JP4678619B2 - Lh−rh誘導体の精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はLH−RH誘導体の簡便で効率のよい工業的製造方法を提供するとともに高品質LH−RH誘導体の製造法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
LH−RHの誘導体であるペプチドまたはその塩の製造法としては、特開昭50−59370号公報(米国特許第4,008,209号公報に対応)には、一般式
(Pyr)Glu−His−Trp−Ser−Tyr(またはPhe)−X−Leu(またはIleまたはNle)−Arg−Pro−NH−R
〔式中、アミノ酸は特に明記しないものはL体を示し、XはD−Leu,D−Nle,D−NVal,D−Ser,D−Abu,D−Phg,D−Pheまたはα−Aibuを、Rは水酸基を有してもよいアルキル基を示す〕で表されるペプチドの製造法として、下記の方法が記載されている。
【0003】

【化2】
〔式中の記号は前記と同意義を示す〕。
【0004】
また、特開昭51−6926号公報(米国特許第3,997,516号公報に対応)には、グアニジノ基を有するペプチドの製造において、グアニジノ基含有原料化合物のグアニジノ基を低級アルコキシベンゼンスルホニル基またはトリ低級アルキルベンゼンスルホニル基で保護することを特徴とするペプチドの製造法が記載されている。
さらに、特開昭51−100030号(米国特許第3,997,516号公報に対応)公報には、グアニジノ基を有するペプチドの製造において、グアニジノ基含有原料化合物のグアニジノ基を低級アルコキシ−またはトリ低級アルキルベンゼンスルフォニル基で保護してペプチド縮合した後、該保護基をハロゲノスルホン酸または低級アルキルスルホン酸またはルイス酸で脱離させることを特徴とするペプチドの分離・製造法が記載されている。
【0005】
また、WO 97/48726号には、一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−OH (II)
〔式中、R1はHis,Tyr,Trpまたはp−NH2−Pheを、R2はTyrまたはPheを、R3はそれぞれ置換基を有していてもよいGlyまたはα−D−アミノ酸残基をそれぞれ示す。〕で表わされるペプチドまたはその塩と、一般式
H−R4−R5−Pro−R6 (III)
〔式中、R4はLeu,IleまたはNleを、R5は保護されたArgを、R6は式Gly−NH−R7(式中、R7は水素原子または水酸基を有していてもよいアルキル基を示す)または式NH−R8(式中、R8は水素原子、水酸基を有していてもよいアルキル基またはウレイド基(−NH−CO−NH2)をそれぞれ示す)で表わされる基を示す〕で表わされるペプチドまたはその塩とを反応させ、一般式
5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−R4−R5−Pro−R6 (I')
〔式中の記号は前記と同意義を示す〕で表わされるペプチドまたはその塩を得、ついで、得られたペプチド(I')を脱保護基反応に付すことを特徴とする一般式5−oxo−Pro−R1−Trp−Ser−R2−R3−R4−Arg−Pro−R6 (I)
〔式中の記号は前記と同意義を示す〕で表わされるペプチドまたはその塩の製造法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術では、保護ペプチドからLH−RH誘導体を製造する過程において、構成アミノ酸のラセミ化異性体が多く副生される。従来の手法では、弱酸性陽イオン交換樹脂等を用いるカラムクロマトによりLH−RH誘導体の精製を行うが、ラセミ化異性体等の除去効果に乏しいため、多段階のクロマト操作が必要であったため、より高品質なLH−RH誘導体を、工業的に効率よく生産することは困難であった。本発明は、保護ペプチドからLH−RH誘導体を製造する過程における構成アミノ酸のラセミ化を抑制し、ラセミ化異性体及びその他の不純物を効果的に除去するとともに精製工程を簡略・効率化しうる精製法により、LH−RH誘導体を工業的に極めて有利な方法で、高品質かつ高収率で得ることができる製造法の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述の問題を解決すべく、鋭意検討した結果、LH−RH誘導体の精製工程の改良、および脱保護反応後の後処理の改良を行い、LH−RH誘導体を製造および精製する過程における構成アミノ酸のラセミ化の抑制方法、ラセミ化異性体及びその他の不純物を効果的に除去しうるとともにイオン交換樹脂処理工程を経ることなく、カラム処理工程を大幅に簡略・効率化しうる精製方法を確立し、LH−RH誘導体をより高品質かつ高収率で得ることができる製造法を見出した。この知見に基づきさらに鋭意研究の結果、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程および芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とするLH−RH誘導体の製造方法、
(2)LH−RH誘導体が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
〔式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表されるペプチドまたはその塩である上記(1)記載の製造方法、
(3)LH−RH誘導体が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5
で表されるぺプチドまたはその酢酸塩である上記(1)記載の製造方法、
(4)式
【化3】
で表される繰り返し単位を有するメタクリル系合成吸着樹脂を用いることを特徴とする上記(1)記載の製造方法、
(5)芳香族系合成吸着樹脂がスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂である上記(1)記載の製造方法、
(6)スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂の平均粒径が約60μmないし約150μmである上記(5)記載の製造方法、
(7)LH−RH誘導体を含有する溶液を約10℃以下でメタクリル系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とする上記(1)記載の製造方法、
(8)LH−RH誘導体を含有する溶液を約10℃ないし約20℃で芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とする上記(1)記載の製造方法、
(9)LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程に付した後、芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とする上記(1)記載の製造方法、
