JP4683329B2 - 圧延ロール用外層材および圧延ロール - Google Patents

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Description

本発明は、圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールに関するものであり、耐摩耗性に優れるとともに、特に耐凹み疵性に優れる外層材で、薄板圧延機に用いられるワークロールとして好適なものである。
圧延の生産性を決定する重要な特性として、圧延ロールの耐摩耗性がある。耐摩耗性が乏しいと、早期にロール表面が摩耗し、被圧延材の寸法精度を損なう。これを防止するためにはロールを頻繁に取り替えなければならず、圧延操業の中断の頻度が増えることによる圧延工場の生産性の低下、ロール表面研削加工に要するコストの増大、さらにロール表面研削量の増大によるロール原単位の低下といった問題が発生する。
そこで、従来から耐摩耗性の要求に応えることを目論んだ圧延ロール用外層材(圧延使用層)として、Cr、Mo、W、Vなどの合金元素を多量に含んだハイス系合金が使用されている。その組織には、Crを多く含むM型炭化物(Mは金属元素を示す、以降同様)、Mo及びWを多く含むMC型炭化物やMC型炭化物、およびVを多く含むMC型炭化物などの金属炭化物を含有しているものである。
一方、薄板圧延機においては、中間ロールまたはバックアップロールを有する多段式ミルが一般的となっている。この多段式ミルは、板形状の制御に優れるものの、圧延中に発生する様々な異物がワークロールと接触する中間ロールまたはバックアップロールとの間に挟まった場合、その異物に集中的に圧延荷重がかかるため、異物を挟んだ部分のワークロールが局部的に凹み、疵が発生する。この凹み疵がワークロールに発生すると、被圧延材に転写され、被圧延材の表面品質を極度に低下させる。また、ワークロールに凹み疵が入ったまま圧延を続行すると、圧延応力によりこの凹み疵の部分からロール内部にクラックが進展し、さらにはワークロールの割損(スポーリング)に至る場合がある。
従来より、この凹み疵の発生を防ぐための手段が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、その化学成分が重量%で、C:2.45〜4%、Si:1〜2.5%、Mn:0.6〜2%、Ni:0.3〜1.5%、Cr:6〜8%、Mo:11%を超え15%以下、W:10〜20%、V:5〜10%、Co:12〜16%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、高い硬さと高い摩耗抵抗性を有し、さらに耐凹み疵性に優れたことを特徴とする多段式圧延用作業ロールが開示されている。
また、特許文献1には、基地中に炭化物形成元素であるCr,Mo,W,V,を固溶させ高温焼もどしでMC,MC型の炭化物を析出させて硬度を上昇させる。また、Mo及びWの総量は(2Mo+W)の値が30%以上で50%以下の範囲にあるように含むのが好ましく、またMo,W及びCoの総量の好ましい範囲は(2Mo+W+Co)が42%以上で66%以下となる範囲で、これにより焼入温度範囲が広く、そして焼もどし温度も100〜600℃と広い範囲でHRC68以上の高い硬さが得られる。また、MC,MC,Mの他にマルテンサイト、残留オーステナイトの金属組織により、高い硬度と高い摩耗抵抗性ならびに耐凹み疵性を向上させ、その作用はさらに効果的となることが記載されている。
特許文献1によれば、ロールを上記の成分に調製することにより、高温焼もどしより高い硬度と高い摩耗抵抗性ならびに、耐凹み疵性に優れた多段式圧延用作業ロールが得られる。
特許文献2には、鋳鋼または鍛鋼からなる芯材の周囲に、連続鋳掛肉盛法にて外層を形成してなり、前記外層材の化学成分が重量%で、C:0.8〜2.0%、Si:0.2〜2.0%、Mn:0.2〜2.0%、Cr:4.0〜10.0%、Mo:1.0〜6.0%、V:0.5〜3.0%、W:0.5〜3.0%からなり、残部がFeおよび不可避的成分であり、かつCbal=C−(0.060Cr+0.063Mo+0.033W+0.235V)を0.1〜1.0からなる冷間圧延用ワークロールにおいて、前記外層に、さらにTi、B、Mgの1種以上を0.02〜0.50%含有したこと特徴とする冷間圧延用ワークロールが開示されている。
また、特許文献2によれば、耐摩耗性を向上させるため、硬質の晶出炭化物を利用することを最大の特徴の一つとし、さらに基地組織の硬さをビッカース硬度で750以上であることが記載されている。また、炭化物はVによるMC型あるいはCr・Mo・WによるM型、MC型、もしくはMC型を主として利用することが記載されている。さらには、従来ロールの場合、高い残留応力をも利用してショア硬度を管理指標としていたが、耐摩耗性、粗度保持性、耐凹性についての耐久性を確保し向上させる上では押し込み型の代表硬度の一つであるビッカース硬度を管理指標として採用し750以上、望ましくは800以上とすることで耐久性の向上を達成したことが記載されている。
特許文献3には、鋼系または鉄系材料からなる内層の外周に超硬合金からなる外層が接合してなり、外層表面の押し込み硬さがHRA86以上であることを特徴とする圧延用複合ロールが開示されている。
特許文献3によれば、内層の外周に超硬合金からなる外層を接合して、超硬合金の表面の押し込み硬さをHRA86以上にすることにより、ロール表面の凹み疵の発生を防止することができるため、従来実施していた凹み疵による転写防止のための無駄なロール交換や研磨を省くことができ、生産効率の向上、生産コストの削減を達成でき、被圧延材の板形状制御を良好にできることが記載されている。
