JP4683288B2 - 摺動部材 - Google Patents

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本発明は、摺動層として非晶質炭素からなる皮膜を備えた摺動部材に関する。
たとえば、斜板式圧縮機の斜板やシュー、ピストン等に代表される各種装置の摺動部には、摩耗や焼付きを抑制すべく、種々の表面処理が施されている。特に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜と呼ばれる非晶質炭素膜は、耐摩耗性、固体潤滑性などに優れるため、摺動性を高める皮膜として広く利用されている。このような非晶質炭素膜の機械的特性をさらに向上させるために、膜組成や成膜方法について種々の研究がなされている。
たとえば、特許文献1〜3には、モリブデン、タングステンまたはクロムを含有する非晶質炭素膜が開示されている。これらの非晶質炭素膜は、耐摩耗性や潤滑性に優れるが、その代表的な用途は、ハードディスクドライブの磁気ヘッドの摺動部の保護膜である。
また、特許文献4は、摺動面に水素を含有する非晶質炭素膜を被覆した斜板式圧縮機の斜板が開示されている。非晶質炭素膜には、さらに珪素や窒素を含有したり、上層として二硫化モリブデン皮膜を形成することにより、さらなる摺動特性の向上を図っている。また、耐焼付き性に優れるCu−Pb溶射層と、その層上に形成された摩擦性に優れる固体潤滑材を含有する樹脂コート層と、をもつ斜板式圧縮機の斜板も知られている。こうした実状に対し、単一層であっても、圧縮機のような過酷な使用条件下において十分な摺動性を発揮できる摺動層をもつ摺動部材が求められている。
特開昭62−116749号公報 特開昭62−116750号公報 特開昭62−116751号公報 特開2001−280236号公報
そこで、本発明者等は、非晶質炭素膜が含む元素の種類や量を最適化することで、過酷な摺動条件下において、単一層であっても優れた摺動性を発揮する非晶質炭素膜を備えた摺動部材が得られることに想到した。すなわち、本発明は、上記問題点に鑑み、単一層であっても優れた摺動特性を発揮する摺動層をもつ摺動部材を提供することを目的とする。
本発明の摺動部材は、基材と、該基材の表面に形成され相手材と摺動する非晶質炭素膜と、を備える摺動部材であって、
前記非晶質炭素膜は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、インジウム(In)、錫(Sn)、珪素(Si)、ジルコニウム(Zr)および銅(Cu)のうちの少なくとも1種からなる0.5〜20at%の金属元素と、1〜10at%のモリブデン(Mo)および/またはタングステン(W)と、1〜20at%の硫黄(S)と、を含み残部が実質的に炭素(C)からなることを特徴とする。
なお、上記の金属元素のうちSiは、通常、「半金族元素」に分類されるが、「金属元素」の傾向も示す元素である。本明細書では、AgやMg等とともに金属元素の1つとして、Siを記載する。
この際、前記非晶質炭素膜に含まれるMoおよび/またはWの少なくとも一部と、該非晶質炭素膜に含まれるSの少なくとも一部と、が、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを構成しているのが望ましい。
また、前記相手材は、少なくともその表層部が、前記非晶質炭素膜と摺接する表面をもち主として鉄(Fe)またはニッケル(Ni)を含む金属材料からなるのが好ましい。
本発明によれば、基材の表面に形成される非晶質炭素膜が、軟質な金属であるAg、Mg、In、Sn、ZrおよびCu、また、非晶質炭素に添加することで摺動特性が向上することが知られているSiのうちの少なくとも1種からなる金属元素、および、固体潤滑材として用いられる硫化物の構成元素であるMoおよび/またはW、Sを含むことで、摺動部材の摺動特性が向上する。
このような非晶質炭素膜では、通常、上記金属元素や硫化物がクラスターの状態で膜中に分散している。この非晶質炭素膜を表面にもつ摺動部材を相手材と摺動させると、膜の最表面、つまり摺動面に、極薄い低剪断層が形成されることが考えられる。低剪断層は、主として添加された上記の各元素やそれらの化合物(硫化物)、非晶質炭素のうちのグラファイト等の低剪断材料から構成され、非晶質炭素膜とは構造の異なる層である。硬質な非晶質炭素膜の表面に剪断抵抗の低い低剪断層が形成されることにより、本発明の摺動部材は、優れた摺動特性を示す。すなわち、上記の非晶質炭素膜が表面に形成された摺動部材であれば、単一層であっても、優れた耐焼付き性と低摩擦係数との双方に優れた摺動部材が得られる。