(10)LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程において樹脂に通液させた後、樹脂に吸着されたLH−RH誘導体を酢酸水溶液で溶出することを特徴とする上記(1)記載の製造方法、
(11)酢酸水溶液の濃度が約0.01Mないし約0.50Mである上記(10)記載の製造方法、
(12)LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程において樹脂に通液させた後、エタノール水溶液で洗浄し、樹脂に吸着されたLH−RH誘導溶出することを特徴とする上記(1)記載の製造方法、
(13)LH−RH誘導体を含有する溶液が保護基で保護されたLH−RH誘導体を脱保護反応に付した後、約10℃以下で中和反応に付して得られたLH−RH誘導体を含有する溶液である上記(1)記載の製造方法、
(14)LH−RH誘導体を含有する溶液が保護基で保護されたLH−RH誘導体を脱保護反応に付した後、約10℃以下で中和反応に付し、LH−RH誘導体を抽出した後、抽出液を25℃以下で濃縮して得られたLH−RH誘導体を含有する溶液である上記(1)記載の製造方法、
(15)保護基で保護されたLH−RH誘導体が、式
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg(X)-Pro-Z
〔式中、Xは保護基を、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表される上記(13)または上記(14)記載の製造方法、
(16)総類縁物質の含量が約1%以下である精製リュープロレリンまたはその塩、および
(17)5-oxo-Pro-D-His-Trp-Ser-Tyr-D-Leu-Leu-Arg-Pro-NH-CH2-CH3またはその塩の含量が約0.3%以下である精製リュープロレリンまたはその塩などに関する。
【0009】
本発明は、LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程および芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とするLH−RH誘導体の製造方法などに関する。
LH−RHアゴニストとしては、例えば、LH−RHアゴニスト活性を有するペプチド性のLH−RH誘導体またはその塩であって、ホルモン依存性疾患、特に性ホルモン依存性癌(例、前立腺癌、子宮癌、乳癌、下垂体腫瘍など)、前立腺肥大症、子宮内膜症、子宮筋腫、思春期早発症、月経困難症、無月経症、月経前症候群、多房性卵巣症候群等の性ホルモン依存性の疾患および避妊(もしくは、その休薬後のリバウンド効果を利用した場合には、不妊症)に有効なペプチド性のLH−RH誘導体またはその塩があげられる。さらに性ホルモン非依存性であるがLH−RH感受性である良性または悪性腫瘍などに有効なLH−RH誘導体またはその塩などもあげられる。
上記のLH−RH誘導体の塩としては、薬理学的に許容される塩が好ましく、このような塩としては、該LH−RH誘導体がアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸(無機の遊離酸とも称する)(例、炭酸、重炭酸、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸等)、有機酸(有機の遊離酸とも称する)(例、コハク酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等)などとの塩があげられる。
該LH−RH誘導体がカルボキシル基等の酸性基を有する場合、無機塩基(無機の遊離塩基とも称する)(例、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属など)や有機塩基(有機の遊離塩基とも称する)(例、トリエチルアミン等の有機アミン類、アルギニン等の塩基性アミノ酸類等)などとの塩があげられる。また、該LH−RH誘導体は金属錯体化合物(例、銅錯体、亜鉛錯体等)を形成していてもよい。
【0010】
LH−RHアゴニスト活性を有するペプチド性のLH−RH誘導体としては、例えば、式
5-oxo-Pro-R1-Trp-Ser-R2-R3-R4-Arg-Pro-R5(I)
〔式中、R1はHis, Tyr, Trpまたはp-NH2-Pheを,R2はTyrまたはPheを,R3はGlyまたは置換基を有していてもよいD型のアミノ酸残基を、R4はLeu,IleまたはNleを、R5は式 Gly-NH-R6(R6は水素原子または置換されていてもよいアルキル基を示す)で表わされる基または式 NH-R6'(R6'は(1)水素原子、(2)アミノ基もしくは水酸基で置換されていてもよいアルキル基または(3)ウレイド(-NH-CO-NH2)を示す〕で表わされるポリペプチドなどがあげられる。
上記式(I)において、R3で示されるD型のアミノ酸残基としては、例えば炭素数が11までのα-D-アミノ酸(例、D-Leu, Ile, Nle, Val, Nval, Abu, Phe, Phg, Ser, Thr, Met, Ala, Trp)などがあげられ、それらは適宜置換基(例、メチル、t−ブチルなどのC1-4アルキル基、t−ブトキシなどのC1-4アルコキシ基、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基、2−ナフチルなどのC6-10アリール基、インドール−3−イル、2−メチルインドリル、ベンジルイミダゾール−2−イルなどのそれぞれC1-4アルキル、C6-10アリールもしくはC6-10アリール−C1-4アルキルで置換されていてもよいインドリル基またはイミダゾリル基など)を1〜3個有していてもよい。R6で示される置換されていてもよいアルキル基における置換基としては、例えば、水酸基,アミノがあげられる。アミノ基もしくは水酸基で置換されていてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、C1-4アルキル基があげられ、なかでもC1-3アルキル基が好ましい。C1-4アルキル基の例としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルがあげられる。置換基の個数は、1〜3個があげられるが、1〜2個が好ましく、1個が特に好ましい。
【0011】
LH−RHアゴニスト活性を有するペプチド性のLH−RH誘導体としてさらに好ましくは、例えば、式(II)
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg-Pro-Z
