である。SC3の集合体、およびセラト−ウルミンおよびクリパリンの集合体(Wessels、1997)は、気体−液体または油−液体界面で形成され、これによって空気の泡または水中の油滴を安定化させる。精製SC3ヒドロフォビンが両親媒性層に自己集合するのも、親水性と疎水性の表面上で起こる(Wosten他、1993;Wosten他、1994b)。このフィルムは表面に非常に強く接着し、たとえば熱した洗浄剤によっても壊れない。親水性表面上の層の疎水性側は、テフロンの性質と同様の性質を示す(Wessels、1994)。SC3ヒドロフォビンを含む溶液を撹拌することによって、タンパク質のモノマーが10nmの小桿状のヒドロフォビン凝集体を形成する。これらの構造は、真菌の気生構造の表面上で見られる構造と類似している。
【0059】
水の表面張力を低下させるいくつかのバイオサーファクタント(biosurfactant)が、文献中で知られている(WostenおよびWessels、1997)。一般にタンパク質の表面活性は低いが、ヒドロフォビンは表面活性分子に属し、それらの界面活性能力は糖脂質、リポペプチド/リポタンパク質、リン脂質、中性脂質および脂肪酸などの従来のバイオサーファクタントと少なくとも同等である(WostenおよびWessels、1997)。実際SC3ヒドロフォビンは、これまで知られている最も強力なバイオサーファクタントである。SC3ヒドロフォビンは、50μg/mlの濃度において水の表面張力を24mJmに低下させる。しかしながら他のバイオサーファクタントとは違って、ヒドロフォビンの表面活性は脂質分子に依存せず、アミノ酸配列のみによって引き起こされることが明らかである。SC3のグリカン部分は主にタンパク質の親水性部分に存在し、タンパク質のこの部分の親水性におそらく貢献している。しかしながら、大部分のヒドロフォビンはグリコシル化されておらず、これらの中でリポタンパク質であると報告されているものはない。さらにヒドロフォビンの表面活性は、拡散制限界面吸着ではなく、両親媒性フィルムに集合する際の分子のコンフォーメーション変化によるようである(van der Wegt他、1996、WostenおよびWessels、1997)。SC3ヒドロフォビンと同様に、T.reeseiのHFBIおよびHFBIIヒドロフォビンも水の表面張力を低下させることが示されている(我々の未公開データによる)。表面張力が低下すると気体の泡がより安定化するので、ヒドロフォビンおよび他の両親媒性ポリペプチドは気泡を安定化させる。
【0060】
ヒドロフォビン様分子は、その性質がさまざまである。たとえば、すべてのヒドロフォビンが小桿体形成能力があるわけではなく(クラスIIのあるもの)、あるいは安定した凝集体を形成する傾向が弱いものもある(Russo他、1982;Carpenter他、1992)。真菌の両親媒性タンパク質の他のグループは撥水剤(repellent)である(KershawおよびTalbot、1998)。したがって、気泡形成の原因となる他のタイプのタンパク質およびポリペプチドは、ヒドロフォビンの特徴をいくらか持つに過ぎないこともある。このような例は、SapBおよびストレプトファクチンであり、これらはそれぞれStreptomyces coelicorおよびS.tendaeによって培養培地内に分泌される表面活性ペプチドである(Willey他、1991、Richter他、1998)。
【0061】
ヒドロフォビンの2Dおよび3D構造、および自己集合時に起こる変化についてはほとんど知られていない。しかしながら両方のヒドロフォビンクラス共に、2つのジスルフィド架橋によって安定化する2つの領域を含むと推測される(WostenおよびWessels、1997)。
【0062】
ヒドロフォビンおよび他の疎水性/両親媒性タンパク質およびポリペプチドをみつけて不活性化するための戦略は当分野でよく知られており、ハイブリダイゼーション法によるゲノムまたはcDNAライブラリーのスクリーニングなどの技法があり、このスクリーニングはタンパク質/ペプチドをコードしている領域中の保存領域に基づいて設計されている同種/異種DNA断片およびオリゴヌクレオチドを使用する。しかしながら、ヒドロフォビンの配列の多様性は、配列の相同性に基づくヒドロフォビン様遺伝子の単離が困難であろうことを意味する。異種ハイブリダイゼーションを使用し、核酸の類似性を利用してヒドロフォビン遺伝子を単離したという報告は少ししかない(たとえばMunoz他、1997)。
【0063】
しかしながら、対応する遺伝子の単離のために精製したタンパク質を利用するいくつかの技法は当業者に知られている。気泡形成に関係があるタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドを精製した後、たとえば精製したタンパク質に対する抗体を使用する発現ライブラリーのスクリーニング、またはN末端または内部のタンパク質配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドを使用するゲノムまたはcDNAライブラリーのPCRクローニングまたはスクリーニングなどの、適切な技法を使用して対応する遺伝子を単離する。
【0064】
気泡形成に関係があるタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、それらの諸性質に基づいて精製することができる。これらは菌株の培養中にできる気泡から回収するか、あるいは培地を通気して泡立たせてできる気泡から回収することができる。さらに気泡形成に関係があるタンパク質またはポリペプチドおよびペプチドは、培養培地の凍結によって生じる凝集体から回収することができる。タンパク質またはポリペプチドまたはペプチド(本発明によればそれらの産生を妨げることは有用である)は、ヒドロフォビンについて示されているように菌の細胞、細胞抽出液または培養培地を2層システム(ATPS)に加え、疎水性相材料をふくむ相に析出したタンパク質を回収することによっても得ることができる(Hyytia他、1999)。
【0065】
