JP4682982B2 - リグノセルロース材料からの繊維成分の製造およびその利用 - Google Patents

リグノセルロース材料からの繊維成分の製造およびその利用 Download PDF

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Description

本発明は、リグノセルロース材料から繊維成分を取り出して有用物質を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、リグノセルロース分解性がありかつセルロース分解性および/またはヘミセルロース分解性が抑制された微生物をリグノセルロース材料と接触させたのち、繊維化工程を経て繊維成分を取り出すことを含む、上記方法に関する。従って、本発明の方法は、省資源または省エネルギーに寄与するものであり、特に、紙パルプ原料からの紙パルプの製造や、バガスなどのリグノセルロース材料からの糖類の製造において、省資源または省エネルギー型の製造方法を提供する。
リグノセルロース材料から繊維成分を取り出す工程では、繊維間の結合に関与するリグニンやヘミセルロースの構造を機械的な力によって破壊するもしくはリグニンやヘミセルロースを選択的に化学的に溶解、分解することによって繊維成分を取り出すことが行われている。
紙パルプの製造工程も、木材やその他のリグノセルロース材料から機械的、化学的処理により、繊維間結合物質を切断または分解し、繊維成分であるパルプを製造している。この様な紙パルプの製造工程はエネルギーを必要とする工程であり、省エネルギー化には長年に亘りさまざまな対策が実施されてきた。しかし、環境問題を解決するため、更に省エネルギー化する技術の開発が求められている。
また、リグノセルロース材料をいわゆるバイオマスとして化学原料やエネルギー原料の発酵生産の基質として利用する場合、発酵基質となる糖類を製造するために、繊維成分を分解せずに、リグニンを分解除去する前処理方法の開発が求められている。
紙パルプ工業で製造されているパルプは、その製造方法により機械パルプと化学パルプに分けられる。機械パルプは、機械的エネルギーを用いて木材繊維を物理的に摩砕して製造される。木材成分をほとんどそのまま含んでいるため、高い収率で製造することができ、薄く不透明度の高い紙を作ることができる。しかしながら、摩砕のために大きな電力を必要とする欠点がある。
上記のような多大な電力の消費を抑制するため、微生物特に白色腐朽菌と呼ばれるリグニン分解力を有する担子菌で予め木材チップを処理し、エネルギーを削減しようという研究が行われてきた。例えば、ハンノキの一次解繊サーモメカニカルパルプ(TMP)の製造に先立ち、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)をグルコースとともに木材チップに添加し、2週間放置すると、TMP製造の二次解繊のエネルギーを25から30%削減できたという報告がある(非特許文献1)。また、ファネロカエテ・クリソスポリウムとディコミタス・スクアレンス(Dichomitus squalens)を用い、アスペン材を処理した際には、コントロールと比べて紙力強度が増加している(非特許文献2)。
Akamatsuらは、アラゲカワラタケ(Coriolus hirsutus)を含む白色腐朽菌10株を用いポプラ材上に培養し、パルプ収率、解繊エネルギー、パルプ強度について調べている。その結果、アラゲカワラタケで処理すると解繊エネルギーが減少し、結晶化度が増加するなど、用いた菌株の中ではアラゲカワラタケがチップの前処理菌として好ましいことが示された。しかしながら、このときの収率が約7%低下した(非特許文献3)。
Nishibeらは、白色腐朽菌61種、85株から予備選抜した10種類の腐朽菌を使って、サワグルミ木片と針葉樹2次離解TMPを微生物分解し、選択的に脱リグニンを行い、パルプ繊維の崩壊が少ないネナガノヒトヨタケ(Coprinus cinereus)、ファネロカエテ・クリソスポリウムを選抜し、グルコースと尿素の存在下では紙力強度の低下が抑えられることを示した。しかし、パルプ収率の低下が、14日間、30℃の処理でそれぞれ6.3%、9.7%であった。アラゲカワラタケを用いた場合、収率減は7.5%であった(非特許文献4)。
Kashinoらは、白色腐朽菌IZU-154を自然界からスクリーニングし、ファネロカエテ・クリソスポリウムやカワラタケ(Trametes versicolor)より選択的にリグニンを分解し、広葉樹を7日間処理した場合、解繊エネルギーが1/2〜2/3減少することを確認した。また、パルプ強度は約2倍増加した。針葉樹を10〜14日間処理した場合では解繊エネルギーが1/3減少し、強度増加も得られた。培地を加えた場合には7日間で同等の結果を得ることができた(非特許文献5)。
さらに、米国ではUSDA Forest Products Laboratoryのグループを中心に研究機関、紙パルプ産業数社から成るリグニンコンソーシアムを形成し、リグニン分解力が高く、セルロース分解力の低い菌株のスクリーニングを行い、セリポリオプシス・サブバーミスポラ(Ceriporiopsis subvermispora)を新たに選抜した。この株を用いて機械パルプの動力削減を検討し、例えば、TMPの製造エネルギーの40%近くを削減でき、このときの収率の低下が3〜5%程度であり、心配される紙の強度への悪影響はなく、むしろ強度が上がっていると報告している(非特許文献6)。USDA Forest Products Laboratoryでは既にパイロットプラントを建設し、単離したセリポリオプシス・サブバーミスポラの実証試験を行っている。米国内の工場を想定し、工場のチップヤードで微生物処理を行うことを考えている。しかし、セリポリオプシス・サブバーミスポラは増殖に好適な温度が低く、32℃までの温度でしか効果が得られないが、チップを保存しているパイル内部が高温となるため、冷却のための通気のエネルギーおよびコストが大きく、温暖な地域での使用には不適切である。
また、これまでスクリーニングで得られてきた微生物はリグニン分解の選択性が必ずしも高くなく、リグニンのみでなく、セルロースも分解するため、パルプ収率や紙力低下を生じる。従って、リグニン分解の選択性を高めた微生物、すなわち、リグニン分解能力には優れるが、セルロース分解は抑制されている微生物の取得・作製が求められている。
リグニン分解の選択性を高めた変異体はAnderらにより作製されている。彼らは、UV照射によりスポロトリカム・プルベルレンタム(Sporotrichum pulverulentum)に変異処理を行い、セルラーゼ活性が弱い変異株Cel44株の菌株を開発している。野生株とこのセルラーゼ抑制株Cel44とを用いてカバ材木片の分解を行ったところ、前者がリグニン及びキシランをよく分解するのに対し、後者はリグニン及びキシランをよく分解するが、グルカンをほとんど分解しなかった(非特許文献7)。
このCel44を用いてバーチ材を6週間処理した後、機械パルプの製造を行ったところ、紙力強度の増加が見られた(非特許文献8)。また、バーチ材とパイン材を用いて実験を行い、処理時間を増加させることによって、繊維のフィブリル化とリファイニングのエネルギーが30%減少したと報告している(非特許文献9)。
彼らはフレビア・ラヂアータ(Phlebia radiata)においても同様にセルラーゼ活性の弱い株Cel26を作製した。このCel26でパイン材のチップとパルプを処理した後、機械パルプを製造した際、いずれの場合も紙力の改善は見られなかったものの、解繊エネルギーの低下が見られた。また、重量減少は2%以下であった(非特許文献10)。
一方、化学パルプは、化学薬品を用いて木材中のリグニンを溶出させセルロース、ヘミセルロースを取り出す製造方法である。現在では水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを用いて脱リグニンを行うクラフトパルプが主流となっている。クラフトパルプにおいても機械パルプと同様に微生物処理を行い、蒸解前に脱リグニンを行うことでの製造エネルギーの削減、パルプ品質の向上が試みられている。
例えばファネロカエテ・クリソスポリウムを用いて、レッドオーク材やアスペン材を30日間処理すると、同一Ka価における収率が向上し、叩解エネルギーが削減すること、また、引張り強度と破裂強度が増加するという報告がある(非特許文献11)。同じく、ファネロカエテ・クリソスポリウムを用いた実験において、破裂強度、引裂き強度の増加が報告されている(非特許文献12)。Molinaらはラジアータパインをカワラタケとヒラタケ(Pleurotus ostreatus)で処理した際には、11〜14%の製造エネルギーが削減できると報告している。しかしながら、カワラタケの場合にはパルプ強度の減少が見られた(非特許文献13及び非特許文献14)。
Bajpaiらは、セリポリオプシス・サブバーミスポラを用いた実験において活性アルカリを18%削減し、蒸解時間を33%削減し、白液中の硫化度を30%削減することができることを報告している(非特許文献15)。
上記のように、クラフトパルプにおける微生物処理は蒸解性を向上させエネルギーの削減をもたらすが、収率や紙力強度を低下させる場合があり、機械パルプと同様に微生物処理を実用化するには、リグニンを分解する能力には優れるが、セルロースを分解する能力は抑制されかつリグニン分解の選択性を高めた微生物の取得・作製が必要となっている。
それに対し、上記のようにセルラーゼ活性の弱い変異株の作製が行われ、機械パルプ処理への利用の検討が行われているが、これらの変異株は紫外線照射により変異処理しているため、変異株の成長速度が遅く、分解処理に長時間かかってしまうという問題がある。このため、成長速度には影響せずセルロース分解活性のみを抑える変異株の作製が望まれている。
セルロースを分解する酵素(セルラーゼ)はβ−1,4−グルカン(セルロース)又はその誘導体のβ−1,4−グルコピラノシル結合を加水分解する数種の酵素の総称であり、エンドグルカナーゼ(EGと略)、セロビオヒドロラーゼ(CBHと略)I、II、などからなる。EGはセルロース主鎖のβ−1,4−グルコピラノシル結合をエンド型に加水分解することでセルロース鎖に断点を入れ、続いてCBHがその断点から順次セロビオース単位で分解し結晶性の高い部分も分解することが知られている。CBH Iはセルロース鎖の還元末端からセロビオース残基を切り取り、CBH IIは非還元末端から切り取ってゆく。また生じたセロビオースを酸化するセロビオースデヒドロゲナーゼ、セロオリゴ糖の末端からβ結合を加水分解するβ−グルコシダーゼが知られている。そして、これらの加水分解酵素が相乗的に作用することによりセルロース基質が低分子化してセロビオースを生じ、さらにβ−グルコシダーゼが関与することにより、グルコース単位まで分解される。
しかしながらセルロース分解酵素の研究が進むに連れて、セロビオヒドロラーゼがEGのような活性を示すケース、その逆のケースもあり、これまでの分類方法では説明できない酵素が見つかってきている。
これまでに多数のセルロース分解酵素が単離精製され、また遺伝子の配列が明らかにされている。セルロース分解酵素はハイドロフォービッククラスターアナリシスとよばれる疎水性アミノ酸のクラスタ構造に基づく二次元的解析によりグリコシドヒドロラーゼファミリーとしてグループ分けできることが明らかにされている(非特許文献16)。
これらの酵素の分類では、CBHとEGのセルロース分解特性の違いはそれぞれの活性中心を上から覆うペプチドループの有無並びにその存在状態の際に基づくことが示されている。TrichodermaではCBHIとCBHIIの三次元の結晶構造の特徴として活性中心がペプチドループによって覆い隠されているトンネル構造を持つことが報告されている。一方、エンド型の酵素は活性中心にクレフトと呼ばれる溝を持ち、そこでセルロース鎖を捕捉、切断後、一旦セルロース鎖から離れ、再度セルロース鎖を捕捉するノンプロセッシブな切断様式で作用する(非特許文献17)。
また、セロビオースデヒドロゲナーゼは、セロビオースやセロオリゴ糖を酸化してセロビオノラクトンを生成すると同時にキノン、鉄などの金属錯体、フェノキシラジカル、酸素などを還元する酸化還元酵素である。この酵素は、微生物がセルロースを分解するときにセルラーゼと同時に産生される(非特許文献18)こと、セロビオースによるセルラーゼ活性の阻害、すなわち生成物阻害を解除する(非特許文献19)ことから、セルラーゼとの共役でセルロース分解を促進すると考えられている。
また、セロビオースデヒドロゲナーゼは強力にセルロースを分解するハイドロキシラジカルを発生するFenton反応を引き起こすため、セルロース分解に深く関与していると考えられている。このことはDumonceauxらによるセロビオースデヒドロゲナーゼ活性を抑制した変異株の作製ならびにその諸性質の検討結果によっても示唆されている。彼らは、抗生物質であるフェロマイシンを指標にした相同組換え法によるセロビオースデヒドロゲナーゼ欠損株の作製を行い、セロビオースデヒドロゲナーゼ欠損株では非晶性セルロースを炭素源とした場合には野生株と成長速度が変わらないが、結晶性セルロース上で培養した際には生育速度が著しく遅くなること、セロビオースデヒドロゲナーゼ欠損株においても広葉樹未漂白パルプのリグニンや合成リグニンである14C-DHPを野生株と同等に分解することを報告している(非特許文献20)。
セロビオースデヒドロゲナーゼを生産する微生物としては、ファネロカエテ・クリソスポリウム、カワラタケ、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)等の木材腐朽菌、コネオフォラ・プテアナ(Coneophora puteana)、ミセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)等のカビ類が知られている。