〔式中、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表わされる生理活性ペプチドまたはその塩などが用いられる。特に、YがDLeuで、ZがNH-C2H5であるペプチド(即ち、5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5で表されるペプチド:リュープロレリン)が好適である。5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C2H5で表されるペプチドの塩としては、上記に例示したもののなかで、特に酢酸塩(酢酸リュープロレリン)が好ましい。
本明細書中に記載されるポリペプチドにおけるアミノ酸、ペプチド、保護基等に関し、略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものとし、また、アミノ酸に関し光学異性体がありうる場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
【0012】
略号の例を以下に示す。
Abu :アミノ酪酸
Aibu :2−アミノ酪酸
Ala :アラニン
Arg :アルギニン
Gly :グリシン
His :ヒスチジン
Ile :イソロイシン
Leu :ロイシン
Met :メチオニン
Nle :ノルロイシン
Nval :ノルバリン
Phe :フェニルアラニン
Phg :フェニルグリシン
Pro :プロリン
(Pyr)Glu :ピログルタミン酸
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Trp :トリプトファン
Tyr :チロシン
Val :バリン
D2Nal :D-3-(2-ナフチル)アラニン残基
DSer(tBu) :O-tert-ブチル−D−セリン
DHis(ImBzl) :Nim-ベンジル−D−ヒスチジン
PAM :フェニルアセタミドメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
Fmoc :9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモーベンジルオキシカルボニル
Bzl :ベンジル
Cl2−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Tos :p−トルエンスルホニル
HONb :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2、3−ジカルボキシイミド
HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt :3−ヒドロキシ−3、4−ジヒドロ−4−オキソ−1、2、3−ベンゾトリアジン
MeBzl :4−メチルベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Bum :t−ブトキシメチル
Trt :トリチル
DNP :ジニトロフェニル
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0013】
LH−RHアゴニスト活性を有するペプチド性のLH−RH誘導体として、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の他に好ましい例としては、例えば、
【0014】
(1)ゴセレリン(Goserelin)
【化4】
(米国特開第4100274号,特開昭52−136172号)、
【0015】
(2)ブセレリン(Buserelin)
【化5】
(米国特許No.4,024,248、ドイツ特許第2438352号,特開昭和51−41359号)、
【0016】
(3)トリプトレリン(Triptorelin)
【化6】
(米国特開第4010125号,特開昭52−31073号)、
【0017】
(4)ナファレリン(Nafarelin)
【化7】
(米国特開第4234571号,特開昭55−164663号,同昭63−264498号,同昭64−25794号)、
【0018】
(5)ヒストレリン(Histrelin)
【化8】
【0019】
(6)デスロレリン(Deslorelin)
【化9】
(米国特開第4569967号,同4218439号)、
【0020】
(7)メテレリン(Meterelin)
【化10】
(PCT WO 91/18016)、
【0021】
(8)ゴナドレリン(Gonadrelin)
【化11】
(ドイツ特許第2213737号)など、またはそれらの塩などがあげられる。
上記〔化4〕〜〔化11〕において、前記式(I)のR3に相当するアミノ酸はD−体である。
【0022】
メタクリル系合成吸着樹脂とは、メタクリル酸エステルを基体とするポリマーの合成吸着樹脂のことを意味し、該樹脂処理工程に付すことによりLH−RH誘導体を製造(精製)することにより(特に後述の芳香族系合成吸着樹脂と組合せて用いることにより)予想外にも、LH−RH誘導体のラセミ化異性体などを効果的に除去することができる。
また、LH−RH誘導体のラセミ化異性体などを効果的に除去することができるために、従来行われていた多段階のカラム処理工程を短縮することができる。
メタクリル系合成吸着樹脂カラムの具体例としては、例えば、HP2MG(三菱化学社製)、XAD−7、XAD−8(オルガノ社製)など(好ましくは、 HP2MG(三菱化学社製)など)があげられるが、LH−RH誘導体のラセミ化異性体などを効果的に除去するという目的を達成する限り、いずれのものを用いてもよい。
【0023】
メタクリル系合成吸着樹脂として好ましくは、樹脂の粒度分布が、300μm以上の粒径が90%以上であるものが好ましい。また、式
【化12】
で表される繰り返し単位を有するメタクリル系合成吸着樹脂が好ましい。
特に、メタクリル系合成吸着樹脂(好ましくは、 HP2MG(三菱化学社製)など)を用いて、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)を製造(精製)する場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の5-oxo-Proに隣接するHisにおけるラセミ化異性体(以下D-His2体と略記する)、Hisに隣接するTrpにおけるラセミ化異性体(以下D-Trp3体と略記する)およびその他の高極性類縁物質を極めて効果的に除去することができる。
上記の「その他の高極性類縁物質」とは、リュープロレリンのペプチドが切断されたペプチド断片及び反応に用いた試薬などのことをいい、具体的には、フェノールなどがあげられる。
【0024】
