ところで、例えば見学者が一方向に移動する見学者通路等において、上述した局所空調が利用されている。この種の見学者通路には、複数の見学エリアが順に設けられている。そして、各見学エリアが局所空調の対象領域になる。このような見学者通路等では、見学者の快適性を考慮して、常に見学エリアを所定の温度等に維持するため、全ての見学エリアにおいて一斉に局所空調が行われている。したがって、見学者が居ない見学エリアに対しても空調が行われるため、無駄な消費エネルギーが発生するという問題があった。
そこで、全ての見学エリアを一斉に空調するのではなく、見学者が居る見学エリアを空調すると共に、その見学者が次に移動する直近の見学エリアを予め空調しておくという方法が考えられる。これにより、見学者が移動したときには所定温度になっており見学者の快適性を損なうことはなく、一部の見学エリアだけを空調すればよいため消費エネルギの削減を図ることができる。しかしながら、この場合でも、消費エネルギを大幅に削減することはできなかった。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、人が一方向に移動する通路に順に配設される複数の空調エリアを空調する空気調和システムにおいて、快適性を損なうことなく省エネ性を向上させることである。
第1の発明は、見学者が一方向に移動する見学者通路に順に配設された複数の見学エリア毎に排気および調和空気の給気を行う給排気手段(20)を備え、少なくとも見学者が見学している第1の見学エリアおよびその次の第2の見学エリアを空調対象として給排気手段(20)による給排気を行う空気調和システムを前提としている。そして、本発明は、見学者が上記第1の見学エリアから次の第2の見学エリアへ移動する際、上記空調対象の見学エリアの空気が上記空調対象の最前の見学エリアの次の見学エリアへ流れるように見学者通路の気流を制御する気流制御手段(50)を備えているものである。
上記の発明では、例えば工場内の見学者通路において、見学者が見学エリアを見学しながら順次移動する。給排気手段(20)は、少なくとも見学者が実際に見学している第1の見学エリアおよびその次の第2の見学エリアに対して給排気による空調(例えば、冷暖房)を行う。つまり、見学している見学エリアの次の見学エリアが予め冷暖房される。
そして、本発明では、見学者が第1の見学エリアから第2の見学エリアに移動する際、空調されていた見学エリアの空気が次に空調対象となる見学エリアへ流れる。例えば、見学している第1の見学エリアとその次の第2の見学エリアの2つのエリアが空調対象となる場合、第1および第2の見学エリアの空気が第2の見学エリアの次の第3の見学エリアに流れる。つまり、見学者の移動と共に、新たに空調対象となる見学エリアに冷気または暖気が流れる。その後、見学者が移動し終わると、新たに空調対象となった見学エリアの空調が行われる。このように、空調対象であった見学エリアの調和空気が利用されるので、新たに空調対象となる見学エリアの空調のための消費エネルギが削減される。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記気流制御手段(50)は、見学者が上記第1の見学エリアから次の第2の見学エリアへ移動する際、上記空調対象の最後尾の見学エリアでは給気のみが行われ、且つ、上記空調対象の先頭の見学エリアの次の見学エリアでは排気のみが行われるように上記給排気手段(20)を制御するように構成されているものである。
上記の発明では、空調対象の最後尾の見学エリアにおいて、給気のみが行われるため陽圧(正圧)傾向になる。一方、次に空調対象となる見学エリアにおいては、排気のみが行われるため陰圧(負圧)傾向になる。したがって、この圧力差により、空調対象の見学エリアの空気が次に空調対象となる見学エリアへ向かって流れる気流が発生する。これにより、見学者の移動と共に、冷気または暖気が新たに空調対象となる見学エリアに供給される。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記給排気手段(20)は、空調機(30)と、該空調機(30)から分岐して各見学エリアに接続される排気用の戻り側ダクト(23)および給気用の供給側ダクト(26)と、各見学エリアに対応する上記戻り側ダクト(23)および供給側ダクト(26)にそれぞれ設けられる開閉ダンパ(22,27)とを備えているものである。そして、上記気流制御手段(50)は、見学者が上記第1の見学エリアから第2の見学エリアへ移動する際、上記空調対象の最後尾の見学エリアでは供給側ダクト(26)の開閉ダンパ(27)のみを開状態にし、且つ、上記空調対象の先頭の見学エリアの次の見学エリアでは戻り側ダクト(23)の開閉ダンパ(22)のみを開状態にするものである。