本発明によれば微生物菌株は、改変されていない微生物の宿主の培養中の気泡形成に関係がある少なくとも1つのタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドを基本量産生しないように遺伝的に改変されている。ここで基本量をつくらないとは、改変されていない親の宿主菌株と比較して、宿主菌株が少なくとも50%減の両親媒性タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドを産生する、好ましくは60〜80%減、最も好ましくは80〜100%減の両親媒性タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドを産生することを意味する。
【0066】
培養中の気泡形成のレベルを低下させるとは、ここでは改変されていない親の宿主菌株と比較して、気泡形成が少なくとも30%、好ましくは40〜80%、最も好ましくは80〜100%減少することを意味する。
【0067】
気泡形成の減少によって、消泡剤が節約され発酵作業容量が増大する結果となる。消泡剤の節約は少なくとも30%、好ましくは40〜80%、最も好ましくは80〜100%である。発酵作業容量の増大は少なくとも5%、好ましくは10〜20%である。
【0068】
目的の産物を産生する能力の向上とは、ここでは少なくとも1つの両親媒性または疎水性タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドを基本量産生しないように改変された産生宿主が、本発明によって改変されていない宿主よりも、少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍、さらに好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは10倍多量の産物を産生する能力があることを意味する。産物は培養から、細胞からまたは培養培地から回収することができ、培養培地から回収されることが好ましい。
【0069】
欠失ベクターとは、ここではマーカー遺伝子およびいわゆる隣接領域をコードしているDNA配列を含むベクターを意味し、このベクターは所望の遺伝子を産生宿主のゲノムから欠失させ、それをマーカー遺伝子に置き換えることができる。マーカー遺伝子はAspergillus nidulansからのamd S、E.coliからのhph、または任意の他の領域または文献中で知られている優性または栄養要求性選択マーカーであってよい。ベクターはpCUシリーズからのクローニングベクター、または任意の他の一般的に利用されるクローニングベクターであってよい。欠失カセット(選択したマーカー遺伝子および隣接領域をコードしているDNA配列を含む)は制限酵素によってベクターのゲノムから取り出すことができる。

【0070】
本発明は、真菌の宿主菌株中のヒドロフォビンをコードしている1つまたは複数のDNA配列を不活性化させることによって、本発明を例示した。1つのヒドロフォビンをコードしているDNA配列の不活性化しただけで、気泡形成に大きく影響を与えた。
【0071】
詳細には、Trichoderma reeseiのゲノムからのhfb1および/またはhfb2遺伝子の欠失によって、本発明を例示した。これらの遺伝子のクローニングおよび単離、対応するタンパク質HFBIおよびHFBIIの精製は、Nakari−Setalaの博士論文(Nakari−Setala、T.、VTT Publication 254、Espoo 1995)(Nakari−Setala他、1996;Nakari−Setala他、1997)に記載されている。博士論文では、T.reeseiのHFBIおよびHFBIIが基質への接着に働いている、または胞子の疎水性に寄与していることが推測されたが、これらのタンパク質の生物学的役割は、本発明以前には多くは知られていない。それゆえ本発明中で示すような、発酵中の気泡形成におけるその重大な役割は驚くべき特徴であった。本発明では、Trichoderma reeseiのゲノム中において、ヒドロホビン(hydrofobin)をコードしている遺伝子の1つが欠失することによって、改変されたTrichoderma宿主の発酵中の気泡形成が著しく減少する結果となることを示した。
【0072】
Trichoderma reeseiのゲノムからのhfb1およびhfb2遺伝子を欠失させるために、これらの遺伝子の欠失体を含むベクターを構築した。ベクター中でhfb1遺伝子をamdS遺伝子に置き換え、ベクター中でhfb2遺伝子をヒグロマイシンBをコードしているE.coliのhph遺伝子に置き換えた。クローニングベクターは、pUCシリーズ、pUC18のベクターの1つであった。
【0073】
実施例2に記載する当分野で知られている形質転換方法によって、異なるT.reesei菌株(QM9414およびRut−C−30)を欠失ベクターで形質転換し、得られた形質転換体中でhfb遺伝子が除去されていることを確認した。hfb1、hfb2、または両方の欠失体を有するこの形質転換体を、撹拌フラスコ中で異なる生育培地(炭素源としてグルコース、ソルビトールおよびラクトースを有する)中で培養した。その結果、hfb1、hfb2、または両方の遺伝子は、T.reesei菌株の酵素の産生に対して悪影響を与えることはないことが示された。親のT.reesei菌株よりも、酵素産生がさらに良くなった場合もあった。
【0074】
hfb1遺伝子欠失の結果として、撹拌フラスコ培養中のグルコースで生育させたΔhfb1菌糸は細胞壁がコントロールの菌糸よりも薄く見え、菌株は培養中に大きなペレットを形成した。形質転換体の生育は培養の中期に幾分か悪くなったが、欠失菌株は培養の後期の段階で宿主菌株においついた。撹拌液体培養においてラクトースで生育するとき、hfb2の遺伝子の欠失が形質転換体の形態に対して影響を与えることはなく、形質転換体と宿主菌株の間で生育の違いは検出されなかった。
【0075】
そのゲノム中にhfb2の欠失体を有するように改変したT.reesei Rut C30菌株も、発酵槽中ラクトースおよびセルロースで生育させた。消泡剤の消費、pH、生育およびタンパク質および酵素産生を監視した。その結果から、1つのヒドロフォビン遺伝子の欠失によって気泡形成が大幅に減少することが明らかに示された。T.reesei Rut−C30を不溶性セルロース高分子を含む培地で、セルロースを栄養源として培養したとき特に、多量のかなり安定した気泡が形成され、したがって消泡剤の消費が増大した。ラクトースで形質転換体を培養したときはいかなる消泡剤も使用せず、セルロースでは、培養中に必要とされた消泡剤の量はコントロール培養の量のわずか12%であった。消泡剤の消費が減少することには、いくつかの良い効果がある。主な利点は、後処理が非常に容易になることである。