特開平6−192791号公報 特開2002−273506号公報 特開2004−136296号公報
特許文献1には、多量のMoおよびWを含ませることにより多量のMC型炭化物を形成するとともに、多量のCoを含ませることにより基地の硬さを増加させることで耐摩耗性および耐凹み疵性を向上させることが記載されているが、多量のMC型炭化物および基地硬さの増加はいずれも靭性を低下させるものであり、適用される用途は制限される。
特許文献2には、硬質の晶出炭化物を利用することを最大の特徴とし、基地組織の硬さをビッカース硬度で750以上とすることで耐摩耗性を向上させることが記載されている。しかしながら、さらに耐摩耗性及び耐凹み疵性を向上させようと目論み、合金添加量を増加させると、炭化物が粗大化し圧延用ロールとしての炭化物の均質性確保が困難になる。
特許文献3に記載の超硬合金はWCを多量に含み、一般的なハイス系合金に比べ耐摩耗性に優れる特徴をもつ。特許文献3によれば、超硬合金の押し込み硬さをHRA86以上と極めて硬くすることで耐凹み疵性を向上させている。ここで、超硬合金の基地は、主にCo、NiおよびCrの合金で構成されており、そのため超硬合金の基地硬さはビッカース硬さで500以下と、一般的なハイス系合金の基地(ビッカース硬さで550以上)にくらべ低い。このため、超硬合金は一般的なハイス系合金にくらべ耐凹み疵性が低下しやすいという問題がある。
これらの公知例にみられるように、従来より耐凹み疵性を向上させるためには、いわゆる押し込み硬さを上げればよいことが知られている。しかしながら、硬さを上げることは靭性の低下を招きやすく、また炭化物の均質性確保が困難になる。したがって、本発明は、耐凹み疵性を従来技術と異なる技術的手段で改善することを図ったものであり、優れた耐摩耗性、靭性および炭化物の均質性を具備するとともに、耐凹み疵性に極めて優れた圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールを提供することを目的とする。
本発明の耐凹み疵性の評価にはロックウェルCスケール硬さを用いた。これは、凹み疵は、異物がロールに押し付けられることによるロールの変形により発生することから、押し込み硬さの代表的なものとして、ロックウェルCスケール硬さ(以下HRCと表す)を耐凹み疵性の評価方法として採用した。
本発明者らはロールに凹み疵が発生した部位よりサンプルを採取し、HRC硬さ測定を行なった。種々のサンプル測定の結果、HRC硬さが62未満のものに凹み疵が発生しやすいことが判った。
さらに、本発明者らは、炭化物の種類、量、分布形態および基地硬さの異なる種々のサンプルについてHRC硬さを測定するとともに、その相関について調査した。なお、基地硬さの測定は、その測定領域が微小領域となるため、ビッカース硬さ(以下Hv硬さと表す)で試験荷重を50gにて測定した。その結果、MC炭化物が面積率で20%以上となると、基地のHv硬さが高いほどHRC硬さの実測値が大幅に上昇し、優れた耐凹み疵性を発揮させることを見出した。
また、それらのサンプルについて靭性の評価の一つである破壊靭性値KICの測定を行ない、従来のハイス系外層材に比して同等以上の靭性が確保できることを確認した。さらに、MC炭化物の望ましい分散形態、化学成分およびロールの鋳造方法を見出した。
すなわち、本発明の圧延ロール用外層材は、遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側にMC炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側のMC炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる圧延ロール用外層材であって、外層材の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織であって、ロックウェルCスケール硬さ(HRC)の実測値が62以上で、かつ下記(s)式を満足することを特徴とする。
(ロックウェルCスケール硬さの実測値)−(基地のビッカース硬さ(Hv)を下記(t)式でHRC単位に換算した値F)≧2・・・(s)
ここで、
F=−4.47×10−5×Hv+0.106×Hv+7.82・・・(t)
また、本発明の圧延ロール用外層材は、遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側にMC炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側のMC炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる圧延ロール用外層材であって、外層材の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の総量が0〜3%分散した組織であって、ロックウェルCスケール硬さ(HRC)の実測値が62以上で、かつ前記(s)式を満足することを特徴とする。
前記本発明において、外層材の組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超えないことを特徴とする。
前記外層材の組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離が10〜40μmであることを特徴とする。
前記外層材の組織におけるMC炭化物の平均円相当直径が10〜50μmであることを特徴とする。
前記外層材の組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2以下であることを特徴とする。
さらに、前記外層材中のVの一部を、質量%で下記(1)式を満足する範囲のNbで置換することを特徴とする。