上記の発明では、各見学エリアの空気が戻り側ダクト(23)を通じて空調機(30)へ流れる。空調機(30)では、空気が冷却または加熱されて調和空気となる。その調和空気は、供給側ダクト(26)を通じて各見学エリアに供給される。この空気調和システム(10)では、空調対象となる見学エリアに対してのみ、戻り側ダクト(23)および供給側ダクト(26)の両開閉ダンパ(22,27)が開状態になる。そして、見学者が移動する際、空調対象の最後尾の見学エリアにおいては戻り側ダクト(23)の開閉ダンパ(22)が閉状態に切り換えられ、新たに空調対象となる見学エリアにおいては戻り側ダクト(23)の開閉ダンパ(22)のみが開状態に切り換えられる。これにより、見学者の移動と共に、冷気または暖気が新たに空調対象となる見学エリアに供給される。
第4の発明は、上記第1乃至第3の何れか1の発明において、上記見学者通路の始端側に給気すると共に、上記見学者通路の終端側から排気する端部給排気手段(40)を備えているものである。さらに、上記気流制御手段(50)は、見学者が上記第1の見学エリアから次の第2の見学エリアへ移動する際、上記端部給排気手段(40)による給排気を行うように構成されているものである。
上記の発明では、見学者が移動する際、端部給排気手段(40)による給排気が行われる。そうすると、見学者通路において、始端側が陽圧傾向になり、終端側が陰圧傾向になる。そのため、この圧力差により、見学者通路において、始端側から終端側へ空気が流れる気流が発生する。これにより、見学者の移動と共に、空調対象の見学エリアの冷気または暖気が新たに空調対象となる見学エリアへ供給される。
第5の発明は、上記第4の発明において、上記端部給排気手段(40)は、上記見学者通路の終端側から排気した空気を始端側に給気するように構成されているものである。
上記の発明では、端部給排気手段(40)によって、見学者通路の終端側と始端側との間で空気が循環される。
第6の発明は、上記第1乃至第5の何れか1の発明において、上記各見学エリアに設けられ、見学者を検知する人検知センサ(D1〜D7)を備えている。そして、上記気流制御手段(50)は、見学者が上記第2の見学エリアの人検知センサ(D1〜D7)が検知してから所定時間の間は見学者が上記第1の見学エリアから第2の見学エリアへ移動していると判断するものである。
上記の発明では、見学者が第1の見学エリアからその次の第2の見学エリアへ移動すると、先頭の見学者が第2の見学エリアの人検知センサ(D1〜D7)によって検知される。そして、検知してから所定時間が経過するまで、即ち先頭の見学者が次の見学エリアに移動してから最後の見学者が移動し終わるまで、空調対象の見学エリアの冷気または暖気が新たに空調対象となる見学エリアへ供給される。検知してから所定時間が経過すると、新たに空調対象となった見学エリアの空調が行われる。
第7の発明は、上記第1乃至第6の何れか1の発明において、上記空調対象は、上記第1の見学エリアおよび第2の見学エリアと、上記第1の見学エリアの手前の見学エリアである。
上記の発明では、見学者が居る見学エリアだけでなくその前後の見学エリアも空調されるため、見学者が居る見学エリアに調和されていない空気が侵入するのを防止できる。
以上のように、本発明によれば、見学者の移動時に、空調対象の見学エリアの調和空気を新たに空調対象となる見学エリアへ流すようにした。つまり、今まで用いていた調和空気を利用するようにした。したがって、新たに空調対象となった見学エリアにおいて、いちから空調しなくてもよいので、空調エネルギを削減することができる。さらに、いちから空調しなくてもよいため、新たな見学エリアをいち早く設定温度に到達させることができる。これにより、見学者の移動速度が早い場合においても見学者の快適性を損なうことはない。
