ラジオ放送を受信する車載用の放送受信機等では、自動車から生じるイグニッションノイズ等のパルス性の外来ノイズが受信アンテナ等を介して受信信号に混入すると、その受信信号を検波する検波器から、ノイズ成分を含んだ復調信号が出力され、スピーカ等で再生される再生音に耳障りな雑音が生じてしまう。そのため、外来ノイズの影響を除去すべくノイズキャンセラ回路が設けられている。
従来、図1(a)と図2(a)に示すノイズキャンセラ回路が知られている。
図1(a)のノイズキャンセラ回路は、ノイズ検出回路と補間回路とを有し、FM放送やAM放送を受信する例えばスーパーヘテロダイン方式の放送受信機に設けられている。
かかる放送受信機内の周波数変換器から、中間周波数に周波数変換された受信信号(以下「中間周波受信信号」と称する)Scvが出力されると、ノイズ検出回路がその中間周波受信信号Scvに対して全波整流による絶対値処理を行って、電源電圧範囲内のダイナミックレンジを考慮した自動利得制御(AGC:Auto Gain Controll)を行いながら、AM検波(エンベロープ検波)することで、外来ノイズ成分Nを顕在化させたエンベロープ信号Senvを生成し、更にそのエンベロープ信号Senvと所定の閾値(固定値)Vthとを比較し、閾値Vthよりレベルの大きい外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを検出している。
そして、補間回路がノイズ発生期間Tにおいて、放送受信機内の検波器から出力される復調信号Smdに生じたノイズ成分(外来ノイズに起因するノイズ成分)に対してミュート処理(減衰や遮断処理)等の補間処理を施すことで、外来ノイズの影響を除去した復調信号Sxにして出力するようになっている。
ところで、図1(a)のノイズキャンセラ回路では、エンベロープ信号Senvに生じる個々の外来ノイズ成分Nを所定閾値Vthとの比較によって逐一検出し、その検出した個々のノイズ発生期間Tにおいて、復調信号Smdからノイズ成分を逐一除去することとしているため、外来ノイズが単発的に混入する場合に、その悪影響を効果的に除去することが可能である。
しかし、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入した場合、図1(b)〜(d)に模式的に示すように、個々の外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを検出して復調信号Smd内のノイズ成分Dを逐一除去すると、復調信号Sxが短冊状に裁断された波形となってしまう。そして、復調信号Sxのうち短冊状に残された信号成分が途切れ途切れの音となってスピーカ等で再生されるため、受聴者にとって聴き辛く、違和感を与えてしまうという問題がある。
こうした問題を改善するため、図2に示すノイズキャンセラ回路が開発されている(特許文献1参照)。
図2(a)のノイズキャンセラ回路は、AM検波器とハイパスフィルタとローパスフィルタと増幅器と比較器とゲート信号生成回路及び補間回路を備えて構成されている。
ここで、AM検波器は、周波数変換器から出力される中間周波受信信号Scvに対して、ノイズ検出回路がその中間周波受信信号Scvに対して全波整流による絶対値処理を行って、電源電圧範囲内のダイナミックレンジを考慮した自動利得制御(AGC)を行いながら、AM検波(エンベロープ検波)することで、外来ノイズに起因して中間周波受信信号Scvに生じた外来ノイズ成分Nを顕在化させたエンベロープ信号Senvを生成している。
ハイパスフィルタは、放送受信機内に設けられているIFフィルタの中心周波数(搬送周波数)と高域遮断周波数の間の周波数に設定された低域遮断周波数を有し、エンベロープ信号Senvからその低域遮断周波数より高周波域の成分を抽出して、ローパスフィルタに供給するようになっている。
つまり、上述のIFフィルタ(被変調信号であるIF信号を抽出するためのバンドパスフィルタ)の中心周波数がfcで、高域遮断周波数がfhであるとすると、ハイパスフィルタの低域遮断周波数fLが周波数fcとfhの間の周波数に設定され、エンベロープ信号Senvからその低域遮断周波数fLより高周波域の成分を抽出して、ローパスフィルタに供給している。こうして、ハイパスフィルタの低域遮断周波数fLが設定されているため、エンベロープ信号Senvに含まれている可聴周波数域の外来ノイズ成分Nを抽出できるようになっている。
ローパスフィルタは、外来ノイズ成分Nを高速充電して低速放電する遮断周波数可変型(時定数可変型)のローパスフィルタで形成されている。つまり、ローパスフィルタは、外来ノイズ成分Nのレベルが上昇し始めると小さい時定数(固定の時定数)τaに基づいて高速充電を開始し、外来ノイズ成分Nがピークレベルから降下して、充電電圧よりも下がっていくと大きい時定数(固定の時定数)τrに基づいて低速放電する。そして、高速充電中の期間を「アタック期間」、低速放電中の期間を「リカバリー期間」として、その外来ノイズ成分Nに対して高速充電と低速放電を行うことで生じる充放電信号Rを増幅器に供給している。
ここで、上述したようにハイパスフィルタの低域遮断周波数fLが周波数fcとfhの間の周波数に設定されていることから、ローパスフィルタには、外来ノイズ成分Nだけでなく、可聴周波数域の被変調信号成分も入力する。そこで、外来ノイズ成分Nを充電できるようにするため、アタック期間におけるローパスフィルタの高域遮断周波数faが被変調信号成分の最大周波数より高く、且つ外来ノイズ成分Nの最大周波数より低い周波数となるように決めておいて、次式(1)の関係に基づいて、上述の小さい時定数τaの値が予め設定されている。
増幅器は、充放電信号Rのレベルを微調整するために設けられており、所定の(固定の)増幅率gで充放電信号Rを増幅することで高レベル側(大レベル側)にレベル調整し、そのレベル調整後の信号を閾値信号Rthとして出力する。
比較器は、外来ノイズ成分Nと閾値信号Rthとを比較し、閾値信号Rthよりレベルの大きい外来ノイズ成分Nを検出して、その外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saを出力する。
ゲート信号生成回路は、上述の信号Saを波形整形等することでノイズ発生期間Tを示すゲート信号Sgを生成し、補間回路に供給する。
そして、補間回路が、ゲート信号Sgで指定されるノイズ発生期間Tにおいて、復調信号Smdに生じたノイズ成分(外来ノイズに起因するノイズ成分)に対してミュート処理(減衰や遮断処理)等の補間処理を施すことで、外来ノイズの影響を除去した復調信号Sxにして出力するようになっている。
以上に説明したように、図2(a)のノイズキャンセラ回路では、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入した場合、図2(b)に模式的に示すように、連続して生じる外来ノイズ成分Nに対して充放電の処理を行うことで充放電信号Rを生成し、更にその充放電信号を増幅率gで増幅することで閾値信号Rthを生成している。
このため、外来ノイズ成分Nが時間的に高密度で長時間に亘って生じると、閾値信号Rthが鋸歯状の波形となり、高レベルの外来ノイズ成分Nと小レベルの外来ノイズ成分Nとの間の中間レベルにホールドされるようになる。そして、この中間レベルにホールドされた閾値信号Rthと外来ノイズ成分Nが比較されるため、小レベルの外来ノイズ成分Nは検出されず、高レベルの外来ノイズ成分Nだけが検出されて、その高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tだけが検出される。
