図1に本発明の実施形態に係る通信システム1の構成を示す。図1の実線は有線通信による接続を示し、破線は無線通信による接続を示す。通信システム1は、情報処理端末装置T1〜Tp、有線通信網100aおよび100b、中継装置A1〜Aqを備えて構成される(pおよびqは任意の自然数)。情報処理端末装置Tgは有線通信網100aに、情報処理端末装置Thは有線通信網100bに有線接続される。また、中継装置Aiは有線通信網100aに、中継装置Ajは有線通信網100bに有線接続される(gおよびhはそれぞれ異なる1からpまでの任意の自然数、iおよびjはそれぞれ異なる1からqまでの任意の自然数)。また、中継装置A1〜Aq、および情報処理端末装置TgおよびThを除く情報処理端末装置T1〜Tpは無線通信網を確立する。ここでは、有線通信網が2系統である場合をとりあげているが、任意の数の有線通信網を設けることができる。また、中継装置A1からAqのうち、有線通信網100aおよび100bのそれぞれに有線接続されるものの数も任意とすることができる。
図2に中継装置A(中継装置A1〜Aqのうちいずれかの中継装置)の構成を示す。中継装置Aは、アンテナ10、接続選択部12、送受信部14、通信網確立処理部16、通信先装置選択部18、通信先装置記憶部20、経路解析部22、経路装置記憶部24、中継阻止部26、中継情報生成部28、自アドレス記憶部30を備えて構成される。
接続選択部12は、送受信部14をアンテナ10に接続するか、有線通信網100に接続するか、またはアンテナ10と有線通信網100の両者に接続するかを選択する。この選択は中継装置Aが設置される際に行われる。
送受信部14が、アンテナ10に接続される場合、送受信部14は、パケット情報を含む無線信号をアンテナ10および接続選択部12を介して受信する。ここで、パケット情報とは、限られた情報量を1つの情報単位とする情報をいう。図2では、パケット情報の経路を実線を以て、その他の情報の経路を破線を以て示している。送受信部14は、アンテナ10および接続選択部12を介して受信された受信信号からパケット情報を抽出し、通信網確立処理部16、通信先装置選択部18、経路解析部22、または中継阻止部26に入力する。また、送受信部14は、通信網確立処理部16または中継情報生成部28から入力されたパケット情報を無線信号に変換し、接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。
また、送受信部14が有線通信網100に接続される場合、送受信部14は接続選択部12を介して有線通信網100から信号を受信し、接続選択部12を介して有線通信網100へ信号を送信する。
図3に情報処理端末装置T(情報処理端末装置T1〜Tpのうちいずれかの情報処理端末装置)の構成を示す。図3では、パケット情報の経路を実線を以て、その他の情報の経路を破線を以て示している。情報処理端末装置Tは、アンテナ10、接続選択部12、送受信部14、通信網確立処理部16、通信先装置選択部18、通信先装置記憶部20、経路解析部22、経路装置記憶部24、宛先確認部32、情報取得部34、送信情報生成部36、自アドレス記憶部30を備えて構成される。中継装置Aと同一の構成部については同一の符号を付し、以下の説明において説明を簡略化する。
送受信部14が、アンテナ10に接続される場合、送受信部14は、パケット情報を含む無線信号をアンテナ10および接続選択部12を介して受信する。送受信部14は、アンテナ10および接続選択部12を介して受信された受信信号からパケット情報を抽出し、通信網確立処理部16、通信先装置選択部18、経路解析部22、または宛先確認部32に入力する。また、送受信部14は、通信網確立処理部16または送信情報生成部36から入力されたパケット情報を無線信号に変換し、接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。
また、送受信部14が有線通信網100に接続される場合、送受信部14は、接続選択部12を介して有線通信網100から信号を受信し、接続選択部12を介して有線通信網100へ信号を送信する。送受信部14が有線通信網100に接続されるものであるか否かは、情報処理端末装置Tが設置される際に予め定められる。
中継装置Aおよび情報処理端末装置Tが備える各構成部が行う処理については、通信システム1の処理と共に説明する。
(1)無線通信網確立処理
無線通信網を確立し、さらにその無線通信網を中継装置A(図1では中継装置Aiおよび中継装置Aj)を介して有線通信網100(図1では有線通信網100aおよび有線通信網100b)に接続するため、通信システム1の中継装置A1〜Aqの間では無線通信網確立処理が行われる。ここで、中継装置A1〜Aqの間の無線通信網が確立しているとは、中継装置A1〜Aqのそれぞれが通信先装置を選択し、中継装置A1〜Aqのそれぞれが通信先装置に割り当てられたアドレスを記憶している状態にあることをいう。無線通信網確立処理は、次の(a)〜(g)に述べる処理に従って実行される。
(a)調査要求パケット情報の取得
中継装置Aの送受信部14は、他の中継装置Aから送信された調査要求パケット情報をアンテナ10および接続選択部12を介して取得する。調査要求パケット情報は、情報伝送品質等についての調査ために他の中継装置Aから送信される情報である。
図4(a)に調査要求パケット情報の構成を示す。調査要求パケット情報には、そのパケット情報が調査要求パケット情報である旨を示す調査要求パケット識別子と、それを送信した中継装置Aのアドレスである送り側アドレスが含まれる。図4(b)は、送り側アドレスがAaである中継装置Aaが送信した調査要求パケット情報の例を示す。
送受信部14は、調査要求パケット識別子によって調査要求パケット情報を取得したことを認識すると、調査要求パケット情報を含んでいた信号の電界強度を測定し、その値を通信網確立処理部16に入力する。また、調査要求パケット情報を通信網確立処理部16に入力する。
(b)応答パケット情報の生成および送信
通信網確立処理部16は、調査要求パケット識別子によって調査要求パケット情報を取得したことを認識すると、調査要求パケット情報を送信した中継装置Aが取得すべき応答パケット情報を生成する。
図4(c)に応答パケット情報の構成を示す。応答パケット情報は応答パケット識別子、送り側アドレス、受け側アドレス、伝送品質情報、有線接続有無識別子を含む。応答パケット識別子は、そのパケット情報が応答パケット情報である旨を示す。送り側アドレスは、応答パケット情報を送信する中継装置Aのアドレスを示す。受け側アドレスは、応答パケット情報を取得すべき中継装置Aのアドレスを示す。伝送品質情報は、調査要求パケット情報を送信した中継装置Aとの間の通信の情報伝送品質の指標とするための情報であり、調査要求パケット情報を含む信号の電界強度を示す。また、有線接続有無識別子は、応答パケット情報を送信する中継装置Aが有線通信網100に有線接続されているか否かを示す。