また、第2の発明によれば、見学者の移動時に、空調対象の最後尾の見学エリアでは給気のみを、新たに空調対象となる見学エリアでは排気のみをそれぞれ行うようにした。したがって、空調対象の見学エリアと新たに空調対象となる見学エリアとの間に圧力差を形成し、空調対象の見学エリアから新たな見学エリアへ向かう気流の流れを簡易に発生させることができる。これにより、空調していたエリアの調和空気を新たな見学エリアへ確実に流すことができる。その結果、空調エネルギの削減および見学者の快適性向上を確実に図ることができる。
また、第3の発明によれば、各見学エリア毎に排気用の開閉ダンパ(22)と給気用の開閉ダンパ(27)を設けて、見学者が次の見学エリアに移動する際に、最後尾の見学エリアでは給気用の開閉ダンパ(27)のみを開状態にし且つ先頭の見学エリアの次の見学エリアでは排気用の開閉ダンパ(22)のみを開状態に設定するようにした。したがって、簡易且つ確実に、空調対象の見学エリアと新たに空調対象となる見学エリアとの間に圧力差を発生させて、後方の見学エリアから新たな見学エリアへ調和空気を移動させることができる。このように、各見学エリアの開閉ダンパ(22,27)を切り換えるだけでよいため、簡易な制御システムを構成することができる。
また、第4の発明によれば、見学者の移動時に、見学者通路において、始端側に給気すると共に、終端側から排気するようにした。したがって、見学者通路において、始端側と終端側との間に圧力差を形成し、始端側から終端側へ向かう気流の流れを簡易に発生させることができる。これにより、空調していたエリアの調和空気を新たな見学エリアへ確実に流すことができる。その結果、空調エネルギの削減および見学者の快適性向上を確実に図ることができる。
また、第5の発明によれば、見学者通路の終端側から排気した空気を始端側に給気するようにした。つまり、本発明は、見学者通路において終端側から始端側へ空気を循環させるようにした。これにより、調和空気またはそれに近い空気を見学者通路に再供給することになるので、新たに室外の空気を始端側に給気する場合に比べて、空調エネルギを大幅に削減することができる。
また、第6の発明によれば、各見学エリアに人検知センサ(D1〜D7)を設け、人検知センサ(D1〜D7)が検知してから所定時間が経過するまで、見学者が移動中であると判断するようにした。したがって、確実に見学者の移動中において、空調していたエリアの調和空気を新たな見学エリアへ流し続けることができる。これにより、見学者が移動し終わるまでの間できるだけ調和空気を新たな見学エリアへ供給することができる。その結果、見学者の快適性を損なうことなく、省エネを向上させることができる。
また、第7の発明によれば、見学者が居る見学エリアだけでなくその前後の見学エリアも空調対象にしたので、見学者が居る見学エリアに他の見学エリアから調和されていない空気が侵入するのを防止することができる。これにより、空調エネルギの一層の削減を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態は、工場等における見学者通路の空調を行うための空気調和システム(10)である。この見学者通路は、見学者が入口側から出口側へ(図1において左側から右側へ)一方向に移動する通路である。具体的に、この見学者通路は、一端側に見学者の入口エリアが、他端側に見学者の出口エリアがそれぞれ形成されている。そして、入口エリアと出口エリアの間には、通路方向に沿って複数の見学エリア(本実施形態では、見学エリア1〜見学エリア7)が順に並んでいる。つまり、見学者は、入口エリアから、見学エリア1、見学エリア2、・・・見学エリア7を順に移動して、出口エリアから出ていく。
上記空気調和システム(10)は、空気の循環系統である第1循環系統(20)および第2循環系統(40)と、制御手段であるコントローラ(50)とを備えている。なお、第1循環系統(20)および第2循環系統(40)は、それぞれ本発明に係る給排気手段および端部給排気手段を構成している。
〈第1循環系統の構成〉
