JP4675398B2 - 磁気粘性流体及び磁気粘性流体の製造方法 - Google Patents

磁気粘性流体及び磁気粘性流体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気粘性流体及びそれの製造方法に関する。
磁気粘性流体は、磁化可能な金属粒子を分散媒に分散させてなる液体である(例えば特許文献1参照)。この磁気粘性流体は、磁場の作用のないときには流体として機能する一方、磁場を作用させたときには、金属粒子がクラスターを形成して液体が増粘し、液体の内部応力が増大する。その内部応力の増大により磁気粘性流体は、剛体のように機能してせん断流れや圧力流れに対して抗力を示すようになる。
磁気粘性流体は、金属粒子の密度が、分散媒の密度よりも大きいため、放置しておくと磁性粒子が沈降する場合がある。また、磁場の付与と磁場の解除とを繰り返すことによって金属粒子が二次凝集して、安定した分散状態を維持できなくなる場合がある。そこで、例えば特許文献2には、金属粒子を鎖状に凝集させることによって二次凝集を防止し、それによって長期安定性を向上させた磁気粘性流体が開示されている。
特表2006−505937号公報 特開2005−41896号公報
ところで、前記磁気粘性流体は、例えばブレーキ、クラッチ、ダンパといった、機械的に作動する各種のデバイスに利用されるものであるが、そうした磁気粘性流体を利用したデバイスを小型化したいという要求が存在する。そのためには、デバイスにおいて磁気粘性流体が封入される液室の間隙を、できるだけ狭くしなければならない。
例えば前記特許文献1の磁気粘性流体は、金属粒子を、平均粒子径が6〜100μmの非球形にすると共に、粒子間の摩擦を低減する摩擦低減剤を添加することによって、0.1〜0.75mm程度の間隙を有するデバイスに使用可能にしている。しかしながら、間隙をそれ以上に狭くしようとしたときには、磁気粘性流体に含まれる金属粒子が、間隙を構成する壁面等に接触してしまうようになる。その結果、デバイスの作動抵抗が増大したり、前記壁面の摩耗を招いたりすることになる。つまり、従来の磁気粘性流体を用いたデバイスは、その液室の間隙の最小限度が比較的大きいことに起因して、大幅に小型化することはできなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、狭小な間隙を有する小型のデバイスを実現可能な磁気粘性流体を提供することにある。
本発明の一側面によると、磁気粘性流体は、ナノサイズの磁化可能な金属ナノ粒子を含む磁性粒子、及び、前記磁性粒子を分散させる分散媒、を含有し、前記磁性粒子は、アークプラズマ法により作成した当該磁性粒子に対し、気相中においてカップリング剤による表面改質を施すことにより形成された、所定厚みの酸化膜と表面改質層とを有している。尚、ここでいうナノサイズとは、1〜数100ナノメートル(nm)程度の大きさを意味する。
この構成の磁気粘性流体は、そこに含まれる金属粒子がナノサイズであって極めて小さいため、デバイスにおける液室の間隙を狭くしても、金属ナノ粒子(磁性粒子)が、その間隙を構成する壁面に接触することが抑制される。その結果、デバイスの動作に支障を生じることなくかつ、前記壁面の摩耗を招くことが防止される。つまり、液室の間隙をできるだけ狭くすることでデバイスの小型化が図られると共に、前記壁面やシール等の摩耗を未然に防止して、デバイスの長寿命化が図られる。
また、磁性粒子は、所定厚みの酸化膜と表面改質層とを有しているため、分散媒に対する磁性粒子の分散性が向上する。また、分散媒と粒子とが長期に亘って相分離しにくくなると同時に、磁気粘性流体の基底粘度(磁場を作用させない状態での粘度)が低下する。特に本構成の磁気粘性流体は、磁性粒子がナノサイズの粒子を含み、その比表面積が大きいため、磁性粒子をそのまま、分散媒に分散させたときには基底粘度が高くなってしまうところを、磁性粒子の表面改質により、それを回避することが可能になる。
そうして、前記酸化膜と表面改質層は、アークプラズマ法により作成した当該磁性粒子に対し、気相中においてカップリング剤による表面改質を施すことにより形成されている。こうしたドライなプロセスによって表面改質を行った場合は、周知の湿式化学法により表面改質を行う場合と比較して、金属ナノ粒子の凝集が抑制される。またそれだけでなく、磁性粒子の耐酸化性も向上し、磁性粒子のハンドリング性や安全性も改善される。
前記磁性粒子は、平均粒子径が20nm以上500nm以下、好ましくは70nm以上200nm以下の金属ナノ粒子を含む、ことが特に望ましい。平均粒子径を70nm以上とすることで高い磁気粘性効果(MR効果)が得られる一方で、平均粒子径を200nm以下にすることで沈降性の悪化が回避される。また、前記磁性粒子は、大きさが10μm以下の、前記金属ナノ粒子の凝集体を含む、としてもよい。
前記酸化膜の厚みは、2nm以上10nm以下である、ことが好ましい。酸化膜の厚みが10nmよりも厚いときには、磁性粒子に対する酸化物の体積比率が大きくなりすぎて、磁性粒子の磁性が得られず、磁気粘性流体としての性能が確保できなくなる。また、酸化膜の厚みが2nmよりも薄いときには、磁性粒子が酸化燃焼し易く、ハンドリング性及び安全性の観点で劣る。
これに対し、酸化膜の厚みが2nm以上10nm以下のときには、ハンドリング性及び安全性を確保しつつ、磁気粘性流体としての性能を得ることが可能になる。