そして、図2(c)(d)に示すように、外来ノイズに起因して復調信号Smdに生じたノイズ成分Dのうち、上述の検出されたノイズ発生期間Tに当たるノイズ成分だけが復調信号Smdから除去されることとなる。このため、補間回路から出力される復調信号Sxには、小レベルのノイズ成分Dが残存することとなるが、短冊状の裁断された信号成分の発生を低減することが可能となり、受聴者にとって聴き辛い途切れ途切れの音が再生されないようにしている。
つまり、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入した場合には、復調信号Sxに短冊状の裁断された信号成分を多く発生させてしまうよりも、復調信号Sxに小レベルのノイズ成分Dが残存する方が、却って受聴者に対して違和感を与えないことから、実情に即応したノイズキャンセラ回路となっている。
更に、高レベルの外来ノイズ成分Nについては、閾値信号Rthとの比較によって検出することが可能であるため、復調信号Smdに生じた高レベルのノイズ成分Dを除去し、受聴者に違和感を与えないようにすることが可能となっている。
本発明の好適な実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。図4(a)(b)(c)は、本実施形態に係るノイズキャンセラ回路の構成を表したブロック図、図5(a)(b)(c)は、本実施形態のノイズキャンセラ回路の機能と動作を説明するための説明図である。
図4(a)において、このノイズキャンセラ回路100は、例えばイグニッションノイズ等のパルス性の外来ノイズの影響を除去すべく、車載用の放送受信機(例えばスーパーヘテロダイン方式の放送受信機)200に設けられている。
ここで、スーパーヘテロダイン方式の放送受信機については、図2(a)を参照して説明したので詳細については割愛するが、受信アンテナの受信出力を選局回路がRF受信信号に変換し、周波数変換器がそのRF受信信号を中間周波数の中間周波受信信号Scvに周波数変換し、所定の通過帯域幅を有するIFフィルタが中間周波受信信号Scvから希望波としてのIF信号を抽出し、検波器がIF信号を検波(AM放送を受信中のときにはAM検波、FM放送を受信中のときにはFM検波)して復調信号Smdを生成し、後述の補間回路7へ出力する。
なお、説明の便宜上、図4(a)には示されていないが、放送受信機200が中間周波受信信号Scvから復調信号Smdを生成するのに要する処理時間より、ノイズキャンセラ回路100が中間周波受信信号Scvから後述のゲート信号Sgを生成するのに要する処理時間のほうが長時間となるため、その復調信号Smdとゲート信号Sgを同じタイミングで補間回路7に入力させるべく、検波器と補間回路との間に、復調信号Smdを所定時間遅延させて補間回路に供給する遅延回路が設けられている。
ノイズキャンセラ回路100は、AM検波器1と、ハイパスフィルタ2と、ローパスフィルタ3、増幅器4、比較器5、ゲート信号生成回路6、補間回路7、電界強度検出部8及び時定数切替部9を備えて構成されている。
ここで、AM検波器1とハイパスフィルタ2と増幅器4と比較器5とゲート信号生成回路6及び補間回路7は、図2(a)に示したAM検波器とハイパスフィルタと増幅器と比較器とゲート信号生成回路及び補間回路と同様の構成を有し、更に同様の機能を発揮する。
つまり、AM検波器1は、放送受信機200内の周波数変換器から出力される中間周波受信信号Scvに対して全波整流による絶対値処理を行って、電源電圧範囲内のダイナミックレンジを考慮した自動利得制御(AGC)を行いながら、AM検波(エンベロープ検波)することで、外来ノイズに起因して中間周波受信信号Scvに生じた外来ノイズ成分を顕在化させたエンベロープ信号Senvを生成する。
ハイパスフィルタ2は、放送受信機200内に設けられているIFフィルタの中心周波数(搬送周波数)fcと高域遮断周波数fhの間の周波数に設定された低域遮断周波数fLを有し、エンベロープ信号Senvからその低域遮断周波数fLより高周波域の成分を抽出して、ローパスフィルタに供給する。したがって、エンベロープ信号Senvに含まれている可聴周波数域の外来ノイズ成分Nを抽出できるようになっている。そして、抽出した外来ノイズ成分Nを、比較器5と時定数切替部9に供給する。
増幅器4は、後述する充放電信号Rのレベルを微調整するために設けられており、微調整された所定の(固定の)増幅率gで充放電信号Rを増幅することで高レベル側にレベル調整し、そのレベル調整後の信号を閾値信号Rthとして出力する。
比較器5は、ハイパスフィルタ2から出力される外来ノイズ成分Nと閾値信号Rthとを比較し、閾値信号Rthよりレベルの大きい外来ノイズ成分Nを検出して、その外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saを出力する。
ゲート信号生成回路6は、上述の信号Saを波形整形等することでノイズ発生期間Tを示すゲート信号Sgを生成し、補間回路7に供給する。
補間回路7は、ゲート信号Sgで指定されるノイズ発生期間Tにおいて、復調信号Smdに生じたノイズ成分(外来ノイズに起因するノイズ成分)に対してミュート処理(減衰や遮断処理)等の補間処理を施すことで、外来ノイズの影響を除去した復調信号Sxにして出力するようになっている。
次に、電界強度検出部8と時定数切替部9とローパスフィルタ3の構成について説明する。
電界強度検出部8は、中間周波受信信号Scvを入力し、上記IFフィルタの通過帯域幅とほぼ同じ通過帯域幅を有するバンドパスフィルタ(図示略)によって、IF信号とほぼ同じ信号成分を抽出し、その抽出した信号成分の実効電力値を計測することで、到来電波の電界強度を検出する。そして、計測した実効電力値を、電界強度のレベルを示す検出信号Seとして時定数切替部9に供給する。なお、本実施形態の電界強度検出部8は、計測した実効電力値に比例した電圧を、電界強度のレベルを示す検出信号Seとして出力している。
時定数切替部9は、ハイパスフィルタ2の出力と、電界強度検出部8からの検出信号Seと、充放電処理を行うローパスフィルタ3から出力される充放電信号Rを入力する。そして、ハイパスフィルタ2の出力に含まれている外来ノイズ成分Nのレベルが充放電信号Rより高レベルとなる期間(すなわち「アタック期間」)を検出し、その検出したアタック期間を示す信号(以下「アタック期間信号」と称する)Sarをローパスフィルタ3に供給する。更に、検出信号Seの電圧レベルを検出し、その電圧レベルに対応させてローパスフィルタ3の高域遮断周波数を自動的に可変調整するための時定数切替信号SELを生成してローパスフィルタ3に供給する。
ここで、時定数切替部9の具体的な構成例について、図4(b)を参照して説明する。
同図(b)において、時定数切替部9には、上述のアタック期間を検出するための検出回路9aと、上述の切替信号SELを生成するための切替信号生成回路9bが設けられている。
検出回路9aは、コンパレータOPAを備えて構成されており、ハイパスフィルタ2の出力に外来ノイズ成分Nが発生すると、その外来ノイズ成分Nのレベルと、ローパスフィルタ3から出力されるその外来ノイズ成分Nの充電電圧(外来ノイズ成分Nより遅延して生じる充電電圧)を示す充放電信号Rのレベルとを比較する。そして、外来ノイズ成分Nのレベルが充放電信号Rのレベルより高レベルとなる期間をアタック期間として検出し、論理値“H”となるアタック期間信号Sarを出力する。一方、外来ノイズ成分Nのレベルが充放電信号Rのレベルより低レベルとなる期間をリカバリー期間として検出し、論理値“L”となるアタック期間信号Sarを出力する。