また、セロビオースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(以下、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子と称する)については、例えば、ファネロカエテ・クリソスポリウムでは、K3株のcDNA(非特許文献21)、OGC101株ではcDNA(非特許文献22)、染色体遺伝子(非特許文献23)のクローニングが行われている。また、カワラタケ(非特許文献24)や、シュタケ(非特許文献25)においてもセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子が報告されている。
また植物繊維の主要構成成分であるヘミセルロースも微生物により分解を受け、繊維成分の収率低下をもたらす。ヘミセルロースには、キシラン、マンナン、ガラクタン、ペクチンなどが知られており、これらを分解する酵素として、エンド1,4-βキシラナーゼ、エンド1,4-βマンナナーゼ、ペクチナーゼなどが知られている。キノコもこれらの酵素を生産することが知られており、例えば白色腐朽菌の1種であるPhanerochaete chrysosporiumから3種類のキシラナーゼ遺伝子がクローニングされ、Aspergillus nigerを宿主として酵素の発現、生産、精製が行われた。これらのうち2つはグリコシドヒドロラーゼファミリー10で、残りの1つはファミリー11に分類されていた(非特許文献26) 。
また、ヒラタケもキシラナーゼ、マンナナーゼ、セルラーゼを生産することが報告されている(非特許文献27)。
機械パルプや化学パルプ製造における微生物処理にあたって、リグニン分解の選択性を高めた微生物の取得・作製に必要なアラゲカワラタケ由来のセロビオースデヒドロゲナーゼをはじめとするセルロース分解酵素やセルロース分解酵素遺伝子の解明、並びに該遺伝子を用いた遺伝子組換え技術、及びそのような技術によって得られる形質転換体を用いた効果的なパルプ処理方法については、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
一方リグノセルロース材料の糖化は、セルロース成分を取り出した後、酵素による糖化する方法が環境面、コスト面で注目されている。一般にリグノセルロース材料はセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されており、リグニン含量が多いリグノセルロース材料ほどセルラーゼによるセルロースの加水分解が困難になる。リグニンはヘミセルロースと共にセルロースの繊維質を包み込むような形で存在しており、酵素糖化では酵素のセルロースへの接触を妨害するため、リグニン含量が多いリグノセルロース材料の糖化率は低くなる。
このような問題を改良するため、蒸煮・爆砕法等によりリグニンを低分子化する物理的前処理、セルロース系バイオマスを溶媒やアルカリ等でリグニンを抽出する化学的前処理(非特許文献28)、リグニン分解菌やリグニン分解酵素を用いてリグニンを分解する生物前処理が検討されている(非特許文献29)。
生物前処理は比較的温和な条件で処理ができ、物理的前処理や化学的前処理よりも環境への負荷が少ない。特許文献3にはリグノセルロースをセルラーゼ及びリグニン分解菌又はリグニン分解酵素存在下で加水分解することによりセロビオースを効率的に製造することが記載されている。
しかしながら、この技術で用いられる菌を含め、生物前処理に用いられるリグニン分解菌の多くは、リグノセルロース材料の分解の際に、リグニンと共にセルロース等リグノセルロースの他の成分も消費してしまうため、結果的にリグノセルロース材料の糖化率を下げてしまう。特許文献4には、リグニンの分解活性が高く、さらにリグニン分解物の逆重合化を起こさない微生物を用いたリグニンの分解が記載されているが、この菌もまたリグニンと共にセルロース等のリグノセルロース成分も消費してしまうという欠点がある。
Carle-Uriosteら(非特許文献30)は、糸状菌トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)においてセルロース分解酵素の発現メカニズムを遺伝子の転写レベルで明らかにする目的で、3種類のセルロース分解酵素cbhII、egl1、egl2遺伝子の発現をアンチセンス法で抑制する実験を行った。しかし、これらの酵素遺伝子の発現量は確認されなかったし、また実際に複数のセルロース分解酵素活性の同時抑制が可能であったか否かは示されていない。またこのようなアンチセンス法が、リグノセルロース材料のセルロース分解の抑制に使用することについて、その示唆はなかった。
国際公開WO03/070939 国際公開WO03/070940 特開平8−89274号公報 特開平5−292980号公報 Bar-Lev及びK.T. Kirk, Tappi J., 65, 111, 1982 Myers., Tappi J., 105, 1988 Akamatsuら, Mokuzai Gakkaishi, 30(8), 697-702, 1984 Nishibeら, Japan Tappi, 42(2), 1988 Kashinoら, Tappi J., 76(12), 167, 1993 Scottら, Tappi J., 81(12), 153, 1998 Ander及びEriksson, Svensk Papperstid., 18, 643, 1975 Ander及びEriksson, Svensk Papperstid., 18, 641, 1975 Eriksson及びVallander., Svensk Papperstid, 85, R33, 1982 Samuelssonら, Svensk Papperstid., 8, 221, 1980 Oriaranら, Tappi J., 73, 147, 1990 Chenら, Wood Fiber Sci., 27, 198, 1995 Molina, 50th Appita Annual General Conference, pp.57-63, 1996 Molina, 51th Appita Annual General Conference, pp.199-206 1997 P. Bajpaiら, J. Pulp and Paper Science: 27 (7), 235-239, 2001 Henrissat, B., Bairoch, A., Biochem. J., 293, 781, 1993 Henrissat, B., Cellulose. Commun., 5, 84-90, 1998 Erikssonら, FEBS Lett., 49, 282-285, 1974 Igarashiら, Eur. J. Biochem., 253, 101, 1998 Dumonceaux, Enzyme Microb., 29, 478-489, 2001 G. Henrikssonら, J. Biotechnol., 78, 93-113, 2000 Raicesら, FEBS Letters, 69, 233-238, 1995 Liら, Appl. Environ. Microbiol., 62(4), 1329-1335, 1996 Liら, Appl. Environ. Microbiol., 63(2), 796-799, 1997 T.J. Dumonceauxら, Gene, 210, 211-219, 1998 S.M. Moukhaら, Gene, 234, 23-33, 1999 B. Decelleら, Curr Genet.,46,166-75、 2004 P. Baldrianら, Res Microbiol., 156(5-6),670-676, 2005 J. D. McMillan, Enzymatic Conversion of Biomass for Fuels Production, 292-324, 1994 Y. Sun, J. Cheng, Bioresour. Technol., 83, 1-11, 2002 Carle-Uriosteら, J. Biol. Chem., 272(15), 10169-10174, 1997
リグノセルロース材料から繊維成分を得る方法、特に紙パルプを製造する方法において、省資源、省エネルギー化を目的に機械パルプ又は化学パルプの製造に先立ち、リグノセルロース材料を微生物で処理するときに、微生物が生産するセルロース分解酵素やヘミセルロース分解酵素により紙の主成分であるセルロースやヘミセルロースが分解される結果、繊維成分特にパルプの収率の低下や紙力の低下が生じるので、これを抑制する必要がある、という課題がある。
この課題を解決する方法としてリグニン分解能力に優れ、セルロース分解酵素の活性の低い微生物の作出が求められている。しかしながら微生物のセルロース分解系は複数のセルロース分解酵素から構成されているため、これらの酵素の活性をより効果的に抑制するためには、複数の酵素の活性を抑制することが好ましい。すなわち、そのためには、複数のセルロース分解酵素の活性を同時に抑制した微生物を作出する必要がある。アラゲカワラタケのようなキノコの形質転換法において、これまで行われてきた個別の遺伝子を用いて抑制する方法では、複数の酵素の生産を同時に抑制することは困難であった。また同様の課題はヘミセルロースの分解についても存在するが、ヘミセルロース分解酵素の抑制は研究されていない。
このような状況にあって、本発明の目的は、複数のセルロース分解酵素遺伝子および/またはヘミセルロース分解酵素遺伝子の発現が同時に抑制された、かつリグニン分解性のある微生物を使用してリグノセルロース材料を処理することを含む、リグノセルロース材料の繊維成分から有用物質を製造する方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者らは今回、ある種の担子菌が産生するセルロース分解酵素遺伝子のDNA断片を作製し、プロモーターの下流に複数のセルロース分解酵素遺伝子のDNA断片をアンチセンス方向に直列に連結することにより、複数のセルロース分解酵素遺伝子を同時に抑制する方法、および/または、同様の手法でヘミセルロース分解酵素遺伝子を抑制する方法を開発し、さらに紙パルプ、糖類、バイオマスエタノールなどの製造を目的として、それらの製造に使用するための繊維成分をリグノセルロースからセルロース収率を下げずに取り出す方法を確立した。
<発明の概要>
本発明は、以下のものからなる。
(1) リグノセルロース材料から繊維成分を取り出して該繊維成分から有用物質を製造する方法において、複数のセルロース分解酵素遺伝子および/または複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子の発現が抑制されたかつリグニン分解性のある微生物を該リグノセルロース材料と接触させること、および該材料から繊維成分を得ることを含む上記方法。
(2) 前記微生物が、複数のセルロース分解酵素遺伝子および/または複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子のうち、少なくとも4種類の異なる酵素遺伝子の発現が抑制されているものである、(1)に記載の方法。
(3) 前記微生物が、複数のセルロース分解酵素遺伝子および/または複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子のうち、少なくとも6種類の異なる酵素遺伝子の発現が抑制されているものである、(2)に記載の方法。
(4) 前記微生物が、複数のセルロース分解酵素遺伝子および/または複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子の各転写産物の全部またはその一部に対して相補的なアンチセンスDNA断片、あるいは該アンチセンスDNA断片のヌクレオチド配列と90%以上の相同性を有するその変異体、の各々を任意の順序で連結した合成DNA断片を含む、(1)に記載の方法。
(5) 前記アンチセンスDNA断片の各々がリンカーを介して連結されている、(4)に記載の方法。
(6) 前記微生物が、前記合成DNA断片を含む発現ベクターで形質転換されたものである、(4)に記載の方法。
(7) 前記発現ベクターにおいて、前記合成DNA断片が発現制御配列と作動可能に連結されている、(6)に記載の方法。
(8) 前記複数のセルロース分解酵素遺伝子が、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、およびセロビオースデヒドロゲナーゼ、ならびにそれらのアイソザイムから選択される酵素をコードしている遺伝子であり、また前記複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子が、キシラナーゼおよびマンナナーゼ、ならびにそれらのアイソザイムから選択される酵素をコードしている遺伝子である、(1)に記載の方法。
(9) 前記複数のセルロース分解酵素遺伝子が、エンドグルカナーゼ61、エンドグルカナーゼ5、エンドグルカナーゼ12、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、およびセロビオースデヒドロゲナーゼからなる酵素をコードしている遺伝子であり、また前記複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子が、キシラナーゼI、キシラナーゼII、マンナナーゼI、およびマンナナーゼIIからなる酵素をコードしている遺伝子である、(8)に記載の方法。
(10) 前記発現制御配列が、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子もしくはグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターの配列である、(7)に記載の方法。
(11) 前記微生物が担子菌である、(1)に記載の方法。
(12) 前記担子菌が白色腐朽菌である、(11)に記載の方法。
(13) 前記白色腐朽菌がコリオラス(Coriolus)属である、(12)に記載の方法。
(14) 前記微生物が、内因性もしくは外因性リグニン分解酵素をコードするDNAまたはcDNAを発現可能な状態で含む、(1)に記載の方法。
(15) 前記リグニン分解酵素が、マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼまたはラッカーゼである、(14)に記載の方法。
