JP4675946B2 - 粘度測定装置 - Google Patents
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試料10等の被測定物は、外筒27と内筒22との間に形成される空隙部に収容される。外筒27はモータ24によって回転可能に配置されている。一方内筒22は、回転軸28を介してスプリング23に連結される。指針26は回転軸28と一体になって動くように連結され、回転軸28の傍には目盛板25が固定され、配置されている。
この外筒回転型粘度測定装置20では、モータ24で外筒27を回転させると、試料10の有する粘性により内筒22に粘性トルクが働き、この粘性トルクに比例してスプリング23が捩れる。この捩れ量(偏角)を指針26と目盛板25とが示す目盛りから読み取ることで、試料10の粘度を測定する。
請求項1に係る発明の粘度測定装置は、固定される内筒と、回転駆動される外筒とを備え、内筒と外筒との間に形成される空隙部に試料を収容してなる外筒回転型共軸二重円筒式の粘度測定装置において、試料の流れが層流であり、外筒の内壁底面が平面であり、外筒の内壁側面の半径がR io であり、内筒の外壁側面の半径がR ii であり、内筒先端の外壁底面は円錐形状をしており、内筒先端の外壁底面と外筒の内壁底面のなす角度がθであって、前記θ[rad]、R io [m]、R ii [m]の値を次式
θ=(R io 2 −R ii 2 )/(2R io R ii )
を満たすように設定することにより、外筒の内壁側面と内筒の外壁側面とで形成する側面空隙部における試料の流速の速度勾配の平均値であるせん断速度D1と、外筒内壁底面と内筒の外壁底面とで形成する底面空隙部における試料の流速の速度勾配の平均値であるせん断速度D2とが、等しくなるようにしたことを特徴とする。
この発明に係る粘度測定装置によれば、試料の流れが層流になるので、試料の流れが安定し粘度を正確に測定することができる。また、せん断速度が外筒の内壁及び内筒の外壁の試料に接触する壁面にわたり等しいので、測定試料の一部のせん断速度が低く、その影響により試料が凝集することを抑えて、粘度を正確に測定することができる。
この発明に係る粘度測定装置によれば、空隙部に供給した試料を、密封手段で空気から遮断することができる。従って、試料が空気に触れて凝固したりすることを抑えて、試料の粘度を正確に測定することができる。
この発明に係る粘度測定装置によれば、試料を一定の温度条件に保つことができるので、試料の粘度を正確に測定することができる。
本発明では、試料に接触する内筒先端部を内筒軸部から分離させたり接合させたりすることが容易なので、内筒先端部を簡単に洗浄又は交換することができる。これにより、短時間で試料の粘度を正確に測定することができる。又、試料に接する部分である接液部をコーティングすることもでき、そのコーティング材料の評価を行うこともできる。
この発明に係る粘度測定装置によれば、永久磁石と磁性体、又は永久磁石間の磁力を利用して内筒先端部と内筒軸部の分離と接合を可能にするので、粘度測定装置の構成がより簡単になる。
粘度測定装置30は、内部に血液等の試料10を収容する二重円筒40と、二重円筒40中の試料10に回転する流れを生じさせる回転手段である駆動モータ31と、試料10の流れによって生じるトルクを測定するトルク測定手段であるトルクメータ32と、二重円筒40中の試料10の温度を一定に保つ恒温手段33と、駆動モータ31、トルクメータ32及び後述する温度計33bを支持する測定装置本体35と、駆動モータ31及び恒温手段33を制御し、トルクメータ32から測定結果の信号を受信して試料10の粘度を算出する制御装置(図示せず)とで構成されている。
二重円筒40は、トルクメータ32に連結され固定される内筒41と、駆動モータ31により回転して試料10に流れを生じさせる外筒44とを備える。また、測定装置本体35は、内筒41を回転可能に支持して位置決めするベアリング35bを備える。
そして、恒温手段33は、二重円筒40の温度調節を行う恒温槽33aと、二重円筒40に収容される試料10の温度を測定する温度計33bと、二重円筒40を恒温槽33aから出し入れさせる恒温槽昇降装置33cとで構成されている。