次に、切替信号生成回路9bは、図示するように、所定の基準電圧(安定化された固定電圧)Vrefとグランド間に接続された複数個の分圧抵抗(符号略)と、個々の分圧抵抗で分圧された分圧電圧と検出信号Seとを比較する複数個の比較器(符号略)と、それらの比較器から出力される比較結果をデコードして、電界強度のレベルを表すディジタルデータにデコードするデコーダ(符号略)とを有する電圧比較型のアナログディジタル変換器で形成されている。そして、ディジタルデータを時定数切替信号SELとして、ローパスフィルタ3に設けられている切替回路SW(図4(c)参照)に供給するようになっている。なお、デコーダでは、所定の分解能で決められているj段階の電界強度E1,E2〜Ejの何れかの電界強度(つまり、比較器から出力される比較結果に相当する電界強度)を示すディジタルデータにデコードするようになっている。
次に、ローパスフィルタ3は、図4(c)に示すように、ハイパスフィルタ2の出力を電力増幅等して入力するアンプ(符号略)と、そのアンプを介してハイパスフィルタ2の出力を入力するj個のスイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjと、スイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjの出力を時定数切替信号SELに従って切り替えて出力する切替回路SWとを備えて構成されている。また、スイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjの個数jは、後述のアタック時定数τaの切替え段数jに合わせて決められている。
スイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjは、図示するように、基本的に同じ構成となっている。
スイッチトキャパシタフィルタSCF1を代表して説明すると、入力側のコンデンサC01と、アナログスイッチSA1と、オペアンプOP1と、オペアンプOP1の出力端子と反転入力端子との間に接続されたコンデンサCa1と、コンデンサCa1の両端に接続されたコンデンサCr1及びアナログスイッチSR1とを備えて形成されている。
ここで、アナログスイッチSA1は、外来ノイズ成分Nの周波数に較べて十分高い周波数fckのクロック信号CKに同期して切替動作を繰り返し、上述のアンプを介して供給されるハイパスフィルタ2の出力をコンデンサC01に蓄積してオペアンプOP1の非反転入力端子に印加する。なお、クロック信号CKは、ノイズキャンセラ回路100に内蔵されている発振器(図示略)で生成されるようになっている。
アナログスイッチSR1は、検出回路9aで生成されるアタック期間信号Sarに従ってオンオフ動作し、アタック期間信号Sarが論理値“H”となるアタック期間においてオフ(遮断)状態となることで、コンデンサCa1に対するコンデンサCr1の接続を遮断し、一方、アタック期間信号Sarが論理値“L”となると、オン(導通)状態となってコンデンサCr1をコンデンサCa1に並列接続させる。
なお、コンデンサC01,Ca1,Cr1の夫々の容量値が予め所定の値に決められているが、詳細については後述する。
そして、かかる構成のスイッチトキャパシタフィルタSCF1によって、アタック期間とリカバリー期間とでは高域遮断周波数(別言すれば、時定数)を切替える遮断周波数可変型(時定数可変型)のローパスフィルタが実現されている。
つまり、アタック期間信号Sarが論理値“H”となるアタック期間では、アナログスイッチSR1がオフ状態となって、コンデンサCr1が開放され、オペアンプOP1に対してコンデンサCa1だけが帰還接続されると、次式(2a)(2b)で表されるように、コンデンサC01,Ca1の容量値とクロック信号CKの周波数fckとの関係に従って、スイッチトキャパシタフィルタSCF1の高域遮断周波数fa1とアタック時定数τa1が決まり、ハイパスフィルタ2の出力に含まれている外来ノイズ成分Nに対してローパスフィルタリングを施すことになる。
一方、アタック期間信号Sarが論理値“L”となるリカバリー期間では、アナログスイッチSR1がオン状態となって、オペアンプOP1に対してコンデンサCa1とCr1が帰還接続されると、オペアンプOP1に対する帰還容量が(Ca1+Cr1)の値に増加し、次式(3a)(3b)で表されるように、コンデンサC01,Ca1,Cr1の容量値とクロック信号CKの周波数fckとの関係に従って、スイッチトキャパシタフィルタSCF1の高域遮断周波数fr1とリカバリー時定数τr1が決まり、ハイパスフィルタ2の出力に含まれている外来ノイズ成分Nに対してローパスリルタリングを施すことになる。
次に、コンデンサC01,Ca1,Cr1は、クロック信号CKに従って高速に充放電を繰り返す必要上、小さなの容量値に決められているが、アタック期間でのコンデンサC01の容量値とコンデンサCa1の容量値との比(C01/Ca1)に較べて、リカバリー期間でのコンデンサC01の容量値とコンデンサCa1,Cr1の合計容量値との比{C01/(Ca1+Cr1)}を小さくすべく、次式(4)の関係に従って決められている。
こうして、コンデンサC01,Ca1,Cr1の容量値を設定することで、外来ノイズ成分Nのレベルが急上昇するアタック期間でのアタック時定数τa1を小さくして、外来ノイズ成分Nに対する追従性の確保を図った高速充電の処理を行い、一方、外来ノイズ成分Nのレベルが降下するリカバリー期間でのリカバリー時定数τr1を大きくして、低速放電の処理を行うようにしている。
そして、残余のスイッチトキャパシタフィルタSCF2〜SCFjも、スイッチトキャパシタフィルタSCF1と同様の構成となっており、コンデンサC02〜C0jがコンデンサC01に、アナログスイッチSA2〜SAjがアナログスイッチSA1に、オペアンプOP2〜OPjがオペアンプOP1に、コンデンサCa2〜CajがコンデンサCa1に、コンデンサCr2〜CrjがコンデンサCr1に、アナログスイッチSR2〜SRjがアナログスイッチSR1に夫々相当している。
更に、以上の説明では、個々のスイッチトキャパシタフィルタSCF1,SF2〜SCFj毎に、コンデンサC01,Ca1,Cr1の容量値の関係と、コンデンサC02,Ca2,Cr2の容量値の関係と、コンデンサC0j,Caj,Crjの容量値の関係について述べたが、スイッチトキャパシタフィルタSCF1,SF2〜SCFjの相互間でのコンデンサC01,Ca1,Cr1とC02,Ca2,Cr2とC0j,Caj,Crjの容量値の関係についても所定の関係に決められており、図5(a)(b)を参照して説明する。
図5(a)は、図3に示した到来電波の電界強度に対するエンベロープ信号Senv中に生じる被変調信号成分と広帯域ノイズとの変化の特性と、エンベロープ信号Senv中に生じる外来ノイズ成分Nをローパスフィルタリングによって充電する際の到来電波の電界強度に従って調整すべきアッタック時定数τaの特性を示している。図5(b)は、広帯域ノイズと外来ノイズ成分Nとアッタック時定数τaの関係を模式的に示している。
図5(a)から解るように、AM検波器1で自動利得制御(AGC)がなされることにより、電界強度が弱くなって放送受信機200の受信状態が劣化するほど、エンベロープ信号Senv中に生じる広帯域ノイズのレベルが上昇することとなる。
このため、図5(b)に示すように、広帯域ノイズとは無相関の関係にある外来ノイズに起因してエンベロープ信号Senv中に外来ノイズ成分Nが生じると、電界強度が強いときには、外来ノイズ成分NのピークレベルLnmaxと広帯域ノイズのレベルLzminとの差(電圧差)が大きくなり、小さな値のアタック時定数τaで充電すると、外来ノイズ成分Nをそのピークレベルより低いレベルまでの充電することが可能となる。そこで、到来電波の電界強度が強いときのアタック時定数τaを、所定の小さな時定数としている。