(16) 複数の異なるセルロース分解酵素遺伝子および/または複数の異なるヘミセルロース分解酵素遺伝子の各転写産物の全部またはその一部に対して実質的に相補的なアンチセンスDNA断片を任意の順序で連結した合成DNA断片を作製し、該合成DNA断片を発現制御配列と作動可能に連結した発現ベクターを作製し、該発現ベクターで、リグニン分解性のある微生物を形質転換して形質転換微生物を作製し、セルロース分解性および/またはヘミセルロース分解性を抑制した該微生物をリグノセルロース材料と接触させて該材料中のリグニンを分解し、リグニン分解した該材料から繊維成分を得ることを含む、(1)に記載の方法。
(17)前記セルロース分解酵素遺伝子が少なくとも6種類である、および/または、前記ヘミセルロース分解酵素が少なくとも4種類である、(1)または(16)に記載の方法。
(18) 前記繊維成分がパルプまたはセルロースである、(1)に記載の方法。
(19) 前記有用物質が紙パルプである、(1)に記載の方法。
(20) 前記紙パルプが、前記繊維成分から化学パルプ化法、機械パルプ化法またはセミケミカルパルプ化法により製造される、(19)に記載の方法。
(21) 前記有用物質が糖類である、(1)に記載の方法。
(22) 前記糖類が、前記繊維成分を酵素により糖化することによって製造される、(21)に記載の方法。
(23) 前記酵素がセルラーゼおよびヘミセルラーゼである、(22)に記載の方法。
(24) 前記繊維成分を糖化し、有用物質であるバイオマスエタノールを製造する、(1)に記載の方法。
<定義>
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
「リグノセルロース材料」という用語は、構造性多糖のセルロース及びヘミセルロースと芳香族化合物の重合体のリグニンとから構成されるリグノセルロースを多量に含む植物性材料、例えば木材、バガス、牧草(例えばオーチャードグラス及びチモシー)などの材料を意味する。ここでバガスとは、さとうきびから糖汁を搾ったあとのカスを指す。
「繊維成分」という用語は、リグノセルロースからリグニンを化学的に除去または機械的に切断して得られる繊維状成分、具体的にはセルロースまたはパルプ繊維を意味する。この繊維状成分はセルロースとヘミセルロースを主成分とする。
「パルプ」という用語は、木材その他の植物から機械的または化学的処理によって抽出したセルロース繊維の集合体を意味し、製造方法によって機械パルプと化学パルプに、また用途によって製紙パルプと溶解パルプに分類される。
「セルロース分解酵素」という用語は、セルロースを分解する酵素を意味する。
「ヘミセルロース分解酵素」という用語は、ヘミセルロースを構成する成分を分解する酵素を意味し、キシラナーゼ、マンナナーゼなどが含まれる。
「リグニン分解性のある微生物」という用語は、リグニン分解酵素を含む微生物を指す。この微生物においては、内因性または外因性のリグニン分解酵素をコードする遺伝子が、該微生物のゲノム上か、あるいはその細胞内に含まれる自律複製可能なプラスミドなどのベクター上に、発現可能に組み込まれている。微生物には、細菌類、真菌類、担子菌類、酵母類などが含まれる。特に担子菌の1種である白色腐朽菌は、リグニン分解酵素であるリグニンペルオキシダーゼを含むことが知られており、好ましい微生物の1つである。
「セルロース分解酵素の発現が抑制されている」という用語は、セルロース分解酵素遺伝子の発現が抑制されるために、該酵素遺伝子の翻訳が阻害され、結果としてセルロース分解酵素の産生が起こらないかまたは起こり難い状態を意味する。
「ヘミセルロース分解酵素の発現が抑制されている」という用語は、ヘミセルロース分解酵素遺伝子について、セルロース分解酵素と同様の意味で、ヘミセルロース分解酵素の産生が起こらないかまたは起こり難い状態を意味する。
「転写産物」という用語は、セルロース分解酵素遺伝子をコードするmRNAまたはプレmRNAを意味する。ここでプレmRNAは、スプライシングされる前のmRNA前駆体を指す。
「アンチセンスDNA」という用語は、セルロース分解酵素遺伝子の転写産物であるmRNAの全部又はその一部に対して実質的に相補的な配列を含むDNAであって、該アンチセンスDNAの転写産物であるアンチセンスRNAが細胞内で、それと相補的となるセルロース分解酵素遺伝子のmRNAと結合し、それによってセルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制し翻訳を阻害するDNAを意味する。
「発現制御配列」という用語は、遺伝子の発現を制御する配列を指す。発現制御配列は例えばプロモーター、エンハンサー配列などを含み、好ましくはプロモーター配列である。
本発明により、リグニン分解性があるかつセルロースおよび/またはヘミセルロース分解力が抑制された微生物を用いて木材チップを処理し、ついでパルプを製造した際、機械パルプの製造においては収率低下という従来技術の問題点を解消し、エネルギーの削減と同時に紙力強度の向上が可能となる。また化学パルプの製造においても収率や紙力強度の低下を抑制することが可能となる。また一方リグノセルロース材料の糖化において、糖の著しい低下を伴わずにリグニンを除去することができるため、糖の収率向上が可能となる。
以下において本発明をさらに具体的に説明するが、本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2004-235539号の明細書に記載される内容を包含するものとする。
本発明は、リグノセルロース材料から繊維成分を取り出して有用な物質を製造する方法において、複数のセルロース分解酵素および/またはヘミセルロース分解酵素の発現が抑制されたかつリグニン分解力のある微生物を該リグノセルロース材料と接触させること、および該材料から繊維成分を得ることを含む方法を提供する。
本発明の特徴は、リグノセルロース材料が、複数のセルロース分解酵素の発現および/またはヘミセルロース分解酵素の発現が抑制されたかつリグニン分解力のある微生物によって予め処理されることにある。これによって、セルロースおよび/またはヘミセルロースの酵素的分解を抑制もしくは阻害する一方で、リグニンが酵素的に分解される。その結果、セルロースおよび/またはヘミセルロースの収率がより向上するという利点が達成される。
<リグニン分解活性をもつ微生物>
本発明で使用される微生物は、リグニンを分解する酵素を発現可能に含む。リグニン分解酵素の例は、マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ラッカーゼまたはフェノールオキシダーゼである(欧州特許出願公開第1029922号、PCT/JP03/02057)。このような酵素遺伝子は、微生物が固有にもつ天然型遺伝子でもよいし、あるいは微生物が本来もっていないため遺伝子組換え技術によって細胞内に発現可能に導入された外来性遺伝子であってもよい。
天然型遺伝子を含む微生物には、例えば担子菌(Basidiomycetes)、例えば木材腐朽菌類など、とりわけ白色腐朽菌が含まれる。例えば、白色腐朽菌の1種であるコリオラス(Coriolus)属、例えばアラゲカワラタケ(Coriolus hirsutus)など、は固有にリグニンペルオキシダーゼを有している。本発明で使用可能なアラゲカワラタケの菌株は、例えば独立行政法人製品評価技術基盤機構生物資源遺伝部門(NBRC;東京、日本)からIFO04917として分譲可能な株、NTGIII-55株(FERM P-14046)、OJI−1078株(FERM BP-4210)、NTGIII-55株(FERM P-14046)などを含む(特開2004−173688号公報、特開平07−274958号公報)。またマンガンペルオキシダーゼを産生する微生物の例は、担子菌の1種であるファネロカエテ(Phanerochaete)に属する菌、例えばファネロカエテ・ソルディダ(Phanerochaete sordida)、例えばYK-624株(ATCC 90872)が含まれる(特開2002−069881号公報)。
白色腐朽菌の培養は、好気的条件下で振とう培養によって行なうのが好ましい。培養液のpHは3〜8であり、さらに好ましくは4〜6である。培養温度は10〜45℃、好ましくは25〜35℃である。培養時間は、通常1〜10日間、好ましくは7〜10日間である。培地は、通常の菌類のなどに使用される培地を使用できるが、MnSO4、MnCl2などのマンガン(II)イオンを0.01〜100mM、好ましくは0.1〜1mMの量で培地に加える必要がある。培地には、必要に応じて炭素源あるいは窒素源を添加する。炭素源としては、グルコース、フルクトース、マルトース、サッカロースなどが含まれる。窒素源には、肉エキス、ペプトン、グルテンミール、大豆粉、乾燥酵母、酵母エキス、硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム塩、尿素、L−アスパラギンなどが例示される。さらに必要に応じて、ナトリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、カルシウム塩、リン酸塩などの無機塩類や、イノシトール、ビタミンB1塩酸塩、ビオチンなどのビタミン類を添加することができる。
リグニン分解酵素遺伝子を生来保有していないか、あるいは該遺伝子を保有しているが該酵素の活性が弱い微生物については、外来性のリグニン分解酵素遺伝子を発現可能に導入することによって、リグニン分解力のある微生物に変換することができる。微生物の例は、限定されないが、担子菌、真菌類、酵母類などを含む菌類、細菌類などを含む。好ましい微生物は、担子菌および真菌類、特に担子菌類、好ましくは白色腐朽菌である。マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼ、ラッカーゼまたはフェノールオキシダーゼなどのリグニン分解酵素の遺伝子に関する公知の配列情報を文献やGenBankなどのデータバンクから入手し、その配列に基いて約15〜30塩基長のプライマーを作製し、該遺伝子を含む微生物のゲノムDNAを鋳型にしたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、目的の酵素遺伝子を増幅することができる。あるいは、周知の方法によって微生物細胞から取得したリグニン分解酵素遺伝子をコードするmRNAから、または市販のもしくは周知の方法で作製されたcDNAライブラリーから、周知のcDNAクローニング法によって該酵素をコードするcDNAを作製することができる。得られたゲノムDNAまたはcDNAを、プロモーター、エンハンサーなどの適する発現制御配列に作動可能に連結したDNA断片を作製し、これをベクターの適当な制限部位間に適切な方向で挿入する。ベクターはさらに、選択マーカー、複製開始点、ターミネーター、リボゾーム結合部位、ポリAシグナルなど、必要に応じてポリリンカー、を含むことができる。得られた発現ベクターで微生物宿主細胞を形質転換して、リグニン分解酵素遺伝子を含む微生物を作製することができる。
形質転換は、塩化カルシウム/PEG法、リン酸カルシウム法、酢酸リチウム法、エレクトロポーレション法、プロトプラスト法、スフェロプラスト法、リポフェクション法などの一般的方法から適宜選択して行うことができる。なお、微生物細胞からのプロトプラストの形成については、細胞壁分解酵素、例えばリゾチームを微生物と接触させる従来法で行うことができる。
リグニン分解酵素の能力を高めるためにセロビオヒドロラーゼIまたはII遺伝子プロモーター領域などの異種のプロモーター領域を白色腐朽菌に遺伝子組換え法によって導入することもできる(欧州特許出願公開第1029922号、PCT/JP03/02057)。
<セルロースおよび/またはヘミセルロース分解活性が抑制されたリグニン分解性微生物>
本発明で使用される微生物としては、リグニン分解酵素を含むが、セルロース分解酵素および/またはヘミセルロース分解酵素を含まないかまたはセルロース分解酵素活性および/またはヘミセルロース分解酵素活性が極度に抑制された微生物が好ましい。しかし、実際にリグノセルロース材料、例えば木材、竹、綿、リンター、トウモロコシ穂軸、バガス、ビール粕、わら類、もみ殻などの農産廃棄物、あるいは古新聞、雑誌、段ボール、オフィス古紙、パルプ及び製紙メーカーから排出される廃パルプなどを微生物で処理する場合、環境に有害な作用を及ぼすような微生物の使用が規制されている。このため、リグノセルロース材料のリグニン分解に使用可能な微生物として、上記の方法によってリグニン分解活性を外因的に導入された安全性の保障された微生物およびリグニン分解活性を内因的に有する安全性の保障された微生物が、本発明で使用可能な微生物の候補である。このような微生物のなかで、担子菌、とりわけ白色腐朽菌が好ましい。しかし、担子菌類は一般に複数のセルロース分解酵素活性および/または複数のヘミセルロース分解酵素活性を含むため、リグノセルロース材料を処理する際にセルロースおよび/またはヘミセルロースの分解を引き起こし、その結果、セルロースおよび/またはヘミセルロースの収率を下げるという欠点を有している。このために、リグニンの分解力を増強しつつ、かつセルロースおよび/またはヘミセルロースの分解を極度に抑制した微生物が作製できれば、本発明の目的を達成できることになる。
本発明で使用可能な微生物は、リグニン分解酵素遺伝子を保有する微生物において、内因性の複数のセルロース分解酵素および/または複数のヘミセルロース分解酵素の発現が抑制されるように遺伝子操作される。そのような発現抑制のための方法として、本発明では、内因性のセルロース分解酵素遺伝子および/またはヘミセルロース分解酵素遺伝子の転写産物に相補的なアンチセンスRNAによる方法が使用される。
<アンチセンスRNA法>
セルロース分解酵素遺伝子には、以下のものに限定されないが、エンドグルカナーゼ(以下、EGともいう)、セロビオヒドロラーゼI(以下、CBH Iともいう)、セロビオヒドロラーゼII(以下、CBH IIともいう)、セロビオースデヒドロゲナーゼ、およびそれらのアイソザイムからなる酵素をコードする遺伝子が含まれる。ここでアイソザイムとは、異なる一次構造をもつが類似の触媒作用を有する酵素群を指す。アイソザイムの例には、エンドグルカナーゼ61、エンドグルカナーゼ5、エンドグルカナーゼ12、エンドグルカナーゼ17、エンドグルカナーゼ45、エンドグルカナーゼ9、セロビオヒドロラーゼIなどが含まれる(M. Sandgrenら, J. Mol. Biol. 308: 295-310, 2001); A.V. Wymelenbergら, Appl. Environ. Microbiol. 68: 5765-5768, 2002)。