また、非晶質炭素膜は、Ag、Mg、In、Sn、Si、ZrおよびCuのうちの少なくとも1種からなる金属元素を含む。これらの金属元素は、摺動部材に一般的に用いられる金属材料、たとえば、Fe等と相溶しにくい金属である。したがって、上記の金属元素を含む非晶質炭素膜と、Fe等を含む金属材料からなる相手材の表層部と、が摺動する場合に、凝着が生じにくくなる。さらに、凝着が生じることによって発生する摩耗も抑制される。
本発明の摺動部材をより詳細に説述するために、以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の摺動部材は、基材と、基材の表面に形成され相手材と摺動する非晶質炭素膜と、を備える。基材は、各種装置の摺動部品であれば形状等に特に限定はないが、金属製であるのが好ましい。たとえば、鉄や鋼、アルミニウムやMg、Cu、Zn、Si、Mn等を含むアルミニウム合金、銅やZn、Al、Sn、Mn等を含む銅合金などが好ましい。
そして、基材は、特に、圧縮機の摺動部品であるのが好ましい。すなわち、本発明の摺動部材は、圧縮機の摺動部材とすることができる。たとえば、本発明の摺動部材は、斜板式圧縮機の斜板に用いることができる。また、本発明の摺動部材は、圧縮機のシューに用いることができる。斜板式圧縮機の斜板とシューとは、潤滑油がないドライ状態で相互に摺動する場合がある。このような非常に厳しい無潤滑状態で摺動する場合であっても、焼付き等を起こさないことが望まれる。本発明の摺動部材を斜板式圧縮機の斜板やシュー等に用いることで、斜板式圧縮機に要求される条件を十分に満たすことができる。
上記の他、圧縮機の駆動軸を支持する軸受にも用いることができる。また、ピストン式圧縮機の駆動軸に一体的に軸支されると共に駆動軸をピストン式圧縮機のハウジングに回転可能に枢支され駆動軸と同期回転することで圧縮室と吸入圧力領域との間のガス通路を開閉可能とするロータリーバルブや、ピストン式圧縮機のピストンに用いることもできる。
そして、非晶質炭素膜は、上記基材の表面に形成され相手材と摺動する。非晶質炭素膜は、0.5〜20at%の金属元素と、1〜10at%のMoおよび/またはWと、1〜20at%のSと、を含み残部が実質的にCからなる。
金属元素は、Ag、Mg、In、Sn、Si、ZrおよびCuのうちの少なくとも1種からなる。これらの金属元素は、摺動部材に一般的に用いられる金属材料と相溶しにくい。したがって、上記の金属元素を含む非晶質炭素膜と相手材とが摺動する場合に、凝着が生じにくくなる。特に、相手材は、少なくともその表層部が、非晶質炭素膜と摺接する表面をもち主としてFeまたはNiを含む金属材料からなる場合が多い。FeやNiは、Zn、Al、Au、Pt、Nb、Cr、Co等とは相溶しやすいが、上記の金属元素とは相溶しにくい。これらの元素から選ばれる金属元素を含む非晶質炭素膜であれば、相手材との凝着が抑制される。なかでも、金属元素は、Agおよび/またはMgであるとよい。
上記の金属元素の含有量は、0.5〜20at%である。含有量が20at%を超えると、非晶質炭素膜の強度が低下したり、金属元素の酸化が非晶質炭素膜の性能に影響する。10at%以下が好適である。一方、含有量が0.5at%未満では、金属元素の添加により生じる摺動特性の向上効果が発揮されない。1at%以上が好適である。
Moおよび/またはWの含有量は、1〜10at%である。また、Sの含有量は、1〜20at%である。Moおよび/またはW、Sの合計の含有量が30at%を超えると非晶質炭素膜の強度が低下したり、相手材への移着や凝着が起こりやすくなる。Moおよび/またはW、Sの合計の含有量は、15at%以下が好適である。この場合、Moおよび/またはWの含有量は5at%以下、Sの含有量は10at%以下が好適である。一方、Moおよび/またはW、Sの合計の含有量が2at%未満では、これらの元素の添加により生じる摺動特性の向上効果が発揮されない。3at%以上が好適である。この場合、Moおよび/またはWの含有量は1at%以上、Sの含有量は2at%以上が好適である。