芳香族系合成吸着樹脂(好ましくは、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂)とは、スチレン−ジビニルベンゼンを共重合した多孔性ポリマーの合成吸着樹脂のことを意味し、該樹脂処理工程に付すことによりLH−RH誘導体を製造(精製)することにより(特に前述のメタクリル系合成吸着樹脂と組合せて用いることにより)、予想外にも、LH−RH誘導体のラセミ化異性体などを効果的に除去することができる。芳香族系合成吸着樹脂の具体例としては、例えば、HP20、HP21(三菱化学社製)、HP20SS、SP20SS(三菱化学社製)、XAD−2、XAD−4(オルガノ社製)など(好ましくは、HP20SS(三菱化学社製)など)があげられるが、LH−RH誘導体のラセミ化異性体などを効果的に除去するという目的を達成する限り、いずれのものを用いてもよい。
また、芳香族系合成吸着樹脂の粒径が約60μm〜約150μmのものを用いることがより好ましい。
また、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂の粒度分布が、150μm以上の粒径が15%以下、63μm以上、150μm未満の粒径が70%以上、63μm未満の粒径が20%以下であるものが好ましく用いられる。
特に、芳香族系合成吸着樹脂(好ましくは、HP20SS(三菱化学社製)など)を用いて、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)を製造(精製)する場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のD-His2体、L-Leu6体およびその他の高極性類縁物質を極めて効果的に除去することができる。
「その他の高極性類縁物質」とは、上記と同意義である。
【0025】
上記の「LH−RH誘導体のラセミ化異性体などを効果的に除去する」という目的を達成するためには、メタクリル系合成吸着樹脂処理工程と芳香族系合成吸着樹脂処理工程とを組合せて用いることが好ましい。この場合、LH−RH誘導体の製造(精製)工程において、メタクリル系合成吸着樹脂処理工程と芳香族系合成吸着樹脂処理工程の順序は特に規定されないが、メタクリル系合成吸着樹脂処理工程に付した後に芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付すことにより、LH−RH誘導体を製造(精製)することが好ましい。
以下にLH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程および芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とするLH−RH誘導体の製造方法について詳述する。
【0026】
(1)LH−RH誘導体の精製工程
▲1▼ 精製前のLH−RH誘導体(以下、粗LH−RH誘導体とする)を緩衝液に溶解して、LH−RH誘導体を含有する溶液を調製する。
用いられる緩衝液としては、合成吸着樹脂へのLH−RH誘導体の吸着を阻害しないものであれば、特に限定はされないが、例えば、水(蒸留水、脱イオン水)、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸アンモニウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液など(好ましくは酢酸ナトリウム水溶液など)が用いられる。
また、LH−RH誘導体のラセミ化異性体の副生を抑制するのため、pH調節剤(例えば、酢酸、リン酸、塩酸など)により、 LH−RH誘導体を含有する溶液のpHを約4〜約6、好ましくは約4〜約5に調節することが好ましい。
さらに、LH−RH誘導体が上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のHisに隣接するTrpにおけるラセミ化異性体(以下D-Trp3体と略記する)、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のTrpに隣接するSerにおけるラセミ化異性体(以下D-Ser4体と略記する)の副生を防ぐために、LH−RH誘導体を含有する溶液の温度は約10℃以下、好ましくは約3℃〜約7℃に調整されることが好ましい。
また、 LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、D-Trp3体)及び高極性類縁物質の副生を防ぐために、LH−RH誘導体を含有する溶液は、調製後速やかに次操作(メタクリル系合成吸着樹脂処理工程)に付すことが好ましい。
【0027】
▲2▼ 上記▲1▼により得られたLH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程に付す。
具体的には、まず、上記▲1▼により得られたLH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂に通液することでLH−RH誘導体を樹脂に吸着させ、緩衝液および/またはアルコール水溶液(例、エタノール水溶液、メタノール水溶液、n−プロパノール水溶液、イソプロパノール水溶液など(好ましくはエタノール水溶液など))で洗浄する。緩衝液としては、例えば、水(蒸留水、脱イオン水)、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸アンモニウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液など(好ましくは酢酸ナトリウム水溶液、酢酸アンモニウム水溶液など)が用いられる。また、エタノール水溶液を用いて洗浄することにより、高極性類縁物質(具体的には上述)を効果的に除去できる。このときのエタノール水溶液の濃度としては、約0〜約20容量%、好ましくは、約5〜約15容量%であることが好ましい。
続いて、溶出液(例えば、酢酸水溶液、プロピオン酸水溶液、塩酸、リン酸水溶液など、好ましくは酢酸水溶液など)を用いて、樹脂に吸着されたLH−RH誘導体を溶出する。このときの溶出液の濃度は約0.01M〜約0.50M、好ましくは約0.05M〜約0.20M、より好ましくは約0.05M〜約0.10Mであることが好ましい。また溶出液のpHは中性以下、好ましくは約pH3〜6に保つことが好ましい。これらの条件で溶出を行うことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、D-Trp3体、D-Ser4体)の副生を効率的に防ぐことが可能となる。
また、上記▲1▼により得られたLH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程に付す工程中、操作温度を約10℃以下、好ましくは約0℃〜約10℃、さらに好ましくは約3℃〜約7℃に保つことにより、 LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、D-Trp3体、D-Ser4体)の副生を効率的に防ぐことが可能となる。
メタクリル系合成吸着樹脂処理工程には、好ましくはメタクリル系合成吸着樹脂を充填したカラムが用いられる。
【0028】