ヘミセルロース分解酵素遺伝子には、以下のものに限定されないが、キシラナーゼ、マンナナーゼおよびそれらのアイソザイムをコードする遺伝子が含まれる。アイソザイムの例には、キシラナーゼファミリー10、ファミリー11などが含まれる。より具体的には、ヘミセルロース分解酵素遺伝子には、例えばキシラナーゼI、キシラナーゼII、マンナナーゼI、およびマンナナーゼIIからなる酵素をコードしている遺伝子などが含まれる。
セルロースあるいはヘミセルロース分解酵素遺伝子の配列は、文献やGenBank等のデータバンクなどから入手可能である。例えば、GenBankからの入手可能な情報として、エンドグルカナーゼ61遺伝子は受託番号AY094489、エンドグルカナーゼ5遺伝子は受託番号AB125597、エンドグルカナーゼ12遺伝子は受託番号AAD02275、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子は受託番号AAC50004、セロビオヒドロラーゼI-27遺伝子は受託番号BAD16575、セロビオヒドロラーゼII遺伝子は受託番号AAB32942としてそれぞれ登録された配列情報を利用することができる。
あるいは、微生物に内在するセルロースあるいはヘミセルロース分解酵素遺伝子の配列が不明の場合には、微生物細胞から公知の手法で作製したゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリー中の目的のDNAを鋳型にして、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、セロビオースデヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼの6種類の酵素遺伝子の公知の配列に基いて作製された順方向および逆方向プライマーを用いてPCRを行い、遺伝子増幅された目的遺伝子について、Sanger法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74: 5463 (1977))などの公知の配列決定法を用いて酵素遺伝子の配列を決定することができる。
アンチセンスRNAによる方法としては、複数の内因性セルロースおよび/または複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子のすべてまたは一部の発現を同時に抑制するために、各遺伝子の転写産物であるmRNAの全部またはその一部に対して相補的なアンチセンスDNA断片の各々を任意の順序で連結した合成DNA断片を作製し、微生物宿主細胞内に導入することを含む。導入された合成DNA断片の転写産物であるアンチセンスRNAが微生物細胞内に存在した場合、相補的となるセルロース分解酵素遺伝子あるいはヘミセルロース分解酵素遺伝子のmRNAと結合し、それによってセルロース分解酵素遺伝子および/またはヘミセルロース分解酵素遺伝子の発現が抑制され翻訳が阻害される。
連結されるアンチセンスDNA断片間には、リンカー配列が存在してもよい。リンカー配列の長さは好ましくは約20塩基以下、さらに好ましくは約10塩基以下であるが、場合により20塩基を超えてもよい。リンカー配列は、アンチセンスDNA断片同士を連結するための配列であり、セルロース分解酵素遺伝子あるいはヘミセルロース分解酵素遺伝子の転写の阻害に影響を与えない限り任意に選択可能な配列である。リンカー配列の例は、制限酵素認識配列である。制限酵素認識配列は、アンチセンスDNA断片の切断および連結に好都合な配列であり、任意の制限酵素を認識する配列でよい。制限酵素認識配列は、例えばBamH I、EcoR I、Bgl II、Hae III、Hind III、Hpa I、Pst Iなどの酵素によって認識される配列でよく、パリンドロームおよび非パリンドロームのいずれの配列型もとることができる。
セルロース分解酵素遺伝子は、セルロースを分解し得る酵素の遺伝子であれば特に限定されないが、予めリグノセルロース材料を処理する微生物がもつセルロース分解力を抑制する配列をもつものであればいずれのものでもよい。例えば、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子、CBHI遺伝子、CBHII遺伝子及びEG遺伝子が好ましい。また、ヘミセルロース分解酵素遺伝子は、ヘミセルロースを分解し得る酵素の遺伝子であれば特に限定されないが、リグノセルロース材料を前処理する微生物がもつヘミセルロース分解力を抑制する配列をもつものであればいずれのものでもよい。例えば、キシラナーゼ遺伝子、マンナナーゼ遺伝子が例示される。本発明では、これらの遺伝子を2種以上、好ましくは3種以上、さらに好ましくは4種以上、特に好ましくは上記の4種の他にアイソザイムをコードする遺伝子も含めて6種以上、組み合わせることにより、セルロースおよび/またはヘミセルロース分解性の抑制を強めた株を得ることができる。
また、アンチセンスRNAがmRNAと結合して二本鎖を形成し、それがmRNAのタンパク質への翻訳を阻害する限り、アンチセンスDNA配列に1又は複数の、好ましくは1もしくは数個の、欠失、置換又は付加等の変異が含まれていてもよいし、あるいはアンチセンスDNAは、天然型に対応するアンチセンスDNA配列と比べて約90%以上、好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性もしくは同一性を有していてもよい。このような変異は、オリゴヌクレオチド部位特異的突然変異法やカセット変異法などの周知の部位特異的突然変異技術(例えばShort protocols In Molecular Biology, Third Edition, John Wiley & Sons, Inc.)を用いて実施できる。
上記の合成DNA断片を構成する各アンチセンスDNA断片の配列の長さは、本発明のいずれかのセルロース分解酵素遺伝子および/またはヘミセルロース分解酵素遺伝子の発現を抑制し得る長さであれば適宜設定可能であり、セルロース分解酵素遺伝子および/またはヘミセルロース分解酵素遺伝子のゲノムヌクレオチド配列または成熟ヌクレオチド配列と等しい長さである必要は必ずしもなく、該配列の一部、例えばゲノム上のセルロース分解酵素遺伝子配列の複数のエキソンのうちの1つのエキソン配列、または該エキソン配列の少なくとも30塩基(もしくは塩基対)、少なくとも50塩基(もしくは塩基対)、好ましくは少なくとも100塩基(もしくは塩基対)、より好ましくは少なくとも200塩基(もしくは塩基対)からなる断片であってもよい。
アンチセンスDNAの調製及び該配列を利用する方法については、当業者に公知の常法に従って実施することができる。具体的には、セルロース分解酵素遺伝子のアンチセンスDNAは、セルロース分解酵素遺伝子の少なくとも1つのエキソン領域を含むDNAが得られるようにPCR法にて増幅を行ったり、セルロース分解酵素遺伝子を適当な制限酵素で消化して得ることができる。また、セルロース分解酵素遺伝子のcDNAからも取得可能である。目的のcDNAはcDNAライブラリーを既知の手法で作製したのち、該酵素遺伝子のユニーク配列に基くプライマー対を用いたPCR法によって目的のcDNAを増幅することができる。さらには、このアンチセンスDNAは、セルロース分解酵素遺伝子の塩基配列情報(上記)をもとにして人工的に作られた合成DNAであってもよい。上記方法は、ヘミセルロース分解酵素遺伝子についても同様である。
PCR法については、具体的には、セルロースまたはヘミセルロース分解酵素遺伝子のゲノム配列(エキソン配列、イントロン配列、5'非翻訳領域または3'非翻訳領域)またはcDNA配列に基いて約15塩基以上、好ましくは約15〜約30塩基、さらに好ましくは約15〜約25塩基のセンスおよびアンチセンスプライマーを合成し、ゲノムDNAを鋳型にしてPCR反応を行うことによって例えばエキソン領域を含むDNA配列を増幅することができる。PCR反応条件については、例えば、F.S. Ausbelら, Short Protocols in Molecular Biology, 3版, A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology (1995年), John Wiley & Sons, Inc.の15章”The Polymerase Chain Reaction”等に記載の条件を使用することができる。PCRの反応条件は、例えばDNAの変性(例えば94℃、15〜30秒)、プライマーのアニーリング(例えば55℃、30秒〜1分)および伸長反応(例えば、72℃、30秒〜10分)を1サイクルとして通常25〜40サイクルである。またPCRには、Taqポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼなどの市販の耐熱性ポリメラーゼがDNA合成酵素として使用される。
上記の手法で合成されたアンチセンスDNAの2種類以上、好ましくは3種類以上、さらに好ましくは4種類以上、特に好ましくは6種類以上をアンチセンスの方向に結合する。結合の方法は直接、あるいはリンカーを介して結合することができる。アンチセンスDNAは種々の活性をもつセルロースまたはヘミセルロース分解酵素あるいはそのアイソザイムの遺伝子によってコードされるmRNA配列に相補的な配列を有する。本発明においては、できる限り多くの種類のアンチセンスDNAを結合することが好ましく、6種類以上、例えば、エンドグルカナーゼ61、エンドグルカナーゼ5、エンドグルカナーゼ12、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、セロビオースデヒドロゲナーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼからなる酵素のmRNAに相補的なアンチセンスDNA類が挙げられる。また各種のアンチセンスDNAの配列の順番は特に制限がなく、任意の順番でよいが、セルロース分解活性の高い順番、そしてヘミセルロース分解活性の高い順番に、プロモーターなどの発現制御配列に隣接して5'側から配置することもできる。
アンチセンスRNAが生成され得るように結合するには、発現制御配列例えばプロモーター配列を有するDNA断片の下流にアンチセンスの方向(逆向き方向)にアンチセンスRNAをコードするDNAを結合し、プロモーターの作動によりmRNAに転写させればよい。得られるmRNAは、上記酵素遺伝子の塩基配列のアンチセンスRNAである。
プロモーターとしては、プロモーターの作用を有する遺伝子断片であれば特に限定されることなく、あらゆる遺伝子のプロモーターを使用することができる。例えばセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター、GPD(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝子プロモーター、ras遺伝子プロモーターなどが挙げられる。これらのプロモーターは、GenBankに登録される配列、文献記載の配列等に基づいて周知のゲノムクローニング、PCR法、DNA合成などによって得ることができる。あるいは、寄託されている遺伝子については、分譲請求により入手可能なものを利用することができる。
プロモーター配列を含む遺伝子とセルロース分解酵素遺伝子又は該遺伝子のアンチセンスRNAをコードするDNAは、必要に応じて制限部位の導入、平滑末端化または付着末端化後、適当なDNAリガーゼを用いて連結することができる。クローニング、連結反応、PCR等を含む組換えDNA技術は、例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989及びF.S. Ausbelら(上記)に記載されるものを利用することができる。
ベクターの種類は特に限定されないが、このベクターによって形質転換される宿主の種類に応じて選択される。ベクターとしては、原核または真核生物宿主細胞において自律複製可能または染色体中に相同組換え可能なベクターを使用することができる。ベクターの例は、pUCベースプラスミド(例えばpUC19)、pBluescript(Stratagene)、YIp5(ATCC 37061)などを含むプラスミド、ファージ、ウイルス、コスミドなどである。ベクターは、選択マーカー、複製開始点、ターミネーター、ポリリンカー、エンハンサー、リボゾーム結合部位などを適宜含むことができる。細菌、真菌、酵母、動物、植物などの原核および真核生物用の種々のベクターが市販されているかあるいは文献等に記載されており、これらを利用して本発明のセルロース分解酵素遺伝子類の複数のアンチセンスRNAをコードする連結DNA又は組換えDNAをベクターに導入することができる。
ベクターへのDNA導入は、例えば、J. Sambrookら(上記)に記載される技術を使用して実施することができる。例えば、ユニバーサルベクター、ポリリンカー導入ベクターなどのベクターを使用することによって、特定の部位に、例えばプロモーター、アンチセンスDNAおよびターミネーターを含むカセットを該ベクターに組み込むことができる。なお、アンチセンスRNAをコードするDNA又は組換えDNAをベクターに導入するにあたっては、上述のように、転写によりセルロース分解酵素遺伝子のアンチセンスRNAが生成するように導入する。得られた組換えDNAを環状のまま形質転換に用いることも可能である。また他の生物由来の遺伝子を同時に形質転換することを避けるために、必要な領域のみを切り出して形質転換に供することも可能である。