一方、到来電波の電界強度が比較的弱いときには、広帯域ノイズのレベルが上昇することから、外来ノイズ成分NのピークレベルLnmaxと広帯域ノイズのレベルLzmidとの差(電圧差)が縮小してしまい、小さな値のアタック時定数τaでは、広帯域ノイズの影響を受けることなく、外来ノイズ成分Nをそのピークレベルより低いレベルへと充電することが難しくなる。そこで、到来電波の電界強度が比較的弱いときのアタック時定数τaを、電界強度が強いときのアタック時定数τaよりも大きな値としている。
また、到来電波の電界強度が弱いときには、広帯域ノイズのレベルが大幅に上昇することから、外来ノイズ成分Nのピークレベルと広帯域ノイズのレベルLzmaxとの差(電圧差)が更に縮小し、小さな値のアタック時定数τaでは、広帯域ノイズの影響を受けることなく、外来ノイズ成分Nをそのピークレベルより低いレベルへと充電することが難しくなるそこで、到来電波の電界強度が弱いときのアタック時定数τaを、電界強度が比較的弱いときのアタック時定数τaよりも大きな値としている。
更に、アタック時定数τaの値を電界強度の強弱に応じて可変調整するだけでは、外来ノイズ成分NのピークレベルLnmaxにまで充電電圧が達してしまう場合があるため、聴感上違和感を与える高レベルの外来ノイズに起因して生じる高レベルの外来ノイズ成分NのピークレベルLnmaxより低く、且つ電界強度が弱くなったときに生じる広帯域ノイズのレベルLzmaxより高い中間レベルLpに充電電圧を到達させるように、アタック時定数τaが決められている。
こうして決められたアタック時定数τaが、図5(a)に示されている。
そして、到来電波の電界強度が強いとき(広帯域ノイズのレベルがLzminのとき)と、到来電波の電界強度が弱いとき(広帯域ノイズのレベルがLzmaxのとき)との電界強度の範囲EWを、上述の切替信号生成回路9b(図4(b)参照)から出力される時定数切替信号SELのj段階の電界強度E1〜Ejに関連付けてj段階に分割した各電界強度E1,E2,…,Ejに対応する時定数τa1,τa2,…,τajを決めて、それらの時定数τa1,τa2,…,τajを電界強度の変化に対応して可変すべきアタック時定数τaとしている。つまり、強い電界強度E1のときには最も小さなアタック時定数τa1に切替え、電界強度E1より小さい次の電界強度E2のときには、アタック時定数τa1より大きなアタック時定数τa2に切替え、以下同様に、弱い電界強度Ejのときには最も大きなアタック時定数τajに切替えることとしている。
そして、図4(c)に示したスイッチトキャパシタフィルタSCF1でアタック時定数τa1を生じさせるべく、上記式(2a)(2b)の関係に基づいて、コンデンサC01,Ca1の容量値が決められている。
また、スイッチトキャパシタフィルタSCF2でアタック時定数τa2を生じさせるべく、次式(5a)(5b)の関係に基づいて、コンデンサC02,Ca2の容量値が決められており、以下同様にして、スイッチトキャパシタフィルタSCFjでアタック時定数τajを生じさせるべく、次式(6a)(6b)の関係に基づいて、コンデンサC0j,Cajの容量値が決められている。
なお、本実施形態では、コンデンサC01〜C0jが同じ容量値に決められており、その同じ容量値を基準として、各々のアタック時定数τa1〜τajの値に比例させてコンデンサCa1〜Cajの容量値が決められている。
次に、スイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjに設けられているコンデンサCr1〜Crjの容量値について説明する。
上述したようにコンデンサCr1〜Crjは、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが放送受信機200に混入した場合に、リカバリー期間において低速放電を行うために設けられている。そこで、時間的に高密度で生じる外来ノイズを実験等によって解析し、個々の外来ノイズが生じる時間間隔の平均値よりも長く、且つ聴感上違和感を与える高レベルの外来ノイズが生じる時間間隔の平均値よりも短い時間内で放電を完了させるリカバリー時定数τrに決め、全てのスイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjがほぼそのリカバリー時定数τrで低速放電を行うように、コンデンサCr1〜Crjの容量値が決められている。
つまり、スイッチトキャパシタフィルタSCF1のリカバリー時定数τr1と、高域遮断周波数fr1と、コンデンサCr1の容量値は、次式(7a)(7b)の関係から決められている。
また、スイッチトキャパシタフィルタSCF2のリカバリー時定数τr2と、高域遮断周波数fr2と、コンデンサCr2の容量値が、次式(8a)(8b)の関係から決められており、以下同様にして、スイッチトキャパシタフィルタSCFjのリカバリー時定数τrjと、高域遮断周波数frjと、コンデンサCrjの容量値が、次式(9a)(9b)の関係から決められている。
次に、切替回路SWは、スイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjの出力端子に個別接続されたj個の入力端子と1個の出力端子とを有するアナログスイッチ等で形成されており、時定数切替信号SELで示される電界強度のレベルに応じて切替動作することで、スイッチトキャパシタフィルタSCF1〜SCFjの出力信号を排他的に選択して充放電信号Rとして出力する。
つまり、切替回路SWは、電界強度E1を示す時定数切替信号SELが供給されると、スイッチトキャパシタフィルタSCF1と接続してそのスイッチトキャパシタフィルタSCF1の出力信号を充放電信号Rとして出力し、電界強度E2を示す時定数切替信号SELが供給されると、スイッチトキャパシタフィルタSCF2と接続してそのスイッチトキャパシタフィルタSCF2の出力信号を充放電信号Rとして出力し、以下同様にして、電界強度Ejを示す時定数切替信号SELが供給されると、スイッチトキャパシタフィルタSCFjと接続してそのスイッチトキャパシタフィルタSCFjの出力信号を充放電信号Rとして出力する。
そして、切替回路SWが時定数切替信号SELに従って切替動作をすると、電界強度E1,E2〜Ejに対応付けてスイッチトキャパシタフィルタSCF1,SCF2〜SCFjが選択されることとなるため、その選択されたスイッチトキャパシタフィルタに設定されているアタック時定数τaとリカバリー時定数τrに基づいて充放電された出力信号が充放電信号Rとして出力される。
したがって、図4(c)に示したスイッチトキャパシタフィルタSCF1,SCF2〜SCFjと切替回路SWを有するローパスフィルタ3によって、高域遮断周波数を切替える時定数可変型のローパスフィルタが実現されている。
次に、ノイズキャンセラ回路100の動作について、図5(c)(d)を参照して説明する。
なお、図5(c)は、到来電波の電界強度が強い状態で、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが放送受信機200に混入した場合に生じる外来ノイズ成分Nと、充放電信号Rと、閾値信号Rthの波形を模式的に表している。図5(d)は、到来電波の電界強度が弱い状態で、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが放送受信機200に混入した場合に生じる外来ノイズ成分Nと、充放電信号Rと、閾値信号Rthの波形を模式的に表している。
まず、到来電波の電界強度が強いときには、その電界強度を電界強度検出部8が検出して例えば電界強度E1を示す検出信号Seを出力する。更に時定数切替部9からその電界強度E1を示す時定数切替信号SELが出力され、ローパスフィルタ3内の切替回路SWが切替動作をすることで、スイッチトキャパシタフィルタSCF1が選択される。
更に、到来電波の電界強度が強い状態のときに、時間的に高密度で長時間に亘って外来ノイズが混入すると、図5(c)に例示するように、ハイパスフィルタ2から出力される外来ノイズ成分NがスイッチトキャパシタフィルタSCF1に入力し、更に時定数切替部9内の検出回路9aにも入力する。