通信網確立処理部16は、中継装置Aに割り当てられたアドレスを記憶する自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスを、送り側アドレスとして応答パケット情報に記述する。また、上記(a)の処理において取得した調査要求パケット情報に含まれていた送り側アドレスを受け側アドレスとして応答パケット情報に記述する。
また、通信網確立処理部16は、調査要求パケット情報を含んでいた信号の電界強度の値を送受信部14から取得し、伝送品質情報として応答パケット情報に記述する。さらに、通信網確立処理部16は、中継装置Aが有線通信網100に有線接続されるものであるか否かの情報を、有線接続有無識別子として応答パケット情報に記述する。
図4(d)は、アドレスがAbである中継装置Abの通信網確立処理部16が生成した応答パケット情報の例を示す。この応答パケット情報は、図4(b)に示す調査要求パケット情報を送信した中継装置Aaが取得すべきものである。送り側アドレス、受け側アドレス、伝送品質情報、有線接続有無識別子として、それぞれ「Ab」、「Aa」、[−58]、「あり」が記述されている。
通信網確立処理部16は、このように生成した応答パケット情報を送受信部14に入力する。送受信部14は、応答パケット情報を無線信号に変換して接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。
(c)調査要求パケット情報の送信
通信網確立処理部16は、他の中継装置Aが送信した調査要求パケット情報を取得する一方、調査要求パケット情報を生成して送受信部14に入力する。送受信部14は、調査要求パケット情報を無線信号に変換して接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。
(d)通信先装置の選択
上記(c)の処理によって送信した調査要求パケット情報を取得した他の中継装置Aからは、応答パケット情報が送信される。通信先装置選択部18は、送信された応答パケット情報を、アンテナ10、接続選択部12および送受信部14を介して取得する。取得したパケット情報が応答パケット情報であるか否かの判断は、応答パケット識別子に基づいて行う。通信先装置選択部18は、応答パケット情報に含まれる受け側アドレスを自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスと比較し、それらが一致したときには通信先装置選択部18が備える一時記憶手段(図示せず)に記憶する。また、取得した応答パケット情報に含まれる受け側アドレスと自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスとが一致しないときには、その応答パケット情報は無情報化する等して削除する。
通信先装置選択部18は、通信網確立処理部16が送信した複数の調査要求パケット情報に対する複数の応答パケット情報を取得し、一時記憶手段に記憶する。そして、一時記憶手段に記憶された複数の応答パケット情報に含まれる情報に基づいて、M個以下(Mは1以上の整数)の中継装置Aを通信先装置として選択する。
通信先装置の選択は、応答パケット情報に含まれる伝送品質情報および有線接続有無識別子に基づいて行うことが好適である。例えば、伝送品質が良好である中継装置Aを優先的に選択する、有線通信網100との有線接続がある中継装置Aを優先的に選択する等の優先順位を規定し、当該優先順位に基づいて通信先装置を選択すればよい。
通信先装置選択部18は、通信先装置として選択した中継装置Aのアドレスのそれぞれに対し有線通信網接続の有無を対応付けた通信先装置登録情報を、通信先装置記憶部20に記憶させる。
(e)選択通知パケット情報の送信
通信網確立処理部16は、通信先装置選択部18が通信先装置を選択すると、通信先装置として選択した中継装置Aが取得すべき選択通知パケット情報を生成し、送受信部14、接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。図4(e)に選択通知パケット情報の構成を示す。選択通知パケット情報は選択通知パケット識別子、送り側アドレス、受け側アドレス、有線接続有無識別子を含む。
通信網確立処理部16は、送り側アドレスに自アドレス記憶部30から取得した自アドレスを記述する。また、受け側アドレスに通信先装置選択部18が選択した中継装置Aのアドレスを記述する。そして、通信網確立処理部16を備える中継装置Aが有線通信網100に有線接続されるものであるか否かの情報を有線接続有無識別子に記述する。通信網確立処理部16は、生成した選択通知パケット情報を送受信部14、接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。
(f)選択通知パケット情報の取得
通信先装置選択部18は、他の中継装置Aから送信された選択通知パケット情報をアンテナ10、接続選択部12および送受信部14を介して取得する。取得したパケット情報が選択通知パケット情報であるか否かの判断は、選択通知パケット識別子に基づいて行う。
(g)通信先装置登録情報への追加登録
通信先装置選択部18は、選択通知パケット情報に含まれる受け側アドレスを自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスと比較し、それらが一致したときには、送り側アドレスおよび有線接続有無識別子を抽出し、通信先装置記憶部20に記憶されている通信先装置登録情報に追加登録する。また、取得した選択通知パケット情報に含まれる受け側アドレスと自アドレス記憶部30から読み込んだアドレスとが一致しないときには、その応答パケット情報を無情報化する等して削除する。
中継装置A1〜Aqのそれぞれにおいては、上記(a)〜(g)の処理が繰り返される。これによって、中継装置A1〜Aqのそれぞれが備える通信先装置記憶部20には通信先装置としての中継装置Aのアドレスが記憶され、中継装置A1〜Aqの間の無線通信網が確立される。