【0076】
試験した条件において、hfb2の遺伝子の欠失が形質転換体菌株の生育に対して重大な影響を与えることはなかった。hfb2の遺伝子の欠失が形質転換体による細胞外タンパク質および酵素産生に明らかな悪影響を与えることもなかった。
【0077】
それどころか少なくとも1つの欠失を有する形質転換体菌株の1つでは、すべての分泌タンパク質の産生が増大した。欠失のない菌株と比較して、タンパク質およびプロテアーゼ量によって測定されるバイオマス当たりのタンパク質の産生は大幅に増大した。
【0078】
ここではまたタンパク質産物の生産の例として、ヒドロフォビン様タンパク質を含む融合分子タンパク質の産生を示した。気泡形成に関係があるタンパク質またはポリペプチドをつくらないように産生宿主菌株を改変し、この宿主を形質転換して、両親媒性タンパク質と目的の分子を含む融合分子をつくらせ、水性2層システム(ATPS)で精製した。以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、いかなる方法においても本発明を制限すると解釈すべきではない。
【0079】
(実施例)
実施例1
Trichoderma reeseiのゲノムからのhfb1および/またはhfb2遺伝子を欠失させるためのベクターの構築
T.reeseiのゲノムからhfb1(配列番号1、図1)遺伝子を欠失させるために、hfb1をコードしている領域がAspergillus nidulansのアセトアミダーゼをコードするamdS遺伝子で置き換えられたプラスミドを構築した。hfb1コードする領域およびその隣接領域を含む約5.8kbのSalI断片を保持しているプラスミドpEA10(Nakari−Setala他、Eur.J.Biochem.(1996)235:248−255)を、MunIを用いて消化しT4DNAポリメラーゼを用いて平滑にした。hfb1のコード領域およびいその隣接領域を含む約950bpのMunI断片を欠失した結果として生じたベクター断片をアガロースゲルから精製し、SphIおよびXbaIを用いてp3SR2(Hynes他、Mol.Cell Biol.(1983)3:1430−1439;Tilburn他、Gene(1983)26:205−221)から切り離した3.2kbのamdS断片に連結させ、T4DNAポリメラーゼを用いて平滑にした。得られたプラスミドはpTNS24(図3)である。このプラスミドは、それぞれ約2.7kbおよび2kbであるhfb1の5’および3’非コード領域を有するamdS遺伝子を含む欠失カセットを保持している。欠失カセットはSalIを用いてベクターから切り離すことができる。
【0080】
T.reeseiのゲノムからhfb2(配列番号2、図2)遺伝子を除去するために、hfb2コード領域がヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼをコードするE.coliのhph遺伝子で置き換えられたプラスミドを構築した。hfb2遺伝子の1.2kb5’隣接領域を、HindIIIおよびBglIを用いてプラスミドpTSN8(Nakari−Setala他、Eur.J.Biochem.(1997)248:415−423)から切り離し、T4DNAポリメラーゼを用いて平滑にし、アガロースゲルから精製した。XhoIを用いて切断したpARO21(Penttila他、Patent appl.FI990667)に精製した断片を連結させ、T4DNAポリメラーゼを用いて平滑にし、結果としてpTNS26を生成した。pARO21は本質的にpRLMex30(Mach他、Curr.Genet(1994)6:567−570)と同じであり、730bpのpkilプロモーターおよびT.reeseiの1kbのcbh2ターミネーター配列に操作可能に結合しているE.coliのhph遺伝子を保持している。hfb2の3’隣接領域を欠失カセットに導入するために、pTNS26をEcoRVを用いて切断し、SAP(シュリンプアルカリホスファターゼ、Boehringer−Mannheim)を用いて処理し、pTNS8から切り離した1.7kbのEcoRV hfb2 3’隣接領域断片に連結させた。結果として生じたプラスミドpTNS27(図4)においては、hph2遺伝子の5’および3’非コード領域は共に、hph発現カセットに同じ方向を向いて隣接している。欠失カセットはSphIおよびSpeIを用いてベクターから切り離すことができる。
【0081】
実施例2
Trichodermaの形質転換およびΔhfbクローンの精製
Trichoderma reesei菌株QM9414(VTT−D−74075)、Rut−C30(VTT−D−86271)およびQM9414Δhfb1(VTT−D−99724)を、3〜13μgのプラスミドpTNS24およびpTNS27または適切な制限酵素でこれらから切り離した欠失カセットを使用してほぼ(Penttila他、Gene(1987)61:155−164)に記載されるように形質転換させた。
【0082】
得られたAmd+およびHyg+形質転換体を、それぞれアセタミドおよびヒグロマイシンを含むプレート上に3度線条接種した(Penttila他、Gene(1987)61:155−164)。その後、Potato Dextrose agar(Difco)上で生育した形質転換体から、胞子の懸濁液を作成した。
【0083】
ゲノムからhph遺伝子が除去されたことを確認するために、サザン分析を行った。Easy−DNAキット(Invitrogen)を使用してゲノムDNAを単離するために、混合Amd+およびHyg+形質転換体を、3%グルコースおよび0.2%ペプトンを含む最小培地上で培養した(Penttila他、Gene(1987)61:155−164)。約2μgのDNAを、Δhfb1の形質転換体の場合はPvuIを用いて切断し、Δhfb2の形質転換体の場合はNcoIを用いて切断した。hph1およびhph2遺伝子および隣接領域を含む約5.8kbおよび3.8kbのゲノム断片でのサザンハイブリダイゼーションを行った。宿主菌株中では、プローブを用いたハイブリダイゼーションは、両方の場合において、1つの大きなシグナルを生じ、一方、形質転換体中では、hph遺伝子が適切に欠失している場合は2つの小さなシグナルが得られる。
【0084】
サザン分析に基づいてhph遺伝子が欠失しているクローンの胞子の懸濁液を精製して、選択プレート(アセタミドまたはヒグロマイシンのいずれかを含む)上で1つの胞子培養物にした。前と同様にサザン分析を繰り返して、純粋なΔhfbクローンを選択した。