上記第1循環系統(20)は、空調機(30)と、戻り側ダクト(23)および供給側ダクト(26)と、開閉ダンパとしての排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)と、排気口(21)および給気口(28)とを備えている。
上記排気口(21)および給気口(28)は、1組となって各見学エリアに設けられている。戻り側ダクト(23)の一端は、空調機(30)に接続され、他端は、分岐して各見学エリアの排気口(21)に接続されている。供給側ダクト(26)の一端は、空調機(30)に接続され、他端は、分岐して各見学エリアの給気口(28)に接続されている。
上記空調機(30)には、熱交換器(31)およびブースタファン(32)が設けられている。
上記熱交換器(31)は、空調機(30)の外部に配設された熱源回路(33)に接続されている。この熱源回路(33)は、熱媒流体(例えば、冷媒やブライン等)が流れる。そして、熱交換器(31)は、空気が熱源回路(33)の熱媒流体と熱交換する空気熱交換器を構成している。例えば、冷房運転の場合は、熱媒流体が空気から吸熱して空気が冷却され、暖房運転の場合は、熱媒流体が空気へ放熱して空気が加熱される。また、熱源回路(33)には、熱媒流体の流量を調整するための調整バルブ(34)が設けられている。この調整バルブ(34)の開度を変更することにより、熱交換器(31)における冷却能力または加熱能力が調整される。
上記ブースタファン(32)は、戻り側ダクト(23)から空気を吸い込み、熱交換器(31)で熱交換した空気(調和空気)を供給側ダクト(26)へ吹き出すように構成されている。これにより、各見学エリアの空気が排気口(21)から吸い込まれて空調機(30)へ流れる一方、空調機(30)からの調和空気が給気口(28)を通じて各見学エリアに供給される。また、ブースタファン(32)は、風量可変に構成されている。
上記排気ダンパ(22)は、各見学エリアに対応する戻り側ダクト(23)の各分岐ダクトに設けられている。給気ダンパ(27)は、各見学エリアに対応する供給側ダクト(26)の各分岐ダクトに設けられている。排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)は、全閉から全開に亘って開度可変に構成されている。つまり、排気ダンパ(22)の開度変更によって排気口(21)の吸い込み風量が調整され、給気ダンパ(27)の開度変更によって給気口(28)の吹き出し風量が調整される。
また、上記戻り側ダクト(23)の空調機(30)寄り(即ち、合流ダクト)には、流通空気の温度を検出する温度検出手段としての温度センサ(24)が設けられている。供給側ダクト(26)の空調機(30)寄り(即ち、合流ダクト)には、流通空気の風速を検出する風速検出手段としての風速センサ(25)が設けられている。この風速センサ(25)の検出信号は、ブースタファン(32)に送信される。ブースタファン(32)は、その送信された風速が設定風速になるように自己の吹出風速を調整する。
〈第2循環系統の構成〉
上記第2循環系統(40)は、ラインファン(44)と、戻り側ダクト(43)および供給側ダクト(46)と、排気口(41)および給気口(48)とを備えている。
上記排気口(41)は出口エリアに設けられ、給気口(48)は入口エリアに設けられている。戻り側ダクト(43)は、ラインファン(44)と出口エリアの排気口(41)との間に接続されている。供給側ダクト(46)は、ラインファン(44)と入口エリアの給気口(48)との間に接続されている。なお、入口エリアおよび出口エリアは、それぞれ本発明に係る見学者通路の始端側および終端側を構成している。
また、上記戻り側ダクト(43)の排気口(41)寄りには、排気ダンパ(42)が設けられ、供給側ダクト(46)の給気口(48)寄りには、給気ダンパ(47)が設けられている。これら排気ダンパ(42)および給気ダンパ(47)は、開度可変に構成されているが、本実施形態では一定の開度に固定されている。