なお、ここでは、応答パケット情報には、応答パケット識別子、送り側アドレス、受け側アドレス、伝送品質情報、有線接続有無識別子が含まれるものとしたが、その他様々な情報を含ませることができる。例えば、上記(a)〜(g)が繰り返される途中経過における、通信先装置記憶部20に記憶されている通信先装置登録情報を含ませることとすれば、各中継装置Aは他の中継装置Aの通信先装置を認識することができる。これによって、通信システム1において確立されている通信網、すなわち、複数の中継装置Aの通信先装置の選択関係に関する情報が、複数の中継装置Aにおいて共有される。この選択関係に関する情報は、通信先装置のアドレスと対応付けて通信先装置登録情報に登録させておくことが好適である。
(2)端末通信網確立処理
上述の無線通信網確立処理では、中継装置A1〜Aqの相互間で無線通信の相手方を選択する処理が行われる。通信システム1では、無線通信網確立処理と共に、送受信部14がアンテナ10に接続されている中継装置Aと、送受信部14がアンテナ10に接続されている情報処理端末装置Tとの間の通信網を確立するための端末通信網確立処理が行われる。
端末通信網確立処理では、無線通信網確立処理と同様、中継装置Aおよび情報処理端末装置Tの両者において、上記(a)から(g)と同一の処理が繰り返される。ただし、ここでの処理においては、有線通信網100に有線接続される情報処理端末装置Tのアドレスには末尾に「(L)」が付され、無線通信網に無線接続される情報処理端末装置Tのアドレスと区別される。
なお、有線通信網100に有線接続される情報処理端末装置Tと有線通信網100に有線接続される中継装置Aとの間の通信網の確立については、有線LANシステム等の周知のシステムによって実現することができるため、ここでは説明を省略する。
図5に、上述の無線通信網確立処理および端末通信網確立処理によって中継装置Aの通信先装置記憶部20に記憶された通信先装置登録情報の例を示す。この例では、アドレスがそれぞれ「Aγ」、「Aα」、「Aη」、「Aξ」である中継装置Aγ,Aα,Aη,Aξ、およびアドレスがそれぞれ「Tσ」、「Tα(L)」、「Tβ」である情報処理端末装置Tσ,Tα,Tβが通信先装置として選択されており、それぞれの有線通信網接続の有無が「あり」、「なし」、「なし」、「なし」、「なし」、「あり」、「なし」である場合を示す。中継装置Aγ,Aα,Aη,Aξは、無線通信網確立処理によって選択された装置であり、情報処理端末装置Tσ,Tα,Tβは端末通信網確立処理によって選択された装置である。Mは無線通信網確立処理によって選択される装置の数の上限、Nは端末通信網確立処理によって選択される装置の数の上限を示す。
このようにして、有線通信網100、中継装置A、および情報処理端末装置Tを含んで構成される通信網が確立される。例として、図6に示すように、中継装置A1〜A3および情報処理端末装置T1〜T3から構成される通信システム1aをとりあげる。図6の実線は有線通信による通信網を示し、破線は無線通信による通信網を示す。中継装置A1、A2およびA3との間では無線通信網確立処理が実行される。図6は、無線通信網確立処理が実行された結果、中継装置A1およびA2が互いを通信先装置として選択し、中継装置A2およびA3が互いを通信先装置として選択した場合を示す。また、情報処理端末T2およびT3と、中継装置A1〜A3との間では、端末通信網確立処理が実行される。図6は、端末通信網確立処理が実行された結果、中継装置A2および情報処理端末装置T2が互いを通信先装置として選択し、中継装置A3および情報処理端末装置T3が互いを通信先装置として選択した場合を示す。このとき、中継装置A1〜A3が備える通信先装置記憶部20が記憶する通信先装置登録情報は、それぞれ図7(A1)〜図7(A3)のようになる。また、情報処理端末装置T1〜T3が備える通信先装置記憶部20が記憶する通信先装置登録情報は、それぞれ図7(T1)〜図7(T3)のようになる。
(3)データパケット情報の送受信
次に、通信システム1において、情報処理端末装置T1〜Tpの相互間で文書、画像、音声、プログラム等の情報データを含むデータパケット情報が送受信される処理について説明する。
図8に通信システム1で扱われるデータパケット情報の構成を示す。データパケット情報は、送信源端末アドレス、宛先端末アドレス、送信装置アドレス、受信装置アドレス、中継ヘッダ、情報データを含んで構成される。
送信源端末アドレスは、データパケット情報を送信する源となる情報処理端末装置Tのアドレスであり、宛先端末アドレスは、データパケット情報の宛先とする情報処理端末装置Tのアドレスである。送信装置アドレスは、データパケット情報を送信する装置のアドレスであり、受信装置アドレスは、データパケット情報を受信した装置が、それを取得すべきか否かを判断するためのアドレスである。中継ヘッダは、中継回数制限情報、一段手前中継装置アドレスを含んで構成され、通信システム1におけるデータパケット情報の送受信を制御するための情報を含む。
情報処理端末装置Tが、データパケット情報を送信する処理について図3を参照して説明する。ここでは、送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10に接続されている場合について説明するが、送受信部14が接続選択部12によって有線通信網100に接続されている場合、または送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10および有線通信網100の両者に接続されている場合についても、データパケット情報を送受信するための媒体が異なるのみであるため、同一の処理を実行することができる。
情報処理端末装置Tの送信情報生成部36はデータパケット情報を生成する。送信情報生成部36は、自アドレス記憶部30から自アドレスを読み込み、送信源端末アドレスおよび送信装置アドレスとして自アドレスをデータパケット情報に記述する。また、宛先とする情報処理端末装置Tのアドレスを宛先端末アドレスとしてデータパケット情報に記述する。さらに、送信情報生成部36は、経路装置記憶部24に記憶されている経路装置登録情報を参照し、宛先とする情報処理端末装置Tと、それに対応する中継装置Aが経路装置登録情報に登録されているか否かを確認する。そして、登録されている場合には、当該中継装置Aのアドレスを取得し、受信装置アドレスとしてデータパケット情報に記述する。
ここで、経路装置登録情報とは、宛先とする情報処理端末装置Tのアドレスと、当該情報処理端末装置Tにデータパケット情報を送信する際に中継送信を行わせるのに適した中継装置Aのアドレスとを対応付けた情報である(宛先とする情報処理端末装置Tが通信先装置として選択されている場合には当該情報処理端末装置Tが対応付けられることとなる。以下の説明において同じとする)。例えば、図9(a)に示す経路装置登録情報では、アドレスがそれぞれ「Tγ」、「Tα(L)」、「Tη」である情報処理端末装置Tγ,Tα,Tηに対して、アドレスがそれぞれ「Aσ」、「Aα」、「Aβ」である中継装置Aσ,Aα,Aβがそれぞれ対応付けられている。情報処理端末装置Tγを宛先とする場合、中継装置Aσを受信装置アドレスとすればよい。経路装置登録情報は、経路解析部22が行う経路装置登録処理によって生成されるが、その具体的な処理の内容については後述する。