11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
さらに下記(2)式を満足することを特徴とする。
0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(2)
さらに質量%で、Ni:2.0%以下(0%を含む)およびCo:10.0%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする。
さらに質量%で、Ti:0.5%以下(0%を含む)およびAl:0.5%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする。
さらに、本発明の圧延ロール用外層材を用いて形成された圧延ロールであることを特徴とする。
本発明は含まれる炭化物の種類および量をコントロールすることで、優れた耐摩耗性、耐凹み疵性および靭性を達成したことを最大の特徴とする。本発明の圧延ロール用外層材の組織要素について以下に説明する。
基地は、MC炭化物などの炭化物を除く部分であり、おもにFeおよび合金元素からなり、熱処理による変態や基地中の極微細な炭化物の析出などにより硬さが変化する。また、基地のHv硬さが550未満では、HRC硬さ62を確保することが困難となり、耐凹み疵性を損なうとともに耐摩耗性の向上効果が低下する。耐摩耗性および耐凹み疵性向上の観点から基地の硬さは高いほうが望ましいが、基地のHv硬さが900を超えると、靭性が低下し好ましくない。基地の硬さのより好ましい範囲は、Hv硬さで600〜850である。
本発明は種々の炭化物のうち、MC炭化物を主として利用する。MC炭化物はHv硬さ2400〜3200と他の炭化物に比べ格段に高硬度であるため、耐摩耗性を向上させるとともに、外層材の押し込み硬さを上げ耐凹み疵性を向上させることに寄与する。また、MC炭化物は粒状になりやすいことから、多く含ませても靭性低下が少ないという特徴を有する。一般には基地のビッカース硬さと全体のロックウェル硬さは比例関係にある。しかしながら、本発明者らは、MC炭化物が面積率で20%以上となると、基地のビッカース硬さの上昇割合に比して、全体のロックウェル硬さが大幅に上昇することを見出した。すなわち、必要な靭性を維持しつつ優れた耐摩耗性および耐凹み疵性を発揮することが可能となった。一方、MC炭化物が面積率で60%を超えると耐凹み疵性の改善効果が飽和するとともに、靭性が著しく低下する。よってMC炭化物は面積率で20〜60%が好ましい。より好ましい面積率は30〜50%である。
なお、最も好ましいMC炭化物としては、Vを主体とすることであるが、その一部またはすべてをNbに置換しても差し支えない。また、MC炭化物に含まれる合金成分に、W、Mo、CrおよびFe等が含まれても差し支えないが、VおよびNbの合計量で50%以上を占めることが望ましい。
本発明の外層材には、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の合計総量が面積率で0〜3%分散することができる。MCおよびMC炭化物はおもにMoやWを多く含み、M炭化物はおもにCrを多く含む炭化物である。これらは、MC炭化物に次ぐ硬さを有する炭化物だが、例えばMC炭化物はビッカース硬さは1600〜2300程度であり、耐摩耗性および耐凹み傷性の改善効果はMC炭化物に比べ劣る。また、これらのMC炭化物以外の炭化物は、粗大かつネットワーク状に分布しやすく、過剰に含まれると、圧延事故時のクラックがこれらの炭化物を伝播しやすくなり靭性が低下する。これらの炭化物の総和が面積率で3%を超えると、それらの炭化物が粗大化し耐肌荒れ性や靭性が劣化する。少ないほど好ましく、面積率で0%でもよい。より好ましい面積率は0〜1%である。なお、本発明の外層材においては、MC、MC、MCおよびM炭化物以外の各種炭化物を微量含んでもかまわない。
ここで前述の式(t)中の(基地のビッカース硬さ(Hv)のHRC硬さ換算値)は、ASTM E140 における金属の硬さ換算表規格のビッカース硬さHv硬さ595〜940(HRC55〜68)の範囲を2次式で近似して求めた値である。一般的には、ビッカースをHRC単位で換算した硬さと、HRC硬さの実測値は、ほぼ一致する。すなわち前述の式(s)の値がほぼ0となる。本発明の外層材は、硬質のMC炭化物が面積率で20%以上含まれる効果により、式(s)の値が2以上となる。靭性を維持しつつ、ロックウェル硬さを上昇させ耐凹み疵性を向上させる観点から、式(s)のより好ましい値は、3以上である。一方、式(s)の値が10以上では、本発明に含まれる炭化物の量では困難である。さらに好ましい式(s)の値の範囲は、4〜8である。
また、本発明は、炭化物の分散形態をコントロールすることで、より一層優れた後述の特性を発揮することができる。
本発明の外層材の組織において円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超えないことが好ましい。MC炭化物が円相当直径で15μm未満の場合、炭化物硬さ増分効果が低下する。また、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径を150μm以下としたのは、この内接円直径より大きい領域が存在すると、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きくなり、炭化物硬さ増分効果が低下するとともに、MC炭化物の少ない部位の耐凹み疵性の改善効果が低下し、ロール全体としての耐凹み疵性が劣るからである。円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で120μmを超えないことがより好ましい。さらには80μmを超えないことがより望ましい。