そして、検出回路9aが外来ノイズ成分Nの電圧とローパスフィルタ3から出力される充放電信号Rの充電電圧とを比較することでアタック期間を検出し、更に、そのアタック期間において論理値“H”となるアタック期間信号Sarに従って、スイッチトキャパシタフィルタSCF1のアナログスイッチSR1がオフ状態となる。このため、アタック期間において、スイッチトキャパシタフィルタSCF1が最も小さな値に設定されているアタック時定数τa1に基づいて、外来ノイズ成分Nを充電することとなる。
更に、到来電波の電界強度が強いときには、スイッチトキャパシタフィルタSCF1に供給されるホワイトノイズ等の広帯域ノイズのレベルが低いことから、その広帯域ノイズの基底レベルBLVも低くなる。そのため、スイッチトキャパシタフィルタSCF1が、その低い基底レベルBLVを基準として、最も小さな値に設定されているアタック時定数τa1に基づいて外来ノイズ成分Nを充電すると、充電電圧が高レベルの外来ノイズ成分Nのピークレベルよりも低いレベルに到達することとなる。
更に、アタック期間信号Sarが論理値“L”となってリカバリー期間となると、スイッチトキャパシタフィルタSCF1のアナログスイッチSR1がオン状態となる。このため、リカバリー期間では、アタック期間に充電された充電電圧に対して、リカバリー時定数τr1に基づいて低速放電が行われる。
こうしてスイッチトキャパシタフィルタSCF1が、外来ノイズ成分Nに対してアタック時定数τa1とリカバリー時定数τr1に基づいて充放電を行うことで、図5(c)に例示するような鋸歯状の充放電信号Rを生成し、切替回路SWを介して出力する。
更に、この鋸歯状の充放電信号Rが増幅器4に入力され、調整されている所定の増幅率gで増幅されることで、高レベル側にレベル調整された閾値信号Rthが生成される。
そして、比較器5が、閾値信号Rthと外来ノイズ成分Nとのレベルを比較して、閾値信号Rthより高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saを生成する。
ここで、上述したようにスイッチトキャパシタフィルタSCF1が、外来ノイズ成分Nに対してアタック時定数τa1とリカバリー時定数τr1に基づいて充放電を行うと、充放電信号Rは、高レベルの外来ノイズ成分Nが充電されてホールドされた波形となり、そのホールドされた電圧が低レベルの外来ノイズ成分Nより高いレベルに維持される。このため、増幅器4で高いレベル側にレベル調整された閾値信号Rthも、高レベルの外来ノイズ成分Nと低レベルの外来ノイズ成分Nの間の弁別し易いレベルに調整される。その結果、比較器5が、閾値信号Rthと外来ノイズ成分Nとのレベルを比較すると、聴感上違和感を与える高レベルの外来ノイズに起因して生じる高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを検出し、聴感上あまり違和感を与えない低レベルの外来ノイズに起因して生じる低レベルの外来ノイズ成分Nを検出しなくなる。
そして、高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saをゲート信号生成回路6が波形整形等することでゲート信号Sgを生成して補間回路7に供給し、更に、補間回路7が、そのゲート信号Sgで示されるノイズ発生期間Tにおいて、放送受信機200内の検波器から出力される復調信号Smdに生じたノイズ成分(高レベルの外来ノイズに起因して生じたノイズ成分)に対して遮断やミュート等の補間処理を施し、復調信号Sxにして出力する。
このように、到来電波の電界強度が強いときに、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入すると、補間回路7では、高レベルの外来ノイズに起因して復調信号Smdに生じるノイズ成分の除去がなされ、低レベルの外来ノイズに起因して復調信号Smdに生じるノイズ成分については除去されなくなる。
このため、復調信号Sxに短冊状の裁断された信号成分が生じることを未然に防止し、且つ聴感上違和感を与える高レベルのノイズ成分については除去することが可能となっている。
次に、図5(d)を参照して、到来電波の電界強度が弱いときの動作について説明する。
到来電波の電界強度が弱いときには、その電界強度を電界強度検出部8が検出して例えば電界強度Ejを示す検出信号Seを出力する。更に時定数切替部9からその電界強度Ejを示す時定数切替信号SELが出力され、ローパスフィルタ3内の切替回路SWが切替動作をすることで、スイッチトキャパシタフィルタSCFjが選択される。
更に、到来電波の電界強度が弱い状態のときに、時間的に高密度で長時間に亘って外来ノイズが混入すると、図5(d)に例示するように、ハイパスフィルタ2から出力される外来ノイズ成分NがスイッチトキャパシタフィルタSCFjに入力し、更に時定数切替部9内の検出回路9aにも入力する。
そして、検出回路9aから出力される、アタック期間を示す論理値“H”となるアタック期間信号Sarに従って、スイッチトキャパシタフィルタSCFjのアナログスイッチSRjがオフ状態となる。このため、アタック期間において、スイッチトキャパシタフィルタSCFjが最も大きな値に設定されているアタック時定数τajに基づいて、外来ノイズ成分Nを充電する。
更に、到来電波の電界強度が弱いときには、スイッチトキャパシタフィルタSCFjに供給されるホワイトノイズ等の広帯域ノイズが高レベルとなることから、その広帯域ノイズの基底レベルBLVも高くなる。そのため、スイッチトキャパシタフィルタSCFjが、その高い基底レベルBLVを基準として、最も大きな値に設定されているアタック時定数τajに基づいて外来ノイズ成分Nを充電すると、充電電圧が高レベルの外来ノイズ成分Nのピークレベルよりも低いレベルに到達することとなる。
更に、アタック期間信号Sarが論理値“L”となってリカバリー期間となると、スイッチトキャパシタフィルタSCFjのアナログスイッチSRjがオン状態となる。このため、リカバリー期間では、アタック期間に充電された充電電圧に対して、リカバリー時定数τrjに基づいて低速放電が行われる。
こうしてスイッチトキャパシタフィルタSCFjが、外来ノイズ成分Nに対してアタック時定数τajとリカバリー時定数τrjに基づいて充放電を行うことで、図5(d)に例示するような鋸歯状の充放電信号Rを生成し、切替回路SWを介して出力する。
更に、この鋸歯状の充放電信号Rが増幅器4に入力され、調整されている所定の増幅率gで増幅されることで、高レベル側にレベル調整された閾値信号Rthが生成される。
そして、比較器5が、閾値信号Rthと外来ノイズ成分Nとのレベルを比較して、閾値信号Rthより高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saを生成する。
ここで、上述したようにスイッチトキャパシタフィルタSCFjが、外来ノイズ成分Nに対してアタック時定数τajとリカバリー時定数τrjに基づいて充放電を行うと、充放電信号Rは、高レベルの外来ノイズ成分Nが充電されてホールドされた波形となり、そのホールドされた電圧が低レベルの外来ノイズ成分Nより高いレベルに維持される。このため、増幅器4で高いレベル側にレベル調整された閾値信号Rthも、高レベルの外来ノイズ成分Nと低レベルの外来ノイズ成分Nの間の弁別し易いレベルに調整される。その結果、比較器5が、閾値信号Rthと外来ノイズ成分Nとのレベルを比較すると、聴感上違和感を与える高レベルの外来ノイズに起因して生じる高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを検出し、聴感上あまり違和感を与えない低レベルの外来ノイズに起因して生じる低レベルの外来ノイズ成分Nを検出しなくなる。
