JP4677675B2 - 電気メッキ方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被メッキ材の表面に所望の膜厚分布を有する金属メッキ層を効率よく形成させる電気メッキ方法ならびにこの方法に使用される比較的安価で簡便な構造の電気メッキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気メッキ法は求められる電気的特性、機械的強度・硬度・耐摩耗性・潤滑性、化学的安定性(耐食性)、美観等の種々の特性に応じて採用されるが、これらの特性の中でも電気的特性を要求する電気メッキにおいては電導性、化学的安定性、加工性等を備えた貴金属等の高価な金属が使用されることが多い。この高価な金属を用いたメッキにおいては特に電気的特性、コスト等の観点から金属メッキ層に膜厚分布を形成させる必要性が高まっているが、この際に、従来からの汎用型構造の比較的簡便で安価な電気メッキ装置を従来どおりの方法で使用した場合には上記の求めに応じて被メッキ材の表面に所望の膜厚分布を有する金属メッキ層を形成することは困難であり、いたずらに上記の高価な金属の使用量を増加させ、コスト高なメッキ製品となってしまうことが少なくない。一方、高度な専用メッキ設備を使用した場合は、設備自体が高額でかつ汎用性がなく、この面でコスト高となり、解決が求められていた。
【0003】
この問題に関する先行技術として特開昭54―112343があり、これは、押込み疵のない高品質の差厚メッキ製品を得ることを目的としてメッキを厚く形成したくない側の電極を絶縁材料で覆う方法、すなわち「複数個の電極が被メッキ材の通過面両側に相対して設けられている横型高速電気メッキラインでの電気メッキ方法において、一方の側の電極の全部又は一部のものの電流を零にすると共に、これらの電極を絶縁材料で覆い、且つ一方の側の残りの各電極と他方の側の各電極とに流す電流を等しくすることを特徴とする差厚電気メッキ方法」であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、現実にはこの一方の側へ電流の回り込みが生じてメッキ厚みの抑制が困難であった。特に、被メッキ材の幅が狭い場合、または、打ち抜き材の場合は、差厚メッキしようとしても両面に同等の膜厚のメッキが形成されてしまうことが少なくない。また、被メッキ材表面の金属メッキ層において個所毎に膜厚を設定することは困難、または、不可能であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、メッキセル内の所定箇所において部分的にメッキ液の流速を低下させることにより、その部分において、メッキ液中の金属塩濃度を低下させ、高価な貴金属をメッキする場合であっても効率よく被メッキ材表面に所望どおりの膜厚分布を有する金属メッキ層を形成することを課題とするものである。
すなわち、本発明は、第1に、被メッキ材を陰極として陽極に対向させて配置したセル内にメッキ液を通液し直流電流を通電して該被メッキ材の表面に所定の膜厚分布を有する金属メッキ層を形成する電気メッキを行うにあたり、該被メッキ材の表面近傍の該メッキ液に流速分布を設定することを特徴とする電気メッキ方法、であり;第2に、前記被メッキ材のうち所定箇所の表面近傍のメッキ液流速を該被メッキ材の該箇所以外の表面近傍のメッキ液流速より小さい流速に設定することによって、該被メッキ材の表面に形成される金属メッキ層のうち該箇所の金属メッキ層の膜厚を該被メッキ材の該箇所以外の金属メッキ層の膜厚より薄く形成させる、第1記載の電気メッキ方法、であり;第3に、前記メッキ液中において前記箇所の表面近傍に通液される該メッキ液の液流の上流側に該液流を阻害する治具を配置することによって、前記被メッキ材のうち該箇所の表面近傍のメッキ液流速を該被メッキ材の該箇所以外の表面近傍のメッキ液流速より小さい流速に設定する、第2記載の電気メッキ方法、であり;第4に、前記メッキ液中において前記箇所を治具で包囲することによって、前記被メッキ材のうち該箇所の表面近傍のメッキ液流速を該被メッキ材の該箇所以外の表面近傍のメッキ液流速より小さい流速に設定する、第2記載の電気メッキ方法、であり;第5に、被メッキ材が陰極として陽極に対向して配置されてメッキ液が通液され直流電流が通電されるセルと、該セル内に配置されて該被メッキ材の表面近傍の該メッキ液に流速分布を設定する治具と、を備えたことを特徴とする電気メッキ装置、である。
【0006】
【発明の実施の形態】
高い信頼性の電気的特性を要求する金属メッキ層としては高価な金属、すなわち、金、銀、パラジウム等の貴金属が用いられることが多いが、本発明では、これら貴金属はもちろん、銅、亜鉛等の卑金属のメッキ層を形成する場合にも適用することができる。また、陰極と陽極とは対向して配置され、後記する実施例においては1枚の陰極がセル内の2枚の陽極間に配置された例を記載したが、一つのセル内において陽極と陰極とを交互に複数枚配置することも可能である。セル内へのメッキ液の通液方法としては、実施例のようにセル底部の複数の給液口から上向きに極板間へ送液してセル上部からオーバーフローさせる方式、セルの一方側壁から横向きに送液して他方側壁からオーバーフローさせる方式、またはその他の方式を採用することができる。また、治具の配置はメッキ抑制箇所に応じて、メッキ液の所定供給口を塞ぐ、または被メッキ材の所定箇所を包囲することができ、さらにこれらを併用することもできる。被メッキ材と治具との間隔が狭いほどメッキ膜厚の抑制の効果が大きく、被メッキ材である陰極と陽極とがともに略平板形状である場合には、被メッキ材と治具との間隔は5mm以下が好ましい。さらに、治具はメッキ液と反応しない塩ビ等の材質が好ましく、少なくとも表面が非金属であることが望ましい。また、セルからオーバーフロー等により排出されたメッキ液は貯液タンクへ循環されてから再度セル内へ複数の給液口から通液されるが、特に陽極が不溶性の場合には、被メッキ材への金属メッキ層の形成にともない消費される金属分として貯液タンク等において金属化合物を添加、溶解させてメッキ液中の金属濃度を一定に保持することが好ましい。さらに、従来技術である電気的な遮蔽方法と併用することも可能である。