本発明の他の側面によると、磁気粘性流体の製造方法は、磁化可能な金属材料から、アークプラズマ法により、ナノサイズの金属ナノ粒子を含む磁性粒子を作成する工程、前記作成した磁性粒子の表面に酸化膜を形成する工程、カップリング剤を前記酸化膜表面の水酸基と気相中で反応させることによって前記磁性粒子に対し表面改質を施す工程、及び、前記表面改質を施した磁性粒子を分散媒に分散させる工程、を含む。
カップリング剤による表面改質処理としては、カップリング剤を所定の溶剤に溶解させた溶液に金属ナノ粒子を浸漬させるか、当該溶液を金属ナノ粒子に噴霧するかした後に、溶剤を蒸発させる、湿式化学法が一般的である。しかしながらこうした処理では、金属ナノ粒子が強く凝集して、サイズの大きい凝集体となってしまう。
これに対し前記の構成では、大気中で金属ナノ粒子の酸化膜表面に生成させた水酸基とカップリング剤とを気相中で反応させて、磁性粒子に対する表面改質を行う。こうしたドライなプロセスによって表面改質を行うことで、前述したように、金属ナノ粒子の凝集の抑制及び疎水化に伴う分散性の向上がなされるだけでなく、湿式化学法による表面改質の場合と比較して、磁性粒子の耐酸化性が向上し、ハンドリング性や安全性が改善される。
前記製造方法は、前記分散工程の前又は後に、前記磁性粒子を解砕する工程をさらに含む、としてもよい。
これによって、磁性粒子の大きさを精度よく制御することが可能になり、磁性粒子の大きさを比較的小さくすることによって、磁気粘性流体の特性を所望の特性にすることが実現する。
磁気粘性流体は、ナノサイズの磁化可能な金属ナノ粒子及び当該金属ナノ粒子が塊状に凝集した凝集体を含む磁性粒子、並びに、前記磁性粒子を分散させる分散媒、を含有する、としてもよい
ここで、塊状の凝集体とは、金属ナノ粒子が特定方向に連なるように凝集することで棒状又は鎖状になるのではなく、複数の金属ナノ粒子が一つのブロックを形成するように凝集することを意味する。
この構成の磁気粘性流体は、そこに含まれる金属粒子がナノサイズであって極めて小さいため、デバイスにおける液室の間隙を狭くしても、金属ナノ粒子(磁性粒子)が、その間隙を構成する壁面に接触することが抑制される。
また、この磁性粒子に含まれる凝集体は、金属ナノ粒子が塊状に凝集した凝集体である。このため、例えば特許文献2に開示された鎖状の凝集体を含む磁気粘性流体に比べて、本構成の磁気粘性流体はその基底粘度が低下する。つまり、本構成の磁気粘性流体は、磁場を付与しない基底状態においては高い流動性が得られる一方で、磁場を付与したときには粘度上昇の度合いが大きくなるため、高いMR効果が得られる。
以上説明したように、本発明によると、ナノサイズの金属粒子を含む磁性粒子を、分散媒に分散させることで、デバイスにおける液室の間隙を狭くしても、磁性粒子がその間隙を構成する壁面に接触することを抑制することができる。これによって、デバイスの小型化を実現しつつ、それの長寿命化を図ることができる。また、磁性粒子が、気相法による表面改質によって形成された所定厚みの酸化膜と表面改質層とを有していることにより、磁性粒子の分散媒に対する分散性が向上しかつ、分散媒と粒子とが長期に亘って相分離しにくくなると共に、磁性粒子の耐酸化性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明の実施形態に係る磁気粘性流体は、磁性粒子を分散媒に分散させてなる液体であり、本実施形態では特に、その磁性粒子が、ナノサイズの金属粒子(金属ナノ粒子)からなる。
磁性粒子は、磁化可能な金属材料からなる。金属材料に特に制限はないが、軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料としては、鉄、コバルト、ニッケル及びパーマロイ等の合金を例示することができる。
金属ナノ粒子は、その平均粒子径が、20〜500nmであることが望ましく、より好ましくは、70〜200nmである。後述するように、平均粒子径が70nm以上であるときには、高いMR効果が得られると共に、平均粒子径が200nm以下であるときには、磁気粘性流体の沈降性の悪化を回避することができる。
また、磁性粒子には、金属ナノ粒子が凝集した凝集体を含んでいても良い。特に、金属ナノ粒子が塊状に凝集した凝集体を含んでいても良い。ここでいう「塊状」とは、複数の金属ナノ粒子が、一つのブロックを形成するように凝集することを意味する。塊状の凝集体は、例えば棒状又は鎖状の凝集体が磁気粘性流体に含まれる場合と比較して、基底粘度を低下させることになる。凝集体の大きさは、レーザー回折散乱法による平均粒子径が、10μm以下であることが望ましく、5μm以下であることがより好ましい。
分散媒は、特に限定されるものではないが、一例として疎水性のシリコーンオイルを挙げることができる。採用する分散媒の種類に応じて、磁性粒子に対し、その分散媒と親和性の高い表面改質を施すようにすればよい。こうすることで、磁性粒子の分散安定性が高まる。例えば疎水性のシリコーンオイルを分散媒として採用する場合、磁性粒子にはカップリング剤による表面改質を施すことが好ましい。
磁気粘性流体における磁性粒子の配合量は、例えば3〜40vol%とすればよい。
磁気粘性流体にはまた、所望の各種特性を得るために、各種の添加剤を添加することも可能である。