そして、高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saをゲート信号生成回路6が波形整形等することでゲート信号Sgを生成して補間回路7に供給し、更に、補間回路7が、そのゲート信号Sgで示されるノイズ発生期間Tにおいて、放送受信機200内の検波器から出力される復調信号Smdに生じたノイズ成分(高レベルの外来ノイズに起因して生じたノイズ成分)に対して遮断やミュート等の補間処理を施し、復調信号Sxにして出力する。
このように、到来電波の電界強度が弱いときに、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入すると、補間回路7では、高レベルの外来ノイズに起因して復調信号Smdに生じるノイズ成分の除去がなされ、低レベルの外来ノイズに起因して復調信号Smdに生じるノイズ成分については除去されなくなる。
このため、復調信号Sxに短冊状の裁断された信号成分が生じることを未然に防止し、且つ聴感上違和感を与える高レベルのノイズ成分については除去することが可能となっている。
なお、以上の動作説明では、到来電波の電界強度が強いときと弱いときとの典型的な場合について説明したが、それらの中間的な電界強度となった場合には、電界強度検出部8で検出される電界強度に応じて、残余のスイッチトキャパシタフィルタSCF2〜SCFj-1の何れかが選択され、その選択されたスイッチトキャパシタフィルタに設定されているアタック時定数τaに基づいて外来ノイズ成分Nが充電されてリカバリー時定数τrに基づいて放電されるため、電界強度に応じて広帯域ノイズのレベルが変化しても、高レベルの外来ノイズ成分Nを検出する一方で低レベルを検出しないようにする閾値信号Rthを生成することができる。そして、補間回路7において、放送受信機200内の検波器から供給される復調信号Smdに生じているノイズ成分(高レベルの外来ノイズに起因して生じるノイズ成分)を補間によって除去し、短冊状の信号成分が生じることを未然に防止した復調信号Sxを生成することができ、聴感上違和感を与えない音をスピーカ等で再生させることができる。
以上に説明したように、本実施形態のノイズキャンセラ回路100によれば、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入した場合、到来電波の電界強度が弱くなるに従って、ローパスフィルタ3で外来ノイズ成分Nを充放電して充放電信号Rを生成する際のアタック時定数τaの値を大きくして充電するようにしたので、到来電波の電界強度が弱くなるに従って増加する広帯域ノイズの影響を受けることなく、高レベルの外来ノイズに起因して生じる高レベルの外来ノイズ成分Nを検出し、且つ低レベルの外来ノイズに起因して生じる低レベルの外来ノイズ成分Nを検出しないようにするための充放電信号Rを生成することができる。
つまり、本実施形態のノイズキャンセラ回路100によれば、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入した場合に、受聴者に対して違和感を与える外来ノイズを検出するためのノイズ検出感度が到来電波の電界強度に依存して変動してしまうという従来の問題点を改善することができ、ノイズ検出感度の安定化を図ることが可能となっている。
したがって、到来電波の電界強度が変動して放送受信機の受信状態が良好であるか否かを問わず、外来ノイズの影響を除去することが可能である。
なお、以上に説明した実施形態では、増幅器4を設けて、充放電信号Rを増幅率gで増幅することで閾値信号Rthを生成することとしているが、この増幅器4は、充放電信号Rのレベルを微調整して閾値信号Rthを生成するために設けられている。つまり、ノイズ検出感度を微調整するために設けられている。しかし、例えば微調整を必要としない構成とする場合には、増幅器4を省略し、ローパスフィルタ3で生成される充放電信号Rをそのまま閾値信号Rthとして、比較器5に供給する構成としても良い。
また、以上に説明した実施形態では、電界強度検出部8(図4(a)参照)において、放送受信機内の周波数変換器で生成される中間周波受信信号Scvに基づいて実効電力を計測し、その実効電力を到来電波の電界強度として示す検出信号Seを生成して時定数切替部9に供給することで、時定数切替信号SELを生成させるようにしている。しかし、次のような構成に置きかえてもよい。すなわち、一般に放送受信機内のIFフィルタではSメータ信号(受信感度を示す信号)が生成されるため、そのSメータ信号を到来電波の電界強度を示す信号として時定数切替部9内の切替信号生成回路9bに直接入力し、そのSメータ信号のレベルに応じて時定数切替信号SELを生成して、ローパスフィルタ3に設けられている切替回路SW(図4(c)参照)に供給する構成としてもよい。かかる構成によれば、電界強度検出部8が不要となるため、ノイズキャンセラ回路100をより簡素な構成とすることが可能である。
次に、本発明の実施例について、図6、図7を参照して説明する。
なお、図6(a)は、本実施例のノイズキャンセラ回路100の構成を表したブロック図、図6(b)は、ローパスフィルタ3と時定数切替部9の構成を表したブロック図、図7は、機能と動作を説明するための図である。また、図6(a)(b)において、図4(a)(b)(c)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
本実施例のノイズキャンセラ回路100は、ディジタル信号処理によって受信を行うディジタル放送受信機200に設けられている。したがって、ノイズキャンセラ回路100も、ディジタル信号処理によってノイズキャンセラの処理を行うべく、ディジタル回路で形成されている。
まず、ディジタル放送受信機200の構成について説明する。図4(a)に示した放送受信機200では、周波数変換器で生成される中間周波受信信号Scvをアナログ信号処理することで復調信号Smd等を生成する構成となっているのに対し、図6(a)に示すディジタル放送受信機200では、高周波数の受信信号を扱う周波数変換器までの系統がアナログ回路で形成され、それ以降の系統がディジタル回路で形成されている。そして、周波数変換器から出力されるアナログの中間周波受信信号Scvをディジタルデータの中間周波受信信号Dcvにディジタル変換するA/D変換器が設けられ、その中間周波受信信号Dcvに対してIFフィルタと検波器がディジタル信号処理による所定のディジタルフィルタリング及びディジタル検波を行うことで、ディジタルデータから成る復調信号Smdを生成する。
また、上述のA/D変換器は、ΔΣ変調方式のA/D変換器で形成されており、中間周波受信信号Scvをオーバーサンプリングして量子化し、その量子化に際して生じる量子化雑音を除去するノイズシェーピング機能を発揮することで、S/Nの向上を図った中間周波受信信号Dcvにディジタル変換するようになっている。なお、ΔΣ変調方式のA/D変換器の構成等については広く知られているので、詳細な説明を割愛することとする。
また、ディジタル放送受信機200内のIFフィルタでは、後述の受信感度を表すディジタルデータから成るSメータ信号Smtrを生成して出力するようになっている。
次に、ノイズキャンセラ回路100の構成について説明する。
図6(a)に示すように、ノイズキャンセラ回路100は、AM検波器1とハイパスフィルタ2、ローパスフィルタ3、増幅器4、比較器5、ゲート信号生成回路6及び補間回路7を有して構成され、例えば自動車から発せられるイグニッションノイズ等の外来ノイズの周波数に比して十分に高い周波数のクロック信号に同期してディジタル信号処理を行うことで、図4(a)に示したノイズキャンセラ回路100と同様に、ノイズキャンセラの処理を行うようになっている。