▲3▼ 上記▲2▼により得られたLH−RH誘導体を含有する溶液(溶出液)を自体公知の方法で濃縮することにより得られるLH−RH誘導体を含有する溶液を芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付す。
具体的には、まず、上記▲2▼により得られたLH−RH誘導体を含有する溶液(溶出液)を自体公知の方法で濃縮することにより得られるLH−RH誘導体を含有する溶液を芳香族系合成吸着樹脂に吸着させ、緩衝液で洗浄する。緩衝液としては、合成吸着樹脂へのLH−RH誘導体の吸着を阻害しないものであれば、特に限定はされないが、例えば、水(蒸留水、脱イオン水)、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸アンモニウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液など(好ましくは酢酸ナトリウム水溶液など)が用いられる。また洗浄は、エタノール水溶液、メタノール水溶液、n-プロパノール水溶液、イソプロパノール水溶液などのアルコール水溶液(好ましくはエタノール水溶液など)などをさらに用いても良い。
続いて、溶出液(例えば、エタノール水溶液、メタノール水溶液、n-プロパノール水溶液、イソプロパノール水溶液などのアルコール水溶液など、好ましくはエタノール水溶液など)を用いて、LH−RH誘導体を溶出する。このときの溶出液の濃度は約10容量%〜約50容量%、好ましくは、約15容量%〜約40容量%であることが好ましい。また溶出は、数回(好ましくは2回)に分けて行うことが好ましく、これらの好ましい条件下で溶出を行うことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のTyrに隣接するD-Leuにおけるラセミ化異性体(以下L-Leu6体と略記する))およびその他の高極性物質(具体的には、上述)をより効果的に除去することができる。また、これらの溶出液は、約0容量%〜約0.1容量%の酢酸、好ましくは約0.005容量%〜約0.01容量%の酢酸を含有することが好ましく、この好ましい条件下で溶出を行うことにより、 LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、D-Trp3体、D-Ser4体)の副生をより効果的に抑制することができる。
また、上記▲2▼により得られたLH−RH誘導体を含有する溶液(溶出液)を自体公知の方法で濃縮することにより得られるLH−RH誘導体を含有する溶液を芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付す際、処理工程温度を室温以下、好ましくは約10℃〜約20℃、さらに好ましくは約13℃〜約17℃に保つことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のTyrに隣接するD-Leuにおけるラセミ化異性体(以下L-Leu6体と略記する))およびその他の高極性物質(具体的には、上述)の除去はより効果的になる。
芳香族系合成吸着樹脂処理工程には、好ましくは芳香族系合成吸着樹脂を充填したカラムが用いられる。
【0029】
続いて、得られたLH−RH誘導体を含有する溶液(溶出液)を自体公知の方法で濃縮することにより、非常に高品質なLH−RH誘導体を高収量で得ることができる。
LH−RH誘導体の精製工程における▲1▼の工程と▲2▼の工程の順序は逆転していてもよいが、メタクリル系合成吸着樹脂処理工程による精製後、芳香族系合成吸着樹脂処理工程による精製を行うことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、特にリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のTrp3体およびSer4体))の除去および副生抑制はより効果的になる。
【0030】
(2)脱保護反応後、精製前の処理工程
本発明の製造法は、LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程および芳香族系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とするLH−RH誘導体の精製方法に関する。また本発明は保護基で保護されたLH−RH誘導体を脱保護反応に付してから合成吸着樹脂処理工程に付す前のLH−RH誘導体を含有する溶液を調製する工程(精製前の処理工程)を低温で行うことにより、より高品質のLH−RH誘導体を製造する方法に関する。
【0031】
以下に精製前の処理工程について詳述する。
▲1▼粗LH−RH誘導体の製造
上記のとおり、本発明の製造法によって得られるLH−RH誘導体はペプチド性のものであるので、自体公知のペプチド合成法によって粗LH−RH誘導体を合成することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、粗LH−RH誘導体を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の1〜5に記載された方法があげられる。
1.M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
2.SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
3.泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
4.矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
5.矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
粗LH−RH誘導体の合成には、通常市販のペプチド合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などをあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とする粗LH−RH誘導体の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させ、保護基で保護されたLH−RH誘導体を得ることができる。反応の最後に樹脂から粗LH−RH誘導体ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、目的の粗LH−RH誘導体を取得する。
【0032】
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt, HOOBt,HONb)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0033】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ニトロ、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmoc、p−メトキシベンゼンスルホニルなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2-Bzl、2−ニトロベンジル、Br-Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0034】