本実施形態に係る磁気粘性流体の製造方法は、大別して、磁性粒子を作成する工程、磁性粒子の表面改質を行う工程、及び、表面改質を行った磁性粒子を分散媒に分散させる工程、を含む。以下、それぞれの工程について順に説明する。
(磁性粒子の作成工程)
ナノサイズの金属粒子を生成する手法としては、例えば液相法や気相法といった、種々の、公知の手法を採用することが可能である。この内、凝集した粒子間の結合力や、粒子の凝集形態を制御する観点からは、気相法が好ましい。気相法としては、高周波プラズマ法やアークプラズマ法を具体例として挙げることができる。この内でもアークプラズマ法が最も好ましい。
図1は、アークプラズマ法によりナノサイズの金属粒子を製造するための装置Aを、概略的に示している。この製造装置Aは、タングステン電極を含むプラズマトーチ11と、金属材料21が載置される水冷銅ハース12とが、密閉容器13内に相対して配設されて構成されている。陰極であるプラズマトーチ11と、陽極である水冷銅ハース12との間には直流電源14が接続されている。
この製造装置Aによって金属ナノ粒子を生成するときには、密閉容器13内を、水素、又は、不活性ガスと水素又は窒素等の2原子分子ガスやその他の多原子分子ガスとの混合ガス雰囲気にした状態で、アークプラズマ18を発生させる。そのアークプラズマ18によって、水冷銅ハース12上に置かれた金属材料21が蒸発すると共に、それが冷却することで、ナノサイズの金属ナノ粒子が生成される。
生成した金属ナノ粒子は、ガス循環ポンプ15によって吸引されることで、密閉容器13に連通する粒子捕集器16において捕集される。尚、ガス循環ポンプ15から排出されたガスは密閉容器13に戻される(図1の白抜きの矢印参照)。
本実施形態においては、前記のようにして金属ナノ粒子を生成した後に、装置A内の雰囲気を、数%の酸素を含む非酸化性ガスに置換し、その状態で数時間放置する。これによって、粒子捕集器16に捕集されている金属ナノ粒子の表面に、2nm〜10nm程度の酸化膜を生成させる。尚、前記の放置時間を長くしても、酸化膜はそれ以上は成長しない。
このように酸化膜を生成することによって、ナノサイズの金属粒子を大気中に取り出したときに、それが燃焼してしまうことを防止することができる。以上のようにして本実施形態に係る磁性粒子が作成されることになる。
(磁性粒子の表面改質工程)
磁性粒子の表面改質として、本実施形態ではカップリング剤による表面改質を行う。
前述したように酸化膜を形成した磁性粒子を装置Aから取り出し、それを大気中に常温で所定時間、放置する。
その後、カップリング剤の蒸気と磁性粒子表面の水酸基とを反応させることによって,磁性粒子表面がカップリング剤で被覆され,疎水化される。
このようにドライなプロセスによる表面改質は、溶媒中での金属ナノ粒子の凝集を抑制すると共に、詳しくは後述するが、磁性粒子の特性を所望の特性とする上で有効である。
(磁性粒子の解砕工程)
表面改質後の磁性粒子には、比較的サイズの大きい凝集体が含まれている場合があるため、磁性粒子を分散媒に分散させる前又は後に、磁性粒子の解砕を行うことが好ましい。解砕は、粉砕機(例えばボールミル)を用いて行うようにすればよく、そうすることによって、磁性粒子の平均粒子径を、所定の大きさ以下に正確に制御することが可能になる。尚、磁性粒子の解砕工程は省略することも可能である。
(磁性粒子の分散工程)
カップリング剤による表面改質によって、その表面が疎水性となった磁性粒子を分散媒に分散させる。本実施形態では、前述したように、分散媒を疎水性のシリコーンオイルとする。この分散工程においては、例えばホモジナイザーや遊星混合器等の分散機を利用した一般的な手法を採用することにより、磁性粒子を分散媒に分散させる。前述したように、磁性粒子は、カップリング剤による表面改質が施されているため、比較的容易に、シリコーンオイルに分散させることができる。
以上のようにして、金属ナノ粒子を含む磁性粒子、及び、分散媒を主成分とした磁気粘性流体を製造することができる。
(第1実施例)
次に、本実施形態に関して実際に実施した実施例について説明する。先ず、前述した製造方法に従って磁気粘性流体を作成した。
磁性粒子(金属ナノ粒子)の材料としては純鉄(Aldrich社製、Iron,rod,6.3mm diam., 99.98% Fe)を使用した。この純鉄から、図1に示す金属ナノ粒子製造装置Aによって、ナノサイズの金属粒子を作成した。
具体的には、密閉容器13内を真空に引いた後に、アルゴン及び水素を導入して密閉容器13内を大気圧とした。アルゴン及び水素の分圧は、それぞれ0.5atmに設定した。
前記純鉄20〜30gを、水冷銅ハース12上に置き、プラズマトーチ11(タングステン電極(陰極))と水冷銅ハース12上の純鉄21(陽極)との間にプラズマを発生させ、それによって、純鉄を溶融・蒸発させることでナノ粒子を合成した。ここで、プラズマ電流は150A、電圧は40Vとした。また、このときの合成速度は0.8g/minであり、磁性粒子の平均粒子径は、BET比表面積の測定結果から換算した径(以下、BET換算径という)で、105nm程度であった。