また、本発明の外層材の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離が10〜40μmであることが好ましい。この平均粒子間距離より小さいと、MC炭化物が凝集しすぎて、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸を生じ、耐肌荒れ性を損なう。この平均粒子間距離より大きいと、MC炭化物の分布のばらつきが無視できないほど大きくなり、炭化物硬さ増分効果が低下するとともに、MC炭化物の少ない部位の耐凹み疵性の改善効果が低下し、ロール全体としての耐凹み疵性が劣る。円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離は20〜30μmがより好ましい。
また、本発明の外層材の組織において、分散するMC炭化物の平均円相当直径は10〜50μmが望ましい。MC炭化物の平均円相当直径が10μm未満では、炭化物硬さ増分効果が低下する。一方、50μmを超えて粗大になると、摩耗差によるミクロ的な凹凸を生じ、耐肌荒れ性を損なう。MC炭化物の平均円相当直径のより好ましい範囲は、10〜40μmであり、さらに好ましくは15〜30μmである。
また、本発明の外層材の組織において、円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2以下であるのが望ましい。本発明の外層材は、耐摩耗性に優れるMC炭化物を多量に含んでおり、耐摩耗性に優れるが、一方で製造時にはMC炭化物が凝集しやすい。MC炭化物が凝集すると、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸を生じ、耐肌荒れ性を損なう一因となる。このG/Hの値が2を超えると、MC炭化物が凝集傾向にあり、MC炭化物の多い部分と少ない部分で摩耗差によるミクロ的な凹凸を生じ、耐肌荒れ性を損なう。さらに、炭化物硬さ増分効果が低下するとともに、MC炭化物の少ない部位の耐凹み疵性の改善効果が低下し、ロール全体としての耐凹み疵性が低下する。より好ましいG/Hの値は、1.5以下である。
ここで、本発明における円相当直径について説明する。図1に円相当直径の概念図を示す。円相当直径とは、対象物(ここでは炭化物を指す)と等しい面積の円の直径を表したものである。図1において、測定対象物Eの面積をAとすると、円相当直径Dは測定対象物の面積Aと等しい面積に相当する円Bの直径であり、式(3)で表される。
円相当直径D=√(A×4/π) ・・・(3)
このようにして、本発明のMC炭化物の円相当直径Dやそれらを平均したMC炭化物の平均円相当直径Hを求めた。また、MC、MCおよびM炭化物の円相当直径についても同様の手法で求めた。
また、本発明における円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径について説明する。図2に円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の概念図を示す。
図2において、符号a、a1、a2、a3、a4(白塗り部)は円相当直径で15μm以上のMC炭化物、符号b(黒塗り部)は円相当直径で15μm未満のMC炭化物、符号eはMC炭化物aおよびbを除いた部分であり、基地とMC、MCおよびM炭化物の存在する領域である。この場合、本発明の内接円直径は領域eの面に無数に描かれる。図2に示すように、15μm未満のMC炭化物bを測定対象から除外して、15μm以上のMC炭化物a1〜a4のすべてに内接する内接円直径dが、本発明における内接円直径である。
また、本発明における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離について説明する。図3に平均粒子間距離の概念図を示す。図3において、符号a(白塗り部)は円相当直径で15μm以上のMC炭化物、符号b(黒塗り部)は円相当直径で15μm未満のMC炭化物、符号eはMC炭化物aおよびbを除いた部分であり、基地とMC、MCおよびM炭化物の存在する領域である。この場合、任意の直線Lにおいて、15μm未満のMC炭化物bを測定対象から除外して、直線L上に存在する15μm以上のMC炭化物aにおいて隣接するMC炭化物a同士間の最短距離であるLの線分をLn(nは線分の個数)とすると、平均粒子間距離Gは、式(4)で表される。なお、Xは他の任意の直線であって、直線L同様に平均粒子間距離Gを求める。
円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離G=
(Σ(L+L+・・・・+L))/n ・・・(4)
次に本発明の圧延ロール用外層材の化学成分(質量%)の限定理由について説明する。
C:2.5%を超え9.0%以下
Cは、おもにVもしくはNbなどの合金元素と結合しMC炭化物を形成することで耐摩耗性に寄与する必須の元素である。また、合金元素と結合しないCはおもに基地中に固溶もしくは合金元素とともに極微細に析出し基地を強化することでも耐摩耗性に寄与する。Cが2.5%以下ではMC炭化物の量が不足し十分な耐摩耗性が得られない。一方、Cが9.0%を超えると、炭化物が過多となり耐熱亀裂性が劣化する。より好ましいC含有量は3.5%を超え9.0%以下であり、さらに好ましくは4.5%を超え9.0%以下である。
Si:0.1%を超え3.5%以下
Siは、溶湯中で脱酸剤として作用する。Siが0.1%以下では脱酸効果が不足して鋳造欠陥を生じやすい。また、3.5%を超えると脆化する。より好ましいSi含有量は0.2〜2.5%であり、さらに好ましくは0.2〜1.5%である。
Mn:0.1%を超え3.5%以下