保護基で保護された(粗)LH−RH誘導体としては、上記のLH−RH誘導体の構成アミノ酸のα−アミノ基と側鎖官能基を上記の保護基で保護したものなどがあげられる。
保護基で保護されたLH−RH誘導体として、具体的には、例えば、式(III)
5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-Y-Leu-Arg(X)-Pro-Z
〔式中、Xは保護基を、YはDLeu、DAla、DTrp、DSer(tBu)、D2NalおよびDHis(ImBzl)から選ばれる残基を、ZはNH-C2H5またはGly-NH2をそれぞれ示す〕で表されるペプチドまたはその塩などがあげられる。
式(III)中、Xで表される保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ニトロ、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmoc、p−メトキシベンゼンスルホニルなどが用いられるが、特にp−メトキシベンゼンスルホニルなどが好ましい。
式(III)で表されるペプチドの塩としては、例えば、上述の塩と同様なものが用いられる。
また、式(III)で表されるペプチドまたはその塩は、上述の自体公知のペプチド合成法によって製造することができるが、具体的には、例えば、 WO 97/48726号に記載の方法またはそれに準じた方法により、製造することができる。
【0035】
保護基の除去方法(脱保護反応)としては、例えば、Pd−黒あるいはPd-炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液など(好ましくはメタンスルホン酸など)による酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記の脱保護反応は、一般に約40℃以下の温度で行なわれるが、脱保護反応を約25℃以下、好ましくは約5℃〜約15℃、さらに好ましくは約8℃〜約12℃で行うことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のD-His2体)の副生を効果的に抑制することができる。酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールなど(好ましくはフェノールなど)のようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0036】
上記の脱保護反応の反応時間は通常約1〜約10時間、好ましくは約2時間〜約5時間、さらに好ましくは、約2時間〜約3時間である。
より具体的な保護基の除去(脱保護)方法としては、例えば、式(III)で表されるペプチドまたはその塩を脱保護反応に付す場合には、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液など(好ましくはメタンスルホン酸など)による酸処理が好ましい方法としてあげられる。また、このときに、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールなど(好ましくはフェノールなど)のカチオン捕捉剤を添加することが好ましい。脱保護反応は、一般に約40℃以下の温度で行なわれるが、約25℃以下、好ましくは約5℃〜約15℃、さらに好ましくは約8℃〜約12℃で行うことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のD-His2体)の副生を効果的に抑制することができる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
【0037】
▲2▼ 脱保護反応後の後処理工程
まず、上記▲1▼の脱保護反応によって得られたLH−RH誘導体を含有する溶液(反応液)を中和する。中和液としては、公知のものから適宜選択されるが、例えば、脱保護反応が酸処理により行われた場合には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、アンモニア水、トリエチルアミンなど(好ましくは、炭酸ナトリウム水溶液など)が、脱保護反応が塩基処理により行われた場合には、塩酸、酢酸など(好ましくは、塩酸など)が用いられる。
中和反応は一般に約40℃以下の温度で行なわれるが、中和反応を約10℃以下、好ましくは約5℃以下、さらに好ましくは約−5℃〜約5℃で行うことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のD-Trp3体)の副生を効果的に抑制することができる。
次に、中和液の有機層を取得後、緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液など(好ましくは、酢酸ナトリウム水溶液など))を添加して、LH−RH誘導体を水層に転溶する。また、緩衝液のpHは約3〜約5、好ましくは約3.9〜約4.3に調整することが好ましい。
水層を酢酸エチル、酢酸メチル、トルエン、塩化メチレンまたはエーテルなど(好ましくは、酢酸エチルなど)で洗浄し、自体公知の方法で濃縮を行い、酢酸、塩酸またはリン酸など(好ましくは、酢酸など)のpH調節剤で溶液のpHを約4〜約6、好ましくは約4.3〜約4.7に調節してLH−RH誘導体を含有する水溶液を得ることができる。
上記の中和液の有機層を取得してからLH−RH誘導体を含有する水溶液を取得するまでの一連の工程は一般に約40℃以下の温度で行なわれるが、これらの工程を約0℃〜約10℃、好ましくは約3℃〜約7℃で行うことにより、LH−RH誘導体のラセミ化異性体(具体的には、上記のリュープロレリン(酢酸リュープロレリン)の場合には、リュープロレリン(酢酸リュープロレリン)のD-Trp3体)の副生を効果的に抑制することができる。
本発明の製造方法により得られるLH−RH誘導体は従来の技術により得られるLH−RH誘導体に比べ、不純物(LH−RH誘導体のラセミ化異性体、高極性類縁物質、その他の不純物)の量が大幅に少ない極めて高品質のLH−RH誘導体である。また、従来の技術では、LH−RH誘導体を精製するには、合成吸着樹脂処理工程またはイオン交換樹脂処理工程を数度にわたり繰り返さねばならないが、本発明では2度の合成吸着樹脂処理工程で十分な精製を効果的に行うことができ、作業時間を短縮し、高収率でLH−RH誘導体を製造することができる。この点からも従来技術に比べ、本発明の製造法はLH−RH誘導体の工業的製造法として極めて有利な方法である。