上記ベクターもしくはDNA断片を用いた形質転換を行い、セルロース分解力を抑制した微生物を調製する。ここで宿主細胞は、担子菌、真菌類、酵母類を含む菌類だけではなく、他の真核細胞(動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、藻類など)や原核細胞(細菌、藍藻など)であっても、本発明のセルロース分解酵素遺伝子のアンチセンスRNAをコードするDNAの発現においてプロモーター活性を発揮できるならば、いずれの宿主細胞も使用可能である。このうち、好ましい宿主細胞は、リグニン分解力を有する担子菌、更に好ましくは白色腐朽菌、特に好ましくはコリオラス属、例えばアラゲカワラタケである。例えば、具体的には、後述の実施例に記載されているアラゲカワラタケのオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ活性を欠損している栄養要求性変異株OJI-1078(FERM BP-4210)などを宿主として使用できる。
形質転換法としては、塩化カルシウム/PEG法、リン酸カルシウム法、酢酸リチウム法、エレクトロポーレション法、プロトプラスト法、スフェロプラスト法、リポフェクション法、アグロバクテリウム法などを例示できるが、これらに限定されない。
<リグノセルロース材料からの繊維成分の製造>
本発明の実施形態によると、本発明の方法は、少なくとも4種類の異なるセルロース分解酵素遺伝子の各転写産物の全部またはその一部に対して実質的に相補的なアンチセンスDNA断片を任意の順序で連結した合成DNA断片を作製し、該合成DNA断片を発現制御配列と作動可能に連結した発現ベクターを作製し、該発現ベクターで、リグニン分解性のある微生物を形質転換して形質転換微生物を作製し、セルロース分解力を抑制した該微生物を該リグノセルロース材料と接触させて該材料中のリグニンを分解し、リグニン分解した該材料から繊維成分を得ることを含む。
もう一つの本発明の実施形態によると、本発明の方法は、少なくとも1種類の異なるヘミセルロース分解酵素遺伝子の各転写産物の全部またはその一部に対して実質的に相補的な合成アンチセンスDNA断片を作製し、該合成DNA断片を発現制御配列と作動可能に連結した発現ベクターを作製し、該発現ベクターで、リグニン分解性のある微生物を形質転換して形質転換微生物を作製し、ヘミセルロース分解性を抑制した該微生物を該リグノセルロース材料と接触させて該材料中のリグニンを分解し、リグニン分解した該材料から繊維成分を得ることを含む。
また、より好ましい実施形態は、上記と同様なアンチセンス法により、4種以上のセルロース分解酵素遺伝子と1種以上のヘミセルロース分解酵素遺伝子の発現を同時に抑制した形質転換微生物を作製し、セルロース及びヘミセルロース分解性を抑制した該微生物を該リグノセルロース材料と接触させて該材料中のリグニンを分解し、リグニン分解した該材料から繊維成分を得る方法である。
本明細書中で使用される「実質的に」という用語は、アンチセンスRNAがmRNAと結合して二本鎖を形成し、それがmRNAのタンパク質への翻訳を阻害する限り、アンチセンスDNA配列は、天然型に対応する配列と比べて1もしくは複数の、好ましくは1もしくは数個の、欠失、置換または付加等の変異が含まれていてもよいこと、あるいは約90%以上、約95%以上もしくは約98%以上の相同性を有すること、を意味する。%相同性(または%同一性)は、ギャップを導入した配列アラインメント比較により決定され得る全アミノ酸数に対する異なるアミノ酸数のパーセンテージである。%同一性は、例えば公知のBLASTプログラムを用いて求めることができる。
本発明で対象となるリグノセルロース材料は、木材、竹、綿、リンター、トウモロコシ穂軸、バガス、ビール粕、わら類、もみ殻等の農産廃棄物、古新聞、雑誌、段ボール、オフィス古紙、パルプ及び製紙メーカーから排出する廃パルプ等が挙げられる。本発明においてはリグニン含量の高い木材および農産廃棄物等において特にその効果を発揮する。
紙の原料となるパルプを紙パルプの製造方法によって取り出す場合、木材を機械的に2〜3cm、厚さ約5mmの大きさに小片化した木材チップが挙げられる。例えばマツ、スギ、モミ、トウヒ、ダグラスファー、ラジアータパイン等の針葉樹及びブナ、カバ、ハンノキ、カエデ、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ラワン、ゴム等の広葉樹を含む木材から得られ、パルプ等の原料として用いることができるものであればいずれの材種のチップをも用いることができる。
リグノセルロース材料はセルロースおよび/またはヘミセルロース分解性を抑制した微生物で処理される。セルロースおよび/またはヘミセルロース分解性を抑制した微生物が十分に生育するのであれば、リグノセルロース材料は前処理なくそのまま用いることができるが、他の微生物を殺菌する前処理を実施した方がセルロースおよび/またはヘミセルロース分解性を抑制した微生物が生育しやすいのであれば、オートクレーブやスチーミング等により、セルロースおよび/またはヘミセルロース材料を予め処理することが好ましい。
リグノセルロース材料を、セルロースおよび/またはヘミセルロース分解性を抑制した微生物で処理する温度は10〜60℃が好ましく、さらに好ましくは20〜35℃である。リグノセルロース材料中の水分は20〜80%、好ましくは30〜50%とするのがよい。接種後リグノセルロース材料への空気供給量はセルロース分解力を抑制した微生物が十分に生育可能であれば必要ないが、通常、対チップもしくはリグノセルロース材料容積1L当たりに供給する空気量は毎分0.001〜1 L/(L・min)(以下、空気供給量の単位 L/(L・min)をvvmと称する)とするのがよく、好ましくは、対チップもしくはリグノセルロース容積当たり0.01 vvm〜0.1 vvmである。
セルロースおよび/またはヘミセルロース分解性を抑制した微生物のリグノセルロース材料への接種量は、パルプ収率や紙力を軽減することがない限り、適宜設定することができる。例えば白色腐朽菌で処理する場合には、原料表面積1平方cm当り0.01〜1,000,000個程度、特に好ましくは0.1〜1,000個のコロニーを生ずるように菌体を噴霧、あるいは滴下し、該菌株の増殖に適した条件、すなわち適当な温度とpHに保つことが好ましい。アラゲカワラタケの場合、0℃〜40℃、pH4〜pH8の範囲が好ましい。
セルロースおよび/またはヘミセルロース分解性を抑制した微生物は、滅菌水とともに粉砕し、リグノセルロース材料に対して植菌して培養することができるが、リグノセルロース材料に培地を添加して処理してもよい。培地は、セルロースおよび/またはヘミセルロース分解力を抑制した微生物が生育できるのであればいずれの培地をも用いることができる。例えば、炭素源としては、グルコース、セロビオース、非晶性セルロース等を使用することができる。また、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、各種アミノ酸、大豆粕、コーンスティープリカー、各種無機窒素などの窒素化合物を用いることができる。さらに、必要に応じて、各種塩類やビタミン、ミネラル等を適宜加えることができる。
セルロースおよび/またはヘミセルロース分解性を抑制した微生物によって処理したリグノセルロース材料からは、繊維成分としてパルプまたはセルロース・ヘミセルロースを得ることができる。
<繊維成分からの有用物質の製造>
本発明の方法においては、リグノセルロース材料から得られた繊維成分から有用物質を製造する。繊維成分はセルロースまたはパルプ繊維からなり、本発明の有用物質として、例えば、パルプ繊維から紙パルプを、またセルロース繊維から単糖類、多糖類、オリゴ糖類などの糖類を製造することができる。
<紙パルプの製造>
上記の方法によって得られた繊維成分は、紙パルプの製造のために使用することができる。
本発明の微生物による処理を施された木材チップは、その後、機械的な処理による機械パルプあるいは化学的な処理による化学パルプとして製紙用のパルプ原料となる。
化学パルプ化法は、アルカリなどの薬品を用いて化学的に木材繊維からセルロース以外の成分を分解・溶出して繊維を取り出す方法である。一方、機械パルプ化法は、本方法で処理した木材チップを機械的に粉砕して繊維化する方法である。また、セミケミカルパルプ化法は、機械パルプ化法と化学パルプ化法の中間的な方法であって、アルカリ薬品によりチップが軟化する程度まで蒸解した後にリファイナーで繊維化する方法である。本発明では、紙パルプの製造において、上記方法のいずれも使用できる。
機械パルプの一例としてはサーモメカニカルパルプ(TMP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、ケミグラウンドパルプ(CGP)などが挙げられる。
化学パルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法が好適に用いられる。例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは15〜45%、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、蒸解温度は130〜170℃である。
クラフト蒸解には、修正連続蒸解法(Modified Continuous Cooking)、拡大修正連続蒸解法(Extended Modified Continuous Cooking)、全缶等温蒸解法(Isothermal Cooking)、Lo−Solids蒸解法、スーパーバッチ蒸解法、Compact蒸解法なども含む。
本発明の微生物による処理を施された木材チップから得られる特にサーモメカニカルパルプ(TMP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)などの機械パルプにおいては解繊エネルギーの減少や紙力の増加が認められた。また、クラフトパルプやサルファイトパルプなどの化学パルプの製造においては蒸解性の向上や紙力の増加が得られる。
<糖類の製造>
上記の方法によって得られた繊維成分は、直接あるいは乾燥させてからその後の糖化反応に用いることができる。また、上記の菌処理と糖化反応を同時に行うこともできる。さらに、物理的前処理および/または化学的前処理を菌処理の前後に施すこともできる。
糖化反応においてセルラーゼの添加量はバイオマス1gに対し濾紙分解活性で0.01〜1000単位、特に好ましくは0.1〜100単位が経済的に効率が高く適している。本発明で使用するセルラーゼとしては市販のセルラーゼがいずれも使用可能であるが、例えば、トリコデルマ(Tricoderma)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、イルペックス(Irpex)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、サーモモノスポラ(Thermomonospora)属、クロストリディウム(Clostridium)属等由来のセルラーゼを使用できる。
セルラーゼを添加した反応液を約20〜60℃で約0.5〜72時間撹拌あるいは静置することにより、セルロースが加水分解されてセロオリゴ糖およびグルコースへ変換する。また共存するヘミセルロース分解酵素(別名ヘミセルラーゼ)によって、ヘミセルロースからキシロオリゴ糖やキシロース、マンノース、アラビノースなどの糖類に分解される。以上の反応により、原料として用いるバイオマスにも依存するが、バイオマスに存在する多糖類の糖化率は、セルロース分解性を抑制したリグニン分解菌を用いて前処理を施すことにより向上させることができる。
本発明の方法によって得られる繊維成分はまた、上記のように糖化したのちアルコール(例えば、エタノール)などのバイオマスの原料としても使用できる。すなわち、アルコール発酵菌(例えば、酵母)の存在下で該繊維成分からの糖を原料にしてアルコールを製造することができる。エタノールは、燃料用、工業用および飲料用として、世界的に需要が高い。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの具体例に限定されないものとする。
[実施例1]
a)アンチセンス鎖を発現するプロモーターを有するベクタープラスミドの調製
パルプ上でアラゲカワラタケを培養したときに酵素活性が高いセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーター領域の増幅を行うため、アラゲカワラタケのゲノムDNAを鋳型にして、5'- GAGGATCGCAACCGCG -3'(配列番号1)に示すプライマーと5'- GTTGCTGACATGGCAC-3'(配列番号2)に示すプライマーを用いてPCR反応を行った。得られた約2.2kbのDNA断片は、TOPO TA Cloning Kit (Invitrogen 社製)を用いてクローニングを行い、pTACDHPを得た。プロモーター領域において翻訳開始点の約800 bp上流に、NcoIサイトが存在したため、pTACDHPを制限酵素NcoIで消化後、末端平滑化反応を行い、再度ライゲーション反応を行った。このプラスミドは、制限酵素BamHI、制限酵素NotIで消化後、pBluescriptII SK+プラスミドを制限酵素BamHIならびに制限酵素NotIで消化したベクターに導入し、pCDHPとした。
さらにpCDHPの下流にマンガンパーオキシダーゼ遺伝子(MnP)のイントロンを含む3’末端領域(0.8 kb)を導入するために、アラゲカワラタケ由来MnP遺伝子を含むプラスミドpBSMPOG1を鋳型に、5'- CACCATGGCCTTCCCGACCCTTC -3'(配列番号3)に示すプライマーと5'- GCGGCCGCGGGTACTGTG -3'(配列番号4)に示すプライマーを用いて、PCR反応を行った。得られた0.8 kbのDNA断片はTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行った後、得られたプラスミドを制限酵素NcoIと制限酵素NotIで消化した後、アガロースゲル電気泳動により0.8 kbのDNA断片を回収し、上記プラスミドpCDHPを制限酵素NcoIと制限酵素NotIで消化したベクターpCDHPに導入し、プラスミドpCDHP-Mnpterとした。
b)アンチセンス鎖発現プラスミドの調製