上記ラインファン(44)は、戻り側ダクト(43)から空気を吸い込み、供給側ダクト(46)へ吹き出すように構成されている。これにより、出口エリアの空気が排気口(41)から吸い込まれ、給気口(48)から入口エリアへ供給される。つまり、入口エリアと出口エリアの間を空気が循環するようになっている。このラインファン(44)は、風量可変に構成されている。
また、上記供給側ダクト(46)のラインファン(44)寄りには、流通空気の風速を検出する風速検出手段としての風速センサ(45)が設けられている。この風速センサ(45)の検出信号は、ラインファン(44)に送信される。ラインファン(44)は、その送信された風速が設定風速になるように自己の吹出風速を調整する。
〈コントローラ等の構成〉
上記空気調和システム(10)は、8つの人検知センサ(DE,D1〜D7)を備えている。入口用人検知センサ(DE)は、入口エリアに設けられ、第1〜第7人検知センサ(D1〜D7)は、それぞれ見学者エリア1〜7に設けられている。これら人検知センサ(DE,D1〜D7)は、各エリアの出口側寄りに設けられ、見学者の存在を検知する人検知手段を構成している。
上記コントローラ(50)は、ファン制御部(51)と、ダンパ制御部(52)と、バルブ制御部(53)と、タイマ部(54)とを備え、本発明に係る気流制御手段を構成している。
上記ファン制御部(51)は、ブースタファン(32)およびラインファン(44)の発停制御および風量制御を行うものである。そして、ファン制御部(51)は、本発明の特徴として、見学者が次の見学エリアへ移動するときに、ラインファン(44)を所定時間の間駆動するように構成されている。
上記ダンパ制御部(52)は、第1循環系統(20)の排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)の開度制御を行うものである。そして、ダンパ制御部(52)は、本発明の特徴として、見学者が見学している間、基本的に見学者が居る見学エリアとその両隣の見学エリアの3つのエリアを対象エリアとする。つまり、見学者が移動していない間は、見学者の居る見学エリアを含めた対象エリアの排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)のみが開状態になる。
また、上記ダンパ制御部(52)は、見学者が次の見学エリアへ移動するときは、排気ダンパ(22)と給気ダンパ(27)とで、対象エリアが異なる。給気ダンパ(27)については、移動する前の対象エリアがそのまま対象となり、排気ダンパ(22)については、移動前の対象エリアから1つ出口側へずれた3つの見学エリアが新たな対象エリアになる。つまり、見学者の移動時において、排気ダンパ(22)が開状態になる3つの見学エリアは、給気ダンパ(27)が開状態になる3つの見学エリアとはエリア1つだけ前側(出口側)へずれている。これにより、隣接する4つの見学エリアが対象エリアになるが、そのうち、最前(最も出口側)の見学エリアでは排気のみが行われ、最後(最も入口側)の見学エリアでは給気のみが行われる。したがって、最前の見学エリアでは陰圧になり、最後の見学エリアでは陽圧になり、対象エリアにおいて入口側から出口側へ向かう気流の流れを発生させることができる。
上記バルブ制御部(53)は、熱源回路(33)の調整バルブ(34)の開度制御を行うものである。具体的に、バルブ制御部(53)は、温度センサ(24)の検出温度が設定温度になるように調整バルブ(34)の開度を制御して熱交換器(31)の冷却能力または加熱能力を調整している。
上記タイマ部(54)は、見学者の移動時に、タイマをカウントするものである。ファン制御部(51)およびダンパ制御部(52)は、タイマ部(54)のカウント値に基づいて制御を行う。
−空調制御の動作−
上述した空気調和システム(10)の制御動作について、図2から図9を参照しながら詳細に説明する。なお、図2から図9は、入口エリアおよび出口エリアを省略している。
この空気調和システム(10)は、冷房運転および暖房運転が切換可能になっている。また、空気調和システム(10)は、冷房運転および暖房運転において、見学者が入口エリアに入る前と見学者が見学エリアで見学している間行う「通常運転モード」と、見学者が見学エリア間を移動している場合に行う「移動運転モード」とが切り換えられる。なお、冷房運転および暖房運転の何れにおいても制御動作は同じであるため、ここでは、代表して冷房運転の場合について説明する。