送信情報生成部36は、宛先とする情報処理端末装置Tと、それに対応する中継装置Aが経路装置登録情報に登録されていない場合には、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとしてデータパケット情報に記述する。受信装置同報アドレスとは、通信システム1を構成する中継装置A1〜Aqのそれぞれに割り当てられたアドレスと同一であるとみなされるアドレスである。
送信情報生成部36は、中継回数を0とした中継回数情報を中継ヘッダに記述する。また、ここでは中継ヘッダの一段手前中継装置アドレスには特に意味のある情報を記述しなくてもよいが、データパケット情報に汎用性(当該データパケット情報を受信した装置が応用処理を行う等)を持たせるため自アドレスを記述しておくこともできる。さらに、送信情報生成部36は、文書、画像、音声、プログラム等の情報データをデータパケット情報に含ませる。
送信情報生成部36は、このようにして生成したデータパケット情報を送受信部14、接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。
次に、情報処理端末装置Tが、データパケット情報を受信する処理について図3を参照して説明する。情報処理端末装置Tの宛先確認部32は、アンテナ10、接続選択部12および送受信部14を介してデータパケット情報を取得する。そして、データパケット情報に含まれる宛先端末アドレスを抽出し、自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスを比較する。宛先確認部32は、宛先端末アドレスと自アドレスとが一致した場合にはデータパケット情報を情報取得部34へ入力し、一致しない場合には取得したデータパケット情報を無情報化する等して削除する。なお、宛先端末アドレスが、後述する宛先端末同報アドレスである場合には、自アドレスと一致するものとして処理するものとする。
情報取得部34は、宛先確認部32から入力されたデータパケット情報から、情報データを抽出して取得する。
このように、データパケット情報を受信した情報処理端末装置Tにおいては、宛先端末アドレスが自アドレスと一致しないデータパケット情報については無情報化され、宛先端末アドレスが自アドレスと一致するデータパケット情報から情報データが取得される。これによって、データパケット情報を送信する源となる情報処理端末装置Tにおいて宛先として指定された情報処理端末装置Tでデータパケット情報が取得される。
次に、中継装置Aがデータパケット情報を受信して中継送信する処理について図2を参照して説明する。ここでは、送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10に接続されている場合について説明するが、送受信部14が接続選択部12によって有線通信網100に接続されている場合、または送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10および有線通信網100の両者に接続されている場合についても同一の処理を実行することができる。
中継阻止部26は、アンテナ10、接続選択部12および送受信部14を介してデータパケット情報を取得する。そして、データパケット情報に含まれる受信装置アドレスを抽出し、自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスと比較する。ここで、受信装置アドレスが受信装置同報アドレスである場合には、自アドレスと一致するものとして処理するものとする。中継阻止部26は、抽出した受信装置アドレスと自アドレスとが一致しない場合には、取得したデータパケット情報を無情報化する等して削除する。
また、抽出した受信装置アドレスと自アドレスとが一致した場合には、データパケット情報の中継ヘッダに含まれる中継回数情報を抽出し、予め定められた中継制限回数と比較する。中継回数情報が示す中継回数が中継制限回数を超えた場合、取得したデータパケット情報は無情報化する等して削除する。
中継回数情報が示す中継回数が中継制限回数以下である場合、中継阻止部26は、さらにデータパケット情報の中継ヘッダに含まれる一段手前中継装置アドレスを抽出し、自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスと比較する。そして、一段手前中継装置アドレスと自アドレスとが一致した場合には、取得したデータパケット情報を無情報化する等して削除する。
このように、受信装置アドレスと自アドレスとが一致しないデータパケット情報、中継回数が中継制限回数を超えたデータパケット情報、一段手前中継装置アドレスと自アドレスとが一致するデータパケット情報は中継阻止部26において削除される。そして中継阻止部26において削除されなかったデータパケット情報は中継情報生成部28に入力される。
中継情報生成部28は、中継阻止部26から入力されたデータパケット情報に含まれる送信装置アドレス、受信装置アドレスおよび中継ヘッダを中継送信のために書き換える。中継情報生成部28は、中継ヘッダの一段手前中継装置アドレスとして、入力されたデータパケット情報に含まれていた送信装置アドレスを記述する。また、中継ヘッダの中継回数情報として、入力されたデータパケット情報に含まれていた中継ヘッダの中継回数情報が示す中継回数を1だけ増加させた中継回数情報を中継ヘッダに記述する。
また、中継情報生成部28は、入力されたデータパケット情報に含まれる送信装置アドレスに、自アドレス記憶部30から読み込んだ自アドレスを上書きする。さらに、経路装置記憶部24に記憶されている経路装置登録情報を参照し、宛先とする情報処理端末装置Tと、それに対応する中継装置Aが経路装置登録情報に登録されているか否かを確認する。宛先とする情報処理端末装置Tと、それに対応する中継装置Aが登録されている場合には、当該中継装置Aのアドレスを取得し、入力されたデータパケット情報に含まれる受信装置アドレスに上書きする。宛先とする情報処理端末装置Tと、それに対応する中継装置Aが登録されていない場合には、入力されたデータパケット情報に含まれる受信装置アドレスに、受信装置同報アドレスを上書きする。