次いで、前記製造装置A(密閉容器13及び粒子捕集器16)内を再度真空引きした後、当該装置A内をアルゴン5%含有のドライエア(窒素80%及び酸素20%)雰囲気にし、その状態で3時間だけ放置した。この徐酸化処理によって、粒子捕集器16に捕集されている金属ナノ粒子の表面に酸化膜を生成した。この金属ナノ粒子を装置Aから取り出してTEM(Transmission Electron Microscope)により観察したところ、その酸化膜の厚みは約2nmであった。尚、徐酸化処理の時間を3時間未満にした場合は、酸化膜の厚みが薄すぎることにより、金属ナノ粒子が酸化燃焼してしまうことが多くなる。一方、徐酸化処理の時間を3時間よりも長くしても、酸化膜の厚みは、2nm〜10nm程度以上には成長しない。
酸化膜生成後の金属ナノ粒子(磁性粒子)を前記製造装置Aから取り出し、大気中に常温で1時間放置した。そうして、磁性粒子の酸化膜に水酸基を生成させた。
その後、前記の磁性粒子を、カップリング剤の蒸気と脱水縮合反応させることによって、磁性粒子に対する表面改質を施した。
表面改質は具体的には、内容量300ccのステンレス製圧力容器内に、前記磁性粒子を入れると共に、磁性粒子10gに対し、0.38gの比率となるようにシランカップリング剤として、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KBM-13)を、その圧力容器内に入れ、圧力容器を密閉した。尚、このときの磁性粒子の比表面積は、7.3m/g程度であった。また、シランカップリング剤は、ビーカー等の開口容器に入れた状態で、前記圧力容器内に入れており、磁性粒子とシランカップリング剤とは、直接混合させていない。
そうして、前記の圧力容器を、乾燥炉中において、シランカップリング剤(KBM-13)が揮発する温度である80℃で、2時間保持した。こうして気相中で磁性粒子の表面改質を行った。表面改質後の磁性粒子を取り出して確認したところ、疎水性を示した。
次に、表面改質後の磁性粒子をトルエン中に分散させ、その磁性粒子−トルエン懸濁液をボールミルによって6時間解砕した。ここで用いたボールミルのポットは、1リットルのジルコニアポットであり、ボールには直径1mmのジルコニアボールを用いた。この解砕処理によって、磁性粒子の平均粒子径(BET換算径)は、105nm程度から、70nm程度へと変化した。
そうして、磁性粒子の解砕後に、当該磁性粒子を分散媒に分散させた。具体的には、先ず前記磁性粒子−トルエン懸濁液における粒子濃度を、熱重量分析によって確認した上で、その粒子濃度に対応する量の分散媒、つまりシリコーンオイル(信越化学工業株式会社製、商品名:KF96-50cs)を、その懸濁液に添加して混合及び分散させた。ここでの混合分散には自転公転方式の遊星混合器を用い、その公転直径を400Gとして、5分間、混合分散を行った。
その後、当該シリコーンオイル混合の磁性粒子−トルエン懸濁液を、105℃で数時間保持し、それによってトルエンのみを蒸発させた。尚、磁性粒子は、表面改質を行っているため、酸化することはない。こうして得たものが、この実施例に係る磁気粘性流体であり、その磁性粒子の平均粒子径(BET換算径)は70nmであった。
尚、この実施例に係る製造方法に従って、磁性粒子の平均粒子径(BET換算径)を90nmとした磁気粘性流体(実施例2)と、平均粒子径を50nmとした磁気粘性流体(実施例3)と、をそれぞれ作成した。
この実施例に対し、前記鉄ナノ粒子を含む磁性粒子に対して、表面改質を行わないで作成した磁気粘性流体(比較例1)と、前記磁性粒子に対して、湿式化学法により表面改質を行った上で作成した磁気粘性流体(比較例2)とをそれぞれ用意した。
さらに、従来例として市販の磁気粘性流体において一般的に用いられているカルボニル鉄粒子によって調整した磁気粘性流体を用意した。表1に、実施例、比較例1,2及び従来例の特性をまとめて示す。尚、表1の実施例における改質後の粒子径は、解砕前の粒子径を示している。
(磁性粒子の粒径について)
先ず、実施例の磁性粒子の粒径分布を、レーザー回折散乱法(装置名:MICROTRAC INC. MT3000)により測定した。その測定結果を図2(a)に示す。尚、実線は頻度分布であり、破線は累積分布である。これによると、実施例に係る磁性粒子(金属ナノ粒子の、例えば塊状の凝集体を含む)の平均粒子径は、1〜2μmであった。
これに対し、前記従来例の磁気粘性流体に含まれる磁性粒子の粒径分布を、レーザー回折散乱法により測定した結果を、図2(b)に示す。これによると、従来例の磁気粘性流体における磁性粒子の平均粒子径は、6μmであり、実施例の磁気粘性流体に比べて、その粒子径は遙かに大きかった。
次に、前記実施例、実施例2及び実施例3に関し、平均粒子径の違いによるMR効果(磁場を与えたときの粘性の変化特性)の相違について確認した。
先ず、ここで用いた粘度計は、図3に概略を示すように、磁場形成用のコイル41が内蔵された円柱状の入力シリンダ4と、入力シリンダ4と同軸に相対して配置された円筒状の出力シリンダ5とを備えている。
入力シリンダ4には円環状の溝43がその上面から凹陥して形成されており、この溝43には、評価対象となる磁気粘性流体が入れられる。
出力シリンダ5は、その上端開口が閉塞しており、その部分が前記入力シリンダ4に一体に形成された支持軸に対し支持される一方、円環状となった下端には、入力シリンダ4の円環状の溝43内に内挿されるブレード51が、下方に向かって延びて設けられている。これによって、後述するように相対回転をする前記入力シリンダ4の溝43の内側壁と、前記出力シリンダ5のブレード51の側壁と、の間に磁気粘性流体が存在するようになる。