【0085】
さらなる研究のために使用したT.reesei菌株はVTT−D−99724およびVTT−D−99723(QM9414Δhfb1)、VTT−D−99726(QM9414Δhfb2)、VTT−D−99725(QM9414Δhfb1Δhfb2)およびVTT−D−99676(Rut−C30Δhfb2)である。
【0086】
実施例3
グルコース、ソルビトールおよびラクトース上でのTrichoderma QM9414Δhfb1、Δhfb2およびΔhfb1Δhfb2菌株の酵素産生
菌株VTT−D−99724(Δhfb1)、VTT−D−99726(Δhfb2)、VTT−D−99725(Δhfb1Δhfb2)およびこれらの宿主菌株VTT−D−74075(QM9414)を、振盪フラスコ中において28℃で3〜7日間、ペプトン2%および2%炭素源としてi)グルコース、ii)ソルビトールまたはiii)ラクトースを補ったTrichoderma最小培地(Penttila他、1987)50ml中で培養した。出発pHはpH4.8であった。培養培地サンプルを3つの培養から採取した。分泌されたすべてのタンパク質を、Lowry他、1951の方法によって分析した。エンドグルカナーゼおよびエンドキシラナーゼ活性を、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、Fluka54290)およびバーチキシラン(XYL、Roth7500)をそれぞれ基質として使用して、IUPAC標準方法およびBailey他(1992)に従って測定した。5μlの培養濾過液を1%スキムミルクを含む1.5%寒天プレート(pH5)上に点在させ、サンプル中のプロテアーゼ活性によるかさのサイズを評価することによって、プロテアーゼ活性を半定量的に判定した。
【0087】
活性測定から得た、分泌されたすべてのタンパク質当たりの酵素活性として計算した値を以下の表に示す。これらの数字によって、hfb遺伝子の欠失による悪影響はなく、グリカナーゼおよびプロテアナーゼ(その発現が異なる調節機構の下にある2グループの酵素)の産生に良い影響を与える場合もあることが示される。培養末期の培養ブロスのpH値によって、同じ培養培地上では菌株はすべてほぼ同じ成長段階にあることが示される。同じ培地上の異なる菌株間では、細胞マスの形態および量の明らかな違いは視覚的に見られなかった。
【0088】
【表1】
Figure 0004685305
【0089】
実施例4
グルコース上でのT.reeseiQM9414Δhfb1菌株の生育および形態
2つの独立した形質転換体に由来する菌株VTT−D−99724(Δhfb1)およびVTT−D−99726(Δhfb1)、およびこれらの宿主菌株VTT−D−74075(QM9414)も、振盪フラスコ中において28℃で5日間、pH6に緩衝し3%グルコースを補ったTrichoderma最小培地(Penttila他、1987)250ml中で培養した。菌糸の乾燥重量を測定することによって、さらに異なる時点における培養培地のpH値から定性的に菌株の生育を調べた。
【0090】
hfb1遺伝子の欠失の結果、菌糸の乾燥重量(図10)およびpH(図11)から見ることができるように、グルコース上で生育するためのT.reeseiの能力が振盪液体培養において阻害された。グルコース培養中の菌糸の出現を光顕微鏡を用いて監視して、欠失菌株の形態を研究した。おそらく、細胞壁中にHFBIタンパク質が欠けているために、Δhfb1菌糸は対照の菌糸よりも薄く見え、菌株は培養中に大きなペレットも形成した。しかしながら、培養中に、欠失菌株VTT−D−99723がバイオマス産生の点で宿主菌株に達するということに注目すべきである。
【0091】
実施例5
振盪フラスコ中のラクトース上でのTrichoderma Rut−C30 Δhfb2菌株の培養
菌株VTT−D−99676(Δhfb2)およびその宿主菌株VTT−D−86271(Rut−C30)を、振盪フラスコ中において28℃で3日間、pH6に緩衝し0.2%ペプトンおよび2%ラクトース(ラクトース供給による)を補ったTrichoderma最小培地(Penttila他、1987)250ml中で培養した。生育およびタンパク質産生の分析のために、2および3日目にフラスコからサンプルを採取した。菌糸の乾燥重量を測定することによって定量的に、さらに培養培地のpH値から定性的に成長を分析した。図12に見られるように、これらの測定に基づいて形質転換体と宿主菌株の間で成長の違いは検出されなかった。さらに、形質転換菌株の形態は宿主菌株のそれと同様であった。
【0092】
それぞれIUPAC標準方法およびTilbeurgh他(1988)に従って測定した、分泌されたエンドグルカナーゼ(HEC)およびセルバイオヒドロラーゼ(MUL)の産生レベルを以下の表に示す。これらの結果によって、対照菌株からのhfb2遺伝子の欠失は酵素生成に対して悪影響を及ぼさないことが明らかに示される。
【0093】
【表2】
Figure 0004685305
【0094】
実施例6
発酵槽中のラクトース上でのTrichoderma Rut−C30 Δhfb2菌株の培養
ある種の菌株について(ただしすべてではない)、最新のセルロース産生培地は、炭素源および酵素誘導物質としてラクトースをベースとすることができる。対照の菌株Rut−C30はラクトース上で効率的にセルラーゼを産生するが、一方、菌株QM9414は産生しない。
【0095】
Trichoderma reesei Rut−C30およびそのΔhfb2形質転換体VTT−D−99676(D−676)を、15リットルの実験用発酵槽中のラクトースをベースとする培地上で培養した。この培地はラクトース(Riedel−de Haen、Germany、product33411)40g/l、ペプトン(Difco、USA、0118−17)4.0g/l、酵母菌抽出液(Difco、0127−17)1.0g/l、KHPO4.0g/l、(NHSO2.8g/l、MgSOx7HO0.6g/l、CaClx2HO0.8g/l(別々に滅菌した)および微量の溶液(Mandels and Weber 1969)2.0ml/lを含んでいた。インシトゥーで滅菌する前には(123℃/20分)、消泡剤は加えなかった。培養条件は温度29℃、撹拌600rpm、通気10lmin−1、pH4.0〜5.0であった。