図2に示すように、内筒41は、試料10に接触する内筒先端部42と、内筒先端部42と分離と接合が可能となるように構成され、ベアリング35bで回転可能に支持されて位置決めされる内筒軸部43とからなる。なお、内筒軸部43はトルクメータ32に接続される。
また内筒軸部43は、ベアリング35bで回転可能に支持されて位置決めされる内筒軸43aと、内筒軸43aに連結される内筒軸ジョイント43bと、内筒軸ジョイント43bとネジ嵌合するジョイントケース43cと、ジョイントケース43cに埋め込まれた永久磁石43dとで構成されている。
なお、永久磁石43dとしては希土類磁石を用いることが好ましく、ネオジウム磁石を用いることがより好ましい。ネオジウム磁石は、加工の際に割れることが少なく、機械的強度が優れているからである。
内筒先端本体42aの外壁は一本の軸線を回転軸として曲線を回転させた曲面であり、上部の側面は円柱面をしていて、円柱面の下部の底面は円錐面の形状をしている。
なお、内筒ジョイント42bは磁性材料(磁性体)で作られるが、磁性ステンレス鋼を用いることが好ましく、SUS430を用いることがより好ましい。このように、内筒先端部42と内筒軸部43は、それぞれ磁性を有する物質である内筒ジョイント42bと永久磁石43dを備える。
また、ジョイントケース43cと内筒ジョイント42bは精密に加工されて製作されていて、内筒軸部43のジョイントケース43cの凹部43eと、内筒先端部42の内筒ジョイント42bの凸部42cで、内筒先端部42を内筒軸部43に位置決めする。
外筒本体44aの内壁側面は円柱面、内壁底面は平面をしている。
また、外筒本体44aと外筒下部ホルダー44cは精密に加工されて製作され、外筒下部ホルダー44cの内部に外筒本体44aが嵌め込まれる。
シール46は外筒本体44a等とともに回転し、内筒先端本体42aは回転しないので、摩擦低減のためにシール46と内筒先端本体42aとの間には隙間Tが空いている。ただし、試料10をできるだけ空気から遮断するためにも、隙間Tは小さいことが好ましい。
そして内筒41の内筒軸43aをベアリング35bで回転可能に支持して位置決めし、外筒44の外筒ジョイント44jを駆動モータ31に連結して位置決めすると、内筒先端本体42aの外壁の軸線と外筒本体44aの内壁の軸線は同一の軸線Lになるように構成されている。
図4において、外筒本体44aの内壁底面は平面であり、内筒先端本体42aの外壁底面は円錐面の形状をしている。外筒本体44aの内壁と内筒先端本体42aの外壁とで形成される空隙部47には試料10が供給されている。そして、内筒先端本体42aが停止し、外筒本体44aが軸線Lを中心に一定角速度Ω〔rad/sec〕で回転することにより、試料10の流速は、外筒本体44aの内壁から内筒先端本体42aの外壁にかけて低下していき、試料10の流速の速度勾配が出来ている。
なお、角速度Ωは、1分当たりの回転数N〔rpm〕に、0.1047を乗じた値になっている。
そして、側面空隙部47aにおける試料10の流れを検討するために、外筒本体44aの内壁側面上の点P1を考え、点P1から伸びる外筒本体44aの内壁面の法線が内筒先端本体42aの外壁と交わる点をQ1とする。同様に、底面空隙部47bにおける試料10の流れを検討するために、外筒本体44aの内壁底面上の点P2を考え、点P2から伸びる外筒本体44aの内壁面の法線が内筒先端本体42aの外壁と交わる点をQ2とする。
すなわち、側面空隙部47aにおける試料10の流速の速度勾配の平均値がせん断速度D1であり、底面空隙部47bにおける試料10の流速の速度勾配の平均値がせん断速度D2である。
Rii=Rio/1.0847 ・・・(1)
の式により、Riiを0.005992〔m〕と設定する。
また、外筒44が軸線Lを中心として回転する角速度Ωを4.07〔rad/sec〕(=38.9〔rpm〕)と設定する。
このとき、点P1における試料10のせん断速度D1は、Margulesの式
D1=2RiiRioΩ/(Rio2−Rii2) ・・・(2)
により、50〔1/sec〕と求められる。
つまり式(2)に示されるように、せん断速度D1は、外筒44及び内筒41の寸法及び角速度Ωにより計算される値となっている。