エンドグルカナーゼ・ファミリー61遺伝子(EG61)のDNA断片を増幅するため、チップ上で生育中のアラゲカワラタケから作成したcDNAライブラリーを鋳型に、A61NcoIN1:5’-CATGCCATGGGTCATGTTCTCGTCTAC-3’ (配列番号5)に示すプライマーとA61NcoIC1:5’-CATGCCATGGATTCACCAGCCTTGAGC-3’(配列番号6)に示すプライマーを用いてPCRにより増幅し、430bpの断片をTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行い、得られたプラスミドを5’-GTAAACGACGGCCAG-3’(配列番号7)に示すM13フォワード(-20)プライマーを用いて解析を行い、pCR-TOPO上に存在するlacZ遺伝子(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)に対し、センス方向に挿入されているクローンを選抜し、pTA-EG61とした。
次にセロビオヒドロラーゼII遺伝子の第三エクソン領域(620 bp)を増幅するためにゲノムDNAを鋳型に、制限酵素サイトを付加したH3-Nco-CBH2F:5’-cccaagcttCCATGGATCTACCTGAGC-3’ (配列番号8)に示すプライマーとH2-CBH2R:5’-gccgtcaacTCACTAGTGGCGAGAC-3’(配列番号9)に示すプライマーを用いてPCRを行った。得られたDNA断片は制限酵素HindIII、制限酵素HincIIで消化し、挿入断片を得た。このDNA断片を上記プラスミドpTA-EG61を制限酵素HindIIIならびに制限酵素HincIIで消化したベクターに導入し、pTA-CBHII-EG61とした。
次にセロビオヒドロラーゼI-27遺伝子の第三エクソン領域(750 bp)を増幅するため、ゲノムDNAを鋳型に、制限酵素サイトを付加したSac1-CBH27F:5’-ccgagctcCAACGTCCTCGGCTG-3’ (配列番号10)に示すプライマーとXba-Nco-CBH27R:5’-gctctagaCCATGGGTAGGTCGAG-3’(配列番号11)に示すプライマーを用いてPCR法にて増幅した。得られたDNA断片を制限酵素SacI、制限酵素XbaIで消化し、挿入断片を得た。このDNA断片を上記プラスミドpTA-CBHII-EG61を制限酵素SacI、制限酵素XbaIで消化したベクターに導入し、プラスミドpTA-CBHII-EG61-CBHIとした。
さらに、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子の630 bpのDNA断片を増幅するためにゲノムDNAを鋳型に、制限酵素サイトを付加したSac1-CDHf1:5’-ccgagctcTCTTTACTGGTACCCCAAC-3’ (配列番号12)に示すプライマーとSac1-CDHr1:5’-ccgagctcGTTGATCGACGGGTTGTC-3’(配列番号13)に示すプライマーを用いてPCR法にて増幅した。得られたDNA断片は制限酵素SacIで消化し、挿入DNA断片を得た。このDNA断片を上記プラスミドpTA-CBHII-EG61-CBHIをSacIで消化したベクターに導入し、得られたプラスミドを配列番号11に示すプライマーと配列番号12に示すプライマーを用いてPCRを行い約1.4kbのDNA断片が増幅されるクローンを選抜し、pTA-CBHII-EG61-CDH-CBHIとした。
さらに、エンドグルカナーゼ・ファミリー5遺伝子(EG5)の500 bpのDNA断片を取得するため、チップ上で生育しているアラゲカワラタケから作成したcDNAライブラリーを鋳型に、sac-EG5f2:5’-ccgagctcGGCAGAAGCTTGCCGCTGA-3’(配列番号14)に示すプライマーとxho-EG5r2:5’-ccgctcgagGCCTGCTGCATCTCGCAGA-3’(配列番号15)に示すプライマーを用いてPCRを行い、DNA断片を増幅した。得られたDNA断片はTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行い、M13プライマーによる解析の結果、βガラクトシダーゼ遺伝子とセンス方向に挿入されているクローンをpTA-EG5とした。
また、エンドグルカナーゼ・ファミリー12遺伝子(EG12)の500 bpのDNA断片を取得するため、チップ上で生育しているアラゲカワラタケから作成したcDNAライブラリーを鋳型にxho-EG12f1:5’-ccgctcgagGAAGAGCTTCACGAACATCCAG-3’(配列番号16)に示すプライマーとXba-EG12r1:5’-gctctagaACATGTTTCGTCTCCCTAGTTGATA-3’(配列番号17)に示すプライマーを用いてPCR法にて増幅した。得られた断片は制限酵素XhoIならびに制限酵素XbaIで消化後、上記で得られたプラスミドpTA-EG5を制限酵素XhoIならびに制限酵素XbaIで消化したベクターに導入し、pTA-EG5-EG12とした。
EG5とEG12を含むDNA断片を調製するためにkpn-EG5f:5’-ggggtaccGGCAGAAGCTTGCCGCTGA-3’(配列番号18)に示すプライマーとkpn-EG12r:5’-ggggtaccACATGTTTCGTCTCCCTAGTTGATA-3’(配列番号19)に示すプライマーを用いてPCRを行った。得られたDNA断片を制限酵素KpnIで消化し、両端にKpnIサイトを持つ約1kbの断片を得た。この断片を4種類のセルロース分解酵素遺伝子断片を持つプラスミドpTA-CBHII-EG61-CDH-CBHIのCDH遺伝子部位に存在するKpnIサイトに導入し、6種の遺伝子断片が同方向に連結したDNA配列をもつプラスミドpTA-CBHII-EG61-EG5-EG12-CDH-CBHIを調製した。
次にCDH遺伝子プロモーター領域を含むプラスミドpCDHP-Mnpterにセルロース分解酵素遺伝子のDNA断片をアンチセンス方向に挿入する操作を行った。上記プラスミドから6種類のセルロース分解関連酵素遺伝子のDNA断片を含む領域を増幅するため、H3-Nco-CBH2F:5’-cccaagcttCCATGGATCTACCTGAGC-3’(配列番号20)に示すプライマーとXba-Nco-CBH27R:5’-gctctagaCCATGGGTAGGTCGAG-3’(配列番号21)に示すプライマーを用いて上記プラスミドpTA-CBHII-EG61-EG5-EG12-CDH-CBHIを鋳型にPCR反応を行い、約3.4kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片はNcoIで消化後、pCDHP-Mnpterのプロモーター領域とMnp遺伝子3’末端領域の連結部位のNcoIサイトにセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターに対してアンチセンス方向に挿入した。プロモーター領域の下流には順にCBHI-27、CDH、EG12、EG5、EG61、CBHII遺伝子断片が連結している(配列番号34)。以上の操作により、CDH遺伝子のプロモーターにより6種類のセルロース分解酵素遺伝子断片のアンチセンスRNAが転写される、アンチセンス鎖発現プラスミドpCDHP-T6とした。
[実施例2]
アラゲカワラタケの形質転換
a)一核菌糸体培養
直径6mm前後のガラスビーズを約30個入れた500 ml容三角フラスコにSMY培地(シュークロース1 %、麦芽エキス1 %、酵母エキス0.4 %)100 mlを分注して滅菌後、アラゲカワラタケOJI-1078株の平板寒天培地から直径5mmの寒天片をコルクボーラーで打ち抜きSMY培地に植菌し、28 ℃で7日間静置培養した(前培養)。ただし、菌糸を細分化するために、1日に1〜2回振り混ぜた。次に、1L容の三角フラスコにSMY培地200 mlを分注し、さらに回転子を入れ、滅菌後、前培養菌糸をナイロンメッシュ(孔径30 μm)で濾集し、全量を植菌し、28 ℃で培養した。なお、スターラーで1日2時間程度撹拌することにより菌糸を細分化した。この培養を4日間行った。
b)プロトプラストの調製
上記液体培養菌糸をナイロンメッシュ(孔径30 μm)で濾集し、浸透圧調節溶液(0.5 M MgSO4 、50mlマレイン酸バッファー(pH 5.6))で洗浄した。次に、湿菌体100 mgあたり1 mlの細胞壁分解酵素液に懸濁し、緩やかに振盪しながら28℃で3時間インキュベートしてプロトプラストを遊離させた。細胞壁溶解酵素として、次の市販酵素製剤を組み合わせて使用した。即ち、セルラーゼ・オノズカ(cellulase ONOZUKA RS)(ヤクルト社製、東京、日本)5 mg、ヤタラーゼ(Yatalase)(宝酒造社製、京都、日本)10 mgを上記浸透圧調節溶液1 mgに溶解して酵素液として用いた。
c)プロトプラストの精製
上記酵素反応液からナイロンメッシュ(孔径30μm)で菌糸断片を除いた後、プロトプラストの回収率を高めるため、ナイロンメッシュ上に残存する菌糸断片とプロトプラストを上記浸透圧調節溶液で1回洗浄した。得られたプロトプラスト懸濁液を遠心分離(1,000×g、5分間)し、上静を除去し、4 mlの1Mシュークロースを含む20 mM MOPS緩衝液(pH 6.3)で再懸濁後、遠心操作を繰り返し、上記1Mシュークロース溶液で2回洗浄した。沈殿物に1Mソルビトールを含む20 mM MES緩衝液(pH 6.4)に40 mM塩化カルシウムを加えた溶液500 μlに懸濁し、プロトプラスト懸濁液とした。この懸濁液を4℃で保存した。
プロトプラスト濃度は血球計算盤を用いて、直接検鏡により求めた。すべての遠心操作はスウィングローターで1,000×g、5分間、室温で行った。
d)形質転換
約106個/100 μlのプロトプラスト懸濁液100 μlに対して、実施例1で作製したプラスミドpCDHP-T6を制限酵素BamHIとNotIで切り出し、アラゲカワラタケDNA部分のみをアガロースゲルから回収したDNA断片を2μg添加した。さらに選択マーカーとして、アラゲカワラタケ由来のオルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ遺伝子を保持するプラスミドpUCR1(特開平6-054691号公報;FERM BP-4201)を制限酵素SalIで処理し、アラゲカワラタケ部分のみをアガロースゲルから回収し、0.2 μg添加し30分間氷冷した。次に、液量に対して等量のPEG溶液(50 % PEG 3400を含む20 mM MOPS緩衝液(pH6.4))を加え、30分間氷冷した。次に、0.5 Mシュークロースおよびロイシンを含む最小寒天培地(寒天1%)に混合してシャーレに撒いた。上記シャーレを28 ℃で数日間培養を行い、形質転換体を得た。さらに形質転換体からDNAを調製し、目的とするセルロース分解遺伝子のアンチセンス鎖発現プラスミドpCDHP-T6が組み込まれていることをPCR法により確認した。
[実施例3]
セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体の選抜
前記形質転換法にて単離された形質転換体は酸素漂白後広葉樹パルプ(LOKP)・ペプトン培地(LOKP 1 %、ポリペプトン1 %、KH2PO4 0.15 %、 MgSO4 0.05 %、リン酸でpH 5.0に調製)を100 mlずつ含む300 ml容三角フラスコに植菌し、28 ℃、120 rpmで振盪培養した。セロビオヒドロラーゼI活性、セロビオースデヒドロゲナーゼ活性、CMC分解活性を経時的に測定した。その結果、培養5日目において、セロビオヒドロラーゼI活性を70%、セロビオースデヒドロゲナーゼ活性を83 %、CMC分解活性を83 %抑制された形質転換体を得ることができた。
[実施例4]
セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体で処理した木材チップからの機械パルプの製造
実施例3により選抜したセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換株をポテトデキストロース寒天培地上で28 ℃にて培養した後、4℃で保存した。このプレートから直径5mmのコルクボーラーで打ち抜いた切片を5つずつ、グルコース・ペプトン培地(グルコース3 %、ポリペプトン1 %、KH2PO4 0.15 %、MgSO4 0.05 %、リン酸でpH 5.0に調製)を100 mlずつ含む300 ml容三角フラスコに植菌し、28℃、100 rpmで1週間振盪培養した。培養後、菌体をろ別し、菌体に残存した培地を滅菌水で洗浄した。菌体は滅菌水と共に、ワーリングブレンダーで45秒間粉砕し、絶乾重量1 kgのラジアータパインチップに対し、菌体の乾燥重量が5 mgになるように植菌した。植菌後は菌が全体に行き渡るようによく撹拌した。培養は28 ℃で通気をしながら2週間静置培養を行った。チップ含水率が40〜65 %になるように随時飽和水蒸気を通気させた。通気する際の通気量は対チップ当り、0.01 vvmになるように行った。
菌処理後の木材チップをラボ用リファイナー(熊谷理機工業社製、東京、日本)を用いて叩解して、カナディアンスタンダードフリーネスを200 mlとした後、パルプ物理用試験用手抄きシートの調製はJIS試験法(P8209)に準拠して、パルプ手抄きシートの物理試験はTappi法T220 om-83に準拠して行った。使用電力量はワットメーター(Hiokidenki model 3133)と積分計(model 3141)を用いた。チップ収率測定は水分を含んだ木材チップを容器に絶乾重量で1 kg分取し、処理前後のチップ絶乾重量を測定し、以下の式を用いてチップ収率を算出した。
チップ収率 =(処理後の絶乾重量)/(処理前の絶乾重量)×100
結果を表1に示す。
[比較例1]
アラゲカワラタケ野生株を用いた機械パルプの製造
実施例4で、セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換株の代わりにアラゲカワラタケの野生株を用いた他は、同様の方法で実験を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
菌処理を行なわないチップを用いた機械パルプの製造