【0096】
これらの培養中の完全に可溶性である培地上では、バイオマスの乾燥重量の分析およびラクトースの消費によって、生育を監視することが可能であった。2つの培養における成長パラメーターの比較を図8AおよびBに示す。この結果によって、対照菌株からのhfb2遺伝子の欠失は生育に対して影響を及ぼさないことが明らかに示された。いずれの菌株についても、気泡形成は培地上では大きな問題ではなかった。菌株Rut−C30については消泡剤の消費は10ml/15リットルであり、一方、菌株D−676の培養中、消泡剤は消費されなかった。
【0097】
この培養の対において、Δhfb2菌株によるセルラーゼ生成は、対照菌株Rut−C30よりも幾分少なかった(以下の表)。しかしながら、ラクトースをベースとする培地上でのセルラーゼ産生に関する経験によって、それぞれの産生菌株について別々に方法条件の最適化を行わなければならないことが示されている。適切な菌株特異的pHおよび/または温度の調整によって、ラクトース分子のグルコースおよびガラクトースへの開裂による初期の異化生成物抑制の影響を避けなければならない。
【0098】
表:15リットルの実験用発酵槽中のラクトース培地上でのT.reesei Rut C30およびそのΔhfb2形質転換体VTT−D−99676の培養における可溶性タンパク質、セルラーゼ(HEC、FPU、IUPAC標準方法)の産生、および消泡剤(Struktol J633)の全体的な消費。
【表3】
Figure 0004685305
【0099】
実施例7
発酵槽中のセルロース上でのTrichoderma Rut−C30 Δhfb2菌株の培養
Trichoderma reesei Rut−C30およびそのΔhfb2形質転換体VTT−D−99676(D−676)を、15リットルの実験用発酵槽中のセルローススペントグレイン培地上で培養した。この培地はSolka folcセルロース40g/l、蒸留粕20g/l、KHPO5g/l、および(NHSO5g/lを含んでいた。消泡剤(Struktol J633、Schill and Seilacher、Hamburg、Germany)5mlという標準的な用量を培地に加えて、インシトゥー滅菌(123℃/20分)中の気泡形成を防止した。培養条件は温度29℃、撹拌600rpm、通気10lmin−1、pH4.0〜5.0であった。
【0100】
固体をベースとする培地上でバイオマス産生に関する成長または基質の消費を測定することはできなかったが、セルラーゼ(HEC;EPU)および可溶性タンパク質(Lowry他、1951)の産生曲線は、対照および形質転換菌株による産生と非常に似通った速度およびレベルを示した(図9AおよびB)。ブロスのpHの曲線も、発育相の順序の表示として図中に示されている:遅滞相および初期発育中の不定的または増大的な傾向、主発育相中のpHの低下、および最終的に二次的な代謝/飢餓中の増大傾向。培養中に測定したセルラーゼおよびキシラーゼ活性の産生レベルを下の表に示す。これらの結果によって、対照菌株からのhfb2遺伝子の欠失は酵素生成に対して負の影響を及ぼさないことが明らかに示される。この比較において使用した酵素基質すべての不均質な性質のために、分析結果の典型的な変動は、HECおよびXYLについては±10%、FPUについては少なくとも15〜20%の範囲である。
【0101】
表:15リットルの実験用発酵槽中のセルローススペントグレイン培地上でのT.reesei Rut C30およびそのΔhfb2形質転換体VTT−D−99676の培養における可溶性タンパク質、セルラーゼ(HEC、FPU、IUPAC標準方法)およびキシラーゼ(XYL、Bailey他、1992)の産生、および消泡剤(Struktol J633)の全体的な消費。
【表4】
Figure 0004685305
【0102】
2つの培養間の主な際だった違いは消泡剤の消費にあった。菌株Rut C30での対照培養ではStruktolの消費は50ml/15リットルであったが、一方、菌株D−676の場合はわずか6.0mlが消費された。後者の培養ではわずか1度だけ(実験のまさに終期に)気泡形成されたことが明らかである。おそらくこの気泡形成は酵素タンパク質の培地への分泌の結果であり、HFBIIの存在または不存在とは明らかに無関係であった。消泡剤の必要量のほぼ10倍の違いは、産業規模のダウンストリームプロセシング(膜濾過および可能なクロマトグラフィ精製による酵素濃縮)に関して重大な影響を与えるはずである。
【0103】
実施例8
発酵槽中のグルコース上でのΔhfb1Δhfb2 Trichoderma QM9414菌株の培養
Trichoderma reesei菌株QM9414(VTT−D−74075)およびそのΔhfb1Δhfb2形質転換体VTT−D−99725を、15リットルの実験用発酵槽中のグルコースをベースとする培地上で培養した。この培地はグルコース40g/l、ペプトン(Difco、USA、0118−17)4.0g/l、酵母菌抽出液(Difco、0127−17)1.0g/l、KHPO4.0g/l、(NHSO2.8g/l、MgSOx7HO0.6g/l、CaClx2HO0.8g/l(別々に滅菌した)および微量の溶液(Mandels and Weber 1969)2.0ml l−1を含んでいた。インシトゥー滅菌する前には(123℃/20分)、培地に消泡剤を加えなかった。培養条件は温度29℃、撹拌600rpm、通気10lmin−1、pH4.0〜5.0であった。形態、バイオマスの乾燥重量、pH、酸素および消泡剤の消費および細胞外タンパク質の産生(Lowry他、1951)およびプロテアーゼ活性を、Azurineカゼイン加水分解に基づく方法(Protazyme AK kit Megazyme)を使用して培養中に分析した。
【0104】
バイオマス産生および基質消費に基づく生育は、対照および形質転換菌株の生育と非常に似通っていることを示した(図13AおよびB)。菌株間で形態の顕著な違いは検出されなかった。全可溶性タンパク質の産生、およびプロテアーゼ活性のレベルをより具体的な分泌型性の一例として以下の表に示す。2つの菌株間の主な違いは、全分泌タンパク質の生成であった。非改質型菌株QM9414に関する培養において、0.062g/lのタンパク質が測定され、一方、改質型菌株VTT−D−99725は0.390g/lの可溶性タンパク質を産生した。したがって、タンパク質およびプロテアーゼの量によって測定されるバイオマス当たりのタンパク質の産生は大幅に増大した。