ここで、ローパスフィルタ3と時定数切替部9は、図6(b)に示す構成を有している。
まず、ローパスフィルタ3は、ディジタルフィルタで形成されており、ハイパスフィルタ2の出力(外来ノイズ成分Nを含んでいる出力)を入力し、後述の充放電信号Rで減算することで差分信号COMPを生成する減算器3aと、差分信号COMPに所定の係数値(以下「アタック係数値」と称する)αを乗算してその乗算値(α×COMP)を示す乗算信号Daを出力する乗算器3bと、差分信号COMPに所定の係数値(以下「リカバリー係数値」と称する)γを乗算してその乗算値(γ×COMP)を示す乗算信号Drを出力する乗算器3cと、乗算器3b,3cから排他的に出力される乗算信号Da又はDrの一方の乗算信号である乗算信号D1と充放電信号Rとを加算してその加算値(D1+R)を示す加算信号D2を生成する加算器3dと、加算信号D2を上述のクロック信号で設定される1サンプル時間だけ遅延させて遅延信号D3として出力する遅延回路3eと、遅延信号D3の値(レベル)が0以上の値のときには遅延信号D3を充放電信号Rとして出力し、遅延信号D3の値(レベル)が0未満の値のときには強制的に0の値に調整した充放電信号Rを出力するリミッタ回路3fと、後述のアタック期間信号Sarが論理値“H”のときには乗算器3bを動作させて乗算信号Daを出力させると共に、乗算器3cの動作を停止させて乗算信号Dγの出力を停止させ、一方、アタック期間信号Sarが論理値“L”のときには乗算器3cを動作させて乗算信号Dγを出力させると共に、乗算器3bの動作を停止させて乗算信号Daの出力を停止させるための切替信号(符号略)を生成する非反転回路3g及び反転回路3hとを備えて構成されている。
そして、乗算器3b,3cの係数値α,γは、次式(10)に示すように、0から1の範囲内に値に決められており、更に、アタック係数値αに比してリカバリー係数値γの方が小さい固定値に設定され、且つアタック係数値αが後述のフィルタ係数切替部9bによってj段階のアタック係数値α1〜αjの何れかに切替えられるようになっている。
かかる構成を有するローパスフィルタ3によると、遅延回路3eの1サンプル時間の遅延をz-1とし、減算器3aの入力をN(z)、充放電信号RをR(z)とすると、乗算器3bが動作し乗算器3cが動作を停止している状態では、次式(11a)で表されるz変換表記の伝達関数Ha(z)が発揮され、乗算器3bが動作を停止し乗算器3cが動作している状態では、次式(11b)で表されるz変換表記の伝達関数Hr(z)が発揮される。
更に、上記式(11a)(11b)に、角周波数ωとサンプリング周期τを適用してz=jωτで置換(ここで、jは複素記号)すると、夫々の伝達関数が式(12a)(12b)に示すように、周波数特性Ha(ω),Hr(ω)で表される。
そして、伝達関数│Ha(ω)│と│Hr(ω)│の高域遮断周波数faとfrは、夫々次式(13a)(13b)のように表され、更に、時定数τaとτrで表すと、次式(14a)(14b)となる。
図7は、以上に説明したローパスフィルタ3のステップ応答特性を表した特性図である。乗算器3bのアタック係数値αが大きなアタック係数値αjから小さいアタック係数値α1へと変化すると、アタック時定数τaが次第に大きくなるため、ステップ応答が次第に遅くなっていき、また、最も小さな値のリカバリー係数値γに設定されている乗算器3bが動作するときには、最も時定数τrが大きくなって最もステップ応答が遅くなる。
このように、ローパスフィルタ3は、乗算器3bのアタック係数値αが複数段jのアタック係数値α1〜αjの何れかに可変調整されることで、外来ノイズ成分Nに対するアタック期間での充電速度(別言すれば、アタック時定数τa)が変化し、更にリカバリー期間での放電速度(別言すれば、時定数τr)を遅くして低速放電を行うようになっている。
なお、リミッタ回路3fは、上述したように、遅延回路3eから出力される遅延信号D3が0以下の値となった場合に、充放電信号Rを強制的に値0に設定し、遅延信号D3が0以上の値のときには、その遅延信号D3を充放電信号Rとして出力することで、ローパスフィルタ3が不安定に動作することを未然に防止する機能を発揮する。
ただし、リミッタ回路3fは、ローパスフィルタ3の安定性を考慮して設けられるものであることから、省略してもよく、遅延回路3eの出力D3を充放電信号Rとしてもよい。
次に、時定数切替部9の構成を説明する。
図6(b)に示すように、時定数切替部9は、比較器(図4(b)に示した検出回路9aに相当している)9aと、フィルタ係数切替部(図4(b)に示した切替信号生成回路9bに相当している)9bとを備えて構成されている。
比較器9aは、ハイパスフィルタ2の出力と、遅延回路3eで1サンプル時間遅れて生成される充放電信号Rとのレベルを比較し、ハイパスフィルタ2の出力が充放電信号Rより高レベルのときに、アタック期間を示す論理値“H”となるアタック期間信号Sarを出力し、一方、ハイパスフィルタ2の出力が充放電信号Rより低レベルのときには、リカバリー期間を示す論理値“L”となるアタック期間信号Sarを出力する。そして、アタック期間信号Sarを上述の非反転回路3gと反転回路3hに供給することで、アタック期間では乗算器3bを動作させ、リカバリー期間では乗算器3cを動作させる。
したがって、ハイパスフィルタ2の出力に外来ノイズ成分Nが発生すると、ローパスフィルタ3は、その外来ノイズ成分Nが充放電信号Rのレベルより高レベルで上昇していくアタック期間内では、乗算器3bに設定されたアタック係数値αに基づいて設定された時定数τaに従ってその外来ノイズ成分Nを充電していき、一方、その外来ノイズ成分Nが充放電信号Rの充電電圧のレベルより低レベルになると、アタック期間からリカバリー期間に切り替わって乗算器3cが動作を開始することで、その充電電圧を開始レベルとして、リカバリー係数値γに基づいて設定された時定数τrに従って低速放電を行う。
このように、比較器9aは、アタック期間とリカバリー期間を検出して、ローパスフィルタ3の乗算器3bと3cの動作を切替えさせ、外来ノイズ成分Nに対する充放電信号Rを生成させるようになっている。
次に、フィルタ係数切替部9bは、ルックアップテーブル形式の読出専用メモリ(ROM)を備えて形成されており、ディジタル放送受信機200内のIFフィルタで生成される受信感度を示すSメータ信号Smtrを入力して、Sメータ信号Smtrのレベルに対応するj段階の何れかのレベルとして検出し、その検出レベルに対応付けられているアタック係数値αを読出専用メモリから出力して乗算器3bに供給し、上述の乗算処理を行わせる。
つまり、読出専用メモリ(ROM)には、アタック時定数τa1に関連付けられたアタック係数値α1と、アタック時定数τa2に関連付けられたアタック係数値α2と、以下同様に、アタック時定数τajに関連付けられたアタック係数値αjのデータが予め記憶されている。
そして、図5(a)(b)を参照して説明したのと同様に、Sメータ信号mtrのレベルが大きいときには到来電波の電界強度が強く、Sメータ信号mtrのレベルが小さくなるほど到来電波の電界強度が弱くなるという関係に基づいて、最も小さな値のアタック時定数τa1から大きな値のアタック時定数τajが決められており、更に、小さな値のアタック時定数τa1に関連付けられているアタック係数値α1が最も大きな値のデータ、大きな値のアタック時定数τajに関連付けられているアタック係数値αjが最も小さな値のデータとして予め記憶されている。