先ず、図示しないが、見学者が入口エリアに入る前に、コントローラ(50)によって空気調和システム(10)が「通常運転モード」で運転開始される。これにより、予め見学エリア1〜3の3つのエリアにおいて冷房が行われる。この段階では、この3つの連続する見学エリア1〜3が空調対象となる。
具体的に、この通常運転モードでは、ダンパ制御部(52)によって、見学エリア1〜3の排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)が開状態に設定され、それ以外の排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)が閉状態に設定される。なお、第2循環系統(40)の排気ダンパ(42)および給気ダンパ(47)は一定開度に設定されている。この状態で、ファン制御部(51)によって、ブースタファン(32)が駆動される。ラインファン(44)は停止したままである。第1循環系統(20)において、見学エリア1〜3の空気は、排気口(21)から戻り側ダクト(23)を通じて空調機(30)に流入する。流入した空気は、熱交換器(31)で熱媒流体と熱交換して冷却される。冷却後の空気は、供給側ダクト(26)を通じて給気口(28)から見学エリア1〜3へ吹き出す。これにより、見学エリア1〜3の冷房(局所冷房)が行われる。
次に、図2に示すように、見学者が入口エリアから見学エリア1へ入ると、第1人検知センサ(D1)によって検知される。この状態では、未だ見学エリア1〜3を対象として上述した通常運転モードの冷房が継続して行われる。そして、図3に示すように、見学者は、見学エリア1で見学した後、見学エリア2へ移動し、第2人検知センサ(D2)によって検知される。この状態においても、見学エリア1〜3を対象として上述した通常運転モードの冷房が継続して行われる。このように、見学者が入口エリアから見学エリア2に順に移動するまで、上述した通常運転モードが継続される。
続いて、図4に示すように、見学者が見学エリア3へ移動し、第3人検知センサ(D3)によって検知されると、コントローラ(50)によって「通常運転モード」から「移動運転モード」へ変更される。
具体的に、この移動運転モードでは、ファン制御部(51)によって、ラインファン(44)が駆動される。ブースタファン(32)は継続して駆動し続ける。さらに、ダンパ制御部(52)によって、見学エリア1の排気ダンパ(22)が閉状態に設定される一方、見学エリア4の排気ダンパ(22)が開状態に設定される。また、見学エリア2および3の排気ダンパ(22)と、見学エリア1〜3の給気ダンパ(27)は、何れも開状態のままで維持される。つまり、この移動運転モードでは、第1循環系統(20)において、排気の対象エリア(見学エリア2〜4)が給気の対象エリア(見学エリア1〜3)に比べてエリア1つだけ出口側にずれる。
この状態では、見学エリア1において給気のみが行われ、見学エリア4において排気のみが行われる。これにより、見学エリア1では陽圧(正圧)傾向になり、見学エリア4では陰圧(負圧)傾向になる。そうすると、見学エリア1の空気が見学エリア4へ向かって流れる。つまり、見学エリア1から見学エリア4へ向かう気流の流れが発生する。したがって、見学者の移動と共に、これまで冷房されていた見学エリア1〜3の冷気が見学エリア4へ供給されることになる。そのため、見学者が入る前に予め先の見学エリア4を予冷することができる。さらに、見学エリア1〜3の冷気を移動させて予冷するため、即ち見学エリア1〜3の冷気を利用して予冷するので、空調機(30)の消費エネルギを削減することができる。
さらに、ラインファン(44)の駆動により、第2循環系統(40)において空気が循環する。具体的に、第2循環系統(40)において、出口エリアの空気が排気口(41)から吸い込まれ、給気口(48)から入口エリアに吹き出す。そうすると、見学者通路の全体において、入口エリアから出口エリアに向かう気流の流れが発生する。これにより、上述した見学エリア1〜3から見学エリア4への冷気の流れが助長される。したがって、見学エリア4の予冷を速やかに行うことができる。