【0105】
表:、15リットルの実験用発酵槽中のグルコース培地上でのT.reesei QM9414およびそのΔhfb1Δhfb2形質転換体VTT−D−99725の培養の終期におけるバイオマス、可溶性タンパク質およびプロテアーゼの生成
【表5】
Figure 0004685305
【0106】
実施例9
ATPS中の融合タンパク質の分配を改善するための、T.reesei Δhfb2菌株におけるEGIcore−HFBI融合タンパク質の産生
EGIcore−HFBI融合タンパク質の構築のために、Ser−23からストップコドンまでのhfb1コード領域を、以下のプライマーを用いてPCRによって増幅した。5’プライマーはACT ACA CGG AGG AGC TCG ACG ACT TCG AGC AGC CCG AGC TGC ACG CAG AGC AAC GGC AAC GGC(配列番号3)であり、3’プライマーはTCG TAC GGA TCC TCA AGC ACC GAC GGC GGT(配列番号4)である。5’プライマー中の太字の配列はEGI中のアミノ酸410〜425をコードしており、下線を引いたGAGCTCはSacI部位である。260bpのPCR断片をアガロースゲルから精製し、pPCRII T/Aベクター(Invitrogen)に連結させ、その結果pMQ111が生じた。
【0107】
次のステップでは、cbh1プロモーターおよびターミネーター配列の調節下で、EGIcore−HFBI融合タンパク質を産生するためにTrichoderma発現ベクターを構築した。構築体のバックボーンとして使用した発現ベクターはpPLE3であり(Nakari他(1994)WO94/04673)、これはpUC18のバックボーンを含み、EcoRI部位に挿入されたcbh1プロモーターを保持している。cbh1プロモーターは完全長egl1 cDNAをコードしている配列、およびcbh1転写ターミネーターに動作可能に結合している。SacIおよびBamHIを用いてプラスミドpMQ111を消化し、hfb1配列を含む260bpの断片を、SacIおよびBamHIを用いて消化したpPLE3に連結させた。その結果生じたプラスミドpMQ113(図5)はEGIcoreのコード配列を保持しており、これはcbh1プロモーターおよびターミネーター配列の調節下で、それ自体のリンカー領域を介してHFBIに結合している。
【0108】
Trichoderma reesei菌株QM9414 Δhfb2(VTT−D−99726)を、10μgのプラスミドpMQ113、およびアセタミダーゼをコードするためのAspergillus nidulansのamdS遺伝子(Hynes他、Mol.Cell Biol.(1983)3:1430−1439;Tilburn他、Gene(1983)26:205−221)を含む3μgの選択プラスミドpTOC202を使用して、本質的にPenttila他のGene(1987)61:155−164に記載されるように形質転換させた。
【0109】
得られたAmd+形質転換体を、アセタミドを含むプレート上に2度線条接種した(Penttila他、Gene(1987)61:155−164)。その後Potato Dextrose agar(Difco)上で生育した形質転換体から、胞子懸濁液を作成した。振とうフラスコからのEGIおよびHFBI特異抗体を用いたスロットブロッティングまたはウエスタン分析、またはSolka flocセルロースおよび/またはスペントグレインおよび/または乳清の混合物を補った最小培地において行ったミクロタイタープレート培養によって、EGIcore−HFBI融合タンパク質の産生を試験した。融合タンパク質を産生するクローンの胞子懸濁液を精製して、選択プレート(アセタミドを含む)上で単一胞子培養体にした。最良の産生菌を決定するために、前記したように精製したクローンから、融合タンパク質の産生を再び分析する。
【0110】
ポリオキシエチレン洗浄剤C12−18EO(Agrimul NRE1205、Henkel)を使用する、ATPS中のEGIcore−HFBI融合タンパク質の分配実験用に、この実験で得られる最良の産生菌株およびコントロール菌株としての菌株VTT−D−98691(EGIcore−HFBIを産生するQM9414菌株)、VTT−D−74075(QM9414)およびVTT−D−99726(QM9414 Δhfb2)を、振とうフラスコ中において28℃で5〜6日間、3%Solka flocセルロースおよび1%スペントグレインを補ったTrichoderma最小培地(Penttila他、1987)50〜250ml容量中で培養した。
【0111】
10mlの目盛りつきチューブ中で、上澄み(遠心分離または濾過によって分離したバイオマス)についての分配実験を行った。最初に洗浄剤をチューブに加え、次いでチューブを培養上澄みで10mlに充填した。チューブ中の洗浄剤の量は、洗浄剤の重量%で計算する。オーバーヘッド振とう器中で完全に混合させた後、一定温度の水浴中での重力による沈殿、または一定温度での遠心分離によって分離を起こさせる。通常この分離は30℃で行い、使用する洗浄剤の標準的な量は2〜5%(w/v)である。分離した後、軽相と重相の容量比を記録し、融合タンパク質の濃縮因子をそこから計算する。軽相および重相からも、分析用のサンプルを採取する。
【0112】
SDS−PAGEゲルを使用し、次にCoomassie brilliant blue R−250(Sigma)を用いる融合タンパク質の可視化またはウエスタンブロッティングによって、2層分離を定性的に分析する。EGIcore−HFBI融合タンパク質および抗ウサギIgG(Bio−Rad)に接合したアルカリホスファターゼを検出するために、ウエスタン分析においてポリクローナル抗HFBI抗体を使用する。NBT(ニトロブルーテトラゾリウム)(Promega)との接合で使用したBCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート)を使用して、アルカリホスファターゼ活性を比色定量的に検出する。
【0113】