そして、フィルタ係数切替部9bは、到来電波の電界強度が強いときには、Sメータ信号mtrのレベルに応じて、例えば最も小さなアタック時定数τa1に関連付けられている最も大きなアタック係数値α1を乗算器3bのアタック係数値αとして設定させることで、アタック期間において、ローパスフィルタ3にアタック時定数τa1に基づく高速充電を行わせ、また、到来電波の電界強度が弱いときには、Sメータ信号mtrのレベルに応じて、例えば最も大きいアタック時定数τajに関連付けられている最も小さなアタック係数値αjを乗算器3bのアタック係数値αとして設定させることで、アタック期間において、ローパスフィルタ3にアタック時定数τajに基づく低速充電を行わせる。
したがって、フィルタ係数切替部9bは、到来電波の電界強度が強く、ハイパスフィルタ2の出力に生じる広帯域ノイズのレベルが低いときには、ローパスフィルタ3が外来ノイズ成分Nを小さいアタック時定数τa1等に基づいて高速充電することで、高レベルの外来ノイズNを充電できるようにし、到来電波の電界強度が弱く、ハイパスフィルタ2の出力に生じる広帯域ノイズのレベルが高いときには、ローパスフィルタ3が外来ノイズ成分Nを大きいアタック時定数τaj等に基づいて低速充電することで、高レベルの外来ノイズNを充電できるようにしている。
次に、以上に説明した構成を有する本実施例のノイズキャンセラ回路100の動作について説明する。
例えば、図5(c)に示したように、到来電波の電界強度が強いときには、Sメータ信号Smtrが高レベルとなるため、フィルタ係数切替部9bから乗算器3bに、例えば小さなアタック時定数τa1を設定させるための大きなアタック係数値α1を供給して乗算処理を行わせる。更に、到来電波の電界強度が強い状態で、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが受信アンテナ等を介して混入すると、比較器9aが外来ノイズ成分Nのレベルの立ち上がりを検出してアタック期間を設定し、乗算器3bが動作状態、乗算器3cが動作停止状態となる。したがって、図6(b)に示す乗算信号DaがD1となって、ローパスフィルタ3が高速充電の処理を行い、充放電信号Rのレベル(充電電圧)が上昇していく。
次に、外来ノイズ成分Nがピークレベルから降下し充放電信号Rより低レベルとなると、アタック期間が終了し、乗算器3cが動作状態、乗算器3bが動作停止状態となる。したがって、図6(b)に示す乗算信号DrがD1となって、ローパスフィルタ3が低速放電の処理を行い、充放電信号Rのレベルが次第に降下していく。
更に、こうして生成される鋸歯状の充放電信号Rを増幅器4が増幅率gで増幅することで、高レベル側にレベル調整した鋸歯状の閾値信号Rthを生成し、更に、比較器5が、閾値信号Rthと外来ノイズ成分Nのレベルを比較し、高レベルとなっている外来ノイズ成分Nを検出し、低レベルとなっている外来ノイズ成分Nは検出しない。このため、比較器5から、高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saが出力され、更にゲート信号生成回路6がその信号Saを波形整形等することでゲート信号Sgを生成して補間回路7に供給する。
したがって、補間回路7では、ディジタル放送受信機200内の検波器から出力される復調信号Smdに、高レベルの外来ノイズに起因して生じるノイズ成分が生じると、ゲート信号Sgで指定される上述のノイズ発生期間Tにおいて除去又は減衰等の補間処理が行われ、高レベルの外来ノイズの影響が除去された復調信号Sxが生成されて出力される。
その結果、復調信号Sxに短冊状の裁断された信号成分が生じることを未然に防止し、且つ聴感上違和感を与える高レベルのノイズ成分については除去することが可能となっている。
次に、図5(d)を参照して、到来電波の電界強度が弱い時に、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが受信アンテナ等を介して混入した場合の動作について説明する。
到来電波の電界強度が弱い時には、Sメータ信号Smtrが低レベルとなるため、フィルタ係数切替部9bから乗算器3bに、例えば大きなアタック時定数τajを設定させるための小さなアタック係数値αjを供給して乗算処理を行わせる。更に、到来電波の電界強度が弱い状態で、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが受信アンテナ等を介して混入すると、比較器9aが外来ノイズ成分Nのレベルの立ち上がりを検出してアタック期間を設定し、乗算器3bが動作状態、乗算器3cが動作停止状態となる。
したがって、図6(b)に示す乗算信号DaがD1となって、ローパスフィルタ3が、レベル上昇している広帯域ノイズのレベルから低速充電の処理を行う。そして、大きいアタック時定数τajに従って低速充電が行われる結果、広帯域ノイズのレベルが高くとも、充電電圧が外来ノイズ成分Nのピークレベルより低いレベルに到達するように充電が行われることとなる。
次に、外来ノイズ成分Nがピークレベルから降下し充放電信号Rより低レベルとなると、アタック期間が終了し、乗算器3cが動作状態、乗算器3bが動作停止状態となる。
そして、図6(b)に示す乗算信号DrがD1となって、ローパスフィルタ3が低速放電の処理を行い、充放電信号Rのレベルが次第に降下していく。
更に、こうして生成される鋸歯状の充放電信号Rを増幅器4が増幅率gで増幅することで、高レベル側にレベル調整した鋸歯状の閾値信号Rthを生成し、更に、比較器5が、閾値信号Rthと外来ノイズ成分Nのレベルを比較し、高レベルとなっている外来ノイズ成分Nを検出し、低レベルとなっている外来ノイズ成分Nは検出しない。このため、比較器5から、高レベルの外来ノイズ成分Nのノイズ発生期間Tを示す信号Saが出力され、更にゲート信号生成回路6がその信号Saを波形整形等することでゲート信号Sgを生成して補間回路7に供給する。
したがって、補間回路7では、ディジタル放送受信機200内の検波器から出力される復調信号Smdに、高レベルの外来ノイズに起因して生じるノイズ成分が生じると、ゲート信号Sgで指定される上述のノイズ発生期間Tにおいて除去又は減衰等の補間処理が行われ、高レベルの外来ノイズの影響が除去された復調信号Sxが生成されて出力される。
その結果、復調信号Sxに短冊状の裁断された信号成分が生じることを未然に防止し、且つ聴感上違和感を与える高レベルのノイズ成分については除去することが可能となっている。
以上説明したように、本実施例のノイズキャンセラ回路100によれば、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入した場合、到来電波の電界強度が弱くなるに従って、ローパスフィルタ3で外来ノイズ成分Nを充放電して充放電信号Rを生成する際のアタックアタック時定数τaの値を大きくして充電するようにしたので、到来電波の電界強度が弱くなるに従って増加する広帯域ノイズの影響を受けることなく、高レベルの外来ノイズに起因して生じる高レベルの外来ノイズ成分Nを検出し、且つ低レベルの外来ノイズに起因して生じる低レベルの外来ノイズ成分Nを検出しないようにするための充放電信号Rを生成することができる。
つまり、本実施形態のノイズキャンセラ回路100によれば、時間的に高密度で長時間に亘って生じる外来ノイズが混入した場合に、受聴者に対して違和感を与える外来ノイズを検出するためのノイズ検出感度が到来電波の電界強度に依存して変動してしまうという従来の問題点を改善することができ、ノイズ検出感度の安定化を図ることが可能となっている。
したがって、到来電波の電界強度が変動して放送受信機の受信状態が良好であるか否かを問わず、外来ノイズの影響を除去することが可能である。
更に、外来ノイズ成分Nを充放電処理するためのローパスフィルタ3を極めて簡素な構成のディジタルフィルタで形成しているため、ノイズキャンセラ回路100の小型化等を実現することが可能である。