JP4674809B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トレッドゴムを、接地面側のキャップ層とその内周側に配されるベース層との2層構造とした空気入りタイヤに関し、特にスタッドレスタイヤとして有用である。
スタッドレスタイヤは、路面の損傷を引き起こすスパイクタイヤに代わって広く普及しつつあり、氷雪路において優れた走行性能(アイス性能)を発揮しうるタイヤである。一般に、スタッドレスタイヤにおいては、トレッドゴムが軟質であるほどアイス性能が向上するものの、その一方で、乾燥路でのハンドリング性能(DRYハンドリング性能)が低下する傾向にある。そのため、従来では、トレッドゴムを接地面側のキャップ層とその内周側に配されるベース層との2層構造とし、該ベース層をキャップ層よりも硬質にすることで、アイス性能と乾燥路性能の両立が図られている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
ところが、このようなスタッドレスタイヤにおいて、アイス性能をより向上させるべくキャップ層のゴム硬度を更に低下させた場合、単にベース層のゴム硬度を高めるだけではアイス性能と乾燥路性能とを両立できず、特にDRYハンドリング性能の確保が困難になる傾向にある。そのため、乾燥路性能を確保しながらアイス性能を良好に向上しうるタイヤの出現が望まれている。
下記特許文献3には、トレッドゴムのキャップ層をタイヤ幅方向の3つの領域に区分し、タイヤ赤道を含む中央の領域に比較的軟質のゴムを配するとともに、その両外側の領域に比較的硬質のゴムを配したスタッドレスタイヤが開示されている。しかしながら、かかる構造では、接地圧が比較的高いベルト端近傍の領域において更に接地圧が高くなり、接地面での圧力不均一化が顕著となるため、アイス性能及び乾燥路性能を十分に確保することが難しい。
また、下記特許文献4には、トレッドゴムをタイヤ幅方向の3つの領域に区分し、タイヤ赤道を含む中央の領域に比較的硬質のゴムを配するとともに、その両外側の領域に比較的軟質のゴムを配したスタッドレスタイヤが開示されている。しかしながら、かかるタイヤはトレッドゴムがキャップ層とベース層との2層構造をなすものではなく、軟質のゴムが配された両外側の領域での剛性が十分に確保されないため、乾燥路性能が低下する傾向にある。
特開平7−9816号公報 特開平7−61209号公報 特許第3418131号公報 特開昭61−37503号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乾燥路性能を確保しながらアイス性能を向上しうる空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、一対の環状のビード間を補強するカーカス層と、接地面側のキャップ層及び前記キャップ層の内周側に配されるベース層の2層構造をなすトレッドゴムと、前記カーカス層と前記トレッドゴムとの間に配されるベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、トレッド部が、タイヤ赤道を含むセンター域と、前記センター域のタイヤ幅方向両外側に配されるメディエイト域と、前記メディエイト域のタイヤ幅方向両外側に接地端近傍を外側端として配されるショルダー域とに区分され、前記キャップ層におけるセンター域、メディエイト域及びショルダー域のそれぞれのゴム硬度H1、H2及びH3、並びに、前記ベース層におけるセンター域、メディエイト域及びショルダー域のそれぞれのゴム硬度H4、H5及びH6が、H4≧H5>H6>H1>H2≧H3の関係を満たすものである。
本発明に係る空気入りタイヤ(スタッドレスタイヤ)では、トレッドゴムの各領域のゴム硬度がH4≧H5>H6>H1>H2≧H3の関係を満たしており、該トレッドゴムは比較的軟質のキャップ層と比較的硬質のベース層との2層構造をなす。しかも、キャップ層及びベース層の各々に対して、センター域に比較的硬質のゴムが配されるとともにショルダー域に比較的軟質のゴムが配されている。その結果、ベルト端近傍の領域における接地圧を低下させて接地面での圧力分布を均一化し、氷上制動性能やDRYハンドリング性能を高めて、乾燥路性能を確保しながら優れたアイス性能を発揮することができる。
上記において、前記ベース層における前記ショルダー域のタイヤ幅方向両外側に配されるバットレス域のゴム硬度H7がH5≧H7>H6を満たすものが好ましく、これによりタイヤの前後剛性及び横剛性が向上するため、氷上制動性能及びDRYハンドリング性能を効果的に向上することができる。