一方、見学者が第3人検知センサ(D3)によって検知されると、タイマ部(54)のカウントがスタートする。つまり、通常運転モードから移動運転モードへの変更と同時に、タイマ部(54)が開始される。そして、所定時間(例えば、20秒)が経過すると、移動運転モードから再び通常運転モードへ変更される。
また、図5に示すように、タイマ部(54)の開始から所定時間が経過する前に、見学者が見学エリア3から見学エリア4へ移動して第4人検知センサ(D4)により検知されると、そのまま移動運転モードが継続される。つまり、第3人検知センサ(D3)の検知から第4人検知センサ(D4)の検知までの時間が所定時間未満である場合、通常運転モードに変更されずに移動運転モードのまま維持される。また、ラインファン(44)は継続して駆動され、第2循環系統(40)における空気の循環が継続して行われる。なお、第4人検知センサ(D4)が検知すると、タイマ部(54)は一旦リセットされた後再スタートする。
具体的に、第1循環系統(20)において、見学エリア2〜4の給気ダンパ(27)が開状態に設定され、見学エリア3〜5の排気ダンパ(22)が開状態に設定される。つまり、第1循環系統(20)において、排気の対象エリア(見学エリア3〜5)が給気の対象エリア(見学エリア2〜4)に比べてエリア1つだけ出口側にずれる。この場合、見学エリア2においては給気のみが行われ、見学エリア5においては排気のみが行われる。したがって、見学エリア2から見学エリア5へ向かう気流の流れが発生し、見学者の移動と共に、見学エリア2〜4の冷気が見学エリア5へ供給される。ここで、上述したように見学エリア4は予冷されているため、見学者が入った際に不快感を感じることはなく快適に見学することができる。
同様に、第4人検知センサ(D4)の検知から所定時間が経過する前に、見学者が見学エリア5へ移動して第5人検知センサ(D5)により検知されると、そのまま移動運転モードが継続される。タイマ部(54)は、第5人検知センサ(D5)の検知と同時に、リセットされて再スタートする。つまり、図6に示すように、第1循環系統(20)において、見学エリア3〜5の給気ダンパ(27)が開状態に設定され、見学エリア4〜6の排気ダンパ(22)が開状態に設定される。この場合、見学エリア3においては給気のみが行われ、見学エリア6においては排気のみが行われる。したがって、見学エリア3から見学エリア6へ向かう気流の流れが発生し、見学者の移動と共に、見学エリア3〜5の冷気が見学エリア6へ供給される。これにより、見学エリア6が速やかに予冷される。
次に、図7に示すように、見学者が見学エリア5に移動してから所定時間を経過しても見学エリア6に移動しない場合は、移動運転モードから通常運転モードに変更される。つまり、第5人検知センサ(D5)の検知から所定時間が経過しても第6人検知センサ(D6)が検知しない場合は、通常運転モードに変更される。なお、タイマ部(54)は、所定時間の経過後リセットされて待機する。
この通常運転モードでは、第1循環系統(20)において、見学エリア4〜6の排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)が開状態に設定される。つまり、見学者が見学エリア5で見学している場合、見学エリア4〜6の3つが対象エリアとして冷房される。また、ラインファン(44)が停止され、第2循環系統(40)における空気の循環が停止される。ここで、見学エリア5および6は上述したように予冷されていることから、この運転モードによって見学エリア6の温度を速やかに設定温度まで到達させることができる。
続いて、見学者が見学エリア6に移動して第6人検知センサ(D6)により検知されると、図8に示すように、再び移動運転モードに変更され、タイマ部(54)がスタートする。つまり、見学エリア4〜6の給気ダンパ(27)が開状態に設定され、見学エリア5〜7の排気ダンパ(22)が開状態に設定される一方、ラインファン(44)が駆動される。これにより、見学エリア4〜6の冷気が見学エリア7に供給され、見学エリア7が速やかに予冷される。