【0007】
【実施例】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例を説明する。
【0008】
[実施例1] 実施例1において用いた電気メッキ装置の断面図を図1に示す。
図1において、SUS304製のスイッチ等の接点材料の被メッキ材である陰極4が銀製の陽極3と対向して鉛直に配置されたセル1内へポンプ等によってシアン化銀メッキ液(Ag 60 g/L、25℃)2が矢印方向にセル1底部の複数の給液口から上向き方向に通液される。ここで被メッキ材4においてB点側の面のメッキ膜厚をA点側の面のメッキ膜厚より薄く形成すべく、B点側の面と対向する陽極3との間へのメッキ液2の流入を阻害するよう、複数の給液口のうち、B点側の面とこれに対向する陽極3との間の空間の下部において上流側となるメッキ液2の供給口を塞ぐよう塩ビ製の治具5を図1のように配置して、8 A/dm2の電流密度で銀メッキを行った。その場合のA点のメッキ膜厚とB点のメッキ膜厚とを表1に示す。メッキ液2の液流が阻害されなかったA点のメッキ膜厚は3.0μmであり、治具5によってメッキ液流が阻害されたB点のメッキ膜厚は1.2μmであり、金属メッキ層においてメッキ膜厚分布を形成することができた。
【0009】
【表1】
Figure 0004677675
【0010】
[比較例1] 実施例1に対応する比較例1として、図2に用いた電気メッキ装置の断面図を示すように、A点側の面、B点側の面とそれらにそれぞれ対向する陽極面によって形成される両空間に均等にメッキ液流を給液し、治具5を配置しない以外は実施例1と同一の条件で銀メッキを行った。これによればA点、B点とも表1に示されるように、3.0μmであり、両面に同一の厚さの金属メッキ層が形成され、当然に膜厚分布は形成されなかった。
【0011】
[実施例2] 実施例2において用いた電気メッキ装置の断面図を図3に示す。
白金被覆(クラッド)したチタン板製の2枚の不溶性陽極3に対向して挟まれて配置され、予めニッケルメッキされた銅合金製のコネクター等接点材料の被メッキ材である陰極4の下半分の両面を塩ビ製の治具5によって包囲して、50℃のシアン化金メッキ液2をセル1底部の複数の給液口から上向き方向に通液し、4 A/dm2 の電流密度で金メッキを行った。表2に示すように、この場合のA点のメッキ膜厚は0.10μmであり、B点のメッキ膜厚は0.02μmであり、金属メッキ層においてメッキ膜厚分布を形成することができた。
【0012】
【表2】
Figure 0004677675
【0013】
[比較例2] 実施例2に対応する比較例2として、図4に用いた電気メッキ装置の断面図を示すように、被メッキ材の陰極4の上部、下部とも均等にメッキ液2を通液し、治具5を配置しない以外は実施例2と同一条件で金メッキを行った。これによればA点、B点とも表2に示されるように、0.10μmであり、同一の厚さの金属メッキ層が形成され、当然に膜厚分布は形成されなかった。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的安価で簡便な構造の電気メッキ装置を用いて、被メッキ材表面に効率的に所望のメッキ膜厚分布を有する金属メッキ層を形成することができる。特に、貴金属メッキにおいては大幅なコスト低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における、治具を配置した電気メッキ装置の断面図
【図2】比較例1における、治具を配置しない電気メッキ装置の断面図
【図3】実施例2における、治具を配置した電気メッキ装置の断面図
【図4】比較例2における、治具を配置しない電気メッキ装置の断面図
【符号の説明】
1 セル
2 メッキ液
3 陽極
4 陰極(被メッキ材)
5 治具

Claims (2)

  1. 被メッキ材を陰極として陽極に対向させて配置したセル内にメッキ液を通液し直流電流を通電して該被メッキ材の表面に所定の膜厚分布を有する金属メッキ層を形成する電気メッキを行うにあたり、前記メッキ液中において前記被メッキ材のうち所定箇所の表面近傍に通液される該メッキ液の液流の上流側に該液流を阻害する治具を配置することによって、前記被メッキ材のうち該箇所の表面近傍のメッキ液流速を該被メッキ材の該箇所以外の表面近傍のメッキ液流速より小さい流速に設定し該被メッキ材の表面に形成される金属メッキ層のうち該箇所の金属メッキ層の膜厚を該被メッキ材の該箇所以外の金属メッキ層の膜厚より薄く形成させることを特徴とする電気メッキ方法。
  2. 被メッキ材が陰極として陽極に対向して鉛直に配置され底部の複数の給液口から上向き方向にメッキ液が通液され直流電流が通電されるセルと、該セル内において前記の複数の給液口のうち該被メッキ材の所定箇所の表面近傍に通液される該メッキ液の給液口を塞ぐよう配置されて該被メッキ材のうち該箇所の表面近傍のメッキ液流速を該被メッキ材の該箇所以外の表面近傍のメッキ液流速より小さい流速に設定する治具と、を備えたことを特徴とする電気メッキ装置。
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