上記において、JISA硬度にて、H1=45〜65°、H3=35〜55°、H4=60〜75°及びH6=55〜70°であるものが好ましく、これによりトレッドゴムの各領域におけるゴム硬度の違いを利用して、乾燥路性能を確保しながらアイス性能を良好に向上することができる。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線半断面図である。この空気入りタイヤ(スタッドレスタイヤ)は、一対のビード部1と、ビード部1から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、サイドウォール部2間に設けられたトレッド部3とを備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビード1aと、断面略三角形状をなす硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
ビード1a間は、少なくとも1枚のカーカスプライ9からなるカーカス層4により補強されている。カーカスプライ9は、タイヤ赤道線Cに対して略90°の角度で平行配列された複数本のカーカスコードがゴム被覆されてなり、端部がビード1aの外側に巻き返された状態で係止されている。カーカスコードとしては、スチールやポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機系繊維等が使用される。
カーカス層4の内周には、空気圧保持のためのインナーライナー層5が配されている。また、カーカス層4のトレッド部3外周には、たが効果による補強を行うベルト層6が配されており、ベルト層6は内外に積層された2枚のベルトプライから構成されている。各ベルトプライは、タイヤ赤道線Cに対して傾斜して延びるスチールコードがプライ間で互いに逆向きに交差するように配設されている。ベルト層6の外周には、たが効果を補強するためのベルト補強層7が配設されている。
トレッド部3の外周側表面には、接地面側のキャップ層11と、キャップ層11の内周側に配されるベース層12との2層構造をなすトレッドゴム10が配されている。トレッドゴム10の表面には、タイヤ周方向に沿って延びる主溝や主溝に交差して延びる横溝などが設けられており、所定のトレッドパターンが形成されている。
トレッド部3は、タイヤ赤道を含むセンター域Ceと、センター域Ceのタイヤ幅方向両外側に配されるメディエイト域Meと、メディエイト域Meのタイヤ幅方向両外側に配されるショルダー域Shと、ショルダー域Shのタイヤ幅方向両外側に配されるバットレス域Buとに区分され、ショルダー域Shの外側端は接地端Eの近傍に配されている。ここで、接地端Eは、空気圧を200kPaとした状態でタイヤを平面路面に垂直に置き、JATMAで定められた最大負荷×0.88×0.8に相当する荷重を加えたときに平面路面に接地するタイヤ幅方向の最外位置である。なお、接地端E間の距離が接地幅Wとなり、図1には接地幅Wの半分(W/2)を示している。
本実施形態では、領域間を区分する境界線がキャップ層11とベース層12とで略一致しており、タイヤ赤道線Cに関して対称に形成されているが、本発明はこれに限られるものではない。また、かかる境界線を溝側面に形成してもよく、トレッドゴム10の厚み方向に対して傾斜して延びるものでも構わない。ベース層11及びキャップ層12の厚みは特に限定されず、キャップ層11とベース層12との境界線は溝底ラインを通るものに限られない。
センター域Ce、メディエイト域Me、ショルダー域Sh及びバットレス域Buのそれぞれの幅寸法(タイヤ子午線半断面におけるタイヤ幅方向距離)をW1、W2、W3及びW4とすると、W1=0.05W〜0.25W、W2=0.1W〜0.25W、W3=0.1W〜0.25W、及び、W4=0.1W〜0.25Wとして例示できる。
ここで、11c、11m及び11sは、それぞれセンター域Ce、メディエイト域Me及びショルダー域Shにおけるキャップ層11の領域を示しており、同じく12c、12m及び12sは、それぞれセンター域Ce、メディエイト域Me及びショルダー域Shにおけるベース層12の領域を示している。領域11c、11m及び11sのゴム硬度H1、H2及びH3、並びに、領域12c、12m及び12sのゴム硬度H4、H5及びH6は、H4≧H5>H6>H1>H2≧H3の関係を満たすように設定されている。これによりベルト端近傍の領域における接地圧を低下させて接地面での圧力分布を均一化し、氷上制動性能やDRYハンドリング性能を高めて、乾燥路性能を確保しながら優れたアイス性能を発揮することができる。
上記において、H1>H2>H3、及び/又は、H4>H5>H6を満たすことが好ましく、これにより接地面での圧力分布をより均一化することができ、氷上制動性能やDRYハンドリング性能を効果的に高めることができる。
12bは、バットレス域Buにおけるベース層12の領域を示している。領域12bのゴム硬度H7は、H5≧H7>H6を満たすことが好ましく、これによりタイヤの前後剛性及び横剛性を向上して、氷上制動性能及びDRYハンドリング性能を効果的に向上することができる。かかる場合、H4>H5>H7>H6を満たすことが好ましく、これにより接地面での圧力分布をより均一化することができ、氷上制動性能やDRYハンドリング性能を効果的に高めることができる。