そして、第6人検知センサ(D6)の検知から所定時間を経過するまでに、見学者が見学エリア7へ移動して第7人検知センサ(D7)により検知されると、図9に示すように、そのまま移動運転モードが継続される。具体的に、第1循環系統(20)において、見学エリア5〜7の給気ダンパ(27)が開状態に設定され、見学エリア6および7の排気ダンパ(22)が開状態に設定される。ラインファン(44)は継続して駆動される。この場合、見学エリア5においては給気のみが行われ、見学者通路全体において入口エリアから出口エリアへの空気の流れが発生するため、見学エリア5および6の冷気が見学エリア7へさらに供給される。したがって、見学エリア7へ移動した見学者の快適性が維持される。
見学者が見学エリア7に移動して所定時間を経過すると、通常運転モードに変更される。この場合は、図示しないが、第1循環系統(20)において、見学エリア6および7の排気ダンパ(22)および給気ダンパ(27)が開状態に設定される。また、第2循環系統(40)において、ラインファン(44)が停止される。これにより、見学エリア6および7において冷房が行われる。つまり、最終の見学エリアである見学エリア7に見学者が移動すると、そのエリアとその手前のエリアの2つが対象エリアとして空調される。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、見学者の移動時に、今まで冷房していた見学エリアの調和空気(冷気)を新たに空調対象となる見学エリアへ流すようにした。つまり、今まで用いていた調和空気を利用するようにした。したがって、新たに空調対象となった見学エリアにおいて、いちから空調しなくてもよいので、空調エネルギを削減することができる。さらに、いちから空調しなくてもよいため、新たな見学エリアをいち早く設定温度に到達させることができる。これにより、見学者の移動速度が早い場合においても見学者の快適性を損なうことはない。
また、本実施形態によれば、見学者の移動時に、見学者が居た見学エリアの手前の見学エリアでは給気のみを行い、新たに空調対象となる見学エリアでは排気のみを行うようにした。したがって、空調対象の見学エリアと新たに空調対象となる見学エリアとの間に圧力差を形成し、空調対象の見学エリアから新たな見学エリアへ向かう気流の流れを簡易に発生させることができる。これにより、空調していたエリアの調和空気を新たな見学エリアへ確実に流すことができる。その結果、空調エネルギの削減および見学者の快適性向上を確実に図ることができる。
さらに、本実施形態では、上記の制御と併せて第2循環系統(40)を駆動するようにしたので、見学者通路において入口エリアから出口エリアへ向かう気流の流れを簡易に発生させることができる。これにより、空調していたエリアの調和空気が新たな見学エリアへ流れるのを一層助長することができる。その結果、空調エネルギの削減および見学者の快適性向上を一層図ることができる。
また、本実施形態によれば、各見学エリアに人検知センサ(D1〜D7)を設け、人検知センサ(D1〜D7)が検知してから所定時間が経過するまで、移動運転モードを行うようにした。したがって、確実に見学者の移動中において、空調していたエリアの調和空気を新たな見学エリアへ流し続けることができる。これにより、見学者が移動し終わるまでの間できるだけ調和空気を新たな見学エリアへ供給することができる。その結果、見学者の快適性を損なうことなく、省エネを向上させることができる。
また、本実施形態では、見学者が居る見学エリアを中心にしてその前後の見学エリアも空調対象のエリアにするようにした。したがって、見学者が居る見学エリアに他の見学エリアから調和されていない空気が侵入するのを防止することができる。これにより、空調エネルギの一層の削減を図ることができる。
《その他の実施形態》
上述した実施形態については以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態では、移動運転モードにおいて、第1循環系統(20)および第2循環系統(40)の両方を用いて調和空気を新たな見学エリアへ流すようにしたが、本発明はこれに限らず、何れか一方のみを用いるようにしてもよい。
なお、上記実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。