上記のとおり、本発明の製造方法により、非常に高品質のLH−RH誘導体を高収量で得ることができる。
【0038】
「高品質のLH−RH誘導体」としてより具体的には、例えば、総類縁物質の含量が約1%以下(好ましくは約0.9%以下、より好ましくは約0.8%以下、更に好ましくは約0.7%以下)である精製LH−RH誘導体(好ましくは、精製リュープロレリンまたはその塩など)などがあげられる。
ここで、総類縁物質とは、高速液体クロマトグラフィー等により検出される、全ての不純物の合計を意味し、不純物としては、LH−RH誘導体のラセミ化異性体、高極性類縁物質、その他の不純物である。
さらに具体的には、例えば、精製LH−RH誘導体が精製リュープロレリンまたはその塩である場合、▲1▼ 5-oxo-Pro-D-His-Trp-Ser-Tyr-D-Leu-Leu-Arg-Pro-NH-CH2-CH3またはその塩の含量が約0.3%以下(このましくは約0.25%以下、更に好ましくは、約0.2%以下)である精製リュープロレリンまたはその塩、▲2▼ 5-oxo-Pro-His-Trp-D-Ser-Tyr-D-Leu-Leu-Arg-Pro-NH-CH2-CH3またはその塩の含量が約0.15%以下(このましくは約0.1%以下、更に好ましくは、約0%)である精製リュープロレリンまたはその塩、▲3▼5-oxo-Pro-His-D-Trp-Ser-Tyr-D-Leu-Leu-Arg-Pro-NH-CH2-CH3またはその塩の含量が約0.2%以下(このましくは約0.15%以下、更に好ましくは、約0.1%)である精製リュープロレリンまたはその塩などがあげられる。
上記の精製LH−RH誘導体は、低毒性であり、哺乳動物(例、ヒト、サル、イヌ、ラット、マウス)に対して、前立腺癌,良性前立腺肥大,子宮内膜症,子宮筋腫,子宮線維腫,思春期早発症,乳癌、卵巣癌、子宮頸癌等の性ホルモン依存性疾患あるいはアルツハイマーの予防または治療薬として、投与することができる。
また、上記の精製LH−RH誘導体は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、徐放性製剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤、徐放性製剤などの注射剤、または溶液、懸濁液剤などの経鼻投与製剤の形で非経口的に投与できる。上記の精製LH−RH誘導体を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって上記製剤を製造することができる。
【0039】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80(TM)、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記製剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
上記の精製LH−RH誘導体を含有してなる徐放性製剤は、自体公知の方法、例えば、特開昭60−100516号、特開昭62−201816号、特開平4−321622号、特開平6−192068号、特開平9−132524号、特開平9−221417号、特開平11−279054号、WO 99/360099号公報などに記載の方法に従って製造することができる。
【0040】
上記の精製LH−RH誘導体の投与量は、対象疾病、対象動物などによって種々異なるが、1回当たりの投与量としては、例えば、好ましくは成人の前立腺癌患者1人当たり約 0.01 mg-100 mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは約 0.05 mg-50 mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。
該上記の精製LH−RH誘導体を含有する徐放性製剤の投与量は、例えば、薬効期間が1ヶ月である徐放性製剤の場合、1回当たりの徐放性製剤の投与量は成人の前立腺癌患者1人当たり好ましくは,約 0.1 mg-500 mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。さらに好ましくは約 0.2 mg-300 mg/kg体重の範囲から適宜選ぶことができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0042】
【実施例】
実施例1 5-オキソ-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-チロシル-D-ロイシル-L-ロイシル-L-アルギニル-N-エチル-L-プロリンアミド (リュープロレリン、リュープロライド、Leuprolide)の製造(1)
メタンスルホン酸748gとフェノール56gの混液に、5-オキソ-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-チロシル-D-ロイシル-L-ロイシル-Nω-p-メトキシベンゼンスルホニル-L-アルギニル-N-エチル-L-プロリンアミド68.35g(純量52.92g)を加え、8〜12℃で約3時間反応した。炭酸カリウム(646g)水溶液(水1896mL)と酢酸エチル396mLの混液に、反応液を-5〜5℃で加え、続いて3〜7℃で30分間攪拌し中和した。分液後、有機層に0.11M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.9〜4.3)2316mLを加えて、3〜7℃で攪拌し抽出した。酢酸でpH4.3〜4.7に調整し、酢酸エチル372mLを加えた後、分液した。水層を酢酸エチル372mLで、3〜7℃で洗浄した。水層を25℃以下で減圧濃縮後、酢酸でpH4.3〜4.7に調整し、Leuprolideの水溶液(1)を得た。
Leuprolide acetate収量:44.26g(90.9%)
高速液体クロマトグラフィー品質(対Leuprolideピーク面積比率):D-Trp3体;不検出,D-Ser4体;不検出,D-His2体;0.27%,L-Leu6体;1.14%
【0043】
実施例2 5-オキソ-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-チロシル-D-ロイシル-L-ロイシル-L-アルギニル-N-エチル-L-プロリンアミド (Leuprolide)の製造(2)
Leuprolideの水溶液(1)5600g(Leuprolide acetate 85.46g)をメタクリル系合成吸着樹脂(HP2MG:三菱化学)5500mLのカラムクロマトに3〜7℃で通液した。0.3M酢酸ナトリウム水溶液(pH6.3)11000mL、0.025M酢酸アンモニウム水溶液13750mL、10容量%エタノール水溶液19250mLを、3〜7℃で順次通液し洗浄した。3〜7℃で、0.05M酢酸水溶液41250mLを通液し溶離を行った。有効区を集め、35℃以下で減圧濃縮を行い、Leuprolideの水溶液(2)を得た。