なお、非晶質炭素膜では、ほとんどのMoおよび/またはWとSとは、MoS2 やWS2 の硫化物分子となって非晶質炭素中に分散される。そのほかにも、完全に結合していない原子も存在することがあるため、必ずしも、「Moおよび/またはWの含有量」:「Sの含有量」が1:2とはならない。これは、後述の成膜方法に起因する。「Moおよび/またはWの含有量」:「Sの含有量」は、1:2が好適である。
さらに、非晶質炭素膜は、水素(H)を含んでもよい。Hを含む非晶質炭素膜は、耐焼付き性に優れ、低摩擦係数を示す。Hの含有量は、0〜30at%であるのが好ましい。30at%を超えると、非晶質炭素からなる非晶質炭素膜の強度が低下するだけでなく、成膜が困難となる。5〜20at%であればさらに好適である。
炭素を主成分とする非晶質炭素膜は、耐摩耗性、固体潤滑性などの摺動特性に優れる。本発明では、既に説明したように、非晶質炭素膜に所定の元素を所定量添加することで、摺動特性をさらに向上させている。各元素は、上記の金属元素や硫化物もしくは各元素がそれぞれクラスターを形成して非晶質炭素膜中に分散していると考えられる。金属元素クラスターや硫化物クラスター、さらにはグラファイトのクラスターが膜中に存在することで、低剪断材料としての効果が現れやすく、摺動特性が向上する。この際、100nm以下の金属元素や硫化物のクラスターが分散した非晶質炭素膜が形成されるようにすると好ましい。クラスターの大きさが100nmを超えると非晶質炭素膜の強度が低下するため好ましくない。
非晶質炭素膜は、物理的作用により固体の原料を蒸気化することで基材の表面に皮膜を形成する物理的蒸着(PVD)法によって成膜することができる。たとえば、非晶質炭素膜は、上記の金属元素からなる金属元素ターゲットと、二硫化モリブデンターゲットおよび/または二硫化タングステンターゲットと、炭素ターゲットと、を放電させるスパッタリング法によって得られる蒸着膜であるとよい。スパッタリング法では、アルゴンなどの不活性ガスを電界で加速してターゲットに照射することでターゲットの表面の原子や分子を弾き出す。この不活性ガスと共に原料ガスとして炭化水素ガスを導入し、ターゲットの放電により炭化水素ガスを分解させてもよい。この方法によれば、Hを含有量する非晶質炭素膜が容易に得られる。炭化水素ガスとしては、メタン、エチレン、アセチレンなどが使用可能である。なお、スパッタリング法以外のPVD法であっても炭化水素ガスを用いることができる。また、炭化水素ガスを使用すれば、炭素ターゲットを用いなくとも非晶質炭素膜の成膜が可能である。
非晶質炭素膜が形成される基材の表面をもつ表面部は、各種表面硬化処理により硬化された硬化層であってもよい。硬化層は、鋼製の基材であれば、高周波焼入れによって形成される表面硬化層や、浸炭処理および/または窒化処理によって形成される炭化層、窒化層または炭窒化層などが挙げられる。また、アルミニウム系の基材であれば、アルマイト処理やニッケル−リン合金めっき、ニッケル−ボロンめっき、ニッケル−リン−テフロンめっき等を施してもよい。
本発明の摺動部材は、通常用いられている各種装置の摺動部の少なくとも一方であればよい。したがって、本発明の摺動部材の非晶質炭素膜と摺接する相手材にも特に限定はない。本発明の摺動部材の相手材としては、鉄や鋼、アルミニウムやMg、Cu、Zn、Si、Mn等を含むアルミニウム合金、銅やZn、Al、Sn、Mn等を含む銅合金などが好ましい。また、アルミニウムやアルミニウム合金であれば、ニッケル−リン合金、ニッケル−ボロン、ニッケル−リン−テフロンなどのめっきやCuやZnなどを主成分とする溶射膜を形成する他、アルマイト処理が施されていてもよい。特に、斜板式圧縮機では、鋼製のシューやアルミニウム合金製であって摺接面にNi−Pめっきが施されたシューが使用されることがある。本発明の摺動部材は、このようなシューを相手材とした斜板式圧縮機の斜板として好適に用いられる。
なお、本発明の摺動部材は、上記の実施の形態に限定されるものではない。たとえば、本発明の摺動部材の効果を損なわない程度であれば、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下、本発明の摺動部材の実施例を、図1を用いて比較例とともに具体的に説明する。