基質として4−メチルウムベリフェリル−β−D−セロビオサイド(MUC)(Sigma M6018)を使用して、EGI活性を検出する(Van Tilbeurgh H.and Caeyssens M.、1985;Van Tilbeurgh他、1982)。EGIはβ−グリコシド結合を加水分解し、蛍光性4−メチルウムベリフェロンを遊離し、360励起フィルタおよび455nm放出フィルタを備えたフルオロメーターを使用して、これらを測定することができる。CBHIも基質を加水分解し、それはセロビオースの添加によって阻害される(C−7252、Sigma)。EGIを含む液体を適当な希釈液に加えて、酢酸ナトリウム緩衝液50mM(pH5)、MUC 0.6mMおよびセロビオース4.6mMを含む緩衝液とする。この混合物を50℃に加熱する。2%NaCO、pH10を使用して、10分後に反応を停止させる。阻害剤セロビオースを添加せずにEGIと同じアッセイを使用して、精製されたCBHIを検出する。
【0114】
それぞれ上部および底部相において測定した濃度または活性の比として、分配係数Kを定義する。
収率Yは以下のように定義する。
【数1】
Figure 0004685305
【0115】
上式でYは上部相の収率であり、VおよびVはそれぞれ上部および底部相の容量である。これに従って底部相の収率を求めることができる。
【0116】
質量の収支、たとえば加えたタンパク質すべての回収を、完全性について常にチェックして、人為的に収率が高いわけではないことを確認する(たとえば底部相におけるタンパク質の可能な不活性化)。通常この値は全体の酵素活性(EGI重量+EGI融合)に基づいて計算されるので、融合体の分離については値が低めに評価される。
【0117】
実施例10
ATPS中の精製用のT.reesei Δhfb2菌株中のHFBI単鎖抗体融合タンパク質の産生
N末端がT.reesei HFBIタンパク質、C末端が分子量小さなジアリールアルキルトリアゾールの誘導体を認識する単鎖抗体(ENA5SCFV)からなる融合タンパク質を産生する、T.reesei菌株を構築する。水性2相システムを使用して、融合体を精製する。
【0118】
ジアリールアルキルトリアゾール抗原に対して立体異性特異的なFabフラグメントのクローニング用に、Promegaの抽出プロトコルを使用して、抗原によって免疫性を与えたマウスの脾臓細胞から得たハイブリドーマセルラインから全RNAを単離した。QiagenのOligotex−dT polyA+精製キットを使用してmRNA断片を精製し、PromegaのAMV逆転写酵素システムによってcDNA合成を行った。次いでそれぞれの抗体グループ、9つの重鎖および4つの軽鎖に特異的なプライマー混合物を使用して、cDNAをPCR増幅にかけた(Kabat他、1991、Sequences of proteins of immunological interest、NIH publication No.91−3242に従って)。製造者の指示に従ってDynazyme polymerase(Finnzymes)および標準条件を使用して重合を行った。増幅の後、発現ベクターpTI8(Takkinen他、1991)中に存在するlacIリプレッサーによって調節されるtacプロモーターの下で、ディシストロニックオペロンとして重鎖および軽鎖をクローン化した。分泌用に、Erwinia carotovoraのペクテートリアーゼのPelBシグナル配列(Takkinen他、1991)を重鎖および軽鎖の両方に連結させた。6個のヒスチジンタグを軽鎖のC末端に加えた。その結果生じたプラスミドはpENA5−Hisである。
【0119】
ENA5SCFV単鎖抗体の構築のために、鋳型としてpENA5−Hisを使用して、重鎖および軽鎖のさまざまなドメインをPCRによって増幅させた。増幅したフラグメントをpKKtacベクター(Takkinen他、1991)にクローン化し、その結果pENA5SCFVが生じた。pENA5SCFVベクターは、重鎖および軽鎖のさまざまなドメインからなるENA5SCFV単鎖抗体についてのコード領域を保持しており、これらはグリシンセリンリンカー(Huston他1988および1991)およびC末端の6個のヒスチジンタグを介して連結されている。単鎖抗体の転写および分泌は、それぞれtacプロモーターおよびpelBシグナル配列(Takkinen他、1991)の調節下にある。
【0120】
HFBI−ENA5SCFV融合タンパク質の構築のために、NcoIおよびXbaIを用いてpENA5SCFVを消化した。ena5scfv遺伝子およびヒスチジンテール(6個のヒスチジン)を含むフラグメントをpTNS29に平滑末端クローン化し、その結果pTH1が生じた(図6)。cbh1プロモーターおよびターミネーター配列の調節下において、pTNS29ベクターは、リンカー配列(ProGlyAlaSerThrSerThrGlyMetGlyProGlyGly)(配列番号5)に従う、T.reeseiのhfb1コード領域を保持している。
【0121】
リンカーペプチド中にトロンビン開裂部位を有するHFBI−ENA5SCFV融合タンパク質の構築のために、前述のena5scfvコード領域(Ala−23からストップコドンまで)およびトロンビン開裂部位(GlyThrLeuValProArgGlyProAlaGluValAsnLeuVal)(配列番号6)を含むペプチドリンカーを、鋳型としてpENA5SCFVおよび5’プライマーとしてGAA TTC GGT ACC CTC GTC CCT CGC GGT CCC GCC GAA GTG AAC CTG GTG(配列番号7)、3’プライマーとしてTGA ATT CCA TAT GCT AAC CCC GTT TCA TCT CCA G(配列番号8)を使用して、PCRによって増幅させた。5’プライマー中の太字の配列は、ENA5SCFVの第1の6個のN末端残基をコードしている。イタリックの配列はトロンビン開裂部位であり、下線を引いたGGTおよびACCはAsp718部位である。3’プライマー中の太字の配列は、ENA5SCFVの6個のC末端残基をコードしており、下線を引いたCATATGはNdeI部位である。790bpのPCR断片をアガロースゲルから精製し、pTNS29に連結させ、その結果pTH2が生じた(図7)。
【0122】
Trichoderma reesei菌株VTT−D−99726(QM9414 Δhfb2)を、10μgのプラスミドpTH1およびpTH2および選択プラスミドとして2μgのpTOC202を使用して、本質的にPenttila他のGene(1987)61:155−164に記載されるように共形質転換させた。得られたAmd+形質転換体を、アセタミドを含むプレート上に2度線条接種した。その後Potato Dextrose agar(Difco)上で生育した形質転換体から、胞子懸濁液を作成した。