D2=Ω/θ ・・・(3)
となる。
式(2)におけるD1と式(3)におけるD2が等しいとすることにより、
θ=(Rio2−Rii2)/(2RioRii) ・・・(4)
となる。
式(4)にRio及びRiiの値を代入することにより、θは0.0815〔rad〕(=4.67〔°〕)となる。
すなわち、θが4.67〔°〕となるように設定すれば、せん断速度D1とせん断速度D2が等しい値になり、外筒44の内壁及び内筒41の外壁の試料10に接触する壁面にわたるせん断速度が等しくなる。またθは、外筒本体44aの内壁側面の半径Rio及び内筒の外壁側面の半径Riiにより定まる値となっている。
なお、本発明の粘度測定装置では、角速度Ωの最大値が62.8〔rad/sec〕(=600〔rpm〕)に設定されているので、試料10の流れは層流になる。
外筒下部ホルダー44cの内部に嵌め込まれた外筒本体44aに試料10を計量供給し、内部の窪みに内筒先端部42を、空隙部47に空気が入らないように配置させ、その上からシール46を嵌合させて、試料10を空気から遮断させる。
つぎに内筒先端部42の磁性材料で作られた内筒ジョイント42bと内筒軸部43の永久磁石43dとの間に作用する磁力を利用して、トルクメータ32に連結されている内筒軸部43に内筒先端部42を接合させる。
あらかじめ、外筒44は下部袋ナット44eで、外筒本体44a、外筒下部ホルダー44c、下部Oリング44h及びシール46を除いて組み立て、外筒44の外筒ジョイント44jを駆動モータ31に連結させる。試料10を入れた外筒本体44aを外筒下部ホルダー44cに入れ、シール46及び下部Oリング44hを載せ、外筒上部ホルダー44bに下部袋ナット44eにより取り付ける。
そして、二重円筒40を恒温槽33aの内部に配置して試料10の温度を一定に保ち、駆動モータ31で外筒44を回転させて、トルクメータ32で試料10に作用するトルクを測定し、その測定結果から制御装置(図示しない)が試料10の粘度を算出する。
また、空隙部47に設置されたシール46が、試料10を空気から遮断するので、試料10が空気に触れて凝固したりすることを抑えて、粘度を正確に測定することができる。
恒温手段33により試料10を一定の温度条件に保つことができるので、試料10の粘度を正確に測定することができる。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では内筒先端本体42aの外壁底面が円錐面の形状であり、かつ外筒本体44aの内壁底面が平面であるのに対し、第2実施形態では、内筒先端本体42aの外壁底面が曲面である球面の一部の形状であり、かつ外筒本体44aの内壁底面が曲面である半球面であることである。
なお本実施形態でも、軸線L上における外筒本体44aの内壁と内筒先端本体42aの外壁との間には0.0002〔m〕のギャップSがある。
そして、このようにRii’の値を求めると、0.0060366〔m〕となる。
また内筒41の外壁底面の形状が球面の一部であるので、内筒41の外壁の外周から上方に向けて空気が抜けやすく、短時間で試料10の粘度を正確に測定することができる。
外筒本体44aは、内壁側面の半径Rioが0.0065〔m〕であり、内壁底面が半球面で、半球面の半径がRioに等しい。このため、外筒として市販の試験管等を使うことができ、二重円筒40の製作費用を低減させることができる。
例えば、上記第1実施形態及び第2実施形態において、以下のような設計変更が可能である。
[血液試料の調整] 抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムの添加された緬羊無菌保存血液(コージンバイオ株式会社)に適当量の2%塩化カルシウム水溶液(大塚製薬)を加えることにより、活性化全血凝固時間(ACT: Activated Clotting Time)280〜320[sec]の血液を調整した。ACTは、ヘモクロンレスポンス(平和物産株式会社)により測定した。
本粘度測定装置30では、試料全領域に対して等しいせん断速度が与えられているので、測定開始から約10分間にわたって血液試料は凝固し始めることなく、一定の粘度を示している。測定開始から約10分以降に、粘度の増大が認められた。この原因は、内外筒表面に接触した血液試料中の凝固因子が作用し、血液試料の凝固を誘起したためと考えられる。