中継情報生成部28は、このように送信装置アドレス、受信装置アドレスおよび中継ヘッダを変更したデータパケット情報を送受信部14、接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。なお、中継情報生成部28は、送信源端末アドレス、宛先端末アドレス、および情報データの変更は行わない。
このように、中継装置Aは、中継阻止部26が行う処理によって、受信装置アドレスが自アドレスと一致しないデータパケット情報を無情報化し、受信装置アドレスが自アドレスと一致するデータパケット情報を中継送信する。受信装置アドレスと自アドレスとが一致しないデータパケット情報が削除されることによって、宛先とする情報処理端末装置Tにデータパケット情報を中継送信するために適切でない中継装置Aが中継送信を行ってしまうという無駄を回避することができる。
また、中継阻止部26において、中継回数が中継制限回数を超えたデータパケット情報が削除されることによって、受信装置同報アドレスを含むデータパケット情報のループ現象や、宛先とする情報処理端末装置Tから離れる方向に多数の中継装置Aを介して受信装置同報アドレスを含むデータパケット情報が伝えられてしまうという無駄を排除することができる。さらに、一段手前中継装置アドレスと自アドレスとが一致するデータパケット情報が削除されることによって、先に自らが送信した受信装置同報アドレスを含むデータパケット情報を中継送信してしまうという無駄を排除することができる。
中継装置Aがデータパケット情報を送信する際には、他の中継装置Aまたは宛先とする情報処理端末装置Tが当該データパケット情報を処理するための内容に書き換えられるため、データパケット情報は、既に確立された通信網に従って宛先とする情報処理端末装置Tで取得される。
なお、受信したデータパケット情報に含まれる送信源端末アドレスおよび送信装置アドレスは、次に説明する経路装置登録処理において有用である。
(4)経路装置登録処理
通信システム1では、データパケット情報の送受信が行われると共に、中継装置Aおよび情報処理端末装置Tが備える経路解析部22が経路装置登録情報を生成し、経路装置記憶部24に記憶させる経路装置登録処理を行う。ここでは、中継装置Aが行う経路装置登録処理について説明するが、情報処理端末装置Tが行う経路装置登録処理は中継装置Aが行うものと同一であるため説明を省略する。また、ここでは、送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10に接続されている場合について説明するが、送受信部14が接続選択部12によって有線通信網100に接続されている場合、または送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10および有線通信網100の両者に接続されている場合についても同一の処理を実行することができる。
経路解析部22は、アンテナ10、接続選択部12および送受信部14を介してデータパケット情報を取得する。そして、取得したデータパケット情報から、送信源端末アドレスと送信装置アドレスとを抽出する。また、経路解析部22は、通信先装置記憶部20を参照し、抽出した送信装置アドレスが通信先装置登録情報に登録されているか否かを確認する。当該送信装置アドレスが通信先装置登録情報に登録されている場合には、抽出した送信源端末アドレスと送信装置アドレスとを対応付けて経路装置登録情報に登録し、その内容を経路装置記憶部24に記憶させる。一方、当該送信装置アドレスが通信先装置登録情報に登録されていない場合には、このような処理は行わない。
また、経路装置記憶部24は、このようにして記憶された送信源端末アドレスと送信装置アドレスとを対応付けた複数の情報のうち、所定時間内に再登録されないものを消去し、経路装置登録情報から登録抹消する。
同一のデータパケット情報に含まれる送信源端末アドレスと送信装置アドレスは、当該送信源端末アドレスが割り当てられた情報処理端末装置Tから送信されたデータパケット情報が、当該送信装置アドレスが割り当てられた中継装置Aを介して送信されたことを意味する。これは、逆に、当該送信源端末アドレスが割り当てられた情報処理端末装置Tへの通信網が、当該送信装置アドレスが割り当てられた中継装置Aを含んで確立されていることをも意味する。すなわち、送信源端末アドレスが割り当てられた情報処理端末装置Tを宛先とする場合、送信装置アドレスが割り当てられた中継装置Aに中継送信を行わせることが好適であるということができる。
なお、抽出した送信装置アドレスが通信先装置登録情報に登録されているか否かを確認するのは、通信先装置として選択されていない中継装置Aを経路装置登録情報に登録してしまうことを避けるためである。
経路装置登録処理が実行されることによって、複数の中継装置Aのうち限られたものがデータパケット情報を取得することとなるため、限られた数の中継装置Aの間で同一の情報データの送受信が繰り返されるというループ現象が生じる頻度を低減することができる。
また、経路装置記憶部24に記憶された、情報処理端末装置Tのアドレスと中継装置Aのアドレスとを対応付けた複数の情報のうち、所定時間内に再登録されないものが消去されることにより、経路装置記憶部24で記憶すべき情報量が削減される。所定時間内に再登録のない情報に係る情報処理端末装置Tは、移動等により中継装置A1〜Aqから遠ざかったり、電源が遮断されたりしていることにより通信が途絶えていること多い。そのため、記憶されてから消去されるまでの時間を十分長くしておけば、このような情報処理端末装置Tについての情報が経路装置記憶部24から消去されても問題は生じない。
さらに、情報処理端末装置Tが移動し、情報処理端末装置Tが選択する通信先装置が上記(2)で説明した端末通信網確立処理によって変更された場合であっても、当該情報処理端末装置Tがデータパケット情報を送信することで、それを受信した中継装置Aの経路装置記憶部24には新たな経路装置登録情報が記憶される。
例として、図6に示すような通信網が確立されている場合において、情報処理端末装置T1から情報処理端末装置T3宛てにデータパケット情報が送信される場合についてとりあげる。この場合、中継装置A1から中継装置A2へは図9(b)に示すようなデータパケット情報が送信される。中継装置A2が備える経路解析部22は、データパケット情報から送信源端末アドレスT1(L)と送信装置アドレスA1とを抽出する。いま、中継装置A2の通信先装置記憶部20には図7(A2)に示すような通信先装置登録情報が記憶されている。図7(A2)からわかるように、送信装置アドレスとして記述されているアドレスA1は通信先装置登録情報に登録されているため、経路解析部22はアドレスT1(L)とアドレスA1とを対応付けて経路装置登録情報に登録し、その内容を経路装置記憶部24に追加して記憶させる。例えば、経路装置記憶部24に図9(a)に示すような経路装置登録情報が記憶されていた場合には、新たな経路装置登録情報は図9(c)のようになる。