実施例4で、菌を接種することなしに同様に実験を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体により処理したチップのクラフトパルプの製造
実施例4に準じてラジアータパインの代わりにユーカリ材のチップ処理を行った後、絶乾重量400 gのチップを測りとりオートクレーブ内で液比5、硫化度30 %、有効アルカリ15 %(Na2Oとして)となるように蒸解白液を加え、蒸解温度を150 ℃から165 ℃の間で蒸解後のカッパー価が16になるようにクラフト蒸解を行った。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを高濃度離解機によって解繊後、濾布で遠心脱水と水洗浄を3回繰り返した。次いでスクリーンにより、未蒸解の粕を分離し、遠心脱水し蒸解未漂白パルプを得た。粕は105 ℃で乾燥後絶乾重量を測定した。また未漂白パルプの一部を採って絶乾重量を測定し、チップからの収率(精選収率)を求めた。またパルプのカッパー価の測定を、JIS P 8211に準じて行った。結果を表2に示した。
次にクラフト蒸解して得られたパルプに対して、NaOHを2.0質量%添加し、酸素ガスを注入し、100 ℃、酸素ゲージ圧0.49 MPa(5 kg/cm2)で60分間処理を行った。
続いて得られたパルプを下記に示すように、二酸化塩素処理(D)−アルカリ抽出処理(E)−過酸化水素処理(P)−二酸化塩素処理(D)の4段漂白処理を行った。最初の二酸化塩素処理(D)は、パルプ濃度が10質量%となるように調製し、二酸化塩素を0.4質量%添加し、70 ℃、40分間処理を行った。次いで、イオン交換水にて洗浄、脱水後、パルプ濃度を10質量%に調製し、苛性ソーダを1質量%添加し、70 ℃、90分間のアルカリ抽出処理(E)を行った。次いで、イオン交換水にて洗浄、脱水後、パルプ濃度を10質量%に調製し、過酸化水素0.5質量%、苛性ソーダ0.5質量%を順次添加し、70 ℃、120分間の過酸化水素処理(P)を行った。次いで、イオン交換水にて洗浄、脱水後、パルプ濃度を10 %に調製し、二酸化塩素0.25質量%を添加し、70 ℃、180分間二酸化塩素処理(D)を行った。最後にイオン交換水にて洗浄、脱水後、JIS P 8123に準じた白色度86.0 %の漂白パルプを得た。
上記で得たパルプ濃度が4質量%のパルプスラリーをリファイナーによりフリーネスが410 ml(CSF)となるように叩解した。パルプ物理試験用手抄きシートの調製はJIS試験法(P8209)に準拠して、パルプ手抄きシートの物理試験はTappi法T220 om-83に準拠して行った。結果を表2に示す。
[比較例3]
アラゲカワラタケ野生株を用いたクラフトパルプの製造
実施例5で、セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換株の代わりにアラゲカワラタケの野生株を用いた他は、同様の方法で実験を行った。結果を表2に示す。
[比較例4]
菌処理を行わないチップを用いたクラフトパルプの製造
実施例5で、菌を接種することなしに同様に実験を行った。結果を表2に示す。
[実施例6]
セルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体によるリグノセルロース材料の処理
バガス1 gを121 ℃で20分間滅菌した後、ポリペプトン 10 g/L、酵母エキス 5 g/L、KH2PO4 1.5 g/L、MgSO4・7H2O 0.5 g/L、チアミン−HCl 2 mg/Lの組成からなる培地と、実施例3で得られた6種類のセルロース分解関連遺伝子をアンチセンス方向にタンデムに連結したセルラーゼ活性抑制リグニン分解菌の培養液を3 ml加え、30 ℃で20日間静置した。
10日後、バガスに対して1.5質量%となるようにNaOHを加え、70℃、60分間処理した。上記アルカリ抽出後、バガスを蒸留水で洗浄・脱水後、105 ℃で一晩乾燥させ乾燥重量から重量減少率を求め、またJ. TAPPI 222に準拠してクラソンリグニン量を測定し、クラソンリグニン減少率を求めた。結果を表3に示す。
[比較例5]
アラゲカワラタケ野生株を用いたリグノセルロース材料の処理効果
実施例6で、セルラーゼ活性抑制リグニン分解菌の代わりにアラゲカワラタケ野生株を用いた他は同様に実験を行った。結果を表3に示す。
[比較例6]
原料バガスのクラソンリグニン量
実施例6で、原料のバガスのクラソンリグニン量を測定した。結果を表3に示す。
[実施例7]
セルロース分解活性を抑制した形質転換体で処理したリグノセルロース材料の糖化
実施例6で得られたアルカリ抽出後のリグノセルロース材料を100 mlの酢酸緩衝液(pH 4)に加え、0.5 gの市販のセルラーゼ(Trichoderma longibrachiatum起源)を添加して50 ℃で48時間攪拌することにより、リグノセルロース材料に含まれるセルロースを糖化した。糖化後濾別し、濾液中の全糖濃度(グルコース換算)をフェノール硫酸法により測定した。原料バガス1 gからの収率を計算し、結果を表4に示す。
[比較例7]
アラゲカワラタケ野生株で処理したリグノセルロース材料の糖化
実施例7で、セルロース分解活性を抑制した形質転換体の代わりにアラゲカワラタケ野生株を用いた他は同様に実験を行った。結果を表4に示す。
[比較例8]
菌処理を行なわない場合のリグノセルロース材料の糖化
実施例6,7で、菌を接種せずに、実施例6と同様の培地を加えて静置、アルカリ抽出し、実施例7と同様に糖化した。結果を表4に示す。
[実施例8]
ヘミセルロース分解酵素遺伝子アンチセンス鎖発現プラスミドの調製
ヘミセルロース分解に関与するアラゲカワラタケのキシラナーゼ遺伝子1のDNA断片を増幅するため、木材チップ上で生育中のアラゲカワラタケから作成したcDNAライブラリーを鋳型に、chxyn1-N: 5’-GGTCGAGGGTCTAGGCCC-3’(配列番号22)に示すプライマーとchxyn1-C: 5’-GGCTCCTTGACCTCACGG-3’(配列番号23)に示すプライマーを用いてPCRにより増幅し、450bpの断片をTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行い、得られたプラスミドを配列番号7に示すM13フォワード(-20)プライマーを用いて解析を行い、pCR-TOPO上に存在するlacZ遺伝子(β-ガラクトシダーゼ遺伝子)に対し、センス方向に挿入されているクローンを選抜し、pTA-Xyn1とした。
次に、アラゲカワラタケのキシラナーゼ遺伝子2のDNA断片を増幅するために、上記cDNAライブラリーから制限酵素サイトを付加したkpn-chxyn2-N: 5’-CATGGTACCGCTGTCGCGGTCTGGGG-3’(配列番号24)に示すプライマーとbam-chxyn2-C: 5’-CATGGATCCGCCGAGACCCAGGACGG-3’(配列番号25)に示すプライマーを用いてPCRにより増幅し、480bpの断片を得た。得られたDNA断片を制限酵素KpnIとBamHIで消化し、挿入断片を得た。このDNA断片を上記プラスミドpTA-Xyn1を制限酵素KpnIと制限酵素BamHIで消化したベクターに導入し、プラスミドpTA-Xyn2-Xyn1を得た。
さらに、アラゲカワラタケのマンナナーゼ1遺伝子のDNA断片を増幅するために、上記cDNAライブラリーから制限酵素サイトを付加したEV-Man1-N: 5’-CATGGATATCCAATGGGATCAGGAGCC-3’(配列番号26)に示すプライマーとXh-Man1-C: 5’-CATGCTCGAGGCCACCATACCCGACCC-3’(配列番号27)に示すプライマーを用いてPCRを行い、約400bpのDNA断片を得た。得られたDNA断片は制限酵素EcoRV、ならびにXhoIにて消化し、挿入断片とした。このDNA断片を上記プラスミドpTA-Xyn2-Xyn1を制限酵素EcoRV,ならびにXhoIで消化したベクターに導入し、プラスミドpTA-Xyn2-Xyn1-Man1を得た。
また、アラゲカワラタケのマンナナーゼ2遺伝子のDNA断片を増幅するために、上記cDNAライブラリーから制限酵素サイトを付加したXh-Man2-N: 5’-CATGCTCGAGCGCCCCAGAGTGGGGAC-3’(配列番号28)に示すプライマーとXb-Man2-C: 5’-CATGTCTAGAGTTGGCCTTTGCCGCGG-3’(配列番号29)に示すプライマーを用いてPCRを行い、約500bpのDNA断片を得た。得られた断片は制限酵素XhoI、ならびにXbaIにて消化し、挿入断片とした。このDNA断片を上記プラスミドpTA-Xyn2-Xyn1-Man1を制限酵素XhoI、ならびにXbaIで消化したベクターに導入し、4種のヘミセルロース分解遺伝子断片が同方向に連結したDNA配列をもつプラスミドpTA-Xyn2-Xyn1-Man1-Man2を得た。
次にCDH遺伝子プロモーター領域を含むプラスミドpCDHP-Mnpterにヘミセルロース分解酵素遺伝子のDNA断片をアンチセンス方向に挿入する操作を行った。上記プラスミドから4種類のヘミセルロース分解関連酵素遺伝子のDNA断片を含む領域を増幅するため、Not-HT4-N: 5’-CATGGCGGCCGCCGCCCCAGAGTGGGGAC-3’(配列番号30)に示すプライマーとNot-HT4-C: 5’-CATGGCGGCCGGTTGGCCTTTGCCGCGG-3’(配列番号31)に示すプライマーを用いて上記プラスミドpTA- Xyn2-Xyn1-Man1-Man2を鋳型にPCR反応を行い、約1.9kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片はNotIで消化後、pCDHP-Mnpterのプロモーター領域とMnp遺伝子3’末端領域の連結部位のNotIサイトにセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターに対してアンチセンス方向に挿入されているクローンを選抜した。以上の操作によりプロモーター領域の下流には順にMan2、Man1、Xyn1、Xyn2遺伝子断片が連結している。これにより、CDH遺伝子プロモーターにより4種類のヘミセルロース分解酵素遺伝子断片のアンチセンスRNAが転写される、アンチセンス鎖発現プラスミドpCDHP-HCT4とした。
[実施例9]
アラゲカワラタケの形質転換
実施例2に準じてアラゲカワラタケにヘミセルロース分解酵素遺伝子アンチセンス鎖発現遺伝子を用いて形質転換を行い、目的とする抑制遺伝子pCDHP-HCT4が組み込まれていることをPCR法により確認した。
[実施例10]
ヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体の選抜
実施例9にて単離された形質転換体は実施例3に準じて培養を行い、30 ℃、120 rpmで振盪培養し、経時的にサンプリングを行い、キシラナーゼ活性ならびにマンナナーゼ活性を測定した。酵素活性はクエン酸ナトリウム緩衝液(pH 4.5)を用いて行った。エンド-β-1,4-D-キシラナーゼ活性はシグマ社製カバキシランを1%となるように溶解し、50℃で5分間 反応させることにより遊離する還元糖量をDNS法を用いて測定した。また、またエンド-β-1,4-D-マンナナーゼ活性は0.5%イナゴマメガラクトマンナン溶液中、50℃で5分間反応させ、遊離する還元糖量をDNS法により測定した。その結果、培養5日目において、上記で得られた形質転換株のキシラナーゼ活性は宿主細胞に比べ40%まで、またマンナナーゼ活性については20%まで抑制された。
[実施例11]
ヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体で処理した木材チップからの機械パルプの製造
実施例10により選抜したヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体を実施例4に準じて菌処理を行い、機械パルプを製造した。結果を表1に示す。
[実施例12]
ヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体により処理したチップのクラフトパルプの製造
実施例9により選抜した形質転換体を用いて、実施例5に準じてユーカリ材のチップ処理を行い、クラフトパルプを調製し、パルプ収率や物理的影響について評価した。結果を表2に示す。
[実施例13]
ヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体によるリグノセルロース材料の処理
実施例9により得られた形質転換体を用いて、実施例6に準じてリグノセルロース材料としてバガスに対して菌処理を行い、クラソンリグニン量を測定し、クラソンリグニン減少率を求めた。結果を表3に示す。
[実施例14]
ヘミセルロース分解活性を抑制した形質転換体で処理したリグノセルロースの糖化
実施例13で得られたアルカリ抽出後のリグノセルロース材料を実施例7に準じた方法で市販のセルラーゼ製剤で酵素処理し、リグノセルロースを糖化した。結果を表4に示す。
[実施例15]
セルロース分解酵素遺伝子ならびにヘミセルロース分解酵素遺伝子を含むアンチセンス鎖発現プラスミドの作製
キシラナーゼ1遺伝子(Xyn1)の450 bpのDNA断片を取得するため、チップ上で生育しているアラゲカワラタケから作成したcDNAライブラリーを鋳型に、配列番号22に示すプライマーと配列番号23に示すプライマーを用いてPCRを行い、DNA断片を増幅した。得られたDNA断片はTOPO TA Cloning Kit を用いてクローニングを行い、M13プライマーによる解析の結果、βガラクトシダーゼ遺伝子とセンス方向に挿入されているクローンをpTA-Xyn1とした。
また、マンナナーゼ2遺伝子(Man2)の500 bpのDNA断片を取得するため、チップ上で生育しているアラゲカワラタケから作成したcDNAライブラリーを鋳型に配列番号28に示すプライマーと配列番号29に示すプライマーを用いてPCR法にて増幅した。得られた断片は制限酵素XhoIならびに制限酵素XbaIで消化後、上記で得られたプラスミドpTA-EG5を制限酵素XhoIならびに制限酵素XbaIで消化したベクターに導入し、pTA-Xyn1-Man2とした。