【0123】
3%ラクトースまたはSolka flockセルロースおよびスペントグレインを補った最小培地において行った、振とうフラスコ培養からHFBI特異抗体およびヒス−テールに対する抗体を用いたウエスタン分析によって、2つのHFBI−ENA5SCFV融合タンパク質の産生を試験した。
【0124】
ポリオキシエチレン洗浄剤C12〜18EO(Agrimul NRE1205、Henkel)を使用する、ATPS中のHFBI−ENA5融合タンパク質の分配実験を、この実験において得られる最良の産生菌株およびコントロール菌株VTT−D−99726(QM9414 Δhfb2)の上澄みについて、実施例9に記載したのと同様に実施し分析した。
【0125】
【外1】
Figure 0004685305
【外2】
Figure 0004685305
【外3】
Figure 0004685305

【図面の簡単な説明】
【図1】 (イントロンも)エンコードするタンパク質および隣接配列(サブクローン化したフランキング配列すべてを配列決定したわけではない)を含む、2868bpのhfb1のゲノム配列(配列番号1)を示す図である。hfb1の遺伝子配列には下線を引いた。マーカー遺伝子のクローニング用に使用するMunI制限部位は、目立たせ下線を引いた。
【図2A】 (イントロンも)エンコードするタンパク質および隣接配列を含む、3585bpのhfb2のゲノム配列(配列番号2)を示す図である。hfb2の遺伝子配列には下線を引いた。マーカー遺伝子のクローニング用に使用するBglIおよびEcoRV制限部位は、目立たせ下線を引いた。クローニングベクターのポリリンカー配列はイタリックで示し、クローニング目的で使用するポリリンカー内の制限部位には下線を引いた。
【図2B】 図2Aに続いてゲノム配列(配列番号2)を示す図である。
【図3】 プラスミドpTNS24を示す図である。
【図4】 プラスミドpTNS27を示す図である。
【図5】 プラスミドpMQ113を示す図である。
【図6】 プラスミドpTH1を示す図である。
【図7】 プラスミドpTH2を示す図である。
【図8A】 発酵槽中でのラクトース上での培養におけるTrichoderma菌株の生育パラメータを示す図である(DO=溶存酸素)。
【図8B】 発酵槽中でのラクトース上での培養におけるTrichoderma菌株の生育パラメータを示す図である(DO=溶存酸素)。
【図9A】 発酵槽中でのセルロース培地上での培養における可溶性タンパク質の産生を示す図である。
【図9B】 発酵槽中でのセルロース培地上での培養における可溶性タンパク質の産生を示す図である。
【図10】 撹拌フラスコ培養中のグルコース培地上での菌株VTT−D−74075、VTT−D−99724およびVTT−D−99723のバイオマス産生を示す図である。
【図11】 撹拌フラスコ培養中のグルコース培地上での菌株VTT−D−74075、VTT−D−99724およびVTT−D−99723の生育を、培養中のpHの変化として表したことを示す図である。
【図12】 撹拌フラスコ培養中のラクトース培地上での菌株VTT−D−86271およびVTT−D−99676の生育を、バイオマス産生およびpHによって表したことを示す図である。
【図13A】 発酵槽中でのグルコース上での培養におけるTrichoderma菌株の生育パラメータを示す図である。
【図13B】 発酵槽中でのグルコース上での培養におけるTrichoderma菌株の生育パラメータを示す図である。
【配列表】
Figure 0004685305
Figure 0004685305
Figure 0004685305
Figure 0004685305

Claims (12)

  1. Trichoderma菌株の培養において、気泡形成を減少させるための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
    宿主のHFBIおよび/またはHFBIIの培養中における産生が、改変を行わないものと比較し、少なくとも50%減少するように遺伝学的改変を行う工程;及び
    上記宿主を適当な培養条件で培養する工程。
  2. 請求項1の方法であって、遺伝学的改変がヒドロフォビンをコードするDNA配列の遺伝学的改変を含むことを特徴とする方法。
  3. 請求項1の方法であって、遺伝学的改変がヒドロフォビンをコードするDNA配列の調節領域の改変を含むことを特徴とする方法。
  4. 請求項2の方法であって、遺伝学的改変がヒドロフォビンをコードするDNA配列のふかつか不活性化を含むことを特徴とする方法。
  5. 請求項4の方法であって、遺伝学的改変がヒドロフォビンをコードするDNA配列の欠失を含むことを特徴とする方法。
  6. 宿主としてのTrichoderma菌株であって、そのHFBIおよび/またはHFBIIの培養中における産生が、改変を行わないものと比較し、少なくとも50%減少するように遺伝学的改変されていることを特徴とするTrichoderma菌株。
  7. 請求項6のTrichoderma菌株であって、目的物の産生の能力が増強されていることを特徴とするTrichoderma菌株。
  8. 請求項6または7のTrichoderma菌株であって、目的物の産生が可能となるよう遺伝的改変されていることを特徴とするTrichoderma菌株。
  9. 請求項6から8のいずれか1項に記載されているTrichoderma菌株であって、目的物がタンパク質または代謝産物またはバイオマスであることを特徴とするTrichoderma菌株。
  10. 請求項6から9のいずれか1項に記載のTrichoderma菌株であって、目的物が遺伝子組換え体であることを特徴とするTrichoderma菌株。
  11. 請求項6から10のいずれか1項に記載のTrichoderma菌株であって、目的物がヒドロフォビンと融合した分子として産生することができるよう遺伝的改変がされていることを特徴とするTrichoderma菌株。
  12. 目的物をより多く産生する方法であって、以下の工程を含む方法:
    請求項6から11のいずれか1項に記載のTrichoderma菌株を培養する工程;及び、
    培養液から産生物を回収する工程。
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