通信システム1においては、データパケット情報の送受信が繰り返されることによって、中継装置A1〜Aqおよび情報処理端末装置T1〜Tpのそれぞれが備える経路装置記憶部24に、新たな情報が登録された経路装置登録情報が記憶されていく。図6のように通信網が確立している場合には、中継装置A1〜A3、および情報処理端末装置T1〜T3の経路装置記憶部24に記憶される経路装置登録情報は、それぞれ図10(A1)〜図10(A3)、および図10(T1)〜図10(T3)に示される内容に収束する。
(5)受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとして記述する処理
上述のように、中継装置Aが備える中継情報生成部28および情報処理端末装置Tが備える送信情報生成部36がデータパケット情報を生成する処理では、経路装置記憶部24に記憶されている経路装置登録情報を参照する。そして、データパケット情報を取得すべき通信先装置として適した中継装置Aのアドレスを取得し、受信装置アドレスとしてデータパケット情報に記述する。
しかし、上述の経路装置登録処理は、実際にデータパケット情報の送受信がなされる過程において行われるものであるため、通信網が確立した直後であって未だデータパケット情報の送受信がなされていない状態では、経路装置登録情報が生成されていない。この場合、宛先とする情報処理端末装置Tのアドレスと中継装置Aのアドレスとを対応付けた情報は登録されていないこととなる。
また、実際に何らかのデータパケット情報の送受信がなされ、経路装置登録処理が行われていたとしても、宛先とする情報処理端末装置Tのアドレスと中継装置Aのアドレスとを対応付けた情報が生成されているとは限らない。それは、宛先とする情報処理端末装置Tが事前にデータパケット情報を送信していない限り、その情報処理端末装置Tに対応する中継装置Aが登録されることはないためである。
そこで、本実施形態に係る中継情報生成部28および送信情報生成部36では、経路装置登録情報が未だ生成されていない場合、または経路装置登録情報に宛先とする情報処理端末装置Tのアドレスと中継装置Aのアドレスとを対応付けた情報が登録されていない場合には、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとしてデータパケット情報に記述する。
このように、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとしてデータパケット情報に記述したとしても、中継装置Aの中継阻止部26では、受信装置同報アドレスと自アドレスとが一致するものと判断されるため、当該中継装置Aで取得されたデータパケット情報が削除されることはない。また、中継ヘッダに基づく中継装置Aの処理により、データパケット情報のループ現象や、宛先とする情報処理端末装置Tから離れる方向に多数の中継装置Aを介してデータパケット情報が伝えられてしまうという問題は回避される。
(6)同報送信
情報処理端末装置Tが、他の複数の情報処理端末装置Tに同一の情報データを取得させる場合の処理について説明する。ここでは、送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10に接続されている場合について説明するが、送受信部14が接続選択部12によって有線通信網100に接続されている場合、または送受信部14が接続選択部12によってアンテナ10および有線通信網100の両者に接続されている場合についても同一の処理を実行することができる。
情報処理端末装置Tが備える送信情報生成部36は、自アドレス記憶部30から自アドレスを読み込み、送信源端末アドレスおよび送信装置アドレスとしてデータパケット情報に記述する。また、宛先端末同報アドレスを宛先端末アドレスとして、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとしてデータパケット情報に記述する。
ここで、宛先端末同報アドレスとは、情報処理端末装置T1〜Tpのそれぞれに割り当てられたアドレスと同一であるとみなされるアドレスである。受信装置同報アドレスが、データパケット情報の受信装置アドレスとして記述されるのに対し、宛先端末同報アドレスは宛先端末アドレスとして記述される点が異なる。また、受信装置同報アドレスは、中継装置A1〜Aqの間で定義されている同報アドレスであるのに対し、宛先端末同報アドレスは、情報処理端末装置T1〜Tpの間で定義されている同報アドレスである点が異なる。
送信情報生成部36は、中継回数を0とした中継回数情報を中継ヘッダに記述し、情報データをデータパケット情報に含ませる。なお、ここでは中継ヘッダの一段手前中継装置アドレスには特に意味のある情報を記述しなくてもよいが、データパケット情報に汎用性を持たせるため自アドレスを記述しておくこともできる。
送信情報生成部36は、このようにして生成したデータパケット情報を送受信部14、接続選択部12およびアンテナ10を介して送信する。
このように、宛先端末同報アドレスを宛先端末アドレスとして含み、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとして含むデータパケット情報を生成して送信する同報送信によって、1つのデータパケット情報を送信するだけで複数の情報処理端末装置Tにデータパケット情報を取得させることができる。
また、宛先端末同報アドレスを、中継装置Aおよび情報処理端末装置Tの一部のグループに対して定義される宛先端末グループ同報アドレスとすることもできる。例えば、宛先端末グループ同報アドレスG1を、情報処理端末装置T1〜Tk(kはp未満の自然数)に対して定義される同報アドレスとし、宛先端末グループ同報アドレスG2を、情報処理端末装置Tk+1〜Tpに対して定義される同報アドレスとする。この場合、情報処理端末装置Tが情報処理端末装置T1〜Tkにデータパケット情報を取得させるためには、宛先端末グループ同報アドレスG1を宛先端末アドレスとして含むデータパケット情報を生成して送信すればよく、情報処理端末装置Tk+1〜Tpにデータパケット情報を取得させるためには、宛先端末グループ同報アドレスG2を宛先端末アドレスとして記述したデータパケット情報を生成して送信すればよい。いずれの場合においても、受信装置アドレスには受信装置同報アドレスが記述されることとなる。