前記入力シリンダ4にはモータ42が連結されており、このモータ42を駆動することによって入力シリンダ4は出力シリンダ5に対して相対的に、前記の軸回りに回転することができる。その相対回転によって、前記溝43内において磁気粘性流体のせん断流れを作り出すことができる。
一方、前記出力シリンダ5には力センサ52が接続されており、この力センサ52によって、前記磁気粘性流体がせん断流れ状態にあるときに、出力シリンダ5に作用する力(トルク)を検出することができる。
この粘度計では、磁気粘性流体をせん断流れの状態にして、コイル電流を変化させることにより磁気粘性流体に与える磁場の強さを変化させ、それに伴う出力シリンダ5のトルク変化から、せん断応力の変化、ひいては磁気粘性流体の粘性変化を評価することができる。
そうして、前記実施例、実施例2及び実施例3の磁気粘性流体について、前記粘度計のコイルに電流を通電したときのせん断応力変化を測定した。コイルに通電する電流は1Aとした。これによって0.5T(テスラ)の磁場が生成されることになる。ここでの、実施例、実施例2及び実施例3の各磁気粘性流体の粒子の分散濃度は共に、5vol%とした。図4に、その結果を示す。これによると、実施例及び実施例2に係る磁気粘性流体は、磁場を印加することによって、せん断応力が1.3kPaから、6.5kPa(実施例2)乃至5.0kPa(実施例)程度に変化しており、MR効果が発現していることがわかる。これに対し、実施例3に係る磁気粘性流体は、磁場を印加しても、0.8kPaから2.3kPa程度にしか、せん断応力が変化しない。従って、MR効果は得られるものの、そのMR効果は相対的に小さい。このことから、磁気粘性流体に含まれる磁性粒子の平均粒子径は、70nm以上であることが特に好ましいことが判る。
一方、磁性粒子の平均粒子径が大きいときには、磁気粘性流体における沈降性が悪化することから、磁性粒子の平均粒子径は、200nm以下であることが特に望ましい。
(表面改質処理について)
次に、磁性粒子に対する表面改質の有無、及び、その表面改質方法の相違による特性に違いについて確認した。先ず、図5(a)のTEM写真に示すように、表面改質を行った実施例の磁性粒子を1週間放置したところ、その磁性粒子の表面の酸化膜の厚みは約2nmであった。前述したように、実施例の磁性粒子は、その粒子合成後に2nm程度の酸化膜を生成していることから、この実施例の磁性粒子は、1週間放置しても酸化膜が成長していないことがわかる。
これに対し、図5(b)は、表面改質を行っていない比較例1の磁性粒子を、前記と同様に1週間放置したときのTEM写真を示している。これによると、その表面の酸化膜の厚みは5nm程度となっており、酸化膜が成長していることがわかる。
ここで、表2に示すように、酸化膜の厚みと、その粒子中の酸化物の体積比率との関係によると、前記従来例のような磁気粘性流体においては、粒子径が1000nmの磁性粒子の表面に、厚さ20nm程度の酸化膜が形成されていると推定され、その粒子における酸化物の体積比率は12vol%である。
これに対し、本実施例のように、粒子径が例えば50nm程度であるときに、厚さ5nmの酸化膜が形成されているときは、その粒子における酸化物の体積比率は、49vol%となって、酸化物がその粒子のおおよそ半分の体積を占めることになる。このように酸化物の体積比率が大きくなると、磁気粘性流体においてMR効果が得られないことにもなる。
そこで、本実施例のように、粒子径が例えば50nm程度であるときには、酸化膜の厚みは厚さ2nm程度とすることが好ましい。こうすることによって、その粒子における酸化物の体積比率が22vol%となり、従来例のような磁気粘性流体における体積比率(12vol%)と同程度となる。従って、磁性粒子の表面改質を行うことによって表面酸化膜の成長を防止することは、磁気粘性流体におけるMR効果を長期に亘って安定して得る上で有効である。また、本実施例のように、磁性粒子の平均粒子径が20nm以上500nm以下、好ましくは70nm以上200nm以下に設定される場合は、酸化膜の厚みは、2nm以上10nm以下に設定することが望ましい。
次に、図6は、実施例に係る磁性粒子を水に分散させた様子を示しており、実施例に係る磁性粒子は、表面改質によって、その表面が疎水性となっているため、水に対して浮かんでいることがわかる。また、図7(a)は、比較例1に係る表面改質を行っていない磁性粒子を、トルエン(左側)及び水(右側)のそれぞれに分散させた時の様子を、図7(b)は、実施例に係る表面改質を行った磁性粒子を、トルエン(左側)及び水(右側)のそれぞれに分散させた時の様子を示している。ここでは、超音波分散機を用いて5分間分散を行った。尚、図7(a)(b)は、その分散後、5時間放置した後の状態を示している。これをみると明らかなように、実施例に係る磁性粒子をトルエンに対して分散させた場合のみ、高い分散性が得られている。従って、磁性粒子の表面改質によって、疎水性分散媒に対する分散性が向上することがわかる。
次に図8は、実施例、比較例1及び従来例それぞれの磁気粘性流体の沈降性について行った試験結果を示している。つまり、実施例、比較例1及び従来例それぞれの磁気粘性流体を放置し、各時間における沈降層の比率(試料全体の高さh1に対する沈降層の高さh2の比率、以下、沈降率(%)=((h1-h2)×100)/h1)を評価した。図8において横軸は時間、縦軸は沈降率である。尚、この沈降性試験における、実施例、比較例1及び従来例の各磁気粘性流体の磁性粒子の分散濃度は5vol%と、比較的低い濃度に設定され、これによって、各磁気粘性流体は沈降しやすい条件にしている。