Leuprolide acetate収量:73.77g(86.3%)
高速液体クロマトグラフィー品質(対Leuprolideピーク面積比率):D-Trp3体;0.11%,D-Ser4体;0.03%,D-His2体;0.24%,L-Leu6体;0.42%
【0044】
実施例3 5-オキソ-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-チロシル-D-ロイシル-L-ロイシル-L-アルギニル-N-エチル-L-プロリンアミド (Leuprolide)の製造(3)
Leuprolideの水溶液(2)3731g(Leuprolide acetate 73.54g)を芳香族系合成吸着樹脂の小粒径品(HP20SS:三菱化学)2200mLのカラムクロマトに13〜17℃で通液した。0.1M酢酸ナトリウム水溶液(pH6.3)6600mL、0.01M酢酸アンモニウム水溶液9900mL、水2200mLを、13〜17℃で順次通液し洗浄した。13〜17℃で、20容量%エタノール水溶液8800mL、35容量%エタノール水溶液8800mLで順次溶離を行った。有効区を集め35℃以下で減圧濃縮を行い、Leuprolideの水溶液(3)を得た。
Leuprolide acetate収量:64.55g(87.8%)
高速液体クロマトグラフィー品質(対Leuprolideピーク面積比率):D-Trp3体;0.12%,D-Ser4体;0.04%,D-His2体;0.18%,L-Leu6体;不検出
【0045】
実施例4 5-オキソ-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-チロシル-D-ロイシル-L-ロイシル-L-アルギニル-N-エチル-L-プロリンアミド 一酢酸塩 (Leuprolide acetate)の製造(4)
Leuprolideの水溶液(3)436.7g(Leuprolide acetate 63.90g)を架橋デキストランゲル(Sephadex LH-20:ファルマシア)2350mLを用いてカラムクロマトを行い、0.005N酢酸水溶液で溶出させた。有効区を集め、活性炭1.16gで脱色を行った。活性炭を濾去後、35℃以下で減圧濃縮し、濃縮液を限外濾過した。濾過液を凍結乾燥し、Leuprolide acetateの凍結乾燥品60.38gを得た。
Leuprolide acetate収量:60.02g(98.9%)
高速液体クロマトグラフィー品質(対Leuprolideピーク面積比率):D-Trp3体;0.11%,D-Ser4体;0.03%,D-His2体;0.18%,L-Leu6体;不検出
【0046】
実施例5 5-オキソ-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-チロシル-D-ロイシル-L-ロイシル-L-アルギニル-N-エチル-L-プロリンアミド (Leuprolide)の製造(3')
Leuprolideの水溶液(2)200L(Leuprolide acetate 4080g)を、芳香族系合成吸着樹脂の小粒径品(HP20SS:三菱化学)120Lのカラムクロマトに13〜17℃で通液した。0.1mol/L酢酸ナトリウム水溶液(pH6.3)360L、0.01mol/L酢酸アンモニウム水溶液540L、水120Lを13〜17℃で順次通液し洗浄した。13〜17℃で、15容量%エタノール水溶液(酢酸0.01W/V%を含む)960L、20容量%エタノール水溶液(酢酸0.01W/V%を含む)480L、30容量%エタノール水溶液(酢酸0.01W/V%を含む)360Lで順次溶離を行った。有効区を集め35℃以下で減圧濃縮を行い、Leuprolideの水溶液を得た。
Leuprolide acetate収量:3527g(86.4%)
高速液体クロマトグラフィー品質(対Leuprolideピーク面積比率):D-Trp3体;0.13%,D-Ser4体;0.04%,D-His2体;0.25%,L-Leu6体;不検出
【0047】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、LH−RH誘導体のラセミ化異性体などの不純物の副生を抑制し、かつラセミ化異性体などの不純物を効率的に除去することが可能になるため、極めて高品質のLH−RH誘導体を製造することが可能になる。また、本発明の製造方法では2度の合成吸着樹脂処理工程で十分な精製を効果的に行うことができ、容易な操作で効率よくかつ煩雑は個液分離操作もなく、高収率でLH−RH誘導体を製造することができる。

Claims (8)

  1. 約4〜約5のpHを有し、式
    5-oxo-Pro-His-Trp-Ser-Tyr-DLeu-Leu-Arg-Pro-NH-C 2 H 5
    で表されるぺプチドまたはその酢酸塩であるLH−RH誘導体を含有する溶液を、約0℃ないし約10℃でメタクリル系合成吸着樹脂処理工程に付した後、約10℃ないし約20℃でスチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂処理工程に付すことを特徴とするLH−RH誘導体の製造方法。

  2. で表される繰り返し単位を有するメタクリル系合成吸着樹脂を用いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂の平均粒径が約60μmないし約150μmである請求項記載の製造方法。
  4. LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程において樹脂に通液させた後、樹脂に吸着されたLH−RH誘導体を酢酸水溶液で溶出することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  5. 酢酸水溶液の濃度が約0.01Mないし約0.50Mである請求項記載の製造方法。
  6. LH−RH誘導体を含有する溶液をメタクリル系合成吸着樹脂処理工程において樹脂に通液させた後、エタノール水溶液で洗浄し、樹脂に吸着されたLH−RH誘導体を溶出することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  7. LH−RH誘導体を含有する溶液が保護基で保護されたLH−RH誘導体を脱保護反応に付した後、約10℃以下で中和反応に付して得られたLH−RH誘導体を含有する溶液である請求項1記載の製造方法。
  8. LH−RH誘導体を含有する溶液が保護基で保護されたLH−RH誘導体を脱保護反応に付した後、約10℃以下で中和反応に付し、LH−RH誘導体を抽出した後、抽出液を25℃以下で濃縮して得られたLH−RH誘導体を含有する溶液である請求項1記載の製造方法。
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