情報処理端末装置Tの宛先確認部32では、自らが属するグループにおいて定義された宛先端末グループ同報アドレスは、自アドレスと同一のものであるとして処理されるので、グループに属するすべての情報処理端末装置Tでは、同一のデータパケット情報が取得される。
なお、同報送信の代わりに、他の複数の情報処理端末装置Tのそれぞれに個別に宛てたデータパケット情報を送信することも当然可能である。宛先とする情報処理端末装置Tの数が少ない場合、個別にデータパケット情報を送信した方が、同報送信を行うよりも、通信システム1の全体が処理しなけばならない情報量が少ないことがある。したがって、情報処理端末装置Tは、宛先とする情報処理端末装置Tの数に基づいて、同報送信によってデータパケット情報を送信するか、個別にデータパケット情報を送信するかを決定する構成とすることが好ましい。
(7)無線LANシステムの規格の適用
広く利用されている無線LANシステムでは、通信網のうち根幹の部分が有線通信システムで構築され、有線通信システムと端末装置との間の通信は無線通信によって行われる。図11に、無線LANシステムにおいて送受信される無線LANデータの一般的な構成を示す。無線LANデータは、送信源端末アドレス、宛先端末アドレス、送信装置アドレス、および受信装置アドレスから構成されるヘッダ部と、情報データが含まれるデータ部とから構成される。
一方、図8に示す本発明の実施形態に係るデータパケット情報は、2つの部分に分けることができる。第1の部分は、送信源端末アドレス、宛先端末アドレス、送信装置アドレス、および受信装置アドレスから構成される部分であり、第2の部分は、中継ヘッダおよび情報データから構成される部分である。
第1の部分は、無線LANデータのヘッダ部と同様の構成となっているため、第2の部分を無線LANデータのデータ部として扱うことにより、本実施形態に係る通信システム1に無線LANシステムの規格を適用することが可能である。
この場合、中継装置Aの相互間では、無線LANシステムに適用されているプロトコルに従って通信が行われる。例えば、図6のように通信網が確立されている例では、中継装置A1と中継装置A2との間の無線通信、および中継装置A2と中継装置A3との間の無線通信が、無線LANシステムに適用されているプロトコルに従って行われる。
無線LANシステムの通信プロトコルでは、データパケット情報を受信した装置が当該パケット情報を受信した旨を示す確認パケット情報を、当該データパケット情報を送信した装置に対して送信するアクノリッジメント処理が行われる。データパケット情報を送信した装置は、所定時間を経過しても確認パケット情報が送信されないことを認識すると、再度、そのデータパケット情報を送信する再送処理を行う。
一般に、無線LANシステムは、装置が受信したデータパケット情報に含まれる受信装置アドレスが、受信装置同報アドレスである場合にはアクノリッジメント処理を行わない構成となっている。それは、このような場合についてもアクノリッジメント処理を行うこととすると、数多くの装置が確認パケット情報を一つの装置に対して返信することとなり、システムの処理負荷が増大してしまうからである。また、アクノリッジメント処理は、既に確立している特定の装置間でパケット情報が確実に送受信されたことを確認することを目的としているためである。
本実施形態に係る通信システム1にこのような無線LANシステムの規格を適用すると、上述の(5)および(6)で述べた処理において、アクノリッジメント処理を利用することができないという問題が生じる。
そこで、中継情報生成部28または送信情報生成部36が、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を生成し送信すると共に、有線通信網100に有線接続されている中継装置Aのアドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を続けて送信することが好適である。あるいは、経路装置登録情報において有線通信網100に有線接続されている情報処理端末装置Tに対応付けられている中継装置Aのアドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を続けて送信することが好適である。
有線通信網100に有線接続されている中継装置A、または有線通信網100に有線接続されている情報処理端末装置Tに対応付けられている中継装置Aは、いずれも有線通信網100へ向かう通信経路を確立している。以下の説明では、このような中継装置Aを、有線通信網側中継装置と称する。有線通信網側中継装置のアドレスは、通信先装置記憶部20に記憶されている通信先装置登録情報から、有線通信網接続が「あり」となっている中継装置Aのアドレスを抽出することで取得することができる。また、経路装置記憶部24に記憶されている経路装置登録情報に登録されている情報処理端末装置Tのアドレスのうち、末尾に「(L)」が付されているアドレスに対応付けられた中継装置Aのアドレスを抽出することで取得することができる。
また、データパケット情報を受信した中継装置Aの中継阻止部26は、取得したデータパケット情報に含まれる受信装置アドレスが受信装置同報アドレスであり、かつ送信装置アドレスが有線通信網側中継装置のアドレスでない場合は、そのデータパケット情報は、無情報化する等して削除する。すなわち、中継阻止部26は、通信先装置記憶部20の通信先装置登録情報を参照し、入力されたデータパケット情報に含まれる送信装置アドレスが、有線通信網接続が「なし」となっている中継装置Aのアドレスであるかを確認する。さらに、経路装置記憶部24の経路装置登録情報を参照し、入力されたデータパケット情報に含まれる送信装置アドレスが、末尾に「(L)」が付されていない情報処理端末装置Tに対応付けられている中継装置Aのアドレスであるかを確認する。当該送信装置アドレスが、有線通信網接続が「なし」となっている中継装置Aのアドレス、かつ末尾に「(L)」が付されていない情報処理端末装置Tに対応付けられている中継装置Aのアドレスである場合には、そのデータパケット情報は無情報化する等して削除する。この処理は、そのデータパケット情報に含まれる宛先端末アドレスの如何にかかわらず実行されるものとすることが好適である。