トレッドゴム10のゴム硬度は、具体的にはJISA硬度(JISK6253のタイプAデュロメータ硬さ試験に準じて測定したゴム硬度)にて、H1=45〜65°、H3=35〜55°、H4=60〜75°、及び、H6=55〜70°であることが好ましく、これによりゴム硬度の違いを利用して、乾燥路性能を確保しながらアイス性能を良好に向上することができる。なお、他の領域のゴム硬度としては、H2=35〜55°、H5=60〜75°、H7=60〜75°が例示できる。
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドゴムのゴム硬度を上述のように調整する程度の改変で、その他は従来のタイヤ製造工程と同様にして製造を行うことができる。このようなトレッドゴムは、例えばストリップビルド法において、ゴムストリップをタイヤ周方向に巻き付けてトレッドゴムを成形するに際し、領域に応じてゴム硬度の異なるゴムストリップを用いることにより簡易に成形することができる。
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、タイヤの各性能評価は、次のようにして行った。
(1)氷上制動性能
実車(2000ccの4ドアセダン車、2名乗車)の全輪にテストタイヤを装着し、車指定の空気圧にて氷上を30km/hで走行して、制動開始から車両停止に至るまでの距離を測定した。なお、評価は従来例を100としたときの指数で示し、数値が大きいほど制動距離が短く、氷上制動性に優れていることを示す。
(2)DRYハンドリング性能
実車(2000ccの4ドアセダン車、2名乗車)の全輪にテストタイヤを装着し、車指定の空気圧にて乾燥路を走行して、直進走行や旋回走行、制動などを実施して、ドライバーの官能試験により評価した。なお、評価は10点満点とし、数値が大きいほどDRYハンドリング性能に優れていることを示す。
従来例、比較例1〜3、実施例1〜3
トレッドゴムの各領域におけるゴム硬度H1〜H7をそれぞれ表1に示す値に設定し、タイヤサイズ205/65R15 94Hのラジアルタイヤを製造した。なお、接地幅W=170mmとし、キャップ層及びベース層共にW1=15mm、W2=35mm、W3=35mm、W4=30mmとした。上記の各性能評価を行った結果を表1に示す。
Figure 0004674809
表1に示すように、比較例1では、従来例に比べてDRYハンドリング性能が向上しているものの、キャップ層が比較的硬質であることにより氷上制動性能が低下している。一方、比較例2では、キャップ層が比較的軟質であることにより従来例に比べて氷上制動性能が向上しているものの、DRYハンドリング性能が低下している。比較例3では、比較例2よりもベース層を硬質に設定しているものの、DRYハンドリング性能を確保することができていない。
これに対して、実施例1〜3では、DRYハンドリング性能を確保しながら氷上制動性能を向上することができている。特に、実施例2では、ゴム硬度がH5≧H7>H6を満たすことにより、氷上制動性能とDRYハンドリング性能とを実施例1よりも良好に両立することができている。更に、実施例3では、ゴム硬度がH1>H2>H3、及び、H4>H5>H7>H6を満たすことによって、実施例2よりも接地面での接地圧分布がより均一化され、氷上制動性能とDRYハンドリング性能とをより効果的に両立することができている。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
符号の説明
1 ビード部
1a ビード
3 トレッド部
4 カーカス層
6 ベルト層
10 トレッドゴム
11 キャップ層
12 ベース層
Ce センター域
Me メディエイト域
Sh ショルダー域
Bu バットレス域

Claims (3)

  1. 一対の環状のビード間を補強するカーカス層と、接地面側のキャップ層及び前記キャップ層の内周側に配されるベース層の2層構造をなすトレッドゴムと、前記カーカス層と前記トレッドゴムとの間に配されるベルト層とを備える空気入りタイヤにおいて、
    トレッド部が、タイヤ赤道を含むセンター域と、前記センター域のタイヤ幅方向両外側に配されるメディエイト域と、前記メディエイト域のタイヤ幅方向両外側に接地端近傍を外側端として配されるショルダー域とに区分され、
    前記キャップ層におけるセンター域、メディエイト域及びショルダー域のそれぞれのゴム硬度H1、H2及びH3、並びに、前記ベース層におけるセンター域、メディエイト域及びショルダー域のそれぞれのゴム硬度H4、H5及びH6が、H4≧H5>H6>H1>H2≧H3の関係を満たすことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記ベース層における前記ショルダー域のタイヤ幅方向両外側に配されるバットレス域のゴム硬度H7がH5≧H7>H6を満たす請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. JISA硬度にて、H1=45〜65°、H3=35〜55°、H4=60〜75°及びH6=55〜70°である請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
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