Mnは、溶湯の脱酸や不純物であるSをMnSとして固定し、0.1%を超えると効果がある。Mnが3.5%を超えると残留オーステナイトを生じやすくなり安定して硬さを維持できず、耐摩耗性が劣化しやすくなる。より好ましいMn含有量は0.2〜2.5%であり、さらに好ましくは0.2〜1.5%である。
V:15.0%を超え40.0%以下
Vは、おもにCと結合しMC炭化物を形成する本発明の重要な元素である。本発明の特徴の一つは、外層材に極めて多量のMC炭化物を含むことにある。Vが15.0%以下では、MC炭化物が不足し、十分な耐摩耗性が得られない。一方、Vが40.0%を超えるとMC炭化物が過剰となり、靭性が劣化する。より好ましいV含有量は15.0%を超え40.0%以下であり、さらに好ましくは18.0%を超え40.0%以下である。
Cr:1.0%を超え15.0%以下
Crは、基地に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地部を強化する。Crが1.0%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。また、15.0%を超えるとM炭化物などのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、靭性が劣化する。より好ましいCr含有量は3.0〜9.0%である。
Mo:0.5%を超え20.0%以下
Moは、基地に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地を強化する。さらに、Moの一部はVやNbなどとともに粒状炭化物を形成する。Moが0.5%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、20.0%を超えるとMCやMCなどのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、靭性が劣化する。より好ましいMo含有量は2.5〜20.0%であり、さらに好ましくは2.5〜10.0%以下である。
W:1.0%を超え40.0%以下
Wは、基地部に固溶し焼入性を高め、また一部は基地中でCと結合し極微細な炭化物として析出し基地部を強化する。さらに、Wの一部はVやNbなどとともに粒状炭化物を形成する。Wが1.0%以下では、基地強化の効果が十分に得られない。一方、40.0%を超えるとMCやMCなどのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、靭性が劣化する。より好ましいW含有量は、5.0〜40.0%であり、さらに好ましくは5.0〜20.0%以下である。
本発明の外層材には耐摩耗性を十分に発揮すべく必要な基地を得るために、基地の強化元素であるCr、MoもしくはWの少なくともいずれか1種または2種以上を含有させることが望ましい。
11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
Nbは、MC炭化物を形成する点でVと同様の作用がある。質量%でVが1.0%の場合、Nbは原子量の比より質量%で0.55×Nb%でVと等価となる。よって、(1)式の範囲でVの一部をNbで置換することができる。
0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(2)
C%−0.2×(V%+0.55Nb%)の値が0以下となると、MC炭化物の量が十分に得られなくなるとともに、基地中にVやNbが過剰となり基地の硬さが得られず耐摩耗性が低下する。また、C%−0.2×(V%+0.55Nb%)の値が2.0%を超えると、MC、MC、およびM炭化物などのMC炭化物以外の炭化物が特に増加、粗大化もしくは網目状に晶出し、靭性が劣化する。
また、圧延ロールの用途、使用方法に応じて、本発明の外層材には以下の成分を適宜添加することができる。
Ni:2.0%以下
Niは基地に固溶し、基地の焼入れ性を向上させるのに有効である。Niが2.0%を超えると基地のオーステナイトが安定するため、基地の硬さが十分に得られない。
Co:10.0%以下
Coは基地部に固溶し、基地強化の効果がある。また、高温においても基地の硬さを維持できる。Coが10.0%を超えると靭性が低下する。一方、Coは高価であるので、経済性と使用条件を考慮し含有量を決定するのが望ましい。
Ti:0.5%以下
Tiは、溶湯中で脱酸剤として作用するほか、Nと結合して窒化物を形成し、粒状炭化物の核となり、粒状炭化物を微細にする効果がある。また一部はCと結合して粒状炭化物の一部となる。Tiの効果は0.5%以下で十分である。
Al:0.5%以下
Alは、溶湯中で脱酸剤として作用するほか、粒状炭化物を微細にする効果がある。0.5%を超えると焼入れ性を悪化させ十分な基地硬さが得がたく好ましくない。
本発明の圧延ロール用外層材は遠心力鋳造法で形成するのが望ましく、本発明の遠心力鋳造されてなる圧延ロール用外層材について説明する。図4は本発明の遠心力鋳造されてなる圧延ロール用外層材を説明するための図である。本発明の外層材は、初晶MC炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を遠心力鋳造用鋳型内に鋳込み、遠心力鋳造することにより、内面側にMC炭化物を濃化した層を形成させて得られる。図4において、イ部はMC炭化物が密集濃化した層である。ロ部はそれ以外の部位でありMC炭化物の存在が乏しい層である。ハ部は遠心力鋳造によって形成された中空部である。遠心力鋳造後、図4のロ部を、切削加工などにより除去し、図4のイ部を、すなわち本発明の圧延ロール用外層材を得る。つまり、MC炭化物が濃化した層のイ部を圧延使用層とする。