図8の試験結果によると、従来例に係る磁気粘性流体は、50時間弱程度放置することによって沈降率が40%程度となり、沈降性が悪かった。
これに対し、比較例1に係る磁気粘性流体は、120時間放置後において、沈降率が60%程度であり、従来例よりも沈降率は改善していた。
さらに、実施例に係る磁気粘性流体は、120時間放置後において、沈降率が80%強であり、沈降率は、比較例1よりもさらに改善しており、高い沈降性が得られた。従って、金属ナノ粒子を含む磁性粒子の表面改質を行うことによって、磁気粘性流体における沈降性が向上することがわかる(表1の沈降試験の欄参照)。
次に、実施例及び比較例1のそれぞれの磁性粒子の酸化反応について確認した。図9は、実施例及び比較例1のそれぞれの磁性粒子を、150℃で、水蒸気中に3時間保持した後に、その粒子をX線回折法(X-ray diffraction; XRD、装置名:JEOL JPX-3530M)により分析した結果を示している。これによると、表面改質を行っていない比較例1の磁性粒子は、酸化物(Fe)が生成されていたのに対し、表面改質を行っている実施例の磁性粒子には、酸化物が生成されていなかった。従って、表面改質を行うことによって、磁性粒子の耐酸化性が向上することが判る。
以上、主に表面改質の有無による、磁性粒子及び磁気粘性流体の特性の変化について検討した結果を説明したが、次に、実施例と比較例2とを主に比較することにより、表面改質方法の相違による特性の変化について検討した結果を説明する。
図10は、実施例に係る磁性粒子、比較例1,2に係る磁性粒子のそれぞれを、150℃の雰囲気中に放置すると共に、熱重量分析により各磁性粒子の重量変化率を測定した結果を示している。これによると、比較例1の、表面改質を行っていない磁性粒子は、70時間経過後には、重量変化率TGが2.5wt%程度となった。また、60時間経過時における1時間当たりの重量変化量、つまり、酸化速度は、2.4wt%/hrであった。
また、比較例2の、湿式化学法により表面改質を行った磁性粒子は、70時間経過後には、重量変化率TGが2.1wt%程度となり、60時間経過時における酸化速度は、2.0wt%/hrであった。これに対し、前述したように、気相法により表面改質を行った実施例に係る磁性粒子は、70時間経過後には、重量変化率TGが1.0wt%程度となり、60時間経過時における酸化速度は、0.90wt%/hrであった。このように、実施例に係る磁性粒子は、70時間経過後の重量変化率TGが、比較例1や比較例2と比較して、約半分程度となり、その酸化速度も、比較例1や比較例2と比較して、大幅に遅くなっている。従って、気相法による表面改質処理は、磁性粒子の耐酸化性を大幅に向上させることがわかる。
また、表1に示すように、比較例2に係る磁性粒子をXRDにより分析したところ、若干の酸化物ピークが存在していたのに対し、実施例に係る磁性粒子をXRDにより分析したところ、前述したように、酸化物ピークは全く存在していなかった(図9参照)。
尚、表1に示すように、実施例及び比較例1,2のような純鉄のナノ粒子を含む、酸化膜形成後でかつ表面改質前の磁性粒子を、XRDにより分析したところ、酸化物ピークがなかったのに対し、従来例では酸化物ピークが存在し、酸化物が若干生成されていた。
従って、実施例に係る磁性粒子は、高い耐酸化性を有しており、これによって、ハンドリング性や安全性が大幅に改善されることになる。
(磁気粘性流体における粒子の分散濃度について)
次に、前記実施例に係る磁気粘性流体の粒子の分散濃度とMR効果との関係について検討を行った。図11は、分散濃度を25vol%に設定した磁気粘性流体について、図3に示す粘度計を用いて測定したせん断応力の変化を示している。尚、粘度計のせん断速度は480(1/s)で、ギャップ(溝43の内側壁と出力シリンダ5のブレード51の側壁との間の距離)は、50μmとした。これによると、磁気粘性流体に対して0.5Tの磁場を印加することによって、14kPa程度のせん断応力が発生していることがわかる。
また、図12は、図11と同様に、分散濃度を10vol%に設定した磁気粘性流体について、図3に示す粘度計を用いて測定したせん断応力の変化を示している。粘度計のせん断速度はは、前記と同様480(1/s)で、ギャップは、50μmと25μmとのそれぞれについて測定した。これによると、先ず、ギャップが50μmのときには、磁気粘性流体に対して0.5Tの磁場を印加することによって、7.5kPa程度のせん断応力が発生していることがわかる。従って、磁気粘性流体の分散濃度が低下することにより、せん断応力、つまり磁気粘性流体の粘度が低下していることがわかる。
また、ギャップが25μmのときには、磁気粘性流体に対して0.5Tの磁場を印加することによって、13kPa程度のせん断応力が発生していることがわかる。従って、ギャップの大きさを変えることによっても、磁場印加時における磁気粘性流体の粘度が変化し、ギャップを小さくすることで磁場印加時における磁気粘性流体の粘度は高くなる。