以上の結果より、本システムによって少量の血液試料の粘度を正確に測定できること、また、粘度の経時変化から血液試料の凝固過程をモニターできることが確認された。
図7より、ACTの増加に伴い、血液凝固開始時間が延長していることが分かる。ACTは、病院等で使用されている血液凝固計(ヘモクロンレスポンス)で測定される血液凝固時間である。本システムにより求められる凝固開始時間は、ACTと正の相関を示したことから、試料の凝固し易さの指標として有効であることが確認された。
市販のガラス、及びポリスチレン製試験管の上部をカットすることにより、ガラス、及びポリスチレン製外筒を作製した。チタン、ガラス、及びポリスチレン製外筒を用いて、実施例1と同様にして、血液試料の粘度測定を行った。
外筒44に注入する血液試料の量は、チタン製外筒で0.850[mL]、ガラス製外筒で1.016[mL]、ポリスチレン製外筒で0.518[mL]とした。いずれの外筒を用いた場合にも、図6と同様の粘度変化挙動が確認された。各々の粘度変化のグラフより求めた血液試料の凝固開始時間を表1に示す。
抗血栓性材料を内筒41及びガラス製外筒44の表面にコーティングし、実施例1と同様にして血液試料の粘度測定を行った。コーティングなしの内外筒、及び抗血栓性材料をコーティングした内外筒を用いた場合の、測定時間に対する血液試料の粘度変化を図8に、血液凝固開始時間(3回以上の測定による平均値±標準偏差)を表2に示す。
以上の結果から、本測定法によって、内外筒表面にコーティングされた材料の抗血液凝固性を評価できることが示された。
30 粘度測定装置
32 トルクメータ(トルク測定手段)
33 恒温手段
40 二重円筒
41 内筒
42 内筒先端部
42b 内筒ジョイント(磁性体)
43 内筒軸部
43d 永久磁石
44 外筒
46 シール(密封手段)
47 空隙部
Claims (5)
- 固定される内筒と、回転駆動される外筒とを備え、内筒と外筒との間に形成される空隙部に試料を収容してなる外筒回転型共軸二重円筒式の粘度測定装置において、
試料の流れが層流であり、外筒の内壁底面が平面であり、外筒の内壁側面の半径がRioであり、内筒の外壁側面の半径がRiiであり、内筒先端の外壁底面は円錐形状をしており、内筒先端の外壁底面と外筒の内壁底面のなす角度がθであって、
前記θ[rad]、Rio[m]、Rii[m]の値を次式
θ=(Rio 2−Rii 2)/(2RioRii)
を満たすように設定することにより、
外筒の内壁側面と内筒の外壁側面とで形成する側面空隙部における試料の流速の速度勾配の平均値であるせん断速度D1と、外筒内壁底面と内筒の外壁底面とで形成する底面空隙部における試料の流速の速度勾配の平均値であるせん断速度D2とが、等しくなるようにしたことを特徴とする粘度測定装置。 - 請求項1に記載の粘度測定装置において、
前記外筒の内壁と前記内筒の外壁とで形成される空隙部に設置され、前記試料を空気から遮断する密封手段を備えることを特徴とする粘度測定装置。 - 請求項1から請求項2のいずれかに記載の粘度測定装置において、
前記空隙部に供給される前記試料の温度を一定に保つ恒温手段を備えることを特徴とする粘度測定装置。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の粘度測定装置において、
前記内筒が、前記試料に接触する内筒先端部とトルク測定手段に接続される内筒軸部とを有し、該内筒先端部と該内筒軸部のそれぞれに磁性を有する物質を備え、その磁性を有する物質間に作用する磁力により、該内筒先端部と該内筒軸部の分離と接合が可能となるように構成されることを特徴とする粘度測定装置。 - 請求項4に記載の粘度測定装置において、
前記内筒先端部と前記内筒軸部のそれぞれに備えられた磁性を有する物質のうち、それらのうち一方が永久磁石で他方が磁性体であり、又はそれらの両方が永久磁石であることを特徴とする粘度測定装置。
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