ここでXyn1とMan2を含むDNA断片を調製するためにkpn-Xyn1f:5’-ggggtaccGTCGAGGGTCTAGGCCC-3’(配列番号32)に示すプライマーとkpn-Man2r:5’-ggggtaccGTTGGCCTTTGCCGCGG-3’(配列番号33)に示すプライマーを用いてpTA-Xyn1-Man2に対してPCRを行った。得られたDNA断片を制限酵素KpnIにて消化し、両末端にKpnIサイトを有する約1kbpの断片を得た。このDNA断片を4種類のセルロース分解酵素遺伝子断片を持つプラスミドpTA-CBHII-EG61-CDH-CBHIのCDH遺伝子部位に存在するKpnIサイトに導入し、6種のDNA断片が同方向に連結されたプラスミドpTA-CBHII-FG61-Xyn1-Man2-CDH-CBHIを調製した。
次にCDH遺伝子プロモーター領域を含むプラスミドpCDHP-Mnpterにセルロースならびにヘミセルロース分解酵素遺伝子のDNA断片をアンチセンス方向に挿入する操作を行った。上記プラスミドから6種類の酵素遺伝子のDNA断片を含む領域を増幅するため、配列番号20に示すプライマーと配列番号21に示すプライマーを用いて上記プラスミドpTA-CBHII-EG61-Xyn1-Man2-CDH-CBHIを鋳型にPCR反応を行い、約3.4kbのDNA断片を得た。得られたDNA断片はNcoIで消化後、pCDHP-Mnpterのプロモーター領域とMnp遺伝子3’末端領域の連結部位のNcoIサイトにセロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモーターに対してアンチセンス方向に挿入した。プロモーター領域の下流には順にCBHI-27、CDH、EG12、Xyn1、Man2、CBHII遺伝子断片が連結している。以上の操作により、CDH遺伝子のプロモーターにより6種類のセルロースならびにヘミセルロース分解酵素遺伝子断片のアンチセンスRNAが転写される、アンチセンス鎖発現プラスミドpCDHP-MT6とした。
[実施例16]
抑制遺伝子の存在確認
実施例2に準じて実施例15で作製したセルロース分解酵素遺伝子ならびにヘミセルロース分解酵素遺伝子が一本の転写産物として生産されるアンチセンス鎖発現遺伝子を用いて形質転換を行い、目的とする抑制遺伝子pCDHP-MT4が組み込まれていることをPCR法により確認した。
[実施例17]
セルロースならびにヘミセルロースの分解酵素活性を抑制した形質転換体の選抜
実施例3および実施例10に示す方法に準じて、セルロース分解酵素ならびにヘミセルロース分解酵素を経時的に測定した。
[実施例18]
セルロースならびにヘミセルロースの分解酵素活性を抑制した形質転換体で処理した木材チップからの機械パルプの製造
実施例17により選抜したセルラー巣分解酵素活性ならびにヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体を実施例4に準じて菌処理を行い、機械パルプを製造した。結果を表1に示す。
[実施例19]
セルロースならびにヘミセルロースの分解酵素活性を抑制した形質転換体で処理した木材チップからのクラフトパルプの製造
実施例17により選抜した形質転換体を用いて、実施例5に準じてユーカリ材のチップ処理を行い、クラフトパルプを調製し、パルプ収率や物理的影響について評価した。結果を表2に示す。
[実施例20]
セルロース分解酵素活性ならびにヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体によるリグノセルロース材料の処理
実施17により得られた形質転換体を用いて、実施例6に準じてリグノセルロース材料としてバガスに対して菌処理を行い、クラソンリグニン量を測定し、クラソンリグニン減少率を求めた。結果を表3に示す。
[実施例21]
セルロース分解酵素活性ならびにヘミセルロース分解活性を抑制した形質転換体で処理したリグノセルロースの糖化
実施例20で得られたアルカリ抽出後のリグノセルロース材料を実施例7に準じた方法で市販のセルラーゼ製剤で酵素処理し、リグノセルロースを糖化した。結果を表4に示す。
上記実施例の結果を以下に示す。
Figure 0004682982
表1に示すようにセルロース分解酵素活性やヘミセルロース分解酵素活性を抑制した実施例4、11および18の形質転換株は比較例2の菌処理しない場合に比べて解繊エネルギーを削減できた。比較例1の野性株は比較例2の菌処理をしない場合と比べると解繊エネルギーは削減できるが、チップ収率も紙力(比引裂強さと比破裂強さ)も共に低下が大きかった。実施例4、11および18の形質転換株は比較例1に示す野性株に比べて収率の減少を改善することができ、また、引き裂き強さ、破裂強さ共に比較例1の野性株より改善することができた。
Figure 0004682982
表2で示すように、形質転換体で処理した木材チップ(実施例5、実施例12、実施例19)、野性株で処理した木材チップ(比較例3)をカッパー価16となるように蒸解した際のパルプの精選収率は菌処理しなかった場合(比較例4)に比べて、いずれも増加し、粕率は減少した。また、いずれの菌処理(実施例5、実施例12、実施例19、比較例3)でも、処理しない場合(比較例4)に比べて、目標フリーネスが410 mlに達するまでのPFIミルによる叩解の回転数を削減できた。
Figure 0004682982
表3の結果より、形質転換体で処理したバガス(実施例6、実施例13、実施例20)の重量減少率は野性株(比較例5)よりも最大で約10%改善されていた。また、リグニンの減少率と重量減少率との比(L/W)の値は、セルロース分解活性を抑制した形質転換体(実施例6、実施例13、実施例20)の方が野性株(比較例5)のL/Wの値より高まっており、リグニン分解の選択性が高まっていた。
Figure 0004682982
表4の結果より、野性株や形質転換体で処理したバガスを市販の糖化酵素で処理して得た糖の収率(実施例7、実施例14、実施例21、比較例7)は菌処理しない場合(比較例8)に比べて向上していた。セルロース分解酵素活性ならびにヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体で処理したバガスからの糖の収率(実施例7、実施例14、実施例21)は野性株処理バガスからの糖収率(比較例7)より最大7%収率が向上していた。
本発明により得られたリグニン分解菌のセルロース分解酵素活性および/またはヘミセルロース分解酵素活性を抑制した形質転換体を用いて木材チップに接種し、通気、保温することにより、パルプの収率低下や紙力の低下の少ない方法で、木材中のリグニンを分解し、機械パルプの製造工程では、大量に電力エネルギーを消費する叩解エネルギーを削減することが収率低下を伴わずにできる。また、化学パルプの製造工程では、蒸解性の向上と収率増加が可能となり、紙パルプ製造工程上有利な方法を提供するものである。
またリグノセルロース材料から糖類を製造し、糖類を発酵原料として燃料用アルコールや乳酸などの化成品原料を製造する際に、糖化を阻害するリグニンをリグニン分解微生物により除去することにより、糖化の効率を高め、セルロース分解酵素活性および/またはヘミセルロース分解酵素活性を抑制することによって、糖類の収率を高めることが可能となる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
配列番号1:プライマー
配列番号2:プライマー
配列番号3:プライマー
配列番号4:プライマー
配列番号5:プライマー
配列番号6:プライマー
配列番号7:プライマー
配列番号8:プライマー
配列番号9:プライマー
配列番号10:プライマー
配列番号11:プライマー
配列番号12:プライマー
配列番号13:プライマー
配列番号14:プライマー
配列番号15:プライマー
配列番号16:プライマー
配列番号17:プライマー
配列番号18:プライマー
配列番号19:プライマー
配列番号20:プライマー
配列番号21:プライマー
配列番号22:プライマー
配列番号23:プライマー
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配列番号25:プライマー
配列番号26:プライマー
配列番号27:プライマー
配列番号28:プライマー
配列番号29:プライマー
配列番号30:プライマー
配列番号31:プライマー
配列番号32:プライマー
配列番号33:プライマー
配列番号34:アンチセンスDNA

Claims (21)

  1. リグノセルロース材料から繊維成分を取り出して該繊維成分から有用物質を製造する方法において、複数のセルロース分解酵素遺伝子および複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子の発現が抑制されたかつリグニン分解性のある微生物を該リグノセルロース材料と接触させること、および該材料から繊維成分を得ることを含む方法であって、前記微生物が、複数のセルロース分解酵素遺伝子および複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子のうち、少なくとも4種類の異なる酵素遺伝子の発現が抑制されているものであり、かつ、前記微生物が、複数のセルロース分解酵素遺伝子および複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子の各転写産物の全部またはその一部に対して相補的なアンチセンスDNA断片、あるいは該アンチセンスDNA断片のヌクレオチド配列と90%以上の相同性を有するその変異体、の各々を任意の順序で連結した合成DNA断片を含むものであり、ならびに、前記複数のセルロース分解酵素遺伝子が、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、セロビオースデヒドロゲナーゼ、およびそれらのアイソザイムから選択される酵素をコードしている遺伝子であり、前記複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子が、キシラナーゼ、マンナナーゼ、およびそれらのアイソザイムから選択される酵素をコードしている遺伝子である、上記方法。
  2. 前記微生物が、複数のセルロース分解酵素遺伝子および複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子のうち、少なくとも6種類の異なる酵素遺伝子の発現が抑制されているものである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記アンチセンスDNA断片の各々がリンカーを介して連結されている、請求項1に記載の方法。
  4. 前記微生物が、前記合成DNA断片を含む発現ベクターで形質転換されたものである、請求項1に記載の方法。
  5. 前記発現ベクターにおいて、前記合成DNA断片が発現制御配列と作動可能に連結されている、請求項4に記載の方法。
  6. 前記複数のセルロース分解酵素遺伝子が、エンドグルカナーゼ61、エンドグルカナーゼ5、エンドグルカナーゼ12、セロビオヒドロラーゼI、セロビオヒドロラーゼII、およびセロビオースデヒドロゲナーゼからなる酵素をコードしている遺伝子であり、また前記複数のヘミセルロース分解酵素遺伝子が、キシラナーゼI、キシラナーゼII、マンナナーゼI、およびマンナナーゼIIからなる酵素をコードしている遺伝子である、請求項に記載の方法。
  7. 前記発現制御配列が、セロビオースデヒドロゲナーゼ遺伝子もしくはグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターの配列である、請求項5に記載の方法。
  8. 前記微生物が担子菌である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記担子菌が白色腐朽菌である、請求項に記載の方法。
  10. 前記白色腐朽菌がコリオラス(Coriolus)属である、請求項に記載の方法。
  11. 前記微生物が、内因性もしくは外因性リグニン分解酵素をコードするDNAまたはcDNAを発現可能な状態で含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記リグニン分解酵素が、マンガンペルオキシダーゼ、リグニンペルオキシダーゼまたはラッカーゼである、請求項11に記載の方法。
  13. 複数の異なるセルロース分解酵素遺伝子および複数の異なるヘミセルロース分解酵素遺伝子の各転写産物の全部またはその一部に対して実質的に相補的なアンチセンスDNA断片を任意の順序で連結した合成DNA断片を作製し、該合成DNA断片を発現制御配列と作動可能に連結した発現ベクターを作製し、該発現ベクターで、リグニン分解性のある微生物を形質転換して形質転換微生物を作製し、セルロース分解性およびヘミセルロース分解性を抑制した該微生物をリグノセルロース材料と接触させて該材料中のリグニンを分解し、リグニン分解した該材料から繊維成分を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
  14. 前記セルロース分解酵素遺伝子が少なくとも6種類である、および、前記ヘミセルロース分解酵素が少なくとも4種類である、請求項1または13に記載の方法。
  15. 前記繊維成分がパルプまたはセルロースである、請求項1に記載の方法。
  16. 前記有用物質が紙パルプである、請求項1に記載の方法。
  17. 前記紙パルプが、前記繊維成分から化学パルプ化法、機械パルプ化法またはセミケミカルパルプ化法により製造される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記有用物質が糖類である、請求項1に記載の方法。
  19. 前記糖類が、前記繊維成分を酵素により糖化することによって製造される、請求項18に記載の方法。
  20. 前記酵素がセルラーゼおよびヘミセルラーゼである、請求項19に記載の方法。
  21. 前記繊維成分を糖化し、有用物質であるバイオマスエタノールを製造する、請求項1に記載の方法。
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