図13は、磁気粘性流体の磁性粒子の分散濃度(横軸)と、磁場印加時及び非印加時におけるせん断応力(縦軸)との関係を示しており、白丸及び白三角はそれぞれ、磁場を印加していないときのせん断応力を、黒丸及び黒三角はそれぞれ、磁場を印加したときのせん断応力を示している。また、白丸及び黒丸は、前記ギャップが50μmに設定されたときの結果を、白三角及び黒三角は、前記ギャップが25μmに設定されたときの結果を、それぞれ示している。これによると、分散濃度に対して磁場印加時のせん断応力は、略比例関係を有している。
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明する。第2実施例では、次のようにして磁気粘性流体を作成した。
つまり、磁性粒子(金属ナノ粒子)の材料としては純鉄(純度99.8%未満)を使用し、図1に示す金属ナノ粒子製造装置Aによって、その純鉄から、ナノサイズの金属粒子を作成した。このとき、密閉容器13内の雰囲気ガスとしては、水素50%含有のアルゴン水素混合ガスを用いると共に、アーク電流を150A、アーク電圧を35〜45Vとした。
次いで、前記製造装置Aの密閉容器13内の雰囲気ガスを、酸素2%含有のアルゴンガスに置換し、その状態で5時間だけ放置した。これによって、粒子捕集器16に捕集されている金属ナノ粒子の表面に酸化膜を生成した。
酸化膜生成後の金属ナノ粒子(磁性粒子)を前記製造装置Aから取り出し、大気中に常温で1時間放置した。そうして、磁性粒子の酸化膜に水酸基を生成させた。
その後、前記の磁性粒子を、カップリング剤の蒸気と脱水縮合反応させることによって、磁性粒子に対する表面改質を施した。
そうして、分散媒としてのシリコーンオイルを50ml入れた容器内に、前記の磁性粒子を70g入れ、ホモジナイザーにより、その磁性粒子をシリコーンオイルに分散させた。
その後、前記の磁性粒子を分散させたシリコーンオイルを、φ3mmのジルコニア製ボールと共に、ボールミル(図示省略)に入れ、回転数60rpmで、5時間、そのボールミルを駆動させた。それによって、磁性粒子(凝集体)の解砕を行った。こうして作成したのが、第2実施例における磁気粘性流体である。尚、分散濃度は15vol%である。
この磁気粘性流体に含まれる磁性粒子の形態を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope; SEM)により観察した。そのSEM写真を図14に示す。また、前記従来例に係る磁気粘性流体に含まれる粒子のSEM写真を図15に示す。
図14,15によると、従来例の磁性粒子は数ミクロンの粒子がさらに凝集した凝集体を含んでいるのに対し、第2実施例における磁性粒子の一部には、複数の金属粒子が1μm程度の塊状に凝集した凝集体を形成していることがわかる。
また、第2実施例における磁性粒子に含まれる金属ナノ粒子の平均粒子径を、BET比表面積の測定結果から換算した。それによると、第2実施例に係る金属ナノ粒子の平均粒子径は90nmであった。
次に、第2実施例においても、金属ナノ粒子表面の改質処理の効果を確認するため,表面改質を施した金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体(実施例)と,表面処理を施していない金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体(比較例)の粘性を比較した。これに用いた粘度計は、図示は省略するが、相対回転が可能な入力シリンダと出力シリンダとを含む、一般的な二重円管タイプのものである。図16にその結果を示す。尚、横軸は入力シリンダの回転数(せん断速度)、縦軸はせん断応力である。これによると、表面改質を施した金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体に係る特性曲線(実線)と表面処理を施していない金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体に係る特性曲線(破線)とは共に、右上がりの曲線であって互いに略平行になっている。つまり、いずれの磁気粘性流体も回転数に対してせん断応力がほぼ線形的に変化している一方で、表面処理を施した金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体のせん断応力は、表面処理を施していない金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体のせん断応力よりも低い値である。これにより、金属ナノ粒子の表面処理を施すことによって、磁気粘性流体の基底粘度を低下させることができることがわかる。
次に,前記第2実施例に係る磁気粘性流体及び従来例の磁気粘性流体のそれぞれについて、狭小間隙における粘性評価を行った。粘性評価に用いた粘度計は、図示は省略するが、その間に磁気粘性流体を挟むよう対向して配置されると共に、相対回転が可能にされた平行円盤を備えていて、その平行円盤を相対回転させたときのせん断応力を測定することが可能に構成されている。ここでの粘性評価は、平行円盤間のギャップを50μmに設定した状態で、円盤の回転数に対するせん断応力の変化を測定することにより行った。