[非晶質炭素膜の成膜]
直径100mm厚さ6mmの基材(軸受け鋼(SUJ2)、表面粗さ:0.1〜0.2μmRa(JIS))を準備した。この基材に、アンバランスド・マグネトロンスパッタリング(UBMS)法により非晶質炭素膜を形成した。以下に、成膜方法を説明する。
成膜装置として、アンバランスド・マグネトロンスパッタリング装置(以下、UBMS装置と記載)を用いた。UBMS装置には、チャンバー内に1個の二硫化モリブデン(MoS2 )ターゲットと、MoS2 ターゲットと対向する1個の銀(Ag)ターゲットと、互いに対向する2個の黒鉛ターゲットをマグネトロンに載置し、配列させた。4個のターゲットは、それらの放電面が全て内側を向くように、黒鉛ターゲット、MoS2 ターゲット、黒鉛ターゲット、Agターゲット、の順に、等間隔にリング状に配列された。UBMS装置では、マグネトロンは、閉鎖磁界を形成するように、隣接するマグネトロンは異なる極性となっている。また、各ターゲットは、電源装置により、それぞれ独立に作動させて放電させることができる。
このUBMS装置に基材を載置した。基材は、チャンバーの中央に保持した。すなわち、放電面を基材側に向けた4個のターゲットが基材の周囲に位置した。
チャンバー内を到達真空度が3×10-4Paまで排気した。つぎに、チャンバー内にアルゴンガスを供給し、成膜前の前処理としてイオンボンバード処理を行い、基材の表面をエッチングした。イオンボンバード処理の後、チャンバー内にアルゴンガスと共にメタンガスを供給し、チャンバー内の真空度を0.5Paに調整した。なお、供給されるアルゴン流量は20sccm(standard cc/min)、メタン流量は20sccmとした。そして、4つのターゲットを所定の電力で同時にグロー放電させた。その間、基材の被成膜面が、各ターゲットの放電面と平行となるように、基材を自転させながら成膜を行った。
それぞれのターゲットに供給する電力を200〜500Wの範囲で調節することにより、表1に記載の皮膜組成を有する皮膜1〜皮膜5が基材の表面に成膜された。また、Agターゲットをマグネシウム(Mg)ターゲットに変更した他は、皮膜2と同様にして皮膜6を基材の表面に成膜した。また、メタンガスを使用しない他は、皮膜2と同様にして皮膜7を基材の表面に成膜した。また、比較例として、黒鉛ターゲットのみを放電させて成膜した皮膜8、黒鉛ターゲットおよびAgターゲットを放電させて成膜した皮膜9、黒鉛ターゲットおよびMoS2 ターゲットを放電させて成膜した皮膜10、を基材の表面に成膜した。
なお、本成膜方法によれば、基材を自転させることにより、各ターゲットから弾き出されたC、AgまたはMg、MoおよびSが、順に、非晶質炭素や硫化物などの形態で微視的に基材の表面に積層されるため、各成分が厚さ方向に均質に分布した非晶質炭素膜が得られた。
Figure 0004683288
各皮膜のAg、Mg、MoおよびSの含有量は、オージェ電子分光法(AES)により検出した。また、皮膜7を除く各皮膜のH量は8〜12at%であり、残部はCであった。
[摺動部材の評価]
上記の皮膜1〜皮膜10を表面に形成した摺動部材A〜Lについて、摺動特性を評価した。試験装置を図1に示す。図1に示すように、回転軸22が同軸的に固定された基材20を、台座部26に固定された相手材25の上面で軸回りに回転させて、非晶質炭素膜21(皮膜1〜皮膜10のいずれか)の皮膜面211とシュー25の上面251とを摺動させた。相手材25としては、軸受鋼(SUJ2)からなるシュー、または、アルミニウム合金からなりその上面251にNi−Pめっき(厚さ:20μm)を施したシューを用いた。
試験は、油槽Tを用いない無潤滑焼き付き試験と、油槽Tに冷凍機油Oを満たして行うオイル潤滑試験と、の2種類を行った。無潤滑焼き付き試験では、滑り速度7m/s、荷重2000Nとし、荷重2000Nに到達してから焼き付きが発生するまでの時間を測定した。オイル潤滑試験では、滑り速度10m/s、荷重5000Nとし、荷重5000Nに到達直後の摩擦係数を測定した。相手材の種類(材質)と共に、結果を表2に示す。
Figure 0004683288