また、本発明の外層材を用いた圧延用ロールは、被圧延材やバックアップロールと接触する部位に使用する際に効果を発揮するので、中実または中空のどちらの構造でも構わない。また、本発明の圧延ロールは、本発明の外層材と内層材が金属的に溶着した圧延用複合ロールや、その間に1層以上の中間層を設けても構わない。また、本発明の外層材を有するスリーブを軸材に嵌合して構成してもよい。
本発明の圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールは、圧延用ワークロール全般で優れた耐摩耗性および耐凹み疵性を発揮する。特に熱間薄板圧延機の仕上列に用いられるワークロールで極めて優れた耐摩耗性および耐凹み疵性を発揮し、圧延工場における生産性の向上、ロール原単位および圧延製品の表面品質の向上に寄与する。
本発明の外層材は、初晶粒状炭化物を晶出する化学組成に調整した溶湯を遠心力鋳造用鋳型内に鋳込み、遠心力鋳造することにより、鋳型内の内面側にMC炭化物が濃化した層を形成した。供試材No.1〜5は本発明の実施例であり、本発明の遠心力鋳造で形成し、前述の図4のイ部に相当する部位より採取したものである。また、供試材No.6〜8は比較例、供試材No.9および10は従来例である。供試材No.6は静置鋳造で形成し、供試材No.7〜10は遠心力鋳造で形成した。
採取した供試材No.1〜8およびNo.10は、鋳込後1000〜1200℃で焼入れを行い、500〜600℃で3回焼戻しを行う熱処理を行った。また、供試材No.9は鋳込後400〜500℃で加熱し、残留オーステナイト分解兼歪取り熱処理を行った。各供試材はこれらの熱処理の後、各種試験片形状に加工を行った。これらの供試材No.1〜10の化学成分(質量%)を表1に示す。ここで、表1中の式(1)はV%+0.55×Nb%の値、また式(2)はC%−0.2×(V%+0.55×Nb%)の値である。
さらにMC炭化物の面積率、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の合計の面積率、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値、基地のHv硬さ、HRC硬さ、MC炭化物の平均円相当直径および円相当直径が15μm以上のMC炭化物の平均粒子間距離の測定をそれぞれ行った。
また、耐摩耗性および耐肌荒れ性の評価として圧延摩耗試験機による摩耗試験の摩耗量および粗さの測定、また靭性評価として破壊靭性値KICの測定を行った。
MC炭化物の面積率は、まず供試材を鏡面研磨し、次に重クロム酸カリウム水溶液中で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食した後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCA−II)を使用し測定した。
また、MC、MCおよびM炭化物の面積率は、まず供試材を鏡面研磨し、次に村上試薬によって腐食することによりMC、MC、およびM炭化物を黒色に腐食または、黒色もしくは灰色に着色した後、画像解析装置を使用し測定した。
これらの画像解析は1視野が供試材の0.23mm×0.25mmに相当する視野で面積率の測定を行った。この測定を、各供試材それぞれ任意の20視野について行い、その平均値を求めた。
MC炭化物の平均円相当直径は、まず供試材を鏡面研磨し、次に重クロム酸カリウム水溶液中で電解腐食することによりMC炭化物を黒色に腐食した後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCA−II)を使用し測定した。画像解析の測定範囲は、1視野が供試材の0.23mm×0.25mmに相当する視野とし、各供試材それぞれ任意の20視野について測定し、測定値の平均値を求めた。
C、MCおよびM炭化物の平均円相当直径は、まず供試材を鏡面研磨し、次に村上試薬によってMC、MCおよびM炭化物を黒色に腐食した後、画像解析装置(日本アビオニクス株式会社製SPICCA−II)を使用し測定した。画像解析の測定範囲は、1視野が供試材の0.23mm×0.25mmに相当する視野とし、各供試材それぞれ任意の20視野について測定し、測定値の平均値を求めた。なお、本発明においては、前記測定方法で識別が容易な円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物を測定対象とした。
円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離は、まず供試材を鏡面研磨し、次にピクリン酸アルコール溶液で基地を腐食する。これを光学顕微鏡で観察すると、基地は濃い灰色、MC炭化物は薄い灰色、MC、MCおよびM炭化物は白色に見える。このようにして、供試材試料の任意の1.0mm×1.5mmの面の倍率200倍の光学顕微鏡組織写真を用いて、円相当直径が15μm以上のMC炭化物の平均粒子間距離を測定した。
円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の測定は、まず供試材を鏡面研磨し、次にピクリン酸アルコール溶液で基地を腐食する。これを光学顕微鏡で観察すると、基地は濃い灰色、MC炭化物は薄い灰色、MC、MCおよびM炭化物は白色に見える。このようにして供試材試料の任意の2.0mm×3.0mmの面の倍率100倍の光学顕微鏡組織写真を作製し、本発明の内接円直径の最大値を測定した。
基地のビッカース硬さは、供試材を鏡面研磨し、ピクリン酸エタノール溶液を用いて基地を軽く腐食した後、ビッカース硬さ試験機を用いて、荷重50g〜200gの範囲で測定した。供試材それぞれ任意の5箇所について測定を行いその平均値を求めた。
ロックウェルCスケール硬さは、供試材を鏡面研磨した後、ロックウェル硬さ試験機を用いて、Cスケール(試験荷重150kgf)で測定した。供試材それぞれ任意の5箇所について測定を行いその平均値を求めた。