図17に、横軸を円盤の回転数(せん断速度)、縦軸をせん断応力とした、粘性評価の結果を示す。これによると、第2実施例に係る磁気粘性流体は、回転数に対してせん断応力が線形的に変化している。つまり、第2実施例に係る磁気粘性流体では、そこに含まれる磁性粒子が円盤等に接触することなく、円盤がスムースに回転していると考えられる。従って、第2実施例に係る磁気粘性流体は、少なくとも50μm程度の間隙を有するデバイスに使用しても、間隙を構成する壁面や液室を密閉するためのシール等の摩耗を招くことがない。よって、第2実施例に係る磁気粘性流体は、狭小間隙を有するデバイスに使用することが可能であると共に、デバイスの寿命を長くすることができる。
これに対し、従来例の磁気粘性流体は、回転数に対してせん断応力が線形的に変化しないと共に、円盤の回転数を高めたときには、せん断応力の測定自体が不能になった。これは、従来例の磁気粘性流体に含まれる磁性粒子は、前述したように6μm程度の比較的大きい平均粒子径を有しているが、その磁性粒子が円盤等に接触することで、円盤の回転抵抗を招いていると推測される。従って、従来例の磁気粘性流体は、50μm程度の間隙を有するデバイスに使用した場合、デバイスの作動不良を招くことから、そうした狭小間隙のデバイスに使用することはできない。
最後に、前記第2実施例の磁気粘性流体について、磁場を与えたときの粘性の変化特性(MR効果)について、図3に示す粘度計を用いて評価試験をした。図18にその結果を示す。これによると、実施例に係る磁気粘性流体は、せん断速度480(1/s)、1Aのコイル電流を通電することにより13kPa程度のせん断応力が発生しており、MR効果が発現していることがわかる。
以上説明したように、本発明は、磁気粘性流体が封入される液室の間隙を狭くすることができるから、ブレーキ、クラッチ、ダンパ等の、磁気粘性流体を利用したデバイスの小型化及び長寿命化を実現する上で有用である。
アークプラズマ法による金属粒子の製造装置を示す概略図である。 実施例及び従来例に係る磁性粒子の凝集体の大きさを示すデータである。 粘度計の概略構成を示す断面図である。 平均粒子径が異なる各磁気粘性流体に対して、磁場を与えたときのトルク変化を示す図である。 実施例及び比較例に係る磁性粒子を示す顕微鏡写真である。 実施例に係る磁性粒子を水に分散させたときの様子を示す写真である。 実施例及び比較例に係る磁性粒子を水及びトルエンに分散させたときの様子を示す写真である。 実施例、比較例及び従来例に係る磁気粘性流体の沈降試験の結果を示す図である。 実施例及び比較例に係る磁性粒子のXRD分析結果を示す図である。 実施例及び比較例に係る磁性粒子の、時間に対する重量変化を示す図である。 実施例に係る磁気粘性流体に、磁場を与えたときのせん断応力変化を示す図である。 実施例に係る磁気粘性流体に、磁場を与えたときのせん断応力変化を示す図である。 磁気粘性流体の磁性粒子の分散濃度に対する、せん断応力の関係を示す図である。 第2実施例に係る磁性粒子の凝集体を示す顕微鏡写真である。 従来例に係る磁性粒子の凝集体を示す顕微鏡写真である。 表面改質処理を施した金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体と、表面改質処理を施していない金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体との粘度の比較を示す図である。 第2実施例及び従来例に係る磁気粘性流体の、狭小間隙におけるせん断速度に対するせん断応力の変化特性を示す図である。 第2実施例に係る磁気粘性流体の、磁場を与えたときのトルク変化を示す図である。
符号の説明
21 金属材料

Claims (7)

  1. ナノサイズの磁化可能な金属ナノ粒子を含む磁性粒子、及び、
    前記磁性粒子を分散させる分散媒、
    を含有し、
    前記磁性粒子は、アークプラズマ法により作成した当該磁性粒子に対し、気相中においてカップリング剤による表面改質を施すことにより形成された、所定厚みの酸化膜と表面改質層とを有している磁気粘性流体。
  2. 請求項1に記載の磁気粘性流体において、
    前記磁性粒子は、平均粒子径が20nm以上500nm以下の金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体。
  3. 請求項2に記載の磁気粘性流体において、
    前記磁性粒子は、平均粒子径が70nm以上200nm以下の金属ナノ粒子を含む磁気粘性流体。
  4. 請求項1に記載の磁気粘性流体において、
    前記磁性粒子は、大きさが10μm以下の、前記金属ナノ粒子の凝集体を含む磁気粘性流体。
  5. 請求項1に記載の磁気粘性流体において、
    前記酸化膜の厚みは、2nm以上10nm以下である磁気粘性流体。
  6. 磁化可能な金属材料から、アークプラズマ法により、ナノサイズの金属ナノ粒子を含む磁性粒子を作成する工程、
    前記作成した磁性粒子の表面に酸化膜を形成する工程、
    カップリング剤を前記酸化膜表面の水酸基と気相中で反応させることによって前記磁性粒子に対し表面改質を施す工程、及び、
    前記表面改質を施した磁性粒子を分散媒に分散させる工程、を含む磁気粘性流体の製造方法。
  7. 請求項6に記載の製造方法において、
    前記分散工程の前又は後に、前記磁性粒子を解砕する工程をさらに含む製造方法。
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