C、AgまたはMg、Mo、Sを含む皮膜1〜皮膜7のいずれかをもつ摺動部材A〜Hは、150秒まで焼き付きが発生せず、耐焼き付き性に優れた摺動部材であった。また、摺動部材A〜Hの摩擦係数は、0.01を超えることなく、低摩擦係数を示した。一方、AgおよびMg、MoおよびSのいずれか一方のみを含む皮膜9および皮膜10、また、これらの元素を含まない皮膜8をもつ摺動部材I〜Lでは、摺動部材A〜Hに比べ、耐焼き付き性が低く、摩擦係数も高かった。
Ag含有量が異なる皮膜1〜皮膜3のいずれかをもつ摺動部材A、BおよびDは、耐焼付き性に優れ、低摩擦係数を示した。摺動部材Aでは、皮膜1のAgの含有量が1at%であり、摺動特性の向上効果が十分に発揮された。一方、摺動部材Dでは、摺動特性の向上効果は見られるものの、耐焼付き性が摺動部材AやBに劣るため、20at%を超える金属元素の添加は、望ましい摺動特性を示さないと考えられる。
摺動部材Bに形成された皮膜2と、摺動部材Eに形成された皮膜4と、摺動部材Fに形成された皮膜5と、ではMoおよびSの含有量が異なる。摺動部材Eでは、皮膜4のMoの含有量が1at%、Sの含有量が1.6at%であり、摺動特性の向上効果が十分に発揮された。また、摺動部材Fでは、皮膜5のMoの含有量が10at%、Sの含有量が16at%で、摺動特性の向上効果が十分に発揮された。
摺動部材Bに形成された皮膜2と、摺動部材Gに形成された皮膜6と、では添加した金属元素の種類が異なる。金属元素をAgからMgに変更しても、優れた摺動特性をもつ摺動部材が得られた。また、摺動部材Bに形成された皮膜2はメタンガスを導入して成膜した皮膜、摺動部材Hに形成された皮膜7はメタンガスを使用しないで成膜した非晶質炭素膜である。すなわち、皮膜2は水素を含むが、皮膜7は水素を含まない。いずれの摺動部材も、優れた耐焼付き性と低摩擦係数を示したが、摺動部材Bは、特に優れた摺動特性を示した。
ともに皮膜2をもつ摺動部材Bと摺動部材C、ともに皮膜8をもつ摺動部材Iと摺動部材J、では、それぞれ相手材の種類が異なる。どちらの皮膜も、SUJ2からなるシューに比べて、Ni−Pめっきを施したシューで摺動特性が低下したが、皮膜2をもつ摺動部材Cでは、198秒まで焼付きが発生せず、高い摺動特性を示した。
摺動部材A〜Lの摺動特性の評価に用いた試験装置を説明する断面図である。
符号の説明
20:基材
21:非晶質炭素膜 211:皮膜面
25:相手材 251:上面

Claims (9)

  1. 基材と、該基材の表面に形成され相手材と摺動する非晶質炭素膜と、を備える摺動部材であって、
    前記非晶質炭素膜は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、インジウム(In)、錫(Sn)、珪素(Si)、ジルコニウム(Zr)および銅(Cu)のうちの少なくとも1種からなる0.5〜20at%の金属元素と、1〜10at%のモリブデン(Mo)および/またはタングステン(W)と、1〜20at%の硫黄(S)と、を含み残部が実質的に炭素(C)からなることを特徴とする摺動部材。
  2. 前記非晶質炭素膜に含まれるMoおよび/またはWの少なくとも一部と該非晶質炭素膜に含まれるSの少なくとも一部とは、二硫化モリブデンおよび/または二硫化タングステンを構成する請求項1に記載の摺動部材。
  3. さらに、前記非晶質炭素膜は、水素(H)を含む請求項1記載の摺動部材。
  4. 前記金属元素は、Agおよび/またはMgである請求項1記載の摺動部材。
  5. 前記非晶質炭素膜は、前記金属元素からなる金属元素ターゲットと、二硫化モリブデンターゲットおよび/または二硫化タングステンターゲットと、炭素ターゲットと、を放電させるスパッタリング法により成膜された蒸着膜である請求項1記載の摺動部材。
  6. さらに、炭化水素ガスを前記放電により分解する請求項5記載の摺動部材。
  7. 前記相手材は、少なくともその表層部が、前記非晶質炭素膜と摺接する表面をもち主として鉄(Fe)またはニッケル(Ni)を含む金属材料からなる請求項1記載の摺動部材。
  8. 前記基材は、圧縮機の摺動部品である請求項1〜7のいずれかに記載の摺動部材。
  9. 前記基材は斜板式圧縮機の斜板、前記相手材はシューである請求項8記載の摺動部材。
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