図5は圧延摩耗試験機の概略図を示す。図5において、圧延摩耗試験機は、圧延機1と、圧延材Sを余熱する加熱炉4と、圧延材Sを冷却する冷却水槽5と、圧延材Sの巻取り機6とテンションコントローラ7とから構成される。圧延機1には試験用ロール2、3が組み込まれる。試験用ロールは前述の各供試材から作製し、外径60mm、内径40mm、幅40mmの小型スリーブロールを用いた。圧延摩耗試験機に試験用ロールを組み込み、試験条件が、圧延材料:SUS304、圧下率:25%、圧延速度:150m/min、圧延温度:900℃、圧延距離:300m/回、ロール冷却:水冷、ロール数:4重式にて試験を行った。圧延後、試験用ロールの表面に生じた摩耗の深さと十点平均粗さ(Rz)を触針式表面粗さ計により測定した。
破壊靭性値KICは、各供試材より破壊靭性値KIC測定用の試験片を採取し、ASTM E399に準拠した試験により測定した。測定は各供試材につき2個の試験片について行い、その平均値を求めた。
表2に各種測定した結果を示す。すなわち、MC炭化物の面積率(%)、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の合計の面積率AA(%)、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域の内接円直径の最大値BB(μm)、円相当直径が15μm以上のMC炭化物の平均粒子間距離G(μm)、MC炭化物の平均円相当直径H(μm)、基地のHv硬さ、HRC実測硬さ、摩耗量(μm)、表面粗さRz(μm)および破壊靭性値KIC(kg/mm3/2)を示す。また、表2中の式(s)は式(s)の左項の値を示す。
図6に本発明例の供試材No.1の金属組織を示す。図6において、白色の部分がMC炭化物であり、黒色の部分は基地である。供試材No.1はMC炭化物が高濃度に分布しているのがわかる。
図7に比較例の供試材No.6の金属組織を示す。図8において、白色の部分がMC炭化物であり、黒色の部分は基地である。供試材No.6はMC炭化物が部分的に偏在して分布しているのがわかる。
図8に従来例のハイス系ロール材の供試材No.10の金属組織を示す。図8において、白色の微細粒状の部分がMC炭化物、白色の網目状の部分がMC、MCおよびM炭化物であり、黒色の部分は基地である。供試材No.10はMC炭化物が部分的に偏在して分布し、MC、MCおよびM炭化物は網目状に分布しているのがわかる。
本発明の供試材No.1〜5の摩耗量は従来材の供試材No.9およびNo.10に比べ半分以下であり、耐摩耗性が極めて良好であるとともに、破壊靭性値KICも従来材以上であり耐事故性を兼ね備えている。さらに、供試材No.1〜5のHRC硬さは62以上と高く、耐凹み疵性をよりいっそう発揮することが可能である。
比較例のNo.6は、円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超え、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超え、HRC硬さおよび式(1)の値が本発明の範囲外であり、耐凹み疵性に劣る。また、粗さが従来例材以下であり、耐肌荒れ性に劣る。
比較例のNo.7は、C%、Ni%、式(2)の値、MC炭化物の面積率、基地硬さ、HRC硬さ、式(1)の値およびMC炭化物の平均円相当直径が本発明の範囲外であり、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超えるものであり、摩耗量が従来例材以下であり、耐摩耗性が劣る。さらに、HRC硬さおよび式(1)の値が本発明の範囲外であり、耐凹み疵性に劣る。
比較例のNo.8は、V%、Cr%、式(2)の値、式(3)の値、MC炭化物の面積率、MC、MCおよびM炭化物の合計面積率が本発明の範囲外であり、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超えるものであり、粗さおよびKICが従来例材以下であり、耐肌荒れ性および靭性が劣る。さらに、HRC硬さおよび式(1)の値が本発明の範囲外であり、耐凹み疵性に劣る。
従来例のNo.9は、V%、Ni%、式(2)の値、MC炭化物の面積率、MC炭化物の平均円相当直径が本発明の範囲外であり、また円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2を超えるものであり、耐摩耗性が本発明材よりも劣る。さらに、HRC硬さおよび式(1)の値が本発明の範囲外であり、耐凹み疵性に劣る。
図9に供試材No.1〜10のMC炭化物面積率と炭化物硬さ増分(式(s)の値)をプロットしたものを示す。また、プロットに記されている番号は供試材No.を示す。この結果によれば、本発明例1〜5は、MC炭化物面積率が20%以上で、式(s)の値が2以上となり、耐凹み疵性が優れるものである。供試材No.6は、表2より(G/H)が2を超え、HRC硬さおよび式(1)の値が本発明の範囲外であり、式(s)の値が2を下回っているため、耐凹み疵性に劣る。供試材No.7〜10はいずれも式(s)の値が2を下回っているため、耐凹み疵性に劣る。
本発明の圧延ロール用外層材およびそれを用いた圧延ロールは、圧延用ワークロール全般で優れた耐摩耗性を発揮する。特に熱間薄板圧延機の仕上列に用いられるワークロールで極めて優れた耐摩耗性および耐凹み疵性を発揮し、圧延工場における生産性の向上やロール原単位の向上に寄与するとともに、圧延材の表面品質向上に寄与する。
円相当直径を説明するための図である。 内接円直径を説明するための図である。 平均粒子間距離を説明するための図である。 本発明の圧延ロール用外層材を説明するための図である。 圧延摩耗試験機の概略図である。 本発明の供試材No.1の光学顕微鏡による金属組織写真である。 比較例の供試材No.6の光学顕微鏡による金属組織写真である。 従来例の供試材No.10の光学顕微鏡による金属組織写真である。 供試材No.1〜10のMC炭化物面積率と式(s)の値をプロットした図である。
符号の説明
1 圧延摩耗試験機、 2 試験用ロール、 3 試験用ロール、 4 加熱炉、
5 冷却水槽、 6 巻取り機、 7 テンションコントローラ、 S 圧延材、
A 対象物の面積、 B 円、 D 円相当直径、 E 測定対象物、
a(a1、a2、a3、a4) 円相当直径で15μm以上のMC炭化物、
b 円相当直径で15μm以下のMC炭化物、 c 内接円、 d 内接円直径、
e MC炭化物a、bを除いた領域、 L 任意の直線、
L1、L2、L3 粒子間距離、 イ MC炭化物遠心分離濃化層、
ロ イを除く部位、 ハ 中空部

Claims (11)

  1. 遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側にMC炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側のMC炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる圧延ロール用外層材であって、外層材の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%分散した組織であって、ロックウェルCスケール硬さ(HRC)の実測値が62以上で、かつ下記(s)式を満足することを特徴とする圧延ロール用外層材。
    (ロックウェルCスケール硬さの実測値)−(基地のビッカース硬さ(Hv)を下記(t)式でHRC単位に換算した値F)≧2・・・(s)
    ここで、
    F=−4.47×10−5×Hv+0.106×Hv+7.82・・・(t)
  2. 遠心力鋳造により、遠心力鋳造用鋳型の内面側にMC炭化物を濃化した層を形成させて、ロールの外面側のMC炭化物の存在が乏しい層を除去した後、得られる圧延ロール用外層材であって、外層材の化学成分が質量%で、C:2.5%を超え9.0%以下、Si:0.1%を超え3.5%以下、Mn:0.1%を超え3.5%以下、V:15.0%を超え40.0%以下を含有し、さらに質量%で、Cr:1.0%を超え15.0%以下、Mo:0.5%を超え20.0%以下およびW:1.0%を超え40.0%以下のいずれか1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物元素からなり、ビッカース硬さがHv550〜900の基地に、面積率でMC炭化物が20〜60%、円相当直径で1μm以上のMC、MCおよびM炭化物の総量が0〜3%分散した組織であって、ロックウェルCスケール硬さ(HRC)の実測値が62以上で、かつ下記(s)式を満足することを特徴とする圧延ロール用外層材。
    (ロックウェルCスケール硬さの実測値)−(基地のビッカース硬さ(Hv)を下記(t)式でHRC単位に換算した値F)≧2・・・(s)
    ここで、
    F=−4.47×10−5×Hv+0.106×Hv+7.82・・・(t)
  3. 前記組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物を含まない領域が内接円直径で150μmを超えないことを特徴とする請求項1または2に記載の圧延ロール用外層材。
  4. 前記組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離が10〜40μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
  5. 前記組織におけるMC炭化物の平均円相当直径が10〜50μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
  6. 前記組織における円相当直径が15μm以上のMC炭化物間の平均粒子間距離(G)と、MC炭化物の平均円相当直径(H)との比(G/H)が2以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
  7. 前記Vの一部を、質量%で下記(1)式を満足する範囲のNbで置換することを特徴とする請求項1または2に記載の圧延ロール用外層材。
    11.0%<V%+0.55×Nb%≦40.0% ・・・(1)
  8. さらに下記(2)式を満足することを特徴とする請求項1、2、7のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
    0<C%−0.2×(V%+0.55×Nb%)≦2.0% ・・・(2)
  9. さらに質量%で、Ni:2.0%以下(0%を含む)およびCo:10.0%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、2、7、8のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
  10. さらに質量%で、Ti:0.5%以下(0%を含む)およびAl:0.5%以下(0%を含む)のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、2、7、8、9のいずれかに記載の圧延ロール用外層材。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の圧延ロール用外層材を用いて形成されたことを特徴とする圧延ロール。
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