これによって、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を生成し送信すると共に、有線通信網側中継装置のアドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を送信した中継装置Aに対する有線通信網側中継装置となっている中継装置Aは、受信装置同報アドレスを含むデータパケット情報を受信した後にそれを削除する。これによって、有線通信網100に向かう方向に伝送される、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報は、当該中継装置Aによって削除され、通信システム1において過剰にデータパケット情報が送受信されることを回避することができる。
例えば、図13のように通信網が確立されている場合において、情報処理端末装置T3が同報送信を行う場合についてとりあげる。図13に示す通信網は、図6に示す通信網に対して中継装置A4が追加され、中継装置A2と中継装置A4は互いを通信先装置として選択している。中継装置A2は、上記(3)、(5)および(6)で述べた処理に従い、中継装置A3から図12(a)に示すデータパケット情報を受信し、図12(b)に示すデータパケット情報を送信する。
中継装置A2の中継情報生成部28は、受信装置アドレスとして受信装置同報アドレスを記述したデータパケット情報を生成して送信した後には、通信先装置記憶部20に記憶されている通信先装置登録情報および経路装置記憶部24に記憶されている経路装置登録情報を参照し、有線通信網側中継装置のアドレスを取得する。いまの例では、図13からわかるようにそのアドレスはA1となる。
中継装置A2の中継情報生成部28は、先に送信した図12(b)のデータパケット情報の受信装置アドレスを受信装置同報アドレスからA1に書き換えた図12(c)のデータパケット情報を送信する。
図12(c)に示すデータパケット情報は、受信装置アドレスとしてA1が明記されているため、これを受信した中継装置A1は無線LANシステムのプロトコルに従いアクノリッジメント処理を行う。
中継装置A2は中継装置A1から送信された確認パケット情報が、アンテナ10、接続選択部12、および送受信部14を介して受信されたか否かを、再送制御手段(図示せず)によって確認し、図12(c)に示すデータパケット情報を再送信するか否かを決定する。
一方、中継装置A2から送信された図12(b)に示すデータパケット情報を受信した中継装置A1は、当該データパケット情報に含まれる受信装置アドレスが受信装置同報アドレスであり、かつ送信装置アドレスが有線通信網側中継装置のアドレスでないため、当該データパケット情報を削除する。また、中継装置A2から送信された図12(b)に示すデータパケット情報を受信した中継装置A3およびA4は、上述の(3)から(6)で述べた処理を行う。
このように、本実施形態に係る通信装置に無線LANシステムの規格を適用することにより、アクノリッジメント処理を利用した再送制御を行うことができる。このような再送制御は、次に述べるクライアントサーバシステムのようなシステム構成に好適である。
クライアントサーバシステムでは、有線通信網100に有線接続される情報処理端末装置Tをサーバとし、中継装置Aを通信先装置として選択している有線通信網100に有線接続されていない情報処理端末装置Tをクライアントとする。これは、サーバに対する通信の頻度が高いため、無線通信網より通信の信頼度の高い有線通信網にサーバを配置することが好ましいためである。
具体的には、クライアントとして動作する情報処理端末装置Tが、中継装置Aおよび有線通信網100を介して、サーバとして動作する情報処理端末装置Tと通信を行う。クライアントとして動作する情報処理端末装置Tが、サーバとして動作する情報処理端末装置Tを介してインターネットにアクセスする構成とすることもできる。また、サーバとして動作する情報処理端末装置Tが、中央監視装置として各クライアントを監視制御するシステムも可能である。
このようなクライアントサーバシステムでは、クライアントからサーバに対して送信されるデータパケット情報の重要度が高い。例えば、無線信号を遮る障害物等の出現により急激に情報伝送品質が低下し、サーバとして動作する情報処理端末装置Tにデータパケット情報が伝送されないという不具合が生じた場合には、システム全体を停止させる必要が生じる場合もある。
そこで、受信装置同報アドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を送信したときには、さらに、有線通信網側中継装置のアドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を続けて送信することで、アクノリッジメント処理を利用した再送制御によってクライアントからサーバ方向へ確実に情報を伝送し、システムの安定化を図ることができる。
また、アクノリッジメント処理を利用した再送制御は、通信プロトコルとしていわゆるIPを無線LANの上位プロトコルに適用するシステム構成に好適である。IPにおいては、通信開始時にARP(Address Resolution Protocol:IETF RFC826)というプロトコルが適用されることが一般的である。ARPでは、宛先端末アドレスとして宛先端末同報アドレスを記述したデータパケット情報が、中継装置Aを通信先装置として選択している情報処理端末装置Tから送信される過程がある。したがって、ARPを確実に実行するためには、IPを上位プロトコルとして適用している無線LANを介し、確実に当該データパケット情報が当該無線LANに接続されている情報処理端末装置Tで取得されることが好ましい。
そこで、ARPにおいて行われる処理において、宛先端末アドレスとして宛先端末同報アドレスを記述し、かつ、受信装置アドレスとして受信装置同報アドレスを記述したデータパケット情報を送信したときには、さらに、有線通信網側中継装置のアドレスを受信装置アドレスとして記述したデータパケット情報を続けて送信することで、ARPを確実に実行することができる。
なお、ここでは無線LANにおけるアクノリッジメント処理を利用した構成についてとりあげた。しかし、本実施形態はこのような例に限られず、アクノリッジメント処理のような認証処理を行う一般的な無線通信網または有線通信網によっても実現可能であることはいうまでもない。
1,1a 通信システム、3 無線通信システム、10 アンテナ、12 接続選択部、14 送受信部、16 通信網確立処理部、18 通信先装置選択部、20 通信先装置記憶部、22 経路解析部、24 経路装置記憶部、26 中継阻止部、28 中継情報生成部、30 自アドレス記憶部、32 宛先確認部、34 情報取得部、36 送信情報生成部、38 記憶手段、40 通信先装置選択手段、100,100a,100b 有線通信網、A,A1〜Aq,P,P1〜Pn 中継装置、T,T1〜Tp,U,U1〜Um